JPH11253556A - 注射器用摺動弁、注射器、及びキット製剤 - Google Patents

注射器用摺動弁、注射器、及びキット製剤

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JPH11253556A
JPH11253556A JP10057141A JP5714198A JPH11253556A JP H11253556 A JPH11253556 A JP H11253556A JP 10057141 A JP10057141 A JP 10057141A JP 5714198 A JP5714198 A JP 5714198A JP H11253556 A JPH11253556 A JP H11253556A
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sliding valve
sliding
butyl rubber
valve
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Hachiro Hisada
八郎 久田
Tetsuo Tokawa
哲郎 東川
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 剥離・脱離のおそれのない、潤滑性の良好な
摺動弁を有し、かつ、気密性・液漏れ防止性に優れた注
射器を提供する。 【解決手段】 潤滑成分が化学結合されたブチルゴムか
らなる注射器用摺動弁。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ディスポーザブル
シリンジなどの注射器に用いられる摺動弁に関する。
【0002】
【従来の技術】注射によって体内に導入される注射剤は
古くからアンプルやバイアルに詰めて供給されていた。
しかし、アンプル開封時に発生するガラス微粉末が体内
に入るおそれや、薬剤が空気に触れることにより各種障
害が生じるおそれがある等の問題があり、最近はディス
ポーザブルシリンジ内に予め薬剤が充填されたいわゆる
キット製剤で供給されることが多くなった。
【0003】ここで、ディスポーザブルシリンジは文字
通り使い捨てされるため、手軽で、かつ、血清肝炎等の
感染のおそれがないものとして現在広く使われている。
このものは、樹脂製ないしガラス製のシリンダー部とゴ
ムないしゴム性材料(「ゴム」と云う)製の摺動弁を有
するプランジャー部とからなる。
【0004】シリンダー部としてはガラス製とポリプロ
ピレン製との2種類が使われてきた。ここで、ガラス製
のシリンダー部を有するシリンジは耐薬性、ガスバリア
性に優れるため特にキット製剤に適しているとされてい
たが、高価でかつ使用後の処理に問題があった。一方、
ポリプロピレン製のものは耐薬性、ガスバリア性には劣
るものの、低廉でかつ使用後に焼却により処理できる利
点があった。なお、両シリンジはともに摺動弁の摺動性
を向上させるためにシリンジ本体内部及び摺動弁にシリ
コーンコーティング処理されていた。
【0005】注射において、注射剤は安全上及び有効に
働くためには緩徐に体内へ導入される必要があり、その
ために上記摺動弁の動きはなめらかである必要がある。
また、シリンダー内に薬液が収納されて、フロントスト
ッパとしてプランジャー部以外にも摺動弁を有するキッ
ト製剤の場合、シリンダー内部に摺動弁が2つあるた
め、摺動性の悪化による取扱性の低下は著しく、これを
改善するシリコーンコーティング処理は極めて重要な働
きを果たしていた。
【0006】ところが最近、シリコーンコーティング処
理の安全性に疑問があるとされるようになってきた。こ
のため、シリコーンコーティング処理を不要としなが
ら、ガラス製及びポリプロピレン製のシリンダー部のそ
れぞれの欠点をも解決するものとして、アモルファスポ
リオレフィン(環状オレフィンとα−オレフィンとの共
重合体)製のシリンダー部が提案された。すなわち、ア
モルファスポリオレフィン製のシリンダー部は、ガラス
製シリンジと異なり製造時にその内面を平滑な鏡面とす
ることが可能であり、シリコーンコーティング処理を不
要としながら良好な摺動性が得られるとされている。
【0007】しかし、実際に検討を行ってみると、シリ
コーンコーティング処理なしでもある程度の摺動性は得
られるものの、その摺動性は注射器として求められるレ
ベルに至らず、そのため、現在もシリコーンコーティン
グ処理が未だに行われているのが実状である。
【0008】一方、シリコーンコーティング処理に替わ
るものとして、シリンダー内部や摺動弁表面にフッ素樹
