JPH11165558A - デファレンシャル装置 - Google Patents

デファレンシャル装置

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JPH11165558A
JPH11165558A JP33043597A JP33043597A JPH11165558A JP H11165558 A JPH11165558 A JP H11165558A JP 33043597 A JP33043597 A JP 33043597A JP 33043597 A JP33043597 A JP 33043597A JP H11165558 A JPH11165558 A JP H11165558A
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gear
torque
differential device
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Hayashi Kageyama
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 トルク配分割合の調整範囲が広く、構造簡
単、小型軽量で、エネルギー損失を少なくし、部材の互
換性を高める。 【解決手段】 エンジンによって回転駆動されるデフケ
ース3と、車輪側に連結された一対の出力部材35、3
7と、デフケース3と出力部材35、37との間にそれ
ぞれ配置され、第1のギヤ組5によって2系統の第1ト
ルク伝達系を構成する差動ギヤ機構53と、第1のギヤ
組5とトルク伝達比の異なる第2のギヤ組7、7によっ
て構成される第2トルク伝達系と、第1と第2のトルク
伝達系を各別に断続する切り換え手段9とを備えた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、デファレンシャ
ル装置に関する。
【0002】
【従来の技術】特開平7−61253号公報に図3に示
すようなデファレンシャル装置201が記載されてい
る。
【0003】このデファレンシャル装置201は、デフ
ケース203を回転させるエンジンの駆動力をインター
ナルギヤ205からピニオンキャリヤ207とサンギヤ
209とを介してそれぞれドライブシャフト211、2
13に分配する差動機構215と、多板クラッチと21
7、219と、増速ギヤ組221と、減速ギヤ組223
と、伝動ギヤ組225と、多板クラッチ217、219
をそれぞれ締結させる一対の油圧ピストン227、22
9と、油圧ピストン227、229を介して多板クラッ
チ217、219を各別に連結するコントローラなどか
ら構成されている。
【0004】多板クラッチ217、219は、一側がそ
れぞれドライブシャフト213(サンギヤ209)に連
結され、他側がそれぞれ増速ギヤ組221と減速ギヤ組
223とに連結されている。又、伝動ギヤ組225は増
速ギヤ組221及び減速ギヤ組223とドライブシャフ
ト211(ピニオンキャリヤ207)側とを連結する。
【0005】多板クラッチ217を開放して多板クラッ
チ219を締結すると、ドライブシャフト211、21
3の間の差動回転は減速ギヤ組223で減速され、ドラ
イブシャフト213側の車輪を減速する。又、多板クラ
ッチ219を開放して多板クラッチ217を締結する
と、ドライブシャフト211、213の間の差動回転は
増速ギヤ組221で増速され、ドライブシャフト213
側の車輪を増速する。
【0006】このとき、コントローラは油圧ピストン2
27、229の作動圧を調節し多板クラッチ217、2
19を滑らせることによって、減速ギヤ組223、ある
いは、増速ギヤ組221を介して移動するトルクを調整
し、所望のトルク配分比を得ている。
【0007】又、各多板クラッチ217、219をロッ
クさせると、車輪と路面との間に滑りが生じる。
【0008】このように各多板クラッチ217、219
を断続し、滑らせることによって、差動回転を増速ギヤ
組221と減速ギヤ組223で増減速し、各車輪へのト
ルク配分割合を制御し、例えば、車体のヨーモーメント
を低減して直進安定性を向上させ、あるいは、車両の旋
回性を向上させる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかし、デファレンシ
