JPH11209490A - 防汚性能を兼ね備えたハードコート層の製造方法 - Google Patents

防汚性能を兼ね備えたハードコート層の製造方法

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JPH11209490A
JPH11209490A JP10026682A JP2668298A JPH11209490A JP H11209490 A JPH11209490 A JP H11209490A JP 10026682 A JP10026682 A JP 10026682A JP 2668298 A JP2668298 A JP 2668298A JP H11209490 A JPH11209490 A JP H11209490A
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coating
electron beam
irradiation
coating film
ratio
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JP10026682A
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English (en)
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Koji Nakai
康二 中井
Kosaku Yamada
功作 山田
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Hayakawa Rubber Co Ltd
Nissin High Voltage Co Ltd
Original Assignee
Hayakawa Rubber Co Ltd
Nissin High Voltage Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 基材を劣化させず透明性を損なうことなく、
プラスチック基材に防汚性と耐擦傷性を付与する加工方
法を提供する事。 【解決手段】アルキルフルオロアクリレートAと官能基
数が3以上のアクリル単量体を50%以上含むアクリル
系単量体Bと溶剤Cからなる材料を、プラスチック基材
に塗布し、5Mrad以下の線量の電子線を照射し、さ
らに50mJ/cm2 以上の紫外線を照射することによ
って塗膜を硬化させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラスチック基材
に高度の防汚性をもたせ、しかもプラスチック基材を劣
化させず透明性を損なわないハードコート層の製造方法
に関する。ハードコート層であるから、皮膜自体が硬質
でなければならない。さらに防汚性が必要とされる。硬
質性と防汚性は相反する性質である。また液状の材料を
硬化させるとき基材自体を劣化させてはならない。透明
は基材の場合は、透明性を損なって(失透)はならな
い。つまり基材を劣化、失透させることなく、硬質性と
防汚性を備えるハードコート層を形成する新規な方法に
関する。
【0002】更に詳しく言えば、本発明は、含フッ素単
量体を含むアクリル単量体と溶剤からなる組成物をプラ
スチック基材に塗布後、まず電子線を照射しついで紫外
線の照射を行うことにより、高度の防汚性を兼備したハ
ードコート層を製造する方法である。
【0003】
【従来の技術】表面に傷が付いたり、汚れが付着するの
を嫌う材料は極めて多い。しかも透明で硬質であって、
傷、汚れを忌避する材料は広範に存在する。例えば建築
材料、インテリア材料、包装材料、自動車などのランプ
カバーやショーケース、眼鏡など広範囲の技術分野に見
ることができる。傷、汚れを防ぐために、硬質の皮膜を
材料の上に被覆する。このような傷、汚れを防ぐための
加工を必要とする産業分野は極めて広い。
【0004】従来より材料を被覆する加工として防汚加
工及びハードコート加工がある。防汚加工というのは基
材の表面に撥水性、撥油性などの性質を付与することに
より汚れ難くし、或いは汚れても容易に取り除くことが
できるようにするものである。ハードコート加工という
のは基材の表面に硬質の皮膜を形成し基材が傷つき難く
するものである。これらは互いに相反する性質を持って
いる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】防汚加工と、ハードコ
ート加工はそれぞれ独立した別々の加工方法として知ら
れているものである。一方は基材を汚れから守るもの
で、他方は基材を外部からの衝撃から守るものだからで
ある。二つの加工法はそもそも目的が異なる。だから一
般には防汚加工とハードコート加工の対象物は異なるの
が普通である。ところが、建築材料、インテリア材料な
どで、汚れず傷つきにくいといった性質が要求されるも
のがある。
【0006】そこで、防汚加工とハードコート加工の双
方を合体させた様な効果を持つ加工法が要望される。防
汚性賦与と硬質性賦与という、両者の機能を兼備した加
工方法として本発明者は、特別な塗膜材料を電子線で硬
化させる方法を嘗て発明した(特開平6−211945
号)。これは少量のアルキルフルオロアクリレートとア
クリル系単量体と溶剤を含む混合物を材料として基板に
塗布し電子線を照射して混合物材料を硬化させるもので
ある。電子線によってアクリル系単量体が重合し溶剤が
蒸発して硬質の被膜を作る。アルキルフルオロアクリレ
