JP2000328193A - 耐摩耗性に優れた熱間鍛造用非調質鋼 - Google Patents

耐摩耗性に優れた熱間鍛造用非調質鋼

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JP2000328193A
JP2000328193A JP14179099A JP14179099A JP2000328193A JP 2000328193 A JP2000328193 A JP 2000328193A JP 14179099 A JP14179099 A JP 14179099A JP 14179099 A JP14179099 A JP 14179099A JP 2000328193 A JP2000328193 A JP 2000328193A
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Katsuhiro Iwasaki
克浩 岩崎
Yoshitake Matsushima
義武 松島
Masato Shikaiso
正人 鹿礒
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 SiやMnのフェライトへの固溶によりフェ
ライトを強化(固溶強化)させる為に添加元素を適正化
すると共に、比較的大きい酸化物系介在物の個数を制限
することによって、耐摩耗性に優れたフェライト・パー
ライト組織を有する熱間鍛造用非調質鋼を提供する。 【解決手段】 C:0.3〜0.8%、Mn:0.3〜
2.0%およびSi:0.5〜2.5%を夫々含有する
と共に、下記(1)式で規定されるF値が1.0以上で
あり、且つ任意の縦断面における、被検面積300mm
2当たりの平均粒径20μm以上の酸化物系介在物が1
0個以下である。 F=[Si]+[Mn]/3.5 …(1) 但し、[Si] ,[Mn]は夫々の元素の含有量(質量%)を
示す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車や建設機械
等のエンジン部品や足回り部品、構造用部品等に用いら
れている機械構造用鋼に関するものであり、特に熱間鍛
造後に焼入れ・焼戻しが省略される熱間鍛造用非調質鋼
に優れた耐摩耗性を付与する為の技術に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】自動車や建設機械等のエンジン部品や足
回り部品、構造用部品等は、機械構造用炭素鋼や機械構
造用合金鋼を素材とし、必要な強度や靭性を付与する目
的で、熱間鍛造後に焼入れ・焼戻し処理を施して製造さ
れるのが一般的であった。
【0003】近年、上記の様な調質処理に要するエネル
ギーの節約と仕掛かり品の削減を図ることを目的とし
て、JIS G 4051に規定された機械構造用炭素
鋼やJIS G 4106に規定された機械構造用マン
ガン鋼に、VやNb等の析出硬化型元素を添加した熱間
鍛造用非調質鋼が開発されるに至り、上記した各分野に
おいて広く使用されている。
【0004】上記した非調質鋼は、熱間鍛造後に冷却し
てフェライト・パーライト組織とし、そのフェライト部
にVやNbの炭化物または窒化物を微細析出させ、所要
の強度と疲労強度を得るものである。そしてこうした鋼
材を用いることによって、熱間鍛造後の焼入れ・焼戻し
処理が省略でき、しかも焼入れ時に発生する熱処理歪み
が減少して矯正加工が簡略でき、更に焼割れによる不良
品が減る等、部品製造コストの大幅な低減を可能にする
という利点もある。
【0005】一方、自動車における高性能化に対する要
求は、近年ますます増加しており、上記の機械構造用鋼
は更なる疲労強度、降伏強度の向上を図った高強度化が
求められている。その結果、高負荷下での部品使用が可
能となるが、摺動部はもとより接続部等、鋼材の接触部
での摩耗が問題となってくる。
【0006】例えば、足廻り部品のハブとレースは圧入
等で固定されているが、高負荷のもとではずれが生じ、
フレッティング摩耗等の摩耗が発生することがある。こ
うした事態が更に進むと、摩耗による減肉や疲労破壊を
誘発させることもある。更に、ボルト等で固定されてい
る鋼材の接触面においても、フレッティング摩耗等によ
る損傷が起きている。
【0007】またクランクシャフト等の摺動部を持つも
のにおいては、耐摩耗性或は耐焼付け性を向上させる為
に、高周波焼入れや軟窒化等の表面硬化処理が行なわれ
ているが、摺動部以外の鋼材の接触面での対策は行われ
