JPH11173876A - 電気ドラム及び電気ドラム用拡声装置 - Google Patents

電気ドラム及び電気ドラム用拡声装置

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JPH11173876A
JPH11173876A JP9344790A JP34479097A JPH11173876A JP H11173876 A JPH11173876 A JP H11173876A JP 9344790 A JP9344790 A JP 9344790A JP 34479097 A JP34479097 A JP 34479097A JP H11173876 A JPH11173876 A JP H11173876A
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泰彦 森
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アコースティックドラムと同等の音色が得ら
れ、更に演奏感もアコースティックドラムに近い演奏感
が得られる電気ドラムを提供する。 【解決手段】 ドラムヘッドを金網のように硬度が高い
材質の線材によって形成した網状ドラムヘッド102と
し、この網状ドラムヘッドの振動を胴101に装着した
圧電素子或は電磁変換素子によって構成した振動ピック
アップ104によって検出し、この検出信号を拡声装置
200に与えてドラム音を発生させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は例えばステージ等
で演奏することに適した電気ドラムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来よりステージ等でドラムの音を拡声
する方法としては、普通のドラム(以下アコースティッ
クドラムと称す)の打面の近くにマイクロホンを設置
し、ドラムの音を集音してその音を拡声装置で拡声して
放音させ、大ホール等でも充分にドラムの音を聴衆に聴
かせる等の方法が採られている。
【0003】
【発明が解決すべき課題】従来のドラムの拡声方法はア
コースティックドラムの音を空気の振動を介した音声と
してマイクロホンで集音し、この音声信号を拡声装置で
拡声して放音させる方式であるから、ドラムの音だけで
なく周りの雑音も集音してしまい、また目的のドラム音
だけでなくドラムセット内の他のドラムの音も拾ってし
まい、それらの雑音も拡声して聞こえてしまう不都合が
ある(他の雑音から目的のドラム音だけを分離して集音
・拡声することができない)。また拡声音の音量を上げ
ると拡声音がマイクロホンに拾われハウリングを起こす
欠点もある。
【0004】また、ドラムの胴に圧電素子等による振動
ピックアップを設置しドラムヘッド(皮)の振動を拾う
実験を行ったところ、上手く音を拾うことが出来なかっ
た。従来ヘッドの材質は弾性が低く柔らかいポリエチレ
ンテレフタレート(PET)フィルムで出来ており、ヘ
ッドの材料内部で振動の損失が大きく、胴へ伝わる振動
が小さい。このためヘッドの振動ピックアップから遠い
場所を叩いた場合に音のレベルが非常に(極端に)小さ
くなり、特にヘッドの中央部が一番小さくなってしまっ
た。アコースティックドラムは逆にヘッドの中央部を叩
いた場合に最も大きな音量が出るので(ヘッドの真ん中
が良く鳴るポイント)、極めて不自然であった。
【0005】また、パッドを叩く振動を電気信号に変換
し、この電気信号をトリガ信号として音源回路を起動さ
せ、音源回路からドラム信号を発生させる形式の電子ド
ラムも存在するが、この形式の電子ドラムは電子回路に
よって音が画一的に決められてしまうため、アコーステ
ィックドラムと比較して表現力に欠ける欠点がある。こ
の発明の目的はアコースティックドラムと同等の演奏感
と演奏表現力を持つ電気ドラムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明ではヘッドとし
て金網又は硬度が硬い材質の線材で編んだ網状体を用
い、自体は発音性を持たない網状のドラムヘッドの構造
とすると共に、この網状ドラムヘッドの振動を胴に装着
した振動ピックアップによって検知し、ドラムヘッドの
振動をそのまま音源として利用してドラムの音に対応し
た電気信号を生成させる構造としたから、網状ドラムヘ
