JP2008280613A - 銅系焼結摺動材料および複層焼結摺動部材 - Google Patents

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武盛 高山
Tetsuo Onishi
哲雄 大西
Yoshikiyo Tanaka
義清 田中
Keiichi Maeda
敬一 前田
Kanichi Sato
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Abstract

【課題】摺動面における局部凝着体の掻き落とし作用を発現させて相手材料に対するアタック性を少なくし、かつ自身の耐摩耗性を改善し、さらに硬質相による摩擦発熱性を抑制して、焼付き限界性を改善する。
【解決手段】Ni、Si、Ti、Co、Al、V、Pの2種以上よりなる金属間化合物が1種以上分散され、その添加量がNi、Si、Ti、Co、Al、V、Pの2種以上の合計添加量で0.5〜10質量%になるようにされている。
【選択図】なし

Description

本発明は、銅系焼結摺動材料およびその銅系焼結摺動材料を鉄系材料に焼結接合してなる複層焼結摺動部材に関するものである。
一般に、軸受材料としての各種銅合金の選定は、油潤滑状況、摺動速度、摺動面圧等の条件に応じて決められており、油中で使用する場合には、比較的軟質な青銅(例えばBC3、BC6)、燐青銅(例えばPBC2A)、鉛青銅(例えばLBC2〜5)、ケルメット(例えばKJ1〜4)鋳造材が用いられ、油潤滑性が少し悪くなる場合には、銅系焼結軸受材料として、Cu−Sn、Cu−Sn−Pbおよびそれらに固体潤滑材としての黒鉛を添加した青銅系含油軸受が多く用いられている。
一方、鋼の裏金上に鉛青銅系焼結材料粉末を散布して焼結し、この焼結後に圧延機で圧下し再焼結して焼結接合して得られる複層軸受が、建設機械の足回りの転輪ローラ部に利用されている。また、そのような複層軸受に、Sn等の軟質金属をオーバーレイにより設けたものがエンジンメタルとして広く利用されている。さらに、より高面圧で、かつ摺動速度が遅く、境界潤滑条件になり易い場合には、耐焼付き性と耐摩耗性に優れた軟質な高力黄銅(例えばHBsC1〜4)が利用されている(非特許文献1参照)。
また、最も汎用的に用いられる青銅、鉛青銅系摺動材料に対する近年の要求は、より高速摺動下での耐焼付き性と耐摩耗性の向上にあるとともに、摺動速度が遅く、潤滑状態の悪い条件下でも優れた耐摩耗性を発揮することにある。さらに、近年における環境問題を考慮して、馴染み性に優れるとともに、安定した耐焼付き性を備えた鉛青銅系焼結摺動材料特性をPbの添加なしに発揮することが望まれている。
ところで、高速、高面圧下での摺動条件におけるかじり発生の頻発とそれによる異常摩耗の原因は、境界潤滑下での金属間の接触による凝着の発生とその急激な成長に起因すると考えられる。この対策としては多くの場合、エンジンメタルのようにSn等の軟質金属によるオーバーレイ層を形成して馴染み性を改善し、流体潤滑性を向上させることに注力されている。しかし、より高面圧下になったり、あるいは摺動時に振動負荷もしくは加減速条件等が加わって境界潤滑性が増大した場合には、オーバーレイ層の耐久性、寿命に問題があり、鉛青銅系焼結摺動材料自身の摺動性能、耐久性の改善が必要となっている。
一方、Pbを多く含有する鉛青銅系および鉛銅系焼結摺動材料では、とりわけ摺動速度が速い場合や、回転方向(摺動方向)が変わって加速減速を繰り返し、摺動速度が大きく変わりながら摺動する場合、さらには相手材料の面粗さが粗い場合等には、摩耗性が急激に増大し、長時間の使用に対して十分な耐久性が確保できないという問題点がある。
摺動材料の耐摩耗性を改善する意味合いからすれば、前述の高力黄銅を利用すべきであるが、この高力黄銅はその硬さが通常Hv180以上と高いことから、馴染み性が悪く、高荷重、低速条件での使用に限定されるという問題点がある。また、高力黄銅は蒸気圧が極めて高く、酸化し易いZnを高濃度に含有するため鋼との鋳包み接合を行うことができず、後述する本発明の主目的の一つである油圧ポンプ、モータ用の鉄系材料でできたシリンダブロック、バルブプレート等に鋳包み接合して利用することができないという問題点がある。
前述の耐摩耗性と耐焼付き性に関しては、含油銅系焼結摺動材料においても程度の差はあるものの同様の問題点がある。また、黄銅系焼結摺動材料においても、高濃度に含有するZnによって例えば鉄系材料に焼結接合することが極めて困難であるのは同じであり、やはりシリンダブロック、バルブプレート等に焼結接合して利用することができないという問題点がある。
また、近年においては、環境問題の上から鉛青銅系摺動材料中に含有されるPbを廃止することについての大きな要望がある。
このような観点から、青銅系焼結摺動材料特性を改善した先行技術として、特許文献1に開示されるものがある。この開示技術では、Pbを含まない青銅粉と3〜13質量%のW粉末を混合した粉末を鋼板の裏金上に散布し、焼結した後、高密度になるように圧延加工し、さらに再焼結した複層青銅系焼結摺動部材およびその青銅系焼結摺動材料が提案されている。この開示技術によれば、Wは青銅マトリックスとの親和性が良く結合強度が高いので、摺動抵抗等によるWの脱落もなく、青銅マトリックスに比べて硬さが大きく(W;Hv350〜500、Mo;Hv200〜250)、また硬度が高すぎて相手材料を損傷させる恐れのあるセラミックス粒子よりも軟質で、適度の硬さを持つことから、W粒子の一部が相手摺動部材側へ局部的に突き出して凹凸状の摺動面を形成し、この凹凸状の段差によって潤滑油膜を形成すること、およびWの融点が高い(3410℃)ので、Pbのように溶融することがなく、焼付きや摺動むらのない摺動特性が維持できるとともに、相手鋼材を摩耗させることがないとされている。
しかしながら、この開示技術では、潤滑油膜を形成するのに必要なW分散粒子が3〜13質量%と多量であることからコスト高になるという問題点がある。また、摺動条件が高周速、高面圧化するにしたがい、PbのようにW粒子が溶融しない場合においても相手部材との局部的な金属接触によって凝着部が形成され、W粒子の硬さが十分でないことからその凝着部の成長を止めるための局部凝着体の掻き落とし機能が十分に発揮されないため、耐摩耗性の向上が十分に達成されず、また凝着粉の多量発生によって結果的に耐焼付き性も十分に改善されないという問題点がある。
また、特許文献2においては、Sn;4〜12質量%またはそれとPb;0.1〜10質量%とを含有する青銅系および/または鉛青銅系焼結摺動材料中にMoを0.5〜5質量%またはFe−Moを0.5〜15質量%添加することによって、優れた潤滑機能と油に対する親和性を与えて低摩擦係数と高耐摩耗性とが付与される旨、開示されている。しかしながら、この開示技術においても、前記特許文献1と同様、Mo粒子の硬さが十分でないことから、耐摩耗性の向上が十分に達成されず、また凝着粉の多量発生によって結果的に耐焼付き性も十分に改善されないという問題点がある。
なお、この特許文献2に記載された製造方法においては、青銅系および/または鉛青銅系焼結摺動材料粉末を圧粉成形体として、銅メッキを施した鉄製の裏金にそれらの圧粉成形体をセットし、10kg/cm以下の圧力を付加しながら加圧焼結するとともに焼結接合して、焼結体の機械的強度を高めた複層焼結部材に関する技術が開示されているが、この製造方法は加圧焼結接合法によるために、適用部品に対する形状的制約が多く、かつ設備的な制約等からも生産性が極めて悪くなるという問題点があり、さらにコスト的にも安価にならないという問題点がある。また、材料的には馴染み性の確保に最も効果的なPbを多量に含有させる場合には、Pbが低融点金属成分であることから加圧状態で焼結する場合には焼結体内から流出され易く、同時にSn成分なども多く流出するために、多くのSn、Pbを前記焼結摺動材料中に含有させておくことができないという問題点があるとともに、製造工程においてSn、Pb成分の流出による環境上の問題点がある。
このほか、潤滑条件が厳しい高面圧、低速摺動環境での馴染み性と耐焼付き性の改善を目的として、2硫化モリブデン(MoS)、2硫化タングステン(WS)、黒鉛などの層状固体潤滑材を銅系焼結摺動材料に添加する方法も良く知られているが、焼結時において2硫化モリブデン、2硫化タングステンが分解して硬質な硫化銅(CuS)が形成され易いため、十分な潤滑作用を得るために多量の添加が必要になり、焼結体が脆弱になるとともにコスト的に高価になるという問題点がある。
また、黒鉛を添加する場合には、青銅系、鉛青銅系焼結材料との反応性はなく、その焼結体の焼結性を顕著に抑制し、焼結材料強度を弱くすることと、焼結時に発生されるSnやPbリッチな液相と極めて濡れにくいことから、焼結時の発汗性を顕著にして多数の流出孔を形成する等の問題点がある。また、残留する黒鉛が多くなると、焼結層の緻密化が困難になること、黒鉛が多孔質体であること等から境界潤滑性が高まり、高速油潤滑下での摺動特性の改善が期待されるほど発揮されないという問題点がある。
