JP2000015379A - 高炭素鋼の鍛造方法 - Google Patents
高炭素鋼の鍛造方法Info
- Publication number
- JP2000015379A JP2000015379A JP10187120A JP18712098A JP2000015379A JP 2000015379 A JP2000015379 A JP 2000015379A JP 10187120 A JP10187120 A JP 10187120A JP 18712098 A JP18712098 A JP 18712098A JP 2000015379 A JP2000015379 A JP 2000015379A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- forging
- forged
- warm
- temperature
- carbon steel
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Control Of Heat Treatment Processes (AREA)
- Forging (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【課題】 複雑な形状を有する部品であっても簡単に製
造することができ、かつ生産性が高く、しかも脱炭層の
生成に起因する耐摩耗性の低下、工程の複雑化及び材料
歩留の低下を生ずることのない高炭素鋼の鍛造方法を提
供すること。 【解決手段】 冷間ダイス鋼、高速度工具鋼等の高炭素
鋼からなる被鍛造材をオーステナイト領域で加熱した
後、Ar1点以下の温度まで15℃/hr以下の冷却速
度で徐冷する軟化焼鈍工程と、該軟化焼鈍工程により軟
化された前記被鍛造材を200℃以上600℃以下の温
度で温間鍛造する第1温間鍛造工程と、該第1温間鍛造
工程により温間鍛造された前記被鍛造材を750℃以上
850℃以下の温度で加熱する歪取焼鈍工程と、該歪取
焼鈍工程により焼鈍された前記被鍛造材をさらに200
℃以上600℃以下の温度で温間鍛造する第2温間鍛造
工程とを備えるようにした。
造することができ、かつ生産性が高く、しかも脱炭層の
生成に起因する耐摩耗性の低下、工程の複雑化及び材料
歩留の低下を生ずることのない高炭素鋼の鍛造方法を提
供すること。 【解決手段】 冷間ダイス鋼、高速度工具鋼等の高炭素
鋼からなる被鍛造材をオーステナイト領域で加熱した
後、Ar1点以下の温度まで15℃/hr以下の冷却速
度で徐冷する軟化焼鈍工程と、該軟化焼鈍工程により軟
化された前記被鍛造材を200℃以上600℃以下の温
度で温間鍛造する第1温間鍛造工程と、該第1温間鍛造
工程により温間鍛造された前記被鍛造材を750℃以上
850℃以下の温度で加熱する歪取焼鈍工程と、該歪取
焼鈍工程により焼鈍された前記被鍛造材をさらに200
℃以上600℃以下の温度で温間鍛造する第2温間鍛造
工程とを備えるようにした。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高炭素鋼の鍛造方
法に関し、さらに詳しくは、冷間ダイス、切削工具、バ
ルブリフタ、自動車用ポンプ部品等、硬度及び耐摩耗性
に優れた機械構造用部品の製造方法として好適な、高炭
素鋼の鍛造方法に関するものである。
法に関し、さらに詳しくは、冷間ダイス、切削工具、バ
ルブリフタ、自動車用ポンプ部品等、硬度及び耐摩耗性
に優れた機械構造用部品の製造方法として好適な、高炭
素鋼の鍛造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、冷間ダイスや切削工具等、高
い硬度及び耐摩耗性が要求される機械構造用部品につい
ては、炭素含有量を高めると共に、各種の合金元素を添
加し、母相内部に炭化物を分散させることにより硬度及
び耐摩耗性を高めた高炭素鋼が用いられている。
い硬度及び耐摩耗性が要求される機械構造用部品につい
ては、炭素含有量を高めると共に、各種の合金元素を添
加し、母相内部に炭化物を分散させることにより硬度及
び耐摩耗性を高めた高炭素鋼が用いられている。
【0003】例えば、冷間ダイス鋼は、高硬度のCr7
C3を多量に析出分散させることにより耐摩耗性を高め
た12〜15%Crを含む高炭素鋼であり、常温付近で
プラスチックや金属を成型するためのダイス材等に賞用
されている。また、高速度工具鋼は、W、Mo、Cr、
V等を含み、微細炭化物を析出させることにより耐摩耗
性を高めた高炭素鋼であり、高速重切削用の工具材料等
に賞用されている。
C3を多量に析出分散させることにより耐摩耗性を高め
た12〜15%Crを含む高炭素鋼であり、常温付近で
プラスチックや金属を成型するためのダイス材等に賞用
されている。また、高速度工具鋼は、W、Mo、Cr、
V等を含み、微細炭化物を析出させることにより耐摩耗
性を高めた高炭素鋼であり、高速重切削用の工具材料等
に賞用されている。
【0004】ところで、このような高炭素鋼は、硬度が
高いために耐摩耗性に優れている反面、塑性加工が困難
であるために、複雑な形状を有する部品については、も
っぱら機械加工により製造されていた。そのため、高炭
素鋼からなる機械構造用部品は、工具費が高く、加工能
率が低く、さらに材料歩留が低いために、大幅なコスト
アップを招くという問題があった。
高いために耐摩耗性に優れている反面、塑性加工が困難
であるために、複雑な形状を有する部品については、も
っぱら機械加工により製造されていた。そのため、高炭
素鋼からなる機械構造用部品は、工具費が高く、加工能
率が低く、さらに材料歩留が低いために、大幅なコスト
アップを招くという問題があった。
【0005】そこで、本願出願人は、特願平8−298
166号において、高炭素鋼を1050℃で2時間保持
した後、650℃まで15℃/hrの冷却速度で炉冷す
ることにより高炭素鋼を軟化焼鈍し、次いで、400℃
近傍で温間鍛造することにより高炭素鋼からなるバルブ
リフタを製造するバルブリフタの製造方法について提案
している。
166号において、高炭素鋼を1050℃で2時間保持
した後、650℃まで15℃/hrの冷却速度で炉冷す
ることにより高炭素鋼を軟化焼鈍し、次いで、400℃
近傍で温間鍛造することにより高炭素鋼からなるバルブ
リフタを製造するバルブリフタの製造方法について提案
している。
【0006】特願平8−298166号において提案さ
れた方法によれば、軟化焼鈍を行うことにより高炭素鋼
の硬度を下げると共に、温間で鍛造を行うようにしたの
で、鍛造時における高炭素鋼の変形抵抗を小さくするこ
とができる。そのため、耐摩耗性及び強度の優れたバル
ブリフタを簡略化された工程で製造することができ、機
械加工によりバルブリフタを製作した場合に比べて、製
造コストを約6割に削減することができるというもので
ある。
れた方法によれば、軟化焼鈍を行うことにより高炭素鋼