ッドの材料となる金網または硬度が硬い材質の線材は、
それ自体の剛性が高いので材料内部を伝わる振動の損失
が小さく、叩かれた振動は素早く全体に伝わり、また網
状体に編まれていることによって、アコースティックド
ラムのヘッドと同じように膜状の振動形態で振動する。
【0007】従って、この発明の電気ドラムによればス
テックによってヘッドを叩く叩き具合を変えると、これ
に伴なって音も変化し、あたかもアコースティックドラ
ムを叩いているものと間違える程アコースティックドラ
ムに近い演奏感を得ることができる。また、叩き具合に
よって音が変わるためアコースティックドラムと同等の
演奏表現を得ることもできる利点が得られる。
【0008】更に、この発明によれば振動ピックアップ
で網状ドラムヘッドの振動を電気信号に変換し、この電
気信号によって楽音を生成させる構造としたから、拡声
音を直接拾うことはない。よって大ホール等で音量を上
げて演奏してもハウリングを発生することはなく、安定
した演奏を行なうことができる利点も得られる。
【0009】
【発明の実施の形態】図1にこの発明の一実施例を示
す。図中100はこの発明による電気ドラム、200は
拡声装置を示す。つまり、拡声装置200はこの発明に
よる電気ドラム100から出力される電気ドラム信号D
Sを増幅器201で増幅し、その増幅出力によりスピー
カ202を駆動し、スピーカ202からドラム音を放音
させる。
【0010】この発明による電気ドラム100の基本的
な構成は円筒状の胴101と、この胴101の一方の開
口端面に張られた網状ドラムヘッド102と、この網状
ドラムヘッド102に張力を与える加張手段103と、
胴101に装着した振動ピックアップ104と、電気ド
ラム100から拡声装置200に電気信号を出力するコ
ネクタ105とによって構成される。
【0011】胴101は木製或いは金属、プラスチック
等の材質で構成することができ、アコースティックドラ
ムの胴をそのまま用いることもできる。この発明の特徴
とする構成はドラムヘッドを網状ドラムヘッド102と
した点と、この網状ドラムヘッド102の振動を振動ピ
ックアップ104によって電気的に取り出す構造とした
点である。
【0012】網状ドラムヘッド102の材質としてはア
コースティックドラムのヘッドの材質であるポリエチレ
ンテレフタレートより硬く弾性の高い線材で構成した網
が望ましく、主に金網が考えられる。金網の中でも鋼性
が高い例えばステンレス鋼線、ニッケル線、ピアノ線等
を用いることができる。また金網以外でも例えばカーボ
ン繊維のように鋼性の高い材質の線材で編んだ網状体で
もよい。
【0013】網状ドラムヘッド102はアコースティッ
クドラムの場合と同様に胴101の上端側と下端側に配
置したフープ103Aとフレーム103B及びこれら間
を締付けるテンションボルト103Cとによって構成さ
れる加張手段103によって適当な張力が与えられて胴
101の一方の開口端面に張られる。振動ピックアップ
104は例えば圧電素子或は電磁変換素子等の振動ピッ
クアップを用いることができ、圧電素子の場合は胴10
1の内壁或は網状ドラムヘッド102と胴101との接
合面の部分等に直接装着して網状ドラムヘッド102の
振動を検出し、電気信号としてコネクタ105から出力
する。
【0014】また電磁変換素子を用いる場合は網状ドラ
ムヘッド102は強磁性体の金網によって構成し、その
網状ドラムヘッド102の振動面と対向して電磁変換素
子で構成した振動ピックアップ104を装着する。この
ように構成した電気ドラム100をステック300で叩
くことにより網状ドラムヘッド102が振動し、振動ピ
ックアップ104が圧電素子の場合はその振動が胴10
1を介して振動ピックアップ104に伝わり、振動ピッ
クアップ104はその振動を電気ドラム信号DSに変換
し、その電気ドラム信号DSをコネクタ105から出力
し、拡声装置200で音として放音させる。
【0015】振動ピックアップ104が電磁変換素子の
場合は網状ドラムヘッド102の振動により振動ピック
アップ104に磁気変化を与え、その磁気変化により網
状ドラムヘッド102の振動を電気ドラム信号DSに変
換し、コネクタ105から出力する。この構成におい
て、直径が10インチの胴に線径が0.22mmφのス
テンレス鋼線によりメッシュ#30(1インチ内にある
