JPH11229061A - 摺動部材 - Google Patents

摺動部材

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JPH11229061A
JPH11229061A JP10028671A JP2867198A JPH11229061A JP H11229061 A JPH11229061 A JP H11229061A JP 10028671 A JP10028671 A JP 10028671A JP 2867198 A JP2867198 A JP 2867198A JP H11229061 A JPH11229061 A JP H11229061A
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JP
Japan
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aluminum alloy
weight
cylinder liner
sliding member
sintered
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JP10028671A
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Inventor
Katsuyoshi Kondo
勝義 近藤
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐熱性および耐摩耗性に優れ、ブリスタの発
生が抑制された焼結アルミニウム合金を用いた摺動部材
を提供する。 【解決手段】 シリンダライナは、3重量%以上20重
量%以下の直接窒化反応によって形成された窒化アルミ
ニウムを含む焼結アルミニウム合金から形成されてい
る。また、その焼結アルミニウム合金は、20重量pp
m以下の水素を含有している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は摺動部材に関し、特
に、自動車、自動二輪車、スノーモビル、水上バイク等
に用いられる内燃機関用アルミニウム合金製シリンダラ
イナーに用いられ、砂型鋳造などのアルミニウム低圧鋳
造またはアルミニウム重力鋳造によりエンジンブロック
にシリンダライナーを鋳込む際に、その鋳込時の熱によ
ってシリンダライナーの特性が劣化するのを抑制するこ
とができる摺動部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】潤滑
油中で摩擦摺動する自動車用部品あるいは自動二輪用部
品の軽量化においては、フリクション低減や駆動トルク
低減等による燃費改善効果が大きく期待できることか
ら、コンロッドやピストン等の摺動部品のアルミニウム
化による軽量化は極めて有効である。しかしながら、稼
働中に何らかの原因により潤滑油が摺動界面に十分存在
しない状態に陥ると、それらのアルミニウムの部品に
は、焼きつき現象または凝着といった問題が生じる。こ
のため、たとえば、ピストンをアルミニウム合金にする
とともに、相手部材である内燃機関用シリンダライナー
材として、摺動表面にニッケル、クロム、鉄などの硬質
めっきを施した鋳造アルミニウム合金を適用したものに
よる焼きつき現象の抑制が検討された。
【0003】しかし、素地を構成するアルミニウム合金
の耐熱性が十分ではないために、シリンダライナー材と
して使用に耐えるものではなく、また、経済性の点にお
いても問題があった。そこで、急冷凝固法により得られ
る微細組織を有する粉末アルミニウム合金を適用するこ
とにより、アルミニウム合金の耐摩耗性および耐熱性の
向上が図られて、シリンダライナー材として実用化でき
る可能性が見出された。
【0004】例えば、「耐熱性、耐摩耗性、高靭性Al
−Si系合金およびそれを使用したシリンダライナー」
(特公平6−21309号)、「焼結アルミニウム合金
製摺動部材」(特開平1−255641号)などでは、
特殊な合金組成を有するアルミニウム合金粉末に、微細
で球状に近いアルミナ硬質粒子と潤滑成分としての黒鉛
粉末とを混合または添加し、熱間押出法により固化して
得られる内燃機関用シリンダライナー材を提案してい
る。また、「エンジン用シリンダブロックの製造方法」
(特開平1−271053号)においては、粉末アルミ
ニウム合金製シリンダライナーをシリンダブロック本体
に鋳込む方法を提案している。
【0005】しかしながら、アルミニウム低圧鋳造法や
アルミニウム重力鋳造法により、シリンダライナーをA
C8AやAC8B製エンジンブロック本体に鋳込む場合
には、シリンダライナーは500℃を越える高温のもと
に晒される。このとき、上記のような従来のアルミニウ
ム合金製シリンダライナーでは、次のような2つの問題
が生じる。その1つとして、シリンダライナーに用いる
アルミニウム合金の耐熱性が不足するために、エンジン
ブロック本体に鋳込んだ後のシリンダライナーの強度や
耐摩耗性が低下する。その結果、実際の使用に耐えるこ
とができず、たとえば、使用中に相手材であるピストン
やピストンリングとの焼きつき(凝着)現象やかじり現
象といった問題が生じる。もう1つの問題として、ブリ
スタ(気泡)が発生する問題がある。これは、シリンダ
ライナーをエンジンブロックに鋳込む際に、シリンダラ
イナーは500℃を越える高温のもとに長時間晒される
ため、シリンダライナー内部から発生するガスにより、
エンジンブロックと接するシリンダライナーの表面にブ
リスタが生じ、発泡した状態となる。このため、シリン
ダライナーの機械的特性や摩擦摺動特性が低下する。こ
のようなブリスタの発生に対しては、シリンダライナー
の表面をアルミニウム合金シースで覆うといった2層構
造のシリンダライナーを提供することも有効である。し
かしながらこの場合には、経済性の問題やシリンダライ
ナーが圧肉構造となるためにエンジンブロックの大型化
といった問題が生じた。
【0006】本発明は上記問題点を解決するためになさ
れたものであり、耐熱性および耐摩耗性に優れ、ブリス
ターの発生が抑制されたシリンダライナーに用いられる
摺動部材を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】発明の構成 本発明者らは種々の実験および検討を行なった結果、ア
ルミニウム低圧鋳造およびアルミニウム重力鋳造によ
り、アルミニウム合金製エンジンブロックに鋳込むのに
適した内燃機関用アルミニウム合金製シリンダライナー
に適用する摺動部材を発明した。すなわち、低圧鋳造や
重力鋳造により、アルミニウム合金製エンジンブロック
本体にシリンダライナーを鋳込んだ後においても、ブリ
スタが生じることなく、強度や耐摩耗性が低下せず、耐
熱性に優れたアルミニウム合金製シリンダライナーに適
用する摺動部材を発明した。本発明によるアルミニウム
合金製シリンダライナーに適用される摺動部材の構成内
容を以下に示す。
【0008】本発明にかかる摺動部材は、焼結アルミニ
ウム合金からなる摺動部材であって、その焼結アルミニ
ウム合金は20重量ppm以下の水素と、3重量%以上
20重量%以下の窒化アルミニウムとを含んでいる。
【0009】好ましくは、焼結アルミニウム合金は1重
量%以上7重量%以下の窒素を含み、その窒素は、窒化
アルミニウムとして焼結アルミニウム合金中に存在す
る。
【0010】好ましくは、焼結アルミニウム合金は0.