ートはフッ素化合物であるから、電子線によって硬化し
表面に防汚性を与える。アクリル系単量体によって硬質
性が、アルキルフルオロアクリレートによって防汚性が
与えられる。アルキルフルオロアクリレートはおもに表
面に偏在するので表面の防汚性が向上する。
【0007】巧みなハードコート層の加工方法である。
しかしこの方法にも欠点があった。塗膜の厚みによって
は電子線を10Mrad近くも照射しなければならない
こともある。電子線照射量が多いと、プラスチック基材
の種類によっては、著しく劣化するものがある。また電
子線照射量が多いと基材の透明性が失われる。透明性が
重視される材料であって透明な製品に使われる場合、失
透ということは致命的である。例えば自動車のランプカ
バーのプラスチック基材の場合は、少しでも透明性が低
下するともはや使いものにならない。透明な基材の場
合、塗膜硬化のために電子線照射によって失透すること
がある。電子線によってのみ塗膜を硬化させる前記の発
明はランプカバーなどのハードコート加工には不向きで
あった。
【0008】ランプカバーのプラスチックの透明被覆の
他に、ショーケースなどのプラスチック板のコ−ティン
グにおいても透明性の確保は重要な要件である。塗膜を
十分に硬化させるには、高い線量の電子線照射が必要で
あるが、そうすると塗膜の下地である基材が劣化したり
失透したりする。つまり特開平6−211945号の方
法は、プラスチック基材の種類によっては、基材を劣化
させたり透明性を損なってしまう可能性のある加工方法
である。プラスチック基材が劣化せず透明性を損なうこ
となく、その表面に防汚加工とハードコート加工を同時
に施すことができれば理想的である。そのような加工方
法が多方面から渇望されていた。
【0009】プラスチック基材を劣化、失透させること
なく、樹脂の塗膜を硬化させ、防汚性と硬質性の両方に
秀でた被覆を作製する方法を提供する事が本発明の第1
の目的である。従来にない高度の防汚性を備えた被膜を
形成する方法を提供する事が本発明の第2の目的であ
る。生産性の高い硬質被膜の形成方法を提供する事が本
発明の第3の目的である。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、プラスチ
ック基材を劣化、失透させずに、その表面に防汚性・撥
水性とハードコート性を兼備した塗膜を形成する方法を
求めて、鋭意研究を重ねた。その結果、アルキルフルオ
ロアクリレートとこれと相溶性のない多官能アクリレー
トを主体とするアクリレート及びこれらに対しそれぞれ
相溶性のある溶剤との混合組成物をプラスチック基材に
塗布し、まず一定線量以下の電子線照射によって混合物
を予備硬化(一次硬化)させ、次に紫外線照射によって
最終硬化(二次硬化)を行うという、2段階硬化による
方法を発明した。電子線と紫外線の2段階照射によって
基材の透明性、高品質を損なわず、防汚性、硬質性を兼
備した塗膜形成を行うことができる。
【0011】本発明のハードコート塗膜の製造方法は
(1)プラスチック基材の上に、(2)次の3つの成
分、 A:アルキルフルオロアクリレート B:前記Aと相溶性がなく、且つ官能基を3個以上有す
るアクリル単量体を少なくとも50%含むアクリル系単
量体 C:前記A及びBとそれぞれ相溶性を有する溶剤 からなり、前記A対Bの比率が0.5〜10:99.5
〜90.0、前記AとBの総量対Cの比率が90〜5
0:10〜50である混合組成物を1〜15μmの厚さ
に塗布し、(3)5Mrad以下の線量の電子線を照射
して、溶剤を蒸発させ、混合組成物を弱く硬化させ、
(4)50mJ/cm2 以上の線量の紫外線を照射して
混合組成物を完全に硬化させる、ようにしたものであ
る。
【0012】1段目の硬化条件は、電子線を5Mrad
以下の条件で照射することにより、前記混合組成物中の
溶剤の蒸発と前記プラスチック基材上の塗膜を弱く硬化
させる。
【0013】2段目の硬化条件は、紫外線を50mJ/
cm2 以上の条件で照射することにより、前記プラスチ
ック基材上の塗膜を完全に硬化させることを特徴とする
ものである。
【0014】図1〜図4に本発明のハードコート層製造
行程を示す。図1は出発点となるプラスチック基材1を
示す。平板だけでなく曲率をもつ板であってもよい。形
状や寸法は任意である。材料は後に述べるように適当な
プラスチックである。建築材料、ランプカバー、ショー
ケース、眼鏡など任意のプラスチック基材を意味してい
る。図2はプラスチック基材の上に、アルキルフルオロ
アクリレートA、アクリル系単量体B、溶剤Cよりなる
混合組成物の材料を塗布した状態を示している。塗膜は
この状態では液状である。この塗膜に5Mrad以下の
線量の電子線を照射する。図3にこれを示す。これが予
備硬化(一次硬化)である。電子線照射により溶剤が蒸
発しアルキルフルオロアクリレートが表面近くに偏在し
ラジカルを発生させ半ば硬化させて活性点を残しておく
ようにする。5Mrad以下に限定するのは、基材が劣
化失透しないためである。電子線が強いと、基材自体が
劣化したり、透明な基材の場合は失透したりする。これ
を避けるために5Mrad以下にする。
【0015】次に50mJ/cm2 以上の光量の紫外線
を照射する。これによって塗膜を完全に硬化させる(二
次硬化)。50mJ/cm2 以下であると塗膜が完全に
硬化しないことがある。それで50mJ/cm2 以上と
する。これを図4に示す。このように2種類の放射線に
よって2段階硬化を行う点に本発明の特徴がある。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明のハードコート加工方法
