JPH11200255A - 人工皮革用基布として有用な非含浸型基材およびその製造方法 - Google Patents

人工皮革用基布として有用な非含浸型基材およびその製造方法

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JPH11200255A
JPH11200255A JP10002456A JP245698A JPH11200255A JP H11200255 A JPH11200255 A JP H11200255A JP 10002456 A JP10002456 A JP 10002456A JP 245698 A JP245698 A JP 245698A JP H11200255 A JPH11200255 A JP H11200255A
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fiber
impregnated
matrix
elastic polymer
fibers
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JP10002456A
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Inventor
Hiroshi Honna
浩 本名
Makoto Yoshida
吉田  誠
Yukikage Matsui
亨景 松井
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Teijin Ltd
Original Assignee
Teijin Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 皮革様風合いと通気性並びに軽量性に優れた
人工皮革用基布としての非含浸型基材を提供する。 【解決手段】 マトリックス繊維と弾性ポリマーがその
表面に配されたバインダー繊維とから構成され、バイン
ダー繊維がマトリックス繊維中に分散しながら融着して
いる繊維集合体に、以下のa〜eの要件を同時に満たす
人工皮革用基布としての非含浸型基材。a)基材全体中
の弾性ポリマーの割合が5〜20%。b)密度が15〜
0.30gr/cm3。c)弾性ポリマーが個々のマト
リックス繊維に融着してなる単独結合単位及び複数本の
マトリックス繊維に集合的に融着してなる複合結合単位
が散在する。d)一部のマトリックス繊が全周長に亘っ
て弾性ポリマーにより被覆されながら融着されている完
全融着部と、他のマトリックス繊維が部分融着部が形成
される。e)バインダー繊維同士が弾性結合点を形成。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、皮革様風合いおよ
び通気性並びに軽量性に優れた、人工皮革用基布として
有用な非含浸型基材に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、人工皮革用基布においては、
不織布にバインダーとして弾性ポリマー、主にウレタン
を含浸する方法についての提案が数多くなされてきた
(特公昭42−18599号公報、特開平7−1455
69号公報、特公昭62−29548号公報等)。これ
らの提案は、繊維形状のポリマーのみから成る不織布だ
けではコシ等の風合い面、強度の面および形態保持性等
の耐久性面において満足できるレベルに到達するのが難
しいという観点からなされたものである。
【0003】天然皮革においては周知の通り、基体上層
が緻密で下層が粗な構造となっているが、このウレタン
含浸段階では、高度な制御技術を要し、更に、ウレタン
を含浸した基布は風合い面、耐久性面において優れたも
のになるが、繊維間に樹脂が詰まった密な構造となって
いるため、通気性が悪く、更に、軽量化と要求される性
能との兼備が難しい。またウレタンを溶剤系で使用して
いるため、製造工程が複雑で生産性が悪く、また、環境
面でも問題が生じる。
【0004】特開昭52−87201号公報において
は、非弾性ポリマーと弾性ポリマーとからなる複合繊維
を用いてシート状物を形成し、加圧加熱処理時に熱ロー
ルと冷却ロールにより表面層と内層の圧力・温度差をつ
けることにより密度勾配を与える方法が提案されてい
る。しかしながらこの様な手段では不織布の表面層と内
層の繊維密度差を得るには限界があり、確かにシート状
物の表面に限って述べるならば天然皮革様の外観を有す
るものが得られるが、皮革用として用いる場合には、ゴ
ムライクな、硬い風合いとなるという欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
従来技術の欠点を解消し、少ないバインダー量で、皮革
様風合いを有し、通気性および弾性回復能に優れ、且つ
軽量な人工皮革用基布として有用な非含浸型基材および
その製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らの検討によれ
ば、基材全重量に占める弾性ポリマーの重量割合を25
〜45%の高い水準に設定して所望の人工皮革の風合い
を得てきた従来の含浸方式に対して、驚くべきことに、
マトリックス繊維とバインダー繊維とから構成される公
知のクッション材に特定の構造変化を与えるとき、上記
の弾性ポリマーの割合が15%以下の領域でも、該クッ
ション材は特に通気性が格段に改善された人工皮革に転
換されることが判明した。
【0007】すなわち本発明は、マトリックス繊維と、
弾性ポリマーがその表面に配されたバインダー繊維とか
ら構成され、その際該バインダー繊維は該マトリックス
繊維中に分散しながらマトリックス繊維に融着している
繊維集合体において、該集合体はa〜eの要件を同時に
具備することを特徴とする人工皮革用基布として有用な
非含浸型基材を提供することができる。
【0008】a.基材全重量に占める弾性ポリマーの割
合は2.5〜25%の範囲にあること; b.密度が0.15〜0.30gr/cm3の範囲にあ
ること; c.バインダー繊維を構成する弾性ポリマーが、 c−1.個々のマトリックス繊維に融着してなる単独結
合単位、及び c−2.近接状態にある複数本のマトリックス繊維に集
合的に融着してなる複合結合単位が散在すること; d.該単独結合単位及び/又は複合結合単位にあって、 d−1.一部のマトリックス繊維が、その全周長に亘っ
て弾性ポリマーにより被覆されながら融着されている完
全融着部、及び d−2.他の一部のマトリックス繊維が、その全周長に
亘って弾性ポリマーにより被覆されながらも、両者がそ
の界面部で局所的に非接触状態にあるような部分融着部
が形成され、その際、 d−3.該完全融着部と部分融着部との個数比率が、
(99:1)〜(76:24)の範囲にあること;そし
て e.バインダー繊維同士の交差点が弾性ポリマーにより
融着され弾性結合点が形成されていること。
【0009】更に、本発明の製造方法によれば、マトリ
ックス繊維と、弾性ポリマーがその表面に配されたバイ
ンダー繊維とから構成され、且つ該バインダー繊維は該
マトリックス繊維中に分散しながらマトリックス繊維に
融着している繊維集合体を、以下のa〜eの要件を同時
に満足するように不織布を熱成形して非含浸型基材を製
造するに際し、下記f及びgの工程を逐次的に行うこと
により、人工皮革用基布として有用な非含浸型基材の製
造方法が提供される。
【0010】a.基材全重量に占める弾性ポリマーの割
合は2.5〜25%の範囲にあること; b.密度が0.15〜0.30gr/cm3の範囲にあ
ること; c.バインダー繊維を構成する弾性ポリマーが、 c−1.個々のマトリックス繊維に融着してなる単独結
合単位、及び c−2.近接状態にある複数本のマトリックス繊維に集
合的に融着してなる複合結合単位が散在すること; d.該単独結合単位及び/又は複合結合単位にあって、 d−1.一部のマトリックス繊維が、その全周長に亘っ
て弾性ポリマーにより被覆されながら融着されている完
全融着部、及び d−2.他の一部のマトリックス繊維が、その全周長に
亘って弾性ポリマーにより被覆されながらも、両者がそ
の界面部で局所的に非接触状態にあるような部分融着部
が形成され、その際、 d−3.該完全融着部と部分融着部との個数比率が、
(99:1)〜(76:24)の範囲にあること;そし
て e.バインダー繊維同士の交差点が弾性ポリマーにより
融着され弾性結合点が形成されていること。 f.マトリックス繊維とバインダー繊維とを少なくとも
含むウェッブに、強制絡合処理及び収縮処理を施す工
程。 g.かくして得られた不織布に、上記バインダー繊維の
接着温度で加圧・加熱処理を行う工程。
【0011】本発明の非含浸型基材は、基材全重量に占
める弾性ポリマーの割合が2.5〜25%の範囲にある
