JPH11229071A - 耐疲労亀裂進展性に優れた耐摩耗性高Cr鋳鉄および耐摩耗部材並びに該部材の製造方法 - Google Patents

耐疲労亀裂進展性に優れた耐摩耗性高Cr鋳鉄および耐摩耗部材並びに該部材の製造方法

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JPH11229071A
JPH11229071A JP3639598A JP3639598A JPH11229071A JP H11229071 A JPH11229071 A JP H11229071A JP 3639598 A JP3639598 A JP 3639598A JP 3639598 A JP3639598 A JP 3639598A JP H11229071 A JPH11229071 A JP H11229071A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来使用されていた高Mn鋳鋼では十分加工
硬化せずに摩耗が激しくなり、且つ繰り返し引張応力の
発生する様な環境で使用しても脆性破壊が生じることの
ない耐摩耗性高Cr鋳鉄、およびこうした耐摩耗性高C
r鋳鉄から得られる耐摩耗部材、並びに該部材の製造方
法等を提供する。 【解決手段】 C,Mn,CrおよびMoを含む高Cr
鋳鉄において、下記(1)式および(2)式を満足する
ものである。 5.0≦[Cr]/[C]≦7.2 …(1) 1.8≦[Mn]・[Mo]≦2.5 …(2) 但し、[Cr],[C],[Mn]および[Mo]は、
夫々Cr,C,MnおよびMoの含有量(質量%)を示
す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、破砕機のライナ等
の様に摺動摩耗を頻繁に受ける構造部材の素材として有
用な耐摩耗高Cr鋳鉄に関し、殊に疲労亀裂進展に起因
する脆性破壊が生じない様な、耐疲労亀裂進展性に優れ
た耐摩耗高Cr鋳鉄、およびこうした耐摩耗高Cr鋳鉄
から得られる耐摩耗部材、並びに該部材の製造方法等に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】破砕機のライナ等の耐摩耗部材の素材と
しては、耐摩耗性と靱性を合わせ持つ高Mn鋳鋼がよく
使用されてきた。高Mn鋳鋼はマトリックスがオーステ
ナイトで靱性が非常に高く、また摩耗面近傍は衝撃およ
び塑性変形による双晶変形や積層欠陥により、顕著に加
工硬化が生じて非常に硬くなることが知られている。即
ち、高Mn鋳鋼は表面が硬く内部が靱性に優れるという
特性を合わせ有するものであり、こうした特性は破砕機
ライナ等の様に摺動摩耗や衝撃を頻繁にうける耐摩耗部
材には理想的な素材であると考えられている。しかしな
がら、破砕物によってはその受ける衝撃が小さくなり、
高Mn鋳鋼に期待する加工硬化が生じずに摩耗が著しく
大きくなることがある。
【0003】そこで、そのような場合にはマルテンサイ
ト系鋳鋼や高Cr鋳鉄といた初期硬度(加工硬化前の硬
度)の高い材料を使用せざるを得ないが、摩耗部材の寿
命、コストおよび鋳造性を考慮すると高Cr鋳鉄が優れ
ていると言われている。しかしながら一般的に高Cr鋳
鉄は靱性が低く、引張応力が発生する耐摩耗部材では使
用中に脆性破壊が生じ、使用できないという問題があっ
た。
【0004】高Cr鋳鉄に関してはこれまでに特開昭5
7−5844号、同57−89453号、特公昭60−
51548号、特公平4−56102号、特開平6−2
40403号、同2−115343号等に開示されてい
るように、各種開発されている。例えば上記特開平2−
115343号や特公平4−56102号では、高Cr
鋳鉄にTiやVを添加することによって、高Cr鋳鉄で
主に析出するM73型炭化物以外に高硬度のMC型炭
化物(即ち、TiCやVC等)を分散させ、これによっ
て耐摩耗性を向上させたものである。また上記特公昭6
0−51548号には、上記と同様の趣旨からNbとV