脂層を設ける等の対策が講じられている。しかしなが
ら、この場合摺動弁とシリンダー内部との接触部の癒着
が生じやすく、キット製剤のように摺動弁がシリンダー
内部先端部以外に長期間保持され、かつ、その位置から
患者に対して注射する必要がある場合などには特に問題
となった。また、上記シリンダー内部と摺動弁との癒着
部には微細なひびが生じることがあり、ガスバリア性、
延いては薬剤の安定性や安全性に疑問が生じる。
【0009】また、上記ゴム製の摺動弁に表面皮膜を形
成する方法も案出されているが、その剥離の予防が困難
で信頼性に欠ける。一方、テフロンなどの摺動材の微粉
末を混入した摺動弁も提案されたが、同様にこれら微粉
末の脱離が懸念される。
【0010】このように、潤滑性が良好で高度化・複雑
化するシリンジの機能を十全に発揮させることができ、
かつ、異物の剥離・脱離のおそれのない安全な摺動弁が
求められていた。
【0011】本発明は、上記従来技術の問題点を解決す
る、剥離・脱離のおそれのない、潤滑性の良好な摺動弁
を有する注射器を提供することをその課題とする。この
ように、潤滑性が良好で高度化・複雑化するシリンジの
機能を十全に発揮させることができ、かつ、異物の剥離
・脱離のおそれのない安全な摺動弁が求められていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、先に上
記課題を解決する、すなわち剥離・脱離のおそれのな
い、潤滑性の良好な摺動弁を有する注射器に関しての研
究を行い、既に特許出願を行っている。
【0013】しかしながら、その技術による注射器は、
摺動性等においては全く欠点がないものの、液漏れ防止
性・気密性に問題があることが判り、種々検討の結果、
液漏れ防止性・気密性に問題のない本発明の注射器に至
った。
【0014】すなわち、本発明は、剥離・脱離のおそれ
のない、潤滑性の良好な摺動弁を有し、かつ、気密性・
液漏れ防止性に優れた注射器を提供することを目的とす
る。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明の注射器用摺動弁
は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、潤
滑成分が化学結合されたブチルゴムからなることを特徴
とする注射器用摺動弁である。
【0016】また、本発明の注射器は、請求項5に記載
の通り、潤滑成分が化学結合されたブチルゴムからなる
摺動弁を有する注射器である。一方、本発明のキット製
剤は、請求項7に記載の通り、潤滑成分が化学結合され
たブチルゴムからなる摺動弁を用いるキット製剤であ
る。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明において用いられるブチル
ゴムとはイソブチレン‐イソプレンゴム(IIR)とも
呼ばれ、イソブチレンを主モノマーとして作製されるも
のである。通常、少量のイソプレンを含むイソブチレン
を塩化メチル中、冷却下塩化アルミニウムのようなルイ
ス酸触媒によりカチオン重合して合成して得られたもの
である。このようなものは、日本合成ゴムを始め、広く
入手可能である。また、このものは生体に悪影響を及ぼ
すおそれのある可塑剤等の有機物や無機物、有害金属等
を溶出させるおそれのない、あるいはそれらを含まない
医薬用途に適したものである必要がある。また、このも
のは、少なくとも、目的の薬剤に対して耐薬性があるも
のでなければならない。
【0018】なお、本発明においてはブチルゴムである
ことが必要である。他のゴムでは充分な液漏れ防止性・
気密性を得ることができない。本発明において、潤滑成
分としては、二硫化モリブデンなどの無機系の潤滑材を
用いることができるが、有機系の潤滑材が望ましい。こ
のようなものとしては、例えば炭化水素系やポリグリコ
ール系、或いはフッ素系のものが挙げられる。これら潤
滑成分を誘導化し上記ゴムに化学結合させる。化学結合
される潤滑成分量は潤滑性に大きな影響を及ぼすため、
種々検討して決定する必要がある。
【0019】なお、その他シリコーン系の潤滑剤も潤滑
成分として用いることができる。すなわち、本発明にお
いてはこれら潤滑剤、潤滑材は基材であるブチルゴムと
化学結合するため、従来シリコーン系潤滑剤で懸念され
ていた脱離の問題点が解消している。
【0020】化学結合の方法としては、通常のアミド結
合、エステル結合などの一般的な化学的手法で結合させ
ても良いが、予めゴムの架橋剤と反応する基を潤滑成分
に導入しておいてゴムの架橋時と同時に行う方法も採用
できる。