なお、軸受用の摺動材料とは全く異なる使用目的として、ブレーキもしくはクラッチ用の摩擦材として用いられる多孔質青銅系焼結材料では、ドライ、セミドライもしくは境界潤滑状態で高速回転体を制止するための高摩擦係数特性を持つ材料が開発されている。これらの材料は、表1〜表3(非特許文献2および3)に示されるように、5〜15質量%の多量の黒鉛を添加して多孔質性と低ヤング率性を持たせることを基本として、耐熱性に優れた固体潤滑材黒鉛やMo等の耐熱金属を添加して、制動時の相手材料との融着、焼付きを防止し、3〜20質量%のSiOやムライトなどの硬質粒子(非金属粒子)を添加することによって摩擦材金属素地の塑性流動を抑え、相手材表面を適度に削り取ることによって摩擦材の耐摩耗性の向上と安定した高摩擦係数化を達成するものである。
Figure 2008280613
Figure 2008280613
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しかしながら、この摩擦材料を、本発明のような摺動材料として使用した場合には、次のような問題点がある。
1)高い摩擦係数によって摺動面での発熱が問題になる。
2)非金属粉が高硬度であるために相手材料に過度の摩耗を与える。
3)多量の非金属と金属基地との間の結合が生じ難いために焼結体の強度が低下し、自己の耐摩耗性が十分でない。また、摩擦面から非金属が脱落し易く、その脱落粉が摩擦部位以外の部品を摩耗破損させる場合がある。
4)摩擦材料および相手材は互いに摩耗消耗品として定期的に交換して使用することを前提に設計されている。
一方、青銅系焼結摩擦材料に使用する硬質分散粒子の適正に関しては、特許文献3に開示された例がある。この公報においては、50〜300μmサイズで硬さがHv=600以上の硬質粒子で、例えばCr、Mo、W、V等の炭化物、Al、Mo等の窒化物、Cr、Ni、Zr等の酸化物を5〜40質量%含有させることによって、摩擦係数が、できるだけ高く、温度、滑り速度および接触圧等の条件に依存しない材料が得られることが開示されている。しかし、この材料についても、青銅系摺動材料として利用するには摩擦係数が高すぎるのは明らかであり、また前述と同様の問題点があるのは明らかである。
また、前述の鉛青銅系焼結摺動材料を鋼板に焼結接合したエンジンメタルのような複層焼結摺動部材においては、その製造方法が、鉛青銅系焼結摺動材料組成の合金粉末を鋼板上に散布した状態で焼結接合するために、少なくともCu−Snの包晶温度(約800℃)以上の温度で焼結接合させる際に、散布した合金粉末が焼結収縮するために焼結接合時に剥離し易いという問題点がある。また、Pbを添加しない青銅系合金粉末を焼結接合する場合には、焼結接合に不可欠な液相を発生させるためには包晶温度を越えた温度で焼結する必要があり、この際に散布した合金粉末が鉛青銅系より顕著に収縮するため、鋼板に焼結接合できないという問題点がある。
銅合金鋳物のエンジニアリング・データブック、P134〜P155、日本非鉄金属鋳物協会編集、素形材センター発刊、昭和63年7月30日 特開平11−350008号公報 特開平7−166278号公報 日本複合材料科学会誌、3(1)、8、1977 工業と製品、No.59、セラミックスデータブック76、p336、1976 特表平7−508799号公報
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、銅系焼結摺動材料中に鉄に対する耐凝着性に優れた硬質分散相を適量添加することによって、摺動面における局部凝着体の掻き落とし作用を発現させながら相手材料に対するアタック性を少なくし、かつ自身の耐焼付き性と耐摩耗性を改善すること、または、さらに銅系焼結摺動材料中に耐凝着性および潤滑性に優れた軟質の分散相を添加して、前記硬質相による摩擦発熱性を抑制して、焼付き限界性を改善した安価な銅系焼結摺動材料を提供することを第1の目的とするものである。
また、本発明は、前記青銅系および鉛青銅系焼結材料の粉末を鋼板上に散布して焼結接合した複層焼結摺動部材について、散布層の焼結収縮を抑制する元素および/または膨張させる元素を添加することによって安定した焼結接合性を得ることのできる安価な複層焼結摺動部材を提供することを第2の目的とするものである。
前記目的を達成すべく、本発明は、高速、高面圧下における摺動特性だけでなく、低速、高面圧下における摺動特性にも優れた銅系焼結摺動材料を提供するために、
1)相手材料となる鉄との耐凝着性に優れ、かつ耐熱衝撃性に優れたセラミックス等の非金属硬質分散粒子および金属間化合物粒子(硬質な第1分散粒子)の材質選定とその添加量および分散相サイズを適正化することによって、摺動面における局部凝着体の掻き落とし作用を発現させながら耐焼付き性と耐摩耗性を高めるとともに相手材料に対するアタック性を少なくし、
かつ、より厳しい摺動環境下においては
2)銅系焼結摺動材料中に耐凝着性および潤滑性に優れた軟質の分散相(第2分散粒子)を添加し、硬質相による摩擦発熱性を抑制して、焼付き限界性(摺動特性)を改善した
銅系焼結摺動材料を開発したものである。
また、本発明では、銅系焼結摺動材料中に、鉄との耐凝着性に優れ、かつ耐熱衝撃性に優れたセラミックス等の非金属硬質分散粒子および金属間化合物粒子を微細に分散させて、相手材料へのアタック性をできるだけ小さくするように工夫することによって、耐焼付き性を向上させ、Pb添加量の低減または廃止を図ったものである。
また、Mo、W、Cr、Fe、Co等のCuとの顕著な二相分離性を示す金属および/または合金粒子を分散させて、銅系焼結摺動材料の結晶粒度を微細化し、Pbや金属間化合物を微細に分散させることによって、耐焼付き性の向上を図るとともに、前記硬質な第1分散粒子を分散させることによって耐摩耗性と耐焼付き性の向上を図った。とりわけ、少量の硬質な第1分散粒子(非金属粒子および金属間化合物)を分散させながら、Mo、W等の粒子を分散させた青銅系、鉛青銅系焼結摺動材料は、後述するように振れまわりを伴いながら高速高面圧下で摺動する油圧ポンプ、モータのシリンダブロックの底面に焼結接合した場合に、極めて良い耐焼付き性と耐摩耗性を示すことを明らかにした。さらに、炭素量を0.15質量%以上を含有するFe−C合金粒子は、焼結後の冷却や別の熱処理によって高硬度なマルテンサイト組織化が図れるために、耐摩耗性の向上が容易に図れることがわかる。
さらに、本発明では、前記シリンダブロックのように銅系焼結摺動材料の焼結性を確保するとともに、鉄系材料に焼結接合して利用することに重点を置いており、鉄系材料に対する濡れ性の良い液相を出現させるためのSnを1〜16質量%添加し、またSi、Al、Ti、Cr、P等の合金元素を添加することによって、鉄系材料との接合性が顕著に高められることを明らかにした。
さらにまた、12質量%を越えるSnを添加した場合には、通常800℃以上の温度域での焼結中では液相として存在していたものが、冷却・凝固過程においてCu−Sn金属間化合物(δ相)が粒界部に析出し、またマトリックス中にも細かくβ相が析出し、延展性が抑制されて、凝着性が顕著に軽減することを明らかにした。とりわけ、この作用は、後述する油圧ポンプ、モータのシリンダブロックが良く示す振れまわりを伴う摺動条件などで極めて重要である。また、同様のことは、前記金属間化合物相を多量に分散析出させた摺動材料や酸化物、炭化物、窒化物などの硬質粒子を少量添加した摺動材料においても同じく有効である。
一方、前記青銅系および鉛青銅系焼結材料の粉末を鋼板上に散布して焼結接合した複層焼結摺動部材に対しては、散布した合金粉末が鉛青銅系より顕著に収縮することが原因となる、裏金との焼結接合不良を防止するために、散布層の焼結収縮を抑制するものを添加することによって、安定した焼結接合性が得られることを明らかにした。
要するに、第1発明による銅系焼結摺動材料は、
Cu、Sn、Ca、Mn、Cr、Mo、W、Sb、Teの2種以上よりなる金属間化合物が1種以上分散され、その添加量が金属間化合物として0.1〜10体積%になるようにされていることを特徴とするものである。
本発明においては、前記酸化物、炭化物、窒化物、炭窒化物、硼化物のうちの1種以上よりなる非金属粒子が0.1体積%以上で4体積%未満含有され、それらの分散相としての総量が0.1〜10体積%になるようにされているのが好ましい(第2発明)。
また、前記各発明において、Mo、W、Cr、Co、Fe、Fe−Cからなる金属および/または合金粒子が0.5〜5.0質量%分散されているのが好ましい(第3発明)。さらに、MnSが1質量%以下および/または黒鉛が1質量%以下含有されているのが好ましい(第4発明)。この場合、前記MnSおよび/または黒鉛の平均粒径が20〜200μm以下とされるのが良い(第5発明)。
さらに、前記各発明において、少なくともSnが1〜16質量%含有され、Pbが0〜25質量%含有されているのが好ましい(第6発明)。また、Snが12〜16質量%添加されて、当該焼結摺動材料組織中にCu−Sn化合物相が分散析出されているのが好ましい(第7発明)。この場合、さらに、Zn、Mn、Be、Mg、Ag、Biの1種以上の合金元素およびMoS、CaF、WSなどの固体潤滑剤が含有されているのが良い(第8発明)。
(1)硬質な第1分散粒子材の選定について
