JPH11245270A - キャピラリー電気泳動用チップ及び電気泳動装置 - Google Patents

キャピラリー電気泳動用チップ及び電気泳動装置

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JPH11245270A
JPH11245270A JP5071998A JP5071998A JPH11245270A JP H11245270 A JPH11245270 A JP H11245270A JP 5071998 A JP5071998 A JP 5071998A JP 5071998 A JP5071998 A JP 5071998A JP H11245270 A JPH11245270 A JP H11245270A
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JP
Japan
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mold
resin
injection
chip
capillary electrophoresis
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JP5071998A
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English (en)
Inventor
Shigemi Mukoyama
滋美 向山
Akira Kiguchi
昌 木口
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 有害な薬品を使用することなく製造され、取
り扱いが容易であって、分離、一定量のサンプリング、
混合の操作に高精度を有し、装置間の再現性も優れる、
安価なキャピラリー電気泳動装置を提供する。 【解決手段】 熱可塑性樹脂の射出成形品であり、かつ
寸法精度に優れた溝からなる流路を表面に有するキャピ
ラリー電気泳動用チップを用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、キャピラリー電気
泳動用チップ及びャピラリー電気泳動装置に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】従来から電気泳動は、タンパク質成分の
検出等の分析に用いられており、特に代表的な電気泳動
分析であるスラブゲル電気泳動分析は微量分析に適して
いるため、タンパク質、アミノ酸、アルカロイド、色素
などの多くの有機物の分析に利用されており、医化学、
生化学、免疫学の方面で活用されている。
【0003】また、近年、更に高い分離性能が得られる
電気泳動法として、キャピラリー電気泳動が登場し、ペ
プチド、タンパク質、核酸、糖等の生体分析の他、光学
分割、同位体の分離等、極めて近い成分を高速で分離す
るのに適した方法として、臨床診断や医薬品、環境物質
の分析等に広く利用されている。
【0004】このキャピラリー電気泳動の装置は、内径
100μm程度もしくはそれ以下のガラスキャピラリー
やフューズドシリカキャピラリー内に泳動バッファーを
充填し、一方の端に試料を導入した後、キャピラリーの
両端に高電圧を印加し、分析対象物をキャピラリー内で
展開することにより、極微量試料を高速且つ高分解能で
分析するというものである。
【0005】このように、キャピラリー電気泳動は、分
析感度が高く、また必要な溶媒や試料の量が極めて少な
く、しかも高速で分析できるという利点がある。
【0006】しかしながら、キャピラリーの内表面の状
態は泳動液によって敏感に変化するため、泳動液を交換
する際には十分な状態調整作業が必要である。
【0007】このような泳動液の交換作業を行わなくて
もすむように、泳動液ごとにキャピラリーを準備してお
くことも可能であるが、使用するキャピラリーの外径が
100〜数100μm程度と細く、キャピラリー交換時
の取り扱いが容易でない等の問題がある。
【0008】このような問題点を解決するために、透明
プラスチック又はシリコンや石英やガラスの透明無機材
料から作られた2枚の基板を接合して形成された小型の
キャピラリー電気泳動装置が提案されている。この電気
泳動装置は、各試料、各分析条件毎に装置を準備してお
くことにより、条件の変更等を簡便に且つ短時間に行う
ことができるようにするものである。
【0009】上記透明プラスチック製小型平板キャピラ
リー電気泳動装置としては、射出成形によって作られた
分離用の溝を有するアクリル樹脂製電気泳動装置(R
MMccormick et al./Anal. C
hem. Vol.69,No.14(1997)26
26−2630)、透明樹脂にエッチングにより分離用
の溝を形成した電気泳動装置(特開平2−259557
号公報)、フォトリソグラフィーにより作られた分析用
の溝が形成された電気泳動装置(特開平5−60728
号公報、特開平6−294771号公報)等が提案され
ている。また、上記シリコンや石英やガラス製の小型平
板状キャピラリー電気泳動装置が、A.Manz et
al./Trac. Vol.10,No.5(19
91)144−149、A.Manz et al./
Adv. Chromatogr. Vol.33(1
993)1−66、奥村昭彦 et ai./クロマト
グラフィー Vol.17,No.2(1996)12
6−127、特開平5−80032号公報、特開平8−
327594号公報等で提案されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
射出成形によって作られた電気泳動装置は、溝形状の金
型に対する転写精度が悪く寸法精度に劣る溝となってい
る。このため、1つの電気泳動装置による繰り返し分析
の分離精度は優れているが、装置間の再現性は劣るもの
となっている。また、エッチングやフォトリソグラフィ
ーにより作られた電気泳動装置は、製造において、薬品
を使用したり、半導体製造等に用いられるような高価な
設備を必要とする。
【0011】一方、シリコンや石英やガラス製の平板状
の小型キャピラリー電気泳動装置は、半導体集積回路を
作る技術を発展させた方法(フォトリソグラフィー技術
