JPH11152590A - ステンレス鋼用酸洗液 - Google Patents

ステンレス鋼用酸洗液

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JPH11152590A
JPH11152590A JP31994197A JP31994197A JPH11152590A JP H11152590 A JPH11152590 A JP H11152590A JP 31994197 A JP31994197 A JP 31994197A JP 31994197 A JP31994197 A JP 31994197A JP H11152590 A JPH11152590 A JP H11152590A
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滋 木谷
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    • C23GCLEANING OR DE-GREASING OF METALLIC MATERIAL BY CHEMICAL METHODS OTHER THAN ELECTROLYSIS
    • C23G1/00Cleaning or pickling metallic material with solutions or molten salts
    • C23G1/02Cleaning or pickling metallic material with solutions or molten salts with acid solutions
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ステンレス鋼の酸洗時のNOxガスの発生を
防止し、酸洗による粒界侵食や粒界腐食を防止し、光沢
やバフ研磨性を改善する酸洗液を提供すること。 【解決手段】 塩酸10〜100g/l、硝酸10〜1
00g/l、遊離ふっ化水素酸5〜50g/l、全ふっ
素量5〜200g/lおよび過酸化水素5〜30g/l
を含む酸洗液。この酸洗液に鉄およびチタンのいずれか
または両方のイオンを10〜50モル/m3 を含んでも
よい。またはこの酸洗液に硫酸10〜100g/lを含
んでもよい。硫酸10〜100g/lを含む場合は、鉄
およびチタンのいずれかまたは両方のイオンを10〜1
00モル/m3 を含んでもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ステンレス鋼用酸
洗液に関する。
【0002】
【従来の技術】ステンレス鋼板の製造において、熱間圧
延後や冷間圧延後に焼きなまし(焼鈍)すると、表面に
酸化スケールが生成するがこれを除去するため酸性水溶
液に浸漬する酸洗が行われる。しかし、酸洗によっても
スケールそのものはほとんど溶解しないので、あらかじ
めショットブラスト処理のような機械的方法でスケール
に亀裂を付与したり(熱間圧延後の場合)、ソルトバス
浸漬処理や中性塩電解処理のような化学的方法で、酸が
浸透しやすいスケールに改質した後(冷間圧延後の場
合)、酸洗を行う。これにより、酸洗液はスケール直下
の地金を溶解できるようになるので、スケールが剥離し
て脱スケールが促進される。
【0003】酸洗に用いられる酸洗液としては硝酸とふ
っ化水素酸の混合水溶液(以下、便宜上硝ふっ酸と呼
ぶ)が最も一般的であり、特にオーステナイト系ステン
レス鋼の酸洗に多用されている。しかし、硝ふっ酸は酸
洗時に硝酸が分解してNOxガスが発生するという問題
があるため、近年、NOxを抑制する技術が種々検討さ
れている。
【0004】例えば、尿素、スルファミン酸あるいは過
酸化水素を酸洗液中に添加することによりNOxガスの
