JPH1121496A - 保護被膜形成材および基材の一時的保護処理方法 - Google Patents

保護被膜形成材および基材の一時的保護処理方法

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JPH1121496A
JPH1121496A JP17462697A JP17462697A JPH1121496A JP H1121496 A JPH1121496 A JP H1121496A JP 17462697 A JP17462697 A JP 17462697A JP 17462697 A JP17462697 A JP 17462697A JP H1121496 A JPH1121496 A JP H1121496A
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JP
Japan
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meth
low
temperature
copolymer
structural unit
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JP17462697A
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English (en)
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Hironobu Toribuchi
浩伸 鳥淵
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Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 常圧下でも、低温で容易に分解し、分解速度
が適度であり、残存物がなく、しかも、光の透過不透過
を考慮する必要がなくて、取扱い易い、保護被膜形成材
およびこれを用いた基材の一時的保護処理方法を提供す
る。 【解決手段】 保護被膜形成材は、(メタ)アクロレイ
ン構造単位を含む低温分解性共重合体を必須成分とす
る。基材の一時的保護処理方法は、上記保護被膜形成材
を用いて基材表面に低温分解性の保護被膜を形成する方
法である。この保護被膜の除去は、加熱によって行われ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、低温で容易に分解
し取扱い易い保護被膜形成材と、これを用いた基材の一
時的保護処理方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に高分子有機化合物は、加熱によっ
て分解する性質を有している。特にポリスチレン、ポリ
エチレン等は、熱分解が容易であるため、熱付与によっ
て像形成等を行う感応性被膜や、加熱によって除去を行
う熱崩壊性接着剤等に利用されている。
【0003】たとえば、特開平6−41241号公報に
は、スチレン単位30〜90重量%、残部α−メチルス
チレン単位よりなり、減圧しながら385℃で30分間
放置すると99%以上分解するスチレン系共重合体が開
示されている。しかし、このスチレン系共重合体は、そ
の分解温度が高く、また、減圧下(酸素不存在下)でな
いと急激な燃焼がおこって順調に分解させることができ
ないという不便があり、しかも、たとえ順調に分解させ
たとしても多量の炭化物が残存するという問題点もあ
る。
【0004】低温であっても容易に分解するアゾ基や過
酸化物基等の易ラジカル生成基を高分子有機化合物に導
入すれば、分解温度を低下させることができる。しか
し、易ラジカル生成基は、分解性が高すぎて、わずかな
衝撃や熱で爆発的に分解反応が進行することがあるた
め、取扱いにくく、実用性がきわめて低い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】以上に述べたような問
題点のない分解性化合物、すなわち、高温、減圧を必要
とせず、しかも分解速度も適度な分解性高分子有機化合
物として、特開昭49−114660号公報には、アク
ロレインと、スチレンや(メタ)アクリル酸エステル等
の共重合可能な他のビニルモノマーとを共重合して得ら
れる光分解性共重合体が開示されている。このものは主
として、プラスチック廃棄物等の公害問題を解決するこ
とを目的としており、分解のために加えられるエネルギ
ーが、熱ではなく、光である。
【0006】本発明者らは、上記光分解性共重合体を製
造して、その光分解を試みたところ、効率よく分解させ
るためには、高エネルギーの紫外線照射装置が必要であ
り、しかも、光分解では反応系が複雑でタール状の生成
物が多量に生成することがわかった。さらに、この光分
解性共重合体の用途探索を目的として、基材表面に光分
解性共重合体からなる被膜を形成し、この被膜に光を照
