JP3779781B2 - 牡蠣養殖用u字型吊下げ連結具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多数の牡蠣養殖用貝殻を吊下げるワイヤーをU字型にして棚から吊る場合に、その吊下げ幅を一定の値に保持するための牡蠣養殖用U字型吊下げ連結具に関する。
【0002】
【従来の技術】
牡蠣の養殖は、海上に組立てられた養殖筏に吊されたワイヤーを介して行われる。具体的には、ワイヤーに塩ビパイプなどを上下方向のスペーサとして所定間隔に保持されたホタテ貝等の貝殻に牡蠣の稚貝を付着させ、このワイヤの一端を養殖筏の棚に連結し、他端を海中に吊して生育させる。
【0003】
このワイヤーの長さは、牡蠣の栄養源である海水中のプランクトンの生息深度分布によって決まる。つまり、プランクトンは海中の表面層に浮遊し、水深10m以下ではその数は減少し、牡蠣の生育に支障を来すことが確認されているため、ワイヤーの長さはプランクトンの生息域である水深約9mに設定される。
【0004】
そして、5月から9月までの夏場には、海水温の上昇に伴い、海面下3mの深さの浅瀬に牡蠣の生育を阻害するムラサキガイが繁殖するので、夏場の間だけは水深3m以下に牡蠣が位置するように吊下げなければならない。このため、牡蠣を取付けた全長約9mのワイヤーに、夏場の間だけ3mのワイヤーを連結して延長し、U字型に折返した状態でその両端を吊下げる形にしている。
【0005】
ところで、このような吊下げ形態では波の影響によってワイヤー間の距離が拡がると、隣合う牡蠣同士が衝突して破損し、傷つけるおそれがある。そこで、従来では、吊し替え作業時に、ワイヤーの両端を針金で連結する作業を筏上で行っていた。この針金は、予め一端側に通し用の輪を作っておいた針金が使用され、この輪を前記ワイヤーの一端側に挿通し、他端側をペンチ等によりねじり込んでワイヤの他端に止め、連結具としていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一つの筏で約700本ものワイヤーに、手作業により一本ずつ針金を縛りつけなければならず、作業に相当な手間、および時間がかかる。
【0007】
また、夏が過ぎて、ムラサキガイの生育期が終われば、ムラサキガイの付着による牡蠣の生育阻害の問題がなくなるので、前記針金を切断した後、連結された3m分を引き上げて元の一本吊り状態に戻し、ワイヤ間の配置間隔を適度にする作業を行うが、針金の切断作業も相当な力を要するので面倒なものとなっていた。
【0008】
さらに、針金の切断後には切断端部で思わぬ怪我をする惧れがあるし、針金の挿通作業、ペンチ等によるねじり作業中にも同様な惧れがあるほか、針金は一度に運搬する本数が多ければ重いし、発錆しやすいなどの欠点があった。
【0009】
本発明は、取付け作業、および切断作業が容易で、しかも、怪我の惧れがなく、軽くて発錆しない牡蠣養殖用U字型吊下げ連結具を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以上の目的を達成するため、本発明のうち請求項1に記載の発明は、軟質の合成樹脂射出成形体からなる連結具であって、U字型に曲成されるワイヤーの両側端部より挿通される一対のリング部およびこのリング部間を所定の間隔となるように一体に連結し、前記ワイヤー間隔を一定に保持するためのロッド部とからなることを特徴とするものである。この発明では、牡蠣養殖用貝殻の吊下げ用ワイヤーに対するリングを嵌挿するだけでスペーサの取付け作業が簡単に行え、また切断作業も通常の紙切り用のはさみなどにより簡単に行える。また、針金と異なり鋭利状の切断端部がないので怪我の惧れがなく、また、軟質の合成樹脂製であるので、重量が軽く、発錆しないといった利点もある。
【0011】
本発明のうち請求項2に記載の発明は、前記ロッド部のほぼ中央に射出成形機のゲート部が位置するように射出成形したことを特徴とするものである。この発明では、構造的に最も脆弱な部分であるゲート部分にはさみを入れることによってさらに簡単に切断を行うことができる。
【0012】
本発明のうち請求項3に記載の発明は、前記ロッド部の径が2mm〜5mmの範囲にあることを特徴とするものである。この発明において、以上の数値を限定したのは次の理由による。径が2mm未満の場合だと海流により切断のおそれがあり、また5mmを越えた径とすると柔軟性に乏しく、扱いにくいものになるからである。それゆえ、以上の範囲とすることにより切れにくく、取扱いやすい製品となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明にかかる牡蠣養殖用U字型吊下げ連結具1を示している。このものは、一対のリング部2と、両リング部2間を一体に連結したロッド部3とからなる合成樹脂射出成形体であって、リング部2の外径は約20mm、リング太さは2.0mm〜3.0mm、ロッド部3の径は2.0mm〜3.0mm、全長は約250mmの寸法に形成されたものである。
【0015】
なお、このロッド部3の径は前記のごとく2mmないし3mm程度が好ましく、2mm未満であると材料樹脂によって多少異なるものの、引張り強度の十分なものが得にくくなる。また5mm以上の太さでは製品の剛性が出過ぎて扱いにくいものとなるため、2〜5mmの範囲とすべきである。
【0016】
以上の連結具1の原料となる樹脂は、軟質の熱可塑性樹脂であればよいが、価格の点を考慮すると、ポリオレフィン樹脂、特に軟質のLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)単独、もしくはこれと他のポリオレフィン樹脂、例えばPP、PE、若しくは再生品との混合品を用いることが好ましい。但し、前述のごとく引張り強度などの物性と価格とのバランスの点を考慮すると、LLDPEの配合比を30%程度とすることが望ましい。
