JPH11228972A - 石炭の液化方法 - Google Patents
石炭の液化方法Info
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Abstract
て用いる鉄鉱石の粉砕性に優れて触媒粉砕用機器の磨耗
が少なく、又、触媒活性が高くて油分収率を向上し得る
石炭の液化方法を提供する。 【解決手段】 石炭液化溶剤中で機械的に粉砕された平
均粒子径:10μm 以下の褐鉄鉱を触媒として用い、石炭
を溶剤および触媒の共存下で水添する水添工程を含む石
炭の液化方法であって、前記触媒として用いる褐鉄鉱中
の固有水分と鉄原子のモル比が0.4以上であることを
特徴とする石炭の液化方法。
Description
関し、詳細には、触媒の存在下で石炭を水添する水添工
程を含む石炭の液化方法に関する技術分野に属する。
わる液体燃料の開発が強く望まれている。特に、石炭は
その埋蔵量が豊富なことから、石炭を効率良く液化し液
体燃料を得る技術の確立が重要な課題となっている。こ
のため従来より石炭の液化方法が種々提案されている
が、代表的な石炭の液化方法としては、乾燥及び粉砕さ
れた石炭を溶剤と混合してスラリー状混合体とし、高温
高圧下で水素ガスを添加して水添反応を起こさせ、液化
させるものである。
させる際、原料石炭の種類によっては触媒を添加するこ
となく、石炭中に含有される触媒成分を利用することも
あるが、一般には水添反応の効率を高めるために前記ス
ラリー状混合体に触媒が添加され、そして水添反応に供
され、触媒及び溶剤の共存下で石炭を水添する方法が採
用される。
即ち、石炭液化反応促進用触媒(以降、石炭液化用触媒
という)としては、従来から種々のモリブデン系の触媒
あるいは塩化亜鉛、塩化錫もしくは硫化鉄、硫酸鉄、酸
化鉄、水酸化鉄、赤泥、鉄鉱石等の触媒が知られている
が、これらの触媒はいづれも石炭液化用触媒として充分
なものではなく、各々問題点を有している。
触媒として活性であること(即ち、触媒として水添反応
効率を高めるという触媒機能に優れていること)が必要
である他、石炭液化の経済上の観点から安価で入手し易
いこと、又、石炭液化運転にトラブルを生じさせないこ
と等が必要であるが、前記触媒の中、モリブデン系の触
媒では極めて高価であると共に資源的な問題を有してお
り、塩化亜鉛等の塩化物系の触媒では装置の腐食が起こ
り易いという問題点がある。又、硫化鉄、硫酸鉄、酸化
鉄、水酸化鉄、赤泥、鉄鉱石等の触媒では安価である
が、触媒としての活性(以降、触媒活性という)が充分
でないという問題点がある。
でないものの、安価で比較的容易に且つ大量に入手し易
いという利点があることから、現時点では石炭液化用触
媒として実用性が高いものの一つである。このため、鉄
鉱石の石炭液化用触媒としての活性を高めるために多く
の提案がなされている。本発明者らは、これまでに、触
媒として石炭液化循環溶剤(石炭液化溶剤)中で機械的
に粉砕された平均粒子径:10μm 以下の粉砕鉄鉱石を用
いることを特徴とする石炭の液化方法を提案してきた。
かかる方法の利点は、溶剤中での触媒粒子の凝集が起こ
り難く、触媒の分散性に優れているため、触媒と石炭と
の接触効率を高めることができ、従って触媒活性が高め
られ、少ない触媒使用量で油分の収率を向上し得ること
にある。
多くは極めて硬く、そのため、石炭液化溶剤中で機械的
に微粉砕する際に触媒粉砕用機器の磨耗、例えば触媒粉
砕用ボールミルのボールの磨耗が起こりやすく、経済的
に不利な点があることが明らかになってきた。
褐鉄鉱が比較的活性が高いことが知られているが、それ