の硬度を下げると共に、温間で鍛造を行うようにしたの
で、鍛造時における高炭素鋼の変形抵抗を小さくするこ
とができる。そのため、耐摩耗性及び強度の優れたバル
ブリフタを簡略化された工程で製造することができ、機
械加工によりバルブリフタを製作した場合に比べて、製
造コストを約6割に削減することができるというもので
ある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特願平
8−298166号において提案された方法は、バルブ
リフタのような比較的鍛錬成形比の小さな部品について
は、高い生産性で鍛造することが可能であるが、例え
ば、長穴部品のように鍛錬成形比の大きな部品について
は、加工が進むにつれて被鍛造材の加工硬化が著しくな
り、被鍛造材に亀裂が生じて鍛造が困難となったり、あ
るいは鍛造可能な場合であっても鍛造型の摩耗が著し
く、製造コストが高くなるという問題があった。
8−298166号において提案された方法は、バルブ
リフタのような比較的鍛錬成形比の小さな部品について
は、高い生産性で鍛造することが可能であるが、例え
ば、長穴部品のように鍛錬成形比の大きな部品について
は、加工が進むにつれて被鍛造材の加工硬化が著しくな
り、被鍛造材に亀裂が生じて鍛造が困難となったり、あ
るいは鍛造可能な場合であっても鍛造型の摩耗が著し
く、製造コストが高くなるという問題があった。
【0008】一方、この問題を解決するために、軟化焼
鈍工程と温間鍛造工程とを繰り返し行う方法も考えられ
る。しかしながら、高炭素鋼を軟化焼鈍するためには、
オーステナイト領域からAr1点以下の温度までを徐冷
する必要があるので、軟化焼鈍工程を繰り返し行うの
は、生産性の低下を招くという問題がある。
鈍工程と温間鍛造工程とを繰り返し行う方法も考えられ
る。しかしながら、高炭素鋼を軟化焼鈍するためには、
オーステナイト領域からAr1点以下の温度までを徐冷
する必要があるので、軟化焼鈍工程を繰り返し行うの
は、生産性の低下を招くという問題がある。
【0009】また、被鍛造材の形状が最終製品に近づい
た段階で軟化焼鈍を行うと、焼鈍温度が高温であるため
に、表面に脱炭層が形成され、耐摩耗性が低下する場合
がある。これを避けるためには、軟化焼鈍の際に厳密な
雰囲気制御を行うか、あるいは脱炭層を見込んで最終製
品よりやや大きめに鍛造し、機械加工により脱炭層を除
去する必要があり、工程が複雑となったり、材料歩留が
低下するという問題がある。
た段階で軟化焼鈍を行うと、焼鈍温度が高温であるため
に、表面に脱炭層が形成され、耐摩耗性が低下する場合
がある。これを避けるためには、軟化焼鈍の際に厳密な
雰囲気制御を行うか、あるいは脱炭層を見込んで最終製
品よりやや大きめに鍛造し、機械加工により脱炭層を除
去する必要があり、工程が複雑となったり、材料歩留が
低下するという問題がある。
【0010】本発明が解決しようとする課題は、複雑な
形状を有する部品であっても簡単に製造することがで
き、かつ生産性が高く、しかも脱炭層の生成に起因する
耐摩耗性の低下、工程の複雑化及び材料歩留の低下を生
ずることのない高炭素鋼の鍛造方法を提供することにあ
る。
形状を有する部品であっても簡単に製造することがで
き、かつ生産性が高く、しかも脱炭層の生成に起因する
耐摩耗性の低下、工程の複雑化及び材料歩留の低下を生
ずることのない高炭素鋼の鍛造方法を提供することにあ
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明に係る高炭素鋼の鍛造方法は、高炭素鋼から
なる被鍛造材をオーステナイト領域で加熱し、Ar1点
以下の温度まで徐冷する軟化焼鈍工程と、該軟化焼鈍工
程により軟化された前記被鍛造材を温間鍛造する第1温
間鍛造工程と、該第1温間鍛造工程により温間鍛造され
た前記被鍛造材を750℃以上850℃以下の温度で加
熱する歪取焼鈍工程と、該歪取焼鈍工程により焼鈍され
た前記被鍛造材をさらに温間鍛造する第2温間鍛造工程
とを備えていることを要旨とするものである。
に、本発明に係る高炭素鋼の鍛造方法は、高炭素鋼から
なる被鍛造材をオーステナイト領域で加熱し、Ar1点
以下の温度まで徐冷する軟化焼鈍工程と、該軟化焼鈍工
程により軟化された前記被鍛造材を温間鍛造する第1温
間鍛造工程と、該第1温間鍛造工程により温間鍛造され
た前記被鍛造材を750℃以上850℃以下の温度で加
熱する歪取焼鈍工程と、該歪取焼鈍工程により焼鈍され
た前記被鍛造材をさらに温間鍛造する第2温間鍛造工程
とを備えていることを要旨とするものである。
【0012】ここで、本発明に係る鍛造方法は、炭素含
有量の高いあらゆる鋼種を被鍛造材として用いることが
できるが、高価な合金元素を多量に含む冷間ダイス鋼又
は高速度工具鋼を被鍛造材として用いると、材料歩留が
向上し、製造コストを削減できるので、特に効果的であ
る。
有量の高いあらゆる鋼種を被鍛造材として用いることが
できるが、高価な合金元素を多量に含む冷間ダイス鋼又
は高速度工具鋼を被鍛造材として用いると、材料歩留が
向上し、製造コストを削減できるので、特に効果的であ
る。
【0013】前記軟化焼鈍工程は、被鍛造材の組織がオ
ーステナイト単相となる温度で保持し、Ar1点以下の
温度までを徐冷する必要がある。この温度区間の冷却速
度が速すぎると、冷却過程においてマルテンサイトが生
じ、被鍛造材の硬度が高くなるためである。冷却速度
は、具体的には15℃/hr以下が特に好適である。
ーステナイト単相となる温度で保持し、Ar1点以下の
温度までを徐冷する必要がある。この温度区間の冷却速
度が速すぎると、冷却過程においてマルテンサイトが生
じ、被鍛造材の硬度が高くなるためである。冷却速度
は、具体的には15℃/hr以下が特に好適である。
【0014】歪取焼鈍工程における加熱温度は、750
℃以上850℃以下とする必要がある。加熱温度が75
0℃未満では、前記第1温間鍛造工程で生じた加工歪を
効率的に除去することができない。また、加熱温度が8
50℃を超えると、粒成長により被鍛造材の機械的性質
が劣化するので好ましくない。
℃以上850℃以下とする必要がある。加熱温度が75
0℃未満では、前記第1温間鍛造工程で生じた加工歪を
効率的に除去することができない。また、加熱温度が8
50℃を超えると、粒成長により被鍛造材の機械的性質
が劣化するので好ましくない。
【0015】さらに、前記第1温間鍛造工程における鍛
造温度は、200℃以上600℃以下が望ましい。鍛造
温度が200℃未満では、変形抵抗が過大になり、鍛造
型の寿命が低下する。また、鍛造温度が600℃を超え
ると、被鍛造材の流動性が過大となり、かえってパンチ
面圧が増加するので、鍛造型の寿命が低下する。前記第
2温間鍛造工程も同様の理由から、鍛造温度は、200
℃以上600℃以下とすることが望ましい。
造温度は、200℃以上600℃以下が望ましい。鍛造
温度が200℃未満では、変形抵抗が過大になり、鍛造