は、特殊な材料を塗布し、電子線と紫外線の両方を順に
照射する点にある。2段階照射によって、基材の劣化失
透を防ぎつつ塗膜に防汚性と硬質性(ハードコート性)
を賦与する。以下、本発明の構成に係わる技術内容、事
項について詳細に説明する。
【0017】(1)機能発揮の原理 A、B、Cの混合物塗膜を電子線によって硬化させるこ
とによって、防汚性と防傷性ないし耐擦傷性とを兼備し
た塗膜形成がなされるという原理は、本発明者の先願で
ある前記の特願平5−23529号(特開平6−211
945号)でも述べた通りである。
【0018】硬質性、耐擦過性に優れた皮膜を作るには
官能基を多く持つ単量体を固化させればよい。そのため
に3官能基以上のアクリル系単量体Bを電子線によって
硬化させる。官能基が強固に結合するので硬質の皮膜と
なる。ハードコート性はアクリル系単量体Bによって獲
得できる。しかしアクリル系単量体だけでは汚れを防ぐ
ことができない。
【0019】アルキルフルオロアクリレートはフッ素を
含むので、硬化した場合防汚性に優れた膜となるはずで
ある。しかしフッ素を含むだけに液体状態で基材に塗布
しても濡れ性が悪くて弾かれてしまう。たとえ基材表面
を覆った状態で硬化させることができたとしてもその膜
は基材との密着性が悪い。また非常に高価な材料である
ため大量に使用するのは望ましくない。
【0020】そこで、アクリル系単量体Bと、アルキル
フルオロアクリレートAを併用するのであるが、そのま
ま混合しても互いに混じりあわないので一様な液状原料
にならず基材に塗布できない。AとBは互いに不溶の材
料だからである。そこで本発明者は、両方を溶かすこと
のできる溶剤Cを用いた。CにAとBとを溶かして液体
の原料として基材に塗布する。
【0021】電子線を液体原料に照射すると溶剤は蒸発
しAとBだけ残る。Bは官能基の結合によって硬質皮膜
を生成し、Aを表面近くへ押しやる。表面近くに濃縮し
て存在するAは硬化して防汚性に優れた最外層を形成す
る。Aが表面に偏在するのでAの割合がわずかであって
も防汚性は充分である。このように、前記の方法は電子
線単独照射によって防汚性、硬質性(ハードコート性)
の両方を満足できる。
【0022】しかし、その方法には強力な電子線の照射
によって新たな問題を生じた。電子線により塗膜を完全
硬化させるには、最低限5Mrad以上のパワーが必要
である。電子線は塗膜に当たるだけでなくその下地であ
る基材にまで到達し基材にも化学的、物理的な変化を与
えることがある。塗膜だけでなく、基材も電子線被爆す
る。
【0023】このような条件(5Mrad以上)でプラ
スチック基材が照射されると、基材の種類によっては劣
化しあるいは着色し(きれいな透明でなくなり)製品価
値が低下する。ときには商品として使用できなくなる。
【0024】本発明はそこで電子線単独照射でなく、2
段階照射を行うことにした。第1段階は電子線を、第2
段階では紫外線を塗膜に照射する。第1段階の電子線照
射は、プラスチック基材を劣化させず透明性を損なわな
い条件で照射する。その主な目的は、アルキルフルオロ
アクリレートAが塗膜表面に偏在するようにさせ、溶剤
を蒸発させることである。第2段階の紫外線照射では、
A、Bともに硬化し塗膜が完全に硬化する条件での照射
を行う。
【0025】[第1段階電子線照射] 第1段階の電子
線照射は、プラスチック基材に劣化、失透(着色)しな
い程度で、かつアルキルフルオロアクリレートを塗膜表
面に偏在させるだけのための照射である。基材を劣化着
色(失透)させないために5Mrad以下の線量とす
る。下限は0.5Mrad程度である。電子線照射によ
りアクリル系単量体Bがアルキルフルオロアクリレート
Aを表面近くへ押し出すので表面近傍にアルキルフルオ
ロアクリレートAが局在する。表面に局在したアルキル
フルオロアクリレートがフッ素原子の特徴である防汚
性、撥水性、撥油性などの機能を十二分に発揮する。一
方電子線が弱いので、アクリル系単量体の官能基同志の
結合が不十分である。塗膜中に活性点をなお多く残して
いる。
【0026】[第2段階紫外線照射] 第2段階の紫外
線照射では、光重合開始剤と紫外線の作用による塗膜の
硬化と、電子線による残留した活性点での紫外線による
硬化が平行して同時に起こる。これらにより塗膜を完全
に硬化させる。電子線による単独硬化や紫外線での単独
硬化よりも塗膜が高度に硬化する。また基材に悪影響を
及ぼさないで塗膜だけを硬化させることができる。本発
明は、2段階硬化により、基材の着色劣化失透なしに、
塗膜に防汚性や耐擦傷性と与えることができるという卓
越した効果が得られる。
【0027】ここで言う活性点とは、例えばラジカルや
ラジカルに大気中の酸素が結合した過酸化物を意味す
る。電子線照射によって活性点が大量に発生する。これ
が起点となって、紫外線照射により高分子材料が(特に
光重合開始剤の存在の下に)反応を起こし、重合や架橋
を起こす。
【0028】電子線照射は分子の結合エネルギーに比べ
て桁違いに大きなエネルギーを被処理物に与えることが
でき、そのため、塗膜全体を硬化させるに充分な量のラ
ジカルを直接発生させることができる。また、ラジカル
の発生量は照射量に比例するため、電子線照射量によっ
て、硬化反応の強弱などの制御が容易に行える。しか
し、瞬間硬化であるため発生したラジカルの全てが硬化
反応を起こすのではない。幾分かのラジカルは塗膜中に
活性点として残留する。
【0029】原料の混合組成物に単に紫外線照射して
