JPH1121209A - 有用微生物散布方法 - Google Patents

有用微生物散布方法

Info

Publication number
JPH1121209A
JPH1121209A JP10140460A JP14046098A JPH1121209A JP H1121209 A JPH1121209 A JP H1121209A JP 10140460 A JP10140460 A JP 10140460A JP 14046098 A JP14046098 A JP 14046098A JP H1121209 A JPH1121209 A JP H1121209A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
useful
insect
plant
bacillus
microorganism
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP10140460A
Other languages
English (en)
Inventor
Shigeki Senda
茂樹 千田
Futoshi Kawane
太 川根
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Idemitsu Kosan Co Ltd
Original Assignee
Idemitsu Kosan Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Idemitsu Kosan Co Ltd filed Critical Idemitsu Kosan Co Ltd
Priority to JP10140460A priority Critical patent/JPH1121209A/ja
Publication of JPH1121209A publication Critical patent/JPH1121209A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ミツバチなど帰巣性のある昆虫を媒体とし
て、植物体に植物病原菌に拮抗作用を持つ微生物を散布
することにより、対象としうる病虫害或いは植物が特に
限定されず、しかも環境や人体に対して優しい方法で植
物病虫害を効率良く防除することのできる方法を提供す
ることを目的とする。さらに、作業の省力化が図れると
共に、散布する微生物資材の量が少なくてすみ、しか
も、植物などの散布必要箇所に確実に散布することがで
き、その結果、病害防除に関するコストを低減すること
のできる方法を提供することを目的とする。 【解決手段】 植物体に有用微生物を散布するにあた
り、昆虫を媒体として植物体に有用微生物を散布するこ
とを特徴とする有用微生物散布方法を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は有用微生物散布方法
に関し、昆虫を媒体として植物体に有用微生物を散布す
る方法に関する。本発明は、トマト、ナス、キュウリな
どの野菜を初めとする各種植物の病虫害等の防除を目的
として、農園芸分野などにおいて有効に利用することが
できる。本発明において防除とは、予防を含めた概念を
いう。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】植物病
虫害、特に灰色かび病害、うどんこ病害、蛾などによる
虫害等は、作物の収量の低下等の被害を及ぼす。なかで
も灰色かび病害は、特に花部分に発生し、果実に感染す
るため、トマト、ナス、キュウリ、イチゴ、ブドウなど
の主要野菜、作物に発生して、収量の低下などを引き起
こし、経済的に大きな影響を与えている。このため、植
物病虫害を防除しうる農薬の開発、その製剤化や、散布
方法の開発などが行なわれている。
【0003】例えば、殺菌用微生物含有資材を散布機な
どで散布する方法が行なわれている。この方法では、植
物全体に殺菌用微生物含有資材を散布するため、花弁だ
けでなく、植物体全体の病虫害防除が可能である。
【0004】しかしながら、逆に花弁のみの散布は不可
能であり、また、比較的多量の資材を使用する必要があ
ると共に、散布時に作業者が吸入などにより、人体内に
取り込んでしまうおそれがある。
【0005】一方、ミツバチ、マルハナバチなどの放し