目の数)で構成される金網を網状ドラムヘッド102と
して用いたところ、低域から高域まで含んだ自然な(ド
ラムらしい)音色が得られた。また張力を変化させた場
合の音程もバスドラムからスネアドラムまで幅広い音域
が得られた。
【0016】一方、線径が0.14mmφのステンレス
鋼線によりメッシュ#50で構成される金網を網状ドラ
ムヘッド102として用いたところ、特定の高域倍音が
多く低域が少ない、アコースティックドラムで言えば薄
いドラムヘッドを張ったドラム、いわゆるタンバリン系
の音色が得られた。次に、線径が0.29mmφのステ
ンレス鋼線によりメッシュ#16で構成される金網を網
状ドラムヘッド102として用いたところ、金属質の倍
音を多く含んだメタル・パーカッションのような音色が
得られた。
【0017】網の材質として、例えば硬質樹脂を被膜し
た金属線を用いた場合は、金属質な倍音が低減した音色
が得られる。また金網に樹脂をコーティングしても同様
の効果が得られた。上述したように網状ドラムヘッド1
02の材質及び網に表面加工を施したり、網を構成する
線材の直径、網のメッシュ#を変えることによって音色
を変えることができる。
【0018】以上により、この発明による電気ドラムの
基本構成が理解できよう。図2乃至図20にこの発明に
よる電気ドラムの各部の構成及びその変形実施例を示
す。図2乃至図12は振動ピックアップ104が圧電素
子の場合の実施例、図13乃至図16は振動ピックアッ
プ104が電磁変換素子の場合の実施例を示す。図2は
振動ピックアップ104を胴101の上端、つまり網状
ドラムヘッド102と胴101との接合面に装着した場
合を示す。胴101は木材、強化プラスチック或は金属
等で構成することができる。この実施例では胴101の
上端に図2に示すように切欠106を形成し、この切欠
106の部分に圧電素子から成る振動ピックアップ10
4を収納させ、その上に振動受駒107を被せ、この振
動受駒107を介して網状ドラムヘッド102の振動を
振動ピックアップ104に伝達させる構造とした場合を
示す。
【0019】振動ピックアップ104の詳細構造を図3
に示す。振動ピックアップはこの例では圧電素子104
Aと、その上下に装着した共通電位側の電極104Bと
電極104Cとによって構成した場合を示す。振動受駒
107は胴101と同一の木製、強化プラスチック或は
金属によって形成することができ、その材質によって音
色を設定することができる。因みに、木製或は強化プラ
スチックによって形成した場合は低音域が強調された音
となり、金属とした場合は高音域が強調された音とな
る。
【0020】この中で特に金属によって構成した場合は
振動ピックアップ104を電気的にシールドすることが
でき、ノイズ等の混入を阻止することができるから有効
である。図2に示す実施例では胴101の上端に120
°角間隔で3個所に切欠106を形成し、これら各切欠
106に振動ピックアップ104を装着した場合を示
す。従って各切欠106に装着した3個の振動ピックア
ップ104は図4に示すように、それぞれ並列接続し、
その並列接続点をコネクタ105を通じて外部に導出す
るように構成することができる。
【0021】このように複数の振動ピックアップ104
を等間隔に設けたことにより、叩く位置によって音の強
弱が発生することがなく、均一な音量を得ることができ
る。また複数の振動ピックアップ104を並列接続した
ことにより、特定の振動ピックアップ104の極く近傍
をステック300で叩いた場合でも、大振幅の検出信号
は他の振動ピックアップが負荷として働くため減衰され
て適度のレベルに揃えられてコネクタ105から出力さ
れる。
【0022】図2において、加張手段103は上述した
ようにフープ103Aと、フレーム103Bと、テンシ
ョンボルト103Cとによって構成され、テンションボ
ルト103Cがフープ103Aとフレーム103B間に
差し渡され、フープ103Aとフレーム103Bの間に
締付力を与えることによりフープ103Aが網状ドラム
ヘッド102の周縁に取付けたリング102Aを抑え付
け、網状ドラムヘッド102に張力を与える。フレーム
103Bにはドラム全体を支柱(特に図示しない)に支
持させるための保持金具103Dが一体に形成される。
尚、図2に示す例では胴101とフレーム103Bを別
々に形成した場合を示すが、これらを一体に形成する場
合もある。