型の寿命が低下する。また、鍛造温度が600℃を超え
ると、被鍛造材の流動性が過大となり、かえってパンチ
面圧が増加するので、鍛造型の寿命が低下する。前記第
2温間鍛造工程も同様の理由から、鍛造温度は、200
℃以上600℃以下とすることが望ましい。
【0016】上記構成を有する本発明に係る高炭素鋼の
鍛造方法によれば、温間鍛造が2段階に分けて行われる
ので、各温間鍛造工程当たりの鍛錬成形比を小さくする
ことができる。また、軟化焼鈍工程において被鍛造材全
体を軟化処理した後に1段階目の温間鍛造が行われ、2
段階目の温間鍛造の前に加工歪を取り除くための歪取焼
鈍が行われるので、温間鍛造時の変形抵抗を小さくする
ことができる。そのため、形状が複雑な場合であって
も、健全な鍛造品を得ることが可能となる。
鍛造方法によれば、温間鍛造が2段階に分けて行われる
ので、各温間鍛造工程当たりの鍛錬成形比を小さくする
ことができる。また、軟化焼鈍工程において被鍛造材全
体を軟化処理した後に1段階目の温間鍛造が行われ、2
段階目の温間鍛造の前に加工歪を取り除くための歪取焼
鈍が行われるので、温間鍛造時の変形抵抗を小さくする
ことができる。そのため、形状が複雑な場合であって
も、健全な鍛造品を得ることが可能となる。
【0017】さらに、高炭素鋼からなる被鍛造材全体を
一旦軟化処理すると、鍛造時に導入された加工歪は、軟
化焼鈍に比して低温で焼鈍した場合であっても十分に除
去される。そのため、歪取焼鈍工程における焼鈍温度を
下げることができ、処理時間を短縮することができる。
また、低温で歪取焼鈍が行われることにより脱炭層の生
成も抑制されるので、耐摩耗性及び強度に優れた高炭素
鋼からなる鍛造品を安価に製造することが可能となる。
一旦軟化処理すると、鍛造時に導入された加工歪は、軟
化焼鈍に比して低温で焼鈍した場合であっても十分に除
去される。そのため、歪取焼鈍工程における焼鈍温度を
下げることができ、処理時間を短縮することができる。
また、低温で歪取焼鈍が行われることにより脱炭層の生
成も抑制されるので、耐摩耗性及び強度に優れた高炭素
鋼からなる鍛造品を安価に製造することが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の一実施の形態に
ついて図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本
発明に係る高炭素鋼の鍛造方法の一例を示したものであ
る。まず、軟化焼鈍工程においては、所定の形状を有す
る高炭素鋼からなる被鍛造材をオーステナイト領域で加
熱し、Ar1点以下の温度まで徐冷することが行われ
る。
ついて図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本
発明に係る高炭素鋼の鍛造方法の一例を示したものであ
る。まず、軟化焼鈍工程においては、所定の形状を有す
る高炭素鋼からなる被鍛造材をオーステナイト領域で加
熱し、Ar1点以下の温度まで徐冷することが行われ
る。
【0019】ここで、被鍛造材としては、炭素含有量の
高いあらゆる鋼種を用いることができるが、高価な合金
元素を多量に含む冷間ダイス鋼及び高速度工具鋼が特に
好適である。これらの鋼種は、硬度が高いために従来は
機械加工で対応していたが、本発明を適用することによ
り、工具費が不要になると共に、材料歩留が向上するの
で、製造コストを大幅に削減することができる。
高いあらゆる鋼種を用いることができるが、高価な合金
元素を多量に含む冷間ダイス鋼及び高速度工具鋼が特に
好適である。これらの鋼種は、硬度が高いために従来は
機械加工で対応していたが、本発明を適用することによ
り、工具費が不要になると共に、材料歩留が向上するの
で、製造コストを大幅に削減することができる。
【0020】具体的には、11〜15%のCrを含有す
るSKD11、1、2等の冷間ダイス鋼、あるいは、3
〜6%のCr及びMo並びに5〜11%のWを含むSK
H51、52、53等の高速度工具鋼が好適な一例とし
て上げられる。
るSKD11、1、2等の冷間ダイス鋼、あるいは、3
〜6%のCr及びMo並びに5〜11%のWを含むSK
H51、52、53等の高速度工具鋼が好適な一例とし
て上げられる。
【0021】軟化焼鈍工程において、被鍛造材をオース
テナイト領域で加熱するのは、被鍛造材中のマルテンサ
イトを消失させ、被鍛造材全体を軟化させるためであ
る。また、Ar1点以下の温度まで徐冷するのは、この
温度区間を急冷すると冷却中にマルテンサイトが生成
し、被鍛造材の硬度が高くなるためである。被鍛造材の
軟化のためには、冷却速度は遅い程良く、特に15℃/
hr以下が好ましい。
テナイト領域で加熱するのは、被鍛造材中のマルテンサ
イトを消失させ、被鍛造材全体を軟化させるためであ
る。また、Ar1点以下の温度まで徐冷するのは、この
温度区間を急冷すると冷却中にマルテンサイトが生成
し、被鍛造材の硬度が高くなるためである。被鍛造材の
軟化のためには、冷却速度は遅い程良く、特に15℃/
hr以下が好ましい。
【0022】なお、保持時間は、被鍛造材全体がオース
テナイト単相になればよいので、被鍛造材の大きさに応
じて最適な保持時間を選択すればよい。例えば、直径3
0cm程度の丸棒の場合には、2時間程度保持すれば十
分である。
テナイト単相になればよいので、被鍛造材の大きさに応
じて最適な保持時間を選択すればよい。例えば、直径3
0cm程度の丸棒の場合には、2時間程度保持すれば十
分である。
【0023】図2に、軟化焼鈍工程の温度パターンの一
例を示す。図2の場合、1050℃で2時間保持した
後、650℃までを15℃/hrで炉冷し、650℃以
下を空冷しているので、総処理時間は、約30時間であ
る。被鍛造材としてSKD11からなる直径30mmの
丸棒を用いた場合、このような軟化焼鈍により、SKD
11の硬度を98HRBから92HRBに下げることが
できる。
例を示す。図2の場合、1050℃で2時間保持した
後、650℃までを15℃/hrで炉冷し、650℃以
下を空冷しているので、総処理時間は、約30時間であ
る。被鍛造材としてSKD11からなる直径30mmの
丸棒を用いた場合、このような軟化焼鈍により、SKD
11の硬度を98HRBから92HRBに下げることが
できる。
【0024】次に、軟化焼鈍の際に被鍛造材表面に形成
された酸化被膜をピーリング加工工程において除去した
後、切断工程において、軟化焼鈍された被鍛造材を所定
の大きさに切断し、さらに、被膜形成工程において、切
断された被鍛造材表面に被膜を形成する。被膜は、温間
鍛造時の摩擦抵抗を低減するために設けられる潤滑膜で
あり、例えば、被鍛造材の表面にシュウ酸塩被膜を形成
し、その上に二硫化モリブデンを塗布したものを用いる
と良い。なお、初めから鍛造可能な大きさを有する被鍛
造材を用いる場合には、切断工程は不要であるので、軟
化焼鈍工程及びピーリング加工工程終了後、直ちに被膜
を形成すればよい。
