JPH1112194A - 組織プラスミノーゲン活性化因子医薬組成物 - Google Patents

組織プラスミノーゲン活性化因子医薬組成物

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JPH1112194A
JPH1112194A JP9238381A JP23838197A JPH1112194A JP H1112194 A JPH1112194 A JP H1112194A JP 9238381 A JP9238381 A JP 9238381A JP 23838197 A JP23838197 A JP 23838197A JP H1112194 A JPH1112194 A JP H1112194A
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義高 田嶋
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真一 古川
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Abstract

(57)【要約】 【課題】t- PA又は改変型t- PAの溶解性及び安定
性を大幅に増大させたt- PA医薬品製剤を提供する。 【解決手段】t- PA又は改変型t- PA含有溶媒系
に、ニコチン酸アミド又はその誘導体を含有させる。ま
た、必要に応じて、クエン酸緩衝液を併用する。t- P
A含有医薬組成物は、例えば、凍結乾燥製剤の形態であ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、組織プラスミノ
ーゲン活性化因子(以下、t- PAとも称する)含有医
薬組成物に関する。より詳細には、t- PA又はその改
変型組織プラスミノーゲン活性化因子(以下、改変型t
- PAとも称する)及びニコチン酸アミド又はその誘導
体を配合したことを特徴とする、t- PA又は改変型t
- PA含有医薬組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】t- P
Aは、プラスミノーゲンをプラスミンに活性化し、該プ
ラスミンが血栓の蛋白質基質の主成分であるフィブリン
を溶解する。心筋梗塞や、脳梗塞の原因となる血栓症に
対する血栓溶解療法において、より血栓選択的な血栓溶
解剤としてt- PA製剤が開発された。また、天然型t
- PAに比較してフィブリン親和性及び血中半減期を高
める目的で、種々の改変型t- PAが遺伝子工学的に製
造されてきた。その際、原核生物からの改変型t- PA
は、天然型t- PAとは対照的に非グリコシル型で生産
される。一般的にt- PAは水に極めて難溶性の蛋白質
であるが、とりわけ当該改変型t- PAは、前述のフィ
ブリン親和性の増加、血中半減期の延長等種々の長所を
有するものの、水に対して、天然型t- PAよりも難溶
であり、調製時の困難性は、言うに及ばず、水に溶解し
て投与する注射剤等としての製剤化を極めて困難なもの
にしている。
【0003】ところで、最近の急性心筋梗塞の治療で基
本になっている考えは、冠動脈の閉塞が生じた場合、可
及的速やかに血流を回復し、心臓の受ける障害を最小限
に抑えることである。この考えに沿えば、高濃度且つ短
時間で安全に投与できる薬剤が好ましい。従って、種々
の長所を有する改変型t- PAの適用において早期の冠
動脈再開通及び梗塞領域の拡大防止を期待する場合に
は、t- PA高濃度製剤の単回急速投与が好適である。
そのため、t- PA、特に非グリコシル化t- PAは前
述のごとく水に対して難溶性且つ蛋白構造的に不安定で
あるにも拘らず、臨床的使用においては水溶性の高めら
れたより高濃度且つ蛋白構造的に安定なt- PA製剤の
開発が望まれている。また、t- PAは一般に熱に不安
定であり、改変型t- PAもまた例外ではない。このよ
うな物質を医薬品として開発するためには安定化の技術
が不可欠である。
【0004】t- PAを可溶化させるための従来の技術
としては、アルギニン塩酸塩又はその塩を添加し、中性
