JPH11200140A - アクリル系前駆体繊維の製造方法 - Google Patents

アクリル系前駆体繊維の製造方法

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JPH11200140A
JPH11200140A JP399298A JP399298A JPH11200140A JP H11200140 A JPH11200140 A JP H11200140A JP 399298 A JP399298 A JP 399298A JP 399298 A JP399298 A JP 399298A JP H11200140 A JPH11200140 A JP H11200140A
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acrylonitrile
based polymer
polymer
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JP399298A
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Yoshihiko Hosako
芳彦 宝迫
Mitsuo Hamada
光夫 浜田
Hideto Kakita
秀人 柿田
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Mitsubishi Rayon Co Ltd
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Mitsubishi Rayon Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高強度と高弾性率を発現し得る高性能炭素繊
維を製造するのに好適なアクリロニトリル系重合体の組
成を維持しながら、アクリロニトリル系重合体溶液のゲ
ル化を防止し、工業的に安定して高品質なアクリル系前
駆体繊維の製造する方法を提供する。 【解決手段】 カルボキシル基を5×10-5〜2×10
-4当量/g含有し、且つサルフェート基及び/又はスル
ホ基を5×10-6当量/g以上含有するアクリロニトリ
ル系重合体をアミド結合を含有しない有機溶剤に溶解し
紡糸するアクリル系前駆体繊維の製造方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は炭素繊維及び黒鉛繊
維(以下、両者を併せて単に炭素繊維という。)の製造
に好適なアクリル系前駆体繊維の製造方法に関する。更
に詳しくは、アクリル系前駆体繊維を紡糸する際のアク
リロニトリル系重合体溶液の安定性を改善し、工業的に
優れたアクリル系前駆体繊維の製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】従来、アクリル系繊維を前駆体繊維とす
る炭素繊維は、その優れた力学的性質により、航空宇宙
用途を始め、スポーツ、レジャー用途の複合材料の補強
繊維として広い範囲で利用されている。更に、これらの
複合材料の高性能化のために炭素繊維の品質、性能の向
上、更に製造コストの低減により、産業資材用途への広
がりが期待されている。
【0003】炭素繊維の前駆体として用いるアクリル系
繊維は、衣料用アクリル系繊維とは異なり、あくまでも
最終製品である炭素繊維を製造するための中間製品であ
るから、得られた炭素繊維の品質、性能の向上が不可欠
であると同時に、前駆体紡糸時の安定性に優れ、且つ炭
素繊維とする焼成工程において生産性が高く、低コスト
で提供し得ることが極めて重要である。
【0004】このような観点から、炭素繊維の高強度、
高弾性化を目的としたアクリル系前駆体繊維について数
多くの提案がなされてきた。
【0005】まず、アクリル系前駆体繊維の原料となる
アクリロニトリル系重合体においては、繊維への賦形性
はもちろん、焼成工程での複雑な熱化学反応について十
分に考慮する必要があり、性能、品質ともに優れた炭素
繊維をより低コストで製造でき、焼成熱処理により炭素
構造に至らしめる際、フェージング発生や炭素繊維の性
能低下を防ぐするため、原料であるアクリロニトリル系