発生が抑制されることが知られている。例えば。特公昭
60−2392号公報にはスルファミン酸と過酸化水素
を添加することにより、硝ふっ酸酸洗液からのNOxガ
ス発生を防止する方法が開示されている。
【0005】また、硝酸を含まない酸洗液を使用してN
Oxガスの発生を防止する試みも行われており、例えば
特開昭60−243289号公報にはふっ化水素酸、過
酸化水素および塩酸を主成分とする酸洗液による酸洗方
法が開示されている。
【0006】硝ふっ酸による酸洗方法のもう一つの欠点
は粒界侵食もしくは粒界腐食が起こりやすいことであ
る。オーステナイト系ステンレス鋼の場合には結晶粒界
が溝状に侵食されて粒界溝が生成し、表面の光沢が低下
すると共に、バフ研磨で鏡面に仕上げる場合に長時間を
要する。また、フェライト系ステンレス鋼の場合には肌
荒れが激しくなり、著しく光沢が低下する。
【0007】このような粒界侵食や粒界腐食が起こりに
くい酸洗方法の検討が行われており、例えば特開平5−
86489号公報には塩酸および硝酸イオンを含む水溶
液中で浸漬または電解する方法が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記の酸洗方法のう
ち、特公昭60−2392号公報、および特開昭60−
243289号公報に開示された方法は従来の硝ふっ酸
酸洗法と同様に、粒界侵食あるいは粒界腐食が起こりや
すいという欠点を有する。また、特開平5−86489
号公報に開示された方法ではNOxガスの発生を抑制で
きない。
【0009】本発明により解決しようとする課題は次の
(1) および(2) にある。 (1) 酸洗時のNOxガスの発生を防止する。 (2) 酸洗による粒界侵食や粒界腐食を防止し、光沢やバ
フ研磨性を改善する。
【0010】
【課題を解決するための手段】発明者らは上記の課題
(1) と(2) の両方を同時に解決することのできる新しい
酸洗法を研究した。
【0011】まず、NOxガス発生を抑制するために尿
素、スルファミン酸および過酸化水素を添加して効果を
調べた。その結果、尿素とスルファミン酸はNOxガス
抑制の効果が不安定であるだけでなく、酸洗液中にアン
モニウムイオンや硫酸が生成して酸洗後の表面の色調や
光沢が変化しやすいことがわかった。
【0012】一方、過酸化水素はNOxガス抑制効果が
安定しており、有害物の生成もないので過酸化水素を使
用することにした。
【0013】次に、粒界侵食あるいは粒界腐食を防止す
るための酸洗方法を研究した結果、塩酸、硝酸、ふっ化
水素酸および過酸化水素の濃度を適切な範囲に調節する
ことによって防止することが可能であることを見いだし
た。これらの成分のうち、塩酸とふっ化水素酸はステン
レス鋼の不動態を破壊して金属を陽イオンとして溶出さ
せる働きをするものであり、硝酸は金属の溶出に伴って
過剰となる電子を消費することによって溶解を促進する
働きをするものである。また、過酸化水素はNOxガス
の抑制作用のみでなく、硝酸と同様に電子を消費して溶
解を促進する働きもすると考えられる。
【0014】一般に、酸洗液は使用により液中の金属イ
オン濃度が増すにつれて酸洗能力が低下するが、本発明
による酸洗液はむしろある程度の金属イオンが共存する
方が酸洗能力が増すことが判明した。
【0015】この現象をさらに詳しく調べた結果、ステ
ンレス鋼の酸洗によって溶出した3価の鉄イオンが2価
に変化する際に、電子を消費することによって酸洗能力
の向上に寄与していることがわかった。また、4価また
は6価のチタンイオンも同様の作用をすることが判明し
た。
【0016】また、3価の鉄イオン、および4価または
6価のチタンイオンは本発明の酸洗液中では、一部がふ
っ素や塩素を含む錯イオンを形成しており、これらの錯
イオンも同様に酸洗能力の向上に役立つものと考えられ
