JPH11241349A - 住宅用べた基礎及びその施工方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 熟練を要することなく簡単かつ迅速に安定し
た品質で施工できる住宅用べた基礎及びその施工方法を
提供する。 【解決手段】 建設地の地盤上に砂２７を水平に敷設
し、側端面に継手筋３ａを突設した多数枚のプレキャス
トコンクリート製のマットスラブ１を砂２７の上に並設
し、隣接するマットスラブ１の間隙に目地コンクリート
を打設して該目地コンクリート中に継手筋３ａを埋設す
ることにより、一枚盤のべた基礎を施工する。マットス
ラブ１の上面にアンカーボルト取付用のインサートを埋
設し、建材をべた基礎上に直接建て付ける。マットスラ
ブ１に、換気用の切欠部５を設けたり、靴脱ぎ用の段差
部６を設けたり、換気孔を設けたり、住宅器材を設置す
る凹所を設けたりすることができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、住宅用べた基礎及
びその施工方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】平盤状の住宅用べた基礎は、空間部のあ
る住宅用布基礎と比べて、地耐力に優れ、多少軟弱な地
盤であっても土の入れ替えや改良をしなくても済むとい
う利点があり、また、地震に対して有利であるといわれ
ている。従来は、この住宅用べた基礎を現場打ち工法に
よって施工していた。例えば、特公平３−２４５２５号
公報に示されたべた基礎の施工では、地盤に根入れ用の
溝を掘削し、溝に型枠を組み立て、型枠の内側に鉄筋と
中空部成形用の鋼管とを配設し、コンクリートを打設し
て平盤スラブを形成した後に、その上面を平らに仕上げ
るという工法が採られている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の住宅
用べた基礎は現場打ちコンクリート工法で施工されるた
め、掘削工、配筋工、型枠工、仕上げ工等の、熟練を要
し手間の掛かる工程が必要であった。近年の建築業界で
は、技能労働者の不足や苦渋作業が深刻な問題となって
おり、同工法の合理化は急務とされている。また、現場
打ちコンクリート工法には、基礎工事中の騒音や振動の
発生、掘削に伴う周辺地盤の沈下、天候によって左右さ
れやすい工期、品質の不安定、等の問題があった。さら
に、中空部成形用の鋼管（紙管等の場合もある。）をコ
ンクリート中に埋め殺しする無駄があり、コストが高く
つくという問題もあった。

【０００４】そこで、本発明の課題は、現場打ちコンク
リート工法に伴う諸問題を解消し、熟練を要することな
く簡単かつ迅速に安定した品質で施工できる住宅用べた
基礎及びその施工方法を提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、本発明の住宅用べた基礎は、側端面に継手筋を突
設した多数枚のプレキャストコンクリート製のマットス
ラブを建設地の地盤上に並設し、隣接するマットスラブ
の間隙に目地コンクリートを打設して該目地コンクリー
ト中に継手筋を埋設してなる構成とした（請求項１）。

【０００６】ここで、マットスラブはプレキャスト製品
であるから、複雑形状部の成形や付属部材の添設が容易
である。従って、本発明のべた基礎においては、外周部
のマットスラブに換気用の切欠部を設けることができる
（請求項２）。また、マットスラブの上面に靴脱ぎ用の
段差部を設けることができる（請求項３）。また、マッ
トスラブの上面に床下収納庫、浴槽、掘りこたつ、畳等
の住宅器材を設置する凹所を設けることもできる（請求
項４）。さらに、根太等の建材をアンカーボルトで組み
付けできるように、マットスラブにアンカーボルト取付
用のインサートを埋設することもできる（請求項５）。

【０００７】また、本発明のべた基礎においては、軽量
化の観点から、中空部を有するマットスラブを用いるこ
とが好ましい（請求項６）。中空部としては、プレキャ
スト成形時に中子を容易に抜き取ることができるよう
に、マットスラブの側端面に開口するテーパ孔が望まし
い（請求項７）。中空部を床下換気通路として利用する
ために、マットスラブの上面に中空部に連通する換気孔
を設けてもよい（請求項８）。マットスラブの上方に換
気用隙間をおいて床スラブを敷設することもできる（請
求項９）。住宅設計の多様性を満たすためには、中空部
を有するマットスラブと充実体からなるマットスラブと
を併用することも可能である（請求項１０）。