前記特表平7−508799号公報によれば、適正な硬質分散粒子として、50〜300μmサイズで、硬さがHv=600以上の、例えばCr、Mo、W、Vの炭化物、Al、Moの窒化物、Cr、Ni、Zrの酸化物を5〜40質量%含有させることによって、摩擦係数ができるだけ高くて、温度、滑り速度および接触圧に特に依存せずに一定の材料が得られることが開示されており、この硬質粒子の選定範囲は、SiO、Al、ムライト等を含めると、極めて広範な化合物相に拡大解釈される。これに対して、本発明で対象とする摺動材料は、広範囲な滑り速度および接触圧においても摩擦係数ができるだけ低く、とりわけ耐摩耗性と耐焼付き性に優れる摺動材料であって、相手材料(鉄系材料)に対するアタック性を最小限に抑えることを主旨としている。そして、本発明では、このような観点から硬質な第1分散粒子の剥ぎ取り作用により耐摩耗性を付与し、かつその材質、添加量およびそのサイズの適正化を図ることによって、低速、高速の両摺動条件においても馴染み性、耐焼付き性および耐摩耗性に優れた銅系摺動材料を開発したものである。
(1−1)酸化物、炭化物、窒化物、炭窒化物(硬質な非金属粒子)
前述のように、一般的には、硬質な第1分散粒子(非金属粒子)の剥ぎ取り作用は、非金属粒子の硬さとともに、そのサイズが大きくなるほどに顕著になり、耐摩耗性は顕著に向上すると考えられるが、後述するように例えばZrB、Al、SiOの各硬質粒子を0.3質量%添加した際の耐焼付き性はZrB(Hv=3000)が最も悪く、Al(Hv=2000)、SiO(Hv=780)の順に顕著に改善され、硬質な第1非金属粒子が硬いだけでは耐焼付き性や耐摩耗性が単純に改善されない。
また、サイズの異なるAlとSiOの添加の比較データからは、Alのサイズが大きくなるほど耐摩耗性は顕著に向上するが、耐焼付き性が悪くなること、またSiOの添加においてはそれほどサイズ効果の影響が顕著でないことがわかった。とりわけ、相手材の硬さ(浸炭焼入れ鋼での表面硬さHv=900)以上の硬さのAlの硬質粒子では、そのサイズが大きいほど相手材料に対するアタック性が顕著であり、またHv1000以上の硬質非金属粒子(例えばAl、TiN)では、平均粒径が5μm以下の微細粒子を分散させて使用することが相手材料に対するアタック性を低減させる上から好ましい。
なお、この硬質粒子サイズに関しては、SiO、ZrOでは平均粒径約20μmにおいてもAlのような顕著なアタック性は認められなかった。この結果は、これら粒子の硬さがAlほど硬くなく、とりわけSiOはヤング率がベース材料のCu合金や相手材料となる鋼のヤング率よりも低いことによるソフトな剥ぎ取り作用を示すこと、および、後述の摺動面での剥ぎ取り作用時に発生し易い熱衝撃的な応力に対する強度に優れていることも重要な要因であると考えられる。
ところで、後述する本発明の実施例に先立って実施したAlセラミックス焼結体の潤滑下における定速摩擦摩耗試験では、Alセラミックス焼結体が高速摺動条件下では極めて低い焼付き限界値(PV値)を示した。この原因は、Al摺動面での熱衝撃的な応力による破壊的摩耗粉の発生によるものである。このことは、塚本、高橋、駒井、葉山らが、「粉体および粉末冶金」31、p290(1984)において、摩擦材料中のAlが熱衝撃的な応力によって破壊することを報告していることからも明らかである。
以上の事実から、本発明では、前記硬質な第1非金属粒子材料としては、その非金属粒子が前述のように摺動面における掻き落し作用に関与する必要性から、まず、Hv350以上の適度な硬さを持つとともに、相手材料となる鉄に対する耐凝着性に優れるだけでなく、その非金属粒子がこのような摺動面での掻き落し作用時の急速加熱、急速冷却の過酷な熱衝撃を受ける環境に置かれることに着眼し、その非金属粒子が耐熱衝撃性に優れた材質であることが銅系焼結摺動材料の硬質分散粒子材料として適していることを明らかにした。
したがって、非金属粒子が耐熱衝撃性に優れるための特性要因としては、
1.熱膨張係数が極めて小さい、2.熱伝導性が高い、3.ヤング率が小さい、4.塑性変形性を有する等のうち少なくとも1つ以上に適合していることが必要である。本発明で提案するSiOは極めて小さな熱膨張係数を示し、かつ、前述のように鋼以下の低ヤング率であること、さらに、前述のように焼き入れた鋼と同じ程度の硬さをもち、鋼材に対するアタック性が小さいことなどを考え合わせても最も適した材料であることは明らかである。またSiOと類似の耐熱衝撃材料としては、コージェライト、スポジュメン、ユークリブタイト、Al・TiO等が有効であることは明らかである。
なお、前述のAlのように熱衝撃的な応力に対して脆弱な場合においても、その分散させる粒子サイズを5μm以下に微細化することによって改善されることは明らかである。
また、炭化物、窒化物、炭窒化物の硬質分散粒子は、一般的に熱伝導性に優れる観点から熱衝撃性に優れるが、後述するTiN添加の例から、さらに鉄系材料の切削工具に使用されている例から、WC、TiC、TiCN、Si、TaC、HfC、ZrC、MoC、VC等の炭化物、窒化物、炭窒化物が適していることは明らかである。これらの硬質分散粒子はその製造方法からして平均粒径が2μm以下と極めて細かいために、銅系焼結摺動材での均一分散性に問題となる場合があるので、本発明では、これらの炭化物、窒化物、炭窒化物とCo、Niとからなるサーメット粒子がその耐熱衝撃性という観点からしても優れているので、硬質非金属粒子として利用できる。また、それら添加するサーメット粒子の平均サイズは特別規定されるものではないが、後加工上の問題がある場合には70μm以下に調整しておくことが好ましい。
また、非金属粒子が硬すぎる(例えばHv=1000以上)場合には、相手材料に対するアタック性を軽減するために、分散粒子を5μm以下に微細化することは前述の通りであるが、SiO(Hv=780)、ZrO(Hv=1050)では平均粒径が20μmであってもAlのような顕著なアタック性が認められなかったことから、Hv=1000以下の分散粒子の適正な平均粒子サイズは一般冶金用粉末サイズの70μm程度であってもさほど大きな問題にならないと考えられるが、より細かいほどアタック性は低減するので、より安全的には45μm以下であることが好ましく、後述の焼結材料の結晶粒内への分散性を考慮した場合には、10μm以下であることがより好ましい。
また、通常、非金属粒子の添加は銅系焼結摺動材料の焼結性を阻害し、かつ1μm以下に微細化された非金属粒子では粒子間の凝集性が顕著になるため、一般冶金粉末との均一な混合がより難しくなり、焼結体中の粒界に連続して分散したり、凝集した脆弱な焼結体になることや、後述するように裏金上にこれら焼結摺動材料用の混合粉末を散布して焼結接合する時の接合性が確保されないことなどが危惧されるので、非金属粒子としては、微細化する必要性の無いSiO、ZrO・SiO、コージェライト、スポジュメン、ユークリブタイト、Al・TiOなどや前記サーメット粒子の使用が極めて良いことは明らかである。また、微細な粉末の代わりにファイバー状もしくは針状の非金属粒子を添加することは、前記混合、散布時の偏析・分離を防止する上で好都合であり、特に市場入手性の良いAl・TiOはファイバー状のものを利用できる。
前記非金属粒子の添加量に関しては、SiO、Al粒子1.0質量%で既に耐摩耗性の改善効果が飽和しており、SiO、Alの比重をそれぞれ2.2g/cm、3.9g/cmとすれば、その摺動面においてSiO、Alの占める面積%(体積%)は約4.0%、2.2%であることから、前記硬質粒子分散による摺動材の耐摩耗性改善作用はほぼ4面積%(体積%)未満で適正化されており、それ以上の添加量ではむやみに摩擦係数が大きくなり、相手材料に対するアタック性を増大させるので、摺動材料に添加する量としては4体積%未満とするのが良く、好ましくは2体積%程度とするのが良い。また、この添加量の下限値としては、前記耐摩耗性の改善効果がより明確に現れ始める0.2体積%が適正である。
さらに、摺動材料を変えて、マトリックス硬さ(Hv=40〜160)と適正添加量との関係を調査した結果、マトリックス硬さが高いほど、例えばAlの添加量は少量で前記効果が発現されることがわかり、その添加量は0.05〜0.5質量%の範囲にあることがわかった。例えば極めて軟質なCu−25質量%Pb(鉛銅焼結摺動材料)においては、例えばSiOの添加量は2.0質量%程度までの添加が可能と考えられ、その摺動面に占めるSiOの面積%は約8面積%であった。この硬質粒子の適正添加量が多くなる理由としては、硬質粒子が相手材凝着物を剥ぎ取る力がマトリックス硬さに比例して小さくなるためと考えられる。また、Cu−25質量%Pbという軟質マトリックス摺動材料の耐摩耗性改善効果においても、相手材料へのアタック性を考え合わせた場合には、硬質非金属粒子の添加量は0.05〜1.0質量%の範囲が適正と考えられるが、相手材料に対するアタック性をより重視した場合には、やはり0.5質量%未満程度に抑えて使用することが好ましい。また、Pb添加量が10質量%を越えない青銅および/または鉛青銅系焼結摺動材料においては、0.5質量%未満の添加がより好ましい。
