JPH11268933A - 単心光ファイバ心線又はテープ状心線の製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 製造線速の低い状態で製造された製品も良好
なものにして、製造歩留まりを向上させ得る単心光ファ
イバ心線又はテープ状心線の製造方法を提供する。 【解決手段】 ガラスファイバ３の上又は複数本の光フ
ァイバ心線７’を平行に並べた上に、被覆となる紫外線
硬化型樹脂を塗布した後、不活性ガスを流している透明
な中空管を備えた紫外線照射装置６又は１４を通過さ
せ、該紫外線照射装置６又は１４内において中空管の外
側から前記樹脂に紫外線を照射して樹脂を硬化させるも
のであって、前記不活性ガスの流量を製造線速の変化に
応じて段階的に又は連続的に変化させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ガラスファイバ上
に被覆を施して単心光ファイバ心線を製造する方法、又
は複数本の光ファイバ心線を平行に並べてその上に被覆
を施してテープ状心線を製造する方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】ガラスファイバに紫外線硬化型樹脂等か
らなる被覆を施して単心光ファイバ心線としたもの、あ
るいはガラスファイバに被覆を施した光ファイバ心線を
複数本平行に並べてその上に紫外線硬化型樹脂等からな
る被覆を施してテープ状心線としたものが、光ファイバ
ケーブルの主要部材として大量に用いられている。図４
（Ａ）は単心光ファイバ心線の横断面図、図４（Ｂ）は
テープ状心線の横断面図であって、ガラスファイバ２０
に紫外線硬化型樹脂等からなる被覆２１を施して単心光
ファイバ心線２２とし、その単心光ファイバ心線２２と
同等な光ファイバ心線２２’を複数本平行に並べてその
外側に紫外線硬化型樹脂等からなる一体化するための被
覆２３を施してテープ状心線２４としている。

【０００３】このような単心光ファイバ心線、テープ状
心線は、図１（Ａ）（Ｂ）に示す製造工程でそれぞれ製
造されている。図１において、１はガラスファイバ母
材、２は加熱炉、３はガラスファイバ、４は塗布装置、
５は樹脂供給タンク、６は紫外線照射装置、７は単心光
ファイバ心線、７’は単心光ファイバ心線と同等な光フ
ァイバ心線、８はキャプスタン、９はリール、１０はダ
ンサーローラ、１１はガイドローラ、１２は塗布装置、
１３は樹脂供給タンク、１４は紫外線照射装置、１５は
テープ状心線、１６は送り出しキャプスタン、１７は巻
取りリールである。

【０００４】図１（Ａ）の単心光ファイバ心線製造工程
では、ガラスファイバ母材１を加熱炉２にて加熱し、所
定の外径になったガラスファイバ３を引出し、直に塗布
装置４を通して紫外線硬化型樹脂を塗布する。なお、紫
外線硬化型樹脂は樹脂供給タンク５から塗布装置に供給
する。樹脂が塗布されたガラスファイバは紫外線照射装
置６に入り紫外線の照射を受けて樹脂が硬化し、単心光
ファイバ心線７となる。単心光ファイバ心線７はキャプ
スタン８によって引張り、リール９に巻き取る。

【０００５】続いて、図１（Ｂ）のテープ状心線製造工
程では、単心光ファイバ心線７と同等な光ファイバ心線
７’が複数のリール９からそれぞれ繰り出されて、ダン
サーローラ１０を経由してガイドローラ１１にガイドさ
れて複数本の光ファイバ心線７’が紙面に対して垂直方
向に配列されて、塗布装置１２に入る。紫外線硬化型樹
脂が樹脂供給タンク１３から塗布装置１２に供給され、
塗布装置１２において複数本の光ファイバ心線７’の周
囲に同樹脂が塗布される。樹脂が塗布された光ファイバ
心線は、紫外線照射装置１４にて紫外線が照射されて、
樹脂が硬化し、テープ状心線１５となる。テープ状心線
１５は、送り出しキャプスタン１６を経て、巻取りリー
ル１７に巻き取られる。

【０００６】また図２は、図１（Ｂ）のテープ状心線の
製造に使用される紫外線照射装置１４の縦断面図であっ
て、紫外線照射装置１４は、透明な石英等の材質で出来
た中空管１４ｂとその周囲に対称的に配置した紫外線ラ
ンプ１４ａを備え、下方の不活性ガス供給口１４ｃから
窒素、アルゴン等の不活性ガスを供給して中空管１４ｂ
内を上部に導き、不活性ガス排気口１４ｅから排出して
いる。なお、不活性ガス供給口につながる管の途中に流
量調整弁１４ｄを配置して、不活性ガスの流量を調整す
る。

【０００７】樹脂が塗布された複数の光ファイバ心線
は、中空管１４ｂ内を通過する間に紫外線ランプ１４ａ
によって紫外線の照射を受けて樹脂が硬化し、テープ状
心線１５となる。なお、紫外線照射装置１４における不
活性ガスは、紫外線硬化型樹脂の硬化を妨げる酸素を少
なくするため、樹脂を塗布した光ファイバ心線の周囲に
流すものである。また、図１（Ａ）の単心光ファイバ心
線の製造に使われる紫外線照射装置６も、図２の紫外線
照射装置１４とほぼ同じ構造で、不活性ガスを中空管内
に流している。