05重量%以上のマグネシウムを含んでいる。
【0011】好ましくは、焼結アルミニウム合金の空孔
率は15容積%以下である。また好ましくは、焼結アル
ミニウム合金の空孔率は3容積%以上10容積%以下で
ある。
【0012】好ましくは、焼結アルミニウム合金は、潤
滑成分として、黒鉛、硫化モリブデン、硫化タングステ
ンおよびフッ化カルシウムからなる群から選ばれる少な
くとも1つの潤滑成分を含有するとともに、その含有量
が5重量%以下である。
【0013】また好ましくは、その潤滑成分の含有量が
1重量%以上3重量%以下である。好ましくは、焼結ア
ルミニウム合金は、シリコン、鉄、ニッケル、クロム、
マンガンおよびジルコニウムからなる群から選ばれる少
なくとも1つの元素を含有するとともに、その含有量が
35重量%以下である。
【0014】好ましくは、焼結アルミニウム合金は、酸
化チタン、酸化ジルコニウム、酸化シリコン、酸化マグ
ネシウム、酸化アルミニウムおよび酸化クロムからなる
群から選ばれる少なくとも1つの酸化物を含有するとと
もに、その含有量が5重量%以下である。
【0015】好ましくは、焼結アルミニウム合金に含ま
れる窒化アルミニウムとシリコンとを合わせた含有量
は、5重量%以上30重量%以下である。
【0016】また好ましくは、焼結アルミニウム合金か
らなる摺動部材は、シリンダライナーである。
【0017】次に、上述した構成による作用および効果
について以下に記載する。シリンダライナー用焼結アル
ミニウム合金中の水素含有量について既に説明したよう
に、シリンダライナーをエンジンブロックに鋳込む際
に、低圧鋳造法や重力鋳造法を適用すると、シリンダラ
イナー内部から発生するガスによりエンジンブロックと
接するシリンダライナーの表面にはブリスタ(気泡)が
生じる。本発明者らは、このブリスタを発生させる主原
因であるガスは、シリンダライナーを構成する焼結アル
ミニウム合金中の水素成分であることを見出した。そし
て、そのブリスタの発生を抑制するためには、焼結アル
ミニウム合金中の水素含有量を、重量基準で20重量p
pm以下に低減させることが有効であることを見出し
た。さらには、鋳造条件により600℃を越えるような
極めて高い高温のもとにシリンダライナーが長時間晒さ
れる場合においても、シリンダライナーにブリスタが発
生しないためには、その焼結アルミニウム合金中の水素
含有量を10重量ppm以下にすることが望ましいこと
も見出した。
【0018】反対に、焼結アルミニウム合金中の水素含
有量が20重量ppmを越える場合には、鋳込んだ後に
エンジンブロックと接するシリンダライナーの表面には
ブリスタが生じていることがわかった。
【0019】そして、本発明者らは、水素含有量を低減
させる方法として、水素含有量の少ない原料粉末(急冷
凝固アルミニウム合金粉末)を用いること(方法A)お
よびシリンダライナーを製造する過程において、ガス成
分(水素)を十分に除去すること(方法B)が有効であ
ることを見出した。方法Aでは、原料粉末をアルゴンガ
スや窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中で噴霧すること
により、水素含有量を20重量ppm以下に低減するこ
とができた。また方法Bにおいては、本発明で適用する
焼結アルミニウム合金では、後述するような500℃以
上の高温のもとで焼結する直接窒化法を適用するため、
その焼結過程において十分に水素ガス成分を除去するこ
とができ、水素含有量を20重量ppm以下に低減する
ことができた。
【0020】窒化アルミニウムの特徴とその作用および
効果について 従来、焼結アルミニウム合金の耐熱性を改善する方法と
して、鉄、ニッケル、クロムなどの遷移系金属元素を溶
融段階でアルミニウム中に添加したアトマイズ粉末を作
製することにより、これらの遷移元素とアルミニウムと
の微細な金属間化合物をアルミニウム合金中に生成およ
び分散させる方法がある。このような金属間化合物は耐
熱性に優れていることから、得られた焼結アルミニウム
合金の耐熱性も向上する。しかしながら、300℃を越
えるような環境下においては、金属間化合物が粗大化す
るために焼結アルミニウム合金の耐熱性が低下する。し
たがって、アルミニウム低圧鋳造やアルミニウム重力鋳
造により、アルミニウム合金製エンジンブロック本体に
シリンダライナーを鋳込む場合には、従来の焼結アルミ
ニウム合金では、その強度および耐摩耗性が低下し、シ
リンダライナーとして実際には使用することができな
い。
【0021】そこで、本発明においては、500℃を超
えても熱的に安定である窒化アルミニウム(AlN)を
アルミニウム合金中に生成および分散させることによ
り、本焼結アルミニウム合金が従来のアルミニウム合金
に比べて、優れた耐熱性を発現することを見出した。し
かも、本発明においては、従来の粉末冶金技術にあるよ
うに窒化アルミニウムを粉末(粒子)としてアルミニウ
ム合金粉末と混合してアルミニウム合金中に添加および