【0021】また、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエ
チレンや、テトラフルオロエチレンと他のコモノマーと
の共重合体等)などの反応性に乏しい潤滑材の場合に
は、求電子試薬(ヒンダードフェノール類やグリニャー
ル試薬など)をこれら潤滑剤と共にゴム成形時に添加し
て、顆粒反応と同時に化学結合させることができる。
【0022】潤滑材の大きさとしては直径10μm以上
50μm以下であることが好ましい。添加量はポリテト
ラフルオロエチレンを潤滑材として用いる場合にはブチ
ルゴム成分100重量部に対し5重量部以上60重量部
以下、特に10重量部以上50重量部であることが好ま
しい。
【0023】また、シリコーン系潤滑剤を用いる場合に
はブチルゴム成分100重量部に対し5重量部以上20
重量部以下、特に10重量部以上15重量部以下である
ことが好ましい。過量の場合にはブルームが生じるおそ
れがある。
【0024】以下、フッ素樹脂及びシリコーン系潤滑剤
を潤滑成分として用いる例について詳細に説明する。す
なわち、フッ素樹脂あるいはシリコーン系潤滑剤を潤滑
成分とした場合、摺動弁の動きが非常になめらかで、そ
の動き始めがスムーズであるので、静脈注射などの所定
箇所への注射が容易になるのは勿論であるが、その他例
えば、キット製剤などの場合シリンダー内にある注射液
全部を注射するのではなく、患者に合わせて注入量を調
整することがあるが、このような場合も所定量の注射が
極めて容易になるなどの効果がある。なお、潤滑材であ
るフッ素樹脂及びシリコーン系潤滑剤は、単独で潤滑成
分として用い得るが、両者を同時に使用することによ
り、さらに良好な潤滑性を得ることができる。また、高
粘度の高分子量のヒアルロン酸ナトリウムの膝関節腔内
への応用など、従来の注射器では困難であった投与も容
易に行うことができる。
【0025】上記において、求電子試薬はゴム成分に対
して相溶性があり、かつ、マトリックスのゴムの性質を
害さないものであることが必要である。このようなもの
としてはヒンダードフェノール類、例えば、ペンタエリ
スリチル−テトラキス[3−(3,5−t−ブチル−4
−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チ
オ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−
4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−
チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、
N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−
ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン等、及
びグリニャール試薬として、塩化イソプロピルマグネシ
ウムやヨウ化イソオクチルマグネシウムなどの含塩素・
含ヨウ素のものが挙げられる。これら求電子試薬は通常
ゴム成分100重量部に対し、0.1重量部以上10重
量部以下、特に0.2重量部以上5重量部以下配合する
ことが望ましい。
【0026】これら潤滑剤・潤滑材を求電子試薬及びゴ
ム原料(生樹脂及び加硫剤)と配合し、例えば金型内で
140℃以上180℃以下の温度で5分以上30分以
下、圧力50kg/cm2以上200kg/cm2以下の
圧力下で架橋処理を行うことにより潤滑成分が化学結合
された注射器用摺動弁を得ることができる。なお、架橋
はイオウ架橋、フェノール架橋、キノイド架橋などブチ
ルゴムの架橋において一般に知られた方法で行うことが
できる。
【0027】なお、上記以外に、必要に応じ各種改質剤
(老化防止剤、架橋助剤、加工助剤、補強剤、軟化剤、
着色剤、増量剤、酸化防止剤あるいは紫外線吸収剤等)
を添加することができるが、当然それらは注射器用摺動
弁原料としての安全性を有するものである必要がある。
【0028】本発明の注射器用摺動弁において、化学結
合により潤滑成分はブチルゴムと一体となるので、溶出
あるいは剥離等によって薬剤への混入するおそれが全く
なくなる。また、ゴム自体が潤滑性を有するため、シリ
コーンコーティング処理や潤滑膜等との併用が不要とな
るため、安全なものとなる。
【0029】上記摺動弁と組み合わせてシリンジを形成
するシリンダー部の材質としては、通常用いられるも
の、すなわち、ガラス、ポリプロピレンやアモルファス
ポリオレフィン等のポリオレフィン系重合物などが採用
