JPH1118612A - 牡蠣養殖用ｕ字型吊下げ連結具 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 取付け取外し作業、および切断作業が容易
で、しかも、怪我の惧れがなく、軽くて発錆せず、使用
済後の海洋汚染が回避できる牡蠣養殖用Ｕ字型吊下げ連
結具を提供する。 【解決手段】 Ｕ字型吊下げ連結具１を示している。こ
のものは、透孔２ｈを有する円板部２ａと、相対するリ
ング部２ｂとを備え、これらの間を一体に連結したロッ
ド部３とからなる生分解プラスチックの射出成形体であ
って、円板部２ａおよびリング部２ｂを牡蠣の吊下げ用
ワイヤーロープ５の両端に通すことで、ワイヤーロープ
５をＵ字型に吊下げる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、多数の牡蠣養殖用
貝殻を吊下げるワイヤーをＵ字型にして棚から吊る場合
に、その吊下げ幅を一定に保持するための牡蠣養殖用Ｕ
字型吊下げ連結具に関する。

【０００２】

【従来の技術】牡蠣の養殖は、海上に組立てられた養殖
筏に吊されたワイヤーを介して行われる。具体的には、
ワイヤーに塩ビパイプなどを上下方向のスペーサとして
所定間隔に保持されたホタテ貝等の貝殻に牡蠣の稚貝を
付着させ、このワイヤの一端を養殖筏の棚に連結し、他
端を海中に吊して生育させる。

【０００３】このワイヤーの長さは、牡蠣の栄養源であ
る海水中のプランクトンの生息深度分布によって決ま
る。つまり、プランクトンは海中の表面層に浮遊し、水
深１０ｍ以下ではその数は減少し、牡蠣の生育に支障を
来すことが確認されているため、ワイヤーの長さはプラ
ンクトンの生息域である水深約９ｍに設定される。

【０００４】そして、５月から９月までの夏場には、海
水温の上昇に伴い、海面下３ｍの深さの浅瀬に牡蠣の生
育を阻害するムラサキガイが繁殖するので、夏場の間だ
けは水深３ｍ以下に牡蠣が位置するように吊下げなけれ
ばならない。このため、牡蠣を取付けた全長約９ｍのワ
イヤーに、夏場の間だけ３ｍのワイヤーを連結して延長
し、Ｕ字型に折返した状態でその両端を吊下げる形にし
ている。

【０００５】ところで、このような吊下げ形態では波の
影響によってワイヤー間の距離が拡がることがあり、こ
の場合には、隣合う牡蠣同士が衝突して破損し、傷つけ
られる惧れがある。そこで、従来では、吊し替え作業時
に、ワイヤーの両端を針金で連結する作業を筏上で行っ
ていた。この針金は、予め一端側に通し用の輪を作って
おいたものが使用され、この輪を前記ワイヤーの一端側
に挿通し、他端側をペンチ等によりねじり込んでワイヤ
の他端に止め、連結具とされていた。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、一つの
筏で約７００本ものワイヤーに、手作業により一本ずつ
針金を縛り付けなければならず、作業に相当な手間、お
よび時間がかかる。

【０００７】また、夏が過ぎて、ムラサキガイの生育期
が終われば、ムラサキガイの付着による牡蠣の生育阻害
の問題がなくなるので、前記針金を切断した後、連結さ
れた３ｍ分を引き上げて元の一本吊り状態に戻し、ワイ
ヤ間の配置間隔を適度にする作業を行うが、針金の切断
作業にも相当な力を要するので面倒なものとなってい
た。

【０００８】さらに、針金の切断後には切断端部で思わ
ぬ怪我をする惧れがあるし、針金の挿通作業、ペンチ等
によるねじり作業中にも同様な惧れがあるほか、針金は
一度に運搬する本数が多ければ重いし、発錆しやすいな
どの欠点があった。

【０００９】これに対し、これら金属製の針金における
問題を考慮して、連結具を単にプラスチック化すること
が考えられるが、この場合には、使用済後における連結
具の廃棄の問題が発生する。より詳細には、使用済後に
切断したプラスチック製の連結具が海上に浮遊して、海
岸を汚したり、漁網に付着したりして環境問題を派生し
かねないことが懸念されるのである。

【００１０】本発明は、取付け作業、および切断作業が
容易で、しかも、怪我の惧れがなく、軽くて発錆せず、
しかも環境汚染の危惧の少ない牡蠣養殖用Ｕ字型吊下げ
連結具を提供することを目的としている。