ャル装置201のように、差動機構215の差動回転を
増速ギヤ組221と減速ギヤ組223とで増減速し、ト
ルクを高速回転側から低速回転側に移動させる構成で
は、差動機構215の差動回転によって、例えば、ドラ
イブシャフト213が増速ギヤ組221の出力回転より
高速で回転しているときは、増速ギヤ組221を連結し
ても却ってドライブシャフト213は減速される。
【0010】このように、差動機構215の差動回転が
増速ギヤ組221と減速ギヤ組223の変速比に近づく
とトルク配分割合の調整効果が減少し、変速比を超える
とトルクが移動しないから、トルク配分割合の調整範囲
は増速ギヤ組221と減速ギヤ組223の変速比範囲以
内に限定される。
【0011】従って、例えば、車輪が空転し易い圧雪路
などではトルク配分割合の調整が不可能になり、車両の
走行性などを改善できないことがある。
【0012】又、多板クラッチ217、219を滑らせ
てトルク配分割合を制御する構成では、多板クラッチ2
17、219の発熱によって大きなエネルギー損失が生
じると共に、多板クラッチ217、219の耐久性が低
下する。
【0013】又、多板クラッチ217、219のよう
に、トルク伝達容量を制御できるクラッチを用いる構成
では、噛み合いクラッチのように、部品点数が少なく、
構造簡単であり、小型軽量でトルク伝達容量が大きいク
ラッチを用いて、デファレンシャル装置を小型軽量にす
ることができない。
【0014】又、デファレンシャル装置201のよう
に、既成の差動機構215に後から増速ギヤ組221と
減速ギヤ組223と伝動ギヤ組225とを組み合わせる
構成では、デフケースに差動機構を組み込んだ通常のデ
ファレンシャル装置に較べると、構造と形状とが極めて
複雑であり、大型で重い。
【0015】従って、デファレンシャル装置201を収
容するデフキャリヤ231も、通常のデフキャリヤとの
互換性が失われると共に、形状が複雑で大型のデフキャ
リヤを用いると、車体側にも大きな変更が必要になり、
コストが大幅に上昇する。
【0016】そこで、この発明は、トルク配分割合の調
整範囲が広く、エネルギー損失が少なく、構造簡単、小
型軽量で、部材の互換性が高く、低コストのデファレン
シャル装置の提供を目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】請求項1のデファレンシ
ャル装置は、エンジンの駆動力によって回転駆動される
デフケースと、車輪側に連結された一対の出力部材と、
デフケースと各出力部材との間にそれぞれ配置され、第
1のギヤ組によって2系統の第1トルク伝達系を構成す
る差動ギヤ機構と、第1のギヤ組とトルク伝達比の異な
る第2のギヤ組によって構成される第2トルク伝達系
と、第1と第2のトルク伝達系を各別に断続する切り換
え手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】そこで、一方の出力部材側で第1のギヤ組
と第2のギヤ組とを切り換えると、この出力部材側の車
輪は、連結されたギヤ組のトルク伝達比に応じて、他方
の出力部材側の車輪に対し増速又は減速される。こうし
て両車輪間に駆動トルク差を与えることにより、車体に
必要な方向のヨーモーメントを与えれば、下記のよう
に、車体の挙動を制御して操縦性や安定性などを大きく
向上させることができる。
【0019】例えば、本発明のデファレンシャル装置を
車軸上に配置した場合、旋回走行するときに外輪側のト
ルクが大きくなるようにギヤ組を切り換えれば、旋回を
促す方向のヨーモーメントによって、車両の旋回性が大
きく向上する。
【0020】又、悪路などで車体が蛇行するような場合
は、ギヤ組の切り換えによって、蛇行と反対方向のヨー
モーメントを車体に与えれば、蛇行が収束し、安定性が
向上する。
【0021】又、上記のように、従来例のデファレンシ
ャル装置は、差動機構の差動回転を増速ギヤ組と減速ギ
ヤ組とで増減速するように構成したことにより、差動機
構の差動回転が各ギヤ組の変速比を超えるとトルク配分
割合の調整機能を失う。
【0022】しかし、本発明のデファレンシャル装置で
は、第1ギヤ組(第1トルク伝達系)と第2ギヤ組(第
2トルク伝達系)の一方を連結し、他方を遮断すれば、