る。
【0017】次に、酸洗液中の金属イオン濃度が過度に
増加した場合に、酸洗速度をできるだけ低下させない方
法を研究した結果、硫酸を添加する方法が比較的安価で
効果的であることを見いだした。これは、硫酸添加によ
り酸洗液の酸濃度が高まることによる直接的な効果と、
金属のふっ化物錯体からふっ化水素酸が遊離する間接的
な効果が複合的にあらわれるためと推測される。また、
硫酸は金属イオンが共存しない場合にも溶解速度を速
め、脱スケール所要時間を短縮するのに役立つことを見
いだした。
【0018】上記の知見に基づき、本発明の要旨は以下
の(1) から(4) にある。 (1) 塩酸10〜100g/l、硝酸10〜100g/
l、遊離ふっ化水素酸5〜50g/l、全ふっ素量5〜
200g/lおよび過酸化水素5〜30g/lを含むこ
とを特徴とするステンレス鋼用酸洗液。
【0019】(2) 前記(1) 項に記載のステンレス鋼用酸
洗液に、さらに3価の鉄イオン、4価のチタンイオンお
よび6価のチタンイオンの少なくとも1種のイオンを合
計で10〜50モル/m3 含むことを特徴とするステン
レス鋼用酸洗液。
【0020】(3) 前記(1) 項に記載のステンレス鋼用酸
洗液に、さらに硫酸10〜100g/lを含むことを特
徴とするステンレス鋼用酸洗液。
【0021】(4) 前記(1) 項に記載のステンレス鋼用酸
洗液に、さらに硫酸10〜100g/lと、3価の鉄イ
オン、4価のチタンイオンおよび6価のチタンイオンの
少なくとも1種のイオンを合計で10〜100モル/m
3 含むことを特徴とするステンレス鋼用酸洗液。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明による酸洗方法はバッチ方
式の酸洗にも連続方式の酸洗にも適用することができ
る。
【0023】バッチ方式の場合には、スケールの付いた
切り板状や管状のステンレス鋼をショットブラスト処理
した後、本発明法による酸洗液に浸漬するか、本発明に
よる酸洗液をスプレー噴射する方法が推奨される。ま
た、板厚が薄い場合や形状が複雑でショットブラスト処
理が適用できない場合には、アルカリ溶融塩浸漬処理
(これをソルトバス法ともいう)を行った後、本発明に
よる酸洗液に浸漬すればよい。
【0024】連続方式の場合には連続焼鈍酸洗ラインを
使用して脱スケールが行われる。すなわち、ステンレス
鋼の熱延鋼帯または冷延鋼帯は最初に燃焼加熱炉を用い
て焼鈍される。次に、熱延鋼帯の場合にはショットブラ
スト処理などの機械的方法でスケールに亀裂を付与した
り、スケールの一部を剥離させる。また、冷延鋼帯の場
合にはアルカリ溶融塩処理や中性塩電解法のような化学
的方法でスケールを改質する。これらの酸洗前処理を行
った後、本発明による酸洗液に浸漬するか、本発明によ
る酸洗液をスプレー噴射することにより完全な脱スケー
ルを行う。
【0025】次に、特許請求の範囲に記載した酸洗液の
組成について説明する。塩酸はステンレス鋼を溶解する
ために必要な成分であり、濃度が高いほど溶解速度は大
きいが100g/lを超えると過酸化水素の分解が激し
くなると共に、被処理材の肌荒れが大きくなるので上限
を100g/lとした。また、10g/l未満では添加
効果が認められないので、下限を10g/lとした。塩
酸のさらに好適な範囲は30〜80g/lである。
【0026】硝酸はステンレス鋼の溶解を促進する成分
であるとともに、ステンレス鋼に含まれる炭化物を分解
し、スマット(未分解の炭化物粒子を主成分とする付着
物)の付着を防止する働きもする成分である。しかし、
100g/lを超えるとステンレス鋼を不動態化する作
用が強まり、かえって溶解速度が遅くなるので上限を1
00g/lとした。また、10g/l未満では添加効果
が認められないので下限を10g/lとした。硝酸のさ