〜弱アルカリ性においてt- PAを溶解安定化する技術
が公知である(特公平6-72105 号及び特公平6-99324 号
公報)。しかしながら、この技術の欠点は、中性〜弱ア
ルカリ性条件下では、高濃度t- PAの蛋白構造的な安
定性が低下することにある。更に、溶解性においても非
グリコシル化t- PA及び改変型非グリコシル化t- P
Aにおいては、その溶解特性が天然型t- PAと異な
り、自己会合したt- PAを当該方法により再溶解させ
ることは困難であった。また、溶液の液性をpH2〜5
に調整して、t- PAを可溶化する方法が知られている
(特公昭63-38327号及び特公平3-69332 号公報)が、凍
結乾燥状態及び溶液状態において速やかに分解し、失活
するため、製剤化にはなお克服すべき問題を伴ってい
た。
【0005】一方で、t- PAを安定化させるための従
来の技術として、アルブミンを添加する方法(特公平3-
29390 号公報)、アルブミン分解物を添加する方法(特
開平1-221325号公報)及び酸処理ゼラチンを添加する方
法(特公平5-27607 号公報)が知られている。しかしな
がら、これらの方法では、高濃度t- PAにおける効果
が不充分であり、特にアルブミン添加によりクエン酸緩
衝液中のt- PAの溶解性が低下することが確認されて
いる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本願発明の課題は、溶
解性及び安定性の低いt- PAもしくは改変型t- PA
組成物の溶解性を増加させる方法を提供すること、並び
に該t- PAもしくは改変型t- PAを臨床使用に適し
た濃度の溶液で含有し且つ製剤学的に充分に安定化され
たt- PA医薬品製剤を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本願発明者らは、上記課
題を解決すべく鋭意検討した結果、先ずt- PA及び改
変型t- PAの溶解性について、驚くべきことに、ニコ
チン酸アミド又はその誘導体を含有する製剤組成におい
て著しく溶解度が向上することを見出した。一方、凍結
乾燥状態及び液状においても、ニコチン酸アミドを含有
する製剤によってt- PAの安定性が大幅に向上するこ
とを発見し、これら知見に基づき、t-PAもしくは改
変型t- PAの溶解性を増加させるための新規な溶解方
法、及び該t- PAもしくは改変型t- PAと、ニコチ
ン酸アミドもしくはその誘導体とを含有するt- PA組
成物を提供する本願発明を完成させるに至った。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明について、詳細に説
明する。本願発明で使用されるt- PAとしては、ヒト
由来の天然型t- PAだけでなく、遺伝子工学的手法に
より得られたグリコシル化、非グリコシル化t- PA等
各種のt- PAを使用することができる。本願発明で使
用される改変型t- PAは、t- PAをポイントミュー
テーション法などにより改良し、あるいはt- PAの有
する生物学的活性等を高めるために改変されたt- PA
であり、本願発明の溶解性増加効果及び安定化効果を達
成するものであればいずれの改変型t- PAであっても
よい。例えば、このような改変型t- PAとしては、特
開昭61-243024 号、特開昭62-24 号、特開昭63-133988
号、特表昭63-501335 号、特表平2-504102号及び特表平
3-500843号等公報に示された改変型t- PA等が好適に
挙げられる。
【0009】具体的には、本願発明で使用される改変型
t- PAとしては、例えば、以下の改変t- PAを挙げ
ることができる。 (1) t- PAの245位のValがMetに置換され
た変異t- PA、(2) t- PAの84位のCysがS
erに置換された変異t- PA、(3) t- PAのF領
域及びG領域の一部が欠失し、117位のAsnがGl
uに置換された変異t- PA、(4) t- PAのK1領
域が欠落し、275位のArgがGluに置換された変