ことが必要である。該割合が2.5%未満であると、基
材の内部構造中において、単独結合単位並びに複合結合
単位が少なすぎ、必要とされる基材の弾性を発揮するこ
とが出来ない。一方、該割合が25%を越えると、逆に
基材の内部において、上記2種の結合単位が存在しすぎ
るので、基材としてゴムライクな、硬い風合いを有する
ものとなってしまう。上記の観点から、該割合は5〜1
5%の範囲にあるのが更に好ましい。
【0012】本発明において、基材の密度は0.15〜
0.30gr/cm3の範囲にあることが必要である。
該密度が0.15gr/cm3未満であると粗な構造で
あるため皮革様コシのある風合いが得られない。逆に該
密度が0.30gr/cm3を越えると柔軟性に欠け
る。
【0013】本発明の基材は前掲のc〜eの要件をも同
時に満足する必要がある。ここで図面をもって説明する
ならば、図1〜4において、1はマトリックス繊維、2
はバインダー繊維に繊維表面に露出するように配された
弾性ポリマー、3はバインダー繊維に配されたコア部を
それぞれ表している。
【0014】ここで、図面1〜4を通して特徴的なこと
は、本発明の非含浸型基材は上記1、2および3から構
成され、その際、前述のc−1部分およびc−2部分が
形成されており、該c−1およびc−2部分はそれぞれ
前述のd−1部分と(図中4及び5)、d−2部分(図
中6及び7)とから構成され、更に前述のe点(図中
8)から形成されていることにある。
【0015】本発明の基材においては、c−1部分(単
独結合単位)が形成されており、更に、該c−1部分
が、d−1部分(完全融着部)4とd−2部分(部分融
着部)6とから成る。弾性ポリマー2が単独のマトリッ
クス繊維1と完全に物理的な結合を有している部分(完
全融着部)4と弾性ポリマー2と複数本のマトリックス
繊維1とが不完全な物理的な結合部分(部分融着部)6
とを有する。
【0016】また、本発明によってc−2部分(複合結
合単位)が形成されており、更に、該c−2部分はd−
1部分(完全融着部)5とd−2部分(部分融着部)7
とから成る。弾性ポリマー2と複数のマトリックス繊維
1とが完全に物理的な結合を有している部分(完全融着
部)5及び弾性ポリマー2と複数のマトリックス繊維1
とが不完全な物理的結合部分(部分融着部)7、二種類
の融着部分を有していることにより、基布のゴムライク
な風合いの消失と、基布強度との両立をはかることがで
きる。更に、融着部分が大きすぎると基布の地合いが悪
化しすることから、マトリックス繊維の本数は2〜5本
の範囲にあることが好ましい。
【0017】ここで、一部のマトリックス繊維は、その
繊維横断面周長の65%以上の周長部分が弾性ポリマー
と非接触状態にあることが好ましい。該非接触部分が6
5%を越えることで、弾性ポリマーと接触している部分
で融着部を形成しても、その融着部分によって該マトリ
ックス繊維が基材中で実質的に固定されないので、しな
やかな風合いの基材を得ることができる。
【0018】また、一部のマトリックス繊維は、その繊
維横断面周長の35%を越える周長部分が弾性ポリマー
と接触状態にあることが好ましい。該接触部分が35%
を越えることで、弾性ポリマーと接触している部分で融
着部を形成したときに該マトリックス繊維が、基材中で
実質的に固定されることにより、基材として必要な強度
を保持することができる。
【0019】更に、e点(弾性結合点)8が形成されて
いることによって、基材としての要求特性の一つである
弾性回復能を、非含浸型基材であっても含浸型基材と同
等なレベルに保持することができる。
【0020】また、本発明の基材においては、d−1部
分(完全融着部)4及び5と、d−2部分(部分融着
部)6及び7との個数比率が(99:1)〜(76:2
4)の範囲にあることが必要である。該完全融着部の比
率が76%未満である(部分融着部の比率が24%を越
える)と基材の強度が低いものになる。
【0021】更に、本発明の基材においては、d−1部
分(完全融着部)4及び5と、d−2部分(部分融着
部)6及び7との合計個数と弾性結合点(e点)8との
個数比率が(95:5)〜(75:25)の範囲にある
ことが好ましい。該弾性結合点が形成されている比率が
少ないと、基材として十分な弾性回復性能を発揮し難
い。逆に該比率が多いと、基材内の弾性結合点が多すぎ
て得られる基材の風合いがゴムライクなものとなり易
い。
【0022】本発明において、マトリックス繊維とバイ
ンダー繊維との混綿率の重量比が(95:5)〜(5
0:50)の範囲にあることが好ましい。マトリックス
繊維が95wt%を越えて存在すると十分な数の結合単
位を形成しにくい。一方、バインダー繊維が50wt%
を越えて存在すると基材がゴムライクな、硬い風合いの
物になり易い。
【0023】本発明において、マトリックス繊維は、そ
の単繊維繊度が、0.5〜50デニールの範囲にあるこ
とが好ましいが、0.5デニールよりも小さいと基材の
強度が低くなり、逆に50デニールを越えると得られる
基材が剛直なものとなるため、1.0〜20デニールが
特に好ましい。また、マトリックス繊維は長繊維を用い
ても短繊維を用いてもどちらでも良いが、マトリックス
繊維の基材中での均一分散性の面からその繊維長が10
〜200mmの範囲にあることが好ましく、20〜15
0mmの範囲にあることが特に好ましい。また、繊維同
士の交絡状態が良好になるので、該マトリックス繊維に
は捲縮が付与されていたほうが好ましく、その際の捲縮
度が5〜50%、捲縮数が5〜30個/インチの範囲に
あることが好ましいが、上記の交絡状態を更に良好なも
のとするために、該捲縮度は5〜30%、捲縮数が5〜
20個/インチの範囲にあるのが特に好ましい。
【0024】マトリックス繊維の断面形状は円形、偏
平、異型または中空の何れであってもよいが、基材の軽
量性に寄与でき、更に、繊維の曲げ強度も弱いのでしな
やかさを発揮することのできる中空断面であることが好
ましい。
【0025】本発明のマトリックス繊維はその引っ張り
強度が1〜10g/deの範囲にあることが好ましい。
該強度が1g/de未満であると、基材の強度が低くく
なる。逆に該強度が10g/deを越えると、繊維とし
て剛直なものとなり、基材のしなやかさを発揮すること
が難しい。特に、該引っ張り強度は2〜8g/deであ
ることが好ましい。
【0026】本発明において、バインダー繊維が、弾性
ポリマーと非弾性ポリマーとから構成され、該弾性ポリ
マーがその繊維表面に露出していることが好ましく、特
に、該弾性ポリマーがバインダー繊維の繊維表面の30
%を占めるように露出していることが好ましい。該表面
に、弾性ポリマーが30%以上を占めるように露出して
いないと、バインダー繊維としての機能、即ち融着結合
部を形成する能力に欠けるものとなる。
【0027】具体的なバインダー繊維の形態としては、
サイド・バイ・サイド型、シース・コア型の何れであっ
てもよいが、好ましいのは後者である。この場合、非弾
性ポリマーがコア部となり、このコア部はシース部に対
して同心円状あるいは偏心状にあってもよい。特に偏心
状にある場合には、コイル状弾性捲縮が発現するのでよ
り好ましい。バインダー繊維の断面形状は円形、偏平、
異型または中空の何れであってもよい。
【0028】単繊維繊度は小さいと弾性が不足しやす
く、大きすぎると基材表面が剛直になりやすい。よって
バインダー繊維の太さは1〜50デニール、特に1〜2
0デニールの範囲にあることが好ましい。バインダー繊
維は、長繊維を用いても短繊維を用いてもどちらでもよ
いが、該バインダー繊維が均一に分散したほうが好まし
いことを考えると短繊維を用いたほうがよく、そのとき
の単繊維長は10〜200mmが好ましく、より好まし
くは20〜150mmである。
【0029】更に、上記の構成を採るバインダー繊維を
用いるときには、該バインダー繊維を加熱・加圧処理し
た際に、互いに分離しないような関係であることが好ま
しい。互いに分離しやすい関係のものを配したバインダ
ー繊維をもちいると、前述した、バインダー同士の交差
点が弾性ポリマーにより融着された弾性結合点が形成さ
れにくい。
【0030】ここで、このようなバインダー繊維に用い
るポリマーとして、例えば、非弾性ポリマーとしては、
熱可塑性の非弾性ポリマーであれば特に制限されない
が、なかでもナイロン系、ポリエステル系が好ましく、
耐熱性、強度等の物性面においてポリエステル系が特に
好ましい。ポリエステル系の非弾性ポリマーとしては、
例えば通常のポリエチレンテレフタレート、ポリブチレ
ンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレート、ポリ
ヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテ
レフタレート、ポリ−1,4−ジメチルシクロヘキサン
テレフタレート、ポリピバロラクトン等が挙げられる。
【0031】本発明で用いる弾性ポリマーは、熱可塑性
であれば特に制限はないが、ポリウレタン系エラストマ
ーやポリエステル系エラストマーが特に好ましい。
【0032】例えばポリウレタン系エラストマーとして
は、数平均分子量が500〜6000程度の低融点ポリ
オール、例えば両末端ジヒドロキシポリエーテル、両末
端ジヒドロキシポリエステル、両末端ジヒドロキシポリ
カーボネート、両末端ジヒドロキシポリエステルアミド
等と、分子量500以下の有機ジイソシアネート、例え
ばp,p'−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリ
レンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、
水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレン
ジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカ
プロエート、ヘキサメチレンジイソシアネート等と、分
子量500以下の鎖伸長剤、例えばグリコール、アミノ
アルコールあるいはトリオールとの反応により得られる
ポリマーが典型的である。これらのポリマーのうち、特
に好ましいものはポリオールとしてポリテトラメチレン
グリコール、ポリ−ε−カプロラクトンあるいは両末端
ジヒドロキシポリブチレンアジペートを用いたポリウレ
タンである。この場合、有機ジイソシアネートとしては
p,p'−ジフェニルメタンジイソシアネートが好適で
ある。また鎖伸長剤としては、p,p−ビスヒドロキシ
エトキシベンゼンおよび1,4−ブタンジオールが好適
である。もちろんポリマー中には各種安定剤、紫外線吸
収剤等必要に応じて配合されていてもよい。
【0033】また、ポリエステル系エラストマーとして
は、熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポ
リアルキレングリコールをソフトセグメントとして共重
合してなるポリエーテルエステルブロック共重合体、よ
り具体的には、(I)テレフタル酸、イソフタル酸、フ
タル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレ
ン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4'−ジ
カルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3−ス
ルホイソフタル酸ナトリウム等の芳香族ジカルボン酸、
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカル
ボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン
酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸
またはこれらのエステル形成性誘導体から選ばれた少な
くとも1種、(II)1,4−ブタンジオール、エチレン
グリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレン
グリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレ
ングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレン
グリコール等の脂肪族ジオール、1,1−シクロヘキサ
ンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノー
ル、トリシクロデカンジメタノール等の脂環式ジオー
ル、およびこれらのエステル形成性誘導体から選ばれた
少なくとも1種、および(III)平均分子量が約400
〜5000程度のポリエチレングリコール、ポリ1,2
−プロピレングリコール、ポリ1,3−プロピレングリ
コール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共
重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共
重合体等のポリアルキレングリコールのうち少なくとも
1種、から製造される共重合体が好ましい。就中、マト
リックス繊維との融着性や温度特性、強度の面から、ポ
リブチレンテレフタレートをハードセグメントとし、ポ
リオキシブチレングリコールをソフトセグメントとする
ブロック共重合ポリエーテルポリエステルが好ましい。
この場合、ハードセグメントを構成するポリエステル部
分は、主たる酸成分をテレフタル酸成分とし主たるジオ
ール成分をブチレングリコール成分とするポリブチレン
テレフタレートである。もちろん、この酸成分の一部
(通常、全酸成分を基準として30モル%以下)は他の
ジカルボン酸成分やオキシカルボン酸成分で置換されて
いてもよく、同様にグリコール成分の一部(通常、グリ
コール成分を基準として30モル%以下)はブチレング
リコール成分以外のジオキシ成分で置換されていてもよ
い。
【0034】またソフトセグメントを構成するポリエー
テル部分は、ブチレングリコール以外のジオキシ成分で
置換されたポリエーテルであってもよい。なお、ポリマ
ー中には、各種安定剤、紫外線吸収剤等必要に応じて配
合されていてもよい。
【0035】更に、弾性ポリマーの融点は、非弾性ポリ
マーの融点よりも30〜120℃、特に40〜80℃低
いことが好ましい。弾性ポリマーの融点は、通常120
〜220℃、好ましくは140〜180℃である。ま
た、非弾性ポリマーの融点は、通常200〜300℃、
好ましくは220〜260℃である。なお本発明では、
融点はDSC法によって測定される値であり、融点が存
在しないものにおいては軟化点を融点とみなした。尚、
本発明において非弾性ポリマーとは、フィルムもしくは
繊維を形成したときに、測定された50%伸長回復率が
50%未満、好ましくは20%以下のものとして定義さ
れ、また弾性ポリマーとは、該回復率が50%以上、好
ましくは70%以上のものとして定義した。
【0036】本発明においては、マトリックス繊維とし
て、高収縮性繊維を含むと得られる機材が嵩高いものと
なり、更に、前掲の完全融着部と部分融着部との個数比
率が(99:1)の割合から(76:24)の割合へ近
づく、即ち部分融着部の形成が促進されるので好まし
い。ここで、高収縮性繊維とは、70℃の温水に1分間
浸漬する条件で20〜70%、好ましくは41〜60%
の収縮率を有する繊維のことをいい、該高収縮性繊維の
例として、ナイロン系繊維、ポリエステル系繊維を挙げ
ることが出来るが、耐熱性、強度等の物性面においてポ
リエステル系繊維が好ましい。ポリエステル系高収縮性
繊維としては、通常のポリエチレンテレフタレート、ポ
リブチレンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレー
ト、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメ
チレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチルシクロ
ヘキサンテレフタレート、ポリピバロラクトン等の高収
縮性繊維を挙げることができる。
【0037】更に、本発明ではマトリックス繊維として
自己伸長性繊維を含むと基材中の繊維の交絡状態が良好
になるので好ましい。ここで、自己伸長性繊維とは70
℃の温水中に1分間浸漬処理したときに実質的に収縮せ
ず、該処理後180℃の雰囲気下、1分間保持したとき
の伸長率が5%以上である繊維のことをいい、自己伸長
性繊維としては、ナイロン系あるいはポリエステル系繊
維を挙げることが出来る。特に、マトリックス繊維とし
て、上記の高収縮性繊維と自己伸長性繊維とを併用し、
且つ通常のポリエステル繊維をも含んだ三者混綿にした
場合には、基材内部において、繊維収縮による構造変化
と繊維伸長による構造変化との相乗効果で前掲の完全融
着部と部分融着部との個数比率を限りなく(76:2
4)の割合に近づかせることができるので最も好まし
い。
【0038】本発明の非含浸型基材においてはマトリッ
クス繊維とバインダー繊維との混綿率がそれぞれ異なる
不織布が少なくとも2層以上積層されていることが好ま
しい。
【0039】このような積層形態とし、結合単位数に厚
み方向の勾配を持たせることで、例えば、天然皮革の有
する、表面側が密、裏面側が粗となるような構造を模す
ることができ、天然皮革様の風合いに更に近似させるこ
とが出来る。
【0040】更に、該積層状態にある基材において、隣