【０００８】次に、本発明の住宅用べた基礎の施工方法
は、側端面に継手筋を突設した多数枚のプレキャストコ
ンクリート製のマットスラブを建設地の地盤上に並設す
る工程と、隣接するマットスラブの間隙に目地コンクリ
ートを打設して該目地コンクリート中に継手筋を埋設す
る工程とを含む（請求項１１）。

【０００９】より好ましくは、建設地の地盤上に砂を水
平に敷設する工程と、側端面に継手筋を突設した多数枚
のプレキャストコンクリート製のマットスラブを砂の上
に並設する工程と、隣接するマットスラブの間隙に目地
コンクリートを打設して該目地コンクリート中に継手筋
を埋設する工程とを含む（請求項１２）。

【００１０】ここで、マットスラブを高精度かつ簡単に
レベル出しするために、砂を敷設する工程が、地盤上に
複数本の長尺部材を水平に支持する作業と、長尺部材が
埋まるように砂を敷く作業と、長尺部材を基準に砂を水
平に均す作業とを含むとよい（請求項１３）。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。図１〜図３に示すように、この実
施形態の住宅用べた基礎は、建設地の地盤上に縦横に並
設された複数枚のマットスラブ１と、隣接するマットス
ラブ１の間隙に打設された目地コンクリート２とから構
成されている。マットスラブ１はそれぞれ鉄筋３が埋設
された同じ高さのプレキャストコンクリート製品であっ
て、鉄筋３には、継手筋３ａがスラブ側端面から突出す
るように設けられているとともに、内部で直交方向に延
びる配力筋３ｂが溶接されている。そして、継手筋３ａ
は目地コンクリート２中に埋設され、これによって隣接
するマットスラブ１が強固に結合され、一枚盤のべた基
礎が施工される。べた基礎は、基礎版と床とを兼ねた構
造スラブとして利用でき、また、その上面における建家
の作業をフラットな位置で行うことができる。

【００１２】図４はべた基礎のコーナ部に設置されるマ
ットスラブ１を、図５は外周部に設置されるマットスラ
ブ１を、図６は中央部に設置されるマットスラブ１を、
それぞれ示している。これらの各マットスラブ１には、
重量を軽くするために、断面形状が例えば四角形の中空
部４が複数形成されている。中空部４は、プレキャスト
工程で使用する中子を容易に抜き取ることができるよう
に、スラブ側端面に開口し、奥側程狭くなる非貫通のテ
ーパ孔となっている（図２参照）。また、外周部のマッ
トスラブ１の上面外縁部には、図１、図３及び図５に示
すように、必要に応じ、換気用の切欠部５が設けられて
いる。

【００１３】なお、図７に示すように、中空部４を断面
形状が例えば円形のテーパ孔に形成したり、図８に示す
ように、中空部４をマットスラブ１の対抗する両側端面
に開口するように貫通形成することもできる。

【００１４】また、図９及び図１０に示すように、マッ
トスラブ１の上面に平面形状が例えば四角形、円形等の
換気孔１１を設けて中空部４に連通させたり、図１１に
示すように、マットスラブ１の上方に換気用隙間１５を
おいて床スラブ１６を敷設したりすることにより、簡単
な構造で換気を図ることができる。なお、図１０に示す
ように、中空部４がべた基礎の外周端面に開口する場合
には、その開口部にネット１２を装着して、外から鼠等
の小動物や虫が入るのを防止することが好ましい。

【００１５】図１２は、住宅の玄関や勝手口に設置され
るマットスラブ１を示し、このマットスラブ１は充実体
からなるとともに、靴脱ぎ用の段差部６が形成されてい
る。図１３は、床下収納庫や浴槽や掘りこたつ等を据え
付けるための深い凹所８が設けられたマットスラブ１を
示している。図１４は、畳等の床材を嵌合して段差のな
い床を形成するための浅い凹所１０が設けられたマット
スラブ１を示しているる。このように、マットスラブ１
には各種の住宅器材を設置するための凹所を容易に設け
ることができる。

【００１６】また、各マットスラブ１の上面にはアンカ
ーボルト取付用のインサート７が埋設され、建家工程に
おいて根太等の建材をべた基礎上に直接建て付けできる
ようになっている。また、クレーンによるマットスラブ
１の吊り込み時には、インサート７にワイヤ掛止用のフ
ックボルトが取り付けられる。

【００１７】以上のように、本実施形態の各マットスラ
ブ１はプレキャスト製品であるから、中空部４、切欠部
５、段差部６、凹所８，１０、換気孔１１等の複雑形状
部の成形や、インサート７等の付属部品の添設がいたっ
て容易である。