両出力部材に均等なトルクが送られる(等トルク配分機
能の)通常のデファレンシャル装置になる。
【0023】又、一方の出力部材側の第1ギヤ組(第1
トルク伝達系)を連結し、他方の出力部材側の第2ギヤ
組(第2トルク伝達系)を遮断すれば、両出力部材に不
均等なトルクが送られる(不等トルク配分機能の)デフ
ァレンシャル装置になる。
【0024】このように、本発明のデファレンシャル装
置は、等トルク配分機能と不等トルク配分機能との切り
換え機能を持った差動装置であるから、従来例と異なっ
て、トルク配分機能が差動回転数による制限を受けな
い。
【0025】従って、あらゆる路面状況でトルク配分割
合の調整が可能であり、車両の走行性や安定性などを路
面状況の変化に応じて効果的に改善することができる。
【0026】又、従来例と異なり、基本的には摩擦クラ
ッチを滑らせてトルク配分割合を制御する構成ではない
から、発熱による大きなエネルギー損失と、クラッチの
耐久性低下とが防止される。
【0027】又、本発明のデファレンシャル装置は、既
成の差動機構に増速ギヤ組と減速ギヤ組と伝動ギヤ組な
どを組み合わせる従来例のような構成ではなく、上記の
ように、デフケースの内部に第1と第2のトルク伝達系
を配置した構成であるから、形状が極めて簡単であり、
小型軽量である。
【0028】従って、本発明のデファレンシャル装置を
収容するケースと通常のケースとの互換性が保たれると
共に、通常のケースを使用できるから、車体側の変更も
不要である。
【0029】請求項2の発明は、請求項1に記載のデフ
ァレンシャル装置であって、前記差動ギヤ機構を構成す
る第1のギヤ組が、出力側の一対の第1サイドギヤと、
これらの第1サイドギヤを連結する少なくとも一対の第
1ピニオンギヤ組とを有し、第2のギヤ組が、第1ピニ
オンギヤ組と噛み合う第2ピニオンギヤと、第2ピニオ
ンギヤと噛み合う第2サイドギヤとを有していることを
特徴とし、請求項1の発明と同等の効果を得る。
【0030】この構成のように、一対の第1サイドギヤ
を第1ピニオンギヤ組で連結した差動機構に、第1ピニ
オンギヤ組と噛み合う第2ピニオンギヤと、第2ピニオ
ンギヤと噛み合う第2サイドギヤとを設けたデファレン
シャル装置は、通常のデファレンシャル装置を一回り大
きくした形状と寸法になる。
【0031】このように、本発明のデファレンシャル装
置は特殊な形状と寸法にはならないから、通常のケース
に収容可能であり、従って、車体側の変更も不要であ
る。
【0032】請求項3の発明は、請求項2に記載のデフ
ァレンシャル装置であって、前記デフケースに形成され
た収容孔に前記各ピニオンギヤが摺動回転自在に収容さ
れていることを特徴とし、請求項2の発明と同等の効果
を得る。
【0033】これに加え、各ピニオンギヤとデフケース
との間で機械式の差動制限特性が得られる。
【0034】請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれ
かに記載のデファレンシャル装置であって、前記切り換
え手段が、出力部材と第1のギヤ組との間、及び、出力
部材と第2のギヤ組との間で各ギヤ組を断続することを
特徴とする。
【0035】すなわち、これらの切り換えを出力部材と
各ギヤ組との側で行うものであり、請求項1〜3のいず
れかと同等の効果を得る。
【0036】本発明のデファレンシャル装置において、
第1ギヤ組(第1トルク伝達系)と第2ギヤ組(第2ト
ルク伝達系)との切り換えは、入力側、あるいは、ギヤ
組を構成するギヤの間、あるいは、出力部材側など、基
本的にはどの箇所で行ってもよい。
【0037】請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれ
か一項に記載のデファレンシャル装置であって、前記切
り換え手段が、断続クラッチ及びこれを断続操作するア
クチュエータと、ワンウェイクラッチとから構成されて
おり、断続クラッチ側のギヤ組がトルク伝達をしている
間、このワンウェイクラッチによって他側のギヤ組での
相対回転が許容されることを特徴とする。
【0038】例えば、ワンウェイクラッチで第1ギヤ組
を断続し、断続クラッチで第2ギヤ組を断続するように
構成したとき、断続クラッチの連結を解除すると、ワン
ウェイクラッチによって第1ギヤ組が連結されてそのト