接状態にある不織布間でのバインダー繊維の混綿率が下
記一般式(I)を満足することが好ましい。
【0041】
【数3】10≦|W1−W2|≦30 … (I) (式中、W1およびW2は、隣接する夫々の不織布層中
のバインダー繊維の混綿率(wt%)を表わす。) この|W1−W2|が10未満であると、積層による効
果が少ない。一方30を越えると物性の差が大きく風合
いが好ましくない。
【0042】また更に、積層され、隣接状態にある不織
布間でのマトリックス繊維の混綿率が下記一般式(II)
を満足することが好ましい。
【0043】
【数4】0≦|M1−M2|≦40 … (II) (式中、M1及びM2は、隣接する不織布層中のマトリ
ックス繊維の混綿率(wt%)を表わす。) この|M1−M2|が40を越えると、隣接する不織布
間で収縮性や交絡性が異なるため風合いが好ましくな
い。
【0044】本発明の非含浸型基材においては、加圧・
加熱処理を、エンボスロールにより施して、非含浸型基
材表面の多数の凹凸形状を散在させることにより、平面
方向に対して融着部の規則的な密度分布が形成されるこ
とが好ましい。エンボスロール表面の凹凸部によって基
材表面に部分的な圧力差を生じさせることにより、基材
表面の凸部における厚み方向のバインダー融着部に比
べ、基材表面の凹部における厚み方向のバインダー融着
部が多くなり、平面方向における融着部の規則的な分布
が形成され、より天然皮革様波形構造を疑似することが
できる。また本発明の非含浸型基材は、該基材の上に公
知の方法で表面層の付与を行って人工皮革として仕上げ
るが、基材表面に凹凸により、基材層と表面樹脂層とが
凹凸形状にて隣接するため、その接触面積が大きくな
り、従来の非含浸型基材を用いた人工皮革よりも、基材
層と表面層との剥離強度が大きいものになる。
【0045】本発明では、非含浸型基材の20%伸長回
復率が厚み方向と直交する平面上での全方位のうち該平
面上で直交する二軸が共に50〜90%の範囲にあるこ
とがよい。ここで、上記二軸において共に50〜90%
の範囲にあるとは、即ち、厚み方向と直交する平面にお
いて上記伸長回複率に異方性が無いということを示す。
【0046】本発明において非含浸型基材は、剛軟度が
厚み方向と直交する平面上での全方位のうち該平面上で
直交する二軸が共に2〜20cmの範囲にあることが好
ましい。ここで、上記二軸において共に2〜20cmの
範囲にあるとは、即ち、厚み方向と直交する平面におい
て上記剛軟度に異方性が無いということを示す。該剛軟
度は2〜15cmの範囲にあることが更に好ましい。
【0047】本発明の非含浸型基材において、厚み方向
の通気度が10〜100cm3/cm2/secの範囲に
あることが好ましい。該通気度が10cm3/cm2/s
ec未満であると、通気性が乏しい。逆に100cm3
/cm2/secを越えると粗な構造になるため好まし
くない。
【0048】本発明の非含浸型基材は、その空隙率が6
5〜90%の範囲にあることが好ましい。ここで、該空
隙率とは一般式(III)によって示される。 空隙率(%)=(1−基材密度/短繊維密度) ・・・ (III) 該空隙率が65%未満であると通気性が乏しく、逆に9
0%を越えると粗な構造になるため、好ましくない。
【0049】本発明の非含浸型基材の製造方法において
は、図面をもって説明した前述の要件a〜eを満足する
ように不織布を熱成形して該基材を得るに際しf及びg
の工程を逐次的に含む必要がある。即ち、工程fにおい
てウェッブに強制絡合処理を施し、厚み方向と平行又は
準平行状態に繊維を配向させること、更に該ウェッブに
収縮処理を施すことが必要である。ここで、準平行状態
とは、厚み方向と45°未満で交わることをいう。繊維
の配向状態を前記の通りにすることで、基材の厚み方向
に対する通気度を高くすることができ、更に該基材を例
えばアコーディオンのようにしなやかに曲げることがで
きる。また、収縮処理を施すことにより該ウェブを密な
構造の基材として該基材の強伸度を上げ、皮革様のコシ
のある風合いにすることが出来る。ここで該収縮処理
は、面積収縮率が20〜70%になるように施すのがよ
い。該収縮率が20%未満であると、繊維の交絡構造が
粗になり易く強度等の耐久性能が低く、風合い面で満足
できるコシが出にくく、逆に該収縮率が70%を越える
と見掛け密度が高くなるので、基材の軽量化が難しく風
合い面で柔軟性に欠け易い。収縮処理方法としては、例
えば温水中あるいは乾熱中で行う方法が適当であるが、
均一に熱が加わらないとシワになり易いので、温水中で
行う方法が適当である。収縮処理時の加熱条件として、
温水中で該処理を施す場合は65〜75℃、乾熱中で施
す場合には100〜150℃が適当である。加熱時間に
ついては、面積収縮率が適当な物となるように適宜設定
すればよい。また、工程gとして、前述の工程fによっ
て得られた不織布に対して、バインダー繊維の接着温度
で加圧・加熱処理を施す必要がある。ここで、バインダ
ー繊維の接着温度とは、バインダー成分の溶融温度以上
分解温度未満のことをいう。この、加圧・加熱処理を施
すことにより、基材中の各々の繊維が加圧下に容易に圧
縮されるので、更に密な構造の基材を製造することがで
きる。その際、該加圧・加熱処理を行うことによって、
バインダー繊維に配されている弾性ポリマー同士が相互
に接触している点の少なくとも一部を融着させて不織布
中に網目構造を形成することが好ましい。この網目構造
を形成することにより、非含浸型基材であっても、即ち
弾性ポリマーの含有量が少なくても、含浸型基材と比べ
て遜色の無い強伸度等の耐劣化性を発揮しやすくなる。
【0050】この加圧・加熱処理方法としては、基材の
用途、目的等により適宜変更すればよいが、嵩高な風合
いを得るためにある程度のクリアランスがあったほうが
好ましく、加圧・加熱処理を施す前の厚みを基準として
60〜90%の範囲とするのが好ましい。このために
は、例えば工程fにより得られた不織布を一対の加熱ロ
ーラーにより処理する方法、熱プレスにより処理する方
法等を行えばよく、その際の加圧条件としては、線圧で
50〜1500kg/cmの範囲にあることが好まし
い。該線圧がこの範囲にあると、人工皮革用途として用
いるときに重要な、丸みのある皮革様のコシを有し、且
つ適度な見掛け密度、軽量性および通気性を有するよう
な基材を製造し易い。
【0051】本発明の製造方法において、工程fにおい
て、バインダー繊維の混綿率が異なる少なくとも2種の
ウェッブを積層し、強制絡合処理および収縮処理を施す
ことが好ましい。混綿率が異なるウェッブを積層するこ
とにより、このような積層形態を形成することにより、
例えば、天然皮革の有する、表面側が密、裏面側が粗と
なるような構造を模することができるので、天然皮革様
の風合いに更に近似させることが出来る。また、非加熱
のローラーと加熱ローラーとを組みあわせた対のローラ
ーに通過させる方法にくらべて、全体に均一に加熱でき
ることから、基材内部での完全融着部及び部分融着部が
確実に形成され、好ましい。
【0052】本発明の製造方法においては、ウェッブに
対して行う、加圧・加熱処理を、エンボスロールにより
施して、非含浸型基材表面の多数の凹凸形状を散在させ
ることにより、平面方向に対して融着部の規則的な密度
分布を形成させる。これは、エンボスロール表面の凹凸
部によって基材表面に部分的な圧力差が生じるためであ
り、基材表面の凸部における厚み方向のバインダー融着
部に比べ、基材表面の凹部における厚み方向のバインダ
ー融着部が多くなる。該基材の厚み方向の凹部と凸部と
の単位体積当たりのバインダー融着部の割合は、凹部:
凸部が50〜67:50〜33の範囲となることが好ま
しい。この範囲外になると、凹部と凸部との厚み方向の
バインダー融着部の割合差が大きくなりずぎ、基材の凹
部と凸部との弾性等の物性差が大きくなりすぎるため、
得られる基材は挫屈が生じやすいものとなる。エンボス
ロール表面は、該表面の凹部と凸部との体積比が(凹
部:凸部)=5〜95:95〜5となるような柄となっ
ていることが好ましく、該範囲外ではエンボスロールが
基材に与える上記効果が少ない。またエンボスの凹部か
ら凸部までの厚み方向の長さが、基材の厚みの3〜50
%であることが好ましい。3%未満であると、エンボス
が基材に与える上記効果が少なく、また50%を超える
と挫屈が生じやすくなる。
【0053】本発明の製造方法において用いるマトリッ
クス繊維は、200℃の乾熱で5分間の処理を行った後
の複屈折率が0.02〜0.14の範囲にあり、且つそ
の際の結晶化度が10〜35%の範囲にあることが好ま
しい。該複屈折率が0.02未満であると繊維の強度が
不足し、逆に0.14を越えると剛直なものとなってし
まう。一方、上記結晶化度が10%未満であると弾性率