異t- PA、及び(5) t- PAのF領域、G領域及び
K1領域が欠落した変異t- PA。t- PA又は改変型
t- PAは、本願発明の医薬組成物の重量に基づいて、
例えば、0.005 〜1重量%、好ましくは、0.01〜0.5 重
量%、特に好ましくは、0.1 〜0.2 重量%の量で配合す
ることが適当である。
【0010】なお、t- PA又は改変型t- PAの安全
性については、これまでの臨床的な使用実績により問題
はない。本願発明で使用されるニコチン酸アミドは、水
溶性ビタミンB2 複合体の一因子であって、一般成人一
日当り10〜20mg以上の摂取が必要とされている。
ニコチン酸アミドは、日本薬局方に収載されており、臨
床的にはニコチン酸欠乏症の予防及び治療に用いられ
る。ニコチン酸アミドの毒性に関しては、致死量はマウ
スに対して2〜3g/kg、ヒトには1日500mgを
連日非経口投与しても毒性は認められず、大量投与する
ことができることが報告されている。t- PAそのもの
の安全性はこれまでの臨床的な使用実績により問題はな
く、従って、ニコチン酸アミドを含有した該製剤組成は
極めて安全性の高いt- PA製剤であると考えられる。
また、これまで知られているニコチン酸アミドの薬理作
用は殆どはニコチン酸と同等であるが、ニコチン酸のよ
うに血管透過性を亢進させることはない。従って、これ
まで知られているニコチン酸アミドの薬理作用において
は、ニコチン酸アミドの血液系に及ぼす影響は殆どな
く、t- PAの薬理作用に対して相互作用を及ぼすこと
のない理想的な医薬品添加剤であると考えられる。
【0011】本願発明に用いられるニコチン酸アミド
は、その誘導体であってもよく、例えばN- メチルニコ
チン酸アミドや、N, N−ジエチルニコチン酸アミド等
のN-アルキル置換ニコチン酸アミド(例えば、置換アル
キル基は、炭素数1〜5個、好ましくは、1〜3個の直
鎖又は分岐アルキル基を好適に挙げることができる)
や、1- メチルニコチン酸アミド等の環置換アルキル基
を有するニコチン酸アミドの誘導体(アルキル基として
は、例えば、炭素数1〜5個、好ましくは、1〜3個の
直鎖又は分岐アルキル基を好適に挙げることができ
る)、イソニコチン酸アミドなどを用いることができ
る。なお、日本薬局方に収載されているニコチン酸アミ
ドが最適な態様である。ニコチン酸アミド又はその誘導
体は、本願発明の医薬組成物に基づいて、通常、0.1 〜
50%(w/v%、以下の%表示も同様である)、好まし
くは0.3 〜5%、実用上更に好ましくは、1〜3%が適
当である。この範囲内で、t- PA又は改変型t- PA
の溶解性を増加させることができる。
【0012】本願発明の医薬組成物には、t- PA又は
改変型t- PA及びニコチン酸アミド又はその誘導体と
ともに、必要に応じて、更に、塩化ナトリウムや、塩化
カリウム等の等張化剤や、マンニトールや、アルブミン
などの賦形剤、安定化剤、ポリソルベート80(Twe
en80(商品名))などの非イオン性界面活性剤など
の、医薬品製剤化において通常使用される添加剤を随時
配合することができる。本願発明の医薬組成物は、固形
組成物や、水性組成物として、更には、例えば、用時調
製注射剤としてt- PA含有凍結乾燥バイアルと、ニコ
チン酸アミド又はその誘導体とを含有する溶解液バイア
ルの組み合せのようなt- PA並びにニコチン酸アミド
又はその誘導体が別個に包装された形態として使用して
もよい。
【0013】本願発明の医薬組成物は、各種の方法によ
って製造することができる。例えば、本願発明の医薬組
成物は、適当な媒体中において、t- PA又は改変型t
- PAにニコチン酸アミド又はその誘導体を添加するこ
とによって製造することができる。このような媒体とし
ては、好適には、各種の緩衝液を使用することができ
る。このような緩衝液としては、例えば、トリス塩酸
や、リン酸、炭酸、ホウ酸、クエン酸、酢酸、酒石酸、
コハク酸、アミノ酸などを含有する緩衝液を用いること
ができる。本願発明の医薬組成物においては、特に、媒
体として、クエン酸を含有するクエン酸緩衝液が、相乗