重合体は熱分解物生成が少なく、且つ短時間の焼成で炭
素構造への転換が可能であるような熱反応特性を有する
ことが望ましい。
【0006】従来提案されてきたものからその知見をま
とめてみると、以下の(1)〜(3)が高性能炭素繊維
を製造するアクリロニトリル系重合体組成として一般的
な技術となっている。 (1)アクリル系前駆体繊維を構成するアクリロニトリ
ル系重合体としては、アクリロニトリル単位を90重量
%以上含有することが好ましい。 (2)焼成過程を短時間で通過させるため適当な反応開
始基、すなわちニトリル基の環化縮合反応を促進する官
能基、例えばカルボン酸基、を導入することが有効であ
る。 (3)更にこれらの条件をふまえながら、前駆体繊維へ
の賦形を容易にすべく、その他のビニル系単量体を共重
合する。
【0007】又、アクリロニトリル系重合体を溶解する
溶剤としては、炭素繊維の性能を維持する上で、無機物
を使用しないことが好ましく、ジメチルホルムアミド、
ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの有
機溶剤が好ましく使用されている。
【0008】更に、アクリロニトリル系重合体を有機溶
剤に溶解した紡糸原液が長時間に亘ってゲル化せず、紡
糸によって得られるアクリル系前駆体繊維がゲルに起因
する欠陥点のない高品質なものであることが必要であ
る。
【0009】特に高性能炭素繊維の製造に用いられるア
クリロニトリル系重合体はアクリロニトリルの含有率が
高く溶剤への溶解性が低下するので、比較的溶解性の高
い溶剤を用いても高温での溶解が必要となる。一方、耐
炎化(ニトリル基の環化反応)反応を促進し短時間で焼
成を完了するためにアクリロニトリル系重合体には上述
のように反応開始基を導入した場合は、重合体の溶解操
作及び溶解後の温度保持によっても重合体は環化反応が
進み、重合体の変質によりゲル化し易くなる。
【0010】特に、アクリロニトリル系重合体溶液の貯
蔵及び送液工程での滞留は、不必要に長時間に亘って加
熱されるため、環化反応を起こしやすい炭素繊維用のア
クリロニトリル系重合体は容易にゲル化することとな
る。
【0011】かくして発生したアクリロニトリル系重合
体溶液中のゲルは、紡糸工程でのノズル孔閉塞や原液吐
出流動の変化の原因となり、アクリル系前駆体繊維に製
造工程での糸切れの問題の原因となったり、糸の内部欠
陥として炭素繊維の品質低下の原因となっている。
【0012】上記問題の対策としては、アクリロニトリ
ル系重合体溶液の貯蔵、送液部分での滞留を極力なくす
処置や、アクリロニトリル系重合体溶液を濾過するなど
してゲルを除去することが行われているが、抜本的な対
策とは言い難い。
【0013】従来から多くの方式が提案されているにも
かかわらず、炭素繊維前駆体繊維として、高い生産性を
有し、高性能な炭素繊維を与えるアクリル系前駆体繊維
を工業的な規模で安定的に製造する上で、原液のゲル化
を防止することは重要であり、このような観点での製造
方法が提案されていないのが現状である。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高強度と高
弾性率を発現し得る高性能炭素繊維を製造するのに好適
なアクリロニトリル系重合体の組成を維持しながら、ア
クリロニトリル系重合体溶液のゲル化を防止し、工業的
に安定して高品質なアクリル系前駆体繊維の製造する方
法を提供することを課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は、カルボン酸基
を5×10-5〜2×10-4当量/g含有し、且つ硫酸基
及び/又はスルホン酸基を5×10-6当量/g以上含有
するアクリロニトリル系重合体をアミド結合を含有しな
い有機溶剤に溶解し紡糸することを特徴とするアクリル
系前駆体繊維の製造方法を主な要旨とする。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明に用いるアクリロニトリル
系重合体は、カルボン酸基を5×10-5〜2×10-4
量/g含有することが必要である。カルボン酸基は、焼
成工程での耐炎化反応性を高める役割を果たすが、反
面、炭素繊維とした後は欠陥点となるため、その含有量