【0023】図5及び図6は振動ピックアップ104の
装着構造の他の例を示す。この例では胴101を上半部
101Aと下半部101Bに2分割し、その接合部分に
振動ピックアップ104を装着する構造とした場合を示
す。従ってこの実施例では胴101の上半部101Aが
振動受リングとして作用する構造となる。図7及び図8
は振動ピックアップ104の装着構造の更に他の例を示
す。この例では胴101の上端に切欠を形成し、この切
欠の内部に振動ピックアップ104を収納し、その上に
ピックアップカバー108を被せる。ピックアップカバ
ー108は胴101に例えば接着剤によって固定され、
振動ピックアップ104を保護すると共に、ピックアッ
プカバー108には上面から振動ピックアップ104の
装着部分に通じる貫通孔108Aを形成し、この貫通孔
108Aに振動受駒107を挿入し、この振動受駒10
7を通じて網状ドラムヘッド102の振動を振動ピック
アップ104に伝達させる構造とした場合を示す。
【0024】この場合、振動受駒107は貫通孔108
A内において自由に動ける状態で挿入され、貫通孔10
8Aの上面からわずかに上方に突出する方法に選定し、
網状ドラムヘッド102の張力によって振動ピックアッ
プ104に圧接させる。振動受駒107の材質としては
亜鉛、アルミのダイキャスト、その他の金属或は強化プ
ラスチック、木材等を用いることができる。
【0025】この振動受駒107の材質を選定すること
により音色を変えることができる。例えば金属或は硬質
プラスチック等の硬い材質を用いると高域が強調された
音色になり、ナイロン等の軟質強化プラスチックを用い
る場合は高域成分が減って中域が強調される。黒檀或は
ハードメイプル等の硬質で軽い木材を用いると低域が強
調された音色になる。
【0026】尚、図7及び図8には振動ピックアップ1
04を1個しか図示していなが、振動ピックアップ10
4の数は図2乃至図6に示したように複数個設けられ
る。またこの実施例でもピックアップカバー108を金
属とし、このピックアップカバー108を振動ピックア
ップ104の共通電位側の電極104Bに接触させるこ
とにより振動ピックアップ104をピックアップカバー
108によってシールドすることができる。従って図7
及び図8に示した実施例によれば図2乃至図6に示した
実施例と比較してシールド効果を得ることができる点
と、音色調整が可能とする双方の作用効果を得ることが
できる。
【0027】図9乃至図12は振動ピックアップ104
の設置構造の更に他の実施例を示す。この実施例では胴
101の内壁面に振動ピックアップ104を貼付けた場
合を示す。図9及び図10に示す実施例では肉厚の厚い
材質で胴101を形成した場合を示す。材質としては木
製或はアルミのダイキャスト製、強化プラスチック等を
用いることができ、これらの材質によって音色を選定す
ることができる。例えばABSの発泡樹脂を用いると高
域部分が減った柔らかめの音色となり、バーチ材(かば
の一種である木材)を用いると中域と低域成分が強調さ
れた太くて丸みのある音色になる。
【0028】胴101の内壁面には平面111を形成
し、この平面111に振動ピックアップ104を貼着し
ている。図11及び図12に示す実施例では1〜2mm
厚程度の鉄板によって胴101を形成した場合を示す。
このように鉄板を用いた場合には高域成分が強調された
音の立ち上がりがシャープな硬めの音色になる。
【0029】図13及び図16に振動ピックアップ10
4として電磁変換素子を用いた実施例を示す。電磁変換
素子はコイル104Dと、このコイル104Dの軸芯に
装着した永久磁石104Eとによって構成され、これら
コイル104Dと永久磁石104Eによって構成した振
動ピックアップ104を図13及び図14の例ではピッ
クアップホルダ112によって胴101の内壁面に装着
した場合を示す。図13及び図14では振動ピックアッ
プ104を1個だけ示しているが、胴101の内壁に例
えば120°角間隔に3個設け、3個の振動ピックアッ
プ104を並列接続してコネクタ(図13,図14では
図示しない)に電気ドラム信号を出力するように構成す
ることができる。電磁変換素子によって構成した振動ピ
ックアップ104を用いる場合は網状ドラムヘッド10
2は磁性を持つ金網とされ、網状ドラムヘッド102が
振動することによりコイル104Dを通る磁束が変化
し、この磁束の変化によりコイル104Dに誘導起電力