射して除去することを試みたところ、被膜に光が隈なく
当たらなかったり、不透明であったり、被膜の上にさら
に別の光不透過性膜が形成されたりしていると、被膜内
部に光が到達しにくく、被膜の分解に時間がかかり、極
端な場合は、除去そのものが行えななかった。
【0007】そこで、本発明の課題は、常圧下でも、低
温で容易に分解し、分解速度が適度であり、残存物がな
く、しかも、光の透過不透過を考慮する必要がなくて、
取扱い易い、保護被膜形成材および基材の一時的保護処
理方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために鋭意検討した結果、(メタ)アクロレ
イン構造単位を含む低温分解性共重合体は、光でなく熱
で、しかも、低温で容易に分解し、残存物がなくて、取
扱い易いという知見を得て、本発明に到達した。
【0009】すなわち、本発明の保護被膜形成材は、
(メタ)アクロレイン構造単位を含む低温分解性共重合
体を必須成分とする。本発明の基材の一時的保護処理方
法は、上記保護被膜形成材を用いて基材表面に低温分解
性の保護被膜を形成する方法である。この保護被膜の除
去は、加熱によって行われる。
【0010】
【発明の実施の形態】
〔保護被膜形成材〕本発明の保護被膜形成材は、低温分
解性共重合体を必須成分とする。低温分解性共重合体
は、構造単位として(メタ)アクロレイン構造単位を含
んでいる。(メタ)アクロレイン構造単位は、(メタ)
アクロレインに由来し、その炭素−炭素の2重結合が開
いた構造単位であり、下記の化学式(1)で示される構
造を有する単位である。
【0011】
【化1】
【0012】(但し、Rは、水素原子またはメチル基で
ある。)低温分解性共重合体は、(メタ)アクロレイン
構造単位以外の構造単位である、(メタ)アクリル系単
量体構造単位をさらに含むことがある。(メタ)アクリ
ル系単量体構造単位は、(メタ)アクリル系単量体に由
来し、その炭素−炭素の2重結合が開いた構造単位であ
り、下記の化学式(2)で示される構造を有する単位で
ある。
【0013】
【化2】
【0014】(但し、R1 は水素原子またはメチル基で
あり、R2 、R3 およびR4 は、いずれも、水素原子お
よび1価の有機基のうちの少なくとも1種であり、お互
いに異なっていてもよい。) (メタ)アクリル系単量体としては、アクリル酸、アク
リル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチ
ル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アク
リル酸ステアリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、ア
クリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸、メタ
クリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プ
ロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブ
チル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシ
ル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ス
テアリル等を挙げることができ、これらが1種または2
種以上使用される。
【0015】低温分解性共重合体中には、上記に示した
(メタ)アクロレイン構造単位および(メタ)アクリル
系単量体構造単位以外の構造単位(その他単量体構造単
位)を、低温分解性を低下させない範囲で含むものでも
よい。その他単量体構造単位は、スチレン、o−メチル
スチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、
α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−te
rt−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、o−ク
ロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレ
ン(以上、スチレン系単量体)、エチレン、プロピレ
ン、ブチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリロニト
リル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニル
ピロリドン等の2重結合含有単量体に由来し、これら単
量体の炭素−炭素の2重結合が開いた構造単位である。
【0016】低温分解性共重合体中における構造単位の
配列については、特に限定はない。低温分解性共重合体