された酸化被膜をピーリング加工工程において除去した
後、切断工程において、軟化焼鈍された被鍛造材を所定
の大きさに切断し、さらに、被膜形成工程において、切
断された被鍛造材表面に被膜を形成する。被膜は、温間
鍛造時の摩擦抵抗を低減するために設けられる潤滑膜で
あり、例えば、被鍛造材の表面にシュウ酸塩被膜を形成
し、その上に二硫化モリブデンを塗布したものを用いる
と良い。なお、初めから鍛造可能な大きさを有する被鍛
造材を用いる場合には、切断工程は不要であるので、軟
化焼鈍工程及びピーリング加工工程終了後、直ちに被膜
を形成すればよい。
【0025】次に、第1温間鍛造工程において、被膜が
形成された被鍛造材に対し、1段階目の温間鍛造を行
う。第1温間鍛造工程における鍛錬成形比は、最終製品
の形状を考慮して、鍛造品に割れ等の欠陥が発生せず、
かつ、鍛造型の摩耗が最も少なくなるような値に設定す
ればよい。
形成された被鍛造材に対し、1段階目の温間鍛造を行
う。第1温間鍛造工程における鍛錬成形比は、最終製品
の形状を考慮して、鍛造品に割れ等の欠陥が発生せず、
かつ、鍛造型の摩耗が最も少なくなるような値に設定す
ればよい。
【0026】鍛造温度は、200℃以上600℃以下が
好ましく、400℃±50℃の範囲が特に好適である。
高炭素鋼の変形抵抗は、図3に示すように、鍛造温度が
高くなるほど小さくなるが、鍛造温度が600℃を超え
ると、被鍛造材の流動性が増すために、かえってパンチ
面圧が増加し、パンチを摩耗させるためである。
好ましく、400℃±50℃の範囲が特に好適である。
高炭素鋼の変形抵抗は、図3に示すように、鍛造温度が
高くなるほど小さくなるが、鍛造温度が600℃を超え
ると、被鍛造材の流動性が増すために、かえってパンチ
面圧が増加し、パンチを摩耗させるためである。
【0027】次に、バレル研磨工程において、第1温間
鍛造工程において鍛造された被鍛造材のバレル研磨を行
う。なお、バレル研磨工程は、必ずしも必要な工程では
ないが、特に鍛錬成形比の大きな鍛造加工が行われる場
合に有効である。強加工が行われる部分の角部をバレル
研磨によりR面取り加工を行うと、2段階目の温間鍛造
を行った時に、角部に割れが発生しにくくなるという利
点がある。
鍛造工程において鍛造された被鍛造材のバレル研磨を行
う。なお、バレル研磨工程は、必ずしも必要な工程では
ないが、特に鍛錬成形比の大きな鍛造加工が行われる場
合に有効である。強加工が行われる部分の角部をバレル
研磨によりR面取り加工を行うと、2段階目の温間鍛造
を行った時に、角部に割れが発生しにくくなるという利
点がある。
【0028】次に、歪取焼鈍工程において、1段階目の
鍛造加工が行われた被鍛造材を750℃以上850℃以
下の温度に加熱する。これにより、第1温間鍛造工程に
おいて被鍛造材中に導入された加工歪が除去され、被鍛
造材が軟化する。
鍛造加工が行われた被鍛造材を750℃以上850℃以
下の温度に加熱する。これにより、第1温間鍛造工程に
おいて被鍛造材中に導入された加工歪が除去され、被鍛
造材が軟化する。
【0029】ここで、焼鈍温度は、750℃以上850
℃以下とする必要がある。歪取焼鈍をこのような温度範
囲で行うのは、焼鈍温度が750℃未満では加工歪を効
率的に除去することができないためである。また、焼鈍
温度が850℃を超えると、被鍛造材の粒成長が生じ、
被鍛造材の機械的性質が劣化するためである。
℃以下とする必要がある。歪取焼鈍をこのような温度範
囲で行うのは、焼鈍温度が750℃未満では加工歪を効
率的に除去することができないためである。また、焼鈍
温度が850℃を超えると、被鍛造材の粒成長が生じ、
被鍛造材の機械的性質が劣化するためである。
【0030】保持時間は、第1温間鍛造工程において被
鍛造材に導入された加工歪の量に応じて適宜調節すれば
よい。一般に、第1温間鍛造工程において導入された歪
量が少ないほど、短時間の焼鈍で足りる。具体的には、
2〜10時間が好適である。また、焼鈍時の脱炭を防止
するためには、非酸化雰囲気で焼鈍することが望まし
く、特に真空中において焼鈍することが好ましい。さら
に、焼鈍温度から冷却する場合には、徐冷することが望
ましい。
鍛造材に導入された加工歪の量に応じて適宜調節すれば
よい。一般に、第1温間鍛造工程において導入された歪
量が少ないほど、短時間の焼鈍で足りる。具体的には、
2〜10時間が好適である。また、焼鈍時の脱炭を防止
するためには、非酸化雰囲気で焼鈍することが望まし
く、特に真空中において焼鈍することが好ましい。さら
に、焼鈍温度から冷却する場合には、徐冷することが望
ましい。
【0031】歪取焼鈍工程が終了後、再度、被膜形成工
程において、被鍛造材の表面に潤滑用の被膜を形成す
る。被膜は、前述と同様、シュウ酸塩被膜を形成し、二
硫化モリブデンを塗布したものを用いると良い。次い
で、第2温間鍛造工程において、被鍛造材に対し2段階
目の温間鍛造を行い、最終製品形状とする。鍛造温度と
しては、200℃以上600℃以下、特に400℃±5
0℃の範囲が好適である点は、第1温間鍛造工程と同様
である。
程において、被鍛造材の表面に潤滑用の被膜を形成す
る。被膜は、前述と同様、シュウ酸塩被膜を形成し、二
硫化モリブデンを塗布したものを用いると良い。次い
で、第2温間鍛造工程において、被鍛造材に対し2段階
目の温間鍛造を行い、最終製品形状とする。鍛造温度と
しては、200℃以上600℃以下、特に400℃±5
0℃の範囲が好適である点は、第1温間鍛造工程と同様
である。
【0032】さらに、第2温間鍛造工程終了後、球状化
焼鈍工程において、高炭素鋼中の炭化物を球状化する処
理を行う。具体的には、A1点直下の温度に長時間保持
したり、A1点を挟む加熱冷却を繰り返す等の処理を行
えばよい。これにより、被鍛造材の被削性が向上する。
焼鈍工程において、高炭素鋼中の炭化物を球状化する処
理を行う。具体的には、A1点直下の温度に長時間保持
したり、A1点を挟む加熱冷却を繰り返す等の処理を行
えばよい。これにより、被鍛造材の被削性が向上する。
【0033】次いで、機械加工工程において、被鍛造材
の機械加工を行い、要求される寸法精度に仕上げる。最
後に、焼入れ、焼戻しを行い、高炭素鋼からなる鍛造品
に所定の硬度及び靱性を付与すれば、高炭素鋼からなる
鍛造品が完成する。なお、寸法精度が要求されない場合
には、球状化焼鈍工程及び機械加工工程を省略し、第2
温間鍛造工程終了後に直ちに焼入れ、焼戻しを行い、最
終製品としても良い。
の機械加工を行い、要求される寸法精度に仕上げる。最
後に、焼入れ、焼戻しを行い、高炭素鋼からなる鍛造品
に所定の硬度及び靱性を付与すれば、高炭素鋼からなる
鍛造品が完成する。なお、寸法精度が要求されない場合
には、球状化焼鈍工程及び機械加工工程を省略し、第2
温間鍛造工程終了後に直ちに焼入れ、焼戻しを行い、最
終製品としても良い。
【0034】本発明に係る高炭素鋼の鍛造方法により、
健全な鍛造品を低コストで製造できるのは、以下の理由
