JP7390154B2 - 腰入れ処理設備、腰入れ処理方法、丸鋸用基材又は帯鋸用基材の製造方法 - Google Patents
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Description
上述のような鋸刃の熱座屈を抑制するため、鋸素材や鋸用基材は、切断時の鋸歯部に発生する圧縮応力を打ち消すことができるように、外縁領域に引張応力を発生させる腰入れ処理を施される。そして、この腰入れ処理は、特許文献1~4に記載のように、ショットピーニング加工、展伸加工、ハンマリング加工、圧延加工等によって外縁領域に引張応力を発生させる機械的方法で行われている。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記定盤は、上記鋸素材に接触する接触面が平担状に形成されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、上記第1冷却回路の冷却温度が上記第2冷却回路の冷却温度よりも低い温度に調整されて、上記鋸素材の上記外縁領域を上記内縁領域よりも早く冷却することにより、上記鋸歯部が設けられた上記外縁領域に引張応力を発生させることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のうち何れか一項に記載の腰入れ処理設備を使用し、薄板状に成形されて外縁領域に鋸歯部が設けられた鋸素材に対して熱処理を行うとともに、上記鋸歯部に引張応力を発生させる腰入れ処理を行うための腰入れ処理方法であって、上記鋸素材を加熱する加熱工程と、上記加熱工程後の上記鋸素材を冷却する冷却工程と、を備え、上記冷却工程は、上記鋸素材を上記定盤に圧接させることで所定の圧力で加圧しつつ、上記定盤に内装された上記第1冷却回路の冷却温度が上記第2冷却回路の冷却温度よりも低くなるように上記温度調整器で調整して、上記第1冷却回路で上記鋸歯部が設けられた上記鋸素材の外縁領域を冷却し、上記第2冷却回路で上記鋸素材の内縁領域を冷却する工程であることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、上記冷却工程において、上記所定の圧力は、10~100kgf/cm2であることを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の発明において、上記熱処理は、オーステンパー処理、焼入処理、又は焼戻処理のうち何れかの処理であることを要旨とする。
請求項7に記載の発明は、請求項4から6のうち何れか一項に記載の腰入れ処理方法を使用し、熱処理及び腰入れ処理を行った鋸素材からなる丸鋸用基材又は帯鋸用基材を製造することを要旨とする。
上述の腰入れ処理設備を使用した腰入れ処理方法は、鋸素材を冷却する冷却工程において、定盤に内装された第1冷却回路の冷却温度が第2冷却回路の冷却温度よりも低くなるように調整して、第1冷却回路で鋸歯部が設けられた鋸素材の外縁領域を冷却し、第2冷却回路で鋸素材の内縁領域を冷却する。
上記のように第1冷却回路の冷却温度を、第2冷却回路の冷却温度よりも低くすることにより、第1冷却回路と対応する鋸素材の外縁領域は、第2冷却回路と対応する内縁領域よりも早く冷却される。そして、早く冷却された外縁領域は、熱膨張による内縁領域の伸びを拘束するため、外縁領域に引張応力を発生させることができる。すなわち、鋸素材の熱処理時に、この鋸素材に腰入れ処理を施すことができ、腰入れ処理に係る作業能率の向上を図ることができる。
腰入れ処理設備(10)において、処理対象は、薄板状に成形されており、外縁領域(21)に鋸歯部(23)が設けられた鋸素材(20)である(図3(a)参照)。
腰入れ処理設備(10)は、鋸素材(20)に熱処理を施すとともに、その鋸素材(20)の鋸歯部(23)に引張応力を発生させる腰入れ処理を行うための設備である。
