JPH11192094A - シゾサッカロミセス・ポンベで使用可能な誘導プロモータ、誘導発現ベクター、およびそれらの利用 - Google Patents
シゾサッカロミセス・ポンベで使用可能な誘導プロモータ、誘導発現ベクター、およびそれらの利用Info
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- JPH11192094A JPH11192094A JP10306773A JP30677398A JPH11192094A JP H11192094 A JPH11192094 A JP H11192094A JP 10306773 A JP10306773 A JP 10306773A JP 30677398 A JP30677398 A JP 30677398A JP H11192094 A JPH11192094 A JP H11192094A
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Abstract
使用可能な誘導プロモータ、誘導発現ベクター、および
それらを用いたタンパク質の生産方法。 【効果】 特定の栄養源の有無により遺伝子発現を制御
し、目的タンパク質の生産時期が制御可能になる。さら
には、自身の生理活性のために生産量が低いタンパク質
や、他の理由でこれまで生産できなかったタンパク質の
生産が可能となる。
Description
カロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)で
使用可能な誘導プロモータ、誘導発現ベクター、および
それらを用いたタンパク質の生産方法に関し、特に分裂
酵母シゾサッカロミセス・ポンベのインベルターゼプロ
モータを用いることによって特定の栄養源の有無による
遺伝子発現制御を行い、目的タンパク質の生産時期を制
御可能とするタンパク質の生産方法に関する。
(S. pombe)は真核生物でありながら遺伝学、分子生物
学、細胞生物学分野での応用がきわめて容易な単細胞生
物として広く研究されている(Nasim A. et al. eds.,
Molecular biology of the fission yeast, Academic P
ress, 1989)。その培養には炭素源としてブドウ糖(グ
ルコース)や果糖(フルクトース)等の単糖が主に用い
られる。培地中にこれら単糖が存在しない場合、ショ糖
(スクロース)をブドウ糖と果糖に分解する酵素である
インベルターゼの発現が誘導され、生育に必要な炭素源
を獲得することが知られている(Moreno S. et al., Ar
ch. Microbiol. 142, 370, 1985)。
いて、インベルターゼは細胞表層に存在しており、分子
量205000の高分子量糖タンパク質である。その6
7%が糖鎖であり、等モルのマンノース残基とガラクト
ース残基から成り立っている。精製酵素のタンパク質分
子量やアミノ酸組成および抗体を用いた実験から、分裂
酵母シゾサッカロミセス・ポンベ由来のインベルターゼ
は出芽酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyce
s cerevisiae)のインベルターゼとタンパク質化学的に
も非常に類似していることが知られている(Moreno S.
et al., Biochem. J. 267,697,1990)。またグルコース
濃度の低下によりインベルターゼの合成抑制が解除され
ることも知られている(Mitchison J. et al., Cell Sc
i 5,373,1969)。
いても同様に、固有のインベルターゼの誘導生産現象
(脱抑制)が知られている。その発現における遺伝子レ
ベルでの制御、生合成経路、糖鎖部分の構造解析等に関
する研究はすでに詳細に行われている。すなわち、出芽
酵母サッカロミセス・セレビシエのインベルターゼ遺伝
子は染色体上に6個重複しており、SUC1〜SUC5
およびSUC7という遺伝子によってコードされてい
る。このうちの1つでも活性なSUC遺伝子を持てばス
クロースとラフィノースの資化性を示すことがわかって
いる(Hohmann S. et al., Curr Genet 11, 217, 1986
)。
ポンベでは、インベルターゼタンパク質の精製について
は報告されているが(Moreno S. et al., 1985)、その
遺伝子に関しては本発明者らのグループの研究によって
最近になってようやく明らかになった。すなわち、分裂
酵母シゾサッカロミセス・ポンベのインベルターゼ遺伝
子は染色体上に2個重複しており、inv0+およびi
nv1+として同定されている。このうちinv0+はO
RF(オープンリーディングフレーム)が不完全で偽遺
伝子であると推定された。よって唯一inv1+が分裂
酵母シゾサッカロミセス・ポンベのインベルターゼをコ
ードする遺伝子である。分裂酵母シゾサッカロミセス・
ポンベはショ糖を唯一の炭素源として生育することが知
られており(橋谷義孝編、「酵母学」、岩波書店、196
7)、本インベルターゼによってショ糖の資化性を示す
ことが推定できる。
析がなされた結果、1bpから620bpの間にある特
別な配列がカタボライト抑制に関与していることが推定
された。
SUC2遺伝子から転写開始点が異なる2種類のメッセ
ンジャーRNA(mRNA)が転写されることが知られ
ている。短い方のmRNAは構成的な転写であり、細胞
内インベルターゼを発現している。長い方のmRNAは
分泌型インベルターゼをコードしており、その発現はカ
タボライト抑制を受け、その脱抑制比は200倍以上で
ある(Carlson M. etal. 、Mol. Cell. Biol. 3、439
、1983)。長い方のmRNAに対するプロモーター領
域の解析がなされた結果、−650bpから−418b
pの間にある特別な繰り返し配列に転写制御因子が結合
していると考えられている(Salokin L etal.、Mol. Ce
ll. Biol. 6、2314、1986)。また、−418位から−
140位までの領域がグルコース抑制に必要とされる領
域であることがわかっている。