とエッチング技術の組み合わせ)により、1枚ずつ、チ
ップ上に溝が形成されるために流路(溝)設計の自由度
が高く、試料の前処理、試料の濃縮、試料と試薬の混合
等の機能を持たせる溝を分離分析用の溝に加えた複合装
置を容易にデザインすることも可能である。
【0012】しかしながら、製造工程において、多くの
有害な薬品を使用すると共に、製造工程が長く、また半
導体製造等に用いられる高価な大型設備を必要とする。
【0013】キャピラリー電気泳動装置は、小型平板状
のものが提案され、取り扱い性が改善されると共に、無
機材料の装置については、分離処理に加え、試料の前処
理、試料の濃縮、試料と試薬の混合等の機能を複合化し
た装置をデザインすることも可能となってきたが、未だ
に、精度及び装置間の再現性を有し、且つ、安価な大量
生産が可能なキャピラリー電気泳動装置はなく、精度、
再現性、デザイン性及びコスト性に優れるキャピラリー
電気泳動装置の開発が望まれているのが現状である。特
に、医療診断用の分析用途に用いる場合には、装置とし
ての信頼性、すなわち装置間での器差がないことが重要
である。
【0014】本発明は、上記従来の技術に鑑みてなされ
たもので、取り扱いが容易であって、分離、一定量のサ
ンプリング、混合等の操作の精度及び装置間の再現性を
有し、有害な薬品を使用することなく製造でき、しかも
安価なキャピラリー電気泳動装置の提供を目的としたも
のである。
【0015】
【問題を解決するための手段】本発明者等は、上記の目
標を達成すべく鋭意研究を行った結果、熱可塑性樹脂の
射出成形品であって、しかも寸法精度に優れた溝からな
る流路を表面に有するキャピラリー電気泳動用チップを
用いることにより、有害な薬品を使用することなく製造
され、取り扱いが容易であって、分離、一定量のサンプ
リング、混合等の操作の精度を有し、装置間の再現性も
優れる、安価なキャピラリー電気泳動装置が作れること
を見いだし、本発明を完成した。
【0016】すなわち本発明は、幅が1〜500μm、
深さが0.1〜1000μm、断面積が1〜25000
0μmの寸法精度に優れた溝からなる流路を表面に有
しており、しかも熱可塑性樹脂の射出成形品であるキャ
ピラリー電気泳動用チップを提供するものである。
【0017】また、本発明は、幅が1〜500μm、深
さが0.1〜1000μm、断面積が1〜250000
μmの寸法精度に優れた溝からなる流路を表面に有し
ており、しかも熱可塑性樹脂の射出成形品であるキャピ
ラリー電気泳動用チップと、別のチップとが、該キャピ
ラリー電気泳動用チップの該流路を内側にして張り合わ
されているキャピラリー電気泳動装置を提供するもので
もある。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明におけるキャピラリー電気
泳動用チップの表面に有する溝からなる流路の断面形状
は、四角形、三角形等の多角形の形状、半円形、半楕円
形等、特に形状はとわない。また、チップが何種類かの
異なった形状の溝を組み合わせてなる流路を表面に有し
ていてもよい。溝の上面(開放面)の幅は、溝の下面
(底)の幅と同じであるか又は広くてもよい。好ましい
溝断面形状は四角形である。
【0019】この溝は、あまり小さすぎると、微粒子に
より流れが乱される原因となり、またあまり大きすぎる
と、拡散により試料のバンドが広がってしまう原因とな
るため、幅が1〜500μm、深さが0.1〜1000
μm、断面積が1〜250000μmであることが必
要である。好ましくは、幅が2〜200μm、深さが1
〜200μm、断面積が2〜40000μmである。
【0020】本発明のキャピラリー電気泳動用チップ
は、その表面に有する溝の寸法精度が優れいていること
が特徴である。溝の寸法精度は、操作の精度及び装置間
の再現性を得るため、金型の凸形状(成形されたチップ
では溝となる)に対し、幅及び深さにおいては±5%以
内、断面積においては±7%以内の寸法精度(寸法転写
精度)を有することが好ましい。さらに好ましくは、幅
及び深さが±2%以内、断面積が±4%以内の寸法精度
を有する。
【0021】本発明のキャピラリー電気泳動装置は、上
記のキャピラリー電気泳動用チップの少なくとも1枚を
含む2枚のチップを、流路を内側にして、超音波融着、
熱融着、ホットメルト接着剤やUV接着剤等の接着剤に
よる接着、粘着剤による粘着、直接又は薄い弾性シート
を介しての圧接等の方法で張り合わせてつくられる。溝
を有していない(キャピラリー電気泳動用チップ以外
の)チップとしては、メタクリル樹脂シート、ポリカー
ボネートシート、ポリスチレンシート等の樹脂製の平板
状シートあるいガラスシート(薄いガラス板)等を用い
ることができるが、分析に分光計を用いる場合は、分光
に対し吸収が小さいシートを用いることが好ましい。シ
ートの厚みは、分析において分光の吸収等の分析の障害
になることがなければ特に限定されるものではないが、
0.05〜数mm程度が好ましい。
【0022】本発明のキャピラリー電気泳動用チップの
流路には、分離を主な目的とした流路部分、一定量のサ
ンプリングを主な目的とした流路部分、試薬や試料の混
合を主な目的とした流路部分、試薬や試料の移送を主な
目的とした流路部分等、部分毎に異なった操作を主な目
的とした流路部分をつくることができる。当然1つの流
路部分が複数の目的を兼ね備えていても良い。また、本
発明のキャピラリー電気泳動装置は、流路が、1つの操
作を主な目的とした流路部分のみからなっていても良い
が、複数の各々異なった操作を主な目的とした流路部分
を組み合わせた流路となっていることにより、単なる定
性分析ではなく、定量分析や反応等を伴うような高度な
分析が可能なキャピラリー電気泳動装置とすることがで
きる。
【0023】分離を主な目的とした流路部分の形状とし
ては、直線の形状、蛇行状や渦巻き状に曲げられた形状
などの形状が挙げられる。蛇行状や渦巻き状に曲げられ
た形状は、チップ長辺の長さより長い分離のための流路
が得られるため、直線の形状より分離性能を上げること
ができる。
【0024】一定量のサンプリングを主な目的とした流
路部分の形状は、2本の流路が十字にクロスしている図
1に示すような形状又は1本の流路に対し2本の流路が
各々T字に合流する図2に示すような形状であり、好ま