できる。特に環状オレフィンコポリマーをユニットとし
て有するものが、安全性、耐熱・耐寒性、透明性、高精
度、ガスバリア性、耐薬性、その他の注射器に求められ
る諸性能を満足し、使用後焼却処分が容易であるため望
ましい。
【0030】
【実施例】・実施例I(通常の注射器での実施例1〜5
・比較例1〜10) まず本発明の注射器用摺動弁の操作性を通常の形状の注
射器で評価した。ここで本発明に係る潤滑成分が化学結
合されたゴム摺動弁を以下のように作製した。
【0031】すなわち、ブチルゴム(日本合成ゴム製、
ブチル268)、フィラー(日本シリカ製、ニプシール
VN3)酸化亜鉛、イオウ(コロイドイオウ)、加硫促
進剤として2−メルカプトベンゾチアゾール(M;大内
新興化学製)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(B
Z;大内新興化学製)、テトラメチルチウラムジスルフ
ィド(TT;大内新興化学製)、潤滑材であるポリ四ふ
っ化エチレン粉末(PTFE粉末、粒子径20μm以上
30μm以下)、及び潤滑剤であるシリコーン系グリー
スから表1の組成1に示した重量比となるよう混合して
得た未加硫ゴム組成物を金型内で160℃・15分、1
30kg/cm2の加圧下で加熱して摺動弁として成形
した(実施例1)。
【0032】このほか表1〜3の組成2〜組成13にそ
の組成を示す組成物を作製し、同様に加硫して摺動弁
(それぞれ実施例2〜5、比較例1〜8)を作製した。
これら実施例・比較例の摺動弁、及び、従来のシリコー
ンコーティング処理されたブチルゴム製摺動弁(前田産
業より入手。以下「シリコーンコートブチルゴム摺動
弁」と云う。比較例9)及びコート前の摺動弁(前田産
業より入手。以下「非コートブチルゴム摺動弁」と云
う。比較例10)と共に注射器用摺動弁として評価を行
った。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】評価試験の第1項目として気密性・液漏れ
防止性について評価を行った。シリンダーとしては5m
lのアモルファスポリオレフィン製シリンダー(前田産
業より入手)を用いて、上記摺動弁にプランジャを付け
てセットし、これらをディスポーザブル注射筒基準(第
2次改正)における気密の項目の圧力試験及び吸引試験
に準じて評価を行った。
【0037】その結果、実施例1〜5の本発明に係る摺
動弁、及び、比較例7〜10の従来技術に係る摺動弁を
用いた注射器では、気密性・液漏れ防止性について問題
がなかったが、比較例1〜6の摺動弁を用いた注射器で
は、実際にディスポーザブル注射器として用いることが
できないものであることが判った。そのため、以下の評
価は実施例1〜5の摺動弁、及び、比較例7〜10の摺
動弁について行った。
【0038】薬液注射試験を行った。これは、内科医1
0人をモニターとし、5mlのアモルファスポリオレフ
ィン製シリンダー(前田産業より入手)を用いたモニタ
ーテストを行ったものである。。なお、シリコーンコー
トブチルゴム摺動弁を用いたテストの場合のみ、シリコ
ーンコーティング処理されたシリンダーを用い、他の場
合にはシリコーンコーティング処理なしのシリンダーを
用いた。
【0039】注射液として生理食塩水を用い、静脈注射
を想定してテストを行った。プランジャーの押し始めの
感触(初期摺動性)、注入量4mlで中断する場合の容
易さ(取扱容易性)をそれぞれ10段階評価し、10が
最も良く、1が最も悪いとし、その結果を平均し、小数
点以下を四捨五入した。結果を表4に示す。なお、この
際、各モニターにはサンプルの詳細については説明せず
に、かつ、順不同に行った。
【0040】
【表4】
【0041】表4により、本発明に係る潤滑成分が化学
結合された摺動弁である組成1〜5による摺動弁での操
作性が著しく良好であることが判る。
【0042】なお、組成1〜5による摺動弁はいずれも
ポリテトラフルオロエチレンの粒子径20μm以上30
μm以下の粉末を有するが、これら粒子が脱離し、体
内、特に血管内に導入された場合、血流の障害となるお
それが考えられる。ここで、摺動弁からの脱離の有無に
ついて調査した。
【0043】これら摺動弁それぞれ3つずつ試験管に入
れ、これらに予め孔径0.45μmのフィルターで濾過
処理を行った生理食塩水10mlを加え、121℃・2
0分でオートクレーブ処理を行った。室温まで冷却させ
た後、摺動弁を取り出し、さらにこれら生理食塩水を孔
径0.45mlのフィルターで濾過し、そのフィルター
表面を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果、組成1