また、焼結後の摺動材料組織としては、結晶粒界に前記非金属粒子がつながることは好ましいことではなく、本来は非金属粒子の多くが銅系焼結摺動材料の結晶粒内に分散されることが望ましいが、本発明で必要とする非金属硬質粒子の添加量は4体積%未満で、好ましくは2体積%(SiO相当で0.5質量%)程度と極めて少なく、かつ平均粒径が10μm以下の場合には、銅系焼結摺動材料が十分緻密化する条件で焼結する場合には、焼結中の粒成長によってその多くの非金属粒子が粒内に取り込まれるので、その脆弱性が更に軽減されるのは明らかである。
さらに、焼結摺動材料の馴染み性を阻害しないようにするという観点からは、焼結摺動材料硬さがほぼ同じ範囲内(硬さの10%)になることが好ましいが、本発明において非金属硬質粒子を0.05〜0.5質量%の範囲で添加することによる硬度上昇はほぼ無視でき、馴染み性が阻害されることはない。
また、後述するように、Mo、Wの金属粒子の分散作用についても検討したが、とりわけ耐摩耗性に対する改善効果が極めて小さく、本発明ではごく微量の硬質粒子分散による銅系焼結摺動材料の耐摩耗性を改善する材料として、非金属の硬質粒子が最も適していることが明らかになった。また、2体積%未満の硬質粒子とMo、Wを共存添加することによって、顕著な耐摩耗性改善効果と耐焼付き性改善効果とが確認された。
(1−2)金属間化合物
金属間化合物は、一般的に金属よりもはるかに硬質であるが、前記酸化物、炭化物、窒化物、炭窒化物に比べて金属に近い特性(例えば耐熱衝撃性、塑性変形性に優れる等)を示すことが知られている。また、塚本、高橋、駒井、葉山らは、「粉体および粉末冶金」31、p290(1984)において、摩擦材料における高い摩擦係数の発現と、摩擦材料の耐摩耗性の向上を目的として、各種金属間化合物を多量添加した場合の検討を行っており、摩擦材料に適した金属間化合物として、金属間化合物の硬さがHv=350以上で、かつその軟化温度が400℃以上であることが好ましいことを報告しているが、前述のZrB、Alの例でも明らかなように、金属間化合物の硬さの関係からだけで、摺動特性を改善することができないことは明らかである。
本発明では、金属間化合物の硬さだけでなく、金属間化合物自身が優れた耐焼付き性を発現するようにして、優れた摺動特性および/または耐摩耗性を得ることを目的とするために、金属間化合物が相手鉄系材料と局部的凝着を起しても、これら局部的凝着が自発的に成長し難いための成分系からなる金属間化合物を熱力学的手法に基づいて明らかにした。成分選定として、接触部での凝着によってFeと金属間化合物を構成する元素とが合金化する際の熱力学的過剰エネルギーがより大きな正の値で、化学的にはFe元素と金属間化合物構成元素とが凝着合金中において強く反発し合う元素からなる金属間化合物を使用することを特徴としている。
(1−2−1)熱力学的にFe原子と強く反発する2種以上の元素から構成される金属間化合物
摺動面での局部的凝着によってFeと金属間化合物を構成する元素が合金化する際の熱力学的過剰エネルギーが大きな正の値を取り、合金化する前の状態よりも不安定なエネルギー状態になる場合には(吸熱反応)、その局部的な凝着反応が自発的に進行することは無くなり、この条件に適合する金属間化合物は耐焼付き性に優れたものとなることは明らかである。また、このような条件を有する金属間化合物を構成する元素はFe原子と強く反発し合う元素から構成されていることが必要となる。
なお、Feと強く反発する元素Mは、Fe−M合金中におけるFeと元素との熱力学的相互作用パラメータΩFeMが大きな正の値を持つように解析され、さらに、Fe−M二元系状態図的にはFeとMとが均質に混じり合わない二相分離で表されるか、より極端には、Fe中にその原子間の反発力によって、Fe中に固溶しない状態図で表される。より具体的には、HANSENの状態図から、
1)Feと二相分離するか、熱力学的にΩFeM≫0であることがわかっている元素(M)として、Be、Cr、Mo、W、Mn、Cu、Au、Zn、Sn、Sb、S、O等が挙げられ、さらに、
2)Feにほとんど固溶しない元素として、Pb、Bi、Ag、Li、Na、K、Mg、Ca、Rb、Sr、Ba、Cd、Teなどが挙げられる。
従って、鉄との状態図で顕著な二相分離線を示すCuを主成分とする摺動材料に、前述の鉄と反発する合金元素の1種以上を添加した銅合金系焼結摺動材料とすることは、摺動特性だけでなく、強度的な観点からも好ましい。また、Cuの強度向上と焼結性の容易化のためにSnを多量に添加した青銅系焼結材料中に、δ相、β相、γ相等のCu−Sn系の金属間化合物を析出分散させることは、焼結摺動材料のコスト的な点においても好ましい。同様の観点からすれば、例えばCaCu、CaSn、CrMn、CaSb、CaTl等を分散させることも有効である。また、同時に、Zn、Be、Cr、Mn等の合金元素を追加添加してより高強度化を図ることは摺動材料としても好ましい。
なお、前記Mo、Wは鉄と反発する元素であるとともに、青銅材料の主成分であるCu、Snと強力に反発し合う元素であるために、青銅系焼結摺動材料中に金属粒子として分散し、青銅系焼結摺動材料の耐焼付き性を改善するように作用するが、前記セラミックスや金属間化合物ほどに硬質でない(Mo;Hv180、W;Hv120〜350、Cr;Hv700〜800)ために耐摩耗性を改善するものではない。
同様に、前記CrもCu、Snと強力に反発し合う元素であるために、青銅系焼結摺動材料中に金属粒子として分散し、かつMo、Wよりも高硬度であることから、前記掻き取り作用が大きく、より少量の添加によって耐摩耗性を顕著に改善することが期待されるが、CrのFeに対する反発力がMo、Wほどに大きくないことから、耐焼付き性の改善効果が小さいのは明らかである。
したがって、本発明では、耐焼付き性と耐摩耗性とを両立させる観点から、前記硬質粒子や金属間化合物とCr、Mo、W粒子とを複合添加して利用することを主旨とするが、このCr、Mo、W粒子の適正な添加量は、Cr、Mo、W粒子の相手材料に対するアタック性が小さいことから、前記セラミックスや金属間化合物の添加量よりも多く、5質量%未満の範囲が好ましい。より好ましくは、その添加作用が2質量%あたりで飽和し始めることと、多量の添加がコスト的に高くなることから、その効果が十分に発揮され始める添加量である0.5〜2.0質量%の範囲にするのが良い。とりわけ、Cr、Mo、Wを多量に添加する場合には、鉛青銅系焼結摺動材料の結晶粒が顕著に微細化されると同時に、Pbや前記Cu−Snの金属間化合物が微細に分散され、高速摺動特性が顕著に改善されることが本発明の1つの特徴である。
さらに、結晶粒を微細化する作用は、青銅材料の主成分であるCuと強力に反発し合う元素であるCo、Feを添加することおよび/またはFeCo規則相やFe−C合金を分散させることによっても達成され、また結晶粒微細化による前記青銅、鉛青銅系焼結摺動材料の高速摺動特性改善が期待される。
また、Fe−C合金の相手鉄系材料に対する耐焼付き性を高めるために、焼結後の冷却過程もしくは別熱処理によって焼き入れ硬化したマルテンサイト組織のものを利用することが好ましい。
(1−2−2)ΩFeM≪0の組み合わせによる二相分離系の出現と金属間化合物
前記硬質非金属分散相としての金属間化合物においては、鉄と反発し合う2種以上の元素からなる金属間化合物の例について述べたが、これとは全く逆に、鉄と強く引き合う(ΩFeM≪0)2種以上の金属で、かつ元素同士が互いに引き合う合金の組み合わせにおいても、3元系Fe状態図において二相分離が起こることが熱力学的に証明されている。したがって、これらの元素を2種以上組み合わせた金属間化合物を分散させることによって前述の耐凝着性や耐摩耗性の向上と同様の作用が現出されることは明らかである。
より具体的には、Feと強力に引き合う元素としては、一般的に、その状態図中に規則相を形成することが記載されていることが多く、また記載されていない場合でも前記ΩFeM≪0であることが多くの元素について計測されており、Al、Si、P、Sb、Ti、V、Co、Ni、Fe、Zr、Nb、Pd、Hf、Ta、Pt等の多くの元素が挙げられ、これらの元素のうちで互いに引き合う2種以上の元素からなる金属間化合物が銅系摺動材料中に分散している場合にも、前記ΩFeM≫0の場合と同様に耐凝着性に優れる摺動材料として利用できることは明らかである。
なお、後述の実施例において、高強度なCu−Ni−Sn系焼結摺動材を用いてNi−Si金属間化合物(NiSi)の分散析出量とその摺動特性の関係を明らかにしているが、微細な金属間化合物の析出に伴って耐凝着性が改善され、さらにセラミックス系分散粒子、MnS、黒鉛の共存によって顕著に耐摩耗性と耐凝着性に関しても改善され、前述の二相分離系金属粒子分散と同様の効果が確認され、さらにNiAl、TiPの分散においては耐凝着性と耐摩耗性の改善が認められている。したがって、同様の金属間化合物としては、Ti、V、Fe、Ni、Co、Al、Si、Pの2種以上からなる化合物が対象となるが、とりわけSi系金属間化合物はHv=1000を越える硬質な場合が多いために、平均粒径が5μm以下になるように分散させることが好ましい。