は重要である。カルボン酸基の含有量が5×10-5当量
/g未満の場合、熱反応性が低いので、更に高温での処
理を必要とし、暴走反応を招き易くなる。安定した焼成
工程通過性を得る事が困難となるだけでなく、暴走反応
を抑制するために、低速度での焼成を行う必要が生じ経
済的でない。
【0017】逆にカルボン酸基の含有量が2×10-4
量/gを越えるとアクリロニトリル系重合体中のニトリ
ル基の環化反応が迅速になり過ぎ繊維内部にまで酸化反
応が進行せず、繊維表層に近い部分のみ耐炎化構造が進
行することになる。繊維表層のみ耐炎化した繊維は炭素
化反応において繊維中心部の耐炎化構造未発達な部分の
分解が抑制できず、炭素繊維の性能、特に引張弾性率の
著しい低下をもたらすので好ましくない。
【0018】本発明において、アクリロニトリル系重合
体へのカルボン酸基を導入する方法としては、アクリル
酸、メタアクリル酸、イタコン酸等のカルボン酸基を有
するビニル系単量体をアクリロニトリルと共重合するこ
とによって容易に達成される。
【0019】更に、本発明に用いるアクリロニトリル系
重合体は、硫酸基及び/又はスルホン酸基を5×10-6
当量/g以上含有することが必要である。硫酸基及び/
又はスルホン酸基はアクリロニトリル系重合体が溶液状
態でのゲル化を防止する役目を果たす。
【0020】本発明者らの検討によると、アクリロニト
リル系重合体中の硫酸基及び/又はスルホン酸基は、溶
液状態のアクリロニトリル系重合体が環化反応を起こし
劣化するのを防止するが、耐炎化反応時の環化縮合反応
は遅延、阻害しないことを確認している。これは、溶液
状態のアクリロニトリル系重合体が受ける熱履歴と耐炎
化反応時に受ける熱履歴は基本的に異なるためと考えら
れる。本発明に用いられるアクリロニトリル系重合体
は、紡糸工程と耐炎化工程で、環化反応に対する相反す
る要求を満足するものである。
【0021】本発明において、アクリロニトリル系重合
体中の硫酸基及び/又はスルホン酸基の含有量が5×1
-6当量/g未満では、ゲル化を防止する効果が不十分
である。硫酸基及び/又はスルホン酸基量の上限は特に
限定するものではないが、硫酸基及び/又はスルホン酸
を含有する単量体の共重合量が必要以上に増えると、炭
素繊維とした後、その部位が欠陥点となり、炭素繊維の
性能を低下させる結果となる。従って硫酸基及び/又は
スルホン酸基の含有量の上限は4×10-5当量/g以下
が好ましい。
【0022】本発明において、アクリロニトリル系重合
体への硫酸基及び/又はスルホン酸基の導入方式として
は、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、p−スチ
レンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スルホアルキルア
クリレート、スルホアルキルメタクリレート、アクリル
アミドアルカンスルホン酸、又はそれらのアンモニウム
塩等のスルホン酸基含有ビニル単量体をアクリロニトリ
ルと共重合する方法、又は過硫酸塩/亜硫酸塩触媒、あ
るいはそれらのアンモニウム塩を用い、アクリロニトリ
ル系重合体の末端に硫酸基及び/又はスルホン酸基を導
入する方法のどちらも採用できる。又、必要に応じて上
記の方法を併用することも可能である。
【0023】本発明に用いるアクリロニトリル系重合体
は、アクリロニトリル単位を96重量%以上含有するこ
とが好ましい。アクリロニトリル単位の含有量が96重
量%に満たない場合は、炭素繊維にしたときにアクリロ
ニトリル以外の共重合成分が欠陥点となり易く、炭素繊
維の品質並びに性能を損なうことがある。
【0024】本発明に用いるアクリロニトリル系重合体
は、上記条件を満足する限り、カルボン酸基含有ビニル
単量体、スルホン酸基含有ビニル単量体及び硫酸基含有
ビニル単量体以外にも、アクリル酸、メタクリル酸のエ
ステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル
アミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミ
ド、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、