でも従来の鉄鉱石触媒では石炭液化の経済性から触媒活
性が充分であるとはいえず、又、鉄鉱石の産出地、鉱区
等により触媒としての活性にばらつきがあり、経済的に
有利に石炭液化反応を行うためには、さらに触媒活性が
高くて油分収率を向上し得る石炭の液化方法の開発が望
まれている。
に着目してなされたものであって、その目的は、従来の
石炭の液化方法に比較して、触媒として用いる鉄鉱石の
粉砕性に優れて触媒粉砕用機器の磨耗が少なく、又、触
媒活性が高くて油分収率を向上し得る石炭の液化方法を
提供しようとするものである。
めに、本発明に係る石炭の液化方法は、請求項1〜3記
載の石炭の液化方法としており、それは次のような構成
としたものである。即ち、請求項1記載の石炭の液化方
法は、石炭液化溶剤中で機械的に粉砕された平均粒子
径:10μm 以下の鉄鉱石を触媒として用い、石炭を溶剤
および触媒の共存下で水添する水添工程を含む石炭の液
化方法であって、前記鉄鉱石が褐鉄鉱であるとともに該
褐鉄鉱中の固有水分と鉄原子のモル比が0.4以上であ
ることを特徴とする石炭の液化方法である(第1発
明)。
鉄鉱が実質的に酸化鉄を含まない褐鉄鉱である請求項1
記載の石炭の液化方法である(第2発明)。
記石炭、溶剤及び触媒と共に単体硫黄又は硫黄化合物が
存在する請求項1又は2記載の石炭の液化方法である
(第3発明)。
り、例えば次のようにして実施する。固有水分と鉄原子
のモル比が0.4以上である褐鉄鉱をボールミル等の触
媒粉砕用機器により石炭液化溶剤中で機械的に粉砕して
平均粒子径:10μm 以下にする。次に、石炭に溶剤を添
加し、更に触媒として上記粉砕された褐鉄鉱を添加し
て、スラリー状混合体を得る。次に、このスラリー状混
合体に高温高圧下で水素ガスを添加して石炭を水添す
る。
く、石炭液化溶剤中で機械的に粉砕された平均粒子径:
10μm 以下の鉄鉱石を触媒として用い、石炭を溶剤およ
び触媒の共存下で水添する水添工程を含む石炭の液化方
法であって、前記鉄鉱石が褐鉄鉱であるとともに該褐鉄
鉱中の固有水分と鉄原子のモル比が0.4以上であるこ
とを特徴とする石炭の液化方法である(第1発明)。
炭を溶剤及び触媒の共存下で水添するに際し、石炭液化
溶剤(石炭液化循環溶剤)中で機械的に粉砕された平均
粒子径:10μm 以下の褐鉄鉱であって、固有水分と鉄原
子のモル比が0.4以上である褐鉄鉱を触媒として用い
るようにしている。換言すれば、固有水分と鉄原子のモ
ル比:0.4以上の褐鉄鉱を石炭液化循環溶剤中で機械
的に粉砕して平均粒子径:10μm 以下にしたものを、石
炭液化用触媒として用いるようにしている。
は、基本的には石炭液化用触媒として鉄鉱石を用いる種
類の石炭の液化方法に属するが、この鉄鉱石として褐鉄
鉱を用いるようにしている。これは、鉄鉱石の中では褐
鉄鉱が比較的触媒活性が高いからである。
し、平均粒子径:10μm 以下にした褐鉄鉱を用いるよう
にしている。これは、平均粒子径:10μm 超の褐鉄鉱を
石炭液化用触媒として用いると、触媒の実効表面積(触
媒重量当りの触媒粒子の外表面積)が小さいために触媒
と石炭との接触効率が低く、触媒活性が低下して不充分
となるからである。このような触媒の実効表面積を増大
させ、触媒活性を高めるためには、平均粒子径は10μm
以下で小さいほどよく、このような点から5μm 以下に
することが望ましく、特には1μm 以下にすることが望
ましい。
褐鉄鉱を粉砕することにより得られるが、この粉砕を乾
式ではなく、石炭液化溶剤中で行うようにしている。即
ち、石炭液化溶剤中で機械的に粉砕された褐鉄鉱(平均