的にニコチン酸アミド又はその誘導体の可溶化効果を改
善することができるので好適である。
【0014】本願発明の医薬組成物において、クエン酸
緩衝液を配合する場合には、好ましくは、クエン酸(ク
エン酸又はクエン酸塩としてのクエン酸の全量)の含有
量(濃度)は、10〜500 mM、実際上、特に好ましくは、
10〜50mMが好適である。本願発明における医薬組成物に
おいて、通常、pH4〜6.5 、好ましくはpH5〜6が
適当である。特に、pH5〜6においては、t- PA及
び改変型t- PAの安定性が向上し、加熱やエージング
(aging) によるアミノ酸レベルでの修飾を受けにくいこ
とが判明している。本願発明の製剤組成物は、具体的に
は、クロマトグラフィーで溶出したt- PA含有画分
を、ニコチン酸アミド又はその誘導体を含んだ、例え
ば、クエン酸緩衝液で置換する方法や、t- PA含有画
分を水に対して透析し、t- PAの沈殿を生ぜしめた
後、これをニコチン酸アミド又はその誘導体を含んだ、
例えばクエン酸緩衝液で再溶解する方法などを採用する
ことができる。いずれの方法においても、最終的にニコ
チン酸アミド又はその誘導体、及び必要により添加され
るその他のクエン酸緩衝液等の製剤用基剤を配合し、こ
れを、無菌的に所望のt- PA濃度に調製した液剤とす
るか、あるいはこの液体の凍結乾燥品を製造することも
可能である。特に、本願発明によれば、t- PAもしく
は改変型t- PAを臨床使用するのに適した濃度で含有
し、且つ製剤学的に十分に安定したt- PA凍結乾燥製
剤が容易に得られる。
【0015】このような凍結乾燥製剤を製造する場合に
は、上記のt- PAもしくは改変型t- PA含有溶液
は、次いで、常法により凍結乾燥する。例えば、当該溶
液を濾過滅菌等により滅菌し、次いで、アンプル又はバ
イアルのような無菌ガラス容器に所望の容量で分注す
る。これらを、例えば、−50〜−10℃の温度で冷凍し、
冷凍溶液は、真空乾燥を開始するまで適当な温度(例え
ば、−50℃)で保持される。冷凍溶液の真空乾燥は、適
宜に実施でき、例えば、通常、0.01〜0.1 トールで実質
的に全ての冷凍液の除去が達成されるまで充分な時間、
部分的真空又は完全真空下に乾燥させる。真空乾燥を行
なう温度は、通常、溶液が実質的に又は完全に凍結した
形態で維持されるように、処理の開始時点で、通常、−
40〜0℃である。処理が進行し、水分が除去されるにつ
れて、温度は室温に達するまで次第に上昇することがあ
る。最後の痕跡量の水分をできるだけ除去するために、
処理の終了時点において室温又はそのすぐ上の温度で約
0.01トールの実質的真空下に真空乾燥を行なうことが好
ましい。得られるt- PA凍結乾燥製剤の水分含有量
(含湿度)は、好ましくは2.5 %以下である。真空乾燥
が完了したならば、凍結乾燥させたt- PA製剤を含有
する無菌のガラス容器を減圧状態のままあるいは窒素ガ
ス充填の後に密封する。
【0016】本願発明によって、高濃度でt- PAもし
くは改変型t- PAを含有する凍結乾燥医薬製剤を好適
に得ることができる。投与用のt- PA含有溶液を調製
するには、本願発明のt- PA凍結乾燥医薬製剤を中性
又は酸性のpHを有する水で再構成する。t- PA凍結
乾燥医薬製剤が得られる水溶液が実質的に等張である場
合には、再構成用の水は、実質的に等張であることが好
ましい。
【0017】
【実施例】以下、本願発明について、調製例や、実施例
等を参照しながら、更に詳細に説明するが、本願発明の
範囲は、これらの調製例や実施例等によって何ら限定さ
れるものではない。調製例1(改変型t- PAの調製) t- PAのF領域、G領域及びK1領域が欠失し、27
5位のArgがGluに置換された精製改変型t- PA
を、Biotechnology Progress, 10(5): 472-479(1994)
に記載されている方法に従い調製した。当該精製改変型
t- PAは精製水に対して透析し、遠心処理した後得ら
れた沈澱を−80℃にて保存した。調製例2(天然型t- PAの調製) 組換えCHO細胞に由来する完全分子からなる天然型t