無水マレイン酸、メタクリロニトリル、スチレン、α−
メチルスチレン等の単量体を共重合してよい。
【0025】本発明において、アクリロニトリル系重合
体の重合方法は特に限定されず、溶液重合、懸濁重合等
公知の方法の何れをも採用することができる。
【0026】本発明ではアクリロニトリル系重合体の重
合開始剤、触媒は特に限定しないが、アゾ系化合物、有
機過酸化物、又は過硫酸/亜硫酸、塩素酸/亜硫酸ある
いはそれらのアンモニウム塩等のレドックス触媒が挙げ
られる。アゾ系化合物又は有機過酸化物が開始剤として
使用する場合は、硫酸基及びスルホン酸基をアクリロニ
トリル系重合体中に導入することができないため、硫酸
基及び/又はスルホン酸基含有単量体を共重合する必要
がある。
【0027】過硫酸/亜硫酸、塩素酸/亜硫酸又はそれ
らのアンモニウム塩等のレドックス触媒を用いた場合、
アクリロニトリル系重合体中に硫酸基、スルホン酸基が
導入されるため、効率よく本発明のアクリロニトリル系
重合体を得ることができる。重合開始剤として、過硫酸
アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム及び硫酸を併用
することが特に好ましい。
【0028】本発明のアクリロニトリル系重合体を重合
する方法として、最適な方法として、オーバーフロー式
の重合容器にアクリロニトリル等の単量体、蒸留水、重
合開始剤として、過硫酸アンモニウム、亜硫酸水素アン
モニウム及び硫酸を毎分一定量供給し、一定の温度に維
持しながら攪拌を続け、オーバーフローしてきた重合ス
ラリーから洗浄、乾燥を経てアクリロニトリル系重合体
を得る方法が挙げられる。
【0029】上記の方法で重合されたアクリロニトリル
系重合体は、未反応単量体や重合触媒残査、その他の不
純物を極力のぞくことがゲル化を防止する上で好まし
い。又、前駆体繊維の紡糸工程での延伸特性や炭素繊維
の性能発現性などの点から、重合体の重合度は極限粘度
[η]が1以上、1.4以上が更に好ましい。
【0030】本発明では、アクリロニトリル系重合体を
溶解する溶剤として、アミド結合を有しない有機溶剤を
使用する。このような有機溶剤としては、ジメチルスル
ホキシド、及びプロピレンカーボネートなどの環状カー
ボネートが挙げられる。アクリロニトリル系重合体への
溶解性の面からジメチルスルホキシドが最も好ましい。
【0031】アミド結合を有する有機溶剤、例えばジメ
チルホルムアミドやジメチルアセトアミドは、加水分解
によりアミン化合物が容易に生成し、このアミン化合物
がアクリロニトリル系重合体の環化反応を促進し、原液
の安定性を阻害する原因となるためである。一方、アミ
ド結合を含有しない溶剤として、塩化亜鉛、チオシアン
酸ナトリウム等の無機化合物の水溶液もあるが、アクリ
ル系前駆体繊維中に入った金属は容易に取り除くことが
できず、炭素繊維とした後その部位が欠陥点となり、炭
素繊維の性能を低下させる結果となる。
【0032】本発明でゲル化とは、良好な流動性を有す
るアクリロニトリル系重合体溶液が、上述した原因等に
よって溶液の粘度が上昇することを意味する。欠陥点の
ないアクリル系前駆体繊維を安定して製造するために
は、低温から高温に至る広い温度範囲においてアクリロ
ニトリル系重合体溶液がゲル化しない安定なものである
ことが必要である。
【0033】本発明においては、アクリロニトリル系重
合体溶液のゲル化挙動については、アクリロニトリル系
重合体溶液を一定温度で保存し、その粘度変化を経時的
に測定することで評価する。粘度の経時変化が小さいほ
ど安定なアクリロニトリル系重合体溶液といえる。
【0034】本発明では、溶剤に20重量%で溶解し、
30、50、及び85℃にそれぞれ10日放置した後の
粘度η30、η50、及びη85と溶解直後の粘度ηとの比η
30/η、η50/η、及びη85/ηを計算し、粘度比がい
ずれも1.1以下であるアクリロニトリル系重合体を用
いることが好ましい。上記の粘度比により20〜90℃
の温度範囲でのアクリロニトリル系重合体溶液のゲル化
特性の見当がつく。この測定に用いる粘度測定方法は特
に限定しないが落球粘度測定法が好適に用いることがで
きる。
【0035】本発明においては、アクリロニトリル系重