しくは図2の形状である。
【0025】図1の形状の流路における一定量のサンプ
リングは、試料や試薬をまずAよりBに向かって流した
後Bへの流れを止め、次に試料や試薬をAよりDに向か
って一定時間流した後Aからの流れを止め、更にCから
Dに向かって泳動液を流すことにより行われる。この場
合には、溝の断面積と流速と時間により一定量のサンプ
リングが行われる。
【0026】また、図2の形状の流路における一定量の
サンプリングは、試料をまずAよりBに向かって流した
後流れを止め、次にCからDに向かって泳動液を流すこ
とにより行われる。この場合には、溝の断面積とT字状
の流路の合流点EとT字状の流路の合流点Fの長さによ
って一定量のサンプリングが行われる。この形状では、
溝が寸法精度良くつくられていれば、液の流速や流した
時間に関係することなく、溝の断面積とEとF間の長さ
によってのみ量が決まり、また溝の断面積とEとF間の
長さを変えることより任意に量を設定できるため、より
好ましい一定量のサンプリングを行うことができる。
【0027】試薬や試料の混合を主な目的とした流路部
分の形状は、1本の流路に他の流路を合流させた形状や
1本の流路に複数本の流路を一カ所で交流させた形状で
ある。1本の流れに他の流れまたは複数の流れを合流さ
せ一本の流れとすることにより、混合操作を行うことが
できる。また、この時、各々の流量を変え、異なった比
率での混合も可能である。さらに、上記とは逆に、1本
の流れが多数本に別れる流れ(流路を分岐)とすること
により、分流を行うことも可能である。
【0028】本発明のキャピラリー電気泳動装置を使用
する分析装置の構成例として、試料の注入口、試料の出
口、泳動液の入り口、泳動液の出口の計4つの開口部、
図2の形状の一定量のサンプリングのための流路および
分離のための流路を有するキャピラリー電気泳動装置を
使用した1つの例を説明する。
【0029】各開口部には、電圧を印加するための細い
白金電極が装着される。また、泳動液の出口の近傍(少
し手前)に分光計が配置される。分光計は、溝の上方か
ら分光を照射する照射部と溝の下方で照射された分光を
検出する検出部から構成され、分光が溝を透過するよう
に配置される。試料の分析操作は、泳動液そして試料を
入れた後、試料をまず試料入り口より試料出口に向かっ
て流した後流れを止め、次に泳動液入り口から泳動液出
口に向かって泳動液を流すことによりサンプリングを行
い、ひき続き泳動液入り口から泳動液出口に向かって泳
動液を流しサンプリングした試料を分離のための流路に
導いて試料の分離を行うと共に、分離された試料を検出
するための流路(分光が透過する溝部)に導くことで分
光計により検出(分析)が行える。
【0030】本発明のキャピラリー電気泳動装置は、泳
動液又は試料の入り口のため又は出口のためさらには電
極を差し込むための開口部を、張り合わせる2枚のチッ
プのいずれかのチップに貫通孔の形で有している。貫通
孔は、キャピラリー電気泳動用チップ側の各流路の端部
につくられているか、又は張り合わせるもう1枚のチッ
プ側のキャピラリー電気泳動用チップの各流路の端部と
合わさる部分につくられている。貫通孔の大きさは、特
に限定されるものではないが、開口直径0.1〜数mm
程度が好ましい。
【0031】本発明のキャピラリー電気泳動装置では、
流路パターン(構成)を変えることにより、多くの目的
で使用することができる。例えば、分離を主な目的とし
た流路を中心に構成して定性分析用として、定量サンプ
リングを主な目的とした流路部分と分離を主な目的とし
た流路を組み合わせた構成として定量分析用として、定
量サンプリングを主な目的とした流路部分と、混合を主
な目的とした流路部分と、分離を主な目的とした流路部
分とを組み合わせた構成として反応を伴う定量分析用と
して、定量サンプリングを主な目的とした流路部分と、
混合を主な目的とした流路部分とを主に組み合わせた構
成として分離をあまり伴わない分析用として等、多くの
分析目的に使用できる。また、同様に、複数の各々異な
った操作を主な目的とした流路部分を組み合わせた流路
とすることにより、微量試料での反応実験用や分取実験
用等の多くの実験用装置として使用することも可能であ
る。この場合には、分光計等の分析機器と組み合わせな
くても良いが、組み合わせることにより反応や分離の状
態をモニターすることも可能である。
【0032】本発明で使用される熱可塑性樹脂は、一般
の射出成形等に使用できる熱可塑性樹脂である。良好に
使用できるのは非結晶性熱可塑性樹脂、非結晶性樹脂が
主成分の熱可塑性ポリマーアロイ、あるいは結晶化度が
低い一部の結晶性熱可塑性樹脂である。特に良好に使用
できるのは、透明な硬質非結晶性樹脂であり、例えばポ
リスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等の
スチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、メチルメ
タクリレート−スチレン共重合体等のメタクリル樹脂、
ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホ
ン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート等である。
【0033】本発明のキャピラリー電気泳動用チップ
は、熱可塑性樹脂の射出成形品であるが、特に金型を用
いた熱可塑性樹脂の射出成形品が好ましい。なお、射出
成形品とは、射出成形品、射出圧縮成形品のいずれかで
あることを意味する。
【0034】金型は鉄又は鉄を主成分とする鋼材、アル
ミニウム、又はアルミニウムを主成分とする合金、亜鉛
合金、ベリリウム−銅合金等の一般に合成樹脂の成形に
使用されている金属金型が良好に使用できる。
【0035】金型作製方法の1つの例を挙げると、金
属、プラスチック、シリコン又はガラス等の材料からの
切削加工、エッチング加工又は紫外線硬化樹脂のフォト
リソグラフィ加工等の方法により、目的とするキャピラ
リー電気泳動用チップの表面形状有する母型を1つ作成
し、この母型からニッケル等の電気化学的鋳造法により
作製する方法が挙げられる。
【0036】次の6つの射出成形品は、型表面転写性に
優れた射出成形によって得られるものであることから、