【００１１】

【課題を解決するための手段】以上の目的を達成するた
め、本発明のうち請求項１に記載の発明は、生分解性プ
ラスチックの射出成形体からなる連結具であって、Ｕ字
型に曲成されるワイヤーの両側端部より挿通される透孔
を有した円板部またはリング部と、該円板部または該リ
ング部間を所定の間隔となるように一体に連結し前記ワ
イヤー間隔を一定に保持するためのロッド部とからなる
ことを特徴とするものである。この発明では、牡蠣養殖
用貝殻の吊下げ用ワイヤーに対して透孔を有する円板部
またはリング部を嵌挿するだけで連結具の取付け作業が
簡単に行え、また切断作業も通常の紙切り用のはさみな
どにより簡単に行える。また、針金と異なり鋭利状の切
断端部がないので怪我の惧れがなく、また、生分解性プ
ラスチック製であるので、重量が軽く、発錆しないこと
はもちろん、使用済後に微生物が多く存在する自然環境
下、本発明では海水中に存在する微生物により生分解さ
れるので、海洋汚染等の問題が回避できる。

【００１２】本発明のうち請求項２に記載の発明は、前
記連結具のゲート部を前記ロッド部のほぼ中央に位置さ
せて射出成形したことを特徴とするものである。この発
明では、構造的に最も脆弱な部分であるゲート部分には
さみを入れたり人手により引きちぎることによってさら
に簡単に切断を行うことができる。

【００１３】本発明のうち請求項３に記載の発明は、前
記ロッド部の径が２．０ｍｍ〜５．０ｍｍの範囲にある
ことを特徴とするものである。この発明において、以上
の数値を限定したのは次の理由による。径が２．０ｍｍ
未満の場合だと海流により切断のおそれがあり、反面、
５．０ｍｍを越えた径とすると柔軟性に乏しく、扱いに
くいものになるからである。それゆえ、以上の範囲とす
ることにより切れにくく、しかも取扱いやすい製品とな
る。

【００１４】

【発明の実施の形態】以下、この発明の好ましい実施の
形態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。

【００１５】図１は、本発明にかかる牡蠣養殖用Ｕ字型
吊下げ連結具１を示している。この連結具１は、透孔２
ｈを有する円板部２ａと、相対するリング部２ｂと、こ
れらの間を一体に連結したロッド部３とからなる生分解
プラスチックの射出成形体である。具体的には、脂肪族
ポリエステル系の生分解性プラスチック（昭和高分子株
式会社製：商品名ビオノーレ＃１０２０）を射出成形し
て、円板部２ａおよびリング部２ｂの外径が約２０ｍ
ｍ、円板部２ａの厚さが約２．０ｍｍ、透孔２ｈの径が
約２．５ｍｍ、リング部２ｂの太さが２．５ｍｍ（リン
グ部２ｂの内径が１０ｍｍ）、ロッド部３の径が２．０
ｍｍ、円板部２ａおよびリング部２ｂを含む全長が約２
２０ｍｍの連結具１が作製される。

【００１６】なお、ロッド部３の径は、２ｍｍ未満であ
ると材料樹脂によって多少異なるものの、引張り強度の
十分なものが得にくくなる反面、５ｍｍを越えた太さで
は製品の剛性が出過ぎて柔軟性に乏しく扱いにくいもの
となるため、２．０ｍｍないし５．０ｍｍの範囲とする
ことが好ましいが、２．０ｍｍないし３．０ｍｍとする
ことがより好ましい。

【００１７】以上の連結具１の原料となる生分解性のプ
ラスチックは、自然環境下、特に海水中の微生物の働き
により分解するプラスチックであれば限定されないが、
特に、上述した脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸、ポリカ
プロラクトン、ヒドロキシ酪酸とヒドロキシ吉草酸との
共重合体等が挙げられる。これらに軟質化のためゴム成
分等を添加混合したものであってもよい。

【００１８】また、ロッド部３のほぼ中央に射出成形機
（図示しない）のゲート部４が設定されているので、こ
こが最も脆弱な部分となっている。ゲート部４の引張り
強度は、作業時や、海流によって切断されない初期強度
を有することが前提であるが、人手によりロッド部３を
左右に強く引っ張ることにより、当該ゲート部４で引き
ちぎられるようにすることもできる。

【００１９】図２は、以上の連結具１の使用方法を示し
ている。先ず（ａ）において、ワイヤーロープ５には多
数のホタテ貝の貝殻６が通され、塩ビパイプからなるス
ペーサ７によってその高さ間隔が一定に保持されてい
る。貝殻６には牡蠣の稚貝が付着されている。このワイ
ヤーロープ５の上端は海面ＷＬの直上に配置された養殖
筏８の桟に支持され、海中に直線状に吊下げられること
により、牡蠣の生育が行われる。

【００２０】ワイヤーロープ５の先端深さは前述のごと
く水深９ｍの位置となるように設定される。また、下端
部には係止部５ａが形成され、スペーサ７および貝殻６
の脱落が防止されている。

【００２１】そして、５月など夏の到来により、生育阻
害をもたらすムラサキガイの付着防止と栄養源確保のた
めに、（ｂ）に示すように吊り直し作業が実施される。
先ず、ワイヤーロープ５が一旦引上げられ、その下端に
テグスなどを介して前記円板部２ａの透孔２ｈが嵌挿さ
れ、連結具１がワイヤーロープ５に装着される。