らに好適な範囲は30〜80g/lである。
【0027】遊離ふっ化水素酸は塩酸と同様にステンレ
ス鋼を溶解するのに必要な成分であり、濃度が高いほど
溶解速度は大きいが、50g/lを超えると粒界侵食お
よび過酸化水素の分解が激しくなるので上限を50g/
lとした。また、5g/l未満では添加効果が認められ
ないので下限を5g/lとした。遊離ふっ化水素酸のさ
らに好適な範囲は10〜30g/lである。
【0028】全ふっ素量とは酸洗液中に含まれるHF、
HF2 - 、FeF2+、FeF2 + 、FeF3 などのイオ
ンやふっ化物に含まれるふっ素の含有量の合計であり、
新しい酸洗液の場合には遊離ふっ化水素酸の量の19/
20(遊離ふっ化水素酸のふっ素の比率)である。
【0029】本酸洗液中に含まれるふっ素のうち、遊離
ふっ化水素酸のふっ素以外は直接酸洗に寄与しないが、
間接的には酸洗能力を安定化し、酸洗後の鋼板表面粗さ
や光沢を安定化する機能を有する。以下、この安定化機
能を説明する。
【0030】酸洗によりステンレス鋼中の鉄は2価イオ
ンとして溶解するが、2価の鉄イオンは下記(1) 〜(2)
式の反応によって3価の鉄イオンに変わる。
【0031】 2Fe2++2H+ +NO3 - →2Fe3++H2 O+NO2 - (1) 2Fe2++2H+ +H2 2 →2Fe3++2H2 O (2) (1) 〜(2) 式の反応で生成した3価の鉄イオンはさらに
下記(3) 〜(5) 式のように、ふっ化水素酸と反応して3
価の鉄とふっ素の錯イオンまたはふっ化物を生成する。
【0032】 Fe3+ +HF ⇔FeF2++H+ (3) FeF2++HF ⇔FeF2 + +H+ (4) FeF2 + +HF ⇔FeF3 +H+ (5) ただし、(3) 〜(5) 式の記号「⇔」は平衡状態を表す。
【0033】前記(3) 〜(5) 式のように、3価の鉄イオ
ンにより、遊離ふっ化水素酸が消費されるため、酸洗能
力は低下するが、ふっ化水素酸に比べて安価な硝酸や硫
酸を酸洗液に補給して水素イオン(H+ )濃度を高める
ことにより、鉄のふっ化錯イオンおよびふっ化物を元の
ふっ化水素酸に戻す(すなわち(3) 〜(5) の反応を左側
に進める)ことができる。言いかえれば、ふっ素の存在
により酸洗能力を安定化することが可能になる。
【0034】酸洗液中のふっ素濃度を高める方法とし
て、ふっ化ナトリウムのようなふっ化物を添加すること
も可能であり、その場合には下記(6) 〜(8) 式の反応で
3価の鉄とふっ素の錯イオンが生成するので、(3) 〜
(5) 式の反応による遊離ふっ化水素酸の消費を少なくす
ることができる。
【0035】 Fe3+ +NaF ⇔FeF2++Na+ (6) FeF2++NaF ⇔FeF2 + +Na+ (7) FeF2 + +NaF ⇔FeF3 +Na+ (8) また、4価または6価のチタンイオンもふっ化錯イオン
を作る。チタン錯イオンの化学構造は十分には解明でき
ていないが、鉄イオンと同様に、硝酸や硫酸の補給によ
って間接的にふっ化水素酸を供給することができる。
【0036】上記ふっ素の効果を考慮して、全ふっ素量
の下限は遊離ふっ化水素酸とほぼ同じ5g/l(厳密に
は4.75g/l)とした。ただし、全ふっ素が過剰に
存在すると脱スケール不足や肌荒れが生じ易くなるた
め、上限は酸洗液中の金属と反応したふっ素も含めて、
200g/lとした。全ふっ素量のさらに好適な範囲は
10〜100g/lである。
【0037】過酸化水素は亜硝酸を酸化して硝酸に変
え、NOxガスの発生を抑制すると同時に、ステンレス
鋼の溶解を促進する働きをするが、30g/lを超える
と自己分解が激しくなると同時に、ステンレス鋼を不動
態化する作用が強くなり、溶解速度が遅くなるので上限
を30g/lとした。また、5g/l未満では添加効果