本発明のキャピラリー電気泳動用チップに特に良好に使
用できる。
【0037】(1)樹脂の金型キャビティへの充填工程
中に、金型に接する樹脂表面の固化温度を低下さつつ成
形された射出成形品。
【0038】(2)断熱層被覆金型を用いた射出成形
品。
【0039】(3)射出直前に高周波誘導加熱で金型表
面を加熱して成形された射出成形品。
【0040】(4)射出直前に輻射加熱で金型表面を加
熱して成形された射出成形品。
【0041】(5)樹脂を振動させつつ射出して成形さ
れた射出成形品。
【0042】(6)金型を振動させつつ射出して成形さ
れた射出成形品。
【0043】次に、上記各射出成形品を得るための射出
成形方法について順次説明する。
【0044】(1)の射出成形品を得るための射出成形
方法について詳しく述べる。
【0045】樹脂の金型キャビティへの充填工程中に、
金型に接する樹脂表面の固化温度を低下させつつ成形す
る(1)の成形品の射出成形方法は、従来金型表面の転
写を阻害すると考えられていた金型キャビティ内のガス
体に着目したものであり、その効果が発現されるメカニ
ズムは次のように考えられる。
【0046】射出成形では、樹脂は金型キャビティ内を
常に層流で流れ、冷却された金型壁面に接触するとその
界面に固化層が形成され、後から充填される樹脂はその
固化層の内側を流動して前進し、樹脂流動先端部(フロ
ーフロント)に達してから金型壁面に向かうファウンテ
ンフローと呼ばれる流動をする。金型キャビティを二酸
化炭素等、樹脂に溶解し易く且つ可塑剤として働く特定
のガス体で、適度なガス圧力で満たした状態で樹脂を充
填すると、該特定ガス体は流動樹脂のフローフロントで
吸収されたり、金型と樹脂の界面に入り込み、樹脂表面
層に溶解する。樹脂に溶解したガス体は可塑剤として作
用し、樹脂表面だけ固化温度を選択的に低下させたり、
樹脂の溶融粘度を下げる。薄い樹脂表面層だけ固化温度
が下がり、固化温度が金型表面温度以下となれば、樹脂
充填工程中の固化が起きず、成形品の金型表面転写性を
著しく改良することができる。
【0047】一方、樹脂表面層に溶解したガス体は時間
とともに樹脂内部に拡散し、樹脂表面層の固化温度が上
昇するため、通常の樹脂冷却時間内で表面層は固化し、
製品として取り出すことができる。この結果、樹脂充填
工程中に金型に接する樹脂表面の固化温度を低下させつ
つ成形し、型壁面転写性に優れた本発明のチップが得ら
れる。
【0048】この方法では、使用するガス体が使用する
樹脂に良く溶解するものであることが好ましい。ガス体
として二酸化炭素を使用する場合、二酸化炭素との親和
性が高く、二酸化炭素の溶解度が高い樹脂の方が大きな
効果が得られる。ここに述べる樹脂の固化温度とは、溶
融した熱可塑性樹脂が金型内で固化する温度であり、非
結晶性樹脂ではガラス転移温度である。また、金型キャ
ビティに充填するガス体とは、ガス体の熱可塑性樹脂へ
の溶解度が大きく、樹脂の固化温度において空気及び/
又は窒素の2倍以上であり、樹脂の可塑化効果を有する
ガス体である。
【0049】すなわち、ガス体は金型キャビティに存在
し、樹脂充填工程中に樹脂表面に吸収されて、金型に接
する樹脂表面の固化温度を低下させるガス体である。樹
脂への溶解度が空気や窒素程度のガス体では、従来から
知られるように、金型キャビティ中で金型表面の転写を
阻害するだけであり、少なくともこれらの2倍以上の樹
脂への溶解度が必要である。また、樹脂を劣化させない
こと、金型や成形する環境に対し危険性がないこと、安
価であること等の制約から選定される。
【0050】ガス体は樹脂への溶解度が大きいものであ
れば2種以上の混合物であっても使用できる。具体的に
は、二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン等の炭化水
素、及びその一部の水素をフッ素等で置換したフロン等
であり、使用する熱可塑性樹脂により最適なものが選択
される。この中でも二酸化炭素は安全性、価格、取り扱
いやすさ等の点で最も良好に使用できるだけでなく、樹
脂に良く溶解して可塑剤となり、樹脂の固化温度を低下
させる効果も大きいことから好ましい。
【0051】最も良好に使用されるガス体である二酸化
炭素の各樹脂への溶解量、二酸化炭素溶解による樹脂の
ガラス転移温度(以後Tgと略称する)の低下等につい
ては、成形加工′96,279(1989)、J.Ap
pl.Polym.Sci.,Vol.30,4019
(1985)、J.Appl.Polym.Sci.,
Vol.30,2633(1985)、J.Membr
ane ci.,Vol.5,63(1979)等に
示されている。
【0052】金型キャビティに封入するガス体の圧力
は、高い圧力になるほど多量のガス体が樹脂に溶解する
ため、より固化温度が低くなり、低い金型温度でも樹脂
充填工程中の固化を防止できることになる。実用的に
は、要求する金型表面転写性の程度、樹脂やガス体の種
類、金型温度等から必要なガス圧力が決まり、高い溶解
性を持つガス体を使用し、金型温度を高く設定すれば低
いガス圧力で十分な転写性を得ることもできる。
【0053】圧力の下限は、樹脂に溶解したガス体の可
塑剤効果から決まり、樹脂の固化温度において、平衡状
態で0.1重量%樹脂に溶解する圧力であり、好ましく
は0.5重量%溶解する圧力である。ここで用いるガス
体の樹脂への溶解度は、圧力降下法による測定値であ
る。これ以下の圧力や、大気圧であっても、二酸化炭素
等の溶解性の高いガス体を使用すれば、金型キャビティ
を真空ポンプにより減圧にしたときと同等以上の転写性
向上効果を得ることができる。低い圧力で使用する場合
は、金型キャビティを可能な限り特定ガス体で置換する
ことが好ましい。
【0054】また、圧力の上限は特に限定はないが、あ
まりに高圧になると金型を開こうとする力が無視できな
くなったり、金型のシールが難しくなる等の問題が生じ
やすいことから、15MPa以下が実用的であり、好ま
しくは10MPa以下である。ガス圧力は1工程に使用
するガス体の量を最小限に押さえ、金型のシールやガス
供給装置の構造を簡単にするために、要求する効果が得
られる範囲で低い方が好ましい。
【0055】型閉時に型内に残る空気は、型締め中や型
締め完了後にガス体を供給して置換した方が好ましい