も、紫外線のエネルギーだけでは、硬化反応は生じにく
い。そこで、あらかじめ光重合開始剤を添加しておくの
が好ましい。紫外線のエネルギーで光重合開始剤がラジ
カルを発生し、そのラジカルの作用によって塗膜が表面
層から順次深部へと硬化して行く。従って、光重合開始
剤からラジカルが一度発生するとその反応は電子線照射
に比べて遅い。紫外線照射を終了した後も反応は継続的
に徐々に進行する。そのため紫外線照射で引き起こされ
た反応を中断する事は難しい。ラジカルが無くなるまで
重合反応は続く。従って、本発明と逆の順序(1段階紫
外線+2段階電子線)での照射方法では高度なハードコ
ート塗膜の製造は不可能である。
【0030】(2)本発明における使用原材料について
の説明 プラスチック基材 シート状、フィルム状、板状であれば良い。その材質
は、ポリカーボネイト、アクリル、ポリ塩化ビニル、ナ
イロン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテ
レフタレート、ポリプロピレンなどがある。
【0031】アルキルフルオロアクリレート(A) 撥水、撥油性の防汚機能をもたらすアルキルフルオロア
クリレートとしては、トリフルオロエチル(メタ)アク
リレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレー
ト、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘ
プタデカフルオロデシル(メ夕)アクリレートなどがあ
げられる。本発明では、アルキルフルオロアクリレート
Aを、アクリル単量体Bとの混合物において、0.5%
〜10%含む原料を用いる。
【0032】アクリル系単量体(B) アクリル単量体というのはアクリロイル基を含む単量体
のことである。アクリロイル基というには、−CO−C
H=CH2 のことである。ここで単量体というのは一般
にモノマーと呼ばれているものと、オリゴマーと呼ばれ
ているものとを含むものとする。そして本発明に用い得
るアクリル系単量体は先に述べたアルキルフルオロアク
リレートと相溶性がないものとする。相溶性のあるもの
を用いると満足すベき防汚性のある硬化皮膜が得られな
い。本発明は官能基(アクリロイル基)の数Nが、3以
上のもの(X)を50%以上、Nが1、2のもの(Y)
を50%未満含む材料を使う。つまりX/Y≧1であ
る。
【0033】本発明において使用されるアクリル系単量
体について次に例示する。 (X)官能基を3個以上有するアクリル系単量体(N≧
3) トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリ
スリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテ
トラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアク
リレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレー
ト、ジペンタエリスリトールカプロラクトン付加物ヘキ
サアクリレート及びそれらの変成物、官能基3個以上の
エポキシアクリレートオリゴマー、官能基3個以上のポ
リエステルアクリレートオリゴマー、官能基3個以上の
ウレタンアクリレートオリゴマーなどが使用できる。
【0034】(Y)1官能または2官能アクリル単量体
(N=1、2) N−ビニル−2一ピロリドン、トリプロピレングリコー
ルジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレ
ート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキ
シエチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレ
ート、ジエチレングリコールジアクリレート、2−エチ
ルヘキシルEO付加物アクリレートなどのものが使用で
きる。
【0035】溶剤 溶剤としては、アルキルフルオロアクリレートA及びア
クリル系単量体Bの両者に対し共通溶媒となり得るもの
で、溶剤を含めて三者の混合物が均一な溶液となること
が必要である。一般的にはメチルアルコール、エチルア
ルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ア
セトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、二塩化エチ
レン、四塩化炭素などを用いることができる。
【0036】光重合開始剤 光重合開始剤として一般に用いられているものは、例え
ばジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メ
チル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキ
シシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1[4
−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフリノプロパン
−1などのアセトフェノン系開始剤、ベンゾイン、ベン
ジルジメチルケタール、ベンゾインイソプロピルエーテ
ルなどのベンゾイン系開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾ
イル安息香酸メチルなどのベンゾフェノン系開始剤、チ
オキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−
ジエチルチオキサンソンなどのチオキサンソン系開始剤
などがある。
【0037】(3)限定条件についての説明 混合組成物における成分Bのアクリル単量体に、官
能基3個以上(N≧3)有するアクリル単量体(X)を
少なくとも50%以上含ませる理由は、耐擦傷性と優れ
た防汚性を付与するのに欠かせないからである。皮膜の
表面に耐擦傷性を持たせるには高架橋密度の表面でなけ
ればならない。そのためには官能基数が3個以上の単量
体(X)を少なくとも50%以上(X/(X+Y)≧
0.5)、好ましくは70%以上(X/(X+Y)≧
0.7)含むアクリル単量体を用いる必要がある。一
方、かかる多官能(N≧3)のアクリル単量体Xの使用
が防汚性付与に効果的である理由は、官能基数の多い単
量体がアルキルフルオロアクリレートとの比較で硬化速
度が著しく速いことに基因すると推測される。つまり硬
化速度が速いので、未硬化で流動性をもっているアルキ
ルフルオロアクリレートが内部から塗膜の上方(表面
側)に押し出され、表面アルキルフルオロアクリレート
が偏在するようになる。表面に局在して、平均濃度の何
倍にもなると表面の防汚性を高めることになる。
【0038】 混合組成物における成分Aのアルキル
フルオロアクリレートと、同Bのアクリル系単量体に関
し、A対Bの比率は、A:B=0.5〜10.0:9
9.5〜90.0である(0.005≦A/(A+B)
≦0.1)とする。その理由は、アルキルフルオロアク
リレートが0.5以下では防汚性が不十分になり、1
0.0以上になると混合組成物として基材に対する塗工
性が悪くなるのと、硬化皮膜として耐擦傷性が不十分と
なることによる。尚、さらに、好ましいA対Bの比率は
A:B=1.0〜5.0:99.0〜95.0である
(0.01≦A/(A+B)≦0.05)。
【0039】 成分AとBの総量対Cの比率が(A+
B):C=90〜50:10〜50であるようにする
(0.1≦C/(A+B)≦0.5))。その理由は、
成分C(溶剤)の側から言うと、10以下では(0.1
>C/(A+B))塗工可能な均一な混合組成物が得ら
れず、また塗工性も良くないからである。さらに、硬化
物は期待する防汚性能を示さないからでもある。そして
成分Cが50以上では(C/(A+B)>0.5)硬化
後に溶剤が残存する恐れがあるのと、硬化皮膜と基材と
の密着性が不十分になりやすいからである。図9にA、
B、Cの比率を図面によって示している。逆三角形の頂
点にA、B、Cを取っている。斜線を付した範囲が本発
明の原料組成を示す。
【0040】 プラスチック基材に塗布する混合組成
物の塗布厚さを1〜15μmとする。その理由は、1μ
m以下では保護皮膜として十分な性能(防汚性、耐擦傷
性とも)が得られないからである。反対に15μm以上
でも十分な性能のものが得られなくなるのと、製造上で
も溶剤の残存などの問題が起こりやすいからである。
【0041】 電子線照射について 塗膜の予備硬化(一次硬化)のための電子線の加速電圧
は100〜3000kVである。より好ましくは150
〜300kVである。電子線は、基材の特性や透明性を
損なわず劣化着色失透を起こさせない為には、極力低線
量が好ましい。従って防汚性能のみを発揮させ得る線量
を極力低く抑える必要があり、これは樹脂配合によって
異なるが、通常5Mrad以下であり、好ましくは3M
rad以下である。照射雰囲気は、窒素のような不活性
ガス雰囲気が好ましい。
【0042】 紫外線照射について 紫外線照射装置は、一般に波長200〜450nmの紫
外線を発生する光源であり、その種類として高圧水銀ラ
ンプ、メタハライドランプなどがある。照射雰囲気は一
般には大気中である。照射量は、塗膜の表面を完全に硬
化させる必要があるので、360nmにピークを持つ照
度計で、50mJ/cm2 以上、好ましくは100mJ
/cm2 以上である。
【0043】
【実施例】[実施例−1]厚さ1mmのポリカーボネイ
ト板を基材として用い、これに下記配合の混合組成物を
バーコーターにて塗布厚さ10μmになるように塗布し
た。 (※1)アルキルフルオロアクリレートのひとつ(化学
名:ヘプタデカンフルオロデシルアクリレート)大阪有
機化学工業(株)製 (※2)6官能のアクリル単量体 日本化薬(株)製 (※3)3官能のアクリル単量体 東亜合成化学工業
(株)製 (※4)2官能のアクリル単量体 新中村化学工業
(株)製 (※5)光重合開始剤 日本チバガイギー(株)製
【0044】本配合における各成分の比率は次のように
なる。A対Bの比率は、2:98、AとBの総量とCの
比率は、80:20である。B成分で3官能以上のアク
リル単量体Xの比率は約71%である。塗布後直ちに電
子線照射装置を用いて、窒素雰囲気中、加速電圧150
kV、線量2Mradの条件にて照射し、単量体組成物
を弱く硬化させると共に溶剤を蒸発させた。次いで紫外
線照射装置で、大気雰囲気中、照射量300mJ/cm
2 にて、塗膜を硬化した。この条件を図7に示す。図7
において、6本の縦軸があるが、これは厚み、A/(A
+B)、C/(A+B)、電子線量、紫外線量、X/
(X+Y)である。下の横線がこれらの値の下限を示
し、上の横線がこれらのパラグラフの上限を示してい
る。図の他に以下の試料の製作条件は表1にまとめて示
している。この条件で製作した基材の状態及び塗膜の性
能を表2に示す。基材の変色・劣化がなく、塗膜性能も
良好である.