域1位から2809位までの領域を比較したところ有意
な相同性は認められなかった。しかしグルコース抑制解
除に必要とされる領域の中には7bpモチーフと呼ばれ
る(A/C)(A/G)GAAATの塩基配列の繰り返
し配列が5箇所確認されており、7bpモチーフがin
v1+遺伝子の上流領域にも多数存在していることが明
らかとなった。その上グルコース抑制により制御される
遺伝子(SUC、MAL、GAL)の上流領域にはステ
ム・アンド・ループ構造と類似したパリンドローム構造
が同じような位置に存在していることが確認されてい
る。シゾサッカロミセス・ポンベにおいてinv1+遺
伝子の上流領域においてもパリンドローム構造を形成す
る領域が認められた。これらの配列は分裂酵母シゾサッ
カロミセス・ポンベにおけるグルコース抑制に重要な役
割を果たしていると考えられた。
芽酵母サッカロミセス・セレビシエとは進化系統的に全
く異なる酵母である。すでに、染色体構造、ゲノム複製
機構、RNAスプライシング機構、転写機構、翻訳後修
飾等の諸機構が他の酵母と大きく異なり、その一部は動
物細胞と類似していることが知られている。このため真
核生物のモデルとして広く用いられている(Giga-Hama
and Kumagai, eds., Foreign gene expression in fiss
ion yeast Schizosaccharomyces pombe, Springer-Verl
ag, 1997)。
種タンパク質遺伝子発現の宿主としても広く用いられて
おり、特にヒトを含む動物細胞由来の遺伝子の発現に適
していることが知られている(特開平5−15380号
公報、特開平7−163373号公報、WO96/23
890)。またゴルジ体や小胞体を含む膜構造の発達が
知られており、このことから膜タンパク質の発現にも用
いられ、高い発現量を示している。発現ベクターとして
は通常構成発現ベクター(pEVP11、pART1、
pTL2M)あるいはnmt1+遺伝子のプロモータ領
域を用いた誘導発現ベクター(pREP1)が用いられ
ている。出芽酵母サッカロミセス・セレビシエで汎用さ
れるGALタイプあるいはSUC2タイプのものは知ら
れていない。
いて出芽酵母サッカロミセス・セレビシエのSUC2遺
伝子を発現させた場合、宿主に依存してガラクトース残
基が含まれるが、カタボライト抑制を受けずに構成的な
発現がなされることが知られている(Zarate, V. et a
l., J Applied Bacteriology, 80,45,1996)。このこと
から、分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベと出芽酵母
サッカロミセス・セレビシエとでは、インベルターゼの
カタボライト抑制のメカニズムが異なっている可能性が
ある。このことは重大な意味を含む。すなわち、分裂酵
母シゾサッカロミセス・ポンベでインベルターゼ(SU
C2)型の誘導発現ベクターを作製する場合、通常当該
業者が行う方法である出芽酵母サッカロミセス・セレビ
シエのプロモータの流用は、分裂酵母シゾサッカロミセ
ス・ポンベでは行うことができない。このため、長らく
このようなタイプのベクターの開発は遅れていた。
めの手段】本発明者らは、前述の課題を解決すべく鋭意
研究を重ねた結果、新たに分裂酵母シゾサッカロミセス
・ポンベのインベルターゼ遺伝子のクローニングを行
い、誘導発現ベクターを構築することによって本発明を
完成させた。
ポンベのインベルターゼ遺伝子中のカタボイライト抑制
に関与している遺伝子領域、この遺伝子領域を利用した
誘導発現ベクター、これを用いた外来遺伝子発現システ
ム等に関する、下記の発明である。
hizosaccharomyces pombe)のインベルターゼ遺伝子中
のカタボイライト抑制に関与している遺伝子領域のDN
A。
2809番の塩基配列で表されるDNA。
イトとを含むマルチクローニングベクター。
ローニングベクター。
伝子とを含む、分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベの
形質転換用の発現ベクター。
ッカロミセス・ポンベからなる形質転換体。
タンパク質を採取することを特徴とするタンパク質の生
産方法。
子レベルでの実体が不明であった分裂酵母シゾサッカロ
ミセス・ポンベ(以下、「S. pombe」と記す)のインベ
ルターゼ遺伝子をクローニングし、塩基配列を決定し
た。遺伝子破壊法によりインベルターゼ遺伝子が1種で
すべての活性を担っていることを明らかにした。さらに
カタボライト抑制に関与している遺伝子領域の検討を
し、この領域を用いて誘導発現ベクターを作製した。実
際に緑色螢光タンパク質遺伝子を組込んだ組換えベクタ
ーを作製し、これを用いて S. pombe を形質転換した。
タンパク質の発現を活性並びに免疫学的手法によって確
認した。さらに培地中のグルコースによって発現が抑制
され、グルコースが消費されることによって外来遺伝子
の発現が脱抑制されることを見出した。
で S. pombe のインベルターゼの前駆体遺伝子を見出
し、その構造を決定した。 (1)S. pombe のcDNAライブラリーをテンプレー
トとして、他生物種起源のインベルターゼ遺伝子に良く
保存されたアミノ酸配列から作製したプライマーに用い
てPCR反応を行う。 (2)得られたPCR産物をプローブとして S. pombe
のゲノムライブラリーからプラークハイブリダイゼーシ
ョン法によりポジティブクローンを選別する。 (3)ポジティブクローンを制限酵素で消化して電気泳
動パターンを確認する。 (4)確認されたポジティブクローンからサザンハイブ
リダイゼーション法を用いて特定長のフラグメントを選
別し、全塩基配列を決定する。 (5)遺伝子破壊法を用いてインベルターゼ活性の有無
を調べる。 (6)S. pombe のインベルターゼ遺伝子における至適
pH、グルコース抑制、および脱抑制に対するグルコー
ス濃度の影響について測定する。 (7)グルコース抑制に関与している上流領域をサブク
ローニングし、必要領域を決定する。
pombe のインベルターゼの誘導発現ベクターを作製
し、具体例として緑色螢光タンパク質の誘導発現を確認