が発生し、この誘導起電力が電気ドラム信号として出力
される。
【0030】図15及び図16は電磁変換素子によって
構成した振動ピックアップ104を胴101の中央部分
に配置した場合を示す。このように胴101の中央部分
に配置した場合に、中央部分では網状ドラムヘッド10
2が最も大きく振動することから、網状ドラムヘッド1
02を強く叩くと、網状ドラムヘッド102が振動ピッ
クアップ104に接触し、雑音が発生するおそれがあ
る。
【0031】このため、この実施例では振動ピックアッ
プ104の位置を上下方向に移動させ、網状ドラムヘッ
ド102と振動ピックアップ104との間の間隔Gを任
意に調整できる構成を付加した場合を示す。このために
はコイル104Dと永久磁石104Eを一体に支持する
ボビン113から軸芯方向に突出した円筒状のボス11
4を突出して形成し、このボス114の中空孔の内壁に
雌ネジを形成し、この雌ネジに調整ネジ115を螺合さ
せ、この調整ネジ115を回動操作することにより振動
ピックアップ104を上下に移動させ、網状ドラムヘッ
ド102との間の間隔Gを調整することができる。尚、
振動ピックアップ104にはスプリング116により上
向に弾性偏倚力を与え、調整ネジ115による設定位置
を安定に維持するように構成している。
【0032】図15及び図16に示したように、振動ピ
ックアップ104を胴101の中央位置に配置すること
により、中央を叩くと大きな音量のドラム音を得ること
ができ、中央部分から離れるに従って漸次音量が低下す
る特性が得られる。この特性はアコースティックドラム
と同様の演奏感となる。更に、振動ピックアップ104
の位置を任意に設定することができるから、網状ドラム
ヘッド102の張力の調整の違いによるドラムヘッド中
央部の振幅の大きさや奏者の叩く力の平均値に対応して
間隔Gを設定することができ、網状ドラムヘッド102
が振動中に振動ピックアップ104に接触して雑音が発
生することも防止することができる。
【0033】図17はこれまでに説明した各形式の振動
ピックアップ104を組合せた例を示す。つまり、図1
7において104AAは図2に示した振動ピックアップ
104の支持構造によって支持した振動ピックアップ、
104BBは図9乃至図12に示した支持構造の振動ピ
ックアップ、104CCは図13,図14に示した電磁
変換素子によって構成した振動ピックアップをそれぞれ
示す。各支持構造の振動ピックアップ104AA,10
4BB,104CCの各電気検出信号をミキサ装置11
8に導入し、ミキサ装置118で各振動ピックアップ1
04AA,104BB,104CCの電気出力の混合比
を設定し、その設定された混合比でミキシングされた電
気ドラム信号をコネクタ105を通じて出力するように
構成した場合を示す。ミキサ装置には各振動ピックアッ
プ104AA,104BB,104CC毎に電気信号の
出力レベルを調整するツマミ118A,118B,11
8Cが設けられ、これらの各ツマミ118A,118
B,118Cを適宜に設定して混合比を自由に設定でき
る構成とした場合を示す。
【0034】この図17の実施例では電磁変換素子によ
って構成される振動ピックアップ104CCが混在し、
この電磁変換素子によって構成した振動ピックアップ1
04CCは圧電素子で構成される振動ピックアップとイ
ンピーダンスが異なることから全ての電磁ピックアップ
を並列接続することはできない。このため、図18に示
すように各振動ピックアップ104AA,104BB,
104CCの各出力信号をミキサ装置118に設けたバ
ッファ増幅器BU1,BU2,BU3で増幅し、アナロ
グ加算回路ADDでアナログ加算し、その加算結果をコ
ネクタ105を通じて出力し、拡声装置200から電気
ドラム音を放音させる構成とした場合を示す。
【0035】尚、この場合、ミキサ装置118において
各振動ピックアップ104AA,104BB,104C
Cの混合比を変化させることにより音色を変化させるこ
とができる利点が得られる。図19及び図20は音色を
任意に設定するために網状ドラムヘッド102の一部に
可撓性を持つ膜状体119を貼着した実施例を示す。図
19は網状ドラムヘッド102の中央部分に円形の膜状
体119を貼着した場合を示す。また図20はリング状
の膜状体119を貼着した場合を示す。図19に示すよ
うに網状ドラムヘッド102の中央部分に膜状体119