粒子径:10μm 以下)を触媒として用いるようにしてい
る。これは、気流式粉砕機等を用いて乾式粉砕を行うよ
りも、媒体攪拌型粉砕機等を用いて石炭液化溶剤中で粉
砕を行う方がはるかに効率的であり、又、石炭、溶剤及
び触媒からなるスラリー状混合体において、乾式粉砕で
得られた触媒は溶剤中で著しく凝集し、触媒の分散性が
悪くなるのに対し、石炭液化溶剤中で粉砕されて得られ
た触媒は、溶剤中での凝集が起こり難く、触媒の分散性
に優れており、そのため触媒と石炭との接触効率を高め
ることができ、ひいては触媒活性が高められるからであ
る。かかる効果は、触媒の平均粒子径を5μm 以下とし
た場合に特に顕著である。
ル比が0.4以上であることとしている。即ち、固有水
分と鉄原子のモル比:0.4以上の褐鉄鉱を石炭液化循
環溶剤中で機械的に粉砕して平均粒子径:10μm 以下に
したものを、石炭液化用触媒として用いるようにしてい
る。これは、固有水分と鉄原子のモル比:0.4以上の
褐鉄鉱は粉砕性に優れており、そのため触媒粉砕用機器
の磨耗を起こし難く、又、触媒活性が高く、ひいては油
分収率を向上し得るからである。
0.4以上の褐鉄鉱は粉砕性に優れて触媒粉砕用機器の
磨耗を起こし難く、又、触媒活性が高くて油分収率を向
上し得る。これは下記の如き研究及び実験により得られ
た新規知見である。
石炭液化溶剤中での粉砕性と粉砕に用いたボールミルの
ボールの摩耗の程度を調べた。その結果、褐鉄鉱中の固
有水分と鉄原子のモル比:0.4以上の褐鉄鉱は粉砕性
に優れており、ボールの摩耗が少ないことがわかった。
炭の液化反応を行い、触媒活性を評価した。その結果、
褐鉄鉱中の固有水分と鉄原子のモル比:0.4以上の場
合に触媒活性が高くなることがわかった。更に、粉末X
線回折分析においてα−オキシ水酸化鉄が主成分であっ
てα−酸化鉄のピークを示さない褐鉄鉱、即ち、実質的
に酸化鉄を含まない褐鉄鉱が最も触媒活性が高いことが
わかった。
モル比:0.4以上の場合に触媒活性が高く、特に、実
質的に酸化鉄を含まない褐鉄鉱が最も触媒活性が高い。
この理由について以下説明する。
て、触媒活性を発現する活性種が石炭の熱分解が起こり
始める250 ℃よりも低い温度で存在することがあげられ
る。鉄鉱石等の鉄化合物の活性種の化学的形態は、いず
れもピロータイトと称される硫化鉄の一種であり、ピロ
ータイトへの転換の温度が250 ℃よりも高い場合には、
250 ℃からこの転換温度の間に発生した熱分解ラジカル
に対しては充分な水素供与が行われず、望ましくない重
縮合物が多く生成し、油分の収率を低下させることにな
る。従って、鉄化合物のピロータイトへの転換温度は25
0 ℃以下であることが望ましい。
次のような方法により調査し、確認することができる。
により硫化され、硫化鉄化合物に変化する。この硫化鉄
化合物はその形態により、ピロータイト(Fe1-XS)、トロ
イライト(FeS) 、パイライト(FeS2)等があるが、これら
は粉末X線回折でのピーク位置が異なるため、判別は容
易である。従って、調査・確認対象の鉄化合物を所定の
温度で硫化して硫化鉄化合物とし、これを粉末X線回折
することにより、硫化鉄化合物の形態を調査・確認し得
る。このとき、硫化させる温度を変化させると、鉄化合
物がピロータイトに転換する温度がわかる。
法を用いて、鉄化合物のピロータイトへの硫化挙動や、
ピロータイトの触媒作用について鋭意検討した。その結
果、ピロータイトの触媒作用とその活性の程度、及び、
鉄化合物がピロータイトに転換する温度は、鉄化合物の
種類によって異なり、特にオキシ水酸化鉄が250 ℃以下