飼いは、施設栽培、特にガラスハウスやビニールハウス
を利用した栽培などの普及による奇形果、不受精果の発
生防止及び労力の低減などを目的として広く普及してい
る。
【0006】このようなミツバチ、マルハナバチの訪花
習性等を利用し、化学薬剤を感染部位に直接散布する防
除方法が検討されている。植物防疫(第46巻、第6
号、1992年)において、石川らはイチゴ灰色かび病
の防除において、化学薬剤をミツバチを用いて散布する
方法について報告している。
【0007】しかしながら、この方法では、ミツバチ或
いは植物体に悪影響を与える薬剤は使用することができ
ず、使用することができる薬剤が限定されてしまう。ま
た、ミツバチ或いは植物体に悪影響を与える可能性の少
ない薬剤であっても、化学薬剤の濃度によっては、ミツ
バチ或いは植物体に悪影響を与えるおそれがあるため、
この方法では、化学薬剤によって、使用濃度が限定され
てしまう。従って、対象としうる病虫害或いは植物も限
られてしまうという問題があった。さらに、近年の環境
保護の意識の高まりから、環境や人体に対して、できる
だけ悪影響の少ない方法が要望されている。
【0008】本発明は、ミツバチなど帰巣性のある昆虫
を媒体として、植物体に植物病原菌に拮抗作用を持つ微
生物を散布することにより、上記したような従来の欠点
を解消し、対象としうる病虫害或いは植物が特に限定さ
れず、しかも環境や人体に対して優しい方法で植物病虫
害を効率良く防除することのできる方法を提供すること
を目的とするものである。さらに、本発明は、作業の省
力化が図れると共に、散布する微生物資材の量が少なく
てすみ、しかも、植物などの散布必要箇所に確実に散布
することができ、その結果、病害防除に関するコストを
低減することのできる方法を提供することを目的とする
ものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載された本
発明は、植物体に有用微生物を散布するにあたり、昆虫
を媒体として植物体に有用微生物を散布することを特徴
とする有用微生物散布方法を提供するものである。昆虫
を利用して微生物を散布した例は、これまで全く報告さ
れていない。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明について説明する。
本発明において有用微生物とは、例えば、灰色かび病、
うどんこ病、蛾などによる虫害等、植物の病虫害の防除
に有用な微生物を指す。具体的には、灰色かび病、うど
んこ病などを引き起こす植物病原菌に対して拮抗作用を
持つ微生物や、蛾などの害虫に対して殺虫作用を示す微
生物が挙げられる。そのような有用微生物として、より
具体的には、例えば、バチルス( Bacillus )属に属す
る微生物が挙げられる。
【0011】バチルス( Bacillus )属に属する微生物
としては、植物病原菌と拮抗するものであればよく、例
えば、バチルス・ズブチリス( Bacillus subtilis
)、バチルス・チューリンゲンシス( Bacillus thur
ingiensis )等を挙げることができる。
【0012】ここでバチルス・ズブチリス( Bacillus
subtilis )としては、バチルス・ズブチリス NCI
B12376株菌、同NCIB12616株菌が特に好
ましい。バチルス・ズブチリス NCIB12376株
菌及びNCIB12616株菌は、スコットランド,A
B98DG,アバーディーン( Aberdeen ),アビーロ
ード( Abbey Road )135,P.O.ボックス31の
ナショナル・コレクションズ・オブ・インダストリアル
・アンド・マリン・バクテリア社( National Collecti
ons of Industrial and Marine Bacteria Ltd.)(NC
IB),トリー・リサーチ・ステーション( Torry Res
earch Station )に1986年12月22日付け(NC
IB12376)、1987年12月24日付け(NC
IB12616)で寄託されており、これらの株の性質
は、欧州特許出願公開第27613号公報に記載されて
いる。
【0013】また、バチルス・チューリンゲンシス( B
acillus thuringiensis )としては、バチルス・チュー
リンゲンシス ATCC19268株菌又はATCC1
9269株菌などが特に好ましい。