が強くなりすぎてしまい、逆に35%を越えると繊維の
伸度が低くなり剛直な基材となってしまう。
【0054】本発明の製造方法において用いるマトリッ
クス繊維は、70℃温水中で1分間保持したときの収縮
率が20〜70%であって、且つ該保持後の短繊維を1
80℃の乾熱下1分間処理した後の伸長性が5〜50%
の範囲にある高収縮性短繊維を含んでいることが好まし
い。上記のような高収縮性短繊維が不織布中に分散して
いることにより、均一でシワの発生の起こらない収縮処
理を行いやすくなる。
【0055】上記高収縮性繊維は、それ自体公知の方
法、例えば溶融紡糸した後、ガラス転移温度以上結晶化
温度以下の温度で延伸することによって得られる。より
具体的には、例えばポリエチレンテレフタレートを溶融
紡糸した後、60〜65℃の温水で2.4〜2.7倍に延
伸し、65℃以下で乾燥することによって得ることが出
来る。
【0056】本発明の製造方法において用いるマトリッ
クス繊維は、70℃温水中で実質的に収縮せずに、18
0℃の乾熱下1分間処理した後の伸長性が5〜50%の
範囲にある自己伸長性短繊維を含んでいることが好まし
い。上記のような自己伸長性繊維が不織布中に分散して
いることにより、収縮処理を行った際にウェッブ内の繊
維同士の交絡状態を更に良好なものとすることができ
る。
【0057】該自己伸長性繊維は、それ自体公知の方法
により、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリ
ブチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート
等のポリエステルや、これらポリエステル芳香族または
脂肪族のジカルボン酸、あるいはグリコール共重合した
コポリエステルを溶融紡糸し、次いで60〜65℃の温
水中で2〜4倍に延伸し、次いで85〜95℃の温水中
で熱処理し、100℃以下で乾燥する方法によって得る
ことができる。
【0058】本発明の非含浸型基材を人工皮革用に転換
するに当たっては、得られた基材の上に公知の方法で表
面層の付与を行う。その手段としては、例えば、エラス
トマー層をポリエステル系エラストマーとする場合、水
に対して可溶性である該エラストマーを、特定の温度以
下では該エラストマーを溶解しない極性溶媒中に溶解さ
せた溶解組成物を用いる。この際の極性溶媒としては、
(1)水と混和性を有する、(2)用いるポリエステル
エラストマーを加熱等により溶解することができる、
(3)さらに、該エラストマーが溶解した溶解組成物を
冷却等により特定温度以下にした際に、相分離に伴って
溶液組成物がゲル化し白化することができる、という三
つの要件を満足するような溶媒から選ぶことが好まし
い。
【0059】このような極性溶媒として、N−メチルピ
ロリドン(以下、NMPと略記することもある。)、N,N
−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記することも
ある。)、N,N−ジメチルアセトアミド等を例示するこ
とができる。これらのうち、N−メチルピロリドン、N,
N−ジメチルホルムアミドが好ましく、例えばDMFは、2
0℃近辺ではポリエステル系エラストマーを溶解して2
5重量%溶液を調製することができないが、溶媒を12
0℃に加熱することにより、均一に溶解することができ
る。この溶液組成物を基材上に流延し、冷却するとやが
てゲル化し白化する。
【0060】この極性溶媒は、1種のみを用いても、2
種以上を併用してもよい。また、上記特性を損なわない
限り、他の溶媒や無機塩、添加剤等を加えても構わな
い。
【0061】上記溶液組成物中のポリエステル系エラス
トマーの濃度は、該溶液組成物の全重量を基準として、
1〜50%の範囲内にあることが好ましい。
【0062】該エラストマー濃度が1%より少ないとフ
ィルムやシートの形態を保持するのが難しく、また50
%を越えると、表面層の空隙率が小さくなりすぎて表面
のしなやかさが生じないので好ましくない。ポリエステ
ルエラストマーの濃度は3〜35重量%であることがよ
り好ましい。
【0063】上記した、ポリエステル系エラストマーを
極性溶媒に加熱溶解する際の加熱溶解温度は、用いるポ
リエステル系エラストマーの分子構造あるいはエラスト
マー濃度、極性溶媒の種類等によって異なるが、該ポリ
エステル系エラストマーが均一に溶解するために必要な
温度であればよいが、通常は溶解開始温度〜200℃の
範囲であり、50〜150℃の範囲にあるのがさらに好
ましい。
【0064】更に、基材表面上に流延された液状物は次
いで冷却されることにより、相分離に伴うゲル化を生じ
膜状物となる。ここでゲル化とは、ポリエステルエラス
トマーが均一に溶解した透明な溶液組成物が白色に濁
り、なおかつ液状物の形態を保持した状態のことであ
る。ゲル化を生じさせるための冷却方法、冷却温度等は
特に限定されないが、通常は5時間以内、特に、2時間
以内に冷却することが好ましいが、室温で放熱しても、
また氷冷や、冷却装置を用いて冷却を行ってもよい。
【0065】該ゲル化を生じさせることにより、得られ
た膜状物の内部構造が、多孔質構造および/または球状
集合体となり、該内部構造によりエラストマー表面層が
均一なものとなるので通気性がよい。一方、ゲル化を生
じさせることなく抽出処理を直接行うと、厚さ方向、す
なわち表層部分と基材部分とが均一な構造を形成せず、
通気性が乏しいものになる。
【0066】上記のようにして得られた膜状物は、次い
で水性溶媒によって極性溶媒が抽出される。ここで、水
性溶媒とは、水、または無機塩や低級脂肪族アルコー
ル、極性溶媒等の少なくとも1種を溶解した水溶液を意
味する。用いる水性溶媒の温度は特に限定されないが、
通常は0〜100℃、好ましくは5〜80℃の範囲内に
あるのがよい。該抽出の方法としては、特に限定されな
いが、例えば基材表面上でゲル化している膜状物を、基
材とともに水性溶媒に浸漬する、または水性溶媒で洗浄
する等の方法を選択することができる。また、抽出に要
する時間は選択する抽出方法によって異なるが、通常は
5時間以内、より好ましくは3時間以内である。
【0067】このようにして得られた膜状物は乾燥さ
れ、最終的に厚みが数μm〜1mm程度のポリエステルエ
ラストマー表面層となる。この際の乾燥温度はポリエス
テルエラストマーの融解温度以下であれば特に問題はな
く、また、乾燥は常圧下で行っても、減圧下で行っても
どちらでも良い。該乾燥温度は、通常は150℃以下、
好ましくは130℃以下である。
【0068】上述のポリエステルエラストマー表面層の
構造および性能は、該表面層に使用する材料、該表面層
の製造法法によって影響され、例えば、膜密度は溶液組
成物中のポリエステルエラストマー濃度に影響される
が、ポリエステルエラストマー表面層の空隙率は20〜
80%の範囲にあり、多孔質構造体または球状集合体の
コア径は0.1〜5.0μmにあることが好ましい。該
表面の空隙率が20%未満であると、表面の通気性に劣
る、また人工皮革としての表面がフィルム状となり、柔
軟性等の風合いが劣る。逆に80%を越えると、表面構
造が粗になりすぎて、耐久性に劣るものとなる。
【0069】一方、非含浸型基材の表面にウレタン系エ
ラストマーよりなる表面層を付与する方法としては、従
来公知のポリウレタンは全て適用することができる。例
えば、ポリウレタンの有機溶剤溶液を非含浸型基材の表
面にコーティングした後、ポリウレタンの非溶剤で且つ
ポリウレタンを溶解している有機溶剤と混和性のある凝
固浴中で凝固させる方法、あるいはポリウレタンの有機
溶剤溶液または分散液に水を微分散させたW/Oタイプの
エマルジョンを非含浸型基材の表面にコーティングした
後、有機溶剤を選択的に蒸発させてポリウレタンを凝固
させる方法等を適宜選択すればよいが、通気性のよい表
面構造とする為、特に、内部に連通微細孔を有する多孔
質ポリウレタン層は連続多孔質であることが好ましい。
【0070】すなわち、連続多孔質ポリウレタン層は、
非含浸型基材の非コーティング表面から、コーティング
表面にかけて連通孔によって通気性が確保されているこ
とが好ましく、多孔質ポリウレタン層を形成する際に多
孔調製剤(凝固調製剤)を用いる方法、仕上げポリウレ
タン皮膜を形成する際に先立って、多孔質ポリウレタン
層の表面に、ポリウレタンと、その良溶剤、貧溶剤、良
溶剤と貧溶剤との混和溶剤、または良溶剤と非溶剤との
混和溶剤のいずれかとの混和溶液を点状に多数散在する
ように塗布してから仕上げポリウレタン皮膜を形成する
方法等、任意の方法を適宜選択すればよい。
【0071】他にも、予めエラストマーにより膜状物の
みを形成した後、該エラストマーと非含浸型基材内中に
存在するバインダー成分を構成するポリマー融点以下の
温度で融解する熱溶融型接着剤を用いて、該膜状物と非
