JPH11267757A - 鋼製部材の変形矯正方法 - Google Patents

鋼製部材の変形矯正方法

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JPH11267757A
JPH11267757A JP7089998A JP7089998A JPH11267757A JP H11267757 A JPH11267757 A JP H11267757A JP 7089998 A JP7089998 A JP 7089998A JP 7089998 A JP7089998 A JP 7089998A JP H11267757 A JPH11267757 A JP H11267757A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】例えば、固溶化熱処理を行った後に析出硬化熱
処理を必要とする材料からなる被処理物に好適に適用で
きる熱処理変形矯正方法を提供する。 【解決手段】鋼製の部材を熱処理した場合に生じる変形
を、当該部材の熱処理硬化の最終工程中または当該工程
の前後の少なくとも一つにおいて、二つの温度調整タイ
プ矯正金型の間で当該部材を加圧して所望の熱処理パラ
メータ(θ)で温間プレス変形矯正する。この変形矯正
方法によれば、例えばマルテンサイト系またはセミオー
ステナイト系析出硬化型ステンレス鋼のような時効析出
材料からなる部材の熱処理変形を、析出物の析出,母相
の組織変化、そして転位の移動により矯正型の形状に倣
って矯正することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マルテンサイト系
またはセミオーステナイト系析出硬化型ステンレス鋼の
ような析出硬化型鋼材料からなる機械部品(例えばスラ
スト及びラジアル軸受の軌道輪など)や、析出硬化型鋼
材料であると否とにかかわらず変形矯正方向に対して非
対称な断面形状を有する鋼製の部材(例えば高速用ボー
ルネジのボールリターンチューブなど)における熱処理
変形の矯正方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、被処理物の熱処理変形を矯正しつ
つ焼戻しを行う方法としては、例えば特願平07−52
2827号に提案されているものがある。このものは、
被処理物を250〜500℃に加熱すると同時に加圧
し、この加熱・加圧の時間を6分以内とする熱処理変形
の矯正方法である。この従来の熱処理変形矯正の技術
は、焼入れ・焼戻しという熱処理を施す鋼製部品に対し
有効に適用できる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、固溶化
処理→(調整処理)→時効硬化処理という熱処理を施す
ことにより過飽和固溶体から微細粒子を析出せしめて強
化を図るような材料、すなわち析出硬化型材料(時効析
出材料ともいう)に適用した場合には、その硬さのため
熱処理変形を十分に矯正することは困難であり、なお改
善の余地がある。
【0004】また、析出硬化型材料であると否とにかか
わらず、変形の矯正方向に対して非対称な断面形状を有
する例えば長手方向に2分割されたボールリターンチュ
ーブのような部材の場合は、その熱処理変形量が大きい
ためにその変形矯正法は未だ実用化されていない。
【0005】そこで、本願発明は、特に、固溶化熱処理
を行った後に析出硬化熱処理を必要とする材料からなる
被処理物に好適に適用できる熱処理変形矯正方法を提供
することを目的としている。また、本願発明の他の目的
は、変形の矯正方向に対して非対称な断面形状を有する
部材にも好適に適用できる熱処理変形矯正方法を提供す
ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明に係る鋼製部材の変形矯正方法は、二つの
温度調整タイプ金型の間で被矯正物を加圧して行う変形
矯正方法であって、鋼製部材の熱処理硬化の最終工程中