【００１８】なお、図２〜図１３に図示した各マットス
ラブ１は、継手筋３ａが縦方向にループを作るように鉄
筋３が埋設されたものであったが、いずれのマットスラ
ブ１においても、図１５及び図１６に示すように、継手
筋３ａが横方向にループを作るように鉄筋３を埋設する
こともできる。後者の方が、マットスラブ１の結合性
や、次に述べる中子の抜取性に優れる。

【００１９】図１７及び図１８は、上記各マットスラブ
１のプレキャスト工程における中空部４（ここではテー
パ孔）の成形方法を例示している。図１７は、テーパ棒
状の中子１７を使用して中空部４を成形した後、油圧、
空圧、ネジ式等のジャッキ（図示略）で中子１７を抜き
取る様子を示している。図１８は、板材でテーパ筒状に
形成された中子１３を使用して中空部４を成形した後、
中子１３のコーナ部に分割可能に設けられた楔片１４を
取り外し、中子１３を内側へ折り曲げて剥離して抜き取
る様子を示しており、型抜き作業を容易に行なうことが
できる。

【００２０】次に、上記住宅用べた基礎の施工方法につ
いて説明する。 まず、図１９に示すように、建設地の地盤上に砂利
２１を敷き、これを転圧ローラ２２で転圧する。

【００２１】 次いで、図２０に示すように、丁張２
３に水糸２４を張り、地盤上に長尺部材としての複数本
の鋼管２５を並設する。この場合、図２１に示すよう
に、地盤に複数本の支持金具２６を刺し込み、支持金具
２６の上に鋼管２５を支持し、鋼管２５の要所を叩い
て、これらの水平度を水糸２４を基準に正確に出す。

【００２２】 次に、鋼管２５が埋まるように地盤上
に砂２７を敷き、図２２に示すように、掻き棒２８を用
い、鋼管２５を基準にして砂２７を水平に均す。こうす
れば、べた基礎の下地を簡単な作業で高精度にレベル出
しすることができる。

【００２３】 続いて、図２３に示すように、クレー
ン２９でマットスラブ１を吊り込んで、砂２７の上に縦
横に並設する。

【００２４】 そして、図２及び図３に示すように、
隣接するマットスラブ１の間隙に目地コンクリート２を
打設し、継手筋３ａを目地コンクリート２中に埋設す
る。これにより、一枚盤のべた基礎が完成するので、そ
の後、図２４に示すように、べた基礎上に建材３０を直
接建て付けることができる。

【００２５】この施工方法によれば、プレキャストコン
クリート製のマットスラブ１を用いているため、従来の
現場打ちコンクリート工法では必要であった掘削工、配
筋工、型枠工、仕上げ工等の手間の掛かる工程を省くこ
とができ、熟練を要しない少数の作業員によって安定し
た品質のべた基礎を短期間に施工することができる。な
お、防湿対策が必要なべた基礎の場合には、図２５に示
すように、砂２７の上に防湿シート３１を被せ、その上
にマットスラブ１を並設するとよい。

【００２６】本発明は前記実施形態に限定されるもので
はなく、例えば次のように、発明の趣旨から逸脱しない
範囲で適宜変更して具体化することもできる。 （１）べた基礎の中央部で大きな荷重が作用する部位に
充実体からなるマットスラブを用いること。 （２）充実体からなるマットスラブを使用せず、べた基
礎の全域に中空部を有するマットスラブを用いること。 （３）高さの異なるマットスラブを並設して、段差付の
べた基礎を施工すること。 （４）隣接するマットスラブの間隙を利用して、電線、
水道管又はガス管等を配線配管すること。

【００２７】

【発明の効果】以上詳述したように、本発明の住宅用べ
た基礎及びその施工方法によれば、熟練を要することな
く簡単かつ迅速に安定した品質でべた基礎を施工できる
という優れた効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施形態に係る住宅用べた基礎の平面
図である。