の低温で硫化されてピロータイトへ転換し、高い触媒活
性を示すことを見出した。
水酸化鉄とα−酸化鉄が認められるが、産出地、鉱区等
によりα−オキシ水酸化鉄とα−酸化鉄の成分比が異な
っており、一般に Fe2O3・nH2Oと表記されている。又、
褐鉄鉱は、加熱することによりα−オキシ水酸化鉄成分
が水分を発生してα−酸化鉄へ変化し、重量(質量)が
減少する。従って、褐鉄鉱を加熱したときの重量減少量
(即ち、固有水分量)が大きいほど、褐鉄鉱中のα−オ
キシ水酸化鉄成分の含有量が多く、ピロータイトへの転
換温度が低下し、触媒活性が高くなることになる。故
に、褐鉄鉱中の固有水分と鉄原子のモル比が大きいほ
ど、触媒活性が高くなることになる。
の増大に伴う触媒活性の増大の程度は、かかるモル比が
0.4より小さい領域においては小さく、0.4以上の
領域においては大きいことが研究実験により確認され
た。
褐鉄鉱中のα−オキシ水酸化鉄成分の含有量が最も多い
ので、ピロータイトへの転換温度が最も低く、触媒活性
が最も高くなる。このように固有水分量が最も多い褐鉄
鉱は、α−オキシ水酸化鉄が主成分であってα−酸化鉄
のピークを示さない褐鉄鉱、即ち、実質的に酸化鉄を含
まない褐鉄鉱に相当する。故に、実質的に酸化鉄を含ま
ない褐鉄鉱が最も触媒活性が高いことになる。
分と鉄原子のモル比:0.4以上の場合に触媒活性が高
く、特に、実質的に酸化鉄を含まない褐鉄鉱が最も触媒
活性が高くなるのである。
れたものであり、本発明に係る石炭の液化方法は、石炭
液化溶剤中で機械的に粉砕された平均粒子径:10μm 以
下の粉砕鉄鉱石を触媒として用い、石炭を溶剤及び触媒
の共存下で水添する水添工程を含む石炭の液化方法であ
って、前記鉄鉱石が褐鉄鉱であると共に該褐鉄鉱中の固
有水分と鉄原子のモル比が0.4以上であることを特徴
とするものである。本発明に係る石炭の液化方法によれ
ば、従来の石炭の液化方法に比較して、触媒として用い
る鉄鉱石の粉砕性に優れて触媒粉砕用機器の磨耗が少な
く、又、触媒活性が高くて油分収率を向上し得るように
なる(第1発明)。
鉄鉱であることが望ましい。かかる褐鉄鉱は、α−オキ
シ水酸化鉄が主成分であってα−酸化鉄のピークを示さ
ない褐鉄鉱であり、固有水分量が最も多い褐鉄鉱である
ので、ピロータイトへの転換温度が最も低く、触媒活性
が最も高くなり、ひいては油分収率を最も向上し得るよ
うになるからである(第2発明)。
い褐鉄鉱における固有水分と鉄原子のモル比は0.65
である。一般に、褐鉄鉱はα−オキシ水酸化鉄を主成分
とするものであるが、場合によっては Fe(OH)3の化学式
を持つ無定形の水酸化鉄が含まれることがある。この場
合の褐鉄鉱中の固有水分と鉄原子のモル比は、最大で
1.50になることが予想される。従って、褐鉄鉱中の
固有水分と鉄原子のモル比には上限があり、その値は
1.50であることになる。この点を考慮すると、第1
発明に係る固有水分と鉄原子のモル比:0.4以上の褐
鉄鉱は、固有水分と鉄原子のモル比:0.4〜1.5の
褐鉄鉱と表現することもできる。又、第2発明に係る実
質的に酸化鉄を含まない褐鉄鉱は、固有水分と鉄原子の
モル比:0.65〜1.5の褐鉄鉱と表現することもで
きる。
で石炭液化用触媒として作用する。従って、褐鉄鉱は石
炭の水添反応の時点では硫化されている必要がある。こ
の硫化については、スラリー状混合体中において褐鉄鉱
と共存する石炭中に比較的多量の硫黄或いは硫黄化合物
が含有されている場合には、この硫黄或いは硫黄化合物
と褐鉄鉱との反応により、起こさせることは可能である