【0014】本発明においては、上記した有用微生物そ
のもの、例えば、バチルス( Bacillus )属に属する微
生物そのものを用いることもできるが、保存安定性など
の点から、通常は、その胞子を用いる。
【0015】そのような有用微生物の胞子は、有用微生
物の培養物(例えば、バチルス( Bacillus )属に属す
る微生物の培養物)から得られる。有用微生物の培養
は、例えば、往復式震盪培養、ジャーファーメンター培
養、培養タンク培養等の液体培養や固体培養等、微生物
の通常の培養方法(例えば、バチルス( Bacillus )属
に属する微生物の通常の培養方法)に準じて行なうこと
ができる。
【0016】この培養に用いる培地は、胞子を効率よく
形成しやすい培地であればよく、例えば、炭素源とし
て、グルコース,デンプン,デキストリン,シュークロ
ース,糖蜜等の糖類、クエン酸,リンゴ酸等の有機酸
類、グリセリン等のアルコール類を、窒素源として、
アンモニア,硫酸アンモニウム,塩化アンモニウム,硝
酸アンモニウム等のアンモニウム塩や硝酸塩及び酵母エ
キス,コーン・スティープ・リーカー,肉エキス,小麦
胚芽,ポリペプトン.大豆粉等の有機窒素源を、無機
塩として、リン酸,カリウム,カルシウム,マンガン,
マグネシウム,鉄等の塩類、例えば、塩化カリウム,塩
化カルシウム,硫酸マンガン,硫酸第一鉄などを配合す
ることができる。また、必要に応じて消泡剤等の種々の
添加剤を用いることも可能である。
【0017】培養の条件は特に限定されるものではない
が、培養は、固体培養、或いは、通気攪拌や震盪培養等
の好気的条件下で行なわれる液体培養が好ましい。ま
た、培養時の温度は、好ましくは10〜50℃、より好
ましくは15〜45℃であり、pHは、好ましくは4〜
9、より好ましくは6〜8の範囲である。
【0018】上記のようにして得られた有用微生物の培
養物から胞子を分離する方法としては、膜分離、遠心分
離、濾過分離等の方法を用いて行なうことができる。得
られた胞子画分は、そのままある程度の水分を含んだ状
態で使用してもよいし、必要に応じて凍結乾燥、スプレ
ードライ等の乾燥法を用いて、乾燥物として使用するこ
とも可能である。
【0019】次に、昆虫としては、特に制限はなく、帰
巣性を有する昆虫であればよいが、花弁を中心に動き回
り(訪花習性があり)、有用性の高いマルハナバチ亜科
又はミツバチ亜科に属する昆虫が特に好ましい。このよ
うなマルハナバチ亜科又はミツバチ亜科に属する昆虫と
しては、種々のものがあるが、クロマルハナバチ、トラ
マルハナバチ、オオマルハナバチ或いはミツバチが特に
好ましい。
【0020】本発明は、上記の如き有用昆虫の帰巣性を
利用し、有用昆虫の特に足の部分に、予め前記した有用
微生物を付着させておき、この付着した有用微生物を有
用昆虫の足から植物体(特に植物体の花弁)に付着・接
種させることにより、昆虫を媒体として植物体に有用微
生物を散布するものである。
【0021】本発明においては、上記したように、有用
昆虫の特に足の部分に、予め有用微生物を付着させてお
くものである。従って、付着させる有用微生物は、粉末
状態、或いは付着性のある水溶性の物質に懸濁した懸濁
物の状態にあることが好ましい。必要に応じて、有用昆
虫の特に足に付着しやすい成分を含有させるとよい。ま
た、資材中の成分によっては、花弁上での有用微生物の
増殖も期待することができる。有用微生物を粉末状態或
いは付着性のある水溶性物質に懸濁した懸濁物の状態で
用いる場合の有用微生物の濃度は、通常、粉末物或いは
懸濁物の全量の0.5〜30重量%である。
【0022】より効果的に昆虫に有用微生物を付着させ
るために、有用微生物を付着性のある水溶性物質に懸濁
した懸濁物の状態で用いることが、より好ましい。ここ
で付着性のある水溶性物質としては、一般に食品添加物
などに使用されているものであれば特に制限はされな
い。具体的には、アラビアガム,プルラン,ジェランガ
ム,ソアビガム,アルギン酸などの天然多糖類や、オリ
ゴ糖類、ケイ酸アルミニウムなどの無機物、ポリエチレ
ングリコール,プロピレングリコール,グリセロールな
どの多価アルコール及びそのポリマー、ポリビニルアル
コール,ポリビニルピロリドン,ポリアクリル酸などの
合成水溶性高分子、カルボキシメチルセルロースナトリ
ウム,メチルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセ
ルロース,ヒドロキシエチルメチルセルロースなどのセ
ルロース誘導体、ショ糖と各種油脂の脂肪酸がエステル
結合したショ糖脂肪酸エステル、ピロリン酸,トリポリ
リン酸ナトリウム,ピロリン酸ナトリウム,メタリン酸
ナトリウムなどのリン酸、及びリン酸塩などを挙げるこ
とができる。
【0023】また、有用微生物を粉末状態で用いる場合
には、担体、微生物の栄養源などを添加してもよい。こ
の場合に用いる担体としては、固体担体が好ましい。そ
のような固体担体としては、例えば、カオリンクレー,
パイロフェライトクレー,ベントナイト,モンモリロナ
イト,珪藻土,合成含水酸化ケイ素,酸性白土,タルク
類,粘土,セラミック,石英,セリサイト,バーミキュ
ライト,パーライト,大谷石,アンスラ石,石灰岩,石
炭灰,ゼオライト等の鉱物質微粉末や、籾殻,フスマ,
カニ殻,エビ殻,オキアミ微粉末,米糠,小麦粉,トウ
モロコシ穂軸,落花生殻,骨粉,魚粉,粕粉,鋸屑,木
粉,炭,くん炭,バーク炭,籾殻くん炭,草木灰,ピー
トモス,アタパルジャイト,乾燥畜糞,活性炭,油粕等
の有機物微粉末などを挙げることができる。
【0024】上記したように、有用微生物を粉末状態或
いは付着性のある水溶性物質に懸濁した懸濁物の状態で
用いる場合の有用微生物の量は、有用微生物の胞子量に
換算すると、粉末では、105 cfu/g〜1015cf
u/g、好ましくは107 cfu/g〜1013cfu/
g、より好ましくは109 cfu/g〜1013cfu/
gである。また、懸濁物では、105 cfu/mL〜1
15cfu/mL、好ましくは107 cfu/mL〜1
13cfu/mL、より好ましくは109 cfu/mL
〜1013cfu/mLである。
【0025】具体的に有用昆虫の特に足の部分に、予め
前記した有用微生物を付着させるには、有用昆虫が巣か
ら出るときに、その足に付着させることができるよう
に、有用昆虫の巣箱入口に、有用微生物を入れる箱を取
付けておくとよい。有用微生物を入れる箱の大きさは、
巣の大きさに合わせて変更可能である。但し、箱の深さ
は、使用する有用昆虫(例えば、ミツバチ)の足の長さ
を下回るようにしておく必要がある。箱の深さは、使用
する有用昆虫の足の長さに応じて異なるが、通常は、1
〜5mm程度である。
【0026】また、箱の内部への有用微生物の施用方法
は、特に制限はなく、粉末状態或いは付着性のある水溶
性物質に懸濁した懸濁物(懸濁液)の状態の有用微生物
を、そのまま箱の内部へ置いても構わない。この他、箱
の内部に、不織布、ガラス繊維等を置き、その上に有用
微生物の粉末を置いたり、或いは懸濁液をしみ込ませる
などの方法も可能である。懸濁液の状態で有用微生物を
用いる際には、箱内の懸濁液が乾燥せず、常に湿ってい
る状態であることが望ましい。例えば、懸濁液を入れた
ボトルを逆さにして箱の隅に設置し、一定量の懸濁液が
補給されるような形態などをとることが望ましい。さら
に、箱を巣に取り付ける際には、箱の一部が巣の内部に
入るように工夫されていることが望ましい。
【0027】なお、本発明の対象となる植物病虫害とし
ては、特に制限はないが、花弁から果実に感染し、作物
の収量の低下等の被害を及ぼす灰色かび病害、うどんこ
病害、蛾などによる虫害等に特に有効である。
【0028】また、本発明の方法は、対象となる植物へ
の影響は殆どないため、対象となる植物については、花
弁を有する植物であれば特に制限はない。特に灰色かび
病害、うどんこ病害、蛾などによる虫害等の被害を受け
るトマト、ナス、キュウリ、イチゴ、ブドウなどに対し
て有効である。
【0029】以上の如き本発明によれば、有用昆虫の帰
巣性を利用し、有用昆虫の特に足の部分に、予め有用微
生物を付着させておき、有用昆虫自身の採餌行動を利用
して、この付着した有用微生物を有用昆虫の足から植物
体(特に植物体の花弁)に付着・接種させることによ
り、昆虫を媒体として植物体に有用微生物を散布し、植
物病虫害を防除するのである。
【0030】
【実施例】次に、本発明を実施例により詳しく説明す
る。
【0031】製造例1〔バチルス属に属する微生物の胞
子画分(湿菌体)の調製〕 バチルス・ズブチリス( Bacillus subtilis )NCI
B12376株の保存菌を斜面培養したものを、一白金
耳採取して、ブイヨン培地(肉エキス1重量%、ペプト
ン1重量%、NaCl 10.5重量%含有、pH6.