が認められないので下限を5g/lとした。過酸化水素
のさらに好適な範囲は8〜20g/lである。
【0038】鉄イオンはFe3+およびFe3+とふっ素ま
たは塩素との錯イオンの合計であり、チタンイオンはT
4+またはTi6+のチタンイオン、または前記の4価ま
たは6価のチタンイオンとふっ素または塩素との錯イオ
ンの合計であり、本発明は鉄イオンとチタンイオンの合
計量を、10〜50モル/m3 (硫酸を添加しない場
合)、10〜100モル/m3 (硫酸を添加する場合)
と規定する。
【0039】鉄イオンおよびチタンイオンがふっ化錯イ
オンとなって酸洗能力を安定化し、酸洗後の表面粗さや
光沢を安定化することは前述のとおりであるが、金属イ
オンとして酸洗反応を促進する働きもある。一般には酸
洗液中の金属イオン濃度が増すにつれて酸洗能力が低下
するが、本発明による酸洗液は、むしろある程度の金属
イオンが共存する方が酸洗能力が増す。この理由の詳細
は明らかではないが、これらのイオンが次の(9) 〜(11)
式のように反応して、金属の溶出に伴って過剰となった
電子を消費するために溶解反応が促進されるものと推測
される。
【0040】 Fe3+ + e(電子) → Fe2+ (9) Ti4+ + e(電子) → Ti3+ (10) Ti6+ +3e(電子) → Ti3+ (11) 酸洗液中に鉄イオンやチタンイオンの適切な量が含まれ
る場合には上記のように酸洗能力を速める働きをする。
しかし、鉄およびチタンのイオンが合計で50モル/m
3 (硫酸を添加しない場合)、または100モル/m3
(硫酸を添加する場合)を超えると逆に溶解速度が遅く
なる。一方、10モル/m3 未満では添加効果が認めら
れない。鉄イオンとチタンイオンの合計量のさらに好適
な範囲は20〜40モル/m3 (硫酸を添加しない場
合)、または20〜80モル/m3(硫酸を添加する場
合)である。
【0041】硫酸は特に金属イオンが共存する場合に酸
洗液の酸濃度を高めて酸洗を促進する働きをする成分で
あるが、100g/lを超えて添加すると肌荒れが激し
くなるので、上限を100g/lとした。また、10g
/l未満では添加効果が認められないので下限を10g
/lとした。硫酸のさらに好適な範囲は20〜80g/
lである。
【0042】なお、本発明による酸洗液の使用温度は特
に限定されるものではなく、温度が高いほど酸洗速度は
速まるが、温度が過度に高いと酸洗液中の過酸化水素の
自己分解が激しくなるので、50℃以下で使用するのが
望ましい。
【0043】
【実施例】(実施例1)表1に示す化学組成のステンレ
ス鋼熱延鋼帯を焼鈍後ショットブラスト処理したものを
供試材A〜Cとし、70×100mmの試験片を切り出
した。
【0044】
【表1】
【0045】試験に使用した酸洗液を表2に示す。な
お、比較のために従来の硝ふっ酸酸洗液(液No.43
およびNo.44の場合、10%HNO3 −2%HF)
も使用した。
【0046】
【表2】
【0047】前記の試験片を、表2に示す各種の酸洗液
に120秒間浸漬した。ただし、酸洗液の温度は液N
o.1〜43の場合がすべて50℃であり、液No.4
4で供試材Cを酸洗する場合は、20%H2 SO4 が8
0℃で80秒間、10%HNO3 −2%HFが50℃で
40秒間とした。
【0048】酸洗中にNOxガスを測定し、酸洗後のス
ケール残存程度、酸洗ムラ程度、粒界溝程度、および表
面粗度を測定した。酸洗中のNOxガスは酸洗容器の上
部50mmの位置に検知管を置いて測定した。
【0049】酸洗後の試験片表面の評価は表3に示すよ
うに、スケールの残存程度、酸洗ムラおよび粒界溝の発
生程度をそれぞれ5段階で評価した。また、表面粗度は
表面粗さ計を用いて測定した(JIS B0601−1
994で定義されるRy(Rmaxと同じ)により表