による。すなわち、軟化焼鈍工程において全体を軟化処
理した被鍛造材を温間鍛造すると、被鍛造材は温間鍛造
時に導入された加工歪により硬化するが、断面減少率が
小さいため加工歪は表面に集中し、硬化が著しいのは表
面のみである。そのため、低温で焼鈍した場合であって
も、加工歪を十分に取り除くことができ、被鍛造材の硬
度を鍛造可能な値まで容易に低下させることができる。
健全な鍛造品を低コストで製造できるのは、以下の理由
による。すなわち、軟化焼鈍工程において全体を軟化処
理した被鍛造材を温間鍛造すると、被鍛造材は温間鍛造
時に導入された加工歪により硬化するが、断面減少率が
小さいため加工歪は表面に集中し、硬化が著しいのは表
面のみである。そのため、低温で焼鈍した場合であって
も、加工歪を十分に取り除くことができ、被鍛造材の硬
度を鍛造可能な値まで容易に低下させることができる。
【0035】従って、温間鍛造工程を2段階に分け、各
鍛造工程における鍛錬成形比を小さくすると共に、軟化
焼鈍工程において軟化させた被鍛造材を第1温間鍛造工
程において温間鍛造し、さらに被鍛造材に導入された加
工歪を歪取焼鈍工程において取り除いた後、第2温間鍛
造工程において被鍛造材を温間鍛造すれば、鍛造時の変
形抵抗を小さくすることができ、健全な鍛造品を容易に
得ることができる。
鍛造工程における鍛錬成形比を小さくすると共に、軟化
焼鈍工程において軟化させた被鍛造材を第1温間鍛造工
程において温間鍛造し、さらに被鍛造材に導入された加
工歪を歪取焼鈍工程において取り除いた後、第2温間鍛
造工程において被鍛造材を温間鍛造すれば、鍛造時の変
形抵抗を小さくすることができ、健全な鍛造品を容易に
得ることができる。
【0036】また、歪取焼鈍は、軟化焼鈍よりも低温で
行われるので、軟化焼鈍工程を2回繰り返した場合に比
べて総処理時間を短縮させることができる。例えば、7
80℃x2時間の条件で真空焼鈍し、炉冷した場合、歪
取焼鈍に要する処理時間は、約6時間で済む。また、低
温で焼鈍が行われることにより、脱炭層の生成も抑制さ
れるので、脱炭層を除去するための後加工が不要とな
る。また、被鍛造材の耐摩耗性及び強度が低下すること
もない。
行われるので、軟化焼鈍工程を2回繰り返した場合に比
べて総処理時間を短縮させることができる。例えば、7
80℃x2時間の条件で真空焼鈍し、炉冷した場合、歪
取焼鈍に要する処理時間は、約6時間で済む。また、低
温で焼鈍が行われることにより、脱炭層の生成も抑制さ
れるので、脱炭層を除去するための後加工が不要とな
る。また、被鍛造材の耐摩耗性及び強度が低下すること
もない。
【0037】(実施例1)図1に示す工程に従い、高炭
素鋼からなる長穴を有する部品(以下、単に「長穴部
品」という)を製造した。図4は、被鍛造材の断面形状
の変化を工程順に示したものである。まず、被鍛造材と
してSKD11からなる直径Dの丸棒を用い、図2に示
す温度パターンに従って軟化焼鈍を行った後、ピーリン
グ加工により表面の酸化被膜を除去し、さらに丸棒を高
さHのスラブ10に切断した。この状態を示すのが図4
(a)である。
素鋼からなる長穴を有する部品(以下、単に「長穴部
品」という)を製造した。図4は、被鍛造材の断面形状
の変化を工程順に示したものである。まず、被鍛造材と
してSKD11からなる直径Dの丸棒を用い、図2に示
す温度パターンに従って軟化焼鈍を行った後、ピーリン
グ加工により表面の酸化被膜を除去し、さらに丸棒を高
さHのスラブ10に切断した。この状態を示すのが図4
(a)である。
【0038】次に、スラブ10表面にシュウ酸塩被膜及
び二硫化モリブデンからなる潤滑用の被膜を形成し、第
1温間鍛造工程において、スラブ10中央に直径dの細
穴12を形成した。なお、鍛造には400tプレスを用
い、鍛造温度は400℃とした。また、細穴は、図4
(b)〜図4(d)に示すように、スラブ10上面の面
取(図4(b))、スラブ10の押出(図4(c))、
及びスラブ10の穴抜き(図4(d))の順で行った。
び二硫化モリブデンからなる潤滑用の被膜を形成し、第
1温間鍛造工程において、スラブ10中央に直径dの細
穴12を形成した。なお、鍛造には400tプレスを用
い、鍛造温度は400℃とした。また、細穴は、図4
(b)〜図4(d)に示すように、スラブ10上面の面
取(図4(b))、スラブ10の押出(図4(c))、
及びスラブ10の穴抜き(図4(d))の順で行った。
【0039】次に、細穴12が形成されたスラブ10に
対してバレル研磨を行い、スラブ先端の角部10aのR
面取りを行った。なお、研磨剤には研削用三角研磨石を
用い、研磨時間は3hrとした。図4(e)は、バレル
研磨後のスラブ10の断面であり、角部10aに半径約
1mmのR面が形成された状態を示す。
対してバレル研磨を行い、スラブ先端の角部10aのR
面取りを行った。なお、研磨剤には研削用三角研磨石を
用い、研磨時間は3hrとした。図4(e)は、バレル
研磨後のスラブ10の断面であり、角部10aに半径約
1mmのR面が形成された状態を示す。
【0040】バレル研磨後、スラブ10の歪取焼鈍を行
い、第1温間鍛造工程においてスラブ10に導入された
加工歪の除去を行った。なお、歪取焼鈍は、真空中、7
80℃x10hrの条件で行い、冷却速度は炉冷とし
た。
い、第1温間鍛造工程においてスラブ10に導入された
加工歪の除去を行った。なお、歪取焼鈍は、真空中、7
80℃x10hrの条件で行い、冷却速度は炉冷とし
た。
【0041】次に、歪取焼鈍が行われたスラブ10の表
面にシュウ酸塩被膜及び二硫化モリブデンからなる潤滑
用の被膜を再度形成した後、第2温間鍛造工程におい
て、スラブ10先端の中空鍛錬及びスラブ10底部のす
え込み鍛造を行った。なお、第1温間鍛造工程と同様、
鍛造には400tプレスを用い、鍛造温度は400℃と
した。
面にシュウ酸塩被膜及び二硫化モリブデンからなる潤滑
用の被膜を再度形成した後、第2温間鍛造工程におい
て、スラブ10先端の中空鍛錬及びスラブ10底部のす
え込み鍛造を行った。なお、第1温間鍛造工程と同様、
鍛造には400tプレスを用い、鍛造温度は400℃と
した。
【0042】図4(f)は、スラブ10先端が中空鍛錬
された状態を示し、図4(g)はスラブ10底部がすえ
込み鍛造された状態を示す。なお、中空鍛錬及びすえ込
み鍛造は、細穴12に心金を通し、バレル研磨によりR
面取された角部10aを下に向けた状態で鍛造型の中に
押し込むことにより行った。そして、得られた鍛造品に
対し、球状化焼鈍を行った後、機械加工により寸法精度
を出し、さらに焼入れ、焼戻しを行うことにより、SK
D11からなる長穴部品を得た。
された状態を示し、図4(g)はスラブ10底部がすえ
込み鍛造された状態を示す。なお、中空鍛錬及びすえ込
み鍛造は、細穴12に心金を通し、バレル研磨によりR
面取された角部10aを下に向けた状態で鍛造型の中に
押し込むことにより行った。そして、得られた鍛造品に