分散させるのではなく、アルミニウム合金粉末中のアル
ミニウムの成分と窒素ガスとを500℃を越える温度域
で反応および焼結させることにより窒化アルミニウムを
アルミニウム合金中に生成および分散させていることが
特徴である。
【0022】従来の製造方法によれば、添加された窒化
アルミニウム粒子では、アルミニウム合金素地との接触
界面には隙間があり、窒化アルミニウム粒子はその素地
中に機械的に拘束された状態である。このため、耐熱性
の改善効果が少なく、また、ピストンやピストンリング
等との相手材と摩擦および摺動する場合に、添加した窒
化アルミニウム粒子が脱落して、焼きつき現象やかじり
現象が生じる。
【0023】これに対して、本発明に適用する焼結アル
ミニウム合金においては、上述したように、窒化アルミ
ニウムを直接窒化反応により焼結アルミニウム合金中に
生成および分散させている。このため、窒化アルミニウ
ムとアルミニウム合金素地との接触界面には隙間がな
く、窒化アルミニウムはアルミニウム素地と結合した構
造を有し、アルミニウム素地に強固に密着している。そ
の結果、アルミニウム合金の耐熱性、耐摩耗性および耐
焼きつき性が大幅に向上する。これにより、アルミニウ
ム低圧鋳造やアルミニウム重力鋳造によりアルミニウム
合金製エンジンブロック本体にシリンダライナーを鋳込
む場合に、焼結アルミニウム合金の強度および耐摩耗性
は劣化することなく、シリンダライナーとして十分使用
することができる。
【0024】具体的な製造方法について説明する。ま
ず、油圧プレスや冷間静水圧プレス等により、アルミニ
ウム合金粉末を型押成形して圧粉体を作製する。この圧
粉体を窒素ガス雰囲気中で加熱および焼結することによ
り得られたアルミニウム合金焼結体の旧粉末粒界に窒化
アルミニウムを生成および分散させる。また、必要に応
じて熱間押出法や熱間鍛造法を施すことにより、アルミ
ニウム合金焼結体の強度を向上させることもできる。
【0025】低圧鋳造法または重力鋳造法によりエンジ
ンブロックにシリンダライナーを鋳込む場合には、50
0℃を越える高温のもとに長時間晒されるために、シリ
ンダライナーには耐熱性が要求される。このため、本発
明に適用する焼結アルミニウム合金では、耐熱性を改善
する目的で含有させる窒化アルミニウムの適正な生成量
は、焼結アルミニウム合金全体に対して3重量%以上2
0重量%以下である。また、耐摩耗性および被削性の観
点から、窒化アルミニウムの含有量は5重量%以上15
重量%以下がより好ましい。窒化アルミニウムの含有量
が3重量%未満の場合には、十分な耐摩耗性が得られな
い。一方、窒化アルミニウムの含有量が20重量%を超
えても耐熱性は顕著には向上せず、かえって被削性が低
下したり焼結体の靭性が低下したりするなどの問題が生
じる。また、焼結工程に長時間を要するなどの経済性の
問題が生じる。
【0026】さらに、シリコンも窒化アルミニウムと同
様に、耐摩耗性の向上に効果があり、本発明者らは、シ
リコンと窒化アルミニウムとの合計含有量を5重量%以
上30重量%以下に調整することにより、シリンダライ
ナーとして要求される耐熱性、耐摩耗性および被削性を
両立できることを見出した。反対に、その合計含有量が
5重量%未満の場合には、十分な耐摩耗性が得られず、
また、30重量%を越える場合には、焼結アルミニウム
合金の靭性および被削性が低下するといった問題が生じ
る。
【0027】なお、上記の適正範囲量の窒化アルミニウ
ムを生成させるためには、アルミニウム成分と反応する
ために必要な窒素量として、1重量%以上7重量%以下
の窒素を焼結アルミニウム合金中に含有する。つまり、
窒素の含有量が1重量%未満では3重量%以上の窒化ア
ルミニウムを生成できず、また、窒素の含有量が7重量
%を越えると、20重量%を越える窒化アルミニウムが
生成することを、本発明者らは確認している。
【0028】以上のことより、本発明に係る焼結アルミ
ニウム合金からなる摺動部材を適用したシリンダライナ
ーは、3重量%以上20重量%以下の窒化アルミニウム
を含有し、また、1重量%以上7重量%以下の窒素を含
有する。これにより、耐熱性、耐摩耗性、耐焼きつき性
および被削性に優れ、アルミニウム低圧鋳造やアルミニ
ウム重力鋳造によりアルミニウム合金製エンジンブロッ
ク本体に鋳込んだ状態で、シリンダライナーとして使用
することができる。
【0029】なお、直接窒化反応により焼結アルミニウ
ム合金中に窒化アルミニウムを生成および分散させるた
めには、マグネシウムを0.05重量%以上含有する必
要がある。マグネシウムは、予めアルミニウム合金粉末
中に含有されて、窒素ガス雰囲気中でアルミニウム圧粉
体を加熱および焼結する際に、粉末表面を覆う酸化アル
ミニウム被膜を還元反応により除去する効果を有してい
る。その結果、窒素ガスと粉末中のアルミニウム成分と
が反応して窒化アルミニウムが生成する。したがって、
本発明で適用する焼結アルミニウム合金においては、マ
グネシウムは必須元素であり、その含有量としては0.