なお、FeCoやFeAl、FeAl、FeSi、FeSiなどはBCC構造の規則相であるが、FeCo、FeAl、FeAl、FeSi、FeSiともに金属間化合物として扱えることは明らかである。
さらに、前記Al化合物、Ti化合物および/またはP化合物(隣化物)の多くの化合物はビッカース硬さでHv=900を越えることはあまりなく、浸炭焼入れを施して利用する鋼を相手材料とする場合にはアタック性はあまり問題にならないことが多い。しかし、後述するように硬質なTiPを析出させた結果、相手材料が摩耗する場合には、TiP量を低減させることは勿論であるが、前記MnS、黒鉛等の潤滑性物質を複合添加することが望ましい。
さらに、代表的な金属間化合物として、NiAl、NiAl、NiTi、NiTi、CoAl、CoAl、TiAl、NiSi、VAl、FeAl、FeAl、TiP(燐鉄(Fe27%P)とTiの複合添加)、FeCo、FeV、FeTi、FeZr、FeNb等が挙げられる。
前記金属間化合物の中には、Si系金属間化合物のようにHv=900を越える硬質のものがあり、この場合には前記セラミックス系硬質分散粒子と同様に下限添加量は0.05質量%に設定することが好ましい。さらに、NiAl(γ'相、比重;5.9g/cm)系の金属間化合物では、高力黄銅4種およびそれらの同等材での添加量が
4質量%<Al+Si<6質量%
3.5質量%<Ni+Co+Fe<6.5質量%
であり、これらの材料中の複合金属間化合物(Ni、Co、Fe)(Al、Si)であることから、前記金属間化合物は他の合金元素を固溶した複合金属間化合物であっても良い。
なお、これら金属間化合物相はその硬さがHv=900を越えることはなく、さらにCu−10質量%Ni−3.33質量%Si系焼結摺動材料の例では、粒内でのNiSiの析出サイズは2μm以下と微細で、その析出量は約10体積%程度であり、これ以上では効果が逆に劣化していることから、適正な析出量は10体積%以下が好ましいことがわかった。より好ましくは、7質量%Ni+2.33質量%Siが良い摺動特性を示すことから、10質量%以下で使用するのが良い。また、同様に、本発明における金属間化合物量もしくは複合金属間化合物の添加量においても、金属間化合物を10体積%以下もしくは金属間化合物を構成する主元素の和を10質量%以下(体積%では約7体積%以下)に限定して利用するのが好ましく、こうすることがコスト的にも有利である。
なお、これらの金属間化合物は金属間化合物粉末としても、あるいはNi、Si添加の例でも明らかなように各素粉末を合わせて添加することによって反応析出させるようにしても良い。
また、前述のように本発明では、急激な閉空孔化による焼結性の劣化を防止するために、ガス抜けのための気孔形成や流出孔の形成防止を図る金属間化合物粉末として添加する方がより好ましい。
なお、5質量%Al以上を含むFeAl規則相はその硬さがビッカース硬度Hv=300〜350にあり、かつNi、Coなどの合金元素を10〜20質量%程度に添加した場合には、約600℃の時効処理によってHv=800レベルにまで硬化することができる特徴を有しているために、分散相としての自由度が大きく、かつコスト的にも有利である。
(2)軟質な第2粒子分散材の選定について
軟質粒子分散材としては従来から良く知られているMoS、WSなどの固体潤滑材をイメージするが、この硬質粒子分散材の存在による摺動特性改善の機構は、硬質粒子による摺動面における局部凝着体の掻き落とし作用中に相手材と直接的に摺動する摺動面の固体潤滑を高めることにあり、この結果として、相手材へのアタック性を顕著に低減させるとともに、耐焼付き性を改善させることにある。これは前述のような摩擦材料の潤滑成分としてほぼ同じ効果を期待するものであるが、本発明では、前記表1、2、3にも示されている通常の添加量に比べてその添加量を1質量%以下と、極めて少ない量に抑えている。この理由は、前述のように黒鉛を多量に添加した場合には、焼結層が多孔質になり、流体潤滑性が明らかな境界潤滑性に移るために、高い摩擦係数を発生させるためである。また、前述のように硬質な第1非金属粒子の量が極めて少量で、かつそれらのサイズを適正化したことによって、強度劣化を引き起こす軟質な第2分散粒子量を極小化できたことは焼結摺動材料の強度面では極めて好ましいことである。
前述の固体潤滑性に富む軟質粒子材料としては、固体潤滑ハンドブックに記載の各種の固体潤滑材料の適用が可能であるが、これらのうちMoS、WSなどのように、前記銅系焼結摺動材料の焼結時にCuと反応し、MoSやWSが分解して軟質な銅の硫化物を形成し易い軟質粒子の添加を避けることが望ましい。また、MoS、WSが極めて高価な物質であるために、本発明では、これらを適用する場合には、水ガラス等の反応防止材料をMoS、WS粒子表面にコーティングするか、もしくは水ガラス等で造粒した粒子を添加することが効果的である。
なお、黒鉛は焼結時にCu、Snとの反応性がないことから、前記水ガラスコーティングは必要ないが、黒鉛粒子が微細であるほど、焼結時において黒鉛が焼結摺動材料の粒界に連続して分散し、焼結体強度を顕著に脆弱化させるので、その場合には、0.02mm以上に破砕した黒鉛粒子や前記水ガラスを使った造粒黒鉛粒子を使用することが好ましい。また、黒鉛を前記摩擦材料のように多量に添加した場合には、黒鉛が極めて多孔質なものであり、高速摺動油潤滑下での油膜形成を阻害して摩擦係数を高める働きがあることが確認されていることから、本発明のように、低速、高速の両条件に適用する摺動材料では必要量以上に黒鉛が添加されるのは好ましくない。
また、青銅および/または鉛青銅系焼結材料中に黒鉛を添加する場合には、焼結時のSn、Pbの発汗現象を抑えるために、Sn、Pbと金属間化合物形成能が高く、Sn、Pbとの親和性に富む元素および/または炭素との親和性に富む元素であるTi、Cr、Mg、V、Zr、Mn、Ni、Coのうちの1種以上を添加しておくことが好ましい。とりわけ、焼結材料中にSi、Alを含有する場合には、Sn、Pbの発汗性が顕著になるので、Ti、Cr、Mg、V、Zr、Mn、Ni、Coのうちの1種以上を添加しておくことが好ましい。
さらに、10質量%Pb添加の鉛青銅系焼結材料に近い馴染み性と摺動特性を発揮させるためのPbレス材として、MnSを代替利用する場合のそのMnSの添加はPbの体積%と同じ体積%を含有することと近似すれば、約5質量%と予測される(MnSの密度5.2g/cm、Pbの密度11.34g/cm)ことは明らかであるが、前記非金属硬質粒子分散による改善効果によって、その添加量は1質量%で十分に効果的である。
なお、多量のMnSを添加する場合には、前記黒鉛のように焼結体の粒界にMnSが連続して分散して、焼結体強度を顕著に劣化させる問題があるので、MnS粉末のサイズを使用する一般冶金粉末サイズレベル(0.02mm以上)もしくはそれ以上に大きくすることが好ましい。また、MnSなどの前記粒界での連続した分散を回避する方法としては、青銅、鉛青銅および/または銅粉末溶製時にMnSを予め合金化させておくことが好ましい。また、前記青銅系焼結摺動材料のサルファアタックを防止するために、Ti、Zn、Al、Ni、Mn等の1種以上の合金元素を添加することや、その他銅合金特性を改善するための合金元素を含有させることは、本発明の主旨を越えるものではない。
(3)複層焼結摺動部材
本発明は、前記銅系焼結摺動材料を鉄系裏金材料に焼結接合してなる複層焼結摺動部材を提供するものである。すなわち、第9発明による複層焼結摺動部材は、
前述の各銅系焼結摺動材料を鉄系材料に焼結接合してなることを特徴とするものである。
本発明に係る複層焼結摺動部材においては、Snおよび/またはPbが含有されてなる焼結摺動材料のプレス成形体が鉄系材料に焼結接合されてなり、前記鉄系材料と焼結接合された焼結体の成分として、銅よりも鉄に対する親和力が大きく、かつ鉄のγ相に対するよりもα相を安定化させるCr、Si、Al、P、Tiの1種以上の元素が0.1〜2質量%の範囲で含有されているのが好ましい(第10発明)。
また、Snおよび/またはPbが含有されてなる焼結摺動材料組成の混合粉末を鋼板上に散布し、810℃以上の温度で一次焼結接合した後に散布焼結層を機械的に高密度化して二次焼結して使用するに際して、前記一次焼結時に散布した混合粉末層が焼結収縮によって鋼板と剥離しないように、焼結層を膨張させるSi、Al、Ti、Crおよび/または焼結層の収縮を抑制する非金属粒子の1種以上が含有されているのが好ましい(第11発明)。ここで、Snの添加方法として、Cu30質量%Sn以上のSnを含有するCu−Sn系合金粉末および/またはSn素粉末を利用することによって、前記一次焼結時の焼結層を膨張させるのが良い(第12発明)。
銅系圧粉成形体を鋼に焼結接合する方法については、本出願人の提案になる特開平10−1704号公報に開示された技術がある。この開示技術によれば、銅鉛、青銅、鉛青銅系焼結摺動材料に0.2〜3.0質量%のTiを含有させることによって、鋼に対する焼結接合性を改善し、かつその摺動特性を改善した点が示されている。
ところで、銅系焼結材料を機械加工する際には、工具摩耗が激しくなる問題があり、この工具摩耗の軽減に寄与するための焼結接合性を促進する新たな元素の選定が望まれている。
