JPH1095062A - スエード調の外観を有する装飾材及びその製造方法 - Google Patents

スエード調の外観を有する装飾材及びその製造方法

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JPH1095062A
JPH1095062A JP9202539A JP20253997A JPH1095062A JP H1095062 A JPH1095062 A JP H1095062A JP 9202539 A JP9202539 A JP 9202539A JP 20253997 A JP20253997 A JP 20253997A JP H1095062 A JPH1095062 A JP H1095062A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 自動車の内装材、内装建材などの用途に好適
な、スエード調の外観及び柔らかい触感を有する装飾材
及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 ポリ塩化ビニルシート等の基材の表面
に、一液型ウレタン樹脂塗料等に熱膨張性のマイクロカ
プセルを配合した下塗り塗料を塗布し、乾燥し、その
後、シリコンオイル、ウレタンビーズ等を配合した、好
ましくは下塗り塗料と同一又は類似の組成の上塗り塗料
を塗布し、乾燥し、次いで、マイクロカプセルが熱膨張
する温度より高い温度で加熱し、膨張したマイクロカプ
セルと、下塗り塗料が硬化してなる特定の100%モジ
ュラスを有する比較的柔らかい樹脂とからなる中間層
と、上塗り塗料が硬化して形成され、滑りのよい表層と
を形成する。この中間層と表層とは、緻密な均質な凹凸
模様を形成し、スエード調の外観と、柔らかい触感とを
有する装飾材が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スエード調の外観
を有し、特に柔らかな触感をも併せ備える装飾材及びそ
の製造方法に関する。本発明の装飾材は、車両の内装
材、内装用建材等の他、家具調度類、家電製品等の外装
材などとして使用することができ、質感の高い外観が得
られる。
【0002】
【従来の技術】車両の内装材、内装建材などの質感を高
めるため、従来より種々の方法が採られている。以下に
その具体例及び問題点を挙げる。 内装材等の基材の表面に植毛をしたり、バックスキン
を貼着したりして質感を高める方法がある。しかし、こ
の方法では、コスト、工数等がかさむため、低コストで
あって、且つ手触りのよいスエード調の外観を有するも
のが求められている。
【0003】そこで、基材表面にマイクロカプセルを分
散させた塗料を塗布し、加熱してマイクロカプセルを膨
張させ、表面に凹凸模様を有する装飾材を得る方法が提
案されている。そのような方法としては、 マイクロカプセルを含有する樹脂系処理剤を、熱可塑
性樹脂からなるシートの表面にグラビア印刷し、これを
加熱してマイクロカプセルの膨張と樹脂の軟化を生ぜし
め、シート表面に微細な凹凸を形成する方法(特開平2
−76735号公報)、
【0004】塩化ビニル樹脂ペースト中にマイクロカ
プセルを分散させ、このペーストをグラビア印刷等によ
って裏打材上に印刷し、これを加熱してペーストをゲル
化せしめると同時にマイクロカプセルを膨張させ、スエ
ード調の外観を呈する装飾用シートを得る方法(特開昭
62−28481号公報)及び、
【0005】基材上にマイクロカプセルを含有した下
塗り塗料を塗布し、塗料を硬化させた後、さらに上塗り
塗料を塗布し、その後、加熱してマイクロカプセルを膨
張させ、凹凸模様を有する塗膜を形成する方法(特開平
2−303573号公報)などが知られている。 このの公報には、マイクロカプセルの膨張温度より低
い温度で容易に硬化させることができ、また、マイクロ
カプセルの外殻を損傷する恐れのある溶剤、特にケトン
系溶剤等を含有しない好ましい下塗り塗料として、アク
リル−エポキシ水系エマルジョン塗料、ウレタン水系エ
マルジョン塗料、アクリル系紫外線硬化塗料が例示され
ている。更に、上塗り塗料としては、メラミン−アルキ
ッド系、アクリル系などのエナメル塗料が外観上好まし
いとして挙げられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の方法
では、例えば真空成形などした場合に、絞りの大きいコ
ーナー部等において基材が引き伸ばされるため、植毛の
間隔が広がってしまって外観が低下するとの問題があ
る。また、上記の方法では、加熱によってマイクロカ
プセルの膨張と基材となる熱可塑性樹脂の軟化とを同時
に進行させている。そのため、マイクロカプセルの膨張
によって軟化した樹脂が引き寄せられて凹凸が形成さ
れ、その外観、触感はスエード調ではなく、固い感じの
ものとなる。
【0007】更に、上記の方法では、膨張したマイク
ロカプセルを含む層がシートの表面層となっているた
め、実使用時に、マイクロカプセルがシート表面から脱
落したりすることがある。また、シート表面の滑りがよ
くないため、他の物品と接触して擦られた場合に、マイ
クロカプセルの一部が損傷を受ける恐れもある。更に、
マイクロカプセルを含むペーストを裏打材上に印刷する
方法であるため、印刷機が目詰まりを生じ易く、印刷面
にムラが発生することがある。尚、この版の目詰まりの
補修にはたいへんな手間を要する。また、上記の方法
では、上塗り塗装によってマイクロカプセルの損傷、脱
落は抑えられるものの、表面の滑りがよくないため、他
の物品との擦れによってマイクロカプセルが損傷した
り、脱落したりすることがある。しかも凹凸模様が荒く
スエード調の外観とはならない。
【0008】本発明は、上記の問題を解決するものであ