定盤(13)には冷却回路(19)が内装されている。この冷却回路(19)は、図2(a),(b)に示すように、鋸素材(20)の鋸歯部(23)が設けられた外縁領域(21)と対応する位置に配設される第1冷却回路(19A)と、鋸素材(20)の内縁領域(22)と対応する位置に配設される第2冷却回路(19B)と、を有している。
温度調整器(14)は、第1冷却回路(19A)及び第2冷却回路(19B)にそれぞれ接続されている。そして、第1冷却回路(19A)と第2冷却回路(19B)とは、互いに異なる温度に調整される。
腰入れ処理設備(10)の処理方式は、バッチ式と連続式とが挙げられるが、何れかについて特に問わない。腰入れ処理設備(10)の搬送方式は、ローラーハース式、固定炉床式、台車式、ウォーキングビーム式、ウォーキングハース式、プッシャ式等が挙げられるが、何れかについて特に問わない。
加熱室(11)は、構成、形状、炉内容積、加熱方式等について特に問わず、一般的な加熱炉や加熱室を使用することができる。
定盤(13)は、鋸素材(20)との間で伝熱を行うものであれば、構成、材質等について特に問わない。また、定盤(13)の材質には、鋸素材(20)との間で伝熱を行うことが可能な熱伝導率を有する鉄、アルミニウム、銅、チタン等の金属、あるいはそれら金属を使用した合金を使用することができる。
定盤(13)の形状については、鋸素材(20)と隙間なく接触させることで伝熱の効率を向上させるという観点から、鋸素材(20)に接触する接触面が平担状に形成されていることが好ましい。また、定盤(13)の形状は、熱処理後の冷却時に鋸素材(20)に発生する反りや歪み等の発生を防止して、薄板状に成形された鋸素材(20)の形状を保持するという観点から、平板状とすることがより好ましい。
押圧装置(15)は、鋸素材(20)と定盤(13)とを圧接させることが可能な構成を有するのであれば、その他の構成、形状、油圧式や空圧式や電動などの駆動方式等について特に問わない。この押圧装置(15)には、一般的なプレス装置などを使用することができる。
第1冷却回路(19A)と第2冷却回路(19B)の形状については、鋸素材(20)の形状に応じた形状とすることができる。
例えば、鋸素材(20)が平面視で円形の場合、図2(b)に示すように、略円形状をなす第1冷却回路(19A)の内側に、略円形状をなす第2冷却回路(19B)が配された形状とすることができる。他に、鋸素材(20)が平面視で帯形の場合、略直線状をなす第1冷却回路(19A)と、略直線状をなす第2冷却回路(19B)とが互いに平行に伸びる形状とすることができる。
鋸素材(20)の形状は、丸鋸用基材とする場合、図3(a),(b)に示すように、平面視で円形の薄板状とされる。この鋸素材(20)からなる丸鋸用基材においては、周縁部が外縁領域(21)であり、中央部が内縁領域(22)であって、鋸歯部(23)は外縁領域(21)の外周縁に設けられている。
また、鋸素材(20)の形状は、帯鋸用基材とする場合、図4に示すように、平面視で帯形の薄板状とされる。この鋸素材(20)からなる帯鋸用基材においては、鋸歯部(23)が設けられた一側縁部が外縁領域(21)であり、他側縁部が内縁領域(22)である。
薄板状に成形される鋸素材(20)の厚さ(T)は、反りや歪みの発生を抑制することができるという観点から、好ましくは1~5mm、より好ましくは1.5~4mm、さらに好ましくは1.5~3mmである。特に鋸素材(20)の厚さが上述の範囲である場合、熱処理時に反りや歪みが頻繁に発生することに比べて、本発明は反りや歪みの発生を抑制することができる点で有用である。
不活性ガス供給装置(17)を使用して腰入れ処理設備(10)内を無酸化雰囲気にする場合、鋸素材(20)の表面への酸化スケールの付着を抑制することができ、酸化スケールの除去に係る作業を省略することができるとともに、酸化スケールの付着抑制による冷却効率の向上を図ることができる。