ておらず、鋼材のもつ耐摩耗性に依存しているのが実情
である。またこうした表面処理を施した場合には、製造
コストの上昇をもたらすという問題が生じることにな
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】これまでにも、耐摩耗
性を向上させた非調質鋼として、例えば特開平6−12
8690号に開示された「耐摩耗性に優れたクランクシ
ャフト鋼」が提案されており、この技術はVを積極的に
添加することによって、フェライト・パーライト組織に
V炭化物を析出硬化させるものである。
【0009】しかしながら、この技術においては、耐摩
耗性を向上させる為にVを多量に添加する必要があり、
コスト面で不利であるばかりか、V等の炭窒化物よりも
摩耗性を向上させることが予想されるSiの適切な添加
量についての記載もなく、実際的ではない。しかもこの
技術では、酸化物系介在物であるAl23やSiO2
含有量の上限を規定し、耐摩耗性の向上を狙っている
が、酸化物系介在物の大きさや個数に関する記述がな
く、耐摩耗性との関係が不明である。
【0010】上記の観点からなされた他の技術として、
例えば特公昭63−9006号には、「高耐摩耗・快削
性クランクシャフトの製造方法」が提案されている。こ
の技術では、熱間鍛造後の冷却速度を規定することによ
って硬さ分布を均一にし、更に形状の異なる部位の硬さ
や残留応力を均一にすることによって、強度、耐摩耗性
および被削性が良好にできたことが示されている。しか
しながら、この技術では対象とする部品はクランクシャ
フトであって形状が大幅に変化しないものであるので、
規定された冷却速度を得ることが容易であるが、足廻り
に部品等の複雑な形状を持つ部品に対しては、冷却速度
を正確にコントロールすることが困難である。またこの
技術においても、Siの有用性に関する記述はなされて
いない。
【0011】本発明は上記の様な事情に着目してなされ
たものであって、その目的は、SiやMnのフェライト
への固溶によりフェライトを強化(固溶強化)させる為
に添加元素を適正化すると共に、比較的大きい酸化物系
介在物の個数を制限することによって、更に必要によっ
てV、Nb、Ti等の炭化物や窒化物をフェライトに微
細析出(析出硬化)させることによって、耐摩耗性に優
れたフェライト・パーライト組織を有する熱間鍛造用非
調質鋼を提供しようとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明に係る熱間鍛造用非調質鋼は、C:0.
3〜0.8%、Mn:0.3〜2.0%およびSi:
0.5〜2.5%を夫々含有すると共に、下記(1)式
で規定されるF値が1.0以上であり、且つ任意の縦断
面における、被検面積300mm2当たりの平均粒径2
0μm以上の酸化物系介在物が10個以下である点に要
旨を有する熱間鍛造用非調質鋼である。 F=[Si]+[Mn]/3.5 …(1) 但し、[Si] ,[Mn]は夫々の元素の含有量(質量%)を
示す。
【0013】また上記目的は、C:0.3〜0.8%、
Mn:0.3〜2.0%およびSi:0.5〜2.5%
を夫々含有する他、V:0.4%以下(0%を含まな
い)、Nb:0.15%以下(0%を含まない)および
Ti:0.15%以下(0%を含まない)よりなる群か
ら選択される一種以上を含有し、且つ下記(2)式で規
定されるF′値が1.0以上であると共に、任意の縦断
面における、被検面積300mm2当たりの平均粒径2
0μm以上の酸化物系介在物が10個以下である様な熱
間鍛造用非調質鋼によっても達成される。 F′=[Si]+[Mn]/3.5+3[V]+2.5 [Nb]+2.5[Ti] …(2) 但し、[Si] ,[Mn],[V],[Ti]は夫々の元素の含有量
(質量%)を示す。
【0014】上記各本発明の熱間鍛造用非調質鋼におい
ては、更に他の元素として、 (a)Cr:1.5%以下(0%を含まない) (b)Al:0.04%以下(0%を含まない) (c)S:0.12以下(0%を含まない)、Pb:
0.3%以下(0%を含まない)、Zr:0.2%以下
(0%を含まない)、Ca:0.01%以下(0%を含
まない)、Te:0.1%以下(0%を含まない)、B
i:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選
択される一種以上等を含有させることも有効であり、こ
れによって熱間鍛造用非調質鋼としての特性を更に改善
することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】鋼材の耐摩耗性を向上させる為に
は硬さの確保が必要であるが、硬さを上昇させるとその
反面で被削性の低下を招くので、過度の硬さ上昇は好ま
しくない。またフェライト・パーライト組織では、フェ
ライト部の硬さがパーライト部の硬さよりも低く、フェ
ライト部から優先的に摩耗が生じる。そこで、フェライ
ト・パーライト組織で耐摩耗性を向上させる為には、フ
ェライト部の硬さを確保することが重要になる。
【0016】フェライト・パーライト組織を有する熱間
鍛造用非調質鋼では、前述の如くフェライト部にVやN
b等の炭化物や窒化物を微細析出させることによって、
硬さを確保する様にしているが、これは上記した観点か
らフェライト部の硬さを確保しようとするものである。
【0017】本発明者らは、熱間鍛造用非調質鋼の耐摩
耗性の向上を図るべく、様々な角度から検討した。その
結果、SiやMnのフェライトへの固溶によりフェライ
トを強化(固溶強化)させる為に添加元素を適正化する
と共に、比較的大きい酸化物系介在物の個数を制限する
ことによって、耐摩耗性に優れたフェライト・パーライ
ト組織を有する熱間鍛造用非調質鋼が得られることを見
出し、本発明を完成した。また上記構成に加えてV、N
b、Ti等の炭化物や窒化物による上記作用、即ちこれ
ら炭化物や窒化物をフェライトに微細析出(析出硬化)
させることによって、耐摩耗性の更なる向上が達成され
ることも見出した。
【0018】本発明の熱間鍛造用非調質鋼においては、
上記(1)式で規定されるF値または上記(2)式で規
定されるF′値を1.0以上とする必要があり、これら
の値が1.0未満では耐摩耗性に優れたフェライト・パ
ーライト組織を得ることができない。尚上記F′値は、
鋼中にV、Nb、Ti等の元素を含有させたときの関係
式[前記(2)式]の値であるが、上記F値との関係か
ら明らかな様に、鋼中にV、Nb、Ti等を含有させる
ときには、[Si]+[Mn]/3.5の値[前記(1)式の]値が
1.0未満であっても、F′値が1.0以上となれば上
記目的が達成されることを意味する。尚F値またはF′
値は、1.2以上であることが好ましい。またF値また
はF′値の上限については、特に限定されるものではな
いが、各元素の含有量の上限によって必然的に所定の値
となる。
【0019】またフェライト・パーライト組織を有する
熱間鍛造用非調質鋼において、比較的大きなAl23
SiO2等の酸化物系介在物が多数存在するときには、
耐摩耗性が顕著に劣化し、この酸化物系介在物の数を適
切な範囲内に制御すれば、具体的には「任意の縦断面に
おける平均粒径20μm以上の酸化物系介在物が被検面
積300mm2当たり10個以下である」様に制御すれ
ば、耐摩耗性を高いレベルで維持できる。尚上記酸化物
系介在物の個数を少なくする手段としては、鋼中の酸素
含有量をできるだけ低減したり、鋼の溶製後の凝固速度
をできるだけ速くすること等が挙げられる。
【0020】本発明の熱間鍛造用非調質鋼においては、
添加元素を適正化する必要があるが、次に化学成分組成
を規定した理由について説明する。
【0021】C:0.3〜0.8% Cは、熱間鍛造・冷却後に鍛造品の金属組織中のパーラ
イト量を増大させて、必要な強度を確保するのに欠くこ
とのできない元素であり、しかもセメンタイトの生成に
よって耐摩耗性の向上に寄与する作用を発揮する。こう
した作用を発揮させる為には、Cは少なくとも0.3%
以上含有させる必要がある。しかしながら、Cの含有量
が過剰になると、靭性が低下すると共に被削性が低下す
るので、0.8%以下にする必要がある。強度、靭性お
よび被削性のバランスを考慮したC含有量の好ましい範
囲は、0.35〜0.6%程度である。
【0022】Mn:0.3〜2.0% Mnは、溶製時の脱酸・脱硫元素として有効な元素であ
り、鍛造品のパーライト焼入れ性を上げてパーライト量
を増加させ、パーライト中のラメラー間隔を細かくして
耐力や疲労強度等の強度増大に寄与する元素である。ま
たフェライト中に固溶して、耐摩耗性を向上させる元素
として有効に作用する。こうした効果を発揮させる為に
は、Mnは少なくとも0.3%以上含有させる必要があ
る。しかしながら、Mnの含有量が過剰になると、金属
組織中にベイナイトが生成して被削性に悪影響をおよぼ
すので、2.0%以下にする必要がある。尚Mn含有量
の好ましい下限は0.5%であり、好ましい上限は1.