ルク伝達比が得られ、断続クラッチを連結すると第2ギ
ヤ組が連結されてそのトルク伝達比が得られると共に、
第1ギヤ組内部の、あるいは、第1ギヤ組と第2ギヤ組
との相対回転がこのワンウェイクラッチによって許容さ
れ、互いのトルクの干渉が防止される。
【0039】こうして、請求項1〜4のいずれかと同等
の効果を得る。
【0040】又、ワンウェイクラッチを用いたことによ
り、切り換え手段及びデファレンシャル装置が、それだ
け、構造簡単、小型軽量、低コストになる。
【0041】請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれ
か一項に記載のデファレンシャル装置であって、前記切
り換え手段に、伝達トルクを制御可能なクラッチを用い
たことを特徴とし、請求項1〜5のいずれかと同等の効
果を得る。
【0042】これに加えて、切り換え手段に摩擦クラッ
チのような伝達トルクを制御できるクラッチを用いたこ
の構成では、クラッチの伝達トルクを制御することによ
って、このクラッチと対応する第1ギヤ組、又は、第2
ギヤ組のトルク伝達比を調整することが可能であり、ト
ルク配分割合を連続的に制御することができる。
【0043】請求項7の発明は、請求項1〜5のいずれ
か一項に記載のデファレンシャル装置であって、前記切
り換え手段に、噛み合いクラッチを用いたことを特徴と
し、請求項1〜5のいずれかと同等の効果を得る。
【0044】これに加えて、本発明のデファレンシャル
装置では、第1ギヤ組と第2ギヤ組との間で互いのトル
クの干渉が生じないから、従来例と異なって、滑りクラ
ッチを用いる必要がない。
【0045】従って、切り換え手段に噛み合いクラッチ
を用いることが可能であり、噛み合いクラッチを用いた
ことにより、切り換え手段の構造が簡単になり、部品点
数が低減され、軽量になると共に、小型の切り換え手段
で大きなトルク配分割合を制御することが可能になる。
【0046】
【発明の実施の形態】図1と図2とによって本発明の一
実施形態を説明する。これらの図面はこの実施形態のデ
ファレンシャル装置1を示している。なお、左右の方向
は図1での左右の方向であり、符号を与えていない部材
等は図示されていない。
【0047】このデファレンシャル装置1は、車両の後
輪側車軸上に配置されている。
【0048】図1と図2に示したように、デファレンシ
ャル装置1は、デフケース3、第1のギヤ組5(第1の
トルク伝達系)、第2のギヤ組7、7(第2のトルク伝
達系)、切り換え手段9、9などから構成されている。
【0049】この切り換え手段9は、多板クラッチ1
1、11(伝達トルクを制御可能なクラッチ:摩擦クラ
ッチ)、ワンウェイクラッチ13、13、各多板クラッ
チ11を断続操作する油圧アクチュエータ15、15
(アクチュエータ)、油圧アクチュエータ15、15を
操作するコントローラなどから構成されている。
【0050】デファレンシャル装置1はデフキャリヤ1
7の内部に配置されており、デフケース3の左右に形成
されたボス部19、21はベアリング23、23を介し
てデフキャリヤ17に支承されている。デフキャリヤ1
7にはオイル溜りが設けられており、デファレンシャル
装置1は、静止状態で下部がこのオイル溜りに浸されて
おり、回転するとオイル溜りからオイルを撥ね上げる。
【0051】デフケース3にはリングギヤ25がボルト
27によって固定されており、リングギヤ25はドライ
ブピニオンシャフト29の後端に形成されたドライブピ
ニオンギヤ31と噛み合っている。ドライブピニオンシ
ャフト29はベアリング33を介してデフキャリヤ17
に支承されており、継ぎ手を介してプロペラシャフトに
連結され、動力伝達系を構成している。
【0052】エンジンの駆動力はトランスミッションか
らこの動力伝達系を介してデフケース3を回転駆動す
る。
【0053】デフケース3には、左右の後輪側に連結さ
れた車軸35、37(出力部材)が貫入しており、各車
軸35、37はベアリング39によってデフキャリヤ1
7に支承されている。又、デフキャリヤ17の左右の端
部と車軸35、37との間にはシール41が配置され、
オイル洩れと異物の侵入とを防止している。
【0054】ワンウェイクラッチ13は結合リング43
を介してそれぞれ車軸35、37上に配置されている。
【0055】スパーギヤまたはヘリカルギヤの第1と第