した。 (1)S. pombe 用マルチクローニングベクターpTL
2M(特開平7−163373号公報参照)を改変し
て、インベルターゼプロモータを用いた誘導発現マルチ
クローニングベクターpRI0Mを作製する。 (2)誘導発現マルチクローニングベクターpRI0M
をもとに緑色螢光タンパク質変異体誘導発現ベクターp
RI0EGFPを作製する。 (3)緑色螢光タンパク質変異体誘導発現ベクターpR
I0EGFPを用いて S. pombe 野生株を形質転換す
る。 (4)緑色螢光タンパク質変異体の発現を活性(螢光)
並びにSDS−PAGE・ウエスタンブロッティングを
用いて確認する。 (5)培地中のグルコース濃度と発現の相関から、誘導
発現の条件を決定する。
に関与している遺伝子領域を含むインベルターゼ前駆体
遺伝子の塩基配列である。カタボイライト抑制に関与し
ている遺伝子領域は、塩基番号第1番〜第2809番の
塩基配列で表されるDNA部分ないしその内部のDNA
部分にある。すなわち、実施例6や図8の解析の結果が
示すように、塩基番号第1番〜第2809番の塩基配列
で表されるDNA部分中で特に重要な領域は塩基番号第
1番から第620番までの配列部分、および第1610
番から第2610番までの配列部分である(なお、図8
は配列表1の第2810番を第1番として位置を表
記)。したがって、本発明における誘導プロモータとし
ては、これらのカタボイライト抑制に関与している遺伝
子を含んで誘導プロモータとして機能する限り、塩基番
号第1番〜第2809番の全塩基配列で表されるDNA
に限られるものではない。しかし、現実に S. pombe で
機能していることより、誘導プロモータとしては塩基番
号第1番〜第2809番の塩基配列で表されるDNAが
好ましい。
ている遺伝子を含んで誘導プロモータとして機能するD
NA、特に好ましくは塩基番号第1番〜第2809番の
塩基配列で表されるDNA、を以下誘導プロモータ遺伝
子という。この誘導プロモータ遺伝子をベクターに組み
込んでマルチクローニングベクターや発現ベクターなど
の組換えベクターを構築することができる。マルチクロ
ーニングベクターはマルチクローニングサイトを有する
ベクターであり、マルチクローニングサイトに所望の構
造遺伝子を導入することにより発現ベクターを構築する
ことができる。発現ベクターは構造遺伝子を有するベク
ターであり、構造遺伝子でコードされた異種タンパク質
の発現用に用いられる。「異種」タンパク質とは宿主が
本来有していないタンパク質であり、宿主が S. pombe
の場合、S. pombe が本来有していないタンパク質(例
えばヒトタンパク質)である。
伝子は異種タンパク質構造遺伝子の上流部に位置しその
構造遺伝子の発現を制御する。配列番号1で表される塩
基配列において、誘導プロモータ遺伝子がインベルター
ゼ前駆体の構造遺伝子の上流部にあってその発現を制御
しているように、発現ベクターにおいて誘導プロモータ
遺伝子はその下流に位置する異種タンパク質構造遺伝子
の発現を制御する。マルチクローニングベクターにおい
ても、マルチクローニングサイトに異種タンパク質構造
遺伝子が導入されることより、誘導プロモータ遺伝子は
マルチクローニングサイトの上流部に位置する。
して、図9に実施例で構築したマルチクローニングベク
ターpRI0Mのベクター構築図を示す。またこのpR
I0Mの全塩基配列を配列番号2に示す。Inv1−P
が上記誘導プロモータ遺伝子部分、MCSがマルチクロ
ーニングサイトである。本発明発現ベクターの1例とし
て、図10に実施例で構築した緑色蛍光タンパク質変異
体構造遺伝子(EGFP−ORF)導入した緑色螢光タ
ンパク質変異体誘導発現ベクターpRI0EGFPのベ
クター構築図を示す。またこの発現ベクターpRI0E
GFPの全塩基配列を配列番号13に示す。
S. pombe が有する誘導プロモータ遺伝子であることよ
り、本発明発現ベクターで形質転換される細胞(宿主)
としては S. pombe が最適である。
た S. pombe をカタボライト抑制条件下で(例えばグル
コース濃度の高い培養液中で)培養することにより異種
タンパク質を発現することなく(あるいは少ない発現量
で)S. pombe を増殖させることができる。この過程で
は、異種タンパク質の発現という負荷がないことより負
荷がある場合に比較して増殖の効率が高い。次に、カタ
ボライト抑制を解除した条件下で(例えばグルコースが
ないあるいはグルコース濃度の低い培養液中で)S. pom
be を培養することにより、カタボライト抑制条件下に
比較して S. pombe の増殖量は少なくなるが、S. pombe
の細胞量が多いことより多量の異種タンパク質が発現
する。このように S. pombe の増殖と異種タンパク質の
発現をカタボライト抑制の制御によって制御することに
より、より効率的に異種タンパク質の生産を行うことが
できる。
極的制御はもちろん、消極的な制御を行うこともでき
る。例えば、ある所定量のグルコースを含む培養液中で
形質転換された S. pombe を培養することにより、培養
初期ではグルコース量が多いことよりカタボライト抑制
下で S. pombe の増殖が進行し、培養後期ではグルコー
スが消費されてその量が少なくなることによりカタボラ
イト抑制が解除され異種タンパク質の産生が進行する。
このように積極的にグルコース量を制御することなくし
ても従来に比較して効率的に異種タンパク質の生産を行
うことができる。
詳細に説明する。
て、他生物種起源のインベルターゼ遺伝子間で良く保存
された配列部分をもとに設計した配列表の配列番号3〜
5に記載のプライマーを用いて、PCRによる増幅を行
った。その結果、300bpおよび400bpの近傍に
増幅されたバンドが得られた。それぞれのPCR産物を
EASY TRAP(宝酒造(株)製)を用いて精製し
た。pMOSBlueTベクターキット(アマシャムフ
ァルマシアバイオテク社製)を用いて得られたPCR産
物をベクターに組み込み、塩基配列の決定を行った。そ
の結果、400bpのPCR産物をアミノ酸に変換した
部分アミノ酸配列が出芽酵母サッカロミセス・セレビシ
エのSUC2遺伝子と高い相同性を示した。
して S. pombe のゲノムDNAライブラリーからプラー