2%である。
【0023】Si:0.5〜2.5% Siは、鋼材溶製時の脱酸に有効に作用する他、鋼材の
フェライト地に固溶して熱間鍛造・冷却後の鍛造品を強
化するのに有効に作用する。こうした効果を発揮させる
為には、Siは0.5%以上含有させる必要がある。し
かしながら、Si含有量が過剰になると、熱間鍛造性に
悪影響が出てくるので、2.5%以下にする必要があ
る。尚Si含有量の好ましい下限は0.6%であり、好
ましい上限は1.5%である。
【0024】以上の元素は、固溶によりフェライトを強
化(固溶強化)させる為のものであるが、炭化物や窒化
物をフェライトに微細析出(析出硬化)させる為に必要
によって添加されるV、Nb、Ti等による作用・効果
は下記の通りである。
【0025】V:0.4%以下(0%を含まない)、N
b:0.15%以下(0%を含まない)およびTi:
0.15%以下(0%を含まない)よりなる群から選択
される一種以上 これらの元素は、炭化物や窒化物(Tiについては、更
に硫化物)を形成してフェライトに析出し、耐力や疲労
強度、更には耐摩耗性の向上に寄与する。このうちNb
とTiについては、上記化合物の析出によってオーステ
ナイト結晶粒を微細化して、靭性、降伏比、疲れ強度等
の向上に寄与する効果も発揮する。
【0026】こうした効果は、上記元素の少なくとも1
種以上を含有させることによって発揮されるが、過剰に
含有させてもその効果が飽和してコストアップになるだ
けであるので、Vについては0.4%以下、Nbについ
ては0.15%以下、Tiについては0.15%以下に
すべきである。また夫々の元素の好ましい上限は、Vに
ついては0.35%、Nbについては0.10%、Ti
については0.10%である。
【0027】本発明に係る熱間鍛造用非調質鋼における
基本的な化学成分組成は上記の通りであり、残部はFe
および不可避的不純物であるが、必要により更に他の元
素として (a)Cr:1.5%以下(0%を含まない) (b)Al:0.04%以下(0%を含まない) (c)S:0.12以下(0%を含まない)、Pb:
0.3%以下(0%を含まない)、Zr:0.2%以下
(0%を含まない)、Ca:0.01%以下(0%を含
まない)、Te:0.1%以下(0%を含まない)、B
i:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選
択される一種以上等を含有させることによって、熱間鍛
造用非調質鋼としての特性を一段と改善することが可能
である。これらの元素を含有させるときの範囲限定理由
は下記の通りである。
【0028】Cr:1.5%以下(0%を含まない) Crは、上記Mnと同様にパーライト焼入れ性を向上さ
せ、耐力や疲労強度等の強度増大に寄与する。しかしな
がら、1.5%を超えて過剰に含有させると、硬さが大
幅に上昇したり、金属組織中にベイナイトを生成して被
削性に悪影響を及ぼすので、1.5%以下にする必要が
ある。Cr含有量のより好ましい範囲は、0.05〜
1.0%である。
【0029】Al:0.04%以下 Alは鋼材溶製時の脱酸元素として有効に作用する他、
窒化物の生成によってオーステナイト結晶粒を微細化し
て靭性の向上に寄与するものである。しかしながら、A
lの含有量が過剰になると、オーステナイト結晶粒が却
って粗大化され靭性に悪影響を及ぼすので、0.04%
以下に抑えなければならない。Al含有量のより好まし
い範囲は、0.002〜0.03%である。
【0030】S:0.12%以下(0%を含まない)、
Pb:0.3%以下(0%を含まない)、Zr:0.2
%以下(0%を含まない)、Ca:0.01%以下(0
%を含まない)、Te:0.1%以下(0%を含まな
い)、Bi:0.1%以下(0%を含まない)よりなる
群から選択される一種以上 S,Pb,Zr,Ca,Te,Biは、いずれも鋼材の
被削性向上に寄与する点で同効元素である。このうち特
にSは、MnSを形成して被削性を向上させると共に、
MnSを核とした粒内フェライトを生成、組織を微細化
する作用があり、これによって靭性が向上する。しかし