8)100mLの入った坂口フラスコ(500mL容)
に植菌した。植菌後、振幅10cm、回転数120rp
mの往復振盪機を用いて振盪させながら、30℃で1日
間培養し、培養物を得た。得られた培養物300mLを
培地(グルコース2重量%、ポリペプトン1重量%、酵
母エキス0.2重量%、KH2PO4 0.1重量%、pH6.
8)15Lの入った30L容の発酵槽に植菌し、好気的
条件下、30℃で72時間培養した。得られた培養液約
15Lを、常法に従って遠心分離(6000rpm、2
0分間)して、培養上清と菌体沈殿物とに分離した。
【0032】菌体沈殿物を水で洗浄し、湿重量約780
gの湿菌体(胞子画分)を得た。この胞子画分は、バチ
ルス・ズブチリスNCIB12376株の胞子を、乾燥
重量で100重量%含有するものである。この胞子画分
を用いて、以下の製造例2および製造例3を行なった。
【0033】製造例2〔胞子粉末の調製〕 上記製造例1で得られたバチルス・ズブチリスNCIB
12376株の胞子画分約600gを水3Lに懸濁後、
スプレードライヤー(ニロジャパン社製)にて1.5〜
2L/hrの流速で乾燥処理した(入口温度150℃、
出口温度100℃)。得られた乾燥物を粉砕することに
より、乾燥重約78gの胞子粉末を得た。
【0034】製造例3〔胞子懸濁液の調製〕 製造例2で得られた胞子粉末10重量部に対して、ポリ
ビニルアルコール30重量部、水60重量部を加え、よ
く攪拌し、ポリビニルアルコールを含む胞子懸濁液を得
た。
【0035】製造例2で得られた胞子粉末と、製造例3
で得られた胞子懸濁液を用いて、以下の試験を行なっ
た。
【0036】試験例1〔イチゴ灰色かび病に対する防除
効果試験〕 イチゴ(品種名:女峰、播種後42日目に定植)を用い
て、イチゴ灰色かび病に対する防除効果を調べた。試験
は、大型ビニルハウス内で行ない、ミツバチ放飼区で
は、受粉専用ミツバチ(発売元:片倉工業株式会社)1
枚群を用い、ミツバチが他区へ移動しないように、寒冷
紗で隔離した。本発明区は、ミツバチ放飼区として、製
造例2の胞子粉末区及び製造例3の胞子懸濁液区の2区
を設けた。製造例2の胞子粉末区におけるバチルス属に
属する微生物の量は、胞子量に換算すると、109 cf
u/gであった。また、製造例3の胞子懸濁液区におけ
るバチルス属に属する微生物の量は、胞子量に換算する
と、1012cfu/mLであった。また、対照区とし
て、化学合成殺菌剤イプシロジオン(商品名:ロプラー
ル、日産化学社製)をスプレーで散布した化学剤散布区
と、無処理区の2区を設けた。なお、無処理区でも、ミ
ツバチの放飼いを行なった。
【0037】本発明区においては、薬剤をミツバチに付
着させるために、巣箱の巣門に、引き出し式のカートリ
ッジを取り付けた。カートリッジの取付けは、ミツバチ
の学習期間を考慮して、試験開始2週間前に実施した。
本発明区の内の胞子懸濁液区では、カートリッジ中の不
織布が、製造例3の胞子懸濁液により常に濡れている状
態にしておき、不織布上をミツバチが歩行するとき、胞
子懸濁液が体毛に付着するようにした。胞子懸濁液の交
換は、2日に1回実施した。また、本発明区の内の胞子
粉末区では、カートリッジ中の不織布上に、製造例2の
胞子粉末0.3gを均一になるように置き、不織布上を
ミツバチが歩行するとき、胞子粉末が体毛に付着するよ
うにした。胞子粉末は、毎日交換した。
【0038】一方、対照区である化学剤散布区において
は、前記化学合成殺菌剤をハンドスプレーを用いて、1
a当たり15Lの割合で散布した。散布は、7日に1回
実施した。
【0039】試験開始20日後及び35日後に、各試験
区80株の発病果率を調査した。その調査結果を第1表
に示す。
【0040】
【表1】
【0041】第1表によれば、本発明区(胞子粉末区と
胞子懸濁液区)の発病果率は、対照区である無処理区よ
りもかなり低く、化学剤散布区と同程度か、それ以下で
あることが分かる。特に、胞子懸濁液区の発病果率は、
化学剤散布区よりも低いことが分かる。このことから、
本発明の方法のイチゴ灰色かび病に対する防除効果は、
化学剤を散布した場合と同程度か、或いは、それ以上の
高いものであることが明らかとなった。
【0042】また、供試薬剤の目的部位への運搬状況を
調査するために、胞子懸濁液区において、花弁、葉面及
び果実について、希釈寒天平板法を用い、微生物の検出
を行なった。検出結果を第2表に示す。
【0043】
【表2】 *:「 1.0×103未満」は、検出限界以下であることを示す。
【0044】第2表より、以下のことが分かる。対照区
(化学剤散布区及び無処理区)では、いずれの部位でも