クハイブリダイゼーション法により全インベルターゼ遺
伝子を含むポジティブクローンの取得を試みた。その結
果、約8000のプラークから15個のポジティブクロ
ーンが取得された。このポジティブクローンの2次スク
リーニングを行うため、再びプラークハイブリダイゼー
ションを行った。その結果、4個のポジティブクローン
が得られた。ポジティブクローンのファージDNAを少
量抽出し、種々の制限酵素で処理して切断パターンを比
較したところすべて同一であった。よって、取得された
ポジティブクローンは1種類であることがわかった。
階の方法で取得した。ハイブリッドを形成した3.0k
bのHindIII消化フラグメントを単離し、プラス
ミドpBluescript II SK−(東洋紡
(株)製)に組み込んだ。制限酵素地図を作成したとこ
ろ、BamHIおよびSalIの制限酵素部位が確認さ
れた。そこでこれらの制限酵素を用いてサブクローニン
グを行い、加えてディレーションを併用して塩基配列の
決定を行った。その結果、HindIIIフラグメント
に遺伝子のORFをすべて含むことがわかった。しかし
遺伝子発現に関与すると思われる上流領域は約200b
pしか含まなかった。そのため新たに、ハイブリッドを
形成した3.5kbのBamHI消化フラグメントをさ
らにHindIII消化によって2.6kbのフラグメ
ントとして単離し、プラスミドpBluescript
II SK−に組み込み、同様にサブクローニングとデ
ィレーションにより塩基配列を決定した。その結果、B
amHI−HindIIIフラグメントには遺伝子発現
に関与する上流配列と思われる領域が含まれていること
がわかった。得られた全長5.6kbの遺伝子をinv
1+遺伝子と名付けた。その塩基配列およびORFのア
ミノ酸配列を配列表の配列番号1に示す。この結果、i
nv1+遺伝子にはアスパラギン結合型糖鎖付加部位が
16箇所存在していることがわかった。また、S. pombe
のinv1+遺伝子配列から推定されるアミノ酸配列、
シュワニオミセス・オキシデンタリス(Schwanniomyces
occidentalis)のインベルターゼのアミノ酸配列、出
芽酵母サッカロミセス・セレビシエのSUC2遺伝子配
列から推定されるアミノ酸配列間の比較を図1に示す。
アスタリスク(*)で3種間で共通のアミノ酸を示す。
図1から明らかなように、inv1+遺伝子配列から推
定されるアミノ酸配列は、他生物種起源のインベルター
ゼであるシュワニオミセス・オシデンタリス由来のもの
や出芽酵母サッカロミセス・セレビシエ由来のものと高
い相同性を示すことがわかった。このことから、inv
1+遺伝子はインベルターゼをコードするものであると
推定された。
酵素ClaI認識部位に S. pombe 由来ura4+遺伝
子を組み込んだプラスミドを制限酵素HindIIIで
消化し、末端平滑化の後セルフライゲーション(自己環
状化)させてHindIIIサイトを破壊した。このプ
ラスミドを制限酵素XbaIおよびHincIIで二重
消化してura4+フラグメントを取得した。次にプラ
スミドpBluescript II SK−を制限酵素
SpeIで消化して末端平滑化し、さらに制限酵素Xb
aIで消化したベクターに上述のura4+フラグメン
トを組み込み、制限酵素BamHI認識部位をura4
+の両側に配置したプラスミドを作製した。プラスミド
pBluescript II SK−の制限酵素Bam
HI認識部位も上述のように制限酵素処理、末端平滑
化、セルフライゲーションにより破壊し、HindII
I部位にinv1+遺伝子のORF領域を含む3.0k
bのフラグメントを組み込んだ。このプラスミドをBa
mHIで消化して挿入フラグメント中の1.4kbのフ
ラグメント(inv1+のORFのC末端側領域を含
む)を除き、両側にBamHIサイトを持つura4+
遺伝子を組み込んだ。このプラスミドをHindIII
で消化して両端にinv1+遺伝子の近傍の領域を含む
DNAフラグメントを取得した(図2)。図2はinv
1+遺伝子の制限酵素地図を示し、inv1+遺伝子のオ
ープンリーディングフレーム(ORF)を矢印(inv
1+ORF)、置換したシゾサッカロミセス・ポンベu
ra4+遺伝子を長方形(ura4+)で示した。ORF
を含んだinv1+の1.4Kb BamHI−Bam
HIフラグメントは、S. pombe ura4+遺伝子に置き
換えられていることにより、破壊株ができた。
P4−1D〔h-、leu1、ura4、ade6−M
216、his2、登田隆博士(Imperial Cancer Rese
archFoundation)より供与〕を形質転換してウラシル無
添加の培地に生育してきたコロニーを得た。オーバーレ
イアッセイによりインベルターゼ活性について検討した
ところ、活性の消失した株は28株中7株存在してい
た。すなわち得られたura4+コロニーの中でインベ
ルターゼ活性の消失した株は25%であった。
をサザンハイブリダイゼーションによって確認した。イ
ンベルターゼ活性の消失した株からゲノムDNAを抽出
し、制限酵素HindIIIおよびSalIによって二
重消化し、inv1+遺伝子のHindIII−Sal
I消化フラグメント(2kb)をプローブとしてサザン
ハイブリダイゼーションを行った。その結果、図3に示
すようにインベルターゼ活性の消失した株の染色体DN
A上のinv1+遺伝子がura4+遺伝子に置換されて
いることをSalI消化により3kbのハイブリッドが
形成されたことから確認した。
しているインベルターゼ遺伝子は、inv1+遺伝子唯
一つであることが証明された。
理学部下田親博士より供与)に、インベルターゼ遺伝子
inv1+を制限酵素HindIIIで処理したORF
全長を含む3.0kbの切断フラグメントを組み込み、
得られた組換えベクターを用いてインベルターゼ欠損株
(実施例2)を形質転換した。得られた形質転換体をY
Pスクロース培地(10μg/mlのアンチマイシンA
および20μg/mlのブロムクレゾールパープル添
加)にストリークして、インベルターゼ活性の有無をオ
ーバーレイアッセイによって調べた。加えてインベルタ
ーゼ遺伝子inv1+の上流プロモータ領域を含む2.