不活性ガス供給装置(17)は、設備内に不活性ガスを供給可能な構成を有するのであれば、その他の構成、不活性ガスの供給量や供給方式等について、特に問わない。
また、不活性ガス供給装置(17)は、冷却装置(12)が収容室(18)の室内に設置されるとともに、加熱室(11)が収容室(18)の室外に設置された構成として、この収容室(18)と加熱室(11)とに接続された構成とすることもできる。
収容室(18)は、冷却装置(12)等を収容可能なサイズを有し、内部に不活性ガスを供給することで無酸化雰囲気にすることが可能な構成を有するのであれば、その他の構成、サイズ、不活性ガスの供給量や供給方式等について、特に問わない。
加熱工程は、鋸素材(20)を加熱する工程である。この加熱工程は、腰入れ処理設備(10)の加熱室(11)を使用して実行される。そして、加熱工程を施された鋸素材(20)は、その金属組織がオーステナイト組織に変態される。
冷却工程は、加熱工程後の鋸素材(20)を冷却する工程である。この冷却工程は、腰入れ処理設備(10)の冷却装置(12)を使用して行われる。そして、冷却工程で冷却された鋸素材(20)は、その金属組織がオーステナイトから、熱処理に応じた組織に変態される。
また、冷却工程は、定盤(13)に内装された第1冷却回路(19A)の冷却温度が、第2冷却回路(19B)の冷却温度よりも低くなるように、温度調整器(14)で調整して行われる。
そして、冷却工程は、鋸歯部(23)が設けられた鋸素材(20)の外縁領域(21)を第1冷却回路(19A)で冷却し、鋸素材(20)の内縁領域(22)を第2冷却回路(19B)で冷却する工程である。
冷却工程において、第1冷却回路(19A)の冷却温度は、第2冷却回路(19B)の冷却温度よりも低く調整されており、鋸歯部(23)が設けられた鋸素材(20)の外縁領域(21)は、内縁領域(22)に比べて、冷却が早く進む。このため、早く冷却された外縁領域(21)は、熱膨張による内縁領域(22)の伸びを拘束するので、図3(c)に示すように、鋸素材(20)の外縁領域(21)に引張応力が発生する。
そして、上述の腰入れ処理方法によれば、鋸素材(20)の熱処理時に、より詳しくは熱処理の冷却工程で、この鋸素材(20)に腰入れ処理を施すことができる。このため、熱処理とは別の工程で腰入れ処理を行わずともよく、また熟練の作業者に頼らずとも腰入れ処理を行うことができることから、腰入れ処理に係る作業能率の向上を図ることができる。
腰入れ処理方法において、腰入れ処理とともに施される熱処理については、鋸素材(20)の金属組織を変態させる処理であれば、特に問わない。
この熱処理は、オーステンパー処理、焼入処理、又は焼戻処理のうちの何れかとすることができる。
オーステンパー処理は、金属組織をオーステナイトからベイナイトに変態させる処理であり、焼入処理は、金属組織をオーステナイトからマルテンサイトに変態させる処理であり、焼戻処理は、焼入処理で硬くなることで脆化して不安定となったマルテンサイト等の組織を安定な組織に変態させる処理である。
すなわち、薄板状に形成された鋸素材(20)は、冷却工程時に金属組織の変態に伴う熱膨張によって、反りや歪み等が非常に発生しやすくなっている。そこで、腰入れ処理方法は、定盤(13)と鋸素材(20)とを押圧装置(15)を用いて所定の圧力で圧接させることにより、外縁領域(21)に引張応力を好適に発生させながら、鋸素材(20)の反りや歪みの発生を抑制することができる。
冷却工程では、押圧装置(15)を用いて鋸素材(20)と定盤(13)とを圧接させることにより、鋸素材(20)が略一様に冷却されることで、外縁領域(21)に引張応力を好適に発生させることができるとともに、酸化スケールの発生を抑制することができる。
従って、押圧装置(15)を用いて定盤(13)と圧接された鋸素材(20)の形状が変化してしまうことは、この冷却工程の目的から外れており、このため押圧装置(15)を用いた鋸素材(20)と定盤(13)との圧接は、鋸素材(20)の形状を保持可能な程度の所定の圧力で行われる。