微生物はほとんど検出されなかった。一方、本発明区
(胞子粉末区と胞子懸濁液区)では、花弁のみに特異的
に多量の微生物が検出された。さらに、胞子粉末区と胞
子懸濁液区との花弁における微生物付着量を比較する
と、胞子懸濁液区の方が多く検出された。以上から、ミ
ツバチは、確実に目的とする花弁に微生物を運搬するこ
とが確認された。しかも、葉面や果実には、運搬されな
いか、運搬されてもごく微量であった。
【0045】また、確実にミツバチが訪花し、薬剤が運
搬処理された前歴を持つ果実の発病状況を調査した。胞
子懸濁液区において、開花盛期30花及び花弁は落下し
ているが、雄ずい、雌ずいが黄色〜黄褐色で、ミツバチ
が飛来する20花にラベルし、30日後の発病果率を調
査した。その結果を第3表に示す。
【0046】
【表3】
【0047】第3表の結果は、本発明区(胞子懸濁液
区)の発病果率が、対照区(無処理区)と比較して非常
に低いことを示している。以上から、ミツバチが確実に
訪花した果実の発病が著しく少なく、本発明の方法の防
除効果が非常に高いものであることが確認された。
【0048】試験終了後に、供試ミツバチ残存虫数を数
え、胞子懸濁液のミツバチへの影響を調査した。結果を
第4表に示す。
【0049】
【表4】
【0050】第4表によれば、ミツバチの残存数は、本
発明区(胞子懸濁液区)と対照区(無処理区)で、ほぼ
同じであった。従って、本発明の方法によるミツバチの
生存に対する影響は少ないと認められた。
【0051】試験例2〔トマト灰色かび病害に対する防
除効果試験〕 トマト(品種名:ハウス桃太郎、播種後50日目に定
植、試験区:25m2/区、2反復)を用いて、トマト灰
色かび病に対する防除効果を調べた。試験は、大型ビニ
ルハウス内で行ない、マルハナバチ放飼区では、マルハ
ナバチ(発売元:東海物産株式会社)を用い、マルハナ
バチが他区へ移動しないように、寒冷紗で隔離した。本
発明区はマルハナバチ放飼区として、製造例3の胞子懸
濁液区を設けた。製造例3の胞子懸濁液区におけるバチ
ルス属に属する微生物の量は、胞子量に換算すると、1
12cfu/mLであった。また、対照区として、ベン
ズイミダゾール(商品名:ベンレートT水和剤、デュポ
ン社製)をスプレーで散布した薬剤散布区と、無処理区
の2区を設けた。なお、無処理区でも、マルハナバチの
放飼いを行なった。
【0052】試験区(マルハナバチ放飼区)である胞子
懸濁液区においては、胞子懸濁液をマルハナバチの足に
付着させて運搬させるために、巣箱の巣門に、深さ3m
mの箱を設置し、マルハナバチの足に胞子懸濁液が付着
するように、箱内に懸濁液を深さ3mmとなるように満
たした。箱の隅には、懸濁液を充填したボトルを、出口
を下にして(逆さにして)設置し、常に箱内に懸濁液が
補給される状態にした。
【0053】一方、対照である薬剤散布区においては、
ハンドスプレーを用いて、1a当たり250Lを散布し
た。散布は、7日に1回実施した。
【0054】試験開始40日後に、各試験区より100
果を抽出(1反復当たり50果)し、果実のへた部分及
び果実表面における発病の有無により、発病果率を算出
した。また、発病果率より、各区での防除価を算出し
た。防除価は、次式により算出した。なお、調査後の果
実は除去した。
【0055】
【数1】
【0056】発病果率及び防除価を第5表に示す。
【0057】
【表5】
【0058】第5表によれば、本発明区(胞子懸濁液
区)は、対照区である無処理区よりも圧倒的に低い防除
果率を示していることが分かる。さらに、対照区である
薬剤散布区と比較しても、防除価率が低く、高い防除価
を示す。このことから、本発明の方法は、トマト灰色か
び病に対し、非常に高い防除効果を示し、しかも、薬剤
を散布した場合よりも高いものであることが明らかとな
った。
【0059】
【発明の効果】本発明は、ミツバチなど帰巣性のある昆
虫を媒体として、植物体に植物病原菌に拮抗作用を持つ
微生物を散布するものである。即ち、本発明は、有用昆
虫の帰巣性を利用し、有用昆虫の特に足の部分に、予め
有用微生物(特に、その胞子)を付着させておき、有用
昆虫自身の採餌行動等を利用して、この付着した有用微
生物を有用昆虫の足から植物体(特に植物体の花弁)に
付着・接種させることにより、昆虫を媒体として植物体
に有用微生物を安全かつ確実に散布し、植物病虫害を効
果的に防除することができる。
【0060】本発明は、対象としうる病虫害或いは植物
が特に限定されず、しかも環境や人体に対して優しい方
法で植物病虫害を効率良く防除することができる。本発
明は、環境への悪影響が小さい。次に、本発明によれ