2のギヤ組5,7は、左右のスパーギヤまたはヘリカル
ギヤのサイドギヤ45、47(出力側サイドギヤ:第1
サイドギヤ)と複数組のピニオンギヤ49、51(第1
ピニオンギヤ組)とからなり、差動ギヤ機構53を構成
している。
【0056】各サイドギヤ45、47は同一径であり、
ワンウェイクラッチ13を介してそれぞれ車軸35、3
7に連結されている。
【0057】図2に示すように、各ピニオンギヤ49、
51は互いに噛み合っており、更に、ピニオンギヤ49
がサイドギヤ45と噛み合い、ピニオンギヤ51がサイ
ドギヤ47と噛み合うことによってサイドギヤ45、4
7を連結している。各サイドギヤ45、47は各ピニオ
ンギヤ49、51との噛み合いによって径方向外側から
支持されている。
【0058】又、各ピニオンギヤ49、51はデフケー
ス3に設けられた収容孔55、55に摺動回転自在に収
容されている。
【0059】又、図2に示すように、第2のギヤ組7、
7は、互いに噛み合ったピニオンギヤ57(第2ピニオ
ンギヤ)とサイドギヤ59(第2サイドギヤ)とでそれ
ぞれ構成されている。
【0060】一方のピニオンギヤ57は差動ギヤ機構5
3のピニオンギヤ51と噛み合い、他方のピニオンギヤ
57はピニオンギヤ49と噛み合っている。
【0061】各ピニオンギヤ57はデフケース3に設け
られた収容孔61に摺動回転自在に収容されている。
【0062】サイドギヤ59は差動ギヤ機構53のサイ
ドギヤ45、47より大径にしてあり、デフケース3か
ら各車軸35、37に向かってトルク伝達比はサイドギ
ヤ45、47とサイドギヤ59との径の比、例えば1.
5倍に調整されている。
【0063】各サイドギヤ59とデフケース3との間に
はスラストワッシャ63が配置され、各ヘリカルギヤの
噛み合いスラスト力を受けている。
【0064】各サイドギヤ59は噛み合い部65によっ
て多板クラッチ11のクラッチドラム67に連結されて
いる。これらのサイドギヤ59とクラッチドラム67は
メタルベアリング69(滑り軸受け)を介してデフケー
ス3に支承されており、各車軸35、37はメタルベア
リング71を介してサイドギヤ59とクラッチドラム6
7に支承されている。
【0065】各多板クラッチ11は、クラッチドラム6
7と各車軸35、37との間に設けられており、デフケ
ース3のボス部19、21と各クラッチドラム67との
間には、多板クラッチ11の押圧力を受けるニードルス
ラストベアリング73が配置されている。
【0066】各油圧アクチュエータ15は、デフキャリ
ヤ17に形成されたシリンダ75とピストン77とから
なり、ピストン77はシール79、81を介してシリン
ダ75に液密に係合している。
【0067】シリンダ75にはエンジン駆動または電動
のオイルポンプからオイルプラグ83を介して油圧が送
られ、ピストン77はニードルスラストベアリング85
と押圧部材87とを介して多板クラッチ11を押圧す
る。
【0068】各ピストン77は位置決めピン89によっ
てデフキャリヤ17に廻り止めされており、ピストン7
7の回転に伴う遠心力によってオイル圧が生じることを
防止し、このオイル圧による油圧アクチュエータ15と
多板クラッチ11の誤動作を防止している。
【0069】又、左右の油圧アクチュエータ15におい
て、ピストン77に固定されたリテーナ91とデフキャ
リヤ17との間には、周方向等間隔に3個のコイルばね
93が配置されており、油圧アクチュエータ15の作動
を停止したときの多板クラッチ11による引きずりトル
クを遮断する。
【0070】コントローラは、車両の走行条件、操舵条
件、路面状況などに応じ、各油圧アクチュエータ15を
介して多板クラッチ11を連結し、又、連結を解除す
る。
【0071】左右の多板クラッチ11の連結を解除する
と、第2ギヤ組7、7のトルク伝達が遮断されるから、
デフケース3を回転させるエンジンの駆動力は、第1ギ
ヤ組5(差動ギヤ機構53)のピニオンギヤ49、51
からサイドギヤ45、47に分配され、サイドギヤ4
5、47からワンウェイクラッチ13を介して車軸3
5、37に伝達され、左右の後輪を駆動する。
【0072】このとき、サイドギヤ45、47が同一径
であることによって差動ギヤ機構53は左右の後輪に均
等なトルクを送る(等トルク配分の差動機構)。