【００２２】また、上端側には連結具１のリング部２ｂ
が通された上で新たに補充用のワイヤ９が両端側に結ば
れ、これを養殖筏８の桟に掛け回し、固定状態で吊すこ
とにより、ワイヤーロープ５はＵ字型をなして再び海中
に吊され、もってその幅間隔が連結具１のロッド部３に
より規制される。

【００２３】また、補充用ワイヤ９の海中長さはムラサ
キガイの付着を防止するために、約３ｍに設定され、牡
蠣は水深３ｍ以下の位置にＵ字型をなして吊下げられる
ことになる。

【００２４】なお、図では一つのワイヤーロープ５のみ
を示しているが、以上の作業は養殖用の各筏に分散配置
されていた稚貝を吊した貝殻が、一つの筏に密集配置さ
れるため、約７００にもおよぶ多数のワイヤロープ５が
同形態で筏８に密集して吊下げられることになる。

【００２５】秋口の出荷時期準備期になると、以上のワ
イヤロープ５は引上げられ、補充用ワイヤ９は切離され
るとともに、前記連結具１のロッド部３をはさみなどを
用いて切離すことにより、再び（ａ）に示すように直線
状の吊下げがなされる。この場合、各筏に再分散して吊
下げることによって、富栄養状態の環境が再構築される
ことになる。

【００２６】なお、前述したように、人手によりロッド
部３を左右に強く引っ張ることにより、引きちぎっても
よい。この場合、ロッド部３の中央部であるゲート部４
がロッド部３で最も脆弱であるので、該ゲート部４で切
断されることとなろう。

【００２７】さらに、連結具１の使用形態としては、予
めワイヤーロープ５の下端に一方の円板部２ａを装着し
ておき、吊直し作業時にこれを引上げてリング部２ｂを
ワイヤロープ５の上端側に通すことによってＵ字型にす
ることもできる。

【００２８】そして、最終的には、ワイヤーロープ５を
引上げ、係止部５ａを外して貝殻６およびスペーサ７が
一度に落とし込まれる。この際、本発明にかかる連結具
１は、従来例の針金に比べて滑り性がよいので、貝殻６
およびスペーサ７とともに同時に落とし込まれる。した
がって、ワイヤーロープ５に連結具１が残ることがない
ので、該ロープ５をそのまま再利用することができる。

【００２９】なお、本実施形態では、透孔２ｈを有する
円板部２ａとリング部２ｂとを備える連結具１について
説明したが、一つの連結具の両端を透孔２ｈを有する円
板部２ａとしてもよいし、リング２ｂとすることも本発
明の範囲に含まれるものである。ところが、本実施形態
のように、少なくともワイヤーロープ５の下端側に装着
されるものを透孔２を有する円板部２ａとすることが好
ましい。これは、透孔２ｈを有する円板部２ａは、上下
方向のスペーサ７として使用する塩ビパイプあるいはホ
タテ貝等の貝殻を直接支持する必要があるからである。
したがって、透孔２ｈの径はスペーサ７より小径とする
ことが好ましい。もっとも、リング部２ｂの内径をスペ
ーサ７より小径とすることができることは言うまでもな
い。

【００３０】

【発明の効果】以上の説明により明らかなように、本発
明にかかる牡蠣養殖用Ｕ字型吊下げ連結具にあっては、
牡蠣の吊下げ用ワイヤーに対する連結具の装着作業が簡
単に行え、また切離し時にもはさみや人手により簡単に
切断することができ、しかも、怪我の惧れがなく、軽い
ので、吊り直し作業の省力化に好適であり、使用済後は
海中の微生物により生分解されるので、廃棄による海洋
汚染が回避できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明にかかる牡蠣養殖用Ｕ字型吊下げ連結具
の斜視図である。

【図２】（ａ），（ｂ）は同連結具を用いた作業形態を
示す模式図である。

【符号の説明】

１ Ｕ字型吊下げ連結具 ２ａ 円板部， ２ｂ リング部 ３ ロッド部 ４ ゲート部 ５ 吊下げ用ワイヤーロープ ９ 補充用ワイヤ

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 生分解性プラスチックの射出成形体から
   なる連結具であって、Ｕ字型に曲成されるワイヤーの両
   側端部より挿通される透孔を有した円板部またはリング
   部と、該円板部または該リング部間を所定の間隔となる
   ように一体に連結し前記ワイヤー間隔を一定に保持する
   ためのロッド部とからなることを特徴とする牡蠣養殖用
   Ｕ字型吊下げ連結具。
2. 【請求項２】 前記連結具のゲート部を前記ロッド部の
   ほぼ中央に位置させて射出成形したことを特徴とする請
   求項１に記載の牡蠣養殖用Ｕ字型吊下げ連結具。
3. 【請求項３】 前記ロッド部の径が２．０ｍｍ〜５．０
   ｍｍの範囲にあることを特徴とする請求項１または２に
   記載の牡蠣養殖用Ｕ字型吊下げ連結具。