6kbのBamHI−HindIII切断フラグメント
をインベルターゼ遺伝子のORFを含む2.0kbのH
indIII−SalI切断フラグメントと連結させた
4.6kbBamHI−SalI切断フラグメントをp
AU−SKに組込み、得られた組換えベクターを用いて
インベルターゼ欠損株を形質転換し、同様にインベルタ
ーゼ活性の有無をオーバーレイアッセイによって調べ
た。
Δ[pAU−SK::inv1+])においても、また野
生株TP4−1D(WT)においても、破壊株(inv
1Δ)にはみられない青い染色が観察され、インベルタ
ーゼを発現していることが確認された。さらに上流プロ
モータ領域を付加した場合、染色度がより強く、高いレ
ベルでインベルターゼを発現していることが示唆された
(図4(a)、(b))。図4(a)はゲルオーバーレ
イアッセイ写真、図4(b)は図4(a)の染色部分を
説明する模式図を示す。
lのアンチマイシン含有)における生育を調べた結果、
インベルターゼ欠損株はほとんど生育を示さなかった
が、野生株と形質転換株は30℃、5日間の培養での生
育を確認した(図5(a)、(b))。図5(a)はコ
ロニーの形態を示す写真、図5(b)は図5(a)を説
明する模式図を示す。
ルターゼを発現して細胞表層にインベルターゼを生産し
ていることが証明された。
コース濃度を決定するため、野生株TP4−1Dをそれ
ぞれグルコースを2%、4%、8%、16%の濃度で含
有する5mlのMM培地に植菌した後、対数増殖期中期
になるまで30℃で振盪培養した。菌体のインベルター
ゼの酵素活性をGoldsteinらの方法で、培養後
の培地中のグルコース濃度をフェノール硫酸法によって
測定した(図6)。図中、斜線を付したグラフは菌体あ
たりのインベルターゼ活性(U/OD)を、白抜きグラ
フは残存グルコース濃度を示す。同図から、インベルタ
ーゼ活性は、8%の濃度がグルコースの減少度も少な
く、発現抑制培養に最も適当であることがわかった。
グルコース濃度を決定するため、野生株TP4−1Dを
それぞれ、グルコースを0%、0.01%、0.05
%、0.1%、0.25%、0.5%、1.0%、2.
0%の濃度で含有するMM培地に、対数増殖期中期にな
るまで2%グルコースが含まれた培地で生育させた野生
株と形質転換株〔インベルターゼ欠損株(実施例3)を
inv1+遺伝子のBamHI−SalI領域を挿入し
たpAU−SKベクターで形質転換した株〕の前培養菌
体を移し、27℃で3時間振盪培養してインベルターゼ
活性を測定した(図7)。各点における菌体のインベル
ターゼ活性を180分間、30℃で測定した。インベル
ターゼの1Uは30℃、pH4.0のもとに、1分間に
ショ糖を1nmolのグルコースに変化させる酵素の量
を示す。
ース濃度は0.1%であり、形質転換株では0.05%
であることがわかった。また野生株では、抑制解除時の
インベルターゼ活性は抑制時の40倍の値を示した。こ
のような結果から S. pombeにおいてカタボライト抑制
が存在していることが明示された。
1位、620位、1100位、1610位、2610位
のそれぞれをinv1+遺伝子のORFと連結させたフ
ラグメントを発現ベクターpAU−SKに組み込んで5
種類の欠失体を作製した。上流領域1位、1610位、
2610位を連結させたプラスミドは、それぞれinv
1+遺伝子のHindIII−SalI部位、SacI
−SalI部位、BamHI−SalI部位を含んでい
る。620位、1100位の上流領域を含むプラスミド
はpAU−SK::inv1+(BamHI−Sal
I)をテンプレートとしてそれぞれ配列表の配列番号
6、7に示すプライマーを用いた部位特異的変異を行っ
てSpeIサイトを作製した。そして、制限酵素Spe
I処理により上流の一部を除去して620位、1100
位の上流領域を含むinv1+遺伝子のプラスミドを作
製した。
ターゼ欠損株(実施例3)を形質転換した。得られた組
換え体のそれぞれのインベルターゼ活性を測定し、酵素
活性を決定した(図8)。その結果、グルコース抑制に
必要な領域は1位から620位までと考えられた。グル
コースの抑制解除に従ってインベルターゼの高い脱抑制
に必要な領域は1610位から2610位までにあるこ
とが確認された。
ーニングベクターpRI0Mの作製 S. pombe のインベルターゼ遺伝子を含むプラスミド
(実施例1)をテンプレートとして、配列番号8および
配列番号9に示すオリゴDNAをプライマーとしたPC
R法によってインベルターゼ遺伝子のプロモータ領域を
含む配列を増幅し、かつ、両末端に制限酵素認識配列を
導入した。制限酵素SpeI(宝酒造(株)製)および
EcoRI(宝酒造(株)製)による二重消化で末端を
処理し、アガロースゲル電気泳動によって、約3000
塩基対に相当するバンドを切出し、EASY TRAP
を用いたガラスビーズ法で精製し、挿入フラグメントと
した。
pTL2M(特開平7−163373号)を、制限酵素
SpeIおよびEcoIによる二重消化で末端を処理
し、アガロースゲル電気泳動によって、約4500塩基
対に相当するバンドを切出し、EASY TRAPを用
いたガラスビーズ法で精製し、ベクターフラグメントと
した。
ゲーションキット(宝酒造(株)製)を用いて連結し
た。大腸菌DH5株(東洋紡(株)製)を形質転換した
後、制限酵素地図の作製および塩基配列決定によって、
図9ならびに配列表の配列番号2に示す誘導発現マルチ
クローニングベクターpRI0Mを保持する大腸菌をス
クリーニングし、このベクターをアルカリ−SDS法に
よって大量調製した。
の作製 S. pombe のインベルターゼ遺伝子を含むプラスミド
(実施例1)をテンプレートとして、配列表の配列番号
8および配列番号10に示すオリゴDNAをプライマー
としたPCR法によってインベルターゼ遺伝子のプロモ
ータ領域を含む配列を増幅し、かつ、両末端に制限酵素
認識配列を導入した。制限酵素SpeIおよびNheI
(宝酒造(株)製)による二重消化で末端を処理し、ア
ガロースゲル電気泳動によって、約3000塩基対に相
当するバンドを切出し、EASYTRAPを用いたガラ
スビーズ法で精製し、挿入プロモータフラグメントとし
た。
遺伝子を含むプラスミドpEGFP−1(Clonetech
製)をテンプレートとして、配列表の配列番号11およ
び配列番号12に示すオリゴDNAをプライマーとした
PCR法によって緑色螢光タンパク質変異体遺伝子のO
RFを含む領域を増幅した。制限酵素NheIおよびH
indIIIによる二重消化で末端を処理し、アガロー
スゲル電気泳動によって、約700塩基対に相当するバ
ンドを切出し、EASY TRAPを用いたガラスビー
ズ法で精製し、挿入ORFフラグメントとした。
pTL2M(特開平7−163373号)を、制限酵素
SpeIおよびHindIIIによる二重消化で切断
し、アガロースゲル電気泳動によって、約4500塩基
対に相当するバンドを切出し、EASY TRAPを用
いたガラスビーズ法で精製し、ベクターフラグメントと
した。
ゲーションキットを用いて連結した。大腸菌DH5株を