または当該工程の前後の少なくとも一つにおいて、所望
の熱処理パラメータ(θ)で温間プレス変形矯正するこ
とを特徴とする。
【0007】ここで、熱処理硬化の最終工程とは、熱処
理における「時効析出硬化」又は「焼戻し」処理工程を
いう。本発明の変形矯正方法によれば、例えばマルテン
サイト系またはセミオーステナイト系析出硬化型ステン
レス鋼のような時効析出材料からなる被矯正物の時効処
理中または時効処理前もしくは時効処理後に、所定の熱
処理パラメータ(θ)を満足する条件で熱処理変形を起
こした前記被矯正物を、弾性変形の範囲内で加圧する。
これにより、被矯正物は析出物の析出,母相の組織変
化、そして転位の移動により矯正型の形状に倣って矯正
される。
【0008】また、本発明の変形矯正方法によれば、被
矯正物が例えばボールネジのナットのボールリターンチ
ューブのような変形矯正方向に対して非対称な断面形状
を有する鋼製の部材においても、所定の熱処理パラメー
タ(θ)を満足する条件で熱処理変形を起こした前記被
矯正物を同様に弾性変形の範囲内で加圧することによ
り、矯正型の形状に倣って矯正することが可能になる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照して説明する。本発明に係る鋼製部材の変形矯正
方法の第1の実施形態として、例えば析出硬化型材料か
らなるスラストおよびラジアル軸受の軌道輪に対して適
用する場合を説明する。
【0010】一般に軸受軌道論は熱処理後に研磨を施さ
れるのであるが、最初に研磨するのは平面(端面)部で
ある。以後の研磨工程では、この平面研磨工程で加工さ
れた面を基準に加工されるため、平面研磨工程での加工
精度は厳しい。特に、真直度(2次元的には平面度)に
は厳しい精度が要求される。しかるに、前記平面研磨を
施す工程以前の熱処理で当該軸受軌道論が熱処理変形し
たままであると、熱処理後の軌道輪平面部の真直度が大
きくて所要の真直度に精度よく加工するのに時間がかか
ってしまう。したがって、析出硬化型の材料からなる軸
受軌道輪にあっても、その研磨工程へ真直度の小さな軸
受軌道輪を提供することは、研磨工程でのサイクルアッ
プが図れることから、軸受製造の生産性向上に格段の効
果が期待できるのである。
【0011】この第1の実施形態における被矯正物を構
成する析出硬化型の材料としては、例えば、セミオース
テナイト系析出硬化型ステンレス鋼がある。その化学組
成は、重量比でC:0.09%以下、Si:1.00%
以下、Mn:1.00%以下、P:0.040%以下、
S:0.030%以下、Ni:3.00〜7.75%、
Cr:15.00〜18.00%に加え、Cu:3.0
0〜5.00十Nb:0.15〜0.45%またはA
l:0.75〜1.50%である。この組成範囲の材料
として一般に広く使用されているものにSUS631
(JIS G 4305)がある。その典型的な熱処理
法の一つにTH1050と呼ばれる公知の熱処理方法が
ある。これは、1000〜1100℃で固溶化熱処理を
施した当該ステンレス鋼に、「760±15℃に90分
保持し、1時間以内に15℃以下に急冷」することを内
容とする調整処理、続いて「15℃以下に30分以上保
持」することを内容とする変態処理、その後の「565
±10℃に90分保持後空冷」することを内容とする時
効処理からなる析出硬化熱処理を施すものである。この
析出硬化熱処理では、調整処理でオーステナイト粒界に
Cr炭化物が析出することによりMs点が上昇するため
に、冷却時にマルテンサイト変態が生じ、調整処理に続
く変態処理によりマルテンサイト変態を完了させて、そ
の後の時効処理によりマルテンサイト基地にNi−Al
系化合物を時効析出させて硬化させる。
【0012】本発明の時効析出材料の変形矯正方法にあ
っては、前記析出硬化熱処理における硬化の最終工程
(時効析出硬化又は焼戻し)中、またはその前工程か後
工程のいずれか、もしくは前後両工程において、所望の