合体を有機溶剤に溶解する方法は、特に限定しないが、
最も好ましい有機溶剤であるジメチルスルホキシドは常
温で固体であるため、溶液重合でアクリロニトリル系重
合体を重合する場合は特に問題はないが、一旦重合した
アクリロニトリル系重合体を粉体として、これを有機溶
剤に溶解する場合には、アクリロニトリル系重合体と固
体状態のジメチルスルホキシドを規定量の粉体状態で混
合し、攪拌混合しながら加熱溶解してアクリロニトリル
系重合体溶液を得る方法が最も好ましい。
【0036】アクリル系前駆体繊維は、緻密な構造を有
することが、高性能炭素繊維を得る上で有利であり、こ
のためには、ある程度以上ポリマー濃度を有するアクリ
ロニトリル系重合体溶液を使用することが好ましく、ア
クリロニトリル系重合体濃度としては17重量%、更に
好ましくは19重量%以上である。
【0037】本発明においては、アクリロニトリル系重
合体溶液を紡糸する条件については特に限定しない。ア
クリロニトリル系重合体溶液は通常円形断面を有するノ
ズル孔より湿式紡糸法又は乾湿式紡糸法により紡出され
凝固糸となる。
【0038】紡糸ドラフトは、アクリロニトリル系重合
体濃度、延伸倍率に応じ、所望のデニール繊維が得られ
るように適切に設定すればよい。凝固糸は、洗浄、延伸
工程を経た後、油剤処理を施し、乾燥される。乾燥後必
要に応じて加熱ロールや加熱スチーム下で再度延伸が施
され、アクリル系前駆体繊維が得られる。
【0039】油剤の種類は特に限定するものではない
が、アミノシリコン系界面活性剤が好適に使用できる。
【0040】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。ただし、実施例中において、アクリロニトリル、ア
クリルアミド、及びメタクリル酸はそれぞれAN、AA
m、及びMAAと表し、%は重量%を表す。
【0041】(イ)「アクリロニトリル系重合体の組
成」 アクリロニトリル系重合体の組成は、1H−NMR法
(日本電子GSZ−400型超伝導FT−NMR)によ
り定量した。
【0042】(ロ)「アクリロニトリル系重合体の極限
粘度[η]」 25℃のジメチルホルムアミド溶液で測定した。
【0043】(ハ)アクリロニトリル系重合体の溶液粘
度 落球粘度測定法にて測定した。
【0044】(ニ)「カルボン酸基、硫酸基及び/又は
スルホン酸基の定量」 カルボン酸基の定量は、上述(イ)の1H−NMRによ
り定量した。硫酸基及び/又はスルホン酸基の定量は、
共重合体の2%ジメチルフォルムアミド溶液を陰陽混合
イオン交換樹脂に通して電離性不純物を除去後、陽イオ
ン交換樹脂に通して強酸基イオンを酸型に転換し、電位
差滴定により、アクリロニトリル系重合体1g当たりの
全強酸性基の当量数を求めた。
【0045】(ホ)「炭素繊維のストランド強度・弾性
率」 JIS−7601に記載の方法に準じて測定した。
【0046】(実施例1)オーバーフロー式の重合容器
にAN、AAm、MAAと蒸留水、そして重合開始剤の
過硫酸アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム及び硫酸
を毎分一定量供給し50℃に維持しながら攪拌を続け、
オーバーフローしてきた重合スラリーから洗浄、乾燥を
経てアクリロニトリル系重合体を得た。ここで硫酸は重
合容器中のpHを概略3に調整するため添加するもので
ある。この重合体の組成及びカルボン酸基、硫酸基及び
/又はスルホン酸基量を表1に示した。また、この重合
体の極限粘度[η]は1.7であった。
【0047】このアクリロニトリル系共重合体とジメチ
ルスルホキシドを所定量常温でニーダーで混合したの
ち、100℃に加熱して、重合体濃度20重量%のアク
リロニトリル系重合体溶液を調製した。
【0048】このアクリロニトリル系重合体溶液を30
℃、50℃、85℃にそれぞれ調温し落球粘度を測定し
た。更に10日間放置後同様な方法で落球粘度を測定
し、結果を表2に示した。粘度上昇がなく、ゲル化しに
くい安定なアクリロニトリル系重合体溶液であった。
【0049】このアクリロニトリル系重合体溶液を直径
0.075mm、孔数3000の口金を用いて、濃度5
0%、浴温35℃のジメチルアセトアミド水溶液中に吐
出して凝固繊維とし、更にこの凝固繊維を空気中で1.