本発明では、銅系焼結摺動材料の圧粉成形体を鋼に焼結する際の各種合金元素の影響を詳しく調査し、
1)後述の油圧ポンプ、モータのシリンダブロックの底面に焼結材を接合焼結するような大面積の焼結接合であっても、安定した焼結接合性が発現され、かつ
2)機械加工時の工具摩耗がより少ない合金元素の選定を行った。
青銅系粉末を前述のように安定して焼結接合する場合の最大の問題点は、焼結素材から発生する各種ガスの取り込みにある。Cu−Sn系液相を出現させながら、密度を高める過程において、とりわけ約700℃以上の温度域における液相出現に伴うガス発生と、適度な緻密化によるその発生ガスの取り込みによる焼結体の膨れと、例えばSn流出孔の閉塞化による緻密化阻害現象が主な焼結接合阻害要因であるが、前述のようにセラミックス粒子を分散させることによって、焼結時の急激な収縮による焼結体内の閉空孔化を防止することができる。さらに、本発明では、液相発生による急激なガス発生に対する通気性を確保するために、還元作用の強力な元素であると同時に、液相発生の急激な700〜850℃で一旦焼結体を膨張させて前記ガスの通気孔を形成させる元素を添加することとした。より具体的には、Ti、Cr、Fe、FeP(燐鉄)、Si、Alの各元素を添加することによって前記緻密化阻害現象が防止されるが、焼結接合時の接合に関与する液相はCu−Sn系合金のSn添加によるものとして、そのSn添加量を1〜15質量%とした。また、焼結接合温度は、その接合性を確実なものとするために、700℃以上で一旦膨張させた焼結体を緻密化して、焼結接合による接合不良の発生を防止する目的で、少なくともCu−Sn2元系合金の包晶温度(約800℃)以上とした。
また、前記焼結接合性を改善するTi、Cr、Fe、FeP(燐鉄)、Si、Alは鉄との親和性に優れ、かつ鋼に対してはフェライト生成元素として作用し、焼結接合面の鋼側の冷却による鋼の変態膨張性をなくすか、もしくは軽減する作用がその安定した焼結接合性を実現していることは明らかである。なお、青銅中のSnも鋼に対してはフェライト相安定化元素であるが、鉄とは反発し合う特性があるために、鋼中への拡散浸透性が小さく、焼結接合界面におけるフェライト相の形成に有効でない。同じ観点からすれば、Co、V、Zr等も同じ作用を示すことは明らかであり、本発明の主旨範囲に含まれるものである。
さらに、Ti、Cr、Si、Al等の添加については、それらの素粉末が添加されても、あるいはそれらの元素を含む母合金、金属間化合物(例えばNiAl、NiTi、CoAl、NiSi)の粉末として添加されても良い。
前記青銅系および鉛青銅系焼結材料の粉末を鋼板上に散布して焼結接合したエンジンメタルや巻きブッシュのような複層焼結部材において、その青銅および/または鉛青銅焼結摺動材料組成の混合粉末を鋼板上に散布し、810℃以上の温度で焼結接合(1次焼結)し、この後散布焼結層を機械的に高密度化して再焼結(2次焼結)して使用される場合、1次焼結時に散布した混合粉末層が焼結収縮によって鋼板と剥離する問題に対しては、焼結層を膨張させるSi、Al、Ti、Crおよび/または焼結層の収縮を抑制する非金属粒子(酸化物、炭化物、窒化物、固体潤滑材)の1種以上を含有させることによって、とりわけ低融点金属のPbを含有しない青銅系焼結摺動材に対しても、この製造方法が適用できるようにした。
さらに、青銅系焼結摺動材料組成の散布層の焼結収縮性を抑制するために、Snの添加方法を検討し、少なくともCu30質量%Sn以上のSnを含有するCu−Sn系合金粉末および/またはSn素粉末を配合することによって、1次焼結時にこれらのSn源となる粉末が初めに溶融し、周囲のCuおよび/または12質量%Sn以下のCu−Sn系合金粉末と反応させることによって、β、γ、ζ、δ、ε、η相(HANSENのCu−Sn二元系状態図参照)を形成させながら、焼結散布層を膨張させ、より効果的に焼結接合性を確保した。
(実施例1)
電解Cu粉末(CE25、CE15)、#300メッシュ以下のSi、TiH粉末、燐鉄(Fe25質量%P)、NiAl、平均粒径5μmのNi、Fe粉末、平均粒径9.8μmのFe48質量%Co粉末、平均粒径21μmのSiO、平均粒径23μmのジルコンサンド(ZrO2・SiO2)粉末、平均粒径2μmと24μmのAl粉末(Al2O3−1、Al2O3−2)、平均粒径1μmのZrB2、W、Mo、TiN粉末、平均粒径1.2μmのMnS、平均粒径50μmの人造黒鉛粉末(SGO)を使って、表4に示される混合粉末を調整し、成形圧力2〜5ton/cmで成形体を作成した後、露天−35℃以下のAXガス(アンモニア分解ガス)雰囲気下でそれぞれ焼結した。なお、表4中のCuNiSi三元系をベースとする焼結体は、基本的にはNi:Si=3:1の質量比で配合し、NiSi系の金属間化合物の析出による高強度化を目指したものである。焼結後の強度を確認するために、混合粉末を図1に示される引張試験片形状に成形焼結して、引張試験を行った。
Figure 2008280613
図2には、前記引張試験の試験結果が示されている。この図2に示されるグラフから、約4質量%(Ni+Si)で最大の焼結体強度(引張強度)を示していることがわかる。しかし、それ以上の添加では、図3の組織写真に示されるように、焼結材料中に微細なNiSi化合物が析出し、(Ni+Si)量の増大に伴って粒界にも大きな金属間化合物が析出するため、強度が低下することとなる。また、この図2および表4から、ZrO、SiO、Al−1、燐鉄(Fe25P)、Fe、Mo、W等の硬質粒子の約2質量%以下の添加では大きな強度低下がないことがわかる。さらに、軟質なMnS(密度5.23、1.7体積%)の1質量%添加による強度の顕著な低下は極めて大きな問題となる(表4のNo.A3とNo.A9、No.A7とNo.A11の比較)が、同じ軟質粒子であっても、平均粒径を50μmに大きくした黒鉛(SGO)を利用し、この黒鉛を0.75質量%(密度2.0、3.3体積%)添加した場合には強度低下を少なくすることができる(表4のNo.A3とNo.A8、No.A7とNo.A10の比較)ことがわかった。したがって、MnSについても粗大な粒子(例えば造粒)を利用することが好ましいことは明らかである。
図4には、表4中のNo.A23の組織写真が示されているが、粒径が10μm以下のSiOは、焼結中の粒界の移動によってマトリックス中に取り込まれて分散するのに対して、これ以上のサイズのSiOの多くが粒界に分散されるため、SiO粒子の多くを10μmサイズ以下に調整することによって、焼結体の強度劣化を抑制できることは明らかである。なお、前記CuNiSi系と同様な高強度銅系焼結材料の成分系として、CuNiTi、CuTiSi、CuNiAl系等をベースとすることができることは明らかであり、この場合、Ni:Ti、Ti:SiおよびNi:Alの添加量比率が4:1乃至3:1の近傍で利用するのが好ましい。
次に、前記銅系焼結材料の摺動特性を調査するために、図5に示されるような摺動試験片を用いて定速定摩擦摩耗試験を行い、急激に摩擦係数が増大するか、急激な異常摩耗を起す時点での試験片の押し付け圧力(kgf/cm)と摺動速度(m/sec)との積で表示するPV値とその時点での試験片摩耗量ΔW(mm)を測定した。その調査結果が表4に合わせて示されている。なお、試験条件としては、相手材料にSCM420に浸炭焼入れ焼戻しの熱処理を施して、表面硬さがロックウェル硬さHRC60になるように調整したものを使って、80℃の#10の潤滑油を100cc/minで供給しながら、摺動速度が10m/secになるように相手材料を回転させながら、試験片を10分間試験することを限界条件に達するまで繰り返し、それらの摺動材料固有のPV値と試験片摩耗量とを調査した。
CuNiSi三元系ベース材(No.A1、A12、A14、A28〜A30)の摺動特性(PV値)を比較した場合、Ni+Si=4質量%から顕著にPV値が改善され始め、Ni+Si=9.33質量%当たりで最大に改善され、それ以上の添加領域で次第に劣化し始めることがわかった。この変化は、図3に示される焼結体組織からわかるように、Ni+Si=4質量%以上の添加で、焼結体中に極めて微細なNiSi金属間化合物が析出し始めるために、顕著なPV値改善があり、Ni+Si=13.3では極めて粗大な金属間化合物が粒界に析出するようになるためにPV値の劣化が起こっていることがわかった。また、Ni+Si=100質量%で金属間化合物の体積率が100%であることから、Ni+Si=13.33が約10体積%と近似できるので、NiSi系金属間化合物分散体積としては10体積%以下が好ましいことがわかる。更に、Ni+Si=9.33質量%に相当する6体積%以下に限定して使用することが、粒界での粗大な金属間化合物を多量に析出させないために好ましい。
また、硬質粒子としてのAlの影響を調べた結果、微細なAl(Al−1)の添加によって、PV値の劣化をなくして耐摩耗性の改善が認められるが、0.5質量%以上を越えて添加した場合にはPV値が劣化することがわかる。また、粗大なAl(Al−2)は0.3質量%の添加によっても顕著なPV値の劣化を示した。さらに、Al−1と黒鉛(SGO)またはMnS等の固体潤滑が共存する場合にはPV値と耐摩耗性の両面において顕著な改善が認められた。