を複合添加することが開示されている。しかしながら、
これまで提案されている高Cr鋳鉄は、そのほとんどは
靱性を確保して硬さを最大限向上させ、耐摩耗性を良く
する方向に進んできたものであり、上記の様な疲労亀裂
進展を防止するという観点からなされたものではなかっ
た。また上記の様な炭化物形成元素を使用することはコ
スト高を招くことにもなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、こうした状
況の下でなされたものであって、その目的は、従来使用
されていた高Mn鋳鋼では十分加工硬化せずに摩耗が激
しくなり、且つ繰り返し引張応力の発生する様な環境で
使用しても脆性破壊が生じることのない耐摩耗性高Cr
鋳鉄、およびこうした耐摩耗性高Cr鋳鉄から得られる
耐摩耗部材、並びに該部材の製造方法等を提供すること
にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成し得た本
発明の耐摩耗性高Cr鋳鉄とは、C,Mn,Crおよび
Moを含む高Cr鋳鉄において、下記(1)式および
(2)式を満足するものである点に要旨を有するもので
ある。 5.0≦[Cr]/[C]≦7.2 …(1) 1.8≦[Mn]・[Mo]≦2.5 …(2) 但し、[Cr],[C],[Mn]および[Mo]は、
夫々Cr,C,MnおよびMoの含有量(質量%)を示
す。
【0007】また上記目的を達成し得た本発明の耐摩耗
部材とは、上記の様な耐摩耗性高Cr鋳鉄から得られた
ものであり、部材表面より20mm以上内部で得られる
ビッカース硬さの最大値が、脱炭層を除く部材表面のビ
ッカース硬さより20以上高いものである点に要旨を有
するものである。
【0008】一方、上記の耐摩耗部材を製造するに当た
っては、焼入温度:850〜1020℃から焼入れを行
う際に、部材表面より20mm以上内部の冷却速度を
0.5℃/sec以下に制御して炭化物を析出させるこ
とによって内部のMs点を上昇させ、熱処理終了後の部
材表面の引張残留応力を低下させる様にすれば良い。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明者らが、上記の脆性破壊が
生じる原因について鋭意研究した結果、次の様な知見が
得られた。即ち、通常焼入した部材表面には引張残留応
力が発生するが、その残留応力が大きい場合に、鋳造欠
陥から疲労亀裂が進展し、その亀裂寸法が許容欠陥寸法
を超えた場合に脆性破壊が生じることがわかった。
【0010】そこで本発明者らは、疲労亀裂進展に起因
する脆性破壊が生じない様な、耐疲労亀裂進展性に優れ
た耐摩耗性高Cr鋳鉄を実現するべく、更に検討を重ね
た。その結果、Cr,C,MnおよびMoが上記(1)
式および(2)式の関係を満足する様にすれば、耐疲労
亀裂進展性に優れた耐摩耗高Cr鋳鉄が実現できること
を見出し、本発明を完成した。本発明に係る耐摩耗性高
Cr鋳鉄は上記の様に構成されるが、その最大の特徴は
疲労亀裂進展の原因となる表面の引張残留応力が従来の
高Cr鋳鉄よりも非常に小さいことである。本発明が完
成された経緯を沿って本発明の作用について説明する。
【0011】高Cr鋳鉄は通常、鋳造した後に焼入れ・
焼戻しを行って使用されるが、この焼入れ時に冷却速度
が表面ほど大きいため、表面からマルテンサイト変態が
起こる。そしてマルテンサイト変態は体積膨張を伴うた
め、最後にマルテンサイト変態する内部に圧縮残留応
力、その反対に表面には引張残留応力が残る。そこで焼
入れした後焼戻しをするが、高Cr鋳鉄の焼戻しは20
0℃前後の低温で行われるため残留応力が完全に開放さ
れず、表面には引張残留応力が残されたまま使用される
ことになる。
【0012】疲労亀裂の進展は使用中に部材のある部分
(例えば、コーンクラッシャマントルの取付け面等)に
繰り返し発生する引張応力によって生じるのであるが、
亀裂が進展するか否かは亀裂生成起点となる欠陥サイズ
や、使用中に発生する繰り返し引張応力の大きさに依存
する。厳密に鋳造条件を管理しても欠陥が生成すること