は、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共
重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。低温分
解性共重合体中の(メタ)アクロレイン構造単位の割合
は、低温分解性共重合体全体に対して、好ましくは1〜
90重量%、さらに好ましくは2〜70重量%である。
(メタ)アクロレイン構造単位が1重量%未満である
と、低温では分解しにくくなることがある。他方、(メ
タ)アクロレイン構造単位が90重量%を超えると、保
護被膜の分解速度が速すぎて、分解の制御が困難となる
ほか、貯蔵安定性も低下することがある。
【0017】低温分解性共重合体中の(メタ)アクリル
系単量体構造単位の割合は、低温分解性共重合体全体に
対して、好ましくは10〜99重量%であり、さらに好
ましくは30〜95重量%である。(メタ)アクリル系
単量体構造単位が10重量%未満であると、保護被膜を
分解した時に残存物が生じることがある。他方、(メ
タ)アクリル系単量体構造単位が99重量%を超える
と、低温では分解しにくくなることがある。
【0018】低温分解性共重合体は、重合性単量体を、
以下に述べる製造方法によって製造することができる
が、他の製造方法によって製造されたものでもよい。重
合性単量体は、(メタ)アクロレインと、前述の(メ
タ)アクリル系単量体とを必須成分として含み、前述の
その他単量体をさらに含むものであってもよい。(メ
タ)アクロレインおよび(メタ)アクリル系単量体の仕
込み割合については、前述の低温重合性重合体の構造単
位で説明した値を好ましいものとして挙げることができ
る。
【0019】低温分解性共重合体の製造方法としては、
塊状重合、溶液重合の他、たとえば、(メタ)アクロレ
インと前述の(メタ)アクリル系単量体とを必須成分と
して含む重合性単量体を媒体中に分散あるいは乳化させ
重合を行う乳化重合、懸濁重合、あるいは、溶液中に重
合性単量体を溶解させ重合によって析出させる分散重合
等がある。
【0020】上記製造方法の中でも、水存在下で重合さ
せる乳化重合法および懸濁重合法が、得られる低温分解
性共重合体の安定性が高くなるため好ましい。乳化重合
法や懸濁重合法においては、乳化粒子および懸濁粒子の
安定化を図るために分散安定剤を添加することができ
る。分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ゼラ
チン、トラガント、デンプン、メチルセルロース、カル
ボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロー
ス、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナト
リウム等の水溶性高分子、アニオン性界面活性剤、カチ
オン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン
性界面活性剤等があり、その他、アルギン酸塩、ゼイ
ン、カゼイン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸バ
リウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、タル
ク、粘土、ケイソウ土、ベントナイト、水酸化チタン、
水酸化トリウム、金属酸化物粉末等も用いられる。アニ
オン性界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ヒ
マシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラ
ウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベ
ンゼンスルホン酸塩;アルキレンナフタレンスルホン酸
塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸
塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸
ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニ
ルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキ
ル硫酸エステル塩等がある。ノニオン性界面活性剤とし
ては、ポリオキシエチレンアルキルアルキルエーテル、
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオ
キシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステ
ル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシ
エチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、
オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等
がある。カチオン性界面活性剤としては、ラウリルアミ
ンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキ
ルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライ
ド等の第4級アンモニウム塩等がある。両性イオン性界
面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイド
等がある。これらの分散安定剤は、重合性単量体全体に
対して、通常、0.01〜20重量%の範囲内で適宜使
用できる。
【0021】乳化重合法や懸濁重合法で用いられる溶媒
としては、重合性単量体を完全には溶解しないものであ
れば特に限定されないが、好ましくは水系媒体が用いら
れる。これらの溶媒は、重合性単量体全体に対して、通
常、20〜10000重量%の範囲内で適宜使用でき
る。乳化重合法や懸濁重合法で用いられる重合開始剤と
しては、公知のフリーラジカル触媒、たとえば、過酸化
ベンゾイル、過酸化ラウロイル、第3級ブチルヒドロキ
シパーオキサイド、過酸化クメン、過酸化メチルエチル
ケトン、第3級ブチルパーフタレート、カプロイルパー
オキサイド等の有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸
ナトリウム、過酸化水素等の無機酸化物;アゾビスイソ
ブチロニトリル、アゾビスイソブチルアミド、2,2’
−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(α
−メチルバレロニトリル)、アゾビス(α−メチルブチ
ロニトリル)等のアゾ化合物等を挙げることができ、こ
れらが1種または2種以上使用される。これらの重合開
始剤は、重合性単量体全体に対して、通常、0.01〜
20重量%の範囲内で適宜使用できる。
【0022】懸濁重合の条件、すなわち、重合温度、時
間、攪拌装置等に関しては、特に制限されるものでな
く、従来公知の乳化重合および懸濁重合法の条件を適宜
選択することができる。低温分解性共重合体は、架橋構
造を有していてもよい。低温分解性共重合体に架橋構造
をもたせる方法は、特に限定はなく、たとえば、重合性
単量体とともに、重合性二重結合基を分子中に複数個有
する架橋剤を重合させる方法等が挙げられる。このよう
な架橋剤としては、たとえば、トリアクリル酸トリメチ
ロールプロパン、ジメタクリル酸エチレングリコール、
ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸
トリエチレングリコール、ジメタクリル酸デカエチレン
グリコール、ジメタクリル酸ペンタデカエチレングリコ
ール、ジメタクリル酸ペンタコンタヘクタエチレングリ
コール、ジメタクリル酸1,3−ブチレン、メタクリル
酸アリル、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、
テトラメタクリル酸ペンタエリスリトール、ジメタクリ
ル酸フタル酸ジエチレングリコール;ジビニルベンゼ
ン、ジビニルナフタレン、これらの誘導体等の芳香族ジ
ビニル化合物;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエ
ーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等
の架橋剤、さらに、ポリブタジエン、ポリイソプレン、
不飽和ポリスチレン、および、特公昭57−56507
号公報、特開昭59−221304号公報、特開昭59
−221305号公報、特開昭59−221306号公
報、特開昭59−221307号公報等に記載されてい
る反応性重合体を使用してもよく、これら用途等に応じ
て適宜選択することができる。
【0023】乳化重合法および懸濁重合法により低温分
解性共重合体を製造する場合、重合に際して、重合性単
量体中あるいは溶媒(分散媒)中には、必要に応じて、
顔料、着色剤(染料)、可塑剤、重合安定剤、磁性粉、
紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤等の添加剤を適量配
合ないし添加することもできる。本発明の保護被膜形成
材は、上記の低温分解性共重合体以外の成分を含むもの
であってもよく、このような他の成分としては、水、メ
タノール、エタノール、アセトン、トルエン、メチルエ
チルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢
酸ブチル等の溶媒;ポリオレフィン系樹脂、ポリエステ