が、使用するガス圧力が1MPaを超えるような場合、
空気の影響はほとんど無視できる。樹脂充填後、金型キ
ャビティ外に押し出されたガス体を解放し、大気圧とす
る。ガス体の解放は、金型キャビティ内を溶融樹脂で満
たした後に行う。樹脂充填後は金型表面状態を成形品に
転写するため、成形品表面が固化するまで金型キャビテ
ィ内の樹脂に十分な圧力を与えることが望ましい。金型
表面の溝及び/又は突起を寸法精度良く転写するには、
溝内部のガス圧力に対抗して樹脂を金型に押し付ける必
要があり、それに必要な樹脂圧力で成形することが望ま
しい。
【0056】樹脂中に溶解したガス体は、樹脂の成形後
に成形品を大気中に放置すれば徐々に大気中に放散す
る。放散により成形品に気泡を生じることはなく、放散
後の成形品の機械的性能は通常の成形法で成形したのと
変わらない。
【0057】金型キャビティへの特定ガス体の注入は、
一般に金型キャビティのガス抜きに用いられる金型構造
を用いれば可能であり、金型キャビティ外周のパーティ
ング面に設けたスリット、金型入れ子や突き出しピンの
隙間、ガス抜きピン、多孔質焼結体でできた入れ子等が
使用できる。
【0058】金型キャビティを大気圧付近のガス体で置
換する場合、金型キャビティの空気を、できるだけ短時
間に、できるだけ少量のガス体で、できるだけ100%
近く置換する経済的な方法が好ましく、金型スプルから
特定ガス体を吹き込む方法が適している。金型キャビテ
ィへ樹脂を充填するに先立ち、金型スプル付近より特定
ガス体を注入してから射出すると、特定ガス体が樹脂に
より押されて、特定ガス体により金型キャビティに残存
する空気を金型外へ排出しつつ樹脂を金型キャビティに
充填することができる。すなわち、金型のスプル、ラン
ナ、ゲート付近を十分に特定ガス体で置換すれば、樹脂
に触れるガス体は常に注入した特定ガス体となる。
【0059】図3は金型キャビティを加圧する特定ガス
体を金型のスプル部分から注入するノズルを示す。図3
において、射出シリンダ1に連結されたノズル2にはノ
ズル口3を開閉するニードル弁4がある。ノズル2の先
端部は空間6を残してアウタノズル5に覆われており、
ノズル本体2とアウタノズル5間の空間6は通路7を通
して特定ガス体源と連結している。アウタノズル5が軽
く金型に接触すると空間6は金型キャビティに連結さ
れ、この状態で特定ガス体を空間6を介して金型へ圧入
する。次いで、射出シリンダ1が前進してアウタノズル
5が金型に強く押し付けられると、アウタノズル5を金
型に押し付けていたスプリングが圧縮され、ノズル本体
2が前進してその先端がアウタノズル5に密着し、空間
6と金型との連結は遮断される。この状態で射出シリン
ダ1より樹脂を金型に充填する。
【0060】本発明には、特定ガス体を金型キャビティ
に大気圧から1MPa程度の低い圧力で満たし、次いで
溶融樹脂の充填により金型キャビティの特定ガス体を圧
縮し、ガス圧力を増加させつつ成形する方法も含まれ
る。Oリング等で金型キャビティのガス体をシールした
構造の金型を用い、金型キャビティを特定ガス体で大気
圧から1MPa程度の低い圧力で満たし樹脂を充填する
と、樹脂により特定ガス体は圧縮され、樹脂充填が進む
程ガス圧力は上昇する。特定ガス圧力が上昇すると樹脂
中に溶解するガス量が増大し、溶解した特定ガス体によ
り樹脂は可塑化され、流動性は良くなり、高い金型表面
転写性を得ることができる。金型表面の微細な突起及び
/又は溝の転写に対して特に有効である。
【0061】一般に、微細な突起及び/又は溝の角部は
樹脂流動中の固化や溝にトラップされた空気のために、
十分奥まで樹脂が入り込めない場合が多いが、本成形法
ではトラップされたガス体が樹脂に吸収されるため樹脂
充填の障害となることが少なく、吸収されたガス体の可
塑剤効果により樹脂の固化温度が下がり、流動性が増す
ため、角部の奥まで樹脂を充填し、寸法精度に優れた溝
を有する本発明のキャピラリー電気泳動用チップを得る
ことができる。
【0062】この(1)の成形品の射出成形方法では、
金型キャビティのガス体圧力がより低圧で型表面再現性
効果をもたらす別の成形法も同時に使用できる。すなわ
ち、樹脂に溶解し可塑剤となる液体を、金型と溶融樹脂
が接触する界面に存在させることにより、成形工程中に
樹脂表面の固化温度を低下させつつ成形する成形法も含
まれる。適度に可塑剤を選定し、適度な厚みに型表面に
被覆することにより、成形品の型表面再現性が改良され
る。また、二酸化炭素等を溶解し易い液体の気化物及び
/又は霧状微粒子状に分散した該液体を含む二酸化炭素
等を、冷却した金型のキャビティへ圧入して成形する成
形法も含まれる。ここに述べる液体は二酸化炭素等の溶
解量が大きく、沸点が金型温度以上で樹脂に良く溶ける
液体である。二酸化炭素の溶解量が大きな、樹脂の良溶
剤、可塑剤が良好に使用できる。一般には水、アセト
ン、メチルエチルケトン等のケトン類、エチルアルコー
ル等のアルコール類や種々の極性溶剤等が使用できる。
【0063】さらに、二酸化炭素を溶解し易い液体の気
化物を含む加熱二酸化炭素及び/又は霧状微粒子状に分
散した該液体を含む二酸化炭素を、冷却した金型のキャ
ビティへ圧入して、冷却されたキャビティ表面に結露等
により樹脂の可塑化効果を有する二酸化炭素を多量に含
む液体の薄層でキャビティ表面を被覆し、該表面に成形
中の樹脂を押し付けて、樹脂表面層に多量の二酸化炭素
を含浸させて成形品の金型表面転写性を良くすることも
できる。すなわち、型表面に多量の二酸化炭素を含有す
る液体を存在させることにより、キャビティ中に低圧力
の二酸化炭素を供給するだけで、十分な量の二酸化炭素
を樹脂表面に供給する方法である。
【0064】本発明のキャピラリー電気泳動用チップの
成形法として、(2)の成形品を得るための断熱層被覆
金型を用いる成形法について次に詳しく述べる。
【0065】金属から成る主金型の表面を合成樹脂から
成る薄い断熱層で被覆することにより、成形品の型表面
再現性を良くできる。射出成形では、射出された溶融樹
脂は金型キャビティをいわゆるファウンテンフロー様に
流動するため、樹脂は常に型壁面を押し付ける様に流動
し、型壁面を引きずる様には流動しない。この結果型表
面を重合体などで被覆しても、重合体を摩耗させること
なく成形できる。