05重量%以上必要である。すなわち、マグネシウムの
含有量が0.05重量%未満の場合には、上述したマグ
ネシウムによる還元反応が十分に生じないために、窒化
アルミニウムを均一に生成することができない。
【0030】さらに、直接窒化反応を利用して焼結アル
ミニウム合金中に生成する窒化アルミニウムは、従来法
による添加した窒化アルミニウム粒子とは組織構造が大
きく異なる。具体的には、直接窒化反応の過程におい
て、窒化アルミニウムは圧粉体中のアルミニウム合金粉
末表面から一方向に繊維状あるいは樹枝状に成長する。
その結果、窒化アルミニウムは、層状の被膜としてアル
ミニウム合金中に生成および分散する。
【0031】一方、従来法、すなわち、窒化アルミニウ
ム粒子を主原料のアルミニウム合金粉末と混合して固化
して得た窒化アルミニウム粒子分散型焼結アルミニウム
合金においては、単結晶構造を有した窒化アルミニウム
粒子が焼結アルミニウム合金中に分散している。つま
り、直接窒化反応により生成された窒化アルミニウムを
有する焼結アルミニウム合金では、窒化アルミニウムは
繊維状あるいは樹枝状の組織構造を有するため、従来法
により得られた焼結アルミニウム合金よりも優れた摺動
性を有していることを本発明者らは見出した。しかも、
樹枝状に成長する方向を窒化アルミニウムの厚さ方向と
するとき、直接窒化反応により生成する窒化アルミニウ
ムの厚さは3μm以下であることが望ましく、より好ま
しくは1μm以下である。窒化アルミニウムの厚さが3
μmを越える場合には、焼結アルミニウム合金の被削性
や靭性が低下する。特に、被削性の観点から、窒化アル
ミニウムの厚さは1μm以下であることがより好まし
い。
【0032】また、上述したように、500℃を越える
温度領域で粉末成形体を加熱および焼結して直接窒化反
応により窒化アルミニウムを生成させるため、その焼結
過程において、焼結アルミニウム合金中の水素ガス成分
は除去されて20重量ppm以下となる。これにより、
シリンダライナーをエンジンブロック本体に鋳込んだ場
合でも、アルミニウム合金溶融と接するシリンダライナ
ー表面でブリスタは発生せず、シリンダライナーは良好
な表面を有することができる。本発明者らは、特に、直
接窒化反応の温度をより高温にしたり、直接窒化反応の
時間を長くすることにより、水素の含有量を10重量p
pm以下に低減させることが可能であることを確認して
いる。
【0033】焼結アルミニウム合金中の空孔率とその作
用および効果について ピストンやピストンリングと接触するシリンダライナー
の摺動表面に空孔が分散することにより、その空孔部分
が摺動表面に対して凹状ピットをなし、その部分に潤滑
油が保持される。これにより、シリンダライナーとピス
トン等との摺動界面における湯膜切れを防ぎ、優れた耐
焼きつき性および耐摩耗性を発現させることが可能とな
る。このような効果を得るためには、焼結アルミニウム
合金中の空孔率は、アルミニウム合金全体に対して15
容積%以下であり、好ましくは3容積%以上10容積%
以下であることが望ましい。空孔率が15容積%を越え
ると、焼結アルミニウム合金の機械的特性が低下し、た
とえば、シリンダライナーとしての強度や剛性が十分に
得られない。その結果、エンジンブロックにシリンダラ
イナーを鋳込んだ際にシリンダライナーが変形するとい
った問題が生じる。したがって、優れた耐焼きつき性、
耐摩耗性および機械的特性を両立させるためには、焼結
アルミニウム合金中の空孔率は15容積%以下であるこ
とが必要であり、より好ましい範囲としては3容積%以
上10容積%以下であることを発明者らは見出した。
【0034】固形潤滑成分とその作用および効果につい
て 黒鉛、硫化モリブデン(MoS2 )、硫化タングステン
(WS2 )およびフッ化カルシウム(CaF2 )などの
固形潤滑粉末は、シリンダライナーの摺動面に分散して
空孔と同様に、凹状の油溜りを形成することによって、
摺動界面における油膜切れを防止する。また、固形潤滑
粉末はその粉末自身の潤滑性能によって摩擦を軽減す
る。これにより、優れた耐焼きつき性および耐摩耗性を
発現させることが可能となる。本発明で適用されるシリ
ンダライナーに用いる焼結アルミニウム合金は、黒鉛、
硫化モリブデン、硫化タングステンおよびフッ化カルシ
ウムから選ばれた少なくとも1つの潤滑成分を有し、そ
の含有量は5重量%以下である。好ましくは、1重量%
以上3重量%以下が望ましい。
【0035】潤滑成分の含有量が5重量%を越えると、
アルミニウム合金素地を構成するアルミニウム合金粉末
同士の結合強度が低下するために、シリンダライナーと
して要求される機械的強度が十分に得られない。また、
シリンダライナーの製法の1つである熱間押出法におい
て、アルミニウム合金粉末同士の結合が十分ではないた
めに、押出後のシリンダライナーの表面がささくれた状
態となり、製造面における問題も生じる。したがって、
シリンダライナーの機械的強度の低下を抑え、かつ、優
れた耐摩耗性および耐焼きつき性を得るためには、上記
含有量の潤滑成分が必要である。
【0036】アルミニウム合金の組成とその作用および
効果について 本発明の摺動部材に用いる焼結アルミニウム合金では、
必要に応じてシリコン、鉄、ニッケル、クロム、チタ
ン、ジルコニウムおよびマンガンからなる群から選ばれ
る、少なくとも1つの元素を含有することにより、以下
に示すような効果を得ることができる。ただし、焼結ア
ルミニウム合金の耐摩耗性および耐焼きつき性を向上さ