ル系樹脂、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、
メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、
エポキシ系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等のバインダー樹
脂;可塑剤;安定剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤等の添
加剤等を挙げることができる。これら他の成分のうち、
水は安定化剤としても作用するため、保護被膜形成材は
水を含むものであると、加温された条件下に放置されて
も分解しない。
【0024】保護被膜形成材中の低温分解性共重合体の
配合割合は、特に限定はないが、通常、保護被膜形成材
全体の5〜90重量%であり、好ましくは10〜80重
量%である。低温分解性共重合体の配合割合が5重量%
未満であると、低温で分解しにくくなることがある。他
方、低温分解性共重合体の配合割合が90重量%を超え
ると、保護被膜を形成しにくくなる。 〔基材の一時的保護処理方法〕本発明にかかる基材の一
時的保護処理方法は、上記保護被膜形成材を用いて基材
表面に低温分解性の保護被膜を形成し、基材を一時的に
保護処理する方法である。
【0025】保護被膜は、たとえば、保護被膜形成材
を、刷毛、バーコーター、スプレー等で基材表面に塗工
したり、保護被膜形成材に基材を浸漬した後、保護被膜
形成材に含まれている溶媒等の揮発性成分を蒸発させる
ことによって、形成することができる。この場合は、保
護被膜を低温で形成することが可能である。保護被膜の
膜厚(乾燥膜厚)については、特に限定はないが、普
通、1〜1000μm程度であり、基材の性状により適
宜決められる。
【0026】保護被膜は、70℃以上に加熱して除去す
ることができ、基材からの保護被膜の除去は容易であ
る。保護被膜が基材から除去される反応機構について
は、不明な点もあるが、加熱によって、低温分解性共重
合体の(メタ)アクロレイン構造単位中のアルデヒド基
が遊離した状態となり、アルデヒド基からラジカルが生
じ、このラジカルの生成が発端となって解重合反応が進
行して、保護被膜が分解し、除去されると考えられる。
【0027】保護被膜を除去する温度については、70
℃以上であれば特に限定はないが、好ましくは70〜1
50℃、さらに好ましくは80〜150℃である。温度
が70℃未満であると、保護被膜を除去することが困難
となるなる。基材の材質によっては、高温で熱劣化が生
じるので、温度については下限を70℃にして、150
℃以下の範囲で、適宜に、設定することが好ましい。
【0028】保護被膜を除去するのに要する時間につい
ては、保護被膜の膜厚および上記除去温度等によって、
長く設定されたり、短く設定されたりするが、通常、
0.1〜2時間程度である。保護被膜の除去は、密閉系
で行ってもよいが、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム等
の不活性なガス気流下で行うと、保護被膜の分解が効率
よく行え、また、生成する分解ガス等によって基材が変
質等するのが防止されるため好ましい。一方、水蒸気等
を含む雰囲気下で行うと、低温分解性共重合体の(メ
タ)アクロレイン構造単位中のアルデヒド基が水和され
た状態となり、アルデヒド基から生起すると考えられる
ラジカルが生成し得なくなるので、保護被膜が分解しな
くなり、除去されなくなる場合がある。
【0029】本発明の方法によれば、常圧下でも、低温
で容易に分解し、分解速度が適度であり、残存物がな
く、しかも、光の透過不透過を考慮する必要がなくて、
取扱い易い保護被膜を基材表面に容易に形成することが
できる。
【0030】
【実施例】以下に、本発明の具体的な実施例および比較
例を示すが、本発明は下記実施例に限定されるものでは
ない。以下において、「部」は「重量部」を表す。 (実施例1)攪拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器お
よび温度計を備えたフラスコに、脱イオン水900部に
アニオン系界面活性剤(エマールNC−35、花王
(株)製)0.5部を溶解した溶液を仕込んだ。そこ
へ、予め調製しておいたメタクリル酸メチル95部、メ
タクロレイン5部およびアゾイソブチロニトリル1部を
配合した混合物を仕込み、T.K.ホモジナイザー(特
殊機化工業(株)製)により6000rpmで5分間攪
拌して均一な懸濁液とした。次いで、窒素ガスを吹き込
みながら75℃に加熱し、この温度で5時間攪拌を続け
て重合反応を行った後冷却した。反応後の懸濁液を濾
過、洗浄し、50℃で真空乾燥し、低温分解性共重合体
(1)を得た。
【0031】得られた低温分解性共重合体(1)の赤外
線吸収スペクトルを測定して、メタクロレイン構造単位
およびメタクリル酸メチル構造単位が存在することを確