SiO粒子、ZrO2・SiO2添加の影響についてもNo.A23、A24、A35、A36に示されているが、これらが粗大な粒子であっても、1.0質量%までPV値と耐摩耗性の改善が認められるが、とりわけ、SiOは0.5質量%においてその改善効果は顕著である。また、これらの粗大な粒子であっても、相手材料に対するアタック性がほとんど検出されなかった。
TiN粒子の添加については、No.A37に示されるが、摺動特性の改善効果が顕著に確認される。
また、Mo、W、Feの添加の影響はNo.A19〜A22およびA25に示されているが、極めて顕著なPV値の改善が認められる。本来、Mo、Wの金属粒子は硬質な粒子でないために耐摩耗性の改善の効果が小さいことがわかるが、Feの金属粒子はその一部がCuNiSiベース材中のSiと反応して硬質なFeSi系の金属間化合物を形成することによって、耐摩耗性も改善されている。No.A27にはFeの代わりにFeCo規則合金粉末を添加しているが、ほぼ同じようにPV値と耐摩耗性の改善が確認された。また、硬質なマルテンサイト組織化したFe−C合金を分散させた場合においても、顕著な耐摩耗制の改善が期待できることは明らかである。
CuNiSi系と類似の高強度銅系焼結材として、No.A26、A33、A34に、CuNiTi、CuNiAl系の結果が示されているが、CuNiSi系と類似の優れた摺動特性が確認される。
また、高強度摺動材料の比較例として、α相とβ相とが混合された硬質なマトリックス中に多量の金属間化合物を分散させた耐摩耗性に優れた高強度な鋳造材料であるP31C(比較例1:Cu28Zn3Ni4Al1Si0.7Fe0.6Co)の摺動特性が示されているが、この比較材に比べて、本発明の高強度銅系焼結摺動材料が極めて優れた特性を示すことがわかる。この比較例1において、分散する金属間化合物のEPMA(X線マイクロアナライザー分析)分析結果が表5に示されている。なお、このP31C材料中の金属間化合物は(Ni、Co、Fe)(Al、Si)の複合金属間化合物であり、AlリッチとSiリッチの2種類が分散しており、Alリッチ金属間化合物ではNiがリッチになり、Siリッチ金属間化合物ではFe、Coがリッチになっている。
Figure 2008280613
この結果から、比較例1の耐摩耗性が悪い原因は、P31Cのマトリックスが凝着し易い結果であると類推されるが、更に本発明がわずかながらも含油性のある気孔を含んだ焼結体摺動材料であることに起因する可能性は否定できない。
さらに、摺動試験片の面粗さをRmax=1μm以下に仕上げたAl(比較例2)、ZrO(比較例3)、SiO(比較例4)、SiC(比較例5)、Si(比較例6)等のセラミックス材料の摺動特性(PV値)についても調査したが、表4に示されるように、高摺動速度条件(10m/sec)においては期待されるほど優れた摺動特性を示さないが、より耐熱衝撃性の高い材料ほど良好であることがわかる。とりわけ、Alは摺動試験後の面粗さRmaxが5〜15μmに荒れており、摺動面には明らかな熱衝撃的なチッピングが発生し、相手材料に対して大きなアタック性を示した。なお、摺動速度を2.5m/sec以下にし、局部的な凝着により熱衝撃的な負荷がかかりにくい条件では、最大面圧800kgf/cmにおいても焼き付かず、低い摩擦係数で摺動することがわかった。
(実施例2)
本実施例は、鉛を最大3質量%まで添加したCuSn青銅系焼結摺動材料系に対する調査を実施したものである。本実施例で用いられた焼結摺動材料は、実施例1で使用した原料粉末以外に、#250メッシュ以下のSn、Pb、Al、超硬、Cu30質量%Zn、#300メッシュ以下のCr、Mn、MnSi、TiSiを用いて表6に示される混合粉末を調整し、成形圧力2ton/cmで成形体を作成した後、露天−35℃以下のAXガス(アンモニア分解ガス)雰囲気下でそれぞれ焼結して得られたものである。焼結温度は、成分系によって異なるが850〜900℃である。また、実施例1と同様に評価した摺動特性(PV値、ΔW)を表6中に合わせて示した。
Figure 2008280613
表6中のNo.B1〜B5の結果から、燐鉄は1.5質量%まではPV値をわずかに改善しながら、耐摩耗性を顕著に改善するが、3質量%ではPV値が顕著に劣化することから、この燐鉄の適正添加量としては3質量%未満であることがわかるが、より好ましくは2質量%程度とするのが良い。
表6中のNo.B6〜B8はTiと燐鉄添加の影響を調べたものであるが、Tiの単独添加時には、Pbを微細に分散させながら、焼結性を促進する作用を示すと同時に、焼結時にAXガス雰囲気から、窒素や混合粉末中に添加した有機潤滑材(0.7質量%アクラワックス)からの炭素を取り込んで、わずかなTiN、TiCを形成することは明らかであり、これらが摺動性を劣化させずに、耐摩耗性の改善に作用していることがわかった。また、燐鉄と共存する場合には、TiのほとんどがTiPもしくはTiPとして析出するが、No.B7ではほぼ全量の燐鉄中のPがTiPとして反応し、残りのTiは、さらにFeTiとして焼結体中に分散して、顕著にPV値と耐摩耗性が改善されたものである。また、No.B8の摺動性能の劣化は過剰な燐鉄の存在によることは明らかである。
No.B9〜B15は、前記実施例1で検討した高強度化元素を組み合わせ添加したものである。高濃度のNi添加によって、図6に示されるようなNiSn系金属間化合物による共析組織になり、焼結体硬さが顕著に増大する(約Hv=200)が、PV値の改善よりも、耐摩耗性が顕著に改善されることがわかった。また、高濃度のZn添加によるPV値と耐摩耗性の顕著な改善が認められないことがわかった。
No.B22、B23は、焼結摺動材料中にCuSn金属間化合物を分散させたものであるが、明らかにPV値の改善が確認される。また、No.B24〜B34は、SiO、NiAl、MnSi、FeCo、TiSi、超硬およびCrを分散させたものであるが、MnSiを除いてPV値の改善もしくは耐摩耗性の改善が認められた。
(実施例3)
本実施例では、鉛を最大25質量%まで添加した青銅および鉛銅系焼結摺動材料系に対する調査を実施したものである。本実施例で用いられた焼結摺動材料は、実施例1、2で使用した原料粉末以外に、#250メッシュ以下のKJ4(25質量%Pb−Cu合金)を用いて表7、8に示される混合粉末を調整し、成形圧力2ton/cmで成形体を作成した後、露天−35℃以下のAXガス(アンモニア分解ガス)雰囲気下でそれぞれ焼結して得られたものである。焼結温度は、成分系によって異なるが800〜860℃である。
Figure 2008280613
Figure 2008280613
No.C1〜C5は、Cu−11Snに対するPb添加の影響を調べたものである。PbはPV値の改善よりもPV値の再現性に優れるが、耐摩耗性を顕著に劣化させることが明らかである。これにFeとTi(FeTi)、NiとSi(NiSi金属間化合物)、SiO、燐鉄、Mo、W、NiAl、FeCoのいずれを添加した場合においても耐摩耗性が顕著に改善され、その結果として、PV値も改善されることがわかった。そのうちでも、No.C10〜C13の結果から、Mo、Wの金属粒子が単独で存在するよりも燐鉄のような硬質粒子と共存することによって、耐摩耗性とPV値がより改善されることから、Mo、W金属粒子のPV値改善効果は、硬質な非金属粒子の共存によって発揮されることが明らかである。
KJ4を用いた表8の焼結摺動材料においては、KJ4だけの焼結材料(No.D1)に比べてPV値と耐摩耗性が全て改善されているが、これはNo.D1材料が極めて耐摩耗性が悪く、焼付きに至る前に異常摩耗を起すことが原因であると考えられる。とりわけ、1質量%のSiOを添加したNo.D8材においても、No.D1より優れた特性を示しているが、No.D8レベルのSiO添加では、相手材料に対するアタック性が現れるので、SiO添加量は1.0質量%未満に抑えるのが好ましい。
また、表8と表7の耐摩耗性に対する粒子分散の影響を比較した場合、焼結素材の硬さが高い表8の焼結材料ほど、改善効果が顕著に現れる。これは、粒子分散による凝着物の剥ぎ取り力が軟質焼結材料では十分に発揮されないことを示していることは明らかである。
(実施例4)
本実施例では、鉛を含有しない青銅系焼結摺動材料を裏金用鋼板(SPCC)に一体化した複層焼結摺動部材の製造方法を検討した。本実施例で用いられた焼結摺動材料は、実施例1、2、3で使用した原料粉末以外に、#250メッシュ以下のCu10質量%Sn、Cu−20質量%Sn、Cu33質量%Snを用いて表9に示される混合粉末を調整したものであり、この焼結摺動材料を、3.5mm厚さの裏金上に、まず最終仕上がりで0.6mm厚さになるように銅系焼結材料用粉末を散布し、これをRXガス雰囲気、820〜860℃で焼結した後、圧延機で総焼結層厚さが0.8mmになるように圧延して800〜840℃で再焼結した。表9中には、最初の焼結時に焼結接合せずに剥離するか、もしくは圧延時に剥離した結果が合わせて示されているが、明らかに、合金粉末のみを利用したNo.F1、F2および銅粉末とCu20Sn合金粉末で調整したNo.F3は、焼結温度で顕著な収縮を示して裏金と剥離することがわかり、またNo.F4〜F7で示されるように、Cu33Sn以上のSn濃度の粉末を用いた場合に焼結接合し始めることがわかった。これは、Cu−Sn合金系の包晶温度(約800℃)以下の温度域において、Cu33SnやSnが焼結中に溶融して焼結接合に不可欠な液相を発生し、Cu粉末と反応し始めて、β、γ、ζ、δ、ε等の各種のCuSn金属間化合物を形成する際の膨張によって剥離の原因となる収縮を阻害することによるものである。