対し、球状化焼鈍を行った後、機械加工により寸法精度
を出し、さらに焼入れ、焼戻しを行うことにより、SK
D11からなる長穴部品を得た。
【0043】図4に示す形状の場合、特にスラブ10の
角部10aの応力集中が大きいが、本発明に係る鍛造方
法によれば、角部10aに割れ等の欠陥が発生すること
なく、健全な長穴部品が得ることができた。また、温間
鍛造が2段階に分けて行われることに加え、鍛造前に被
鍛造材の軟化処理又は歪取処理が行われるために、鍛造
時の変形抵抗が減少し、鍛造型の寿命が延びることがわ
かた。
角部10aの応力集中が大きいが、本発明に係る鍛造方
法によれば、角部10aに割れ等の欠陥が発生すること
なく、健全な長穴部品が得ることができた。また、温間
鍛造が2段階に分けて行われることに加え、鍛造前に被
鍛造材の軟化処理又は歪取処理が行われるために、鍛造
時の変形抵抗が減少し、鍛造型の寿命が延びることがわ
かた。
【0044】また、歪取焼鈍が低温で行われるために、
被鍛造材表面に脱炭層が形成されることはなく、耐摩耗
性及び強度が低下することもなかった。さらに、図4に
示す形状を有する長穴部品を本発明に係る方法で製造し
た場合と、従来から行われていた機械加工法で製造した
場合について、製造コストを比較したところ、本発明に
係る方法によれば、機械加工法に比べて製造コストを約
3割削減できることがわかった。
被鍛造材表面に脱炭層が形成されることはなく、耐摩耗
性及び強度が低下することもなかった。さらに、図4に
示す形状を有する長穴部品を本発明に係る方法で製造し
た場合と、従来から行われていた機械加工法で製造した
場合について、製造コストを比較したところ、本発明に
係る方法によれば、機械加工法に比べて製造コストを約
3割削減できることがわかった。
【0045】以上、本発明の実施の形態について詳細に
説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定される
ものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々
の改変が可能である。例えば、上記実施例では、長穴部
品の鍛造について説明したが、部品形状は、長穴部品に
限られるものではなく、屈曲部あるいは断付部を有する
種々の形状を有する部品も製造することができる。
説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定される
ものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々
の改変が可能である。例えば、上記実施例では、長穴部
品の鍛造について説明したが、部品形状は、長穴部品に
限られるものではなく、屈曲部あるいは断付部を有する
種々の形状を有する部品も製造することができる。
【0046】また、上記実施例では、被鍛造材として冷
間ダイス鋼の一種であるSKD11を用いた場合につい
て説明したが、被鍛造材としてSKH51等の高速度工
具鋼を用いてもよく、これにより上記実施例と同様の効
果を得ることができる。
間ダイス鋼の一種であるSKD11を用いた場合につい
て説明したが、被鍛造材としてSKH51等の高速度工
具鋼を用いてもよく、これにより上記実施例と同様の効
果を得ることができる。
【0047】
【発明の効果】本発明に係る高炭素鋼の鍛造方法は、温
間鍛造が第1温間鍛造工程と第2温間鍛造工程の2段階
に分けて行われるので、各温間鍛造工程当たりの鍛錬成
形比を小さくすることができる。また、各温間鍛造工程
に先立ち、軟化焼鈍工程及び歪取焼鈍工程により、被鍛
造材の軟化処理及び歪取処理が行われるので、温間鍛造
時の変形抵抗を小さくすることができる。そのため、形
状が複雑な場合であっても健全な鍛造品を得ることがで
きるという効果がある。
間鍛造が第1温間鍛造工程と第2温間鍛造工程の2段階
に分けて行われるので、各温間鍛造工程当たりの鍛錬成
形比を小さくすることができる。また、各温間鍛造工程
に先立ち、軟化焼鈍工程及び歪取焼鈍工程により、被鍛
造材の軟化処理及び歪取処理が行われるので、温間鍛造
時の変形抵抗を小さくすることができる。そのため、形
状が複雑な場合であっても健全な鍛造品を得ることがで
きるという効果がある。
【0048】また、軟化焼鈍工程において高炭素鋼から
なる被鍛造材全体を軟化処理しているために、歪取焼鈍
を低温で行った場合であっても、第1温間鍛造工程にお
いて導入された加工歪を十分に除去することができる。
そのため、歪取焼鈍工程に要する処理時間を短縮するこ
とができるという効果がある。さらに、処理温度を低く
することができるために、脱炭層の生成も抑制されると
いう効果がある。
なる被鍛造材全体を軟化処理しているために、歪取焼鈍
を低温で行った場合であっても、第1温間鍛造工程にお
いて導入された加工歪を十分に除去することができる。
そのため、歪取焼鈍工程に要する処理時間を短縮するこ
とができるという効果がある。さらに、処理温度を低く
することができるために、脱炭層の生成も抑制されると
いう効果がある。
【0049】以上のように、本発明に係る高炭素鋼の鍛
造方法によれば、耐摩耗性及び強度に優れた高炭素鋼か
らなる鍛造品を製造することができ、これを例えば、自
動車用部品等の製造に応用すれば、耐摩耗性及び強度に
優れた部品を安価に製造することが可能となるものであ
り、産業上その効果の極めて大きい発明である。
造方法によれば、耐摩耗性及び強度に優れた高炭素鋼か
らなる鍛造品を製造することができ、これを例えば、自
動車用部品等の製造に応用すれば、耐摩耗性及び強度に
優れた部品を安価に製造することが可能となるものであ
り、産業上その効果の極めて大きい発明である。
【図1】本発明に係る鍛造方法の一例を示すフローチャ
ートである。
ートである。
【図2】軟化焼鈍工程の一例を示す図である。
【図3】SKD11の鍛造温度と変形抵抗の関係を示す
図である。
図である。
【図4】長穴部品の加工工程を示す図である。
10 スラブ 12 長穴
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C21D 1/32 C21D 1/32 11/00 101 11/00 101 Fターム(参考) 4E087 BA02 CB02 DB15 DB17 HA67 HA71 HA74 4K038 AA03 BA02 CA01 DA02 EA02 FA02
Claims (5)
- 【請求項1】 高炭素鋼からなる被鍛造材をオーステナ
イト領域で加熱し、Ar1点以下の温度まで徐冷する軟
化焼鈍工程と、 該軟化焼鈍工程により軟化された前記被鍛造材を温間鍛
造する第1温間鍛造工程と、 該第1温間鍛造工程により温間鍛造された前記被鍛造材
を750℃以上850℃以下の温度で加熱する歪取焼鈍
工程と、 該歪取焼鈍工程により焼鈍された前記被鍛造材をさらに
温間鍛造する第2温間鍛造工程とを備えていることを特