が、褐鉄鉱をより充分に硫化させるためには、スラリー
状混合体に単体硫黄又は硫黄化合物を添加し、褐鉄鉱と
共存させることが望ましい(第3発明)。一方、原料石
炭中の硫黄或いは硫黄化合物の含有量が少ない場合に
は、上記の如く単体硫黄又は硫黄化合物を添加し、褐鉄
鉱と共存させると褐鉄鉱を充分に硫化させ得る(第3発
明)。又、褐鉄鉱、石炭及び溶剤を混合する前に褐鉄鉱
を予め硫化処理しておき、この硫化処理後の褐鉄鉱を石
炭及び溶剤と混合し、石炭液化用触媒として用いること
も、有効な手段として採用することができる。
度の低い石炭)の他、亜瀝青炭や瀝青炭を使用すること
ができる。これらは通常、水分:15%以下に乾燥された
後、約60メッシュより細かい粒度に粉砕されたものが使
用され、これによれば有利に石炭液化を行うことができ
る。しかし、これらに限定されるものではない。
ず、水添反応が起こる条件であればよいが、通常は温
度:350〜500 ℃、水素分圧:7〜20MPa 、反応時間:10
〜120分の条件で行われ、これによれば有利に石炭液化
を行うことができる。水添反応で得られる水添生成物
は、触媒等の固形分の分離後、油分として回収されても
よいが、通常は該分離後の油分は蒸留塔に送られ所望の
目的物(重質油、中質油、軽質油等)に分離され回収さ
れると共に、その重質油等の一部は循環溶剤としてスラ
リー状混合体調製工程に循環され使用される。
れる。石炭液化溶剤(石炭液化循環溶剤)とは、スラリ
ー調製工程(石炭、溶剤及び触媒が共存するスラリー状
混合体を得る工程)の溶剤として使用され、そして石炭
の水添工程(水添反応を起こさせて石炭を液化させる工
程)での生成物(水添生成物)から溶剤分離工程又は油
分分離工程(水添生成物から蒸留等の分離操作により、
溶剤を分離して得る工程又は油分を分離して得る工程)
で溶剤として分離された後、スラリー調製工程に循環供
給され溶剤として使用され、以降、これが繰り返され、
スラリー調製工程と溶剤分離工程又は油分分離工程との
間を循環する溶剤(第1石炭液化循環溶剤)、及び、上
記溶剤分離工程又は油分分離工程で溶剤として分離さ
れ、必要に応じてスラリー調整工程以外の工程に循環供
給される溶剤(第2石炭液化循環溶剤)をいう。
ー調製工程に循環供給され溶剤として使用されるもので
あるが、本発明においては、この石炭液化循環溶剤の一
部を触媒粉砕用機器に導入し、石炭液化循環溶剤中での
褐鉄鉱の粉砕に利用するものである。即ち、前記溶剤分
離工程又は油分分離工程で分離されて得られる溶剤を、
石炭液化循環溶剤としてスラリー調製工程に循環供給す
る一方、その溶剤の一部を石炭液化循環溶剤中での褐鉄
鉱の粉砕用粉砕機に供給するものである。
その要旨を越えない限り、これら実施例に限定されるも
のではない。尚、以降の実施例、比較例に記述する石炭
転換率、収率の値は、無水無灰炭基準での値である。
〜L) 豪州産褐鉄鉱A〜Eをそれぞれ自由粉砕機(奈良機械製
作所製)により粉砕した後、110 ℃の温度で8時間減圧
乾燥して用いた。この乾燥は褐鉄鉱の付着水分を除去す
るための処理である。この乾燥処理により、褐鉄鉱中の
固有水分が減ることはなく、褐鉄鉱中の固有水分と鉄原
子のモル比が変化することはない。
〜6時間、空気中で加熱処理し、これらを褐鉄鉱F〜L
として用いた。この加熱処理により、褐鉄鉱B中の固有
水分が減って固有水分と鉄原子のモル比が変化する。即
ち、この加熱処理は固有水分と鉄原子のモル比が種々異
なる褐鉄鉱を得るために行ったものである。
ッシュの篩で篩い分けして、網目を通過した粉状褐鉄鉱
を得た。この粉状褐鉄鉱を電気炉により700 ℃の温度で