無酸化雰囲気下で加熱工程又は冷却工程を実行することについては、その実行のための構成などについて特に問わないが、例えば上述したように冷却装置(12)等を収容する収容室(18)の内部や、加熱室(11)と収容室(18)の内部に不活性ガスを供給することにより、実行することができる。
鋸素材(20)の金属材料が、例えば上述の炭素鋼であれば、オーステナイト組織に好適に変態させるという観点から、加熱温度域は、800~900℃が好ましく、820~900℃がより好ましく、850~900℃がさらに好ましい。
例えば、鋸素材(20)の金属材料が上述の炭素鋼であり、熱処理がオーステンパー処理であれば、冷却温度域は、好ましくは300~500℃であり、より好ましくは320~480℃であり、さらに好ましくは350~450℃である。
また、鋸素材(20)の金属材料が上述の炭素鋼であり、熱処理が焼入処理であれば、冷却温度域は、好ましくは50~100℃であり、より好ましくは70~100℃であり、さらに好ましくは70~90℃である。
そして、鋸素材(20)の金属材料が上述の炭素鋼であり、熱処理が焼戻処理であれば、冷却温度域は、低温焼戻で好ましくは100~300℃、より好ましくは150~250℃であり、高温焼戻で好ましくは300~730℃、より好ましくは400~680℃である。
第1冷却回路(19A)と第2冷却回路(19B)との冷却温度の差は、鋸素材(20)に施される熱処理と使用される金属材料とに応じて設定され、特に問わない。
例えば、鋸素材(20)の金属材料が上述の炭素鋼であり、熱処理がオーステンパー処理又は焼戻処理であれば、冷却温度の差は、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは1~90℃であり、さらに好ましくは10~80℃である。
また、鋸素材(20)の金属材料が上述の炭素鋼であり、熱処理が焼入処理であれば、冷却温度の差は、好ましくは1~50℃であり、より好ましくは5~30℃であり、さらに好ましくは10~20℃である。
具体的に、上記所定の圧力は、好ましくは10~100kgf/cm2であり、より好ましくは20~100kgf/cm2であり、さらに好ましくは30~95kgf/cm2である。
炭素鋼による鋸素材(20)の場合、冷却による割れ等の不良を防止するとともに、作業効率の向上を図るという観点から、冷却時間は、好ましくは1~20秒、より好ましくは5~15秒、さらに好ましくは8~12秒である。
腰入れ処理設備10は、上流側から下流側へ順番に、加熱室11、冷却装置12を有している。
加熱室11は、内部に鋸素材20を収容する空間が設けられている。加熱室11の内部には、ヒータ11Bが設けられている。そして、加熱室11は、内部に装入された鋸素材20をヒータ11Bによって加熱することにより、鋸素材20の金属組織をオーステナイト化させる。
冷却装置12は、定盤13と、温度調整器14と、押圧装置15とを有している。定盤13には、複数の冷却回路19が内装されている。そして、冷却装置12は、温度調整器14及び複数の冷却回路19によって所定の温度域に調整された定盤13と、鋸素材20とを、押圧装置15によって圧接させ、定盤13と鋸素材20との間で伝熱を行うことにより、鋸素材20を冷却し、所望の金属組織に変態させる。
この収容室18には、不活性ガス供給装置17が接続されており、収容室18の内部は、不活性ガス供給装置17から例えば窒素ガス等の不活性ガスが供給されて、充満されることにより、無酸化雰囲気とされている。
また、収容室18において、内部に鋸素材20を出し入れするための出入口には、収容室18内部に不活性ガスを充満させて無酸化雰囲気とするための開閉式の扉18Aが設けられている。
下定盤13Aは、平板状に形成されており、上面が鋸素材20と圧接される接触面であって平坦状をなすとともに、その上面に加熱室11から送られた鋸素材20が載せられるように構成されている。また、下定盤13Aの内部には、第1冷却回路19A及び第2冷却回路19Bが設けられている。