焼戻しパラメータ(θ)で温間プレス変形矯正を施すも
のであり、具体的には二つの温度調整型金型の間で被矯
正物(ワーク)Wを加圧してその熱処理変形を矯正す
る。ここで、矯正すべき変形量は図1に示すソリ量ωで
あり、次式(1)で表すことができる。
【0013】 ω=ZσS 2 /8EI ……(1) Z:ワークの断面係数 I:ワークの断面2次モーメント E:ワークの矯正温度における弾性係数 l:ワークの長さ σS :引張降伏応力 上式(1)は、真直度を持つワークWを弾性変形の範囲
内でプレスした際に、ワークWの真直度が0となる条件
を示している。なお、式中のσS /Eは材料固有の変形
矯正の難易度を表し、Zl2 /Iは形状に関する難易度
を表している。
【0014】いま、例えばワークWとして、SUS63
1製の平板であり、その寸法は70×15×1.4mm
である場合を例にとると、この材料のσS の値は時効処
理前102kgf/mm2 、時効処理後151kgf/
mm2 であるから、時効処理前において弾性範囲内で真
直度が0となる矯正量ωの値は3.9mmである。同様
に、時効処理後において弾性範囲内で真直度が0となる
矯正量ωの値は5.7mmである。
【0015】かくして、弾性域内にある変形量ωを矯正
することで、時効析出材料の被矯正物の変形を矯正して
その真直度や平行度を向上させることができる。図2
は、本発明に係る変形矯正方法における温間プレス変形
矯正用のプレス矯正装置の一例を示したものである。
【0016】このプレス矯正装置は、主に、プレス台1
a、シリンダ1b,レバー1c,リリーフバルブ1dを
備えたプレス装置1と、断熱材2,ヒーター3,プレス
治具4A,4Bから構成される。プレス治具4A,4B
は、本発明の時効析出材料の変形矯正方法にあっては、
前記析出硬化熱処理における硬化の最終工程(時効析出
硬化又は焼戻し)中、またはその前工程か後工程のいず
れか、もしくは前後両工程において、所望の焼戻しパラ
メータ(θ)で温間プレス変形矯正を施すものであり、
具体的には二つの温度調整型金型の間で被矯正物(ワー
ク)Wを加圧してその熱処理変形を矯正する。温度調整
型金型はヒーターなどの加熱手段により、プレスする前
に所定の温度に温められている。図2に示す如く電熱ヒ
ーター3によりプレス治具を加熱する場合には、治具温
度の調節を行う温調計5A,5Bが必要となる。プレス
治具4A,4Bを所定の温度に加熱し、矯正(プレス)
している間中その温度を保持し続ける必要があるが、そ
の方法としては、プレス装置1以外の部分を温度を一定
に保たれたオイルなどの流体に浸没する方法をとっても
良い。断熱材2は、プレス台1aとプレス治具4Aまた
はベース6とプレス治具4Bとの間に挟まれた状態で圧
力がかけられるため、耐圧縮性に優れている必要があ
る。例えば、ガラス繊維とセメント系,りん酸系または
酸化亜鉛系の結合材との複合材料があげられる。また、
プレス治具4A,4Bは高温で使用されるため、高温に
おける硬さが比較的大きな素材から作られることが望ま
しく、例えば、SKD5やSKD61などの熱間工具鋼
や、Al2 3 ,ZrO,SiCおよびSi3 4 など
からなるセラミックスがあげられる。プレス台1a,断
然材2,プレス治具4Aは互いに固定されて一体となっ
ている。
【0017】次に、図2のプレス矯正装置による時効析
出材料の変形矯正方法を説明する。プレス治具4Aおよ
びプレス治具4Bは所定の温度に加熱・保持され、両プ
レス治具4A,4Bが同じ温度となるように制御され
る。充分に均熱したプレス治具4Bの上に熱処理変形量
(真直度またはソリ量)ωを有するワ一クWを置く。そ
の後、プレス装置1のレバー1cを操作してシリンダ1
bを伸長させ、プレス台1aを下降させる。プレス台1
aの下方に付属しているプレス治具4AはワークWに接
触し、更に圧力をかけると、ワークWはプレス治具4A
とプレス治具4Bにより挟まれて加圧される結果、ワー
クWの真直度はほぼ0となる。この状態でワークWは両
