JPH1096966A - 光波長変換素子およびその製造方法 - Google Patents

光波長変換素子およびその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 非線形光学効果を有する強誘電体に周期的に
繰り返すドメイン反転部が形成されてなり、これらのド
メイン反転部の並び方向に入射した基本波を波長変換す
る光波長変換素子において、ドメイン反転部の周期や線
幅を正確に所望値に制御して、それにより、十分に高い
波長変換効率を得る。 【解決手段】 上記強誘電体の基板1として、Zn、S
cおよびInのうちの少なくとも1つが添加されたLi
Nbx Ta1-x 3 (0≦x≦1)からなる基板を用い
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、基本波を第2高調
波等に変換する光波長変換素子、特に詳細には、非線形
光学効果を有する強誘電体に周期的に繰り返すドメイン
反転部が形成されてなる光波長変換素子に関するもので
ある。
【0002】また本発明は、このようなドメイン反転部
を有する光波長変換素子を製造する方法に関するもので
ある。
【0003】
【従来の技術】非線形光学効果を有する強誘電体の自発
分極(ドメイン)を周期的に反転させた領域を設けた光
波長変換素子を用いて、基本波を第2高調波に波長変換
する方法が既にBleombergenらによって提案されている
(Phys.Rev.,vol.127,No.6,1918(1962)参照)。
この方法においては、ドメイン反転部の周期Λを、 Λc=2π/{β(2ω)−2β(ω)} ……(1) ただしβ(2ω)は第2高調波の伝搬定数 β(ω)は基本波の伝搬定数 で与えられるコヒーレント長Λcの整数倍になるように
設定することで、基本波と第2高調波との位相整合を取
ることができる。非線形光学材料のバルク結晶を用いて
波長変換する場合は、位相整合する波長が結晶固有の特
定波長に限られるが、上記の方法によれば、任意の波長
に対して(1) 式を満足する周期Λを選択することによ
り、効率良く位相整合を取ることが可能となる。
【0004】上述のような周期ドメイン反転構造を形成
する強誘電体として従来より、例えば特開平6−242
478号公報に記載されているように、Mgがドープさ
れたLiNbO3 (LN:Mg)が好適に用いられるこ
とが分かっている。すなわち、このLN:Mgは、Mg
がドープされていないLNと比べると光損傷しきい値が
2桁以上も高いので、このLN:Mgに周期ドメイン反
転構造を形成すれば、高い波長変換効率の下に高強度の
波長変換波を発生する光波長変換素子が得られるように
なる。
【0005】また同じように周期ドメイン反転構造を形
成するのに適した強誘電体として、Mgがドープされた
LiTaO3 (LT:Mg)も公知となっており、これ
らの強誘電体を用いて光導波路型やバルク結晶型の光波
長変換素子を作成する試みが従来より種々なされてい
る。
【0006】一方、強誘電体に周期ドメイン反転構造を
形成する方法としては、上記特開平6−242478号
公報に記載されているように、強誘電体基板に所定の周
期、線幅の周期電極を形成し、この周期電極を介して強
誘電体基板に電場を印加するという方法が知られてい
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし強誘電体として
上述のLN:MgやLT:Mgを用い、そこに周期ドメ
イン反転構造を形成してなる従来の光波長変換素子にお
いては、ドメイン反転部の周期にゆらぎが存在しやす
く、そのため、十分に高い波長変換効率を得るのは難し
くなっていた。
【0008】また、この従来の光波長変換素子において
は、前述の周期電極を用いて周期ドメイン反転構造を形
成する場合、各ドメイン反転部は本来電極の線幅と同じ
幅に形成されるはずであるのに、それよりも太幅に形成
される傾向があって、ドメイン反転部の幅を正確に所望
値に制御することが難しいという問題も認められてい
る。
【0009】本発明は上記の事情に鑑みてなされたもの
であり、ドメイン反転部の周期や線幅が正確に所望値に
制御されて、それにより、十分に高い波長変換効率を得
ることができる光波長変換素子を提供することを目的と
するものである。
【0010】また本発明は、そのような光波長変換素子
を製造する方法を提供することを目的とするものであ
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明による光波長変換
素子は、前述したように非線形光学効果を有する強誘電
体に周期的に繰り返すドメイン反転部が形成されてな
り、これらのドメイン反転部の並び方向に入射した基本
波を波長変換する光波長変換素子において、上記の強誘
電体として、Zn、ScおよびInのうちの少なくとも
1つが添加されたLiNbx Ta1-x 3 (0≦x≦