【0073】又、左の多板クラッチ11を連結すると、
左の車軸35に連結された第2ギヤ組7によって、上記
のように駆動トルクが、例えば前述の一例の1.5倍に
増幅されて左の後輪を駆動する。このとき、サイドギヤ
45と車軸35との相対回転はワンウェイクラッチ13
によって許容される。
【0074】当然のことながら、エンジンの駆動力はア
クセル開度により変動するので、この変動するトルクを
駆動輪に不等配分することになる。
【0075】こうして、左後輪に右後輪の1.5倍の駆
動トルクを送る不等トルク配分の差動機構が成立する。
【0076】又、右の多板クラッチ11を連結すると、
同様に、右後輪に左後輪の1.5倍の駆動トルクを送る
不等トルク配分の差動機構が成立する。
【0077】又、これらの不等トルク配分状態で、各多
板クラッチ11を適度に滑らせて伝達トルクを制御すれ
ば、第2ギヤ組7の伝達トルクを調整することができる
から、トルク配分割合を1.5以下の範囲で連続的に制
御することも可能である。
【0078】デフケース3を回転させるエンジンの駆動
力は、上記のように、多板クラッチ11、11の連結状
態に応じて、第1のギヤ組5、あるいは、第2のギヤ組
7を介して左右の後輪に伝達される。又、車両が悪路な
どを走行中に、後輪間に駆動抵抗差が生じるとエンジン
の駆動力は、トルクが通過するギヤ組のピニオンギヤ
(例えば、左の多板クラッチ11が連結された状態では
ピニオンギヤ51、57)の自転によって左右各側に差
動分配される。
【0079】トルクを伝達する間、各ピニオンギヤ4
9、51、57の歯先はサイドギヤ45、47、59と
の噛み合い反力によって収容孔55、61の壁面に押し
付けられて摩擦抵抗が発生する。又、各ギヤにヘリカル
ギヤを採用した場合には、噛み合いスラスト力により、
ピニオンギヤ49、51は両端をデフケース3とサイド
ギヤ59に押し付けられ、ピニオンギヤ57は両端をデ
フケース3に押し付けられる。又、サイドギヤ59は外
側端部をスラストワッシャ63を介してデフケース3に
押し付けられ、内側端部をサイドギヤ45、47とピニ
オンギヤ49、51とに押し付けられる。
【0080】これらの各摺動部で摩擦抵抗が発生し、こ
の摩擦抵抗によってトルク感応型の差動制限機能も得ら
れる。
【0081】又、車両が右旋回をするとき、左の多板ク
ラッチ11を連結すると、上記のように、左後輪に大き
な駆動トルクが送られる不等トルク配分機能によって車
体に右旋回方向のヨーモーメントが生じ、旋回性が大き
く向上する。又、左旋回のときは、右の多板クラッチ1
1を連結すれば、右後輪に大きな駆動トルクが送られる
不等トルク配分機能によって旋回性が大きく向上する。
【0082】又、悪路などで車体が蛇行するような場合
は、同様に、左右の多板クラッチ11を切り換え操作
し、蛇行と反対方向のヨーモーメントを車体に与えるこ
とによって、蛇行が収束し、安定性が向上する。
【0083】こうして、デファレンシャル装置1が構成
されている。
【0084】上記のように、デファレンシャル装置1で
は、差動ギヤ機構53を構成する第1のギヤ組5(第1
のトルク伝達系)と、第1のギヤ組5とトルク伝達比の
異なった第2のギヤ組7、7(第2のトルク伝達系)と
を切り換えることによって、等トルク配分機能と不等ト
ルク配分機能とを任意に選択することができる。
【0085】このようなトルク配分割合を、車両の走行
条件、操舵条件、路面状況などに応じて切り換え、車体
に必要な方向のヨーモーメントを与えることによって、
上記のように、車両の挙動を制御し、走行性や安定性な
どを大きく向上させることができる。
【0086】又、このように、デファレンシャル装置1
は等トルク配分機能と不等トルク配分機能との切り換え
機能を持った差動装置であるから、従来例と異なって、
トルク配分機能が差動回転数による制限を受けない。従
って、走行条件や路面状況などが広い範囲で変化しても
トルク配分割合の調整が可能であり、操縦性や安定性な
どの向上効果が高い。
【0087】又、従来例と異なって、基本的には多板ク
ラッチ11を滑らせてトルク配分割合を制御する構成で
はないから、多板クラッチ11の耐久性の低下と発熱に
よる大きなエネルギー損失とが防止される。
【0088】又、デファレンシャル装置1は、既成の差
動機構に増速ギヤ組と減速ギヤ組と伝動ギヤ組などを組