示)。表4〜6に試験結果を示す。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
【表6】
【0054】表4〜6の試験結果から明らかなように、
本発明法の酸洗条件で酸洗した試験片はスケール残存や
酸洗ムラおよび粒界溝は全く発生していなかった。ま
た、酸洗後の表面粗度は比較的小さく、酸洗時のNOx
ガス発生も少なかった(3ppm以下)。
【0055】これに対して、本発明の酸洗液と同じ成分
ではあるが、塩酸濃度が本発明の範囲より低いもの(液
No.29)は全面にスケールが残存し、塩酸濃度が高
いもの(液No.30)は酸洗による肌荒れ(表面粗度
が大きい)が激しかった。
【0056】また、硝酸濃度が低いもの(液No.3
1)は供試材AおよびBに太い粒界溝が発生し、高いも
の(液No.32)は全面にスケールが残存していた。
【0057】ふっ化水素酸濃度が低いもの(液No.3
3および35)は脱スケールが不十分で酸洗ムラが発生
し、ふっ化水素酸濃度が高いもの(液No.34および
36)は脱スケールは完了したが肌荒れが激しかった。
また、酸洗による浸食が比較的多い部分と、少ない部分
が生じやすいことに起因する酸洗ムラ(光沢ムラ)が発
しした。
【0058】一方、過酸化水素濃度が低いもの(液N
o.37および39)はNOxガスの発生が多く、高い
もの(液No.38および40)では脱スケールが不十
分であった。
【0059】硫酸の添加が多すぎるもの(液No.41
および42)は肌荒れや酸洗ムラが大きかった。また、
従来の硝ふっ酸酸洗(液No.43および44)では酸
洗時のNOxガス発生が多く、供試材AおよびBに太い
粒界溝が発生した。
【0060】次に、金属イオンの影響および酸洗方法と
時間の影響を調査する試験を行った。供試材Aについ
て、5種類の酸洗液(液No.2、5、21、24、2
7。いずれも温度50℃)を用いて浸漬法およびスプレ
ー法で酸洗時間を30、60、90および120秒間に
変えて酸洗した。表7に上記試験における酸洗減量とス
ケール残存程度を示す。
【0061】
【表7】
【0062】表7の試験結果より、酸洗液中に金属イオ
ンを含まない場合(液No.2および21)に比べて少
量含む場合(液No.5および24)の方が酸洗減量が
多く、スケールの残存が少ないことがわかった。また、
金属イオンが多量に含まれる場合(液No.27)にお
いても、硫酸を添加することにより酸洗減量はあまり少
なくならず、スケール残存も多くならなかった。
【0063】硫酸添加は酸洗減量を増し、スケール残存
を少なくする効果を示し(液No.2、5と液No.2
1、24、27の比較)、浸漬法よりスプレー法の方が
酸洗減量が多く、スケール残存が少ないことがわかっ
た。
【0064】(実施例2)表8に示す化学組成のステン
レス鋼冷延鋼帯を連続焼鈍酸洗ラインで焼鈍のみを行っ
たものを供試材Dとし、50×100mmの大きさの試
験片を切り出した。
【0065】
【表8】
【0066】この試験片の両面に中性塩電解処理を施し
た。中性塩電解処理は20%硫酸ナトリウム水溶液(8
0℃)中で、2秒間の陽極電解と、1秒間の陰極電解
(電流密度はいずれも80mA/cm2 )のサイクルを
30回繰り返す方法で行った。
【0067】次いで、表2に示す酸洗液(50℃)中に
120秒間浸漬して酸洗した。酸洗液の温度条件は前記
実施例1の場合と同じである。比較のために、従来の硝
ふっ酸酸洗液による酸洗も実施例1と同様に行った。
【0068】酸洗中にNOxガスを測定し、酸洗後の試
験片表面のスケール残存程度、酸洗ムラ程度、粒界溝程
度、および表面粗度を測定した。表9に酸洗後の試験片
表面の評価方法を示す。NOxガスの測定方法、および
表面粗度測定方法は実施例1の場合と同じである。表1