徴とする高炭素鋼の鍛造方法。 - 【請求項2】 前記被鍛造材が、冷間ダイス鋼又は高速
度工具鋼であることを特徴とする請求項1に記載の高炭
素鋼の鍛造方法。 - 【請求項3】 前記軟化焼鈍工程における冷却速度が1
5℃/hr以下であることを特徴とする請求項1又は2
に記載の高炭素鋼の鍛造方法。 - 【請求項4】 前記第1温間鍛造工程における鍛造温度
が200℃以上600℃以下であることを特徴とする請
求項1、2又は3に記載の高炭素鋼の鍛造方法。 - 【請求項5】 前記第2温間鍛造工程における鍛造温度
が200℃以上600℃以下であることを特徴とする請
求項1、2、3又は4に記載の高炭素鋼の鍛造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10187120A JP2000015379A (ja) | 1998-07-02 | 1998-07-02 | 高炭素鋼の鍛造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10187120A JP2000015379A (ja) | 1998-07-02 | 1998-07-02 | 高炭素鋼の鍛造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2000015379A true JP2000015379A (ja) | 2000-01-18 |
Family
ID=16200470
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP10187120A Pending JP2000015379A (ja) | 1998-07-02 | 1998-07-02 | 高炭素鋼の鍛造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2000015379A (ja) |
Cited By (14)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2003014531A1 (fr) * | 2001-08-03 | 2003-02-20 | Akita Fine Blanking Co., Ltd. | Procede de fabrication d'element constitutif de turbocompresseur du type vgs, element constitutif fabrique selon ledit procede, ensemble de guidage de gaz d'echappement de turbocompresseur dans lequel ledit element constitutif est utilise, et turbocompresseur du type vgs equipe dudit ensemble de guidage de gaz d'echappement |
JP2005342779A (ja) * | 2004-06-07 | 2005-12-15 | Fuji Univance Corp | 歯車の成形方法 |
JP2007107059A (ja) * | 2005-10-14 | 2007-04-26 | Daido Steel Co Ltd | 優れた冷間鍛造性を有する素材の製造方法 |
US20090229417A1 (en) * | 2007-03-23 | 2009-09-17 | Dayton Progress Corporation | Methods of thermo-mechanically processing tool steel and tools made from thermo-mechanically processed tool steels |
JP2010188833A (ja) * | 2009-02-17 | 2010-09-02 | Jtekt Corp | 車輪用軸受装置 |
CN102350476A (zh) * | 2011-08-04 | 2012-02-15 | 攀钢集团江油长城特殊钢有限公司 | 一种高碳高铬冷作模具钢大型饼类锻件的制造方法 |
CN103212659A (zh) * | 2013-03-20 | 2013-07-24 | 鹤山市鸿图铁艺实业有限公司 | 一种铁艺装饰配件制品的锻制成形工艺 |
CN103317319A (zh) * | 2013-06-09 | 2013-09-25 | 泰尔重工股份有限公司 | 材质为Cr12Mo1V1挖边剪的生产加工方法 |
US9132567B2 (en) | 2007-03-23 | 2015-09-15 | Dayton Progress Corporation | Tools with a thermo-mechanically modified working region and methods of forming such tools |
CN106475501A (zh) * | 2016-09-28 | 2017-03-08 | 四川六合锻造股份有限公司 | 一种大锭型冷作模具钢的锻造加热方法 |
CN108705014A (zh) * | 2018-05-08 | 2018-10-26 | 石钢京诚装备技术有限公司 | 一种模块锻件的模锻方法 |
CN109604494A (zh) * | 2019-01-15 | 2019-04-12 | 苏州市东盛锻造有限公司 | 一种超大型羊头锻件的锻造方法 |
CN110651053A (zh) * | 2017-05-18 | 2020-01-03 | 日立金属株式会社 | 刀具用钢带的制造方法及刀具用钢带 |
CN114672631B (zh) * | 2022-03-25 | 2023-11-21 | 中国石油大学(华东) | 大型加氢反应器超厚锻件全厚度组织-应力-性能均匀性调控方法 |
-
1998
- 1998-07-02 JP JP10187120A patent/JP2000015379A/ja active Pending
Cited By (18)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2003014531A1 (fr) * | 2001-08-03 | 2003-02-20 | Akita Fine Blanking Co., Ltd. | Procede de fabrication d'element constitutif de turbocompresseur du type vgs, element constitutif fabrique selon ledit procede, ensemble de guidage de gaz d'echappement de turbocompresseur dans lequel ledit element constitutif est utilise, et turbocompresseur du type vgs equipe dudit ensemble de guidage de gaz d'echappement |