2及び組成13による摺動弁2種を用いた場合に若干の
粒子(直径10〜20μm)が観察され、これら粒子に
は電子プローブX線マイクロアナライザによりフッ素の
存在が確認されたが、組成1〜5による摺動弁を用いた
場合には、フィルター上に粒子は見られなかった。この
ことにより、本発明に係る潤滑成分が化学結合された摺
動弁である組成1〜5による摺動弁では、ポリテトラフ
ルオロエチレン粉末の脱離が完全に防止されていること
が確認された。
【0044】一方、シリコーン系グリスの脱離につい
て、組成2,組成3及び組成12からなる摺動弁を3つ
ずつ、それぞれジエチルエーテルを用いて8時間のソッ
クスレー抽出を行い、抽出分をKBr錠に滴下した後、
エーテルを除去し、FT−IR観察を行ったところ、組
成12による摺動弁ではシリコーン系グリスによると思
われる吸収が観察されたが、組成2及び組成3による摺
動弁ではそのような吸収は観察されなかった。このこと
により、本発明の摺動弁でのシリコーン系グリスの化学
結合による固定化が確認された。
【0045】・実施例II(キット式注射器での実施例
・比較例) 次にキット式注射器における実施例について説明する。
図1(a)〜(d)は本発明に係る潤滑成分が化学結合
されたゴムからなる注射器用摺動弁を有するキット式注
射器である。
【0046】図1(a)は使用前の状態、(b)は注射
中の状態、(c)は注射を終えた状態、(d)はシリン
ダーの断面形状(図1(a)におけるI−I断面図)を
示す。図において、符号21はアモルファスポリオレフ
ィン製のシリンダーで、両端に開口44、45を有し、
一方の開口44側の先端は断面が鉤型に曲がった鉤型先
端22となっている。符号23はシリンダーの後端部、
24は膨出部、25はプランジャーの摺動弁である。膨
出部24は図1(d)に示すようにシリンダー21の円
周の一部において膨出し、内部に連通路24’を形成す
る。
【0047】シリンダー21の内部中央付近にはフロン
トストッパ摺動弁26がはめこまれている。プランジャ
ーの摺動弁25及びフロントストッパ摺動弁26は、本
発明に係る組成1によるゴムからなり、外周面にリップ
が形成されている。シリンダー21の図の左端は、端部
仕切27で水密に封鎖され、これによってシリンダー内
には、プランジャーの摺動弁25とフロントストッパ摺
動弁26との間の空室28と、端部仕切27とフロント
ストッパ摺動弁26との間の空室29とが形成される。
端部仕切27には、注射接続部針30が嵌合され、注射
針接続部30にはキャップ31がはめらていて、内部を
外気から遮断するシールがなされている。
【0048】次に、この注射器の作用を説明する。図1
(a)において、シリンダー21の空室28には注射剤
が充填され、空室29内には何も充填されていない状態
で保管されている。空室29は上記キャップ31により
外気と遮断されているため、雑菌等が入り込むおそれが
ない。使用に際しては、まず、キャップ31をはずし、
注射針32をルアーロック方式ではめる。次に注射針3
2を上を向けて図1(b)に示したようにプランジャー
を押すと、フロントストッパ摺動弁26が膨出部24の
連通路24’に位置し、空室28内の注射剤が空室29
に移動する。空室29内の空気をすべて排出してから注
射針32を患者に刺す。注射剤は注射針32内を通って
患者体内に達する。
【0049】図1(c)は、注射が完了した状態を示
す。プランジャーが押し込まれ、端部仕切27、フロン
トストッパ摺動弁26及びプランジャーの摺動弁25が
相互に密着した状態となるが、このとき、プランジャー
の摺動弁25の先端(注射針側)が連通路24’に達し
ていて、空室28内の注射剤をすべて注射することがで
きる。また、端部仕切27の通路27bも通路24’内
にあるように、端部仕切27、フロントストッパ摺動弁
26及びプランジャーの摺動弁25の軸方向の厚さと、
膨出部24の長さ及び位置が決定されている。
【0050】このような注射器は、注射の際には摺動弁
を2つ同時に動かすため、潤滑剤を塗布していない注射
器では力が必要となり、静脈注射等の微妙な動作が困難
であった。しかしながら、本発明に係る摺動弁を用いる
ことにより潤滑剤を不要としながらも良好な潤滑性を有
する摺動性が得られるため、注射動作を極めてスムーズ
に行うことができ、注射液は緩徐に体内へ導入される。
【0051】このキット式注射器用に前記組成1〜13
による摺動弁を作製した。液漏れ、気密性を評価したと
ころ、組成6〜11による摺動弁は実際の使用に耐えな