【0045】[実施例−2]厚さ2mmのポリカーボネ
イト板を基材として用い、これに下記配合の混合組成物
をバーコーターにて塗布厚さ5μmになるように塗布し
た。 (※6)15官能のアクリル単量体 新中村化学工業
(株)製
【0046】本配合における各成分の比率は次のように
なる。A対Bの比率は、5:95、AとBの総量とCの
比率は、67:33である。B成分で3官能以上のアク
リル単量体Xの比率は約74%である。塗布後直ちに電
子線照射装置を用いて、窒素雰囲気中、加速電圧150
kV、線量1Mradの条件にて照射し、単量体組成物
を弱く硬化させると共に溶剤を蒸発させた。次いで紫外
線照射装置で、大気雰囲気中、照射量350mJ/cm
2 にて、塗膜を硬化した。条件を図7に示す。この条件
での基材の状態及び塗膜の性能を表2に示す。基材の変
色・劣化がなく、塗膜性能も良好である。
【0047】[実施例−3]厚さ50μmの白色インキ
が印刷されたポリ塩化ビニル製フロアマットを基材とし
て用い、これに下記配合の混合組成物をバーコーターに
て塗布厚さ10μmになるように塗布した. A成分 ビスコート17F 5重量部 B成分 NKオリゴ15HA 30重量部 カヤラッドDPCA−60(※7)30重量部 NKエステルA400 35重量部 C成分 アセトン 25重量部 その他 イルガキュア184 5重量部 (※7)6官能のアクリル単量体 日本化薬(株)製
【0048】本配合における各成分の比率は次のように
なる。A対Bの比率は、5:95、AとBの総量とCの
比率は、80:20である。B成分で3官能以上のアク
リル単量体の比率は約63%(X/(X+Y)=0.6
3)である。塗布後直ちに電子線照射装置を用いて、窒
素雰囲気中、加速電圧200kV、線量2Mradの条
件にて照射し、単量体組成物を弱く硬化させると共に溶
剤を蒸発させた。次いで紫外線照射装置で、大気雰囲気
中、照射量300mJ/cm2 にて塗膜を硬化した。こ
の条件での基材の状態及び塗膜の性能を表2に示す。基
材の変色・劣化がなく、塗膜性能も良好である。
【0049】[実施例−4]厚さ50μmの白色インキ
が印刷されたポリ塩化ピニル製フロアマットを基材とし
て用い、これに下記配合の混合組成物をバーコーターに
て塗布厚さ5μmになるように塗布した。 (※8)1官能のアクリル単量体 日本化薬(株)製
【0050】本配合における各成分の比率は次のように
なる。A対Bの比率は、8:92、AとBの総量とCの
比率は、80:20である。B成分で3官能以上のアク
リル単量体Xの比率は約76%である。塗布後直ちに電
子線照射装置を用いて、窒素雰囲気中、加速電圧200
kV、線量4Mradの条件にて照射し、単量体組成物
を弱く硬化させると共に溶剤を蒸発させた。次いで紫外
線照射装置で、大気雰囲気中、照射量100mJ/cm
2 にて塗膜を硬化した。この条件での基材の状態及び塗
膜の性能を表2に示す。基材の変色・劣化がなく、塗膜
性能も良好である。
【0051】[実施例−5]厚さ1mmのポリスチレン
シートを基材として用い、これに下記配合の混合組成物
をバーコーターにて塗布厚さ10μmになるように塗布
した。 (※9)2官能のアクリル単量体 日本化薬(株)製
【0052】本配合における各成分の比率は次のように
なる。A対Bの比率は、5:95、AとBの総量とCの
比率は、67:33である。B成分で3官能以上のアク
リル単量体の比率は約68%である.塗布後直ちに電子
線照射装置を用いて、窒素雰囲気中、加速電圧175k
V、線量5Mradの条件にて照射し、単量体組成物を
弱く硬化させると共に溶剤を蒸発させた。次いで紫外線
照射装置で、大気雰囲気中、照射量80mJ/cm2
て塗膜を硬化した。この条件での基材の状態及び塗膜の
性能を表−1に示す。基材の変色・劣化がなく、塗膜性
能も良好である。
【0053】[実施例−6]厚さ50μmの白色インキ
が印刷されたポリ塩化ビニル製フロアマットを基材とし
て用い、これに下記配合の混合組成物をバーコーターに
て塗布厚さ5μmになるように塗布した。
【0054】本配合における各成分の比率は次のように
なる。A対Bの比率は、8:92、AとBの総量とCの
比率は、80:20である。B成分で3官能以上のアク
リル単量体Xの比率は約54%である。
【0055】塗布後直ちに電子線照射装置を用いて、窒
素雰囲気中、加速電圧175kV、線量3Mradの条
件にて照射し、単量体組成物を弱く硬化させると共に溶
剤を蒸発させた。次いで紫外線照射装置で、大気雰囲気
中、照射量150mJ/cm2 にて塗膜を硬化した。こ
の条件での基材の状態及び塗膜の性能を表2に示す。基
材の変色・劣化がなく、塗膜性能も良好である。
【0056】[6つの比較例] [比較例−1]厚さ1mmのポリカーボネイト板を基材
として用い、これに下記配合の混合組成物をバーコー夕
ーにて塗布厚さ10μmになるように塗布した。
【0057】本配合における各成分の比率は次のように
なる。A対Bの比率は、2:98、AとBの総量とCの
比率は、80:20である。B成分で3官能以上のアク
リル単量体Xの比率は約31%である。塗布後直ちに電
子線照射装置を用いて、窒素雰囲気中、加速電圧150
kV、線量2Mradの条件にて照射し、単量体組成物
を弱く硬化させると共に溶剤を蒸発させた.次いで紫外
線照射装置で、大気雰囲気中、照射量300mJ/cm
2 にて、塗膜を硬化した。この条件での基材の状態及び
塗膜の性能を表−1に示す。基材の変色・劣化は見られ
ないが、3官能以上のアクリル単量体の比率が限定条件
より少ないため、塗膜性能の中の硬度が低下している。
【0058】[比較例−2]厚さ2mmのポリカーボネ
イト板を基材として用い、これに下記配合の混合組成物
をバーコーターにて塗布厚さ5μmになるように塗布し
た。 (※6)15官能のアクリル単量体 新中村化学工業
(株)製
【0059】本配合における各成分の比率は次のように
なる。A対Bの比率は、0.2:99.8、AとBの総
量とCの比率は、67:33である。B成分で3官能以
上のアクリル単量体の比率は約70%である。塗布後直
ちに電子線照射装置を用いて、窒素雰囲気中、加速電圧
150kV、線量1Mradの条件にて照射し、単量体
組成物を弱く硬化させると共に溶剤を蒸発させた。次い
で紫外線照射装置で、大気雰囲気中、照射量350mJ
/cm2 にて塗膜を硬化した。この条件での基材の状態
及び塗膜の性能を表2に示す。基材の変色・劣化は見ら
れないが、A対Bの比率が限定条件より少ないため、塗
膜性能の中の撥水性と防汚性が低下している.