5倍、更に温水中で3.4倍延伸しながら洗浄、脱溶剤
した後、シリコン系油剤溶液中に連続的に浸漬して油剤
を付与し、140℃の加熱ローラーにて乾燥緻密化し
た。引き続いて、180℃の熱盤上で1.5倍延伸し、
捲取速度77m/分にて1.1デニールの円形断面を有
する前駆体繊維を得た。
【0050】この繊維を空気中230〜260℃の熱風
循環式耐炎化炉にて5%の伸張を付与しながら50分間
処理し、耐炎化繊維となし、引き続き該繊維を窒素雰囲
気下最高温度600℃、伸張率5%にて1.5分間低温
熱処理し、更に同雰囲気下で最高温度が1200℃の高
温熱処理炉にて−4%の伸張の下、約1.5分処理し
た。得られた炭素繊維のストランド強度は450kg/
mm2(4.4GPa)、ストランド弾性率は25.3
ton/mm2(248GPa)であった。
【0051】(比較例1)実施例1で得たアクリロニト
リル系重合体とジメチルアセトアミドを所定量ニーダー
で混合したのち、100℃に加熱して、重合体濃度20
重量%のアクリロニトリル系重合体溶液を調製した。
【0052】このアクリロニトリル系重合体溶液を30
℃、50℃、及び85℃で落球粘度を測定し、更に10
日間放置後同様な方法で落球粘度を測定し、結果を表2
に示した。30℃と85℃で粘度上昇が見られた。
【0053】(実施例2)オーバーフロー式の重合容器
にAN、MAAと蒸留水、そして重合開始剤の過硫酸ア
ンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム及び硫酸を毎分一
定量供給し50℃に維持しながら攪拌を続け、オーバー
フローしてきた重合スラリーから洗浄、乾燥を経てアク
リロニトリル系重合体を得た。この重合体の組成及びカ
ルボン酸基、硫酸基及び/又はスルホン酸基量を表1に
示した。また、この重合体の極限粘度[η]は1.9で
あった。
【0054】このアクリロニトリル系共重合体とジメチ
ルスルホキシドを所定量常温でニーダーで混合したの
ち、110℃に加熱して、重合体濃度20重量%のアク
リロニトリル系重合体溶液を調製した。
【0055】このアクリロニトリル系重合体溶液を30
℃、50℃、85℃で落球粘度を測定し、更に10日間
放置後同様な方法で落球粘度を測定した。この結果を表
2に示したが、粘度上昇のない安定な原液であった。
【0056】このアクリロニトリル系重合体溶液を直径
0.15mm、孔数1500の口金を用いて、濃度40
%、浴温35℃のジメチルスルホキシド水溶液の凝固浴
へ乾湿式紡糸法で紡出し凝固繊維とし、更にこの凝固繊
維を空気中で1.2倍、更に温水中で3.8倍延伸しな
がら洗浄、脱溶剤した後、シリコン系油剤溶液中に連続
的に浸漬し、140℃の加熱ローラーにて乾燥緻密化し
た。引き続いて、180℃の熱盤上で1.6倍延伸し、
捲取速度77m/分にて1.1デニールの円形断面を有
する前駆体繊維を得た。
【0057】この繊維を空気中230〜260℃の熱風
循環式耐炎化炉にて5%の伸張を付与しながら45分間
処理し、耐炎化繊維となし、引き続き該繊維を窒素雰囲
気下最高温度600℃、伸張率5%にて1.5分間低温
熱処理し、更に同雰囲気下で最高温度が1350℃の高
温熱処理炉にて−4%の伸張の下、約1.5分処理し
た。得られた炭素繊維のストランド強度は520kg/
mm2(5.1GPa)、ストランド弾性率は27.3
ton/mm2(268GPa)であった。
【0058】(比較例2)実施例2と同様なアクリロニ
トリル系重合体とジメチルホルムアミドを所定量ニーダ
ーで混合したのち、110℃に加熱して、重合体濃度2
0重量%のアクリロニトリル系重合体溶液を調製した。