形質転換した後、制限酵素地図の作製および塩基配列決
定によって、図10ならびに配列表の配列番号13に示
す緑色螢光タンパク質変異体誘導発現ベクターpRI0
EGFPを保持する大腸菌をスクリーニングし、この発
現ベクターをアルカリ−SDS法によって大量調製し
た。
GFPおよび導入ベクターpAL7を用いて、S. pombe
野生株 ARC001〔leu1-32h-(ATCC
38399と同等)〕を岡崎ら(Okazaki et al., "Nuc
leic Acids Res.", 18, 6485-6489, 1990)の方法に従
って形質転換した。
1培養液 1mlを100mlの最少培地MB+Leu
に植菌し、30℃で14時間振盪培養した。菌数1ml
あたり2.3×107個の段階で集菌し、水で洗菌後、
1mlの0.1M酢酸リチウム(pH5.0)に懸濁
し、30℃で60分間インキュベートした。上記懸濁液
100μlに、4μgの誘導発現ベクターpRI0EG
FPおよび0.5μgのPstI消化したpAL7をT
E 15μlに溶かして加え、さらに50%PEG40
00を290μl加えてよく混合した後、30℃で60
分間、43℃で15分間、室温で10分間の順にインキ
ュベートした。PEGを遠心除去した後、菌体を1ml
の1/2YEL+Leu培地に懸濁した。1/10に希
釈したもの1mlを32℃で2時間インキュベートし、
うち300μlを最少寒天培地MMAにスプレッドし
た。32℃で3日間培養したところ、約300個の互い
に独立したコロニーがプレート上に出現した。
を、抗生物質G418を10μg/mlの濃度で含有す
る2mlのYEL培地(YEL10培地)に植菌し、3
2℃で振盪培養した。2日目に6個のクローンが生育し
た。さらに同じYEL10培地で継代培養したところ、
3日目に4個のクローンが生育した。これらを目的の形
質転換体候補株、ASP138株として、グリセロール
凍結保存するとともに、以下の実験に使用した。
100μg/mlのG418を含むYPD培地(YPD
100培地)に植菌し、32℃で2日間培養した。蛍光
顕微鏡(励起波長490nm/蛍光波長530nm)で
菌体を観察したところ、個々の菌体が緑色蛍光を発する
ことが観察された。さらに遠心集菌した菌体に紫外線を
照射したところ、やはり緑色蛍光を発することが観察さ
れた。以上のことから、目的の緑色蛍光タンパク質が活
性体として発現していることがわかった。
0培地5mlに植菌し、32℃で3日間培養した。集
菌、洗菌後、50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)
で懸濁し、ミニビードビーター(バイオスペック製)を
用いたガラスビーズによる破砕を行った。ガラスビーズ
を除いた後、SDS(1%)存在下で80℃、15分間
加熱し、抽出液を得た。別にpRI0Mを導入した形質
転換体についても、同じ方法で抽出液を作製し、ネガテ
ィブコントロールとした。
−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で解析した(図1
1(a)、(b))。クマシーブリリアントブルー(C
BB)染色したところ、ポジティブコントロールである
組換え緑色蛍光タンパク質(Clonetech製)と同じ分子
量25000付近にネガティブコントロールにない顕著
なバンドが確認された。さらに50μg相当のタンパク
質をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動した後、
PVDF膜にブロッティングし、抗緑色蛍光タンパク質
抗体(Clonetech製)を用いたウエスタンブロッティン
グ法で解析した。その結果、ポジティブコントロールと
同じ分子量25000付近にネガティブコントロールに
ない顕著なバンドが確認された。以上のことから、目的
の緑色蛍光タンパク質が発現していることが生化学的に
明らかになった。
100μg/mlのG418を含むYPD培地(YPD
100培地)に植菌し、32℃で培養した。蛍光付属装
置(励起波長490nm/蛍光波長530nm)付きマ
イクロプレートリーダー(コロナ電気(株)製)で培養
液の発する蛍光値を測定し、緑色蛍光タンパク質の発現
量を調べた(図12(a)、(b))。図中、ODは菌
体濃度を、FLU/ODは菌体あたりの蛍光値を、時間
は培養時間をそれぞれ示す。同図に示される結果から、
非誘導型のサイトメガロウイルスプロモータを用いたA
SP122株[phGFPS65T(Clonetech製)を
もとに特開平7−163373号公報記載の方法にした
がって作成した緑色蛍光蛋白質S65T変異体発現組換
え体]に比べ、ASP138株では増殖期中期まで発現
がみられず、グルコースが枯渇する増殖期後期になって
初めて発現が開始することがわかった。これは明らかに
誘導型プロモータであるインベルターゼプロモータがグ
ルコース存在下で抑制され、グルコースが消費されるこ
とによって抑制が解除されるためであり、この機構が異
種タンパク質である緑色蛍光タンパク質の発現にも利用
できることがわかった。
100μg/mlのG418を含むYPD培地(グルコ
ース濃度8%)に植菌し、32℃で培養した。さらに増
殖期中期に100μg/mlのG418を含むYPDG
培地(グルコース濃度0.1%、グリセロール濃度3
%)に培地を交換し、培養を続けた(図13(a)、
(b))。図中、ODは菌体濃度を、FLU/ODは菌
体あたりの蛍光値を、時間は培養時間をそれぞれ示す。
同図に示される結果から、培地を交換しないもの(Untr
eated)に比べて、培地を交換したもの(Medium-change
d)では培地交換によって発現が開始することが観察さ
れた。これは培地中のグルコースが除去されることによ
り急速にインベルターゼプロモータの脱抑制がかかり、
発現が誘導されるためであると考えられた。よって低濃
度のグルコースを含む発現培地に交換することによって
高い発現量が得られること、すなわち菌体の増殖と発現
を増殖培地(高グルコース濃度)と発現培地(低グルコ
ース濃度)を用いることによって分離できることがわか
った。これは明らかに誘導型プロモータであるインベル
ターゼプロモータがグルコース存在したで抑制され、グ
ルコースが消費されることによって抑制が解除されるた
めであり、この機構が異種タンパク質である緑色蛍光タ
ンパク質の発現にも利用できることがわかった。
100μg/mlのG418を含むYPD培地(グルコ
ース濃度8%)に植菌し、32℃で培養した。さらに増
殖期後期に100μg/mlのG418を含むYPDG
培地(グルコース濃度0.1%、グリセロール濃度3
%)に培地を交換し、培養を続けた(図14(a)、
(b))。図中、ODは菌体濃度を、FLU/ODは菌
体あたりの蛍光値を、時間は培養時間をそれぞれ示す。
同図に示される結果から、培地を交換しないもの(Untr
eated)に比べて、培地を交換したもの(Medium-change
d)では培地交換によって発現が開始することが観察さ
れた。これは培地中のグルコースが除去されることによ