を皆無にすることは困難であり、まず第一には上記の引
張残留応力の低下が不可欠である。
【0013】これまで提案されている高Cr鋳鉄は前述
の如く、靱性を確保して硬さを最大限向上させ、耐摩耗
性を良くする方向に開発が進められてきた。これは摩耗
部材の使用寿命を延長するために重要であるが、部材に
繰り返し引張応力が発生する状況では上記の疲労亀裂進
展に起因する脆性破壊が問題となり、それに対応した材
料設計が必要となる。
【0014】部材表面の引張残留応力を低下させるため
には、まず表面のMs点を低く、内部のMs点を高くす
ることであると考えられた。こうした観点から更に検討
したところ、上記の様な要件を満足させれば、焼入れ時
に冷却速度が遅くなる部材内部で、冷却中に炭化物が析
出して表面よりMs点が高くなることが判明した。こう
した作用を発揮させる為には、V,Nb,Ti等の様な
Crより炭化物形成能の大きな元素を添加しないことが
必要である。例えば、特開平2−115343号、特公
平4−56102号および特開平6−240403号に
開示されているように、従来ではV,Nb,Ti等を添
加すると硬さが向上して耐摩耗性が良くなるとされてい
るが、その一方でマトリックス中のCの活量を低下さ
せ、冷却中の炭化物析出が抑制されてしまうことにな
る。
【0015】またV,Nb,Ti等は焼入性向上に有効
に作用するが、それらを添加せずとも本発明のように、
CとCr濃度のバランスをとり、且つMnとMoの適正
な添加によって十分な焼入性が確保される。破砕機ライ
ナ等の耐摩耗部材は、そのほとんどが肉厚が100mm
を超える大きな部材であり、必要な焼入性を確保するこ
とは高Cr鋳鉄の材料設計として基本である。こうした
観点からすれば、例えば特開昭57−89453号に開
示されている様にMoの含有量が0.2%以下程度の微
量では、十分な焼入性が得られない。
【0016】本発明では上述の如く、[Cr]/[C]
および[Mn]・[Mo]を厳密に制御するものであ
り、こうした要件を満足させることによって、V,N
b,Ti等を添加したときと違ってマトリックス中のC
活量を大きくすることができ、冷却中にマトリックスに
微細炭化物が析出してMs点が上昇し、その一方で残留
オーステナイト量が減少し、焼入れ時における部材内部
の冷却速度相当において、硬さを向上することができ
る。使用中の部材においては、摩耗面近傍は塑性変形し
て圧縮応力が発生し、その反対側の取付け面には引張応
力が発生する。
【0017】本発明材では部材内部の硬さが高いので、
ある程度摩耗し部材厚さが小さくなって取付け面の引張
り応力レベルが高くなったときに、その硬さの高い部分
が摩耗面となるため、そこでの塑性変形が小さく、発生
する圧縮応力が小さくなる。従って、その反力として取
付け面側で発生する引張応力レベルを低下させることが
でき、使用中に不可避に発生する取付け面側の繰返し引
張応力の最大応力値を低くすることができる。また前記
した部材表面の引張残留応力の低減と、使用時に発生す
る取付け面側の引張応力を低下させることによって、本
発明材では疲労亀裂発生が抑制されたものとなる。
【0018】次に、[Cr]/[C]および[Mn]・
[Mo]の範囲を上記(1)式または(2)式の様に規
定した理由は下記の通りである。まずC含有量とCr含
有量は、そのバランスが極めて重要であり、[Cr]/
[C]の値が5.0未満になると、マトリックスのC含
有量が多くなり且つCr含有量が少なくなり過ぎて焼入
性が悪くなり、パーライトまたはベーナイトが生成して
硬さが低下する。またこの値が7.2を超えると、マト
リックス中のC含有量が低くなって硬さが低下し、必要
な耐摩耗性が得られない。
【0019】一方、[Mn]・[Mo]の値が2.5以
下であれば、必要な焼入性は確保されるので、MnやM
oのそれ以上の添加は残留オーステナイト過剰による硬
さ低下を招く。またこの値が1.8未満であると、必要
な焼入れ性が得られない。
【0020】また[Cr]/[C]≦7.2で且つ1.