プレス治具4A,4Bからの伝熱により加熱され、一定
時間後にワークWの温度は両プレス治具4A,4Bの温
度に等しくなる。更にこの状態で所定の時間保持するこ
とにより、ワークWの真直度は小さくなり変形が矯正さ
れる。なお、この保持温度および保持時間を通常行われ
ている時効処理温度および時間に合致させれば、変形を
矯正すると同時に時効処理を終えることが出来る。
【0018】図3に、本発明に係る変形矯正方法を従来
の熱処理工程に適用した場合の例を模式的に示す。同図
(a)は従来の析出硬化型熱処理の工程であり、図外の
固溶化熱処理後に、例えば760±15℃に加熱して9
0分間保持し1時間以内に15℃以下に急冷する「調整
処理」を施し、その15℃以下の温度に30分保持する
「変態処理」を経て、565±10℃に90分保持後空
冷する「時効処理」を施している。「調整処理」でオー
ステナイト粒界にCr炭化物が析出してMs点が上昇す
るため冷却時にマルテンサイト変態が生じ、調整処理に
続く変態処理によりマルテンサイト変態を完了させ、そ
の後「時効処理」によりマルテンサイト基地にNi−A
l系化合物を時効析出させて硬化させる。
【0019】同図(b)〜(d)は本発明に係る変形矯
正方法を加えた場合であり、(b)は前記「調整処理」
と「時効処理」との間(すなわち「時効処理」工程の直
前)において、変形矯正処理を施している場合である。
(c)は前記「時効処理」工程の直後において、変形矯
正処理を施している。また、(d)は前記「時効処理」
工程中に同時に変形矯正処理を施している。図4は、図
3(b)で示した「時効処理」工程の直前に変形矯正処
理を行うパターンにより矯正した結果をグラフに示した
ものである。縦軸はワークの矯正された程度を示すパラ
メータとしての矯正率で、次式(2)により定義され
る。
【0020】 横軸は温間プレスする温度と時間から求められる熱処理
パラメータθであり、次の式(3)により定義される。
【0021】 θ= T ×ln(t) ……(3) T:プレス治具温度〔℃〕 t:プレス時間〔sec〕 図4において、θ≒3000をしきい値(閾値)とし
て、θ<3000で矯正率の低い領域(下部棚領域)が
存在し、θ>3000で矯正率の高い領域(上部棚領
域)が存在する。したがって、時効処理前での矯正にお
いては、矯正の効果を得るためには熱処理パラメータθ
が3000以上となる条件で処理する必要がある。
【0022】図5は、図3(c)で示した「時効処理」
工程の直後に変形矯正処理を行うパターンにより矯正し
た結果をグラフに示したものである。縦軸及び横軸は図
4と同様である。図5においても、図4と同様、θ≒3
000をしきい値として、θ<3000で下部棚領域が
存在し、θ>3000で上部棚領域が存在する。したが
って、時効処理後での矯正においても、矯正の効果を得
るためには熱処理パラメータθが3000以上となる条
件で処理する必要がある。
【0023】上部棚領域の矯正率が、図5(時効処理後
に矯正)に比べ図4(時効処理前に矯正)の方が約20
%大きいため、時効処理前に矯正することがより望まし
い。上記第1の実施形態で説明したように、本発明の変
形矯正方法は、SUS631の如く析出処理過程におい
て所定の処理温度で硬さにピークを示すような析出型材
料(例えば,超硬合金鋼,高速度鋼,金型用鋼,M5
0)であれば適用可能である。そして、所定の温度に温
められたプレス治具で板状のワークを一定時間プレスす
ることによって、ワークに弾性変形と適当な熱量とを与
えた結果、ワークの真直度が小さくなり、精度の良い製
品を提供できるという効果を奏する。
【0024】続いて、本発明の第2の実施形態について
説明する。これは、析出硬化型鋼製部材の変形矯正方法
を、矯正方向に対して非対称な断面形状を有する部品の
変形矯正に適用したものである。具体的には、図6に示
すようなチューブ循環方式のボールネジ100のナット
101に付属するボールリターンチューブ102、特に