このアクリロニトリル系重合体溶液を30℃、50℃、
85℃で落球粘度を測定し、更に10日間放置後同様な
方法で落球粘度を測定し、結果を表2に示した。温度全
領域に渡り粘度上昇が著しく、特に85℃で著しく粘度
上昇が見られ、10日後には完全にゲル化し、流動性を
失った。85℃の粘度比のみ、6日後の溶液粘度/初期
粘度を算出した。
【0059】(比較例3)オーバーフロー式の重合容器
にAN、AAm、MAAと蒸留水、ジメチルアセトアミ
ド、そして重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリルを
毎分一定量供給し、65℃に維持しながら攪拌を続け、
オーバーフローしてきた重合スラリーから洗浄、乾燥を
経てアクリロニトリル系共重合体を得た。各共重合体の
組成及びカルボン酸基、硫酸基及び/又はスルホン酸基
量を表1に示した。触媒量を調整し、極限粘度[η]
1.7の共重合体を得た。このアクリロニトリル系共重
合体とジメチルスルホキシドを所定量常温でニーダーで
混合したのち、100℃に加熱して、重合体濃度20重
量%のアクリロニトリル系重合体溶液を調製した。
【0060】このアクリロニトリル系重合体溶液を30
℃、50℃、85℃で落球粘度を測定し、更に10日間
放置後同様な方法で落球粘度を測定した。この結果を表
2に示した。低温領域では比較的安定であったが、85
℃で著しい粘度上昇が起こり、18日後に完全にゲル化
し、溶液は流動性を失った。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【発明の効果】本発明によれば、高強度と高弾性率を発
現し得る高性能炭素繊維を製造するのに好適なアクリロ
ニトリル系重合体の組成を維持しながら、アクリロニト
リル系重合体溶液のゲル化を防止し、工業的に安定して
高品質なアクリル系前駆体繊維の製造することが可能で
ある。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カルボン酸基を5×10-5〜2×10-4
    当量/g含有し、且つ硫酸基及び/又はスルホン酸基を
    5×10-6当量/g以上含有するアクリロニトリル系重
    合体をアミド結合を含有しない有機溶剤に溶解し紡糸す
    ることを特徴とするアクリル系前駆体繊維の製造方法。
  2. 【請求項2】 アクリロニトリル系重合体がアクリロニ
    トリル単位を96重量%以上含有するアクリロニトリル
    系重合体である請求項1記載のアクリル系前駆体繊維の
    製造方法。
  3. 【請求項3】 アクリロニトリル系重合体が過硫酸/亜
    硫酸、塩素酸/亜硫酸又はそれらのアンモニウム塩のレ
    ドックス触媒を用い重合したアクリロニトリル系重合体
    である請求項1又は2記載のアクリル系前駆体繊維の製
    造方法。
  4. 【請求項4】 アミド結合を含有しない有機溶剤に20
    重量%で溶解し、30、50、及び85℃にそれぞれ1
    0日放置した後の粘度η30'、η50'、及びη85'と溶解
    直後の粘度η30、η50、及びη85との比η30'/η30
    η50'/η50、及びη85'/η85がいずれも1.1以下で
    あるアクリロニトリル系重合体を用いる請求項1、2、
    又は3のいずれか1項記載のアクリル系前駆体繊維の製
    造方法。
  5. 【請求項5】 有機溶剤がジメチルスルホキシドである
    請求項1〜4のいずれか1項記載のアクリル系前駆体繊
    維の製造方法。
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