【0017】
また、ロッド部3のほぼ中央に射出成形機(図示しない)のゲート部4が設定されているので、ここが最も脆弱な部分となっている。ゲート部4の引張り強度は、作業時や、海流によって切断されない初期強度を有することが前提であるが、人手によりロッド部3を左右に強く引っ張ることにより、当該ゲート部4で引きちぎられるようにすることもできる。
【0018】
さらに、この連結具1には任意の着色を施すことが容易にできるため、例えば作業時期に応じて連結具1の色を変える取決めをしたり、管理者ごとに色を変える取決めをすることにより、それがどの時期に吊り直し作業がされたものか、あるいは管理者がだれなのかを一目瞭然に確認することができる。
【0019】
図2は、以上の連結具1の使用方法を示している。先ず(a)において、ワイヤーロープ5には多数の帆立貝の貝殻6が通され、塩ビパイプからなるスペーサ7によってその高さ間隔が一定に保持されている。貝殻6には牡蠣の稚貝が付着されている。このワイヤーロープ5の上端は海面WLの直上に配置された養殖筏8の桟に支持され、海中に直線状に吊下げられることにより、牡蠣の生育が行われる。
【0020】
ワイヤーロープ5の先端深さは前述のごとく水深9mの位置となるように設定される。また、下端部には係止部5aが形成され、スペーサ7および貝殻6の脱落が防止されている。
【0021】
そして、5月など夏の到来により、生育阻害をもたらすムラサキガイの付着防止と栄養源確保のために、(b)に示すように吊り直し作業が実施される。先ず、ワイヤーロープ5は一旦引上げられ、その下端にテグスなどを介して前記連結具1の一端側リング部2が嵌挿され、これに装着される。
【0022】
また、上端側には連結具1の他端側リング部2が通された上で新たに補充用のワイヤ9が両端側に結ばれ、これを養殖筏8の桟に掛け回し、固定状態で吊すことにより、ワイヤーロープ5はU字型をなして再び海中に吊され、その幅が最大限連結具1のロッド部3の長さとされる。
【0023】
また、補充用ワイヤ9の海中長さはムラサキガイの付着を防止するために、約3mに設定され、牡蠣は水深3m以下の位置にU字型をなして吊下げられることになる。
【0024】
なお、図では一つのワイヤーロープ5のみを示しているが、以上の作業は養殖用の各筏に分散配置されていた稚貝を吊した貝殻が、一つの筏に密集配置されるため、約700にもおよぶ多数のワイヤロープ5が同形態で筏8に密集して吊下げられることになる。
【0025】
秋口の出荷時期準備期になると、以上のワイヤロープ5は引上げられ、補充用ワイヤ9は切離されるとともに、前記連結具1のロッド部3をはさみなどを用いて切離すことにより、再び(a)に示すように直線状の吊下げがなされる。この場合、各筏に再分散して吊下げることによって、富栄養状態の環境が再構築されることになる。
【0026】
なお、前述したように、人手によりロッド部3を左右に強く引っ張ることにより、引きちぎってもよい。この場合、ロッド部3の中央部であるゲート部4がロッド部3で最も脆弱であるので、該ゲート部4で切断されることとなろう。
【0027】
さらに、連結具1の使用形態としては、予めワイヤーロープ5の下端に一方のリング部2を装着しておき、吊直し作業時にこれを引上げて他方のリング部2をワイヤロープ5の上端側に通すことによってU字型にすることもできる。
【0028】
そして、最終的には、ワイヤーロープ5を引上げ、係止部5aを外して貝殻6およびスペーサ7が一度に落とし込まれる。この際、本発明にかかる連結具1は、従来例の針金に比べて滑り性がよいので、貝殻6およびスペーサ7とともに同時に落とし込まれる。したがって、ワイヤーロープ5に連結具1が残ることがないので、該ロープ5をそのまま再利用することができる。
【0029】
【発明の効果】
以上の説明により明らかなように、本発明にかかる牡蠣養殖用U字型吊下げ連結具にあっては、牡蠣の吊下げ用ワイヤーに対する連結具の装着作業が簡単に行え、また切離し時にもはさみや人手により簡単に切断することができ、しかも、怪我の惧れがなく、軽いので、吊り直し作業の省力化に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる牡蠣養殖用U字型吊下げ連結具の斜視図である。
【図2】(a),(b)は同連結具を用いた作業形態を示す模式図である。
【符号の説明】
1 U字型吊下げ連結具
2 リング部
3 ロッド部
4 ゲート部
5 吊下げ用ワイヤーロープ
9 補充用ワイヤ
Claims (3)
- 軟質の合成樹脂射出成形体からなる牡蠣養殖用U字型吊下げ連結具であって、U字型に曲成されるワイヤーの両側端部より挿通される一対のリング部と、このリング部間を所定の間隔となるように一体に連結し、前記ワイヤー間隔を一定に保持するためのロッド部とからなることを特徴とする牡蠣養殖用U字型吊下げ連結具。
- 前記ロッド部のほぼ中央に射出成形機のゲート部が位置するように射出成形したことを特徴とする請求項1に記載の牡蠣養殖用U字型吊下げ連結具。
- 前記ロッド部の径が2mm〜5mmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の牡蠣養殖用U字型吊下げ連結具。
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- 1996-11-13 JP JP30219096A patent/JP3779781B2/ja not_active Expired - Fee Related
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