り急速にインベルターゼプロモータの脱抑制がかかり、
発現が誘導されるためであると考えられた。よって高濃
度のグルコースを含む培地で培養を開始し、グルコース
が消費される前に低濃度のグルコースを含む発現培地に
交換することによって高い発現量が得られること、すな
わち菌体の増殖と発現を増殖培地(高グルコース濃度)
と発現培地(低グルコース濃度)を用いることによって
分離できることがわかった。これは明らかに誘導型プロ
モータであるインベルターゼプロモータがグルコース存
在下で抑制され、グルコースが消費されることによって
抑制が解除されるためであり、この機構が異種タンパク
質である緑色蛍光タンパク質の発現にも利用できること
がわかった。
(実施例1)をテンプレートとして、配列表の配列番号
14および配列番号15に示すオリゴDNAをプライマ
ーとしたPCR法によってインベルターゼ遺伝子のプロ
モータ領域を含む配列を増幅し、かつ、両末端に制限酵
素認識配列を導入した。制限酵素SpeIおよびEco
RIによる二重消化で末端を処理し、アガロースゲル電
気泳動によって、約3000塩基対に相当するバンドを
切出し、EASY TRAPを用いたガラスビーズ法で
精製し、挿入プロモータフラグメントとした。
クターpTL2L(特開平7−163373号)を制限
酵素EcoRIおよびHindIIIによる二重消化で
切断し、アガロースゲル電気泳動によって、約1000
塩基対に相当するバンドを切出し、EASY TRAP
を用いたガラスビーズ法で精製し、挿入ORFフラグメ
ントとした。
pTL2M(特開平7−163373号)を、制限酵素
SpeIおよびHindIIIによる二重消化で切断
し、アガロースゲル電気泳動によって、約4500塩基
対に相当するバンドを切出し、EASY TRAPを用
いたガラスビーズ法で精製し、ベクターフラグメントと
した。
ゲーションキットを用いて連結した。大腸菌DH5株を
形質転換した後、制限酵素地図の作製および塩基配列決
定によってリポコルチンI誘導発現ベクターpRI0L
PIを保持する大腸菌をスクリーニングし、このベクタ
ーをアルカリ−SDS法によって大量調製した。
導入ベクターpAL7を用いて、S. pombe 野生株AR
C001を前記岡崎らの方法に従って形質転換した。
1培養液 1mlを100mlの最少培地MB+Leu
に植菌し、30℃で16時間振盪培養した。菌数1ml
あたり1.0×107個の段階で集菌し、水で洗菌後、
1mlの0.1M酢酸リチウム(pH5.0)に懸濁
し、30℃で60分間インキュベートした。上記懸濁液
100μlに、2μgの組換えベクターpRI0LPI
および1μgのPstI消化したpAL7を15μlの
TEに溶かして加え、さらに50%PEG4000を2
90μl加えてよく混合した後、30℃で60分間、4
3℃で15分間、室温で10分間の順にインキュベート
した。PEGを遠心除去した後、菌体を1mlの1/2
YEL+Leu培地に懸濁した。1/10に希釈したも
の1mlを32℃で2時間インキュベートし、うち30
0μlを最少寒天培地MMAにスプレッドした。32℃
で3日間培養したところ、約300個の互いに独立した
コロニーがプレート上に出現した。
を、抗生物質G418を10μg/mlの濃度で含有す
る2mlのYEL培地(YEL10培地)に植菌し、3
2℃で振盪培養した。2日目に3個のクローンが生育し
た。さらに同じYEL10培地で継代培養したところ、
3日目に全てのクローンが生育した。これらを目的の形
質転換体候補株、ASP139株としてグリセロール凍
結保存するとともに、以下の実験に使用した。
100μg/mlのG418を含むYPD培地(グルコ
ース濃度8%)に植菌し、32℃で定常状態にいたるま
で培養して集菌し、非誘導培養菌体とした。これとは別
に、同じ培地で培養を開始し、増殖期中期に100μg
/mlのG418を含むYPDG培地(グルコース濃度
0.1%、グリセロール濃度3%)に培地を交換して培
養を続け、定常期に集菌し、誘導培養菌体とした。両菌
体を洗浄後、50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)
で懸濁し、ミニビードビーターを用いたガラスビーズに
よる破砕を行った。ガラスビーズを除いた後、SDS
(1%)存在下で80℃、15分間加熱し、抽出液を得
た。
S−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、クマシ
ーブリリアントブルーで染色した。その結果、誘導培養
菌体由来の抽出物において、組換えリポコルチンIタン
パク質の配列から予想される位置と同じ分子量4500
0付近に、非誘導培養菌体由来の抽出物にない顕著なバ
ンドが確認された。より感度の高いウエスタン法によっ
て両者のバンドの濃さを比べたところ、誘導培養菌体抽
出物に由来するバンドは非誘導培養菌体抽出物のものに
比べて10倍以上あることがわかった。以上のことか
ら、培地を交換しないものに比べて、培地を交換したも
のでは培地交換によって発現が開始することが明らかに
なった。これは培地中のグルコースが除去されることに
より急速にインベルターゼプロモータの脱抑制がかか
り、発現が誘導されるためであると考えられた。よって
低濃度のグルコースを含む発現培地に交換することによ
ってた発現量が得られること、すなわち菌体の増殖と発
現を増殖培地(高グルコース濃度)と発現培地(低グル
コース濃度)を用いることによって分離できることがわ
かった。これは明らかに誘導型プロモータであるインベ
ルターゼプロモータがグルコース存在したで抑制され、
グルコースが消費されることによって抑制が解除される
ためであり、この機構が異種タンパク質であるリポコル
チンIの発現にも利用できることがわかった。
ことによって、特定の栄養源の有無により遺伝子発現を
制御し、目的タンパク質の生産時期が制御可能になる効
果が認められる。ひいては、自身の生理活性のために生
産量が低いタンパク質や、他の理由でこれまで生産でき
なかったタンパク質を生産可能とする効果が達成され
る。
vectors usable in fission yeast Schizosaccharomyc
es pombe, as well as the use of the same <130> 980775 <150> JP9/314608 <151> 1997-10-31 <160> 15 <170> PatentIn Ver. 2.0
リスのインベルターゼ遺伝子、出芽酵母のSUC2のア
ミノ酸配列(部分)の比較を示す図である。
る。
インベルターゼ活性を示すコロニーの図面代用写真(生
物の形態)である。図4(b)は図4(a)に示すイン
ベルターゼ活性の解析を示す模式図である。
真(生物の形態)である。図5(b)は図5(a)に示
すインベルターゼ活性の解析を示す模式図である。
示すグラフである。
示すグラフである。
0EGFPの構築図である。
色蛍光タンパク質の発現解析図である。
養時間と緑色蛍光タンパク質の発現との関係を示すグラ
フである。
養時間と緑色蛍光タンパク質の発現との関係を示すグラ