せるとともに、強度、硬度および剛性などの機械的特性
を向上させるためには、上記の各元素について少なくと
も1つの元素を含有し、かつ、合計の含有量が35重量
%以下であることが望ましい。これは、添加する元素の
合計含有量が35重量%を超えても各特性は著しく向上
せず、かえって焼結アルミニウム合金の靭性が低下する
といった問題や、また、アルミニウム合金の硬さや剛性
が大きくなりすぎるために熱間押出が困難になるといっ
た製法上の問題が生じるからである。
【0037】また、上記の各元素をアルミニウム合金中
に添加するには、所定のアルミニウム合金組成を有する
溶融から急冷凝固法によりアルミニウム合金粉末を作製
し、これを原料粉末として用いる。つまり、所定のアル
ミニウム合金成分からなるアルミニウム合金溶融を噴霧
法(アトマイズ法)により粉末にし、このアルミニウム
合金粉末を成形および加熱固化することにより、所定の
組成を有する焼結アルミニウム合金を創製することがで
きる。
【0038】シリコンの添加 シリコンは、アルミニウム合金の素地中に分散して、ア
ルミニウム合金の耐摩耗性および耐焼きつき性を向上さ
せる効果がある。上述したように、シリコンと窒化アル
ミニウムとの合計含有量を5重量%以上30重量%以下
に調整することにより、シリンダライナーとして要求さ
れる耐熱性、耐摩耗性および被削性を両立できることを
発明者らは見出した。5重量%未満の場合には、十分な
耐摩耗性が得られない。30重量%を超えてシリコンを
添加しても特性はさらに向上せず、かえってアルミニウ
ム合金の靭性が低下するといった問題がある。また、ア
ルミニウム合金の剛性が大きくなるために、熱間押出に
おいて押出体を創製する際に高い押出力が必要となる。
そのために、大型の押出設備が必要となり、経済性の問
題が生じる。また、30重量%を越える場合には、焼結
アルミニウム合金の靭性および被削性が低下する問題が
生じる。
【0039】鉄、ニッケル、クロム、チタンまたはジル
コニウムの添加 これらの金属元素は、アルミニウムと微細な金属間化合
物を形成して、素地中に分散することによりアルミニウ
ム合金の耐熱性、剛性および硬さを向上させる効果があ
る。つまり、耐熱性を改善することにより摺動時におけ
る相手材との焼きつきが大幅に抑制されることから、こ
れらの元素を添加することは有効である。また、このよ
うな熱的に安定な金属間化合物を微細かつ均一に分散さ
せることにより、加熱および焼結時におけるシリコン晶
の成長を抑制することができ、その結果、アルミニウム
合金の被削性が大幅に向上するといった効果もある。な
お、このような効果を得るためには、これらの元素をそ
れぞれ1重量%以上含有する必要がある。これらの元素
を適正量を超えて添加した場合には、金属間化合物が粗
大するために、かえって、アルミニウム合金の靭性や強
度が低下するといった問題が生じる。また、アルミニウ
ム合金粉末を製造する上で、アルミニウム合金溶融の融
点が上昇するために製造コストの上昇を誘発し、その結
果、アルミニウム合金粉末の価格が上昇するといった経
済性の問題も生じる。このため、各元素の適正な添加量
として、鉄では1〜8重量%、ニッケルでは1〜8重量
%、クロムでは1〜6重量%、チタンでは1〜4重量
%、ジルコニウムでは1〜4重量%をそれぞれ設定し
た。
【0040】マンガンの添加 マンガンの場合にも、上記の金属と同様にアルミニウム
との金属間化合物を形成し、合金素地中に均一に分散す
ることによって、アルミニウム合金の機械的特性および
摺動時における相手材との耐焼きつき性を向上させる効
果がある。これらの効果を得るためには、マンガンを1
重量%以上含有する必要があるが、5重量%を超えて添
加しても特性は向上せず、かえってアルミニウム合金の
靭性を低下させてしまう。
【0041】硬質粒子とその作用および効果について 本発明に係る摺動部材としてのシリンダライナーに用い
られる焼結アルミニウム合金は必要に応じて、酸化チタ
ン、酸化ジルコニウム、酸化シリコン、酸化マグネシウ
ム、酸化アルミニウムおよび酸化クロムからなる群から
選ばれた少なくとも1つの酸化物球状粒子を5重量%以
下含有している。硬質粒子は、窒化アルミニウムやシリ
コンと同様に、焼結アルミニウム合金の素地中に分散し
て耐摩耗性および耐焼きつき性を向上させる効果があ
る。ただし、硬質粒子の添加量としては、アルミニウム
合金全体に対して5重量%以下であることが望ましい。
これは、5重量%を超えて硬質粒子を添加しても、耐摩
耗性や耐焼きつき性は顕著には向上せず、かえってアル
ミニウム合金の被削性が低下したり、相手材を攻撃する
などの問題が生じる。なお、上記硬質粒子のうち、アル
ミニウム合金の耐摩耗性、被削性の観点からは、酸化チ
タン、酸化シリコン、酸化マグネシウムおよび酸化アル
ミニウムの酸化物球状粒子の添加がより効果的であるこ
とを本発明者らは見出した。
【0042】
【実施例】実施例1 窒素ガスアトマイズ法を用いて、シリコン15重量%、
鉄5重量%、ニッケル3重量%、マグネシウム1重量%
および残部がアルミニウム合金からなる急冷凝固アルミ
ニウム合金粉末(平均粒径45μm、水素含有量18重
量ppm)と黒鉛粉末との混合粉末の成形体を作製し
た。黒鉛粉末の含有量は、混合粉末全体に対して1重量
%である。その混合粉末の成形体を窒素ガス雰囲気中で
加熱および焼結することにより、窒化アルミニウムが分
散する焼結アルミニウム合金を作製した。窒化アルミニ
ウムの含有量を、焼結アルミニウム合金全体に対して