含浸型基材とを接着し人工皮革を得る方法を挙げること
ができるが、上述したように基材の表面に直接膜状物を
形成した場合には、表面層と基材との剥離強度が向上す
るので好ましい。
【0072】
【作用】本発明と構成が類似した技術として、特開昭5
2−87201号公報に記載の技術を挙げることが出来
る。該公報によれば、バインダー繊維とマトリックス繊
維とを用いてシート状物を作成し、該シート状物に対し
て加圧・加熱処理を行ってシート状物の表面層を緻密化
せしめる皮革様シート状物の製造方法が提案されてい
る。
【0073】つまり、該公報においては、シート状物の
表面を加熱ローラー等により加圧・加熱処理することで
緻密化することが記載されているが、該シート状物を人
工皮革用基布として用いる場合には、確かに表面層の外
観、手触り等も必要ではあるが、それだけでは天然皮革
独特のしなやかな柔らかい風合いを有する人工皮革用基
布は提供することができずゴムライクな風合いのものに
なってしまう。
【0074】本発明は特にこの基材において、その内部
構造に注目し、バインダー繊維とマトリックス繊維との
交差点において、完全融着部と部分融着部とを特定の割
合となるように混在させることによって、基材の中で完
全融着部を散在させ、人工皮革として有用な、伸長回復
性能並びにしなやかな柔らかい風合いを達成するもので
ある。
【0075】該公報にはシート状物の表面状態について
の記載があるのみで内部構造については何等記載が無い
ことを考えると、本発明のような技術思想を認識してい
たとは見受けられず、本発明と該公報に記載されている
発明とはその技術思想を異にするものであることは明ら
かである。
【0076】
【発明の効果】本発明の構造を有する非含浸型基材は、
通気性並びに軽量性に優れており、皮革様風合いを伴っ
ているので、例えば該基材をスポーツシューズ等に適用
した場合、軽くて、ムレ感の少ない、また体にフィット
しやすいものになる。更に、その基材の製造工程は比較
的容易であり、溶剤を用いる必要がないことや、ウレタ
ンを使用しないため焼却によるシアンガスが発生しない
等、環境面においても有利である。
【0077】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳細に説明
するが、本発明はこれにより何等制限を受けるものでは
ない。なお、実施例中の各値は以下の方法により測定し
た。
【0078】1、ポリエステル系弾性体の固有粘度の測
定:フェノールとテトラクロルエタンとの等重量混合溶
剤を用い、35℃の条件下で固有粘度を測定した。
【0079】2、融点の測定:Du Pont社製、熱
示唆分析計990型(DSC)を使用し、昇温速度20
℃/分で測定し、溶融ピーク温度を融点とした。
【0080】3、軟化点の測定:微量融点測定装置(柳
本製作所製)を用い、約3gのポリマーを2枚のカバー
ガラスの間に挟み、ピンセットで軽く抑えながら、昇温
速度約10℃/分で昇温し、ポリマーの熱変化を観察す
る。その際ポリマーが軟化して流動し始めた温度を軟化
点とした。
【0081】4、溶融粘度の測定:加熱処理温度下で、
エラストマーを剪断速度10〜10000sec-1の範
囲にて見掛けの溶融粘度を測定し、校正曲線から剪断速
度1000sec-1のときの溶融粘度を求めた。
【0082】5、繊維あるいは基材の収縮率および伸長
率: (I)繊維の収縮率および伸長率:下記数式(3)及び
(4)によって算出した。
【0083】
【数5】
【0084】(II)基材の収縮率:下記数式によって算
出した。
【0085】
【数6】
【0086】6、完全融着部と部分融着部との個数比
率:サンプルの基材横断面が露出するように切断し、こ
の任意の横断面を電子顕微鏡により撮影して得た電子顕
微鏡写真(350倍)に含まれる完全融着部の数と部分
融着部の数とを数え、その個数比率を算出した。なお、
同一のサンプルに対して電子顕微鏡写真は10枚撮影
し、その平均値を求めた。
【0087】7、完全融着部と部分融着部との合計と、
弾性結合点との個数比率:サンプルの基材横断面が露出
するように切断し、この任意の横断面を電子顕微鏡によ
り撮影して得た電子顕微鏡写真(350倍)に含まれる
完全融着部の数と部分融着部の数とを数え、その個数比
率を算出した。なお、同一のサンプルに対して電子顕微
鏡写真は10枚撮影し、その平均値を求めた。
【0088】8、基材の20%伸長回復率:引張り速度
50mm/minで元の長さの120%となるように引
張り、その後、戻し速度50mm/minで元の零点に
戻し、2分間放置後に再び引張り速度50mm/min
で引張った。初期の応力の立ち上がりと放置後の立ち上
がり(2g応力)から試料の緩み長さ(mm)を求め、
伸長量150mmに対する比率(%)を下記数式により
算出し、120%伸長回復率とした。尚、該伸長回復率
の測定は、基材の厚み方向と直交する平面状での全方位
のうち該平面状で直交する二軸を測定した。(軸Aおよ
び軸Bとする。)
【0089】
【数7】
【0090】9、基材の剛軟度:JIS L−1096
6.19.1に記載されている45°カンチレバー法
に準拠して測定した。尚、該剛軟度の測定は、基材の厚
み方向と直交する平面状での全方位のうち該平面状で直
交する二軸を測定した。(軸Aおよび軸Bとする。)
【0091】10、基材の厚み方向の通気度:通気度計
FX3300(スイス国、テクステスト社製)を用い
て、面積が100cm2のオリフィスにより、124P
aの差圧で測定した。
【0092】11、基材の風合い:無差別に5名の熟練
者を選びだし、製造した各種の基材に対して官能検査を
行って、触感による相対的な比較を行った。尚、表1中
の評価は、以下の通りとした。 ◎ ・・・・・ 皮革様丸みのあるコシと、柔軟な風合
いとを有し、且つ、皮革と同様に基布の表側と裏側とで
コシと柔軟性とが異なるもの。 〇 ・・・・・ 皮革様丸みのあるコシと、柔軟な風合
いとを有するもの。 × ・・・・・ 皮革様丸みのコシに欠け、柔軟性にも
欠けるもの。
【0093】[参考例1] バインダー繊維の製造:ジメチルテレフタレート(以
下、DMTと略記することもある。)、イソフタレート
(以下、IAと略記することもある。)、テトラメチレ
ングリコール(以下、TMGと略記することもある。)
およびポリテトラメチレングリコール(以下、PTMG
と略記することもある。)とを用いて重縮合反応を行
い、ポリエーテルポリエステルブロック共重合エラスト
マ−を得た。その際の割合は、全酸成分を基準としてモ
ル比で、DMT:IA=85:15とし、TMGを全酸
成分を基準としてモル比で1.45倍とし、またPTM
Gを、該エラストマー全重量を基準として55%とし
た。尚、IAはスラリー状のものを、PTMGは数平均
分子量2000のものを用いた。この熱可塑性エラスト
マーの固有粘度は1.0dl/g、融点172℃、破断
伸度は1420%、300%伸長応力は0.3kg/m
2、300%伸長回復率は73%、50%伸長回復率
は81%であった。
【0094】この熱可塑性エラストマーをシース部とし
て配し、非弾性ポリマーとしてのポリブチレンテレフタ
レート(融点224℃、固有粘度0.875dl/g、
50%伸長回復率0%)をコア部に配して、コア成分:
シース成分の重量比が繊維船体を基準として、50:5
0になるように常法により複合紡糸して、バインダー繊
維を作成した。なお、この複合繊維は、偏心シース・コ
ア型複合繊維である。この繊維を2.0倍に延伸し押し
込み捲縮を付与した後64mmに切断し、乾燥処理後、
油剤を付与した。なお、得られたバインダー繊維の太さ
は9デニールであった。
【0095】[参考例2] マトリックス繊維の製造:ポリエチレンテレフタレート
からなる非弾性高収縮性繊維を用いた。この非弾性高収
縮性短繊維の200℃乾熱処理(5分)後の複屈折率は
0.089で、結晶化度は0.29であった。また該短繊
維の70℃の温水に1分間浸漬したときの収縮率は45
%であり、50%弾性回復率は0%であった。
【0096】[実施例1]参考例1および参考例2の操
作により得られた、バインダー繊維20重量%と、マト
リックス繊維80重量%とを混綿し、カード機に通した
後、クロスレイ法でウェブを作成し、作成したウェブに
ニードルパンチ(1500パンチ/cm2)で強制絡合
処理を施し、70℃温水中で1分間収縮処理し、マング
ルで絞った後、120℃雰囲気中で乾燥を行った。面積
収縮率は55%であった。次に170℃雰囲気中で3分
間予熱をかけた後すぐにカレンダーロールを用いて19
0℃で融着熱処理を行った。得られた基材は皮革様柔軟
で、且つ丸みのあるコシがあるものとなった。得られた
基材の物性値を表1に示す。
【0097】[実施例2、3]実施例1において、バイ
ンダー繊維とマトリックス繊維の混綿率を変更すること