8≦[Mn]・[Mo]とすることによって、マトリッ
クス中のC活量が大きくなり、焼入れ時にある範囲の冷
却速度においてマトリックス中に微細炭化物を析出させ
て部材内部のMs点を上昇させ、表面引張残留応力の低
減および残留オーステナイトの抑制による硬さ向上が可
能となる。
【0021】上記の様な耐摩耗性高Cr鋳鉄用いること
によって、疲労亀裂進展に起因する脆性破壊が生じるこ
となく、しかも耐摩耗性にも優れた耐摩耗部材が得られ
るのであるが、こうした耐摩耗部材部材の好ましい形態
としては、部材表面より20mm以上内部で得られるビ
ッカース硬さの最大値が、脱炭層を除く部材表面のビッ
カース硬さより20以上高いものを挙げることができ
る。
【0022】またこうした耐摩耗部材を製造するに当た
っては、後記実施例に示す様に、焼入温度:850〜1
020℃から焼入れを行う際に、部材表面より20mm
以上内部の冷却速度を0.5℃/sec以下に制御して
炭化物を析出させることによって内部のMs点を上昇さ
せ、熱処理終了後の部材表面の引張残留応力を低下させ
る様にすれば良い。
【0023】ところで一般的に高Cr鋳鉄においては、
必要な耐摩耗性を確保するために残留オーステナイト量
を多くし過ぎないことが重要なポイントとなる。例えば
特開昭57−5844号では、1%以上のNiを含有し
ており、残留オーステナイト量が増加して硬さが低下
し、必要な耐摩耗性が得られないことが予想される。ま
たこうした観点からして、適正な焼入温度にした上で、
CおよびCrの含有量を多くし過ぎないこと、およびM
nとMoの添加量をある値以下に抑えることも必要であ
る。こうした点をも踏まえ、本発明の高Cr鋳鉄に優れ
た特性を発揮させる為の好ましい化学成分組成(基本的
成分であるC,Mn,CrおよびMoの他、Si,Ni
等も含む)は、下記の通りである。
【0024】C:2.5〜3.5%(質量%の意味、以
下同じ)、Cr:14〜22% C含有量が2.5%未満またはCr含有量が14%未満
では、高Cr鋳鉄で主に析出するCr73 (M73
型炭化物)の量が少なくなるため、必要な耐摩耗性が得
られない。またC含有量が3.5%、Cr含有量が22
%を超えると、逆に炭化物量が多すぎるために靱性が低
下して、使用中の脆性破壊および疲労破壊の危険があ
る。
【0025】Si:0.3〜1.0% Siは、鋳造時の溶湯の流動性確保および溶解・製錬時
の脱酸に有効な元素であり、こうした効果を発揮させる
為には0.3%以上含有させることが好ましいしかしな
がら、1.0%を超えて含有させると靱性が低下する。
【0026】Mn:0.8〜1.5% Mnは高Cr鋳鉄の焼入性を改善し、特にベイナイトの
抑制に有効であるが、0.8%未満ではその効果が発揮
されず、また1.5%を超えると残留オーステナイトが
多量になり、硬さが低下する。
【0027】Mo:1.5〜3.0% Moは高Cr鋳鉄の焼入性を向上させ、特にパーライト
の抑制に有効であるが、1.5%未満ではその効果が発
揮されず、3.0%を超えてもその効果は飽和する。
【0028】Ni:0.05〜0.8% Niは焼入性を向上させ、また靱性を高める効果があ
る。こうした効果を発揮させる為には、0.05%以上
含有させることが好ましいが、逆に0.8%を超えて含
有させると、残留オーステナイトの増加を招いて耐摩耗
性を劣化させる。尚Ni含有量のより好ましい下限は
0.01%であり、より好ましい上限は0.60%程度
である。
【0029】以下本発明を実施例によって更に詳細に説
明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもので
はなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはい
ずれも本発明の技術適範囲に含まれるものである。
【0030】
【実施例】真空誘導溶解炉にて150kgfの舟形イン
ゴット(幅:30〜120mm×高さ:400mm×長
さ:500mm)を溶製した。下記表1に溶製したイン
ゴットの化学組成組成を示す。熱処理は焼入れ焼戻しを
行い、焼入れはNo.2〜5,7,8,10,11,1
3および15については950℃、No.1,6,1
0,12および14については1000℃、No.9に
ついては1050℃で2時間保持後空冷した。
【0031】
【表1】
【0032】焼入れした後、インゴットからサンプルを
採取し、フォーマスタで連続冷却を行って部材表面およ
び部材内部(表面から20mm以上内部)の夫々のMs
点を測定した。またその後、部材表面および部材内部の
夫々のビッカース硬さの測定を行った。摩耗試験および
疲労試験の試験片は鋳造ままで切り出し、上記の焼入れ
焼戻し条件で熱処理を行い、夫々の試験に供した。以下
に各試験の試験条件を示す。
【0033】〈フォーマスタ試験〉 サンプル形状:8φ×12L 冷却開始温度:各鋼種の焼入温度に30分保持した後冷
却開始 冷却速度:10,0.5℃/sec Ms点は、膨張収縮曲線から5℃きざみで読みとった。
【0034】尚この試験は、本発明材では表面と内部で
Ms点が変わることを示すための模擬実験であり、冷却
速度が10℃/secの場合が表面のMs点、0.5℃