み合わせる従来例のような構成ではなく、上記のよう
に、差動ギヤ機構53と、その外側に配置した第2ギヤ
組7、7とをデフケース3に収容した構造であり、通常
のデファレンシャル装置を一回り大きくした形状である
から、特殊な形状にはならない上に、従来例より小型軽
量である。
【0089】従って、デファレンシャル装置1は通常の
デフキャリヤ17に収容可能であると共に、このデフキ
ャリヤ17は通常のデフキャリヤとの互換性が保たれ
る。
【0090】又、通常のデフキャリヤ17を使用できる
から、車体側の変更も不要である。
【0091】又、ワンウェイクラッチ13を用いたこと
により、各切り換え手段9及びデファレンシャル装置1
が、それだけ、構造簡単、小型軽量、低コストになる。
【0092】又、多板クラッチ11を適度に滑らせて伝
達トルクを制御すれば、トルク配分割合を1.5以下の
範囲で連続的に制御することが可能である。
【0093】なお、本発明の請求項2において、ピニオ
ンギヤとサイドギヤはヘリカルギヤでなくスパーギヤで
構成してもよい。
【0094】又、本発明において、差動ギヤ機構は、請
求項2記載の差動ギヤ機構に限らず、例えば、ベベルギ
ヤ式の差動ギヤ機構でもよい。
【0095】又、実施形態と異なって、第1のギヤ組よ
りトルク伝達比が大きい第2のギヤ組と、第1のギヤ組
よりトルク伝達比が小さい第2のギヤ組とを一方の出力
部材側に配置し、これら3組のギヤ組を各別に切り換え
るように構成してもよい。
【0096】又、この発明のデファレンシャル装置は、
フロントデフ(エンジンの駆動力を左右の前輪に分配す
るデファレンシャル装置)と、リヤデフ(エンジンの駆
動力を左右の後輪に分配するデファレンシャル装置)
と、センターデフ(エンジンの駆動力を前輪と後輪に分
配するデファレンシャル装置)のいずれにも用いること
ができる。
【0097】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、請求項
1の発明によれば、互いにトルク伝達比の異なる第1の
トルク伝達系と第2のトルク伝達系とを切り換えること
によって、等トルク配分機能と不等トルク配分機能とを
任意に選択することができるから、このようなトルク配
分機能を車両の走行条件、操舵条件、路面状況などに応
じて切り換え、車体に必要な方向のヨーモーメントを与
えることによって、例えば、旋回性の向上や蛇行の収束
など、車両の操縦性や安定性などを大きく改善すること
ができる。
【0098】又、前記従来例と異なって、トルク配分機
能が差動回転数による制限を受けないから、走行条件や
路面状況などが広い範囲で変化してもトルク配分割合の
調整が可能であり、操縦性や安定性などの向上効果が高
い。
【0099】又、前記従来例と異なって、デフケースの
内部に第1と第2のトルク伝達系を配置した構成である
から、形状が極めて簡単であり、小型軽量である。
【0100】又、前記従来例と異なって、基本的には摩
擦クラッチを滑らせる構成ではないから、クラッチの耐
久性低下と発熱による大きなエネルギー損失とが防止さ
れる。
【0101】請求項2の発明によれば、請求項1の発明
と同等の効果を得ると共に、特殊な形状にならずに通常
のデファレンシャル装置と類似の形状となり、通常のケ
ースに収容可能であり、従って、車体側の変更も不要で
ある。
【0102】請求項3の発明によれば、請求項2の発明
と同等の効果を得ると共に、各ピニオンギヤとデフケー
スとの間で機械式の差動制限特性が得られる。
【0103】請求項4の発明によれば、第1トルク伝達
系と第2トルク伝達系との切り換えを出力部材側で行
い、請求項1〜3のいずれかと同等の効果を得る。
【0104】請求項5の発明によれば、請求項1〜4の
いずれかと同等の効果を得ると共に、ワンウェイクラッ
チを用いたことにより、切り換え手段及びデファレンシ
ャル装置が、それだけ、構造簡単、小型軽量、低コスト
になる。
【0105】請求項6の発明によれば、請求項1〜5の
いずれかと同等の効果を得ると共に、摩擦クラッチによ
り伝達トルクを制御することによって、トルク配分割合
を連続的に制御することが可能である。
【0106】請求項7の発明によれば、請求項1〜5の
いずれかと同等の効果を得る。これに加え、噛み合いク
ラッチを用いたことにより切り換え手段の構造が簡単に