以外は実施例1と同様の操作を行って基材を得た。結果
を表1に示す。
【0098】[実施例4、5]実施例1において、基布
密度を変更すること以外は実施例1と同様の操作を行っ
て基材を得た。結果を表1に示す。
【0099】[実施例6]実施例1において、バインダ
ー繊維とマトリックス繊維との混綿率を表1の様に変更
し、更に、該混率の異なるウェブAとウェブBとを作成
し該ウェブを重ねあわせて積層体とし、該積層体に実施
例1と同様な操作を行って基材を得た。結果を表1に示
す。得られた基材はより皮革様柔軟で、コシを伴い好ま
しいものであった。この際、該積層され、隣接状態にあ
る不織布間でのバインダー繊維の混綿率およびバインダ
ー繊維の混綿率は下記一般式(I)及び(II)を満足し
ていた。
【0100】
【数8】10≦|W1−W2|≦30 … (I) (式中、W1およびW2は、隣接する夫々の不織布層中
のバインダー繊維の混綿率(wt%)を表わす。)
【0101】
【数9】0≦|M1−M2|≦40 … (II) (式中、M1及びM2は、隣接する不織布層中のマトリ
ックス繊維の混綿率(wt%)を表わす。)
【0102】[実施例7]実施例1において、バインダ
ー繊維とマトリックス繊維との混綿率を表1の様に変更
し、更に、該混率の異なるウェブC、ウェブD、ウェブ
Eを作成し該ウェブを重ねあわせて積層体とし、該積層
体に実施例1と同様な操作を行って基材を得た。結果を
表1に示す。得られた基材は実施例6よりも皮革様柔軟
で、コシを伴い好ましいものであった。この際、該積層
され、隣接状態にある不織布間でのバインダー繊維の混
綿率およびバインダー繊維の混綿率は下記一般式(I)
及び(II)を満足していた。
【0103】
【数10】10≦|W1−W2|≦30 … (I) (式中、W1およびW2は、隣接する夫々の不織布層中
のバインダー繊維の混綿率(wt%)を表わす。)
【0104】
【数11】0≦|M1−M2|≦40 … (II) (式中、M1及びM2は、隣接する不織布層中のマトリ
ックス繊維の混綿率(wt%)を表わす。)
【0105】[比較例1、2]実施例1において、バイ
ンダー繊維とマトリックス繊維の混綿率を変更すること
以外は実施例1と同様の操作を行って基材を得た。結果
を表2に示す。
【0106】[比較例3、4]実施例1において、基材
の密度を表1の様に変更すること以外は、実施例1と同
様の操作を行って基材を得た。結果を表2に示す。
【0107】[比較例5] ウレタン含浸基材の製造方法:目付300g/m3、厚
み1.0mmのポリエステル短繊維不織布に、ポリウレ
タンのジメチルホルムアミド溶液(濃度13%)を含浸
させて、ウレタン含浸型基材を製造した。結果を表2に
示す。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】表1からも明らかなように、本発明の実施
例と比較例1、3とを比べると、実施例1〜5のすべて
において弾性回復率及び剛軟度が良好であることが明ら
かである。一方、比較例2の非含浸型基材を見ると通気
度は高いものの、風合いが劣っており、人工皮革用基布
として有用に用いることが出来ない。また、比較例5の
ウレタン含浸型基材を見ると、弾性回復率及び剛軟度は
良好であるものの、通気性が劣っている。
【0111】[実施例8]参考例1および参考例2の操
作により得られた、バインダー繊維20%重量%とマト
リックス繊維80重量%とを混綿し、カード機に通した
後、クロスレイ法でウェブを作製し、作製したウェブに
ニードルパンチ(1500パンチ/cm2)で強制絡合
処理を施し、70℃温水中で1分間収縮処理し、120
℃雰囲気中で乾燥を行った。面積収縮率は55%であっ
た。次に170℃雰囲気中で3分間予熱をかけた後、す
ぐに190℃、50kg/cm条件でエンボス処理を行
った(クリアランスは基材の厚みの70%)。その際、
凹凸部の体積比は(凹部:凸部)=(50:50)で、
凹部と凸部の厚み方向の長さが、基材の厚み20%のエ
ンボス柄を使用した。得られた基材は皮革様柔軟で、且
つ丸みのあるコシを有するものとなった。次いで基材の
エンボス処理した側に、18%濃度のポリウレタン−ジ
メチルホルムアルデヒド溶液を800g/m2の目付で
コーティングしたのち、水浸凝固、水洗、乾燥して人工
皮革を作製した。得られた人工皮革の物性値を表3に示
す。
【0112】[実施例9〜10、並びに比較例6〜8]
実施例1において、エンボス柄を変更すること以外は同
様の操作を行って人工皮革を得た。結果を表3に示す。
【0113】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の非含浸型基材の断面図であって、電子
顕微鏡にて撮影した写真(350倍)から写し取ったも
のである。
【図2】本発明の非含浸型基材の断面図であって、電子
顕微鏡にて撮影した写真(350倍)から写し取ったも
のである。
【図3】本発明の非含浸型基材の断面図であって、電子
顕微鏡にて撮影した写真(350倍)から写し取ったも
のである。
【図4】本発明の非含浸型基材の断面図であって、電子
顕微鏡にて撮影した写真(350倍)から写し取ったも
のである。
【符号の説明】
1 ・・・ マトリックス繊維 2 ・・・ バインダー繊維表面に露出するように配さ
れた弾性ポリマー 3 ・・・ バインダー繊維に配されたコア部 4 ・・・ 単独結合単位である完全融着部分 5 ・・・ 複合結合単位である完全融着部 6 ・・・ 単独結合単位である部分融着部 7 ・・・ 複合結合単位である部分融着部 8 ・・・ 弾性結合点

Claims (38)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マトリックス繊維と、弾性ポリマーがそ
    の表面に配されたバインダー繊維とから構成され、その
    際該バインダー繊維は該マトリックス繊維中に分散しな
    がらマトリックス繊維に融着している繊維集合体におい
    て、該集合体はa〜eの要件を同時に具備することを特
    徴とする人工皮革用基布として有用な非含浸型基材。 a.基材全重量に占める弾性ポリマーの割合は2.5〜
    25%の範囲にあること; b.密度が0.15〜0.30gr/cm3の範囲にあ
    ること; c.バインダー繊維を構成する弾性ポリマーが、 c−1.個々のマトリックス繊維に融着してなる単独結
    合単位、及び c−2.近接状態にある複数本のマトリックス繊維に集
    合的に融着してなる複合結合単位が散在すること; d.該単独結合単位及び/又は複合結合単位にあって、 d−1.一部のマトリックス繊維が、その全周長に亘っ
    て弾性ポリマーにより被覆されながら融着されている完
    全融着部、及び d−2.他の一部のマトリックス繊維が、その全周長に
    亘って弾性ポリマーにより被覆されながらも、両者がそ
    の界面部で局所的に非接触状態にあるような部分融着部
    が形成され、その際、 d−3.該完全融着部と部分融着部との個数比率が、
    (99:1)〜(76:24)の範囲にあること;そし
    て e.バインダー繊維同士の交差点が弾性ポリマーにより
    融着され弾性結合点が形成されていること。
  2. 【請求項2】 基材全重量に占める弾性ポリマーの割合
    が5〜15%の範囲にある、請求項1記載の非含浸型基
    材。
  3. 【請求項3】 近接状態にあるマトリックス繊維の本数
    が2〜5本の範囲にある、請求項1記載の非含浸型基
    材。
  4. 【請求項4】 完全融着部と部分融着部との合計個数と
    弾性結合点との個数比率が(95:5)〜(50:5
    0)の範囲にある、請求項1記載の非含浸型基材。
  5. 【請求項5】 マトリックス繊維とバインダー繊維との
    混綿率の重量比が(95:5)〜(50:50)の範囲
    にある、請求項1記載の非含浸型基材。
  6. 【請求項6】 一部のマトリックス繊維は、その繊維横
    断面周長の65%以上の周長部分が弾性ポリマーと非接
    触状態にある、請求項1記載の非含浸型基材。
  7. 【請求項7】 一部のマトリックス繊維は、その繊維横
    断面周長の35%を越える周長部分が弾性ポリマーと接
    触状態にある、請求項1記載の非含浸型基材。
  8. 【請求項8】 バインダー繊維が、弾性ポリマーと非弾
    性ポリマーとから構成され、該弾性ポリマーがその繊維
    表面に露出している、請求項1記載の非含浸型基材。
  9. 【請求項9】 弾性ポリマーがバインダー繊維の繊維表
    面積の30%以上を占めるように露出している、請求項
    8記載の非含浸型基材。
  10. 【請求項10】 バインダー繊維を構成する弾性ポリマ