【0060】[比較例−3]厚さ50μmの白色インキ
が印刷されたポリ塩化ビニル製フロアマットを基材とし
て用い、これに下記配合の混合組成物をバーコーターに
て塗布厚さ10μmになるように塗布した。 A成分 ビスコ−ト17F 5重量部 B成分 NKオリゴ15HA 30重量部 カヤラッドDPCA−60(※7)30重量部 NKエステルA400 35重量部 C成分 アセトン 25重量部 その他 イルガキュア184 5重量部 (※7)6官能のアクリル単量体 日本化薬(株)製
【0061】本配合における各成分の比率は次のように
なる。A対Bの比率は、5:95、AとBの総量とCの
比率は、80:20である。B成分で3官能以上のアク
リル単量体の比率は約63%である。塗布後直ちに電子
線照射装置を用いて、窒素雰囲気中、加速電圧200k
V、線量2Mradの条件にて照射し、単量体組成物を
弱く硬化させると共に溶剤を蒸発させた。次いで紫外線
照射装置で、大気雰囲気中、照射量30mJ/cm2
て、塗膜を硬化した。この条件での基材の状態及び塗膜
の性能を表2に示す。基材の変色・劣化は見られない
が、紫外線の照射量が限定条件より少ないため、塗膜性
能全体が低下している.
【0062】[比較例−4]厚さ50μmの白色インキ
が印刷されたポリ塩化ビニル製フロアマットを基材とし
て用い、これに下記配合の混合組成物をバーコーターに
て塗布厚さ5μmになるように塗布した。 (※8)1官能のアクリル単量体 日本化薬(株)製 本配合における各成分の比率は次のようになる。A対B
の比率は、8:92、AとBの総量とCの比率は、8
0:20である。B成分で3官能以上のアクリル単量体
の比率は約76%である。
【0063】塗布後直ちに電子線照射装置を用いて窒素
雰囲気中、加速電圧200kV、線量10Mradの条
件にて照射し、単量体組成物を弱く硬化させると共に溶
剤を蒸発させた。次いで紫外線照射装置で、大気雰囲気
中、照射量100mJ/cm2 にて、塗膜を硬化した。
この条件での基材の状態及び塗膜の性能を表2に示す。
塗膜性能は良好であるが、電子線照射量が限定条件より
多いため、基材の変色・劣化が見られる。
【0064】[比較例−5]厚さ1mmのポリスチレン
シートを基材として用い、これに下記配合の混合組成物
をバーコーターにて塗布厚さ10μmになるように塗布
した。 A成分 ビスコート17F 5重量部 B成分 NKオリゴ15HA 35重量部 カヤラッドDPHA 30重量部 カヤラッドR−604(※9) 30重量部 C成分 メチルエチルケトン 50重量部 その他 イルガキュア184 5重量部 (※9)2官能のアクリル単量体 日本化薬(株)製
【0065】本配合における各成分の比率は次のように
なる。A対Bの比率は、5:95、AとBの総量とCの
比率は、67:33である。B成分で3官能以上のアク
リル単量体の比率は約68%である。塗布後直ちに紫外
線照射装置で、大気雰囲気中、照射量200mJ/cm
2 にて、塗膜を硬化した。この条件での基材の状態及び
塗膜の性能を表2に示す。基材の変色・劣化は見られな
いが、電子線の照射を行っていないため、塗膜性能全体
が低下している。
【0066】[比較例−6]厚さ50μmの白色インキ
が印刷されたポリ塩化ビニル製フロアマットを基材とし
て用い、これに下記配合の混合組成物をバーコーターに
て塗布厚さ5μmになるように塗布した。
【0067】本配合における各成分の比率は次のように
なる。A対Bの比率は8:92、AとBの総量とCの比
率は、80:20である。B成分で3官能以上のアクリ
ル単量体の比率は約54%である。塗布後直ちに電子線
照射装置を用いて、窒素雰囲気中、加速電圧175k
V、線量10Mradの条件にて照射し、単量体組成物
を硬化させた。この条件での基材の状態及び塗膜の性能
を表2に示す。塗膜性能は良好であるが、電子線照射量
が限定条件より多いため、基材の変色・劣化が見られ
る。表1にこれらの試料の製作条件(塗膜厚み、成分
比、電子線、紫外線のパワー)をまとめて示す。表2に
これらの試料(実施例、比較例)の基材と塗膜の性質を