3.5重量%とした。なお、焼結する際の温度および加
熱保持時間を制御することにより、下の表1に示すよう
な水素含有量を有する焼結アルミニウム合金をそれぞれ
作製した。この焼結アルミニウム合金を熱間押出するこ
とによって得た円筒状の素材から機械加工を施すことに
よって、アルミニウム合金製シリンダライナー(外径7
5mm×内径65mm×全長83mm)を作製した。そ
のアルミニウム合金製シリンダライナーを、アルミニウ
ム低圧鋳造法またはアルミニウム重力鋳造法により、エ
ンジンブロック本体内に鋳込んだ。そして、エンジンブ
ロックと接するシリンダライナーの表面組織を観察し
て、シリンダライナーの表面にブリスタが発生している
か否かを確認した。表1にその結果を併せて示す。
【0043】
【表1】
【0044】表1を参照して、本発明において規定する
水素含有量を有する焼結アルミニウム合金製シリンダラ
イナー(No.1〜No.5)では、アルミニウム低圧
鋳造法または重力鋳造法によりアルミニウム合金製エン
ジンブロックに鋳込んだ場合でも、シリンダライナーの
内部にはブリスタは顕著に発生しておらず、十分使用で
きることが確認された。特に、水素の含有量が10重量
ppm以下の場合では、600℃以上の高温に晒されて
もシリンダライナーの内部にはブリスタは発生していな
いことが判明した。一方、比較材(No.6〜No.
8)においては、焼結アルミニウム合金中の水素含有量
が20重量ppmを越えるため、エンジンブロックに鋳
込んだ際に、シリンダライナーの断面全域においてブリ
スタが発生していることが確認された。また、ブリスタ
の発生によってシリンダライナーの強度が低下するため
に、シリンダライナーの一部が変形して真円が保たれて
いないことが確認された。
【0045】実施例2 下の表2に示す合金組成を有する窒素ガスアトマイズ法
により作製した急冷凝固アルミニウム合金粉末に、必要
に応じて酸化物球状粒子(平均粒径5〜10μm)およ
び固形潤滑粒子(平均粒径5〜15μm)を混合したも
のを原料粉末とし、これを成形した。成形した原料粉末
を窒素雰囲気中で加熱および焼結することにより、焼結
アルミニウム合金中に窒化アルミニウムを生成させた。
この焼結アルミニウム合金に熱間押出法による加工を行
なうことによって、シリンダライナーを作製した。ま
た、押出条件により、シリンダライナーの空孔率を3〜
5容積%に調整した。なお、表2において酸化物粒子、
潤滑粒子、窒化アルミニウムおよび窒素の含有量はそれ
ぞれ焼結アルミニウム合金全体に対する重量%で表示さ
れている。
【0046】
【表2】
【0047】さらに、シリンダライナーの素材から摩耗
試験用試料を作製し、溶性アルミニウム合金(JIS
AC8A材)を相手材として、境界潤滑条件における各
焼結アルミニウム合金の耐摩耗性を評価した。また、油
膜切れの条件下における耐焼きつき性を評価した。耐焼
きつき性の評価としては、押しつけ荷重を増加させて、
焼きつき現象が発生した際の荷重を比較した。また、そ
の評価にはチップオンディスク式摩擦試験を用いた。な
お、比較材(No.19)として、溶性アルミニウム合
金(JIS AC8A材)を用いたシリンダライナーを
作製するとともに、その試料の摺動面には硬質クロムめ
っきを施した。さらに、比較材(No.20)として、
鋳鉄材を用いた。その摩耗試験後のシリンダライナーの
素材および相手材の摩耗量および焼きつき発生荷重の評
価結果を下の表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】本発明のシリンダライナーに用いられる焼
結アルミニウム合金(No.1〜No.12)において
は、表3に示されているように、耐摩耗性に優れ、か
つ、相手材への攻撃性も少なく、現行の鋳鉄材や硬質ク
ロムめっき処理を施したアルミニウム合金と同レベルで
あることがわかった。また、耐焼きつき性についても鋳
鉄材と同レベルであり、結果的に、めっき被膜が剥離し
た硬質クロムめっきを施したものに比べて優れているこ
とが判明した。
【0050】一方、比較材(No.13〜No.18)
については、次のような問題が確認された。比較材(N
o.13)では、窒化アルミニウムが含有されていない
ために、十分な耐摩耗性および相手攻撃性が得られなか
った。比較材(No.14)では、窒化アルミニウムの
含有量が2重量%であり、このために、十分な耐摩耗性
および相手攻撃性が得られなかった。比較材(No.1
5)では、窒化アルミニウムの含有量が24重量%であ
り、このために、アルミニウム合金の強度が低下し、加
圧時に試料が欠損した。比較材(No.16)では、潤
滑粒子の含有量が6重量%であり、このために、アルミ
ニウム合金の強度が低下し、加圧時に試料が欠損した。
また、熱間押出時にシリンダライナーの表面がささくれ
た状態となった。比較材(No.17)では、硬質粒子
の含有量が7重量%であり、このために、相手材を攻撃
し耐焼きつき性が低下した。比較材(No.18)で
は、硬質粒子の含有量が7重量%であり、このために、
相手材を攻撃し耐焼きつき性が低下した。
【0051】なお、比較材(No.15)では、シリコ
ンと窒化アルミニウムの合計含有量が30重量%よりも
多いために、また、比較材(No.17、18)では、
硬質粒子の含有量が5重量%よりも多いために、それぞ
れの焼結アルミニウム合金から摩擦試験片を加工する際
の超硬工具の摩耗が他の試料の場合に比べて顕著であっ
た。