を貼着した場合は低域が強調された音色となり、図20
の場合は中域が強調された音色となる。膜状体119の
材質としては可撓性を持つ例えば高分子材料等を用いる
ことができる。また、膜状体119として例えばポリエ
チレンテレフタレートのように硬度の高い材料を用いた
場合は、音の立上がりが鋭い、いわゆるアタックが強調
されたドラム音を得ることができる。
【0036】以上により、この発明による電気ドラムの
構造が理解できよう。上述した各実施例によれば網状ド
ラムヘッド102を叩くことにより、その振動が振動ピ
ックアップ104で検出され、電気ドラム信号として出
力され拡声装置200に供給することによりドラムの音
を放音させることができ、このままの構成でも充分音色
のよいドラム音を得ることができる。然し乍ら、以下で
説明する音色改善電子回路を設けることにより、更に一
層音色をアコースティックドラムの音に近づけることが
できる。
【0037】図21以下に、この発明による電気ドラム
の音をより一層アコースティックドラムに近づけるため
の各種の回路を付加した拡声装置200の実施例を示
す。図21は拡声装置200を構成する増幅器201の
前段側にバッファ増幅器203と、音色改善電子回路2
04を縦続接続して配置すると共に、加算器205を設
け、音色改善電子回路204で音色を改善した信号DD
Sに原音DSを加え、その加算結果を増幅器201で増
幅し、その増幅出力によってスピーカ202を駆動して
スピーカ202から音として放音させる構成とした場合
を示す。
【0038】図22は音色改善電子回路204の一例を
示す。NLは非線形回路で構成される倍音発生回路を示
す。この倍音発生回路NLによって電気ドラム100か
ら入力される電気ドラム信号DSから倍音成分を発生さ
せ、この倍音成分を例えばバンドパスフィルタFLを通
じて取り出し、アナログ加算器205で原音DSに加え
ることにより、原音から成る電気ドラム信号DSに倍音
成分を付加した更にドラムらしい音色を持つ信号を得る
ことができる。
【0039】倍音発生回路NLの具体的な例として最も
簡単な例として両波整流回路或は単波整流回路で構成す
ることができる。また非線形入出力特性を持つ増幅器或
は飽和増幅器によって電気ドラム信号DSの各サイクル
の信号を矩形波状に変換して倍音成分を発生させること
も考えられる。更にその他の例として、図23に示すよ
うに乗算器によって倍音発生回路NLを構成することが
できる。この倍音発生回路NLによれば原音DS(図2
4A)同士を乗算し、その乗算結果として歪み率の高い
信号波形(図24B)を発生させ、この波形歪みの高い
信号により倍音成分を発生させることができる。
【0040】倍音発生回路NLの他の例を図25,図2
6に示す。図25は可変遅延回路によって倍音発生回路
NLを構成した場合を示す。この場合は電気ドラム信号
DSを可変遅延回路に与え、その可変遅延回路の遅延時
間を電気ドラム信号DSのレベルに対応させて遅延時間
を変調させることによりアナログ加算器205の出力側
では変調した信号と原音DSとが加算され、結果として
倍音成分が増加することになる。可変遅延回路としては
BBDと呼ばれているバケットブリケード(電荷転送素
子)を用いて可変遅延回路を構成することができる。
又、A/D変換器、D/A変換器、シフトレジスター等
を用いてデジタルで行ってもよい。
【0041】図26は倍音発生回路NLを移相器によっ
て構成した場合を示す。移相器を用いた場合も電気ドラ
ム信号を電気ドラム信号のレベルに応じて移相させる構
成とし、移相遷移された信号と移相遷移されない信号を
アナログ加算器205で加算することにより、倍音成分
が倍増される。図27は音色改善回路204に加えてノ
イズ発生器NGを設け、このノイズ発生器NGから発生
する白色ノイズを例えば電気ドラム信号の立上りの瞬間
だけ取り出し、そのノイズをアナログ加算器205で原
音及び倍音成分に加えることにより、電気ドラムの音の
立上りに高周波成分を含ませ、アタック音を改善するよ
うに構成した場合を示す。
【0042】このために、ノイズ発生器NGで発生する
白色ノイズを例えばバンドパスフィルタBFLで所望の
周波数成分(可聴周波数成分)を取り出し、その可聴ノ
イズ成分を乗算器JOに入力する。乗算器JOでは倍音
発生器で発生した倍音成分を可聴ノイズ成分に乗算し、