析出硬化型材料からなるボールリターンチューブの製造
に適用した例である。
【0025】高速用ボールネジ100のボールリターン
チューブ(以下、ボールチューブという)102は、ボ
ール103がボールチューブ102内を高速で通過しつ
つタング104に激しく衝突する。そこで、チューブ材
としては、通常のボールチューブに用いられる低炭素鋼
やオーステナイト型ステンレス鋼よりも強度があり且つ
入手が容易な析出硬化型ステンレス鋼(SUS631)
を用いた。そして、図7に示すように、ボールチューブ
を長手方向に2分割した対称形の部品(以下、プレスチ
ューブと称する)102A及び102Bを平板からの打
ち抜きとプレスにより成形し、その2個のプレスチュー
ブ102A及び102Bを組み合わせて1個のボールチ
ューブ102を製造する。
【0026】先ず、析出硬化型ステンレス鋼SUS63
1の平板から所定の形状・寸法に打ち抜き、プレスチュ
ーブ材を得る。これをプレス成形して図7(b),
(c)に示すようなプレスチューブ102A(及び10
2B)を製造し、熱処理を施す。得られた2個のプレス
チューブ102A及び102Bを組み合わせて1個のボ
ールチューブ102を製造する。図6(b)のような非
分割のボールチューブ102の場合は、材料チューブの
切断→ベンディング→手直し→端部(タング104)成
型→熱処理といった工程を必要とし、多くの労力を要し
たのに対し、この2分割タイプの工程は極めて単純化さ
れており、機械化も容易でコストも低減できる。
【0027】しかし、プレス成形後の熱処理でプレスチ
ューブ102A及び102Bに熱処理変形が生じ、真直
度が大きくなってしまう。熱処理変形を生じたプレスチ
ューブ102A及び102Bを組み合わせてもナットに
組み込むことができないし、強引に組み込めたとしても
すぐに分解してしまい実用にはならない。そこで、熱処
理変形を生じたプレスチューブ102A及び102Bに
対し、析出硬化熱処理と組み合わせて本発明の変形矯正
熱処理を施す。
【0028】その熱処理方法は、前記第1の実施形態の
場合と同様である。すなわち、プレスチューブ102A
及び102Bに対し、析出硬化型ステンレス鋼(SUS
631)の典型的な熱処理法であるTH1050に基づ
き析出硬化熱処理を施す。そして、その析出硬化熱処理
における硬化の最終工程である時効処理中に、またはそ
の前工程か後工程のいずれかもしくは前後両工程におい
て、所望の熱処理パラメータ(θ)で、図2に示したプ
レス矯正装置を使用して、温度400〜700℃で0.
5〜120分間の範囲で温間プレス変形矯正処理を施す
ものである。この第2実施形態における熱処理工程のパ
ターンは、図3に示した第1実施形態の熱処理工程パタ
ーンと同様であり、詳細な説明は省く。
【0029】図8に、「時効処理」工程の直前に変形矯
正処理を行うパターンにより矯正した結果を示した。こ
のグラフでは、θ≒2000をしきい値(閾値)とし
て、θ<2000で矯正率の低い領域(下部棚領域)が
存在し、θ>2000で矯正率の高い領域(上部棚領
域)が存在する。したがって、時効処理前での矯正にお
いては、矯正の効果を得るためには熱処理パラメータθ
が2000以上となる条件で処理する必要がある。
【0030】図9は、「時効処理」工程の直後に変形矯
正処理を行うパターンにより矯正した結果を示してい
る。この場合においても、θ≒2000をしきい値とし
て、θ<2000で下部棚領域が存在し、θ>2000
で上部棚領域が存在する。したがって、時効処理後での
矯正においても、矯正の効果を得るためには熱処理パラ
メータθが2000以上となる条件で処理する必要があ
る。
【0031】上部棚領域の矯正率が、図9(時効処理後
に矯正)に比べ図8(時効処理前に矯正)の方が約20
%大きいため、時効処理前に矯正することがより望まし
いといえる。
【0032】なお、本実施形態におけるプレスチューブ
材に使用される材料は、SUS631に限られず、二次
析出を起こして硬化するものであれば適用可能である。