【0066】断熱層には重合体が良好に使用でき、一般
の耐熱性重合体が広く使用できる。好ましくはガラス転
移温度が140℃以上及び/又は融点が200℃以上、
さらに好ましくはガラス転移温度が160℃以上及び/
又は融点が250℃以上の耐熱性重合体である。具体的
には、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリ
ルスルホン、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテ
ル、各種ナイロン、芳香属ポリアミド、ポリエチレンテ
レフタレート、ポリエチレンナフタレート等である。ポ
リイミドは各種あるが、直鎖型高分子量ポリイミドや、
一部架橋型のポリイミドが良好に使用できる。一般に直
鎖型高分子量ポリイミドは破断伸度が大きく強靭であ
り、耐久性に優れており特に良好に使用できる。以下に
示す直鎖型高分子量ポリイミド等は良好に使用できる。
【0067】
【化1】
【0068】可撓性が付与されたエポキシ樹脂、シリコ
ーン系樹脂、メラミン系樹脂等も同様に使用できる。特
に可撓性が付与された変性エポキシ樹脂は良好に使用で
きる。
【0069】断熱層の厚みは成形するチップの溝等の形
状、寸法精度等により選択される。
【0070】金属金型表面を耐熱性樹脂からなる断熱層
で被覆し、その断熱層表面に射出された樹脂が接触する
と、型表面は樹脂の熱を受けて昇温する。断熱層の熱伝
導率が小さいほど、また断熱層が厚いほど、型表面温度
は高くなる。本発明では、射出された合成樹脂が冷却さ
れた型表面に接触してから、少なくとも0.05秒の
間、型表面温度が成形される樹脂の軟化温度以上の状態
であることが好ましい。型表面に断熱層がない場合に
は、0.01秒後には型表面温度は殆ど主金型温度と同
一温度となるが、適度な厚みの断熱層で被覆することで
0.05秒の間型表面を軟化温度以上の状態にすること
ができる。
【0071】図4に断熱層被覆金型の型表面付近の断面
を示す。
【0072】ベースになる金型の型表面を形成する部分
を金属の入れ子あるいはスタンパーで形成し、該入れ子
あるいはスタンパーの表面を断熱層で被覆することが好
ましい。図4において、(4−1)は入れ子あるいはス
タンパー8の表面に突起9を有する断熱層10を被覆し
た金型である。(4−2)は入れ子あるいはスタンパー
8の表面に断熱層10、さらにその上に突起11を有す
る金属層12を持つ金型である。(4−3)は入れ子あ
るいはスタンパー8の表面を断熱層の突起13で形成し
た金型である。(4−4)は入れ子あるいはスタンパー
8の表面に断熱層の密着性を良くするための薄層の断熱
層(プライマー層等)14を被覆し、その上に断熱層の
突起13を形成した金型である。(4−5)は突起を有
する入れ子あるいはスタンパー15の下に断熱層16を
置いた金型である。図4の各断熱層や金属層の厚みは必
要に応じて選択できる。断熱層と金属層の厚みの関係に
ついては、本発明の出願人による特開平9−23474
0号公報に詳細に示されている。
【0073】断熱層の表面に被覆される金属層は各種方
法で形成できるが、メッキにより良好に形成できる。従
って、ここで用いられる金属は、一般に金属メッキに用
いられる金属等が好ましく、クロム、ニッケル、銅等の
1種又は2種以上である。良好に使用できるのは化学ニ
ッケルメッキ、電解ニッケルメッキ、化学銅メッキ、電
解銅メッキ、電解クロムメッキ等である。
【0074】図4の(4−1)、(4−3)、(4−
4)に示す断熱層の突起は感光性樹脂を用いて形成でき
る。感光性樹脂を用いた断熱層の突起の形成法について
次に詳しく述べる。ここに述べる感光性樹脂とは、紫外
線等により樹脂に架橋が起こり不溶となる樹脂である。
この感光性樹脂は金型の表面の断熱層として使用される
ため、前記の断熱層と同様に、強靭で耐熱性がある樹脂
が好ましい。最も好ましい感光性樹脂は、感光性ポリイ
ミドである。代表的な感光性ポリイミドを以下にに示
す。
【0075】
【化2】
【0076】この感光性ポリイミドはポリイミドの前駆
体であり、紫外線で架橋を起こして不溶となり、次いで
行う加熱キュアでイミド環を形成して高耐熱性樹脂とな
る。代表的感光性ポリイミドとして、エステル型感光性
ポリイミドとイオン型感光性ポリイミドがある。
【0077】金型の形成法は、表面に感光性樹脂を塗布
し、次いで紫外線を照射して、紫外線照射した部分を架
橋して不溶とし、次いで溶剤により未架橋部分を溶解し
て取り除き、次いで加熱キュアして必要とする微細な突
起表面を得る。
【0078】感光性ポリイミドを用いて本発明のキャピ
ラリー電気泳動用チップを成形する金型を製作する製法
について図5を用いて説明する。
【0079】図5において、金属からなる金型17(5
−1)の金型キャビティを構成する型壁面を耐熱性重合
体からなる断熱層18で被覆する(5−2)。該断熱層
18の表面に、スプレー塗布やスピンコート塗布等の方
法で感光性ポリイミド19を均一に塗布する(5−
3)。塗布された感光性ポリイミド19の表面にキャピ
ラリー電気泳動用溝パターン状マスキングフィルム20
を張り付ける(5−4)。表面から紫外線を露光する
(5−5)。
【0080】紫外線で露光された部分の感光性ポリイミ
ド21は、図5の右側の化学式に示すような架橋が起こ
り、溶剤に不溶になる。露光されなかった感光性ポリイ
ミドの部分を溶剤で溶解して取り去る(5−6)。最後
に、加熱キュアを行い、イミド環を形成してポリイミド
22にし、本発明が目的とする微細な精密凹凸状表面を
有する断熱層被覆金型を得る(5−7)。
【0081】表面凹凸の大きさは塗布する感光性ポリイ
ミドの厚みにより調節できる。パターン形状はマスキン
グフィルムにより調節できる。感光性ポリイミドから形
成されるポリイミド22は断熱層17に密着している必
要がある。断熱層17と感光性ポリイミドから形成され
るポリイミド22の密着性を上げるために、断熱層17
に直鎖型高分子量ポリイミド前駆体溶液から形成された
ポリイミドを使用し、さらに該ポリイミドもイミド環が
半分程度形成された半硬化ポリイミドを使用し、(5−
6)から(5−7)に移る時の加熱キュアで一緒に10
0%イミド化することが特に好ましい。さらに必要に応
じて感光性ポリイミドを塗布する前にプライマー処理を