- PA(田辺製薬製「グルトパ」)を準備した。この天
然型t- PAは、精製水に対して透析し、遠心処理した
後、沈殿を−80℃で保存した。用時は、約8mg/mlの
濃度で所定の濃度のニコチン酸アミド又はその誘導体と
ともに使用した。試験例1(溶解性試験1) 調製例1に示した改変型t- PAを約8mg試験管に取
り、以下の表1に示す各組成の緩衝液を添加し、撹拌し
た後、遠心して得られた上清中のt- PAが、プラスミ
ノーゲンを活性化し、生成したプラスミンに特異的な合
成基質(S- 2288)の水解活性により、t- PA活
性を測定し、濃度既知のt- PA標準品によりt- PA
の溶解度を求めた。結果を表1に示す。
【0018】
【表1】 表1試料番号 溶解緩衝液の組成 溶解度(μg/ml) 1 0.2MArg/0.01%Tween80/50mM リン酸緩衝液(pH7.2) 151 2 100mMクエン酸酸緩衝液(pH5.6) 186 3 5%ニコチン酸アミド/0.01%Tween80/ 100mMクエン酸緩衝液(pH5.6) 7280 4 10% ニコチン酸アミド/0.01%Tween80/ 100mMクエン酸緩衝液(pH5.6) 8417 上記表1から、ニコチン酸アミドを含有した医薬組成物
において、アルギニン(Arg)含有医薬組成物より
も、約50倍以上可溶化することが分かる。従って、本
願発明の医薬組成物により、ニコチン酸アミドが改変型
t- PAの溶解度を著しく高める効果を有することが明
らかとなった。同様に、クエン酸緩衝液におけるクエン
酸の濃度を40mMとしたことを除いて、上記と同様に溶解
性試験1を行ったところ、上記と同様の結果が得られ
た。
【0019】試験例2(溶解性試験2) 上記溶解性試験1において、試料3及び4のニコチン酸
アミドの濃度を、以下の表2に示すように変化させたこ
とを除いて、上記溶解性試験1を繰り返すことにより、
t- PAの溶解度を求めた。その結果を表2に示す。
【0020】
【表2】 表2 ニコチン酸アミド濃度(%) t- PA溶解度(μg/ml) 0 247 0.3 424 1 1065 2.5 3816 3 4392 4 6871 5 >7370 上記表2の結果から、本願発明の医薬組成物において、
ニコチン酸アミド濃度の上昇に伴い、改変型t- PAの
溶解度が増大することが明らかとなった。また、この結
果から、ニコチン酸アミドを、溶液中に実用上0.3 %以
上の濃度で共存させることにより、臨床的使用を充分満
足するt- PAの溶解度が達成されることが明らかとな
った。
【0021】試験例3(溶解性試験) 5%ニコチン酸アミド、1%マンニトール及び0.01%T
ween80を含有した緩衝液において、併用する緩衝液の
種類を変えることによって、試験例1と同様に、改変型
t- PAの溶解度を求めた。その結果を以下の表3に示
す。
【0022】
【表3】試料番号 溶解緩衝液の組成 溶解度(μg/ml) 5 5%ニコチン酸アミド/0.01%Tween80/ 1%マンニトール/40mMクエン酸緩衝液(pH5.6) >8407 6 5%ニコチン酸アミド/0.01%Tween80/ 1%マンニトール/200mM酢酸緩衝液(pH5.7) 5403 7 5%ニコチン酸アミド/0.01%Tween80/ 1%マンニトール/100mMリン酸緩衝液(pH6.0) 2153 上記表3の結果から、クエン酸緩衝液を使用すると、そ
れ以外の緩衝液を使用する場合に比べて、t- PAの溶
解度が大幅に増強されることが明らかである。
【0023】試験例4(溶解性試験4) t- PA溶解緩衝液(2.5 %ニコチン酸アミド/1%マ
ンニトール/0.01%Tween80/クエン酸緩衝液、pH
5.6 )で使用されるクエン酸緩衝液のクエン酸の濃度を
変化させて、試験例1と同様にt- PAの溶解度を求め
た。その結果を以下の表4及び図1に示す。
【0024】
【表4】 表4 クエン酸濃度(%) t- PA溶解度(μg/ml) 5 157 10 305 50 3622 100 6265 200 7184 500 7677 この試験例4の結果から、ニコチン酸アミドによるt-