/secの場合が内部のMs点に相当するものである。
【0035】〈ビッカース硬さ試験〉 押込荷重:20kgf *冷却速度が10℃/secのとき(表面)と冷却速度
が0.5℃/secのとき(内部)に得られる硬さの最
大値を評価した。
【0036】〈摩耗試験および疲労試験〉 使用岩石:流紋岩(岩石粒度:5〜20mm) 試験開始前に破砕した岩石重量:200kgf(→バラ
ツキの大きい初期摩耗の影響をなくすため) 試験に使用した岩石重量:2tonf 摩耗試験機:図1(概略説明図)に示したものを使用し
た。 *摩耗量は重量減少量を摩耗面面積で除して求めた。 *試験材取付面(摩耗面の反対側)の疲労クラックの有
無を調査した。
【0037】その結果を下記表2に示すが、これらの結
果から次の様に考察できる。まずNb,Ti,V等を含
むかまたはNiを1%以上含む従来材では、いずれも冷
却速度:10℃/secで得られる硬さが、冷却速度:
0.5℃/secで得られる硬さより大きく、しかもM
s点も変化がないことが分かる。
【0038】それに対して比較材(但し、No.8,1
0を除く:これらNo.8,10は焼入性不十分のため
冷却速度:0.5℃/secでベイナイトが生成)およ
び本発明材は、冷却速度:10℃/secの場合よりも
冷却速度:0.5℃/secの場合の方がMs点は高く
なっており、これによって部材表面の引張残留応力が低
下している。従って、疲労亀裂が発生していない。しか
しながら、比較材No.6,7,9では、その組成の一
部が本発明範囲を外れていることによって硬さがやや不
足し、摩耗量が多くなっている。
【0039】一方本発明材では、上述の如く冷却速度が
10℃/secで得られる硬さが十分に大きいと共に、
冷却速度:10℃/secで得られる硬さより冷却速
度:0.5℃/secで得られる硬さの方が大きくなっ
ており、その結果本発明材においては疲労亀裂が全く発
生せず、かつ摩耗量が0.6(g/岩石1t破砕当た
り)以下と従来材と同等以上の耐摩耗性を有しているこ
とが分かる。
【0040】
【表2】
【0041】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、従
来材の耐摩耗性と同等以上で、しかも疲労亀裂進展の原
因である部材表面に発生する引張応力を低減させて、部
材の割れを防止できる高Cr鋳鉄が実現できた。また本
発明材は高価な炭化物形成元素(Ti、Nb、Vなど)
を添加しないため、低コストである。
【0042】上記の様な特性を発揮する本発明鋼は破砕
機用ライナのみではなく、例えば建設機械用部材や耐摩
耗構造材として、ドラッグチェーン、バケット、バケッ
トチィース、キャタピラ、レールクロッシング等、高炉
用耐摩耗部材として、アーマープレート、ベル等に使用
される高Mn鋳鋼の代替材料として適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で用いた摩耗試験機の概略説明図であ
る。
フロントページの続き (72)発明者 多賀 渉 兵庫県高砂市荒井町新浜2丁目3番1号 株式会社神戸製鋼所高砂製作所内 (72)発明者 奥田 隆成 神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会 社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C,Mn,CrおよびMoを含む高Cr
    鋳鉄において、下記(1)式および(2)式を満足する
    ものであることを特徴とする耐疲労亀裂進展性に優れた
    耐摩耗性高Cr鋳鉄。 5.0≦[Cr]/[C]≦7.2 …(1) 1.8≦[Mn]・[Mo]≦2.5 …(2) 但し、[Cr],[C],[Mn]および[Mo]は、
    夫々Cr,C,MnおよびMoの含有量(質量%)を示
    す。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の耐摩耗性高Cr鋳鉄か
    ら得られたものであり、部材表面より20mm以上内部
    で得られるビッカース硬さの最大値が、脱炭層を除く部
    材表面のビッカース硬さより20以上高いものである耐
    摩耗部材。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載の耐摩耗部材を製造する
    に当たり、焼入温度:850〜1020℃から焼入れを
    行う際に、部材表面より20mm以上内部の冷却速度を
    0.5℃/sec以下に制御して炭化物を析出させるこ
    とによって内部のMs点を上昇させ、熱処理終了後の部
    材表面の引張残留応力を低下させることを特徴とする耐
    摩耗部材の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006070350A (ja) * 2004-09-06 2006-03-16 Kobe Steel Ltd 耐ヒートクラック性に優れた高Cr鋳鉄およびその熱処理方法
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