【0052】実施例3 実施例2において示した各シリンダライナーの素材を所
定の円形形状に加工した後、アルミニウム低圧鋳造法に
よりアルミニウム合金製エンジンブロックに鋳込み、そ
れぞれのシリンダライナーについて単体耐久試験を実施
した。そして、耐久試験後のシリンダライナーおよびピ
ストンの摺動面の損傷状況を観察し、摩耗や凝着(焼き
つき)の有無を確認した。その結果を下の表4に示す。
【0053】
【表4】
【0054】なお、比較材(No.19)では、溶性ア
ルミニウム合金(JIS AC8A材)を用いたシリン
ダライナーを作製し、その摺動面には耐摩耗性および耐
焼きつき性を改善する目的で硬質クロムめっきを施し
た。また、比較材(No.20)では、FC鋳鉄材を用
いて同じ寸法のシリンダライナーを作製し、アルミニウ
ム合金製エンジンブロックに鋳込んだ。また、ピストン
材として溶性アルミニウム合金(JIS AC8A材)
を用いた。ただし、比較材(No.19)の場合に限
り、ピストン材として、シリンダライナーと摺動する外
周表面に鉄めっきを施したものも準備した。
【0055】本発明のシリンダライナーに用いられる焼
結アルミニウム合金(No.1〜No.12)では、表
4に示されているように、シリンダライナー自身は耐摩
耗性に優れていることが判明した。また、相手材である
ピストンに鉄めっきを施さなくても摩耗や凝着を生じる
ことがなく、また、相手材への攻撃性も少なく、現行の
鋳鉄材と同レベルであることが判明した。
【0056】一方、比較材(No.13〜No.19)
については次のような問題が確認された。比較材(N
o.13)では、窒化アルミニウムが含有されていない
ために、十分な耐摩耗性および相手攻撃性が得られなか
った。比較材(No.14)では、窒化アルミニウムの
含有量が2重量%であり、このために、十分な耐摩耗性
および相手攻撃性が得られなかった。比較材(No.1
5)では、窒化アルミニウムの含有量が24重量%であ
り、このために、相手材であるピストン側への攻撃量が
増加した。比較材(No.16)では、潤滑粒子の含有
量が6重量%であり、このために、アルミニウム合金の
強度が低下し、耐摩耗性が若干低下した。比較材(N
o.17)では、硬質粒子の含有量が7重量%であり、
このために、相手材であるピストン側への攻撃量が増加
した。比較材(No.18)では、硬質粒子の含有量が
7重量%であり、このために、ピストン側への攻撃量が
増加した。比較材(No.19)では、溶性アルミニウ
ム合金からなるシリンダライナーの摺動面に硬質クロム
めっきを施し、かつ、ピストン側にも鉄めっきを施さな
いと、摩耗や凝着が生じシリンダライナーとして使用で
きないことが判明した。
【0057】なお、比較材(No.15)においては、
窒化アルミニウムの含有量が適正量よりも多いために、
また、比較材(No.17、18)では、硬質粒子の含
有量が適正量よりも多いために、シリンダライナーに加
工する際の超硬工具の摩耗が他の試料の場合と比べて顕
著であることが判明した。
【0058】以上の結果より、本発明のシリンダライナ
ーに用いられる焼結アルミニウム合金では、硬質クロム
めっき等の表面処理を施さなくてもシリンダライナーと
しての耐摩耗性および耐焼きつき性を十分に有している
ことがわかった。また、相手材であるピストン側にも鉄
めっき処理などを施すことなく使用できるといった経済
性の面においても優れていることがわかった。
【0059】実施例4 シリコン12重量%、鉄3重量%、ニッケル3重量%お
よびマグネシウム1重量%を含有するアルミニウム合金
粉末に、1.5重量%の酸化チタン(TiO2)粒子
(平均粒径7μm)および1重量%の黒鉛粉末(平均粒
径10μm)を添加した混合粉末を成形した。その成形
した混合粉末を540℃に制御した窒素雰囲気中で3時
間加熱および保持することにより、4重量%の窒化アル
ミニウムを含有する焼結アルミニウム合金を作製した。
この焼結アルミニウム合金を用いて、熱間押出法により
円筒形状のシリンダライナーを作製した。このとき、押
出条件(押出比)を制御することにより、押出後のシリ
ンダライナーの素材の空孔率を変えて、各焼結アルミニ
ウム合金の耐摩耗性および耐焼きつき性を評価した。そ
の結果を下の表5に示す。なお、耐摩耗性の評価につい
ては、実施例1において説明したように、チップオンデ
ィスク式摩耗試験により境界潤滑条件における性能を評
価した。また、相手材であるディスク側には、溶性アル
ミニウム合金(JIS AC8A)材を使用した。
【0060】また、各シリンダライナーをアルミニウム
低圧鋳造法によりエンジンブロック本体に鋳込み、その
ときのシリンダライナーの変形の有無を確認した。その
結果も表5に示す。なお、比較材(No.8)として、
FC鋳鉄を用いたシリンダライナーについても同様の評
価を行なった。
【0061】
【表5】
【0062】表5に示されているように、本発明の規定
する空孔率を有する焼結アルミニウム合金を用いたシリ
ンダライナー(No.1〜5)では、現行のシリンダラ
イナー材であるFC鋳鉄材と同等の耐摩耗性および耐焼
きつき性を有していることが判明した。特に、空孔率が
3〜10容積%の焼結アルミニウム合金では、耐摩耗性
および耐焼きつき性はさらに優れていることが判明し
た。また、シリンダライナーをエンジンブロックに鋳込
んだ場合においても、エンジンブロック本体側からの拘
束力によって変形することなく、シリンダライナー形状
に加工した状態の真円度が確保されていることがわかっ