    ーと非弾性ポリマーとが、該バインダー繊維を加熱・加
    圧処理した際に、互いに分離しないような関係である、
    請求項8記載の非含浸型基材。
  11. 【請求項11】 弾性ポリマーがポリエステル系エラス
    トマーである、請求項8記載の非含浸型基材。
  12. 【請求項12】 非弾性ポリマーがポリブチレンテレフ
    タレートである、請求項8記載の非含浸型基材。
  13. 【請求項13】 マトリックス繊維として高収縮性繊維
    を含む、請求項1記載の非含浸型基材。
  14. 【請求項14】 マトリックス繊維として自己伸長性繊
    維を含む、請求項1または13記載の非含浸型基材。
  15. 【請求項15】 高収縮性繊維が、非弾性ポリエステル
    系ポリマーからなる、請求項13記載の非含浸型基材。
  16. 【請求項16】 高収縮性繊維が、非弾性ナイロン系ポ
    リマーからなる、請求項13記載の非含浸型基材。
  17. 【請求項17】 自己伸長性繊維が、非弾性ポリエステ
    ル系ポリマーからなる、請求項14記載の非含浸型基
    材。
  18. 【請求項18】 自己伸長性繊維が、非弾性ナイロン系
    ポリマーからなる、請求項14記載の非含浸型基材。
  19. 【請求項19】 マトリックス繊維とバインダー繊維と
    の混綿率がそれぞれ異なる不織布が少なくとも2層積層
    された、請求項1記載の非含浸型基材。
  20. 【請求項20】 積層され、隣接状態にある不織布間で
    のバインダー繊維の混綿率が下記一般式(I)を満足す
    る、請求項19記載の非含浸型基材。 【数1】10≦|W1−W2|≦30 … (I) (式中、W1およびW2は、隣接する夫々の不織布層中
    のバインダー繊維の混綿率(wt%)を表わす。)
  21. 【請求項21】 積層され、隣接状態にある不織布間で
    のマトリックス繊維の混綿率が下記一般式(II)を満足
    する、請求項19記載の非含浸型基材。 【数2】0≦|M1−M2|≦40 … (II) (式中、M1及びM2は、隣接する不織布層中のマトリ
    ックス繊維の混綿率(wt%)を表わす。)
  22. 【請求項22】 加圧・加熱処理をエンボスロールによ
    り行って、非含浸型基材表面に多数の凹凸形状を散在さ
    せることにより、平面方向に対して融着部の規則的な密
    度分布を形成させることを特徴とする、請求項1記載の
    非含浸型基材。
  23. 【請求項23】 エンボスロールにより形成される非含
    浸型基材表面の柄が、凹部と凸部の体積比が(凹部:凸
    部)=(5〜95)〜(95:5)の範囲内となる、請
    求項22記載の非含浸型基材。
  24. 【請求項24】 エンボスロールにより形成される非含
    浸型基材の表面の柄が、凹部から凸部までの厚み方向の
    長さが、基材の厚みの3〜50%の範囲内となる、請求
    項22記載の非含浸型基材。
  25. 【請求項25】 20%伸長回復率が厚み方向と直交す
    る平面上での全方位のうち該平面上で直交する二軸が共
    に50〜90%の範囲にある、請求項1記載の非含浸型
    基材。
  26. 【請求項26】 カンチレバー法により測定した剛軟度
    が厚み方向と直交する平面上での全方位のうち該平面上
    で直交する二軸が共に2〜20cmの範囲にある、請求
    項1記載の非含浸型基材。
  27. 【請求項27】 厚み方向の通気度が10〜100cm
    3/cm2/sec at 124Paの範囲にある、請求
    項1記載の非含浸型基材。
  28. 【請求項28】 マトリックス繊維と、弾性ポリマーが
    その表面に配されたバインダー繊維とから構成され、且
    つ該バインダー繊維は該マトリックス繊維中に分散しな
    がらマトリックス繊維に融着している繊維集合体を、以
    下のa〜eの要件を同時に満足するように不織布を熱成
    形して非含浸型基材を製造するに際し、下記f及びgの
    工程を逐次的に含むことを特徴とする人工皮革用基布と
    して有用な非含浸型基材の製造方法。 a.基材全重量に占める弾性ポリマーの割合は2.5〜
    25%の範囲にあること; b.密度が0.15〜0.30gr/cm3の範囲にあ
    ること; c.バインダー繊維を構成する弾性ポリマーが、 c−1.個々のマトリックス繊維に融着してなる単独結
    合単位、及び c−2.近接状態にある複数本のマトリックス繊維に集
    合的に融着してなる複合結合単位が散在すること; d.該単独結合単位及び/又は複合結合単位にあって、 d−1.一部のマトリックス繊維が、その全周長に亘っ
    て弾性ポリマーにより被覆されながら融着されている完
    全融着部、及び d−2.他の一部のマトリックス繊維が、その全周長に
    亘って弾性ポリマーにより被覆されながらも、両者がそ
    の界面部で局所的に非接触状態にあるような部分融着部
    が形成され、その際、 d−3.該完全融着部と部分融着部との個数比率が、
    (99:1)〜(76:24)の範囲にあること;そし
    て e.バインダー繊維同士の交差点が弾性ポリマーにより
    融着され弾性結合点が形成されていること。 f.マトリックス繊維とバインダー繊維とを少なくとも
    含むウェッブに、強制絡合処理及び収縮処理を施す工
    程。 g.かくして得られた不織布に、上記バインダー繊維の
    接着温度で加圧・加熱処理を行う工程。
  29. 【請求項29】 工程fにおいて、該バインダー繊維の
    混綿率が異なる少なくとも2種のウェッブを積層し、強
    制絡合処理及び収縮処理を施す、請求項30記載の非含
    浸型基材の製造方法。
  30. 【請求項30】 マトリックス繊維が、200℃の乾熱
    で5分間の処理を行った後の複屈折率が0.02〜0.
    14の範囲にあり、且つその際の結晶化度が10〜35
    %の範囲にある、請求項28記載の非含浸型基材の製造
    方法。
  31. 【請求項31】 マトリックス繊維が、70℃温水中で
    1分間保持したときの収縮率が20〜70%であって、
    且つ該保持後の短繊維を180℃の乾熱下1分間処理し
    た後の伸長性が5〜50%の範囲にある高収縮性短繊維
    を含む、請求項28記載の非含浸型基材の製造方法。
  32. 【請求項32】 マトリックス繊維が、70℃温水中で
    実質的に収縮せずに、180℃の乾熱下1分間処理した
    後の伸長性が5〜50%の範囲にある自己伸長性短繊維
    を含む、請求項28記載の製造方法。
  33. 【請求項33】 加圧・加熱処理により、バインダー繊
    維に配されている弾性ポリマー同士が相互に接触してい
    る点の、少なくとも一部を融着させて不織布中に網目構
    造を形成する、請求項29記載の非含浸型基材の製造方
    法。
  34. 【請求項34】 加圧・加熱処理をエンボスロールによ
    り行って、非含浸型基材表面に多数の凹凸形状を散在さ
    せることにより、平面方向に対して融着部の規則的な密
    度分布を形成させる、請求項28記載の非含浸型基材の
    製造方法。
  35. 【請求項35】 エンボスロールにより形成される非含
    浸型基材表面の柄が、凹部と凸部の体積比が(凹部:凸
    部)=(5〜95)〜(95:5)の範囲内となる、請
    求項28記載の非含浸型基材の製造方法。
  36. 【請求項36】 エンボスロールにより形成される非含
    浸型基材の表面の柄が、凹部から凸部までの厚み方向の
    長さが、基材の厚みの3〜50%の範囲内となる、請求
    項28記載の非含浸型基材の製造方法。
  37. 【請求項37】 加圧・加熱処理時の圧力条件が、線圧
    で50〜1500kg/cmである、請求項28記載の
    非含浸型基材の製造方法。
  38. 【請求項38】 強制絡合がニードルパンチにより施さ
    れる、請求項28記載の非含浸型基材の製造方法。
JP10002456A 1998-01-08 1998-01-08 人工皮革用基布として有用な非含浸型基材およびその製造方法 Pending JPH11200255A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003076179A1 (de) * 2002-03-11 2003-09-18 Fibertex A/S Vliesmaterial mit elastischen eigenschaften

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