4時間、空気中で加熱処理し、この加熱処理による粉状
褐鉄鉱の重量(質量)減少量より褐鉄鉱A〜L中の固有
水分量を求めた。
の固有水分と鉄原子のモル比の調査〕 下記の化学変化式より、前記加熱処理による褐鉄鉱の重
量減少量を固有水分量と定義して、褐鉄鉱A〜L中の固
有水分量と鉄含有量から計算により、褐鉄鉱A〜Lの固
有水分と鉄原子のモル比を求めた。
分析を行った。
分析の結果、及び、固有水分と鉄原子のモル比を図1に
示す。図1からわかる如く、褐鉄鉱中の固有水分と鉄原
子のモル比が大きいほど、α−オキシ水酸化鉄の回折ピ
ーク(2θ=21°)が強く、α−酸化鉄の回折ピーク
(2θ=24°)が小さく、褐鉄鉱中のα−オキシ水酸化
鉄の含有量が高い。尚、褐鉄鉱Aは、固有水分と鉄原子
のモル比が最も高く、その値は0.65であり、実質的
に酸化鉄を含まない褐鉄鉱の一例に該当する。
水酸化鉄、褐鉄鉱、α−酸化鉄)のピロータイトへの転
換温度に関する調査〕 オートクレーブを用い、鉄化合物、硫黄(量:前記鉄化
合物の鉄含有量に対して原子比で2.0 倍相当量)、及
び、石炭液化溶剤(褐炭液化溶剤)を含むスラリー状混
合体に水素を加えて200 〜450 ℃の設定温度まで毎分15
0 ℃の昇温速度で昇温し、設定温度到達後速やかに室温
まで冷却する処理を行い、スラリー状混合体中の鉄化合
物が100 %ピロータイトに転換する温度を調べた。
水酸化鉄、褐鉄鉱B、α−酸化鉄をそれぞれ単独で用い
た。この中、褐鉄鉱Bは粉末X線回折分析においてα−
オキシ水酸化鉄とα−酸化鉄のピークが認められたもの
である。
り詳細には次のようにして求めた。前記冷却処理後のス
ラリー状混合体から鉄化合物をテトラヒドロフラン(TH
F)を用いた溶剤分別によって分離回収し、次に、この鉄
化合物を乾燥した後、粉末X線回折分析によってピロー
タイトのピークを調べた。
タイトに転換する温度は、α−酸化鉄の場合で350 ℃、
褐鉄鉱Bの場合で250 ℃、α−オキシ水酸化鉄の場合で
200℃であった。この結果から、α−オキシ水酸化鉄と
α−酸化鉄の成分比が異なる褐鉄鉱においてα−オキシ
水酸化鉄を多く含有する褐鉄鉱ほどピロータイトへの転
換温度が低く、ひいては触媒活性が高いことが、示唆さ
れる。
と鉄原子のモル比:0.65, 0.48, 0.47)を褐炭液化溶剤
中で粉砕するときの粉砕用ボールの摩耗の程度を、次の
ようにして調べた。
び、直径10mmのSUS316製ボール:50個(200g)を、250
ミリリットルのSUS316製容器に導入し、回転数:250rpm
で4時間の粉砕運転を行った。これにより得られた褐鉄
鉱スラリーの中の褐鉄鉱の粒度分布をレーザー回折法で
測定したところ、その粒度分布は平均0.8 μm であっ
た。粉砕用ボールを褐鉄鉱スラリーから分離し、超音波
洗浄器を用いてTHF 中で粉砕用ボールを洗浄し、乾燥し
た後、その重量を測定した。そして、粉砕による粉砕用
ボールの重量減少量(粉砕前後の粉砕用ボールの重量
差)より粉砕用ボールの摩耗率を求めた。この結果を図
2に示す。
化溶剤中で粉砕するときの粉砕用ボールの摩耗率を、実
施例3の場合と同様の方法により調べた。この結果を図
2に示す。
粉砕用ボールの摩耗率を、実施例3の場合と同様の方法
により調べたところ、粉砕用ボールの摩耗率は1.7 %
(wt%)であった。
固有水分と鉄原子のモル比が大きいほど、褐鉄鉱を粉砕
するときの粉砕用ボールの摩耗率が低くなり、褐鉄鉱と
して固有水分と鉄原子のモル比:0.33のものを用いた比
較例1の場合に比べ、固有水分と鉄原子のモル比が0.