1)が用いられたことを特徴とするものである。
【0012】また本発明による光波長変換素子の製造方
法は、上述のようにZn、ScおよびInのうちの少な
くとも1つが添加されたLiNbx Ta1-x 3 (0≦
x≦1)を用い、単分極化されたこのLiNbx Ta
1-x 3 に、所定のパターンを有する周期電極を介して
電場を印加することにより、周期的に繰り返すドメイン
反転部を形成することを特徴とするものである。
【0013】
【発明の効果】上記のZn、ScおよびInのうちの少
なくとも1つが添加されたLiNbxTa1-x 3 を用
いて、そこに周期的に繰り返すドメイン反転部を形成す
ると、従来知られているMgが添加されたLiNbx
1-x 3 を用いる場合と比べて、ドメイン反転部の周
期や線幅がより正確に所望値に制御されるようになる。
そこで、本発明の光波長変換素子によれば、十分に高い
波長変換効率が実現される。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態を詳細に説明する。まず図1を参照して、本発
明の第1の実施形態について説明する。
【0015】この図1中の1は非線形光学効果を有する
強誘電体である、ZnがドープされたLiNbO3 (L
N:Zn)の基板である。このLN:Zn基板1はZn
ドープ量が7.5 mol %のもので、単分極化処理がなされ
て厚さ0.5 mmに形成され、最も大きい非線形光学定数
33が有効に利用できるようにZ面で光学研磨されてい
る。
【0016】このLN:Zn基板1の+Z面1a上に金
属TaをスパッタしてTa薄膜を形成した後、フォトリ
ソグラフィーにより、図示のような周期パターンを有す
るTa周期電極2を形成する。この周期電極2の各電極
の幅は4μmであり、またその周期Λは、LN:Znの
屈折率の波長分散を考慮し、基板1のX方向に沿って13
13nm近辺で1次の周期となるように12.9μmとした。
【0017】次に上記基板1を90℃に保ち、+Z面1a
が面している空間が10-4Psとなるように真空引きしな
がら、Ta周期電極2をアース3に落とした上で、基板
1の−Z面1b側に配したコロナワイヤー4を用いて該
基板1にコロナ帯電により電場を印加した。本例では、
高圧電源5からコロナワイヤー4を介して−20kV/c
mの電圧を4.5 秒間印加した。
【0018】次いで周期電極2を除去してから、基板1
のY面を切断、研磨した後、HFとHNO3 とが1:2
に混合されてなるエッチング液を用いて選択エッチング
を行なった。この基板1の断面(Y面)を観察したとこ
ろ、図2に示すように周期電極2に対向していた箇所に
おいて、−Z面1bから+Z面1aまで貫通して、周期
的に繰り返すドメイン反転部9が形成されているのが確
認された。なおこの図2中の矢印10は、分極の方向を示
している。
【0019】以上のようにして周期ドメイン反転構造が
形成されたLN:Zn基板1のX面および−X面を研磨
してそれぞれ光通過面20a、20bとすることにより、図
3に示すバルク結晶型の光波長変換素子20が得られる。
この光波長変換素子20を、同図に示すレーザーダイオー
ド励起YLFレーザーの共振器内に配置して第2高調波
を発生させた。
【0020】このレーザーダイオード励起YLFレーザ
ーは、波長795 nmのポンピング光としてのレーザービ
ーム21を発するレーザーダイオード22と、発散光状態の
レーザービーム21を収束させる集光レンズ23と、Nd
(ネオジウム)がドープされたレーザー媒質であって上
記レーザービーム21の収束位置に配されたYLF結晶24
と、このYLF結晶24の前方側(図中右方)に配された
共振器ミラー25とからなる。そして共振器ミラー25とY
LF結晶24との間に、上記光波長変換素子20が配設され
る。
【0021】YLF結晶24は波長795 nmのレーザービ
ーム21により励起されて、波長1313nmの光を発する。
この光は、所定のコーティングが施されたYLF結晶端
面24aと共振器ミラー25のミラー面25aとの間で共振
し、固体レーザービーム26が発生する。このレーザービ
ーム26は光波長変換素子20に入射して、波長が1/2す
なわち657 nmの第2高調波27に変換される。ミラー面
25aに上記コーティングが施されている共振器ミラー25
からは、ほぼこの第2高調波27のみが出射する。なお位
相整合は、光波長変換素子20の周期ドメイン反転領域に
おいて取られる(いわゆる疑似位相整合)。第2高調波
27の強度等については、後に図4を参照して詳しく説明
する。
【0022】次に、本発明の第2および3の実施形態、
並びに本発明の効果を確認するための比較例について説
明する。これらの実施形態および比較例の光波長変換素
子は、前述した第1の実施形態と比較すると、LN基板
にドープされている物質とそのドープ量、並びにコロナ
帯電による電圧印加の時間が異なるものであり、それら
の条件を下にまとめて記す。