JP2005342779A (ja) * | 2004-06-07 | 2005-12-15 | Fuji Univance Corp | 歯車の成形方法 |
JP2007107059A (ja) * | 2005-10-14 | 2007-04-26 | Daido Steel Co Ltd | 優れた冷間鍛造性を有する素材の製造方法 |
US8968495B2 (en) * | 2007-03-23 | 2015-03-03 | Dayton Progress Corporation | Methods of thermo-mechanically processing tool steel and tools made from thermo-mechanically processed tool steels |
US20090229417A1 (en) * | 2007-03-23 | 2009-09-17 | Dayton Progress Corporation | Methods of thermo-mechanically processing tool steel and tools made from thermo-mechanically processed tool steels |
US9132567B2 (en) | 2007-03-23 | 2015-09-15 | Dayton Progress Corporation | Tools with a thermo-mechanically modified working region and methods of forming such tools |
JP2010188833A (ja) * | 2009-02-17 | 2010-09-02 | Jtekt Corp | 車輪用軸受装置 |
CN102350476A (zh) * | 2011-08-04 | 2012-02-15 | 攀钢集团江油长城特殊钢有限公司 | 一种高碳高铬冷作模具钢大型饼类锻件的制造方法 |
CN103212659A (zh) * | 2013-03-20 | 2013-07-24 | 鹤山市鸿图铁艺实业有限公司 | 一种铁艺装饰配件制品的锻制成形工艺 |
CN103317319A (zh) * | 2013-06-09 | 2013-09-25 | 泰尔重工股份有限公司 | 材质为Cr12Mo1V1挖边剪的生产加工方法 |
CN106475501A (zh) * | 2016-09-28 | 2017-03-08 | 四川六合锻造股份有限公司 | 一种大锭型冷作模具钢的锻造加热方法 |
CN106475501B (zh) * | 2016-09-28 | 2019-01-01 | 四川六合锻造股份有限公司 | 一种大锭型冷作模具钢的锻造加热方法 |
CN110651053A (zh) * | 2017-05-18 | 2020-01-03 | 日立金属株式会社 | 刀具用钢带的制造方法及刀具用钢带 |
CN108705014A (zh) * | 2018-05-08 | 2018-10-26 | 石钢京诚装备技术有限公司 | 一种模块锻件的模锻方法 |
CN108705014B (zh) * | 2018-05-08 | 2019-11-08 | 石钢京诚装备技术有限公司 | 一种模块锻件的模锻方法 |
CN109604494A (zh) * | 2019-01-15 | 2019-04-12 | 苏州市东盛锻造有限公司 | 一种超大型羊头锻件的锻造方法 |
CN109604494B (zh) * | 2019-01-15 | 2023-06-27 | 苏州市东盛锻造有限公司 | 一种超大型羊头锻件的锻造方法 |
CN114672631B (zh) * | 2022-03-25 | 2023-11-21 | 中国石油大学(华东) | 大型加氢反应器超厚锻件全厚度组织-应力-性能均匀性调控方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US5718774A (en) | Method of producing bevel gear | |
JP3309344B2 (ja) | センタ穴付き歯車の製造方法 | |
JP4448208B2 (ja) | ステンレス鋼ボルトの製造方法 | |
CN1094409C (zh) | 变速器齿轮制作方法 | |
JP2000015379A (ja) | 高炭素鋼の鍛造方法 | |
US6059898A (en) | Induction hardening of heat treated gear teeth | |
JPH06323399A (ja) | 自動車用ギヤおよびその製造方法 | |
CN112792523A (zh) | 一种挖掘机用高强度齿轮的制备方法 | |
US4373973A (en) | Method of manufacture of high performance gears | |
JPH0399789A (ja) | 鍛造型で鍛造される工作物の製造方法 | |
JPH07112231A (ja) | 焼結歯車の製造方法 | |
JPH05345231A (ja) | ラックチューブの製造方法 | |
CN111570606B (zh) | 兼具整体强度和冲裁面加工硬化的精冲模具及精冲方法 | |
US6478900B1 (en) | Method of forging precipitation hardening type stainless steel | |
JPH07305139A (ja) | 非調質機械部品およびその製造方法 | |
KR100259983B1 (ko) | 금속의 열변형 최소화 방법 | |
JP2003181593A (ja) | 中空円筒状部品の製造方法 | |
JP3830030B2 (ja) | 被削性に優れた冷間加工用高硬度プリハードン鋼およびそれを用いてなる冷間加工用金型ならびに鋼の加工方法 | |
JP3264790B2 (ja) | 異形断面を有する引抜き部品とその製造方法 | |
JPH11254077A (ja) | 高強度、高靱性金型の製造方法 | |
JP2005014079A (ja) | 部分冷間強化コンロッドの製造方法 | |
JPH1099930A (ja) | 高速度鋼の高速熱間鍛造方法 | |
KR100667235B1 (ko) | 기계적 성질이 향상된 트랙 링크 부시의 제조방법 | |
CN111791034A (zh) | 一种齿轮泵和汽车助力转向泵齿轮毛坯及成型的加工工艺 | |
JP2000265211A (ja) | 高c含有ステンレス鋼片の熱処理方法とこれを利用したステンレス鋼製部品の製造方法 |