0に上記冷延鋼帯の焼鈍供試材の酸洗試験結果を示す。
【0069】
【表9】
【0070】
【表10】
【0071】表10の試験結果に示すように、本発明法
の酸洗条件で酸洗した試験片はスケール残存や酸洗ムラ
および粒界溝は全くなく、酸洗後の表面粗度も比較的小
さかった。酸洗中のNOxガスの発生も少なかった(2
ppm以下)。
【0072】これに対して、本発明の酸洗液と同じ成分
を含んでいるが、塩酸濃度が本発明の請求の範囲より低
いもの(液No.29)は全面にスケールが残存し、塩
酸濃度が高いもの(液No.30)は酸洗による肌荒れ
が激しかった。
【0073】また、硝酸濃度が低いもの(液No.3
1)は太い粒界溝が発生し、硝酸濃度が高いもの(液N
o.32)は全面にスケールが残存した。
【0074】ふっ化水素酸濃度が低いもの(液No.3
3および35)は脱スケールが不十分で酸洗ムラが発生
し、ふっ化水素酸濃度が高いもの(液No.34および
36)は脱スケールは完了したが肌荒れが激しかった。
【0075】一方、過酸化水素濃度が低いもの(液N
o.37および39)はNOxガスの発生が多く、過酸
化水素濃度が高いもの(液No.38および40)は脱
スケールが不十分であった。
【0076】硫酸の添加が多すぎるもの(液No.41
および42)は肌荒れや酸洗ムラが大きかった。また、
従来の硝ふっ酸酸洗(液No.43)では酸洗時のNO
xガスの発生が多く、太い粒界溝が発生した。
【0077】次に、表10に示した試験片のうち、脱ス
ケールが完了した10種類の代表的な試験片を選び、バ
フ研磨試験を行った。バフ研磨機で一定圧力を加えて5
0×50mmの面積を研磨した後、JIS Z8741
−1983に従って20度鏡面光沢を測定した。表11
にバフ研磨試験結果を示す。
【0078】
【表11】
【0079】表11の試験結果から明らかなように、本
発明の酸洗液で酸洗した試験片(試験No.44〜4
8)は比較的短時間の研磨により鏡面光沢が大幅に向上
した。
【0080】これに対して、本発明の酸洗液と同じ成分
を含むが、成分濃度が本発明の範囲を超える液で酸洗し
たもの(試験No.49〜52)や、従来の硝ふっ酸で
酸洗したもの(試験No.53)は鏡面光沢の向上が少
なかった。これは発生した粒界溝が研磨によって除去さ
れにくいためと考えられる。
【0081】
【発明の効果】本発明のステンレス鋼用酸洗液を使用し
て酸洗することにより、酸洗時のNOxガスの発生を防
止でき、酸洗による粒界溝の発生を防止し、バフ研磨性
や光沢性を向上できる。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 塩酸10〜100g/l、硝酸10〜1
    00g/l、遊離ふっ化水素酸5〜50g/l、全ふっ
    素量5〜200g/lおよび過酸化水素5〜30g/l
    を含むことを特徴とするステンレス鋼用酸洗液。
  2. 【請求項2】 請求項1のステンレス鋼用酸洗液に、さ
    らに3価の鉄イオン、4価のチタンイオンおよび6価の
    チタンイオンの少なくとも1種のイオンを合計で10〜
    50モル/m3 含むことを特徴とするステンレス鋼用酸
    洗液。
  3. 【請求項3】 請求項1のステンレス鋼用酸洗液に、さ
    らに硫酸10〜100g/lを含むことを特徴とするス
    テンレス鋼用酸洗液。
  4. 【請求項4】 請求項1のステンレス鋼用酸洗液に、さ
    らに硫酸10〜100g/lと、3価の鉄イオン、4価
    のチタンイオンおよび6価のチタンイオンの少なくとも
    1種のイオンを合計で10〜100モル/m3 含むこと
    を特徴とするステンレス鋼用酸洗液。
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