4以上(:0.65, 0.48, 0.47)のものを用いた実施例3
の場合は、褐鉄鉱を粉砕するときの粉砕用ボールの摩耗
率が極めて低いことがわかる。又、天然パイライト鉱石
を粉砕する比較例2の場合に比較し、実施例3の場合
は、粉砕用ボールの摩耗率が極めて低いことがわかる。
ル比:0.65, 0.48, 0.47, 0.47, 0.40)を、遊星ミル
(フリッチュ社製、P-5 型)を用いて褐炭液化溶剤中で
粉砕し、褐鉄鉱スラリーを得た。このとき、粉砕用ボー
ルとしては、直径10mmのSUS316製のものを用いた。この
褐鉄鉱スラリー中の褐鉄鉱の粒度分布をレーザー回折法
で測定したところ、その平均粒子径は1.5 μm であっ
た。
記褐鉄鉱スラリーを添加すると共に硫黄を添加し、更に
褐炭液化溶剤を添加して、スラリー状混合体を得た。こ
のとき、触媒の添加量は無水無灰炭基準で鉄として1.0
wt%となる量とし、又、硫黄の添加量は無水無灰炭基準
で1.2 wt%となる量とした。
(内容積:100ミリリットル)中に導入し、水素初圧:10
MPa 、反応温度:450 ℃、反応時間:30分の反応条件で
水添反応(液化反応)を行わせた。しかる後、得られた
反応生成物(水添生成物)を分離し、それをテトラハイ
ドロフラン(THF)を用いてTHF の沸点温度で反応生成物
を溶解し、細孔径:0.2μm のメンブランフィルターで濾
過分離を行った。この濾過分離により得られた固相成
分、即ちTHF 不溶分(THF で溶解しなかったもの)を未
反応褐炭と定義し、この未反応褐炭量と水添反応前の褐
炭量とから反応褐炭量を求め、これらより石炭転換率
(水添反応前の褐炭量に対する反応褐炭量の割合)を求
めた。この結果を図3に示す。
水分と鉄原子とのモル比:0.33, 0.37, 0.34, 0.26, 0.
16, 0.09, 0.00)を用いた。この点を除き実施例4の場
合と同様の方法により褐鉄鉱の粉砕、石炭の液化反応を
行い、同様の方法により石炭転換率を求めた。この結果
を実施例4の場合の結果とあわせて図3に示す。
モル比が大きいほど石炭転換率が高くなり、この高くな
る程度は褐鉄鉱中の固有水分と鉄原子のモル比:0.4 未
満の領域では小さいが、褐鉄鉱中の固有水分と鉄原子の
モル比:0.4以上の領域では大きく、褐鉄鉱中の固有
水分と鉄原子のモル比の増大により石炭転換率が急激に
高くなり、ひいては触媒活性が著しく高くなることがわ
かる。
星ミル(フリッチュ社製、P-5 型)を用いて褐炭液化溶
剤中で粉砕し、褐鉄鉱スラリーを得た。このとき、粉砕
用ボールとしては、直径10mmのSUS316製のものを用い
た。この褐鉄鉱スラリー中の褐鉄鉱の粒度分布をレーザ
ー回折法で測定したところ、その平均粒子径は0.6 μm
であった。尚、褐鉄鉱Aは、前述の如く実質的に酸化鉄
を含まない褐鉄鉱の一例に該当する。
褐鉄鉱スラリーを添加すると共に硫黄を添加し、更に褐
炭液化溶剤を添加して、スラリー状混合体を得た。この
とき、触媒の添加量は無水無灰炭基準で鉄として1.0wt
%、3.0wt%、6.0wt%となる量とし、又、硫黄の添加量は
液化反応中の硫化水素濃度が5000ppm となる量とした。
(内容積:5リットル)中に導入し、水素初圧:7.5MP
a、反応温度:450℃、反応時間:60分の反応条件で水添
反応(液化反応)を行わせた。しかる後、得られた反応
生成物(水添生成物)を分離し、それを蒸留し、油分を
沸点範囲別に分離して得た。その結果、C5〜沸点:420℃
の液体留分(油分)の収率は、触媒添加量:1.0wt%の場
合で34wt%、触媒添加量:3.0wt%の場合で49wt%、触媒