なり、部品点数が低減され、軽量になると共に、小型の
切り換え手段で大きなトルク配分割合を制御することが
可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1の実施形態に用いられるギヤ組を示す斜視
図である。
【図3】従来例の断面図である。
【符号の説明】
1 デファレンシャル装置 3 デフケース 5 第1のギヤ組 7 第2のギヤ組 9 切り換え手段 11 多板クラッチ(伝達トルクを制御可能なクラッ
チ) 13 ワンウェイクラッチ 15 油圧アクチュエータ(アクチュエータ) 35、37 車軸(出力部材) 45、47 第1サイドギヤ 49、51 第1ピニオンギヤ組 53 差動ギヤ機構 55、61 収容孔 57 第2ピニオンギヤ 59 第2サイドギヤ

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジンの駆動力によって回転駆動され
    るデフケースと、 車輪側に連結された一対の出力部材と、 デフケースと各出力部材との間にそれぞれ配置され、第
    1のギヤ組によって2系統の第1トルク伝達系を構成す
    る差動ギヤ機構と、 第1のギヤ組とトルク伝達比の異なる第2のギヤ組によ
    って構成される第2トルク伝達系と、 第1と第2のトルク伝達系を各別に断続する切り換え手
    段とを備えたことを特徴とするデファレンシャル装置。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のデファレンシャル装置
    であって、 前記差動ギヤ機構を構成する第1のギヤ組が、出力側の
    一対の第1サイドギヤと、これらの第1サイドギヤを連
    結する少なくとも一対の第1ピニオンギヤ組とを有し、 前記第2のギヤ組が、第1ピニオンギヤ組と噛み合う第
    2ピニオンギヤと、第2ピニオンギヤと噛み合う第2サ
    イドギヤとを有していることを特徴とするデファレンシ
    ャル装置。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載のデファレンシャル装置
    であって、 前記デフケースに形成された収容孔に前記各ピニオンギ
    ヤが摺動回転自在に収容されていることを特徴とするデ
    ファレンシャル装置。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載のデファ
    レンシャル装置であって、 前記切り換え手段が、出力部材と第1のギヤ組との間、
    及び、出力部材と第2のギヤ組との間で各ギヤ組を断続
    することを特徴とするデファレンシャル装置。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか一項に記載のデ
    ファレンシャル装置であって、 前記切り換え手段が、断続クラッチ及びこれを断続操作
    するアクチュエータと、ワンウェイクラッチとから構成
    されており、断続クラッチ側のギヤ組がトルク伝達をし
    ている間、このワンウェイクラッチによって他側のギヤ
    組での相対回転が許容されることを特徴とするデファレ
    ンシャル装置。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか一項に記載のデ
    ファレンシャル装置であって、 前記切り換え手段に、伝達トルクを制御可能なクラッチ
    を用いたことを特徴とするデファレンシャル装置。
  7. 【請求項7】 請求項1〜5のいずれか一項に記載のデ
    ファレンシャル装置であって、 前記切り換え手段に、噛み合いクラッチを用いたことを
    特徴とするデファレンシャル装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013174327A (ja) * 2012-02-27 2013-09-05 Honda Motor Co Ltd 車両用駆動装置
JP2016130585A (ja) * 2016-03-17 2016-07-21 本田技研工業株式会社 車両用駆動装置

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