認した。低温分解性共重合体(1)を120℃で1時間
保持した時の分解率を、島津製作所製熱重量測定装置D
TG−40で測定したところ、87%であった。なお、
この分解率の測定は、室温より120℃までの昇温速度
を20℃/分程度とし、120℃に達してから1時間こ
の温度に保持して重量減少を測定することにより算出し
た。このときの樹脂サンプル量は約20mgとし、測定
は清浄空気を40ml/分の割合で流す条件下で行っ
た。
【0032】上記低温分解性共重合体(1)20部をト
ルエン80部に溶解させて保護被膜形成材(1)とし
た。この保護被膜形成材(1)をポリエステルフィルム
上にバーコーターを用いて乾燥後の厚さが約1μmにな
るように塗布し、常温で10時間乾燥し、フィルムの表
面に平滑な保護被膜が形成された被膜フィルムを得た。
この被膜フィルムを、空気中、120℃で1時間熱処理
を行い保護被膜の状況を観察したところ、保護被膜は完
全に消失し、残存物はなかった。
【0033】(実施例2)実施例1と同様のフラスコ
に、脱イオン水900部にアニオン系界面活性剤(エマ
ールNC−35、花王(株)製)5部と過硫酸カリウム
1部を溶解した溶液を仕込んだ。そこへ、予め調製して
おいたメタクリル酸メチル30部、アクリル酸ブチル5
0部、アクロレイン20部を配合した混合物を仕込み、
400rpmで攪拌して均一な懸濁液とした。次いで、
窒素ガスを吹き込みながら75℃に加熱し、この温度で
5時間攪拌を続けて重合反応を行った後、冷却し、保護
被膜形成材(2)を得た。
【0034】この保護被膜形成材(2)の一部を50℃
で真空乾燥し、赤外線吸収スペクトルを測定して、アク
ロレイン構造単位、メタクリル酸メチル構造単位および
アクリル酸ブチル構造単位が存在することを確認した。
120℃で1時間保持した時の分解率を、実施例1と同
様に測定したところ、95%であった。上記保護被膜形
成材(2)をポリエステルフィルム上にバーコーターを
用いて乾燥後の厚さが約1μmになるように塗布し、常
温で10時間乾燥し、フィルムの表面に平滑な保護被膜
が形成された被膜フィルムを得た。この被膜フィルム
を、空気中、120℃で1時間熱処理を行い保護被膜の
状況を観察したところ、保護被膜は完全に消失し、残存
物はなかった。
【0035】(比較例1)実施例1と同様のフラスコ
に、脱イオン水900部にアニオン系界面活性剤(エマ
ールNC−35、花王(株)製)0.5部を溶解した溶
液を仕込んだ。そこへ、予め調製しておいたスチレン6
0部、α−メチルスチレン40部およびアゾイソブチロ
ニトリル2部を配合した混合物を仕込み、6000rp
mで5分間攪拌して均一な懸濁液とした。次いで、窒素
ガスを吹き込みながら75℃に加熱し、この温度で8時
間攪拌を続けて重合反応を行った後、冷却した。反応後
の懸濁液を濾過、洗浄した後、50℃で真空乾燥し、比
較低温分解性共重合体(1)を得た。この比較低温分解
性共重合体(1)を120℃で1時間保持した時の分解
率を、実施例1と同様に測定したところ、3%であっ
た。
【0036】上記比較低温分解性共重合体(1)20部
をトルエン80部に溶解させて比較保護被膜形成材
(1)とした。この比較保護被膜形成材(1)をポリエ
ステルフィルム上にバーコーターを用いて乾燥後の厚さ
が約1μmになるように塗布し、常温で10時間乾燥
し、フィルムの表面に平滑な比較保護被膜が形成された
被膜フィルムを得た。この被膜フィルムを、空気中、1
20℃で1時間熱処理を行い比較保護被膜の状況を観察
したところ、比較保護被膜は消失せず、平滑なままで、
表面の粗さに変化はなかった。
【0037】
【発明の効果】本発明にかかる保護被膜形成材は、常圧
下でも、低温で容易に分解し、しかも、爆発的に分解反
応が進行することがなく、取扱い易く、残存物が生じな
い。この保護被膜形成材は、加熱によって分解するの
で、光の透過不透過を考慮する必要が全くない。
【0038】本発明にかかる基材の一時的保護処理方法
は、上記保護被膜形成材を用いて基材表面に低温分解性
の保護被膜を形成するため、常圧下でも、低温で容易に
被膜を除去することができる。この保護被膜は、70℃
以上に加熱して除去することができる。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(メタ)アクロレイン構造単位を含む低温
    分解性共重合体を必須成分とする、保護被膜形成材。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の保護被膜形成材を用いて
    基材表面に低温分解性の保護被膜を形成する、基材の一
    時的保護処理方法。
  3. 【請求項3】前記保護被膜を70℃以上に加熱して除去
    する請求項2に記載の、基材の一時的保護処理方法。
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