電気ドラム信号の立上りの瞬間だけを取り出す、このよ
うにして取り出した可聴ノイズ成分を必要に応じて更に
バンドパスフィルタBFL2を介して取り出し、アナロ
グ加算器205に入力するアナログ加算器205には電
気ドラム信号DSと、倍音発生器NLで発生させた倍音
成分が入力され、可聴ノイズと共に原音DSに加算され
る。
【0043】従ってこのように構成することにより電気
ドラム信号の音の上りの部分(アタック部分)に可聴ノ
イズが加わるため、立上りの音がアコースティックドラ
ムに近づけられる。尚、図27において、音色改善電子
回路204に設けられたフィルタFL1とFL2はバン
ドパスフィルタか又はローパスフィルタの何れかが用い
られ、可聴周波数の倍音成分を通過させる。
【0044】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば
ドラムヘッドを金属線又は硬度が高い材質の線材で構成
した網状ドラムヘッド102としたから、網状ドラムヘ
ッド102は空気による制動作用を受けることなく振動
することができる。よって余韻の長い振動(サスティー
ンが長い)を得ることができる。また、網状ドラムヘッ
ド102は材料それ自体に剛性(鋼性)があるので加張
手段103による張力が低くても余韻の長い振動を得る
ことができる。つまり、径の小さい胴101に低い張力
で張られた網状ドラムヘッド102でも、音程が低くサ
スティーンが長いドラム音を得ることができる。よって
小口径のドラムでありながら、大口径のドラム音を発生
させることができる利点が得られる。つまり、径の小さ
い胴101に張られた網状ドラムヘッド102でもサス
ティーンが長いドラム音を得ることができる。よって小
口径のドラムでありながら、大口径のドラム音を発生さ
せることができる利点が得られる。
【0045】更に、網状ドラムヘッド102の振動を振
動ピックアップ104で電気信号に変換し、この電気信
号を電気ドラム信号DSとして拡声装置200に入力す
る構成としたから、網状ドラムヘッド102の振動自体
が電気信号に変換されてドラム音として放音されるか
ら、網状ドラムヘッド102の叩き方次第で(演奏技術
によって)網状ドラムヘッド102の振動を自在に変化
させることにより、その振動の変化を音の変化として表
現することができる。この結果アコースティックドラム
の奏法と何等変わることなく演奏することができる。
【0046】また、拡声装置200に音色改善電子回路
204或はノイズ発生器NG等を付加することにより、
スピーカ202から放音する電気ドラム音の音色を更に
アコースティックドラムの音色に近づけることができる
利点も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の基本構成を説明するための接続配置
図。
【図2】この発明による電気ドラムの一実施例を説明す
るための分解斜視図。
【図3】図2に示した実施例の要部の構造を説明するた
めの断面図。
【図4】図2に示した実施例の電気接続構造を説明する
ための接続図。
【図5】この発明による電気ドラムの要部の他の実施例
を説明するための断面図。
【図6】図5に示した実施構造の全体を説明するための
分解斜視図。
【図7】この発明による電気ドラムの要部の他の実施例
を説明するための断面図。
【図8】図7の実施構造の詳細を説明するための斜視
図。
【図9】この発明による電気ドラムの要部の他の実施例
を説明するための断面図。
【図10】図9に示した実施構造の全体を説明するため
の分解斜視図。
【図11】この発明による電気ドラムの要部の他の実施
例を説明するための断面図。
【図12】図11に示した実施構造の全体を説明するた
めの分解斜視図。
【図13】この発明による電気ドラムの要部の他の実施
例を説明するための断面図。
【図14】図13に示した実施構造の詳細を説明するた
めの斜視図。
【図15】この発明による電気ドラムの要部の他の実施
例を説明するための断面図。
【図16】図15に示した実施構造の全体を説明するた
めの斜視図。
【図17】この発明による電気ドラムの要部の他の例を
説明するための分解斜視図。
【図18】図17に示した実施構造の電気回路を説明す
るための接続図。
【図19】この発明による電気ドラムの音色調整手段を
施した状態を説明するための斜視図。
【図20】図19と同様の斜視図。
【図21】この発明による電気ドラム用の拡声装置の一