た。
【0063】一方、比較材においては次のような問題が
確認された。比較材(No.6)では、空孔率が18容
積%であり、このために、シリンダライナーをエンジン
ブロックに鋳込んだ際に、シリンダライナー側に作用す
る圧縮応力によってシリンダライナーが変形した。比較
材(No.7)では、空孔率が22容積%であり、この
ために、焼結アルミニウム合金の強度が低下し、摩擦試
験において試料が欠損した。また、シリンダライナーを
エンジンブロックに鋳込んだ際に、シリンダライナー側
に作用する圧縮応力によって、シリンダライナーが変形
した。
【0064】なお、今回開示された実施例はすべての点
で例示であって制限的なものではないと考えられるべき
である。本発明の範囲は上記で説明した範囲ではなく、
特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等
の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが
意図される。
【0065】
【発明の効果】本発明に係る摺動部材としてのシリンダ
ライナーに適用される焼結アルミニウム合金は、耐熱性
に優れており、砂型鋳造などのアルミニウム低圧鋳造法
またはアルミニウム重力鋳造法によりアルミニウム合金
製エンジンブロック本体にシリンダライナーを鋳込む際
の熱による特性の劣化を抑えることができる。また、ブ
リスタの発生を抑制することができる。これらの結果、
本発明に係る焼結アルミニウム合金からなる摺動部材
は、自動車、自動二輪車、スノーモビルおよび水上バイ
ク等に用いられる内燃機関用アルミニウム合金製シリン
ダライナーとして十分使用することができる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI F16J 10/04 F16J 10/04

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 焼結アルミニウム合金からなる摺動部材
    であって、 前記焼結アルミニウム合金は、 20重量ppm以下の水素と、 3重量%以上20重量%以下の窒化アルミニウムとを含
    む、摺動部材。
  2. 【請求項2】 前記焼結アルミニウム合金は1重量%以
    上7重量%以下の窒素を含み、 前記窒素は、窒化アルミニウムとして前記焼結アルミニ
    ウム合金中に存在する、請求項1記載の摺動部材。
  3. 【請求項3】 前記焼結アルミニウム合金は0.05重
    量%以上のマグネシウムを含む、請求項1または2に記
    載の摺動部材。
  4. 【請求項4】 前記焼結アルミニウム合金の空孔率は1
    5容積%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の
    摺動部材。
  5. 【請求項5】 前記焼結アルミニウム合金の空孔率は3
    容積%以上10容積%以下である、請求項4記載の摺動
    部材。
  6. 【請求項6】 前記焼結アルミニウム合金は、潤滑成分
    として、黒鉛、硫化モリブデン、硫化タングステンおよ
    びフッ化カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも
    1つの潤滑成分を含有するとともに、その含有量が5重
    量%以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の摺動
    部材。
  7. 【請求項7】 前記潤滑成分の含有量が1重量%以上3
    重量%以下である、請求項6記載の摺動部材。
  8. 【請求項8】 前記焼結アルミニウム合金は、シリコ
    ン、鉄、ニッケル、クロム、マンガンおよびジルコニウ
    ムからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含有
    するとともに、その含有量が35重量%以下である、請
    求項1〜7のいずれかに記載の摺動部材。
  9. 【請求項9】 前記焼結アルミニウム合金は、酸化チタ
    ン、酸化ジルコニウム、酸化シリコン、酸化マグネシウ
    ム、酸化アルミニウムおよび酸化クロムからなる群から
    選ばれる少なくとも1つの酸化物を含有するとともに、
    その含有量が5重量%以下である、請求項1〜8のいず
    れかに記載の摺動部材。
  10. 【請求項10】 前記焼結アルミニウム合金に含まれる
    窒化アルミニウムとシリコンとを合わせた含有量は、5
    重量%以上30重量%以下である、請求項8または9に
    記載の摺動部材。
  11. 【請求項11】 前記焼結アルミニウム合金からなる摺
    動部材は、シリンダライナーである、請求項1〜10の
    いずれかに記載の摺動部材。
JP10028671A 1998-02-10 1998-02-10 摺動部材 Withdrawn JPH11229061A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014214329A (ja) * 2013-04-23 2014-11-17 住友電工焼結合金株式会社 シリンダライナ用原料粉末、シリンダライナ、及びシリンダライナの製造方法

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