まとめて示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】 強度……照射前の引張り強度に対する照射後の引張り強度(100%というのは 強度低下がないということである) 変色……照射前の基材と比較して照射後の変色程度を目視で判定したもの ◎=変色なし ○=僅かに変色しているが実用上問題なし △=変色している ×=変色が激しい 硬度……JIS−K−5400の8.4.2での鉛筆硬度(6B〜7Hの硬度 の鉛筆によって5本の線を引き3本以上が傷になるとその鉛筆硬度より一つ下の 硬度とする。4H以上をハードコートという) 硬度……スチールウール#0000番を用いて、塗膜を10回擦ったときの表 面状態を目視にて判定 ◎=全く傷がない ○=傷が1〜3本入っている △=傷が4〜10本入っている ×=傷が10本以上入っている 撥水性……水の接触角(シートに水滴を置いた場合に水滴表面とシートの交点に 水滴面に接線を引きこれと水滴内部のシート面とのなす角度でこれが大きいほど 撥水性が高い) 防汚性……JIS−K−5400の8.10に準じ、黒色の油性マーカーにて5 cmの円を描き、5分後にティッシュペーパーにてふき取りその消去状態を目視 にて判定 ◎=完全に消去されている ○=消去されているがマーキング跡がある △=黒色が薄く残っている ×=消去できない
【0071】
【発明の効果】本発明の第一の効果は、プラスチック基
材を劣化させず透明性を損なわないで防汚性と耐擦傷性
を同時に付与する加工を実現した点にある。ランプカバ
ーやショウケースなど着色を嫌い透明性がことさら重視
されるプラスチック板の被覆方法として最適である。
【0072】第二の効果は、前記の特開平6−2119
45の優れた改良を与えるということである。これも防
汚性、耐擦傷性の両機能を備えていたが、本発明はこれ
らの機能をさらに向上させる。電子線照射と紫外線照射
を行うことにより、その相乗効果でこれまで考えられな
かった高品質の表面性能を基板に賦与することができ
る。
【0073】第三の効果は、本発明の製造方法が工業的
な観点から見て極めて容易な工程で安定して実施できる
点にある。さらに電子線照射方法及び紫外線照射方法共
に、高生産性のものであることは言うまでもない。
【0074】電子線照射だけの場合は光重合開始剤は不
要である。紫外線照射単独の場合はより多くの光重合開
始剤が必要である。本発明は、電子線によってラジカル
ができるので、紫外線単独の場合に比べ光重合開始剤の
量を減らす事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のハードコート加工方法の出発材料であ
るプラスチック基材の断面図。
【図2】プラスチック基材の上に塗膜を塗布した状態の
断面図。
【図3】電子線を塗膜に照射している状態を示す断面
図。
【図4】紫外線を塗膜に照射している状態を示す断面
図。
【図5】塗膜の三成分の比率をしめす図。
【図6】本発明のハードコート加工した物品の概略断面
図。
【図7】6つの実施例の、塗膜厚み、A/(A+B)、
C/(A+B)、電子線量、紫外線量、X/(X+Y)
の値を線グラフによって示す図。横軸は本発明を実施す
るために必要なパラメータの下限と上限を示している。
【図8】6つの比較例の、塗膜厚み、A/(A+B)、
C/(A+B)、電子線量、紫外線量、X/(X+Y)
の値を線グラフによって示す図。横軸は本発明を実施す
るために必要なパラメータの下限と上限を示している。
【図9】本発明の塗膜原料の、アルキルフルオロアクリ
レートA、アクリル系単量体B、溶剤Cの許される重量
比の範囲を示す図。
【符号の説明】
1 プラスチック基材 2 塗膜

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 プラスチック基材の上に、 A:アルキルフルオロアクリレートと、 B:前記Aと相溶性がなく官能基を3個以上有するアク
    リル単量体を少なくとも50%含むアクリル系単量体
    と、 C:前記A及びBとそれぞれ相溶性を有する溶剤と からなり、前記A対Bの比率が0.5〜10:99.5
    〜90.0、前記AとBの総量対Cの比率が90〜5
    0:10〜50である混合組成物を1〜15μmの厚さ
    に塗布し、5Mrad以下の電子線を照射して、混合組
    成物を一次硬化させ、50mJ/cm2 以上のパワーの
    紫外線を照射して混合組成物を二次硬化させることを特
    徴とする防汚性能を兼ね備えたハードコート層の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 A,Bの総量に対して、1〜10重量%
    の光開始剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の防
    汚性能を兼ね備えたハードコート層の製造方法。
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