添加量:6.0wt%の場合で54wt%であった。この結果を触
媒添加量と油分収率の関係にして図4に示す。
施例5の場合と同様の方法により粉砕し、褐鉄鉱スラリ
ーを得た。この褐鉄鉱スラリー中の褐鉄鉱の平均粒子径
は0.9 μm であった。
施例5の場合と同様の方法により液化反応を行い、反応
生成物の蒸留を行い、油分を沸点範囲別に分離して得
た。その結果、C5〜沸点:420℃の液体留分(油分)の収
率は、触媒量:1.0wt%の場合で27wt%、触媒量:3.0wt%
の場合で44wt%、触媒量:6.0wt%の場合で53wt%であっ
た。この結果を触媒添加量と油分収率の関係にして図4
に示す。
り粉砕し、パイライト鉱スラリーを得た。このパイライ
ト鉱スラリー中のパイライト鉱の平均粒子径は0.6 μm
であった。
い、実施例5の場合と同様の方法により液化反応を行
い、反応生成物の蒸留を行い、油分を沸点範囲別に分離
して得た。その結果、C5〜沸点:420℃の液体留分(油
分)の収率は、触媒量:1.0wt%の場合で27wt%、触媒
量:3.0wt%の場合で31wt%、触媒量:6.0wt%の場合で49
wt%であった。この結果を触媒添加量と油分収率の関係
にして図4に示す。
鉄鉱A)、比較例4(触媒:褐鉄鉱E)、比較例5(触
媒:天然パイライト鉱石)のいずれの場合も、触媒量が
多いほど油分収率が高くなる。実施例5と比較例4及び
比較例5とを比較すると、触媒量:6.0wt%の場合には、
実施例5での油分収率は比較例5の場合よりも5wt%高
いが、比較例4の場合と比べると1wt% 高い程度であ
り、その差は小さい。しかしながら、触媒量:3.0wt%の
場合や、触媒量:1.0wt%の場合には、実施例5での油分
収率は比較例4及び比較例5の場合よりも5wt% 以上高
い。
褐鉄鉱A)の場合は、比較例4(触媒:褐鉄鉱E)及び
比較例5(触媒:天然パイライト鉱石)の場合に比較
し、触媒の添加量が少なくても同一の油分収率が得ら
れ、又、触媒の添加量が少なくても高い油分収率を得る
ことができることがわかる。即ち、少量の触媒添加量で
同等もしくは高い油分収率を達成することができること
がわかる。
従来の石炭の液化方法に比較して、触媒として用いる鉄
鉱石の粉砕性に優れて触媒粉砕用機器の磨耗が少なくな
り、また、触媒活性が高くて油分収率を向上し得るよう
になり、少量の触媒添加量で高い油分収率を達成するこ
とも可能となる。従って、触媒の製造コストが低下し、
また、触媒の必要量を少なくして油分収率を高めること
も可能となるので、経済的に有利に石炭の液化が行える
ようになる。
末X線回折分析の結果を固有水分/鉄原子(モル比)と
共に示す図である。
分/鉄原子モル比(固有水分と鉄原子のモル比)と粉砕
用ボール摩耗率との関係を示す図である。
分/鉄原子モル比(固有水分と鉄原子のモル比)と石炭
転換率との関係を示す図である。
量と油分収率との関係を示す図である。
Claims (3)
- 【請求項1】 石炭液化溶剤中で機械的に粉砕された平
均粒子径:10μm 以下の鉄鉱石を触媒として用い、石炭
を溶剤および触媒の共存下で水添する水添工程を含む石
炭の液化方法であって、前記鉄鉱石が褐鉄鉱であるとと
もに該褐鉄鉱中の固有水分と鉄原子のモル比が0.4以
上であることを特徴とする石炭の液化方法。 - 【請求項2】 前記褐鉄鉱が実質的に酸化鉄を含まない
褐鉄鉱である請求項1記載の石炭の液化方法。 - 【請求項3】 前記石炭、溶剤及び触媒と共に単体硫黄
又は硫黄化合物が存在する請求項1又は2記載の石炭の
液化方法。
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