ながら、Sを過剰に含有させると、熱間加工性の劣化を
招くので0.12%以下、より好ましくは0.1%以下
に抑えるべきである。またPb,Zr,Ca,Te,B
i等は、MnSを球状化して鍛造品の異方性を改善する
作用を発揮するが、これらの元素の含有量が上限値を超
えるとその効果が飽和してコスト上昇を招くので、夫々
上限値を超える添加は避けなければならない。
【0031】尚本発明の熱間鍛造用非調質鋼では、Nの
含有量を適切な範囲で含有させることも有効であるが、
このNの作用・効果は下記の通りである。
【0032】N:0.003〜0.05% Nは、鋼材のフェライト中に固溶して熱間鍛造・冷却後
における鍛造品を強化するのに有効な元素である。その
結果として、硬さや引張強度を大幅に向上させる作用を
発揮する。またAlやTi等の窒化物形成元素と結合し
てオーステナイト結晶粒を微細化し、靭性や強度等を向
上させる。こうした効果を発揮させる為には、0.00
3%以上含有させる必要があるが、0.05%を超えて
の含有は工業上特殊な場合だけであり、コストも高くな
る。こうした利害得失を考慮して、N含有量の好ましい
下限は0.007%であり、好ましい上限は0.03%
である。
【0033】次に実施例を挙げて本発明の構成および作
用効果をより具体的に説明するが、本発明はもとより下
記実施例によって制限を受けるものではなく、前後記の
趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿
論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に
含まれるものである。
【0034】
【実施例】実施例1 表1,2に示す化学成分組成の鋼No.1〜24および
27〜33のものは150kg実験炉で溶製し、鋼N
o.23,24のものは3ton炉にて鋳型に入れて凝
固させた(徐冷した)。次に、熱間鍛造にて直径30m
mの丸棒に鍛伸し、その後所定の長さに切断した。更
に、1250℃に加熱し、15mm厚さに平潰し鍛造加
工して、その後空冷処理した。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】これら平板にて、横断面の組織を観察する
と共に、HV硬さを測定した。また縦断面にて300m
2の視野を光学顕微鏡で観察し、20μm以上の平均
粒径を持つ酸化物介在物の個数を測定した。更に、これ
ら平板を試験片に加工して下記の条件で大越式摩擦試験
を行った。このとき15mm厚さに平潰し鍛造加工した
平板の表面を目視で観察して鍛造割れの有無についても
観察した。
【0038】〈大越式摩擦試験条件〉試験ローラとして
SUJ2(HV硬さ776)を用い、摩耗距離:100
m、摩耗速度:0.065m/s、最大荷重:2.1k
gfで行った。評価方法は、比摩耗量を比較することに
よって行った。尚比摩耗量は、下記(3)式から求めた
ものである。 Ws=Bb3/(8rPL)=3W/(2PL) …(3) 但し、Ws:比摩耗量(mm2/kgf)、B:回転リ
ング厚み(mm)、b:摩耗痕巾(mm)、r:回転リ
ング半径(mm)、P:最終荷重(kg)、L:摩耗距
離(mm)、W:摩耗量(mm3) 酸化物系介在物の個数、鍛造後の組織、硬さ測定結果、
および摩耗試験結果を下記表3に示す。尚表3の酸化物
系介在物の個数および比摩耗量の各項目における「−」
の箇所は、測定を中止したことを意味する。
【0039】
【表3】
【0040】これらの結果から、次の様に考察できる。
まず鋼No.1,2,5〜7,9,10,13,14,
17〜19,27〜33のものは、本発明で規定する要
件のいずれをも満足する実施例であり、いずれも鍛造割
れが発生することなく、所望のフェライト・パーライト
組織となっており、硬さもHV240以上且つHV32
0以下が達成されており、比摩耗量もその基準となる
3.0×10-7mm2/kgよりも小さく良好な耐摩耗
性が得られている。
【0041】これに対してC含有量が規定する量よりも