ば、ミツバチなど、花弁を中心に活動する昆虫(訪花習
性のある昆虫)を用いることにより、植物体の花弁のみ
に集中的に有用微生物を散布(付着)することができ、
植物体の花弁のみの防除が可能である。従って、花弁か
ら果実に感染し、作物の収量の低下等の被害を及ぼす灰
色かび病害、うどんこ病害、或いは蛾などによる虫害等
の植物病虫害を効果的に防除することができる。また、
本発明によれば、人力或いは機械力による散布が不要で
あり、作業の省力化が図れると共に、散布する微生物資
材の量が少なくてすみ、しかも、植物などの散布必要箇
所に確実に散布することができ、その結果、病害防除に
関するコストを低減することができる。しかも、周囲へ
の飛散も防止される。
【0061】さらに、本発明で用いる有用微生物は、昆
虫に対して悪影響を与えるおそれが殆どなく、また、対
象となる植物への影響も殆どない。従って、高濃度の有
用微生物の散布が可能である。
【0062】それ故、本発明は、特に灰色かび病害、う
どんこ病害、蛾などによる虫害等の被害を受けるトマ
ト、ナス、キュウリ、イチゴ、ブドウなどに対して有効
であり、農園芸分野等において広く利用することができ
る。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 植物体に有用微生物を散布するにあた
    り、昆虫を媒体として植物体に有用微生物を散布するこ
    とを特徴とする有用微生物散布方法。
  2. 【請求項2】 有用微生物が、植物の病虫害防除に有用
    な微生物である請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 有用微生物が、バチルス( Bacillus
    属に属する微生物である請求項1記載の方法。
  4. 【請求項4】 バチルス( Bacillus )属に属する微生
    物が、バチルス・ズブチリス( Bacillus subtilis
    である請求項3記載の方法。
  5. 【請求項5】 バチルス( Bacillus )属に属する微生
    物が、バチルス・チューリンゲンシス( Bacillus thur
    ingiensis )である請求項3記載の方法。
  6. 【請求項6】 昆虫が、帰巣性を有する昆虫である請求
    項1記載の方法。
  7. 【請求項7】 帰巣性を有する昆虫が、マルハナバチ亜
    科又はミツバチ亜科に属する昆虫である請求項6記載の
    方法。
  8. 【請求項8】 マルハナバチ亜科又はミツバチ亜科に属
    する昆虫が、クロマルハナバチ、トラマルハナバチ、オ
    オマルハナバチ、或いはミツバチである請求項7記載の
    方法。
  9. 【請求項9】 有用微生物がバチルス・ズブチリス( B
    acillus subtilis)であり、かつ昆虫がマルハナバチ亜
    科又はミツバチ亜科に属する昆虫である請求項1記載の
    方法。
JP10140460A 1997-05-08 1998-05-08 有用微生物散布方法 Withdrawn JPH1121209A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10140460A JPH1121209A (ja) 1997-05-08 1998-05-08 有用微生物散布方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9-133021 1997-05-08
JP13302197 1997-05-08
JP10140460A JPH1121209A (ja) 1997-05-08 1998-05-08 有用微生物散布方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH1121209A true JPH1121209A (ja) 1999-01-26

Family

ID=26467466