Figure 2008280613
さらに、このような観点から、銅系焼結層の収縮性を積極的に阻害する元素を添加することは極めて有効であり、No.F10〜F22に示されるように、SiO、Si、黒鉛(SGO)等の収縮を遅らせるものや、積極的に膨張性を付加する元素(Al、Si、Ti、Cr)を添加することが好ましいことがわかる。とりわけ、Al、Siの単独添加は、雰囲気との反応性が激しいので、合金や金属間化合物の形で添加することが好ましいが、Al、Si、Ti、Crなどを素粉末として添加する場合には、焼結雰囲気はAXガス雰囲気や真空などの優れた非酸化性の雰囲気であるのが好ましい。
また、LBC青銅(Cu10Sn10Pb)のNo.F8、F9では、低融点のPbが多量に含有されているために、焼結接合性は確保されているものの、通常No.F8組成では780〜810℃が実例焼結温度範囲であって、とりわけ包晶温度(800℃)近傍での管理が難しく、雰囲気、粉末の酸化度などが厳密に管理されている必要がある。本実施例では、820℃でNo.F8、F9を焼結接合したが、No.F8では顕著な収縮によって剥離し、Siなどの焼結抑制物質や前記膨張元素の添加によって顕著に改善されることは明らかである。
さらに、前記裏金と焼結接合した複層焼結摺動部材を内径が50mmになるように丸曲げを行い、焼結層の裏金からの剥離や割れの発生を調査した結果、全ての水準において良好な結果が得られた。また、裏金部分を溶接した後に内径部をバニッシング加工した後の焼結層の剥離、割れを調査したが、全て良好な巻きブッシュが製造できることがわかった。
(実施例5)
本実施例では、図7に示される形状の鋼(SCM440H)に対して、前述の焼結摺動材料を焼結接合する実験を実施したものである。供試した接合焼結摺動材料は、実施例1〜4に記載の原料粉末を用いて配合組成した表10に示される混合粉末と成形圧力2ton/cmで成形したものとした。表10中のNo.E1〜E17の焼結接合温度は860℃、No.E18、E19は1070℃とし、焼結接合後に超音波検査装置を用いて調べた接合面積率(接合性)を表10中に合わせて示した。
Figure 2008280613
まず、No.E1、E2、E5、E6、E16の結果から、Ti、Cr、Vの少量添加によって焼結接合性が顕著に改善され、さらに燐鉄、SiO、CaFの添加によっても焼結接合性が改善されることがわかる。とりわけ、NiSi、NiAl等の膨張元素であるSi、Alの添加は、焼結過程でのガス抜き効果によってその接合性が顕著に改善され、また、燐鉄やSi、Alなどは銅に比べて鋼との親和力が大きいことと、鉄のフェライト相を安定化させる元素であるために、接合界面の鋼側においてフェライト相が20μm以上の幅でほぼ均一に形成され、焼結接合後の冷却過程での変態膨張による接合界面にかかる剥離力を大幅に低減させるので、極めて好ましい元素であることがわかる。
また、本実施例では、焼結接合時の液相の主体成分であるSnとPbのうち、Pbを添加しない場合においても、Cr、Si、Ti、燐鉄等の小量の添加によって健全な焼結接合性が確保されることがわかった。さらに、高温度側で焼結接合するNo.E18、E19では、1質量%のSnが接合性の改善に大きく寄与し、またその接合面積率から少なくとも1質量%以上のSnの添加が好ましいことがわかった。
(実施例6)
本実施例では、図8に示される油圧ポンプ(当社製HPV95)のシリンダブロック底面Pに実施例5で示される代表的な焼結摺動材料を焼結接合し、油圧ポンプに組み込んで、実体による耐久テストを実施したものである。なお、シリンダブロックのボア内径部Qには、Cu−10質量%Sn−1質量%Ti−2質量%NiAl3−5質量%Pb−1質量%FeP(燐鉄)組成の鉛青銅系焼結摺動材料を焼結接合して耐久テストに供した。
耐久テストは、回転数が2300rpm、吐出油圧が420kg/cmとなるように300hrまで稼動することにより行った。シリンダブロック底面の相手材となるバルブプレートはSCM420H材に浸炭処理した後、シリンダブロック底面部と、ともずりラップ加工を施して使用するが、長時間使用後のシリンダブロックを想定して、ともずりラップ時には図8に示されるバルブプレートの3箇所のシール部A、B、Cとシリンダブロックの当たり率がほぼA:B:C=1:1:0.2になるように底面曲率を調整し、耐久テスト中のシリンダブロックが振れ回りながら回転するように調整した。そして、50、100、300hr稼動後のシリンダブロックのボア部の焼付き、底面部の焼付きと摩耗量およびバルブプレートの焼付き、摩耗量を測定した。この結果が表11にまとめて示されている。
Figure 2008280613
この結果から、本発明材の非金属粒子が分散した摺動材料が、比較例4やNo.E2、E4に比べて極めて耐久性に優れることがわかる。とりわけ振動を伴う高速摺動条件下においては、硬質粒子の分散による耐摩耗性の改善は不可欠であり、例えばNo.E4、E6、E7の比較において、Moと非金属粒子が共存することによって、耐焼付き性と耐摩耗性の両方が顕著に改善されることがわかる。また、No.E13の例からは、SiOの添加は耐摩耗性の改善に効果的であるが、相手材料に対するアタック性が少し大きく、添加量の適正化が必要であることがわかる。
引張り試験片用成形体形状を示す図 CuNiSi、CuSnNiSi焼結材の引張強度を示す試験結果のグラフ Cu−Ni−Si系焼結体の金属組織を示す写真 Cu−3Ni−1Si−0.5SiO焼結体の金属組織を示す写真 定速摩擦摩耗試験用摺動試験片の形状を示す図 Cu−10Sn−10Ni−0.55FeP−3Pb(B16)の焼結体の金属組織を示す写真 焼結接合試験の試験片形状を示す図 耐久テストに供したシリンダブロック/バルブプレートの形状を示す図

Claims (12)

  1. Cu、Sn、Ca、Mn、Cr、Mo、W、Sb、Teの2種以上よりなる金属間化合物が1種以上分散され、その添加量が金属間化合物として0.1〜10体積%になるようにされていることを特徴とする銅系焼結摺動材料。
  2. さらに、酸化物、炭化物、窒化物、炭窒化物のうちの1種以上よりなる硬質粒子が0.1体積%以上で4体積%未満の範囲で含有される請求項1に記載の銅系焼結摺動材料。
  3. Mo、W、Cr、Co、Fe、Fe−Cからなる金属および/または合金粒子が0.5〜5.0質量%分散されている請求項1または2に記載の銅系焼結摺動材料。
  4. MnSが1質量%以下および/または黒鉛が1質量%以下含有されている請求項1〜3のいずれかに記載の銅系焼結摺動材料。
  5. 前記MnSおよび/または黒鉛の平均粒径が20〜200μm以下とされる請求項4に記載の銅系焼結摺動材料。
  6. 少なくともSnが1〜16質量%含有され、Pbが25質量%以下含有されている請求項1〜5のいずれかに記載の銅系焼結摺動材料。
  7. Snが12〜16質量%添加されて、当該焼結摺動材料組織中にCu−Sn化合物相が分散析出されている請求項1〜5のいずれかに記載の銅系焼結摺動材料。
  8. さらに、Zn、Mn、Be、Mg、Ag、Biの1種以上の合金元素およびMoS、CaF、WSなどの固体潤滑剤が含有されている請求項6または7に記載の銅系焼結摺動材料。
  9. 前記請求項1〜8のいずれかに記載の銅系焼結摺動材料を鉄系材料に焼結接合してなることを特徴とする複層焼結摺動部材。
  10. Snおよび/またはPbが含有されてなる焼結摺動材料のプレス成形体が鉄系材料に焼結接合されてなり、前記鉄系材料と焼結接合された焼結体の成分として、銅よりも鉄に対する親和力が大きく、かつ鉄のγ相に対するよりもα相を安定化させるCr、Si、Al、P、Tiの1種以上の元素が0.1〜2質量%の範囲で含有されている請求項9に記載の複層焼結摺動部材。
  11. Snおよび/またはPbが含有されてなる焼結摺動材料組成の混合粉末を鋼板上に散布し、810℃以上の温度で一次焼結接合した後に散布焼結層を機械的に高密度化して二次焼結して使用するに際して、前記一次焼結時に散布した混合粉末層が焼結収縮によって鋼板と剥離しないように、焼結層を膨張させるSi、Al、Ti、Crおよび/または焼結層の収縮を抑制する硬質粒子の1種以上が含有されている請求項9に記載の複層焼結摺動部材。
  12. Snの添加方法として、Cu30質量%Sn以上のSnを含有するCu−Sn系合金粉末および/またはSn素粉末を利用することによって、前記一次焼結時の焼結層を膨張させる請求項11に記載の複層焼結摺動部材。
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