PA溶解度の増加効果は、500mM までの濃度のクエン酸
イオン源の存在により濃度依存的に高められることが明
らかとなった。
【0025】試験例5(溶解性試験5) 上記溶解性試験1において、改変型t- PAの代わり
に、調製例2の天然型t- PAを使用し、且つ40mMのク
エン酸を含有する緩衝液を使用したことを除いて、組み
合わせるニコチン酸アミドの濃度を変化させた場合の、
天然型t- PAの溶解性を上記と同様にして求めた。そ
の結果を表5に示す。なお、ここで使用した基礎緩衝液
の組成は以下の通りである。 基礎緩衝液の組成:40mMクエン酸緩衝液/0.01%Tween8
0 (pH7.2) この緩衝液を、緩衝液Aとする。
【0026】
【表5】 表5 試料番号 溶解緩衝液の組成 天然型t- PA 改変型t- PA 溶解度(μg/ml) 溶解度(μg/ml) 8 緩衝液A 1270 247 9 緩衝液A+0.1 %NA 1425 −−− 10 緩衝液A+0.3 %NA 1467 424 11 緩衝液A+1.0 %NA 2410 1065 12 緩衝液A+3.0 %NA 6121 4392 13 緩衝液A+4.0 %NA 8225 6871 14 緩衝液A+5.0 %NA >9308 7370 注)NAは、ニコチン酸アミドを意味する。
【0027】上記表5の結果から、天然型t- PAにお
いても、ニコチン酸アミドの添加により、t- PAの溶
解性が向上したことが分かる。また、全体的に、改変型
t-PAに比べて、天然型t- PAの方が、溶解性が優
れていることが分かる。
【0028】試験例6(凍結乾燥試験1) 溶解性試験例1〜5によって得られた結果に基づき、以
下の成分からなる組成物を用いて、改変型t- PAの凍
結乾燥製剤を調製した。凍結保存しておいた改変型t-
PAの沈澱を2倍濃度の組成緩衝液で溶解し、t- PA
濃度を3mg/mlになるように調整し、濾過滅菌した後、
ガラス製バイアルに分注して、以下の工程で凍結乾燥し
た。 (1) 常圧で、棚温度−50℃で2時間、引続き棚温度
−24℃で1時間凍結の後、−50℃で15時間予備凍
結した。 (2) 0.1 トールの減圧下で棚温度を−5℃まで上昇さ
せ、一次乾燥を行なった。 (3) 一次乾燥後、棚温度を30℃まで上昇させ、二次
乾燥を行なった。 (処方例) クエン酸緩衝液 100 mM ニコチン酸アミド 1.25 % マンニトール 1% Tween80 0.01 % 改変型t- PA 1.5 mg/ml (pH5.6 ) 得られた凍結乾燥製剤を注射用水で溶解した。その結
果、この凍結乾燥製剤は極めて速やかに注射用水に溶解
し、透明な液となった。また、得られた注射剤では、改
変型t- PAの活性及び正常な蛋白構造が保持されてい
た。従って、試験例6から、高濃度の改変型t- PAの
凍結乾燥製剤を製造することが可能であることが示され
た。また、40mMのクエン酸緩衝液を使用したことを除い
て、上記と同様に試験を行ったが、上記と同様の効果が
得られた。
【0029】試験例7(凍乾標品の安定性試験1) 試験例6で得られた凍結乾燥標品を所定時間60℃中に
放置し、安定性を調べた。安定性については、合成基質
(S- 2288)水解活性の減衰及び、陰イオン交換
(DEAE)HPLC分析におけるメインピークの残存
率で評価を行なった。合成基質水解活性の測定は、Phar
macopeial Previews, p.1223, Nov.-Dec.,(1990) に
基づいて行なった。陰イオン交換HPLCによる分析
は、陰イオン交換カラム(DEAE- 5PW:東ソー(
株) )に対して、2M尿素を含む10mMトリス塩酸緩衝液
(pH8.0 )を移動相として用い、本移動相に0.2 M塩
化ナトリウムを含有する溶離液でグラジエント溶出し
た。その結果を以下の表6に示す。
【0030】
【表6】 表6 メインピーク 放置時間(Hrs.) 活性残存率(%) 残存率(%) 溶液状態 0 100. 0 100. 0 無色透明の液 86 101. 4 94. 3 無色透明の液 163 106. 5 95. 3 無色透明の液 上記表6の結果から分かるように、ニコチン酸アミド