【０００８】以上説明したテープ状心線の製造工程の例
においては、光ファイバ心線７’には、塗布装置１２に
入る前に複数本の光ファイバ心線の配列を揃えるため、
ダンサーローラ１０によって数十グラムの張力が加えら
れるので、その上に樹脂が塗布された状態では、その張
力に樹脂による摩擦力が加わったものが実際の張力とし
て樹脂が塗布された光ファイバ心線に作用する。

【０００９】ところで、製造線速が高い場合は単位時間
当たりの樹脂の塗布量も多く、摩擦抵抗も大きいため樹
脂が塗布された光ファイバ心線に作用する張力は一定値
以上あるが、製造線速が低い場合は樹脂の単位時間当た
りの塗布量も少ないため摩擦抵抗が小さくなり、張力も
小さくなる。張力が小さいと線振れを起こし易いので、
製造線速が低い場合は製造線速が高い場合に比べて線振
れが起こり易いということになる。またこの紫外線照射
装置内での線振れは塗布装置にも影響し、線振れが大き
いと樹脂の塗布状態が悪化し、テープ状心線の表面が平
滑でなくなる。表面が平滑でないと、リールの巻き取ら
れたテープ状心線の伝送特性を悪化させる原因となる。

【００１０】また一方、製造線速が高くなると、紫外線
照射装置の中空管中を高速で樹脂が塗布された光ファイ
バ心線が通過するため、下方から上方に向けて不活性ガ
スを流していても、紫外線照射装置の上部の入口から空
気が巻き込まれて入り易くなる。そのため、紫外線照射
装置の中空管内の酸素濃度が高くなり、樹脂の硬化が不
十分なまま、紫外線照射装置からテープ状心線が出て行
くということが起こり易くなる。樹脂の硬化が不十分な
テープ状心線は被覆の表面がべたつき、不良品として扱
われる。

【００１１】

【発明が解決しようとする課題】以上説明した通り、製
造線速が高くなると紫外線照射装置での線振れは小さく
なるが、空気の巻き込みによって紫外線照射装置の中空
管内の酸素濃度が上がり、樹脂の硬化が不十分になると
いうことが起こる。また、製造線速を低くなると紫外線
照射装置内での張力が低くなり、線振れが起こり易くな
って、樹脂の塗布が均一で無くなり、テープ状心線の表
面の平滑性が失われ、ひいては伝送特性が悪化する。

【００１２】従って、品質が良好な製品を得るために
は、製造線速の上限を抑え、かつ線速が一定値以下の低
い状態で製造されたテープ状心線は、製品から除去して
いた。本発明は、製造線速の低い状態で製造された製品
も良好なものにして、製造歩留まりを向上させ得る単心
光ファイバ心線又はテープ状心線の製造方法を提供する
ものである。

【００１３】

【課題を解決するための手段】本発明の単心光ファイバ
心線又はテープ状心線の製造方法においては、ガラスフ
ァイバの上又は複数本の光ファイバ心線を平行に並べた
上に、被覆となる紫外線硬化型樹脂を塗布した後、不活
性ガスを流している透明な中空管を備えた紫外線照射装
置の該中空管内を通過させ、該紫外線照射装置内におい
て中空管の外側から前記樹脂に紫外線を照射して樹脂を
硬化させるものであって、製造線速の増加又は減少に応
じて前記不活性ガスの流量を段階的に又は連続的に増加
又は減少させることを特徴とする。

【００１４】なお、製造線速が高くなると不活性ガスの
流量も増加させ、製造線速が低くなると不活性ガスの流
量も減少させるが、その程度は、製造線速の変化量１０
０ｍ／分に対して、不活性ガスの流量の変化量を５〜２
０リットル／分とすることが望ましい。

【００１５】

【発明の実施の形態】本発明において使用される製造工
程は、図１（Ａ）又は（Ｂ）と同じであるが、紫外線照
射装置６又は１４に流す不活性ガスの流量を、製造線速
が高い時には流量を多くし、製造の初期段階あるいは、
製造の中間段階で製造線速が低くなった時には流量も少
なくするように制御することによって、線振れを抑え、
製造線速が低くても良好な製品が得られるようにする。

【００１６】図２（Ｂ）に示すテープ状心線の製造工程
において、製造線速及び不活性ガスの流量を種々の条件
にして変えながら、外径２５０μｍの光ファイバ心線を
４本平行に並べて、紫外線硬化型樹脂を塗布して硬化さ
せ、テープ状心線を製造した。その結果、表１及び図３
の通りのデータが得られた。