り、表面の凹凸が緻密で微細な外観を呈し、また、柔ら
かい触感をも併せ備え、艶消し調であって、且つしっと
りとしたスエード調の外表面を有する装飾材及びその製
造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】第1発明のスエード調の
外観を有する装飾材は、基材、中間層及び表層を備える
積層体によって構成される装飾材であって、上記中間層
は、100%モジュラスが20〜150kg/cm2
合成樹脂中に、熱膨張したマイクロカプセルが分散され
てなり、上記中間層を100重量%とした場合に、該マ
イクロカプセルは2〜30重量%であることを特徴とす
る。
【0010】また、第3発明のスエード調の外観を有す
る装飾材は、基材、中間層及び表層を備える積層体によ
って構成される装飾材であって、上記中間層は、熱可塑
性エラストマー中に、熱膨張したマイクロカプセルが分
散されてなり、上記中間層を100重量%とした場合
に、該マイクロカプセルは2〜30重量%であることを
特徴とする。
【0011】更に、第6発明のスエード調の外観を有す
る装飾材は、基材、中間層及び表層を備える積層体によ
って構成される装飾材であって、上記表層には、シリコ
ンオイル、シリコンビーズ及びウレタンビーズのうちの
少なくとも1種が含有されており、上記中間層は、合成
樹脂中に、熱膨張したマイクロカプセルが分散されてな
り、上記中間層を100重量%とした場合に、該マイク
ロカプセルは2〜30重量%であることを特徴とする。
【0012】また、第7発明のスエード調の外観を有す
る装飾材の製造方法は、請求項1、3及び6項のいずれ
か1項に記載の装飾材を製造する方法であって、熱膨張
性マイクロカプセルが分散、含有された下塗り塗料を基
材に塗布する工程、上記熱膨張性マイクロカプセルの熱
膨張温度より低い温度で乾燥する工程、上塗り塗料を塗
布する工程、及び上記熱膨張性マイクロカプセルの熱膨
張温度より高い温度で加熱し、上記中間層及び上記表層
を形成する工程を、この順に備えることを特徴とする。
【0013】上記「基材」としては、マイクロカプセル
を熱膨張せさるための加熱、並びに中間層を形成する合
成樹脂或いは熱可塑性エラストマーを含む塗料及び表層
を形成するための塗料の乾燥、硬化時等の加熱に耐えら
れるものを用いることができる。また、塗料が有機溶剤
によって希釈されたものである場合は、この有機溶剤に
よって容易に侵されないものの使用が好ましい。この基
材としては樹脂製シートが好ましく、樹脂としては特に
柔軟であって、絞りの大きい成形にも適したポリ塩化ビ
ニルが好ましい。尚、ポリ塩化ビニルシート等からなる
基材の表面は平滑であってもよいし、予めしぼ加工など
が施されたものであってもよい。更に、基材は、単層で
あってもよいし、2層以上の複数の層からなるものであ
ってもよい。2層以上である場合、各層は同じ材質であ
ってもよいし、異なった材質であってもよい。また、各
層が適宜の接着剤によって接合されたものであってもよ
い。
【0014】第1及び第6発明において、上記「中間
層」を構成する上記「合成樹脂」、及び第3発明におい
て、中間層を構成する上記「熱可塑性エラストマー」
は、基材に塗布される下塗り塗料の主たる成分である。
第1発明においては、この合成樹脂の種類は、100%
以上の伸びがあり、且つその「100%モジュラス」が
上記の特定の範囲内になければならない。この100%
モジュラスが20kg/cm2 未満では、中間層が柔ら
かすぎて強度的に問題であり、スエード調の好ましい外
観が得られ難い。一方、100%モジュラスが150k
g/cm2 を越える場合は、中間層は硬くなり、柔らか
い触感のスエード調の外観とはならない。また、熱膨張
するマイクロカプセルが硬い樹脂を無理に引き伸ばすこ
とになって、砂目状の好ましくない外観となることもあ
る。この合成樹脂の100%モジュラスは特に60〜8
0kg/cm2 であることがが好ましく、100%モジ
ュラスがこの範囲であれば、スエード調の外観を有し、
適度に柔らかい触感であって、質感の高い装飾材が得ら
れる。
【0015】また、第6発明においても、合成樹脂の1
00%モジュラスは20〜150kg/cm2 の範囲で
あることが好ましいが、この数値範囲外であってもスエ
ード調の外観を有する装飾材を得ることができる。しか
し、特に100%モジュラスが150kg/cm2 を越
える場合は、硬い触感の装飾材となり、質感は低下す
る。尚、この第6発明では、中間層は、ウレタン樹脂、
アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等、各種の合成樹脂から
なるものとすることができる。
【0016】更に、第3発明における熱可塑性エラスト
マーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレ
フィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エ
ラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポ
リアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジ
エン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エ
ラストマー及びフッ素系熱可塑性エラストマー等が挙げ
られる。熱可塑性エラストマーとしては、特に、これら
のエラストマーを有機溶剤或いは水に溶解又は分散さ
せ、塗料の形態としたものが好適である。
【0017】合成樹脂及び熱可塑性エラストマーは、基
材に塗布される上記「下塗り塗料」を乾燥させ、或いは
乾燥、硬化させてなるものである。このような塗料の種
類は特に限定されないが、第1