行うことが好ましい。
【0082】図4の(4−3)に示すように、金属製入
れ子あるいはスタンパー8の上に直接に断熱層の突起1
3を設ける場合には、該入れ子あるいはスタンパー8の
上に直接感光性ポリイミドを塗布して同様に製作する。
【0083】図4の(4−5)に示すように、入れ子あ
るいはスタンパー15の下に断熱層16を設置する場合
には、断熱層16としてポリエチレンテレフタレートフ
ィルム、ポリイミドフィルム、アラミドフィルム等の市
販の耐熱製フィルムを設置することができ、それらを相
互に接着して使用することが好ましい。
【0084】射出直前に高周波誘導加熱で金型表面を加
熱して成形された(3)の成形品の成形方法は、特公昭
62−58287号公報、米国特許第4439492号
明細書等に記載の成形法である。金型温度を低く設定
し、高周波誘導加熱により金型表面だけを選択的に加熱
して、型表面転写性と成形サイクルタイムの両立をはか
る成形法である。
【0085】射出直前に輻射加熱で金型表面を加熱して
成形された(4)の成形品の成形方法は、成形加工シン
ポジア′95,241(1995)、成形加工′96,
69(1996)、合成樹脂,42巻(1),48(1
996)等に記載の成形法である。ハロゲンランプ等の
熱源を用いて成形直前に金型表面を選択的に加熱して成
形する方法である。金型温度を低く設定し、輻射加熱に
より金型表面だけを選択的に加熱して、型表面転写性と
成形サイクルタイムの両立をはかる成形法である。
【0086】樹脂を振動させつつ射出して成形された
(5)の成形品の成形方法は、Ibar,J.P.:第
40回レオロジー討論会、A105(1992)等に報
告されている、一般に「Rheomolding」と称
される成形法であり、射出される溶融樹脂を高周波振動
させつつ射出成形して、型表面転写性を向上させる成形
法である。
【0087】金型を振動させつつ射出して成形された
(6)の成形品の成形方法は、特公平6−6309号公
報等に記載の方法であり、金型に高周波振動を与えつつ
射出成形して、型表面転写性を向上させる成形法であ
る。
【0088】本発明のキャピラリー電気泳動用チップを
成形するに適した6方法について述べたが、この6方法
を2つ以上組み合わせて使用することも本発明に含まれ
る。また、これまで述べてきた成形法は射出成形法につ
いて述べてきたが、射出成形に他の成形法を組み合わせ
た成形法、例えば射出圧縮成形法等も良好に使用でき
る。また、圧縮成形法による成形も可能である。
【0089】
【実施例】以下に実施例、比較例を用いて本発明の効果
をさらに具体的に説明する。
【0090】射出成形に使用した樹脂は、メタクリル樹
脂(旭化成工業社製「デルペット80NH」)、ポリカ
ーボネート(帝人化成社製「パンライトL1225」)
である。
【0091】ガスとしては純度99%以上の二酸化炭素
を使用した。
【0092】成形機は住友重機械工業社製「SG50」
を使用した。
【0093】金型装置は図6に示す装置を使用した。成
形品は、厚み2mmで、縦横が50mm、30mmの長
方形平板である。
【0094】図6において、金型23の金型キャビティ
24の周囲にはパーティング面の隙間25を通して金型
キャビティに二酸化炭素を吸排気する吸排気用溝26が
あり、該吸排気用溝26は二酸化炭素の供給源と金型外
通気用穴27を通してつながっている。金型キャビティ
24の外側には金型キャビティ24を加圧状に保持する
ためのOリング溝28があり、その中にOリング29が
設置されている。金型通気用穴27はガス体導管30を
通して二酸化炭素源31につながっている。ガス体導管
30には圧力計32と安全弁33が連結されている。金
型表面は、入れ子あるいはスタンパー34で形成され、
該入れ子あるいはスタンパー34の表面は微細なキャピ
ラリー電気泳動用チップの形状に加工されている。その
微細な形状は、幅50μm、高さ50μm、断面積20
00μmの台形をした突起からなり、図7に示す形状
である。樹脂はランナを経てゲートから金型キャビティ
1に射出される。
【0095】金型表面状態の転写性は、光学顕微鏡によ
る観察、レーザー顕微鏡による形状測定で評価した。
【0096】実施例1 図6に示す金型装置を用い、金型キャビティ表面温度8
0℃の金型内に、二酸化炭素を5.0MPaの圧力に満
たし、次いで樹脂温度240℃のメタクリル樹脂を射出
し、シリンダ内樹脂圧力80MPaで10秒間保圧し、
20秒間冷却した後成形品を取り出す。金型に満たした
二酸化炭素は、樹脂充填完了と同時に大気中に開放し
て、キャピラリー電気泳動用チップを成形した。
【0097】得られた成形品の表面は、平滑であり、幅
50.5μm、深さ49.7μm、表面積1950マイ
クロmである。従って、金型に対して幅および深さが
±2%以内、断面積が±4%以内の寸法精度で溝が転写
されていた。
【0098】この成形品と200μm厚みのメタクリル
樹脂シートをホットメルト接着剤によって張り合わせて
電気泳動装置を作成し、この装置5個(キャピラリーA
〜E)を用いて、ダンシル化標識されたL−バリン、L
−セリン、L−アスパラギン酸、L−システイン酸の4
種類のアミノ酸の分離分析を行った(キャピラリー長さ
5cm、印加電圧5kV、泳動液リン酸緩衝液(PH
6.8)、レーザー励起蛍光検出法)。各々の装置で各
10回の分析を行った時の同一装置での移動時間のRS
D及び装置間の移動時間のRSDを表1に示す。表1か
ら明らかなように、分析精度(装置での再現性)及び装
置間の再現性共に優れているものであった。
【0099】
【表1】
【0100】実施例2 図6に示す金型装置を用い、金型キャビティ表面温度1
20℃の金型内に、二酸化炭素を5.0MPaの圧力に
満たし、樹脂温度300℃のポリカーボネートを射出
し、シリンダ内樹脂圧力120MPaで10秒間保圧
し、20秒間冷却した後成形品を取り出した。金型に満
たした二酸化炭素は、樹脂充填完了と同時に大気中に開
放して、キャピラリー電気泳動用チップを成形した。得
られた成形品の表面は平滑であり、幅および深さが98
金型寸法に対して±2%以内、断面積が96%±4%以
内の寸法精度で溝が転写されていた。
【0101】比較例1 金型にガス供給装置を接続せずに大気開放し、それ以外