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP10140460A Withdrawn JPH1121209A (ja) 1997-05-08 1998-05-08 有用微生物散布方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH1121209A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6280664B1 (ja) * 2017-05-09 2018-02-14 千葉県 病害虫防除方法、病害虫防除資材、病害虫防除資材の生産方法、病害虫防除資材の生産装置、病害虫防除資材の搬送方法、病害虫防除資材の放飼方法、及び病害虫防除資材の圃場定着方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6280664B1 (ja) * 2017-05-09 2018-02-14 千葉県 病害虫防除方法、病害虫防除資材、病害虫防除資材の生産方法、病害虫防除資材の生産装置、病害虫防除資材の搬送方法、病害虫防除資材の放飼方法、及び病害虫防除資材の圃場定着方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Burges Formulation of mycoinsecticides
US20210307333A1 (en) Methods and compositions for improving corn yield
Fravel et al. Formulation of microorganisms to control plant diseases
KR0145740B1 (ko) 고정화 미생물 농약과 그의 제조방법
US10993443B2 (en) Methods and compositions for improving soybean yield
US5288488A (en) Method of controlling foliar microorganism populations
CN108603161A (zh) 具有有益活性的芽孢杆菌菌株及制剂
Green et al. Formulating microorganisms for biological control of weeds
JPH08175921A (ja) 農園芸用殺菌剤組成物
Lahdenperä The control of Fusarium wilt on carnation with a Streptomyces preparation
WO2020262612A1 (ja) 植物病害防除剤及び植物病害防除法
JP2714681B2 (ja) 土壌病害の防除剤および土壌病害の防止方法
JP3554592B2 (ja) バチルス属胞子画分及びその胞子画分を利用する植物病害防除法
JPH08301713A (ja) シロアリ駆除剤及びそれを用いたシロアリ駆除方法
WO2015175372A1 (en) A sprayable dispersed starch-based bioplastic formulation to control pests
JP7395257B2 (ja) 昆虫寄生菌を用いた害虫防除資材およびそれを用いた害虫防除方法
Kapoor Biocontrol potential of Trichoderma spp. against important soilborne diseases of vegetable crops
JP3527557B2 (ja) 農園芸用殺菌剤組成物
RU2648163C1 (ru) Штамм Bacillus mojavensis Lhv-97, обладающий фунгицидной и бактерицидной активностью
JPH1121209A (ja) 有用微生物散布方法
JP2003089612A (ja) 植物病害の防除方法
JP3986726B2 (ja) 農薬の散布方法
RU2808722C1 (ru) Штамм бактерий bacillus amyloliquefaciens, обладающий фунгицидным и бактерицидным действием, и биологический препарат на его основе для защиты овощных растений от грибных и бактериальных болезней
JPH09140373A (ja) エキセロヒルム・モノセラスに属する新規な菌株及びその用途
RU2080065C1 (ru) Бактериальный инсектицид для борьбы с чешуекрылыми

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Application deemed to be withdrawn because no request for examination was validly filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20050802