は、t- PAの可溶化効果だけではなく、凍結乾燥状態
での安定性に対しても有効であり、ニコチン酸アミドを
含有した医薬組成物によって、安定性の高い製剤を製造
することが可能である。
【0031】試験例8(液状製剤の安定性試験1) 改変型t- PAを、ニコチン酸アミドを含んだ緩衝液に
溶解した後、40℃中に放置し、安定性を調べた。安定
性の評価については試験例7と同様に行なった。その結
果、以下の表7に示す。
【0032】
【表7】 表7 メインピーク 放置時間(Hrs.) 活性残存率(%) 残存率(%) 溶液状態 0 100. 0 100. 0 無色透明の液 86 88. 0 101. 3 無色透明の液 171 87. 5 88. 0 無色透明の液 上記表7の結果から、ニコチン酸アミドを含んだ医薬組
成物においては、液状においても、安定的に性状が保持
されることが示された。特に、陰イオン交換HPLC分
析では、加熱による修飾体の増加が抑制され、メインピ
ークが保持されることが確認された。この効果は、更
に、クエン酸緩衝液を併用した場合でも、同様であっ
た。
【0033】
【発明の効果】本願発明によれば、t- PAにニコチン
酸アミド又はその誘導体を併用することにより、t- P
Aの溶解度及び安定性を向上させる。従って、本願発明
は、t- PAの臨床上使用し得る、例えば、凍結乾燥製
剤等の製剤を提供できるものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 t- PAの溶解度に対するクエン酸濃度の影
響を示す図である。
フロントページの続き (72)発明者 溝上 寛 熊本県菊池郡旭志村川辺 財団法人 化学 及血清療法研究所 菊池研究所内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 組織プラスミノーゲン活性化因子と、ニ
    コチン酸アミド又はその誘導体とを配合したことを特徴
    とする組織プラスミノーゲン活性化因子医薬組成物。
  2. 【請求項2】 組織プラスミノーゲン活性化因子が、改
    変型組織プラスミノーゲン活性化因子である請求項1に
    記載の組織プラスミノーゲン活性化因子医薬組成物。
  3. 【請求項3】 ニコチン酸アミド又はその誘導体が、0.
    1 〜50%(w/v%)の濃度で配合されている請求項1
    又は2に記載の組織プラスミノーゲン活性化因子医薬組
    成物。
  4. 【請求項4】 更に、クエン酸が配合されている請求項
    1に記載の組織プラスミノーゲン活性化因子医薬組成
    物。
  5. 【請求項5】 前記クエン酸が、10〜500 mMの濃度で含
    有される請求項4に記載の組織プラスミノーゲン活性化
    因子医薬組成物。
  6. 【請求項6】 凍結乾燥製剤である請求項1に記載の組
    織プラスミノーゲン活性化因子医薬組成物。
  7. 【請求項7】 組織プラスミノーゲン活性化因子の溶解
    度を増加させるために、前記組織プラスミノーゲン活性
    化因子を含有する媒体において、ニコチン酸アミド又は
    その誘導体を配合することを特徴とする組織プラスミノ
    ーゲン活性化因子の溶解方法。
  8. 【請求項8】 ニコチン酸アミド又はその誘導体の配合
    量が、0.1 〜50%(w/v%)である請求項7に記載の
    方法。
  9. 【請求項9】 更に、クエン酸が配合されている請求項
    7に記載の方法。
  10. 【請求項10】 前記クエン酸が、10〜500 mMの濃度で
    配合される請求項9に記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012031151A (ja) * 2010-06-29 2012-02-16 Takada Seiyaku Kk ニコチン酸アミドを含有するゲムシタビン凍結乾燥製剤

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