は実施例1と同様にして成形品を得た。得られた成形品
の表面の溝形状は、幅が広がると共に丸みをおびた寸法
精度の悪い状態であった。
【0102】この成形品と200μm厚みのメタクリル
樹脂シートをホットメルト接着剤によって張り合わせて
電気泳動装置を作成し、この装置5個(キャピラリーa
〜e)を用いて、ダンシル化標識されたL−バリン、L
−セリン、L−アスパラギン酸、L−システイン酸の4
種類のアミノ酸の分離分析を行った(キャピラリー長さ
5cm、印加電圧5kV、泳動液リン酸緩衝液(PH
6.8)、レーザー励起蛍光検出法)。各々の装置で、
各10回の分析を行った時の同一装置での移動時間のR
SD及び装置間の移動時間のRSDを表2に示す。表2
から明らかなように、分析精度(装置での再現性)は優
れているが、装置間の再現性は劣ったものであった。
【0103】
【表2】
【0104】実施例3 図6に示す金型装置を用い、ポリイミドフィルム(東レ
社製カプトンフィルム)を重ねて1mm厚みにして、厚
み0.3mm入れ子あるいはスタンパー34の裏に設置
して断熱層被覆金型とした。この金型を用いて、大気圧
の金型キャビティへメタクリル樹脂を射出して、キャピ
ラリー電気泳動用チップを成形した。該チップ表面は平
滑であり、寸法精度の優れた溝が転写されていた。
【0105】
【発明の効果】本発明の電気泳動用チップは、量産性の
良い成形方法によりちられ、優れた寸法精度を有する溝
からなる流路を表面に有している平板状のキャピラリー
電気泳動用チップであるため、有害な薬品を使用するこ
となく製造され、取り扱いが容易であって、分離、一定
量のサンプリング、混合等の操作の精度を有し、装置間
の再現性にも優れる、安価なキャピラリー電気泳動装置
を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のキャピラリー電気泳動チップにおけ
る、一定量のサンプリングを目的とした流路部分の形状
を示す図である。
【図2】本発明のキャピラリー電気泳動チップにおけ
る、一定量のサンプリングを目的とした流路部分の形状
を示す図である。
【図3】本発明のキャピラリー電気泳動チップを成形す
る、射出成形機ノズルの一部分の断面を示す図である。
【図4】本発明のキャピラリー電気泳動チップを成形す
る金型の、金型表面部の断面を示す図である。
【図5】本発明のキャピラリー電気泳動チップを成形す
る金型を製作する工程を示す図である。
【図6】本発明のキャピラリー電気泳動チップを成形す
る金型装置の本発明に直接係わる部分の断面を示す図で
ある。
【図7】本発明のキャピラリー電気泳動チップを成形す
る金型の金型表面部に加工された、キャピラリー電気泳
動チップの溝からなる流路を成形(転写)するための微
細形状を示す図である。
【符号の説明】
1 射出シリンダー 2 ノズル 3 ノズル口 4 ニードル弁 5 アウターノズル 6 空間 7 通路 8 入れ子あるいはスタンパー 9 突起 10 断熱層 11 突起 12 金属層 13 突起 14 薄肉断熱層 15 突起を有する入れ子あるいはスタンパー 16 断熱層 17 金型 18 断熱層 19 感光性ポリイミド 20 キャピラリー電気泳動用溝パターン 21 露光された感光性ポリイミド 22 ポリイミド 23 金型 24 金型キャビティ 25 隙間 26 吸排気用溝 27 金型外通気用穴 28 Oリング用溝 29 Oリング 30 ガス体導管 31 二酸化炭素源 32 圧力計 33 安全弁 34 入れ子あるいはスタンパー

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 幅が1〜500μm、深さが0.1〜1
    000μm、断面積が1〜250000μmの寸法精
    度に優れた溝からなる流路を表面に有しており、しかも
    熱可塑性樹脂の射出成形品であることを特徴とするキャ
    ピラリー電気泳動用チップ。
  2. 【請求項2】 下記の(1)〜(6)から選択される射
    出成形品であることを特徴とする請求項1記載のキャピ
    ラリー電気泳動用チップ。 (1)樹脂の金型キャビティへの充填工程中に、金型に
    接する樹脂表面の固化温度を低下させつつ成形された射
    出成形品。 (2)断熱層被覆金型を用いた射出成形品。 (3)射出直前に高周波誘導加熱で金型表面を加熱して
    成形された射出成形品。 (4)射出直前に輻射加熱で金型表面を加熱して成形さ
    れた射出成形品。 (5)樹脂を振動させつつ射出して成形された射出成形
    品。 (6)金型を振動させつつ射出して成形された射出成形
    品。
  3. 【請求項3】 樹脂の金型キャビティへの充填工程中
    に、金型に接する樹脂表面の固化温度を低下させて成形
    された射出成形品が、金型キャビティに二酸化炭素を1
    0MPa以下の圧力で満たしておいて射出した射出成形
    品であることを特徴とする請求項2記載のキャピラリー
    電気泳動用チップ。
  4. 【請求項4】 幅が1〜500μm、深さが0.1〜1
    000μm、断面積が1〜250000μmの寸法精
    度に優れた溝からなる流路を表面に有しており、しかも
    熱可塑性樹脂の射出成形品であるキャピラリー電気泳動
    用チップと、別のチップとが、該キャピラリー電気泳動
    用チップの該流路を内側にして張り合わされていること
    を特徴とするキャピラリー電気泳動装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005514224A (ja) * 2001-10-26 2005-05-19 アクララ バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド ミクロ流体基材の射出成形ミクロ複製のためのシステムおよび方法
US7625760B2 (en) 1999-08-11 2009-12-01 Asahi Kasei Kabushiki Kaisha Analyzing cartridge and liquid feed control device

Cited By (2)

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