フである。
養時間と緑色蛍光タンパク質の発現との関係を示すグラ
フである。
Claims (8)
- 【請求項1】分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベ(Sc
hizosaccharomyces pombe)のインベルターゼ遺伝子中
のカタボイライト抑制に関与している遺伝子領域のDN
A。 - 【請求項2】配列表の配列番号1の塩基番号第1番〜第
2809番の塩基配列で表されるDNA。 - 【請求項3】請求項1または2記載のDNA配列を含む
組換えベクター。 - 【請求項4】請求項1または2記載のDNA配列とマル
チクローニングサイトとを含むマルチクローニングベク
ター。 - 【請求項5】図9のベクター構築図で表されるマルチク
ローニングベクター。 - 【請求項6】請求項1または2のDNA配列と異種タン
パク質構造遺伝子とを含む、分裂酵母シゾサッカロミセ
ス・ポンベ(S. pombe)の形質転換用の発現ベクター。 - 【請求項7】請求項6の発現ベクターを含む、分裂酵母
シゾサッカロミセス・ポンベ(S. pombe)からなる形質
転換体。 - 【請求項8】請求項7の形質転換体を培養し、発現され
た異種タンパク質を採取することを特徴とするタンパク
質の生産方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP30677398A JP3968618B2 (ja) | 1997-10-31 | 1998-10-28 | シゾサッカロミセス・ポンベで使用可能な誘導プロモータ、誘導発現ベクター、およびそれらの利用 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31460897 | 1997-10-31 | ||
JP9-314608 | 1997-10-31 | ||
JP30677398A JP3968618B2 (ja) | 1997-10-31 | 1998-10-28 | シゾサッカロミセス・ポンベで使用可能な誘導プロモータ、誘導発現ベクター、およびそれらの利用 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH11192094A true JPH11192094A (ja) | 1999-07-21 |
JP3968618B2 JP3968618B2 (ja) | 2007-08-29 |
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ID=26564856
Family Applications (1)
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---|---|---|---|
JP30677398A Expired - Lifetime JP3968618B2 (ja) | 1997-10-31 | 1998-10-28 | シゾサッカロミセス・ポンベで使用可能な誘導プロモータ、誘導発現ベクター、およびそれらの利用 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3968618B2 (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2010038802A1 (ja) | 2008-10-01 | 2010-04-08 | 旭硝子株式会社 | 宿主、形質転換体およびその製造方法、ならびにo-グリコシド型糖鎖含有異種蛋白質の製造方法 |
EP2182060A1 (en) | 2005-08-03 | 2010-05-05 | Asahi Glass Company, Limited | Transformed yeast host cells and method of producing foreign protein |
US7790450B2 (en) | 2005-08-29 | 2010-09-07 | Asahi Glass Company, Limited | Expression vector, a transformant carrying the same and a method for producing heterologous protein |
WO2014030644A1 (ja) | 2012-08-20 | 2014-02-27 | 旭硝子株式会社 | シゾサッカロミセス・ポンベ変異体の形質転換体、およびクローニングベクター |
-
1998
- 1998-10-28 JP JP30677398A patent/JP3968618B2/ja not_active Expired - Lifetime
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP2182060A1 (en) | 2005-08-03 | 2010-05-05 | Asahi Glass Company, Limited | Transformed yeast host cells and method of producing foreign protein |
US8329448B2 (en) | 2005-08-03 | 2012-12-11 | Asahi Glass Company, Limited | Yeast host, transformant and method for producing heterologous proteins |
US7790450B2 (en) | 2005-08-29 | 2010-09-07 | Asahi Glass Company, Limited | Expression vector, a transformant carrying the same and a method for producing heterologous protein |
WO2010038802A1 (ja) | 2008-10-01 | 2010-04-08 | 旭硝子株式会社 | 宿主、形質転換体およびその製造方法、ならびにo-グリコシド型糖鎖含有異種蛋白質の製造方法 |
WO2014030644A1 (ja) | 2012-08-20 | 2014-02-27 | 旭硝子株式会社 | シゾサッカロミセス・ポンベ変異体の形質転換体、およびクローニングベクター |
US9765347B2 (en) | 2012-08-20 | 2017-09-19 | Asahi Glass Company, Limited | Transformant of Schizosaccharomyces pombe mutant and cloning vector |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP3968618B2 (ja) | 2007-08-29 |
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