更に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0033】この実施形態は、被矯正物が析出硬化型鋼
ではなくて炭素鋼を材料として用いたプレスチューブの
場合である。すなわち、冷間圧延鋼板(JIS G 3
141-1990 )やみがき特殊帯鋼(JIS G 331
-1988 )は、入手が容易であってSUS631よりも
安価であり、且つ焼きなまし後の硬さが200〔Hv〕
前後であって打抜きやプレス等の塑性加工が可能であ
り、焼入れ,浸炭または浸炭窒化などの熱処理を施すこ
とによって、時効析出後のSUS631と同等以上の表
面硬さを得ることができる。しかし、熱処理を施すこと
によって、ワークに熱処理変形が生じ、真直度が大きく
なるという不具合があった。そこで、冷間圧延鋼板およ
びみがき特殊帯鋼を塑性加工することにより製作したプ
レスチューブに熱処理を施すと共に、そのプレスチュー
ブに本発明に係る変形矯正方法を適用したところ、熱処
理変形を矯正できた。かくして、冷間圧延鋼板およびみ
がき特殊帯鋼を高速用ボールネジのプレスチューブへ適
用することが可能となった。
【0034】この実施形態では、プレスチューブ材とし
て、SPCCおよびSK5を用いた場合を説明する。ワ
ークであるプレスチューブの形状は前記第2実施形態と
同様である。また、変形矯正装置も第2実施形態の場合
と同じである。
【0035】図10に、熱処理と変形矯正の工程をあわ
せて示す。ここで実施した浸炭焼入れは、吸熱型ガス
(以下「RXガス」という)とエンリッチガス(増炭ガ
ス)の雰囲気中において840〜930℃の温度で30
〜120分保持した後に油焼入れし、表面炭素濃度が
0.6wt%以上で表面硬さが64HRC以上となるも
のである。なお、図10(a)〜(c)に示す〔条件
1〕〜〔条件3〕の浸炭焼入れの代わりに、RXガス,
エンリッチガス(増炭ガス)およびアンモニア5%雰囲
気中において840〜870℃の温度で30〜120分
保持した後に油焼入れする浸炭窒化焼入れを用いてもよ
い。
【0036】〔条件1〕は、浸炭焼入れを施した後に、
焼戻し処理及び変形矯正処理を同時に行なうものであ
る。通常、浸炭焼入れ後の焼戻しは120分程度行われ
ている。本実施形態において長時間にわたりワークをプ
レスし続ける方法は非効率的であるが、搬送の困難な大
型のワークに対して特に有効な矯正方法である。これに
対し、焼戻し十変形矯正処理温度を通常の焼戻し温度
(約170℃)よりも高温にすれば、通常の焼戻し時間
(約2時間)よりも短時間で焼戻しと変形矯正を終える
ことができる。この方法は、小型のワークの大量生産に
特に有効な変形矯正方法である。矯正処理条件(熱処理
パラメータθ)については後述する。
【0037】〔条件2〕は、浸炭焼入れを施した後、変
形矯正処理をしてから焼戻し処理を行なうパターンであ
る。変形矯正処理の要領は〔条件1〕の場合と同様であ
る。変形矯正によるワークの硬さの低下する程度は、矯
正処理条件(温度や時間)によって異なるが、いずれの
条件においても矯正処理後に充分な焼戻しを行なうこと
で、最終的な硬さを調整できる。焼戻し処理の温度と時
間は、変形矯正処理後のワークの硬さと最終的に目標と
するワークの硬さに応じて決定する。
【0038】〔条件3〕は、浸炭焼入れを施した後、焼
戻し処理をしてその後に変形矯正処理を行なうパターン
である。この手法は、工程上の問題により浸炭焼入れと
焼戻しとの間で変形矯正処理を行なえない場合に、特に
有効である。ただし、変形矯正処理の温度と時間によっ
てワークの最終品質(硬さ)が決まるので、変形矯正処
理条件を厳密に制御・管理する必要がある。
【0039】〔条件4〕は、焼入れを施した後に、焼戻
し処理と同時に変形矯正処理を行なうものである。場合
によっては変形矯正処理前後に焼戻しを加えてもよい。
SPCC製プレスチューブを〔条件1〕により熱処理お
よび変形矯正した結果を図11に示す。変形矯正処理温