例を説明するための接続図。
【図22】図21に示した電気ドラム用の拡声装置の要
部を具体的に示した接続図。
【図23】図22と同様の接続図。
【図24】図23の動作を説明するための波形図。
【図25】図22と同様の接続図。
【図26】図22と同様の接続図。
【図27】図22と同様の接続図。

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 A.円筒状の胴と、 B.この胴の一方の開口面に張られ、硬度がポリエチレ
    ンテレフタレートより硬い線材で構成された網状ドラム
    ヘッドと、 C.この網状ドラムヘッドに張力を与える加張手段と、 D.上記胴に装着され、上記網状ドラムヘッドの振動を
    電気信号に変換する振動ピックアップと、 E.この振動ピックアップで得られる電気信号を上記胴
    の内部から外部に取り出す電気コネクタと、を具備して
    構成したことを特徴とする電気ドラム。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の電気ドラムにおいて、上
    記網状ドラムヘッドを金網としたことを特徴とする電気
    ドラム。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の電気ドラムにおいて、上
    記振動ピックアップを上記胴に対して複数装着し、これ
    ら複数の振動ピックアップの検出信号をアナログ加算し
    て上記電気コネクタから取り出す構成としたことを特徴
    とする電気ドラム。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3記載の電気ドラムの何れ
    かにおいて、上記振動ピックアップを圧電変換素子とし
    たことを特徴とする電気ドラム。
  5. 【請求項5】 請求項2記載の電気ドラムにおいて、上
    記振動ピックアップを電磁変換素子としたことを特徴と
    する電気ドラム。
  6. 【請求項6】 請求項3記載の電気ドラムにおいて、上
    記複数の振動ピックアップを種類が異なる振動ピックア
    ップとしたことを特徴とする電気ドラム。
  7. 【請求項7】 請求項4記載の電気ドラムにおいて、上
    記振動ピックアップを上記胴の上記網状ドラムヘッドと
    の接合端面に装着したことを特徴とする電気ドラム。
  8. 【請求項8】 請求項4記載の電気ドラムにおいて、上
    記胴を軸芯方向に分割できる構造とし、その分割された
    接合面に上記振動ピックアップを挾着したことを特徴と
    する電気ドラム。
  9. 【請求項9】 請求項4記載の電気ドラムにおいて、上
    記振動ピックアップを上記胴の内壁面に装着したことを
    特徴とする電気ドラム。
  10. 【請求項10】 請求項5記載の電気ドラムにおいて、
    上記振動ピックアップを上記胴の中央部に設け、上記金
    網から成る網状ヘッドの中央部の振動を電気信号に変換
    するように構成したことを特徴とする電気ドラム。
  11. 【請求項11】 請求項1乃至10記載の電気ドラムの
    何れかにおいて、上記網状ドラムヘッドの一部に可撓性
    を持つ膜状体を貼着し、音色を調整したことを特徴とす
    る電気ドラム。
  12. 【請求項12】 請求項1乃至10記載の電気ドラムの
    何れかにおいて、上記網状ドラムヘッドの一部に硬度の
    高い膜状体を貼着し、音色を調整したことを特徴とする
    電気ドラム。
  13. 【請求項13】 請求項1乃至12記載の電気ドラムの
    何れかが出力する電気ドラム信号を受ける入力端子と、
    この入力端子に供給される電気ドラム信号から倍音成分
    を生成する倍音発生回路を具備して構成される音色改善
    電子回路と、この倍音発生回路が発生する倍音成分を上
    記入力端子に供給される電気ドラム信号に加える加算回
    路と、この加算回路から出力される音色改善信号を増幅
    する増幅器と、この増幅器の出力によって駆動され上記
    電気ドラムの音を放音させるスピーカとによって構成し
    た電気ドラム用拡声装置。
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