【図２】図１のＩＩ−ＩＩ線断面図である。

【図３】図１のＩＩＩ−ＩＩＩ線断面図である。

【図４】べた基礎のコーナ部に設置されるマットスラブ
を示す斜視図である。

【図５】べた基礎の外周部に設置されるマットスラブを
示す斜視図である。

【図６】べた基礎の中央部に設置されるマットスラブを
示す斜視図である。

【図７】断面円形の中空部を備えたマットスラブの斜視
図である。

【図８】中空部が貫通形成されたマットスラブの断面図
である。

【図９】中空部に連通する換気孔を備えたマットスラブ
の斜視図である。

【図１０】図９のマットスラブの断面図である。

【図１１】上方に換気用隙間をおいて床スラブを敷設し
たマットスラブの断面図である。

【図１２】住宅の玄関や勝手口に設置されるマットスラ
ブを示す斜視図である。

【図１３】深い凹所を備えたマットスラブの断面図であ
る。

【図１４】浅い凹所を備えたマットスラブの断面図であ
る。

【図１５】鉄筋の配設の仕方を変更したマットスラブの
平面図である。

【図１６】図１５のマットスラブの断面図である。

【図１７】中子を使用した中空部の成形方法を示すマッ
トスラブの斜視図である。

【図１８】別の中子を使用した中空部の成形方法を示す
マットスラブの斜視図である。

【図１９】べた基礎の施工にあたり地盤を転圧する工程
を示す斜視図である。

【図２０】地盤の上に鋼管を並設する工程を示す斜視図
である。

【図２１】鋼管が埋まるように砂を敷く工程を示す断面
図である。

【図２２】砂を水平に均す工程を示す斜視図である。

【図２３】砂の上にマットスラブを並設する工程を示す
斜視図である。

【図２４】べた基礎上に建材を建て付ける工程を示す斜
視図である。

【図２５】砂の上に防湿シートを被せる工程を示す断面
図である。

【符号の説明】

１ マットスラブ ２ 目地コンクリート ３ａ 継手筋 ４ 中空部 ５ 切欠部 ６ 段差部 ７ インサート ８ 深い凹所 １０ 浅い凹所 １１ 換気孔 １５ 換気用隙間 １６ 床スラブ ２５ 長尺部材としての鋼管 ２６ 支持金具 ２７ 砂

Claims (13)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 側端面に継手筋を突設した多数枚のプレ
   キャストコンクリート製のマットスラブを建設地の地盤
   上に並設し、隣接する前記マットスラブの間隙に目地コ
   ンクリートを打設して該目地コンクリート中に前記継手
   筋を埋設してなる住宅用べた基礎。
2. 【請求項２】 外周部の前記マットスラブに換気用の切
   欠部を設けた請求項１記載の住宅用べた基礎。
3. 【請求項３】 前記マットスラブの上面に靴脱ぎ用の段
   差部を設けた請求項１記載の住宅用べた基礎。
4. 【請求項４】 前記マットスラブの上面に住宅器材を設
   置する凹所を設けた請求項１記載の住宅用べた基礎。
5. 【請求項５】 前記マットスラブにアンカーボルト取付
   用のインサートを埋設した請求項１記載の住宅用べた基
   礎。
6. 【請求項６】 中空部を有するマットスラブを用いた請
   求項１記載の住宅用べた基礎。
7. 【請求項７】 前記中空部が前記マットスラブの側端面
   に開口するテーパ孔を含む請求項６記載の住宅用べた基
   礎。
8. 【請求項８】 前記マットスラブの上面に前記中空部に
   連通する換気孔を設けた請求項６又は７記載の住宅用べ
   た基礎。
9. 【請求項９】 前記マットスラブの上方に換気用隙間を
   おいて床スラブを敷設した請求項１、６、７又は８記載
   の住宅用べた基礎。
10. 【請求項１０】 中空部を有するマットスラブと、充実
    体からなるマットスラブとを併用した請求項１記載の住
    宅用べた基礎。
11. 【請求項１１】 側端面に継手筋を突設した多数枚のプ
    レキャストコンクリート製のマットスラブを建設地の地
    盤上に並設する工程と、隣接する前記マットスラブの間
    隙に目地コンクリートを打設して該目地コンクリート中
    に前記継手筋を埋設する工程とを含む住宅用べた基礎の
    施工方法。
12. 【請求項１２】 建設地の地盤上に砂を水平に敷設する
    工程と、側端面に継手筋を突設した多数枚のプレキャス
    トコンクリート製のマットスラブを前記砂の上に並設す
    る工程と、隣接する前記マットスラブの間隙に目地コン
    クリートを打設して該目地コンクリート中に前記継手筋
    を埋設する工程とを含む住宅用べた基礎の施工方法。
13. 【請求項１３】 前記砂を敷設する工程が、前記地盤上
    に複数本の長尺部材を水平に支持する作業と、該長尺部
    材が埋まるように前記砂を敷く作業と、該長尺部材を基
    準に前記砂を水平に均す作業とを含む請求項１２記載の
    住宅用べた基礎の施工方法。