度および時間は170〜600℃および3〜7200s
ecである。実験の結果、熱処理後のSPCC製ワーク
の真直度は最大で0.25mmであることがわかった。
ボールリターンチューブとしてボールネジのナットに組
み込むためには、真直度は0.1mm以下でなければな
らない。すなわち、変形矯正に対する要求品質は矯正率
60%以上である。この要求品質を満足する熱処理パラ
メータθは、図11においてθ≧448である。したが
って、SPCC製プレスチューブの変形矯正は、熱処理
パラメータθ≧448で実施されることが望ましい。も
し、θ≧448となるあるθで変形矯正処理したワーク
の硬さが所望の値よりも大きい場合には、より大きなθ
となる温度と時間で〔条件2〕の如く焼戻しを行なえば
よい。この場合の焼戻しの時間は60〜120minと
する。
【0040】また、SK5製プレスチューブを〔条件
4〕により熱処理および変形矯正した結果を、前記SP
CCの結果にあわせて図11に示す。変形矯正処理温度
および時間は160〜600℃および3〜7200se
cである。上記SPCCの実施例同様、変形矯正に対す
る要求品質は矯正率60%以上であり、これを満足する
熱処理パラメータはθ≧448である。したがって、S
K5製プレスチュ一ブにおいても、変形矯正は熱処理パ
ラメータθ≧448で実施されることが望ましい。
【0041】なお、本実施形態ではSPCCとSK5を
用いたが、板材でプレス加工が可能であり、焼入れ,浸
炭または浸炭窒化により硬化させることが出来る材料で
あれば適用できる。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1に係る鋼
製部材の変形矯正方法によれば、熱処理時に発生する被
処理物の変形を自在に矯正して、精度のよい製品を提供
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】被矯正物の変形量を説明する模式図である。
【図2】本発明方法に使用する温間プレス変形矯正装置
の模式図である。
【図3】熱処理および矯正処理工程の各種パターンを示
す図である。
【図4】時効処理前に本発明の矯正処理を行なった場合
の矯正率と熱処理パラメータθとの関係を表したグラフ
である。
【図5】時効処理後に本発明の矯正処理を行なった場合
の矯正率と熱処理パラメータθとの関係を表したグラフ
である。
【図6】(a)はボールネジの要部断面図、(b)はそ
のボールチューブの斜視図である。
【図7】(a)は本発明方法を適用するボールチューブ
の斜視図、(b)はその2分割部材の平面図、(c)は
側面図である。
【図8】第2の実施形態において、時効処理前に本発明
の矯正処理を行なった場合の矯正率と熱処理パラメータ
θとの関係を表したグラフである。
【図9】第2の実施形態において、時効処理後に本発明
の矯正処理を行なった場合の矯正率と熱処理パラメータ
θとの関係を表したグラフである。
【図10】第3の実施形態における、熱処理および矯正
処理工程の各種パターンを示す図である。
【図11】第3の実施形態において、焼戻しと本発明の
矯正処理を同時に行なった場合の矯正率と熱処理パラメ
ータθとの関係を表したグラフである。
フロントページの続き (72)発明者 鈴木 信一 群馬県前橋市鳥羽町78番地 日本精工株式 会社内 (72)発明者 田中 伸欣 群馬県前橋市鳥羽町78番地 日本精工株式 会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 二つの温度調整タイプ金型の間で被矯正
    物を加圧して行う変形矯正方法であって、鋼製部材の熱
    処理硬化の最終工程中または当該工程の前後の少なくと
    も一つにおいて、所望の熱処理パラメータ(θ)で温間
    プレス変形矯正することを特徴とする鋼製部材の変形矯
    正方法。
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