【0023】 [第1の実施形態] LN:Zn(7.5 mol %)、−20kV/cm×4.5 秒 [第2の実施形態] LN:Sc(1.5 mol %)、−20kV/cm×3.5 秒 [第3の実施形態] LN:In(1.8 mol %)、−20kV/cm×3.0 秒 [比較例] LN:Mg(5.0 mol %)、−20kV/cm×9.0 秒 上記第2および3の実施形態、並びに比較例の光波長変
換素子を、図3のレーザーダイオード励起YLFレーザ
ーにおいて第1実施形態の光波長変換素子20に代えて共
振器内に配置し、同じように第2高調波を発生させた。
各場合の第2高調波強度の相対値を、第1実施形態の光
波長変換素子20を用いた場合の結果と併せて図4に示
す。なお第2、第3の実施形態の光波長変換素子を用い
た場合の結果は互いにほぼ同じであった。
【0024】ここに示される通り、第1〜3の実施形態
の光波長変換素子を用いると、従来品である比較例の光
波長変換素子を用いた場合と比べて、より狭い温度範囲
においてより高い第2高調波強度、つまりより高い波長
変換効率が得られており、周期ドメイン反転構造の周期
性が改善されていることが裏付けられた。
【0025】一方、分極反転が生じる電圧つまり反転し
きい値電圧を、LNにドープする物質毎に調べた結果を
図5に示す。ここに示される通り、LNにScあるいは
Inをドープする場合は、Mgをドープする場合と比べ
て、ドープ量に拘らず反転しきい値電圧が低くなってい
る。またLNにZnをドープする場合も、ドープ量を約
6.5 mol %以上とすると、Mgをドープする場合と比べ
て反転しきい値電圧が低くなり、分極反転処理が容易化
される。
【0026】また、第1〜3の実施形態並びに比較例の
光波長変換素子を作成する際に、それぞれ前述のように
して基板Y面を観察したが、その基板Y面の顕微鏡写真
を図6に示す。図中の(1)、(2)、(3)および
(4)が各々、比較例、第1の実施形態、第2の実施形
態および第3の実施形態についての写真であり、倍率は
ともに400 倍である。
【0027】ここに示されている通り、比較例において
は、ドメイン反転部の幅が部分的に太くなって周期ドメ
イン反転構造の周期性が悪くなっているが、第1、2お
よび3の実施形態においては、そのような不具合が殆ど
認められない。
【0028】なお、以上説明した実施形態においては、
Zn、ScあるいはInが添加されたLiNbO3 基板
が用いられているが、その代わりにZn、Scあるいは
Inが添加されたLiTaO3 基板やLiNbTaO3
基板を用いても、さらにはZn、ScおよびInのうち
の2つ以上が添加されたLiNbx Ta1-x 3 (0≦
x≦1)基板を用いても、基本的に上記と同様の効果が
得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の光波長変換素子を作成
する様子を示す概略図
【図2】上記光波長変換素子の周期ドメイン反転構造を
示す概略図
【図3】上記光波長変換素子の使用状態を示す概略側面
【図4】本発明の光波長変換素子および従来の光波長変
換素子によって発生させた波長変換波の強度を比較して
示すグラフ
【図5】LNにドープする物質毎の分極反転しきい値電
圧を比較して示すグラフ
【図6】本発明の光波長変換素子および従来の光波長変
換素子における周期ドメイン反転構造を示す顕微鏡写真
【符号の説明】
1 LN:Zn基板 2 Ta周期電極 3 アース 4 コロナワイヤー 5 高圧電源 9 ドメイン反転部 20 光波長変換素子 21 レーザービーム(基本波) 22 レーザーダイオード 23 集光レンズ 24 YLF結晶 25 共振器ミラー 26 固体レーザービーム(基本波) 27 第2高調波

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非線形光学効果を有する強誘電体に周期
    的に繰り返すドメイン反転部が形成されてなり、これら
    のドメイン反転部の並び方向に入射した基本波を波長変
    換する光波長変換素子において、前記強誘電体として、
    Zn、ScおよびInのうちの少なくとも1つが添加さ
    れたLiNbx Ta1-x 3 (0≦x≦1)が用いられ
    たことを特徴とする光波長変換素子。
  2. 【請求項2】 単分極化された非線形光学効果を有する
    強誘電体に、所定のパターンを有する周期電極を介して
    電場を印加することにより、周期的に繰り返すドメイン
    反転部を形成するようにした光波長変換素子の製造方法
    において、前記強誘電体として、Zn、ScおよびIn
    のうちの少なくとも1つが添加されたLiNbx Ta
    1-x 3 (0≦x≦1)を用いることを特徴とする光波
    長変換素子の製造方法。
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