上定盤13Bは、平板状に形成されており、下面が鋸素材20と圧接される接触面であって平坦状をなしている。この上定盤13Bは、押圧装置15に取り付けられて、下定盤13Aの上方に配置されている。そして、上定盤13Bは、押圧装置15の作動時に下定盤13Aへ接近することで、この下定盤13Aとの間に鋸素材20を挟持するように構成されている。また、上定盤13Bの内部には、第1冷却回路19A及び第2冷却回路19Bが設けられている。
この温度調整器14は、第1媒体供給路14A及び第2媒体供給路14Bを介することにより、下定盤13A及び上定盤13Bの第1冷却回路19A及び第2冷却回路19Bとの間で冷媒、熱媒などの媒体を流動させるように構成されている。
そして、温度調整器14は、第1冷却回路19Aと第2冷却回路19Bのそれぞれに流動される媒体を異なる温度に調整することにより、第1冷却回路19Aと、第2冷却回路19Bとが互いに異なる温度となるように調整している。
そして、冷却装置12は、温度調整器14によって所定の温度域に調整された下定盤13A及び上定盤13Bと、鋸素材20とが、押圧装置15を用いて所定の圧力で圧接されることにより、下定盤13A及び上定盤13Bと鋸素材20との間で伝熱が行われ、鋸素材20を、その形状が保持された状態で所定の温度域まで冷却する。
また、下定盤13A又は上定盤13Bに内装された第2冷却回路19Bは、鋸素材20の内縁領域22と対応する位置に配設されている。
具体的に、第1冷却回路19Aは、下定盤13A又は上定盤13Bの中央部で略円形をなすように設けられており、第2冷却回路19Bは、下定盤13A又は上定盤13Bの中央部において第1冷却回路19Aの内側で略円形をなすように設けられている。
鋸素材20からなる丸鋸用基材は、外周縁部が外縁領域21であり、中央部が内縁領域22であり、外縁領域21に鋸歯部23が設けられている。
鋸素材20に熱処理と腰入れ処理とが施されることによって、丸鋸用基材が製造される。
そして、この鋸素材20からなる丸鋸用基材は、図3(c)に示すように、外縁領域21に引張応力が発生している。
この腰入れ処理方法は、加熱工程と、冷却工程と、を備えている。
まず、加熱工程において、鋸素材20は、加熱室11で加熱されることにより、その金属組織がオーステナイト組織に変態され、オーステナイト化される(図1参照)。
このとき、冷却装置12の下定盤13A及び上定盤13Bは、温度調整器14によって、所望の熱処理に応じた所定の温度域に予め調整されている(図2(a)参照)。
そして、押圧装置15により上定盤13Bが下定盤13Aに接近することで、鋸素材20は、下定盤13A及び上定盤13Bの間に挟持される。
このように下定盤13A及び上定盤13Bと圧接された鋸素材20は、冷却による反りや歪みの発生を防止されるとともに、圧力が所定範囲に保たれることで、下定盤13A及び上定盤13Bとの圧接による変形や成形を防止される。
そして、下定盤13A及び上定盤13Bと圧接された鋸素材20は、下定盤13A及び上定盤13Bとの間で伝熱を行うことにより、所望の熱処理に応じた所定の温度域に冷却されて、その金属組織がオーステナイトから、例えばベイナイトやマルテンサイト等といった所定の温度域に応じた組織に変態される。
冷却回路19において、第1冷却回路19Aは、その冷却温度が、第2冷却回路19Bの冷却温度よりも低くなるように調整されている。
そして、第1冷却回路19Aによって冷却される鋸素材20の外縁領域21は、第2冷却回路19Bによって冷却される内縁領域22に比べて、冷却が早く進む。
このため、図3(c)に示すように、冷却時の鋸素材20において、熱膨張がおさまった外縁領域21は、未だ熱膨張がおさまっていない内縁領域22の伸びを拘束する。
その結果、伸びを拘束された内縁領域22の周縁には圧縮応力が発生するとともに、この圧縮応力に反して外縁領域21には引張応力が発生する。