【００１７】表１は、製造線速、不活性ガスの流量を種
々変えた時の、テープ状心線の波長１．５５μｍでの伝
送損失と、テープ状心線の樹脂の未硬化に伴う被覆のべ
たつき状況が認められるか否かを示すデータ表であっ
て、図３は伝送損失が規定値（０．２５ｄＢ／Ｋｍ）以
上のもの又は被覆のべたつき状況が認められたものを
×、伝送損失が規定値以下でかつ被覆のべたつきが認め
られないものを○で示したグラフである。なお、被覆の
べたつきは、手で触ったときに手にべたつきの感触を与
えるもの、あるいはリールから繰り出した時にスムーズ
に繰り出されないものを、被覆のべたつき有りとした。

【００１８】

【表１】

【００１９】これらのデータによると、製造線速が５０
ｍ／分の場合は流量が３０〜７０リットル／分で、製造
線速が１００〜４００ｍ／分の場合は流量が３０〜１０
０リットル／分で、製造線速が６００ｍ／分の場合は流
量が７０〜１２０リットル／分で、良好な製品が得られ
ることが分かる。また、製造線速が５０〜６００ｍ／分
で流量が１０リットル／分の場合は、被覆にべたつきが
出て不良になる。また、製造線速が５０ｍ／分で流量が
１００リットル／分、製造線速が２００〜４００ｍ／分
で流量が１２０リットル／分と流量が多い時には、伝送
損失が規定値を上回って不良となることが分かる。

【００２０】これらの事から、製造線速が定常の６００
ｍ／分である場合は、不活性ガスの流量を７０〜１２０
リットル／分の範囲で良好品が製造出来るが、そのまま
不活性ガスを流して製造線速を低下させると、被覆にべ
たつきが発生する。そこで製造線速を５０〜４００ｍ／
分に下げた時には、不活性ガスの流量も３０〜７０リト
ル／分に低下させると、被覆にべたつきが発生せず良好
品を製造することが出来る、ということが分かる。即ち
製造線速が低くなると、不活性ガスの流量を下げ、製造
線速が高くなると、不活性ガスの流量を上げることで、
製造線速が変化しても良好品を製造する範囲を拡大する
ことが可能であることが判明した。

【００２１】紫外線照射装置において中空管内に流す不
活性ガスの流量の調整は、不活性ガス供給口につながる
流量調整弁の開放度を変化させることによって行うが、
製造線速の変化に応じて不活性ガスの流量を連続的に変
化させても良いし、段階的に変化させても良い。図３の
グラフを参考にすれば、流量の変化の程度は、製造線速
の増加量又は減少量１００ｍ／分に対して、不活性ガス
の流量の増加量又は減少量は約５〜２０リットル／分程
度とすることが望ましい。

【００２２】

【発明の効果】本発明の単心光ファイバ心線又はテープ
状心線の製造方法においては、紫外線照射装置の中空管
内に流す不活性ガスの流量を、製造線速に応じて変化さ
せることにしたので、製造線速が定常状態よりも低くな
った時にも、不活性ガスの流量を減少させることによっ
て、良好な製品を得ることが出来、製造歩留まりが向上
する。また、製造線速を高くすると紫外線照射装置への
空気の巻き込みが増えるが、不活性ガスに流量増加によ
って紫外線照射装置内の酸素濃度の上昇を抑えることも
可能であり、定常状態の製造線速を高く設定することも
可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】（Ａ）は単心光ファイバ心線の製造工程を示す
図であって、（Ｂ）はテープ状心線の製造工程を示す図
である。

【図２】紫外線照射装置の縦断面図である。

【図３】製造線速及び不活性ガスの流量を変えたとき
の、製品の良否をしめすグラフである。

【図４】（Ａ）は単心光ファイバ心線の横断面図、
（Ｂ）はテープ状心線の横断面図である。

【符号の説明】

１：ガラスファイバ母材 ２：加熱炉 ３：ガラスファイバ ４：塗布装置 ５：樹脂供給タンク ６：紫外線照射装置 ７：単心光ファイバ心線 ７’：光ファイバ心線 ８：キャプスタン ９：リール １０：ダンサーローラ １１：ガイドローラ １２：塗布装置 １３：樹脂供給タンク １４：紫外線照射装置 １４ａ：紫外線ランプ １４ｂ：中空管 １４ｃ：不活性ガス供給口 １４ｄ：流量調整弁 １４ｅ：不活性ガス排出口 １５：テープ状心線 １６：送り出しキャプスタン １７：巻取りリール

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ガラスファイバの上又は複数本の光ファ
   イバ心線を平行に並べた上に、被覆となる紫外線硬化型
   樹脂を塗布した後、不活性ガスを流している透明な中空
   管を備えた紫外線照射装置の該中空管内を通過させ、該
   紫外線照射装置内において中空管の外側から前記樹脂に
   紫外線を照射して樹脂を硬化させるものであって、製造
   線速の増加又は減少に応じて、前記不活性ガスの流量を
   段階的に又は連続的に増加又は減少させることを特徴と
   する単心光ファイバ心線又はテープ状心線の製造方法。
2. 【請求項２】 製造線速の増加量又は減少量１００ｍ／
   分に対して、不活性ガスの流量の増加量又は減少量を５
   〜２０リットル／分とすることを特徴とする請求項１に
   記載の単心光ファイバ心線又はテープ状心線の製造方
   法。