多い鋼No.3のものは、硬さが高くなり過ぎており
(HV320を超えている)、C含有量が少ない鋼N
o.4のものは硬さがHV240を達しておらない。ま
た、Si量が少ない鋼No.8のもの、Mn量が少ない
鋼No.12のもの、およびF値またはF′値が小さい
鋼No.20〜22のものは、比摩耗量が3.0×10
-7mm2/kgよりも大きくなっており、耐摩耗性が低
くなっている。
【0042】更に、Si含有量が高い鋼No.11のも
のは、熱間での鍛造割れが認められ、Mn含有量,Cr
含有量が夫々高い鋼No.15,16のものは、金属組
織中にベイナイトが認められた。また、酸化物系介在物
の粗大化をO含有量の増大で起こさせた鋼No.23,
24、および溶鋼からの冷却速度で起こさせた鋼No.
25,26は、平均粒径が20μm以上の介在物の個数
が300mm2当たり10個を超えており、比摩耗量が
3.0×10-7mm2/kgよりも大きくなっており、
耐摩耗性が低くなっている。
【0043】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、S
iやMnのフェライトへの固溶によりフェライトを強化
(固溶強化)させる為に添加元素を適正化すると共に、
比較的大きい酸化物系介在物の個数を制限することによ
って、耐摩耗性に優れたフェライト・パーライト組織を
有する熱間鍛造用非調質鋼が得られた。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.3〜0.8%(質量%の意味、
    以下同じ)、Mn:0.3〜2.0%およびSi:0.
    5〜2.5%を夫々含有すると共に、下記(1)式で規
    定されるF値が1.0以上であり、且つ任意の縦断面に
    おける、被検面積300mm2当たりの平均粒径20μ
    m以上の酸化物系介在物が10個以下であることを特徴
    とする耐摩耗性に優れた熱間鍛造用非調質鋼。 F=[Si]+[Mn]/3.5 …(1) 但し、[Si] ,[Mn]は夫々の元素の含有量(質量%)を
    示す。
  2. 【請求項2】 C:0.3〜0.8%、Mn:0.3〜
    2.0%およびSi:0.5〜2.5%を夫々含有する
    他、V:0.4%以下(0%を含まない)、Nb:0.
    15%以下(0%を含まない)およびTi:0.15%
    以下(0%を含まない)よりなる群から選択される一種
    以上を含有し、且つ下記(2)式で規定されるF′値が
    1.0以上であると共に、任意の縦断面における、被検
    面積300mm2当たりの平均粒径20μm以上の酸化
    物系介在物が10個以下であることを特徴とする耐摩耗
    性に優れた熱間鍛造用非調質鋼。 F′=[Si]+[Mn]/3.5+3[V]+2.5 [Nb]+2.5[Ti] …(2) 但し、[Si] ,[Mn],[V],[Nb]および[Ti]は夫々の元素
    の含有量(質量%)を示す。
  3. 【請求項3】 更に他の元素として、Cr:1.5%以
    下(0%を含まない)を含有するものである請求項1ま
    たは2に記載の熱間鍛造用非調質鋼。
  4. 【請求項4】 更に他の元素として、Al:0.04%
    以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1
    〜3のいずれかに記載の熱間鍛造用非調質鋼。
  5. 【請求項5】 更に他の元素として、S:0.12%以
    下(0%を含まない)、Pb:0.3%以下(0%を含
    まない)、Zr:0.2%以下(0%を含まない)、C
    a:0.01%以下(0%を含まない)、Te:0.1
    %以下(0%を含まない)、Bi:0.1%以下(0%
    を含まない)よりなる群から選択される一種以上を含有
    するものである請求項1〜4のいずれかに記載の熱間鍛
    造用非調質鋼。
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