また、鋸素材20は、下定盤13A及び上定盤13Bの間に挟持されているとともに、所定の圧力で下定盤13A及び上定盤13Bと圧接されているため、外縁領域21に発生する引張応力の方向は、接線方向となる。
上述の腰入れ処理方法は、鋸素材20にその金属組織を変態させる熱処理を施しながら、冷却工程で鋸素材20の外縁領域21の冷却温度を、内縁領域22の冷却温度よりも低く調整することにより、外縁領域21に引張応力を発生させる腰入れ処理を施している。
そして、上述の腰入れ処理方法を使用し、熱処理及び腰入れ処理を行った鋸素材20からなる丸鋸用基材が製造される。
なお、上述の腰入れ処理方法では、平面視で円形の鋸素材20が用いられたことにより丸鋸用基材が製造されるが、図4に示すような平面視で帯形の鋸素材20が用いる場合、熱処理及び腰入れ処理を行った帯形の鋸素材20からなる帯鋸用基材が製造される。
11 加熱室
12 冷却装置
13 定盤
13A 下定盤
13B 上定盤
14 温度調整器
15 押圧装置
16 冷却室
17 不活性ガス供給装置
18 収容室
19 冷却回路
19A 第1冷却回路
19B 第2冷却回路
20 鋸素材
Claims (7)
- 処理対象を加熱する加熱室と、上記加熱室で加熱された処理対象を冷却する冷却装置とを有しており、上記処理対象を薄板状に成形されて外縁領域に鋸歯部が設けられた鋸素材として、上記鋸素材に熱処理を施すとともに、上記鋸素材の上記鋸歯部に引張応力を発生させる腰入れ処理を行うための腰入れ処理設備であって、
上記冷却装置は、上記鋸素材に接触して該鋸素材との間で伝熱を行う定盤と、該定盤の温度を調整する温度調整器と、上記定盤と上記鋸素材とを圧接させる押圧装置と、を有しており、
上記定盤には、上記鋸素材の上記鋸歯部が設けられた外縁領域と対応する位置に配設される第1冷却回路と、上記鋸素材の内縁領域と対応する位置に配設される第2冷却回路と、が内装され、
上記温度調整器が上記第1冷却回路及び上記第2冷却回路にそれぞれ接続され、上記第1冷却回路と上記第2冷却回路とが互いに異なる温度に調整されることを特徴とする腰入れ処理設備。 - 上記定盤は、上記鋸素材に接触する接触面が平担状に形成されている請求項1に記載の腰入れ処理設備。
- 上記第1冷却回路の冷却温度が上記第2冷却回路の冷却温度よりも低い温度に調整されて、上記鋸素材の上記外縁領域を上記内縁領域よりも早く冷却することにより、上記鋸歯部が設けられた上記外縁領域に引張応力を発生させる請求項1又は請求項2に記載の腰入れ処理設備。
- 請求項1から3のうち何れか一項に記載の腰入れ処理設備を使用し、薄板状に成形されて外縁領域に鋸歯部が設けられた鋸素材に対して熱処理を行うとともに、上記鋸歯部に引張応力を発生させる腰入れ処理を行うための腰入れ処理方法であって、
上記鋸素材を加熱する加熱工程と、
上記加熱工程後の上記鋸素材を冷却する冷却工程と、を備え、
上記冷却工程は、上記鋸素材を上記定盤に圧接させることで所定の圧力で加圧しつつ、上記定盤に内装された上記第1冷却回路の冷却温度が上記第2冷却回路の冷却温度よりも低くなるように上記温度調整器で調整して、上記第1冷却回路で上記鋸歯部が設けられた上記鋸素材の外縁領域を冷却し、上記第2冷却回路で上記鋸素材の内縁領域を冷却する工程であることを特徴とする腰入れ処理方法。 - 上記冷却工程において、上記所定の圧力は、10~100kgf/cm2である請求項4に記載の腰入れ処理方法。
- 上記熱処理は、オーステンパー処理、焼入処理、又は焼戻処理のうち何れかの処理である請求項4又は5に記載の腰入れ処理方法。
- 請求項4から6のうち何れか一項に記載の腰入れ処理方法を使用し、熱処理及び腰入れ処理を行った鋸素材からなる丸鋸用基材又は帯鋸用基材を製造することを特徴とする丸鋸用基材又は帯鋸用基材の製造方法。
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