いことが判ったため、組成1〜5、組成12及び組成1
3からなる7種の摺動弁と、シリコーンコートブチルゴ
ム摺動弁、及び非コートブチルゴム摺動弁とをを用い
て、平均分子量が90万のヒアルロン酸ナトリウムを用
い、以下、膝関節腔内へのヒアルロン酸ナトリウムの注
入を想定したモニターテストを行った。
【0052】キット製剤を想定して、5mlのアモルフ
ァスポリオレフィン製シリンダーに1%ヒアルロン酸ナ
トリウム溶液(粘稠な液状を有する)2.5mlを予め
注入したシリンジを上記7種の摺動弁を用いて図1に示
すキット式注射器を通常の製造方法によりそれぞれ試作
し、常温の室内で3月間放置した。これらシリンジを用
い、バイアル瓶内の塩酸リドカイン1mlを各シリンジ
内に吸引した後、全量投与すると云う想定で評価を行っ
た。なお、シリコーンコートブチルゴム摺動弁を用いた
テストの場合のみ、シリコーンコーティング処理された
シリンダーを用い、他の場合にはシリコーンコーティン
グ処理されていないシリンダーを用いた。
【0053】これら摺動弁の摺動性を整形外科医のモニ
ター10人により10段階で評価し、10が最も良く、
1が最も悪いとし、その結果を平均し、小数点以下を四
捨五入した。結果を表5に示す。
【0054】
【表5】
【0055】表5により、本発明に係る摺動弁である組
成1〜5による摺動弁を用いた場合、キット製剤として
の操作性が優れたものであることが判る。特に、これら
組成1〜5による摺動弁での操作性が、同様にPTFE
粉末を系内に有する組成12あるいは13による摺動弁
より優れていることは、組成1〜5による摺動弁の潤滑
成分が化学結合により固定されていることによる効果と
して着目すべき点である。
【0056】
【発明の効果】本発明の注射器用摺動弁を用いることに
より、良好な摺動性を有しながら、生体に悪影響を及ぼ
すおそれのある潤滑油や剥離・脱離の危険がある摺動材
や表面皮膜を不要とし、かつ、液漏れのない気密性の高
い注射器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の摺動弁を有する注射器を示す図であ
る。 (a)使用前の状態 (b)注射中の状態 (c)注射を終えた状態 (d)シリンダーの断面形状
【符号の説明】
21 シリンダー 24 膨出部 27 端部仕切 25 プランジャーの摺動弁 26 フロントストッパ摺動弁 27b 通路 28 室 30 注射針接続部 32 注射針

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 潤滑成分が化学結合されたブチルゴムか
    らなることを特徴とする注射器用摺動弁。
  2. 【請求項2】 上記潤滑成分がポリテトラフルオロエチ
    レン及びシリコーン系潤滑剤のうち、少なくとも1種で
    あることを特徴とする請求項1に記載の注射器用摺動
    弁。
  3. 【請求項3】 上記潤滑成分が求電子試薬により化学結
    合されていることを特徴とする請求項1または請求項2
    に記載の注射器用摺動弁。
  4. 【請求項4】 上記求電子試薬がヒンダードフェノール
    類及びグリニャール試薬から選ばれた1種以上であるこ
    とを特徴とする請求項3に記載の注射器用摺動弁。
  5. 【請求項5】 潤滑成分が化学結合されたブチルゴムか
    らなる摺動弁を有することを特徴とする注射器。
  6. 【請求項6】 シリンダー部がアモルファスポリオレフ
    ィン、ガラス、ポリプロピレンから選ばれた材質からな
    ることを特徴とする請求項5に記載の注射器。
  7. 【請求項7】 潤滑成分が化学結合されたブチルゴムか
    らなる摺動弁を用いることを特徴とするキット製剤。
  8. 【請求項8】 注射針接続部を覆う着脱可能なキャップ
    を有し、かつ、内部を外気から遮断するシールがなされ
    ていることを特徴とする請求項7に記載のキット製剤。
JP10057141A 1998-03-09 1998-03-09 注射器用摺動弁、注射器、及びキット製剤 Withdrawn JPH11253556A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016535145A (ja) * 2013-08-16 2016-11-10 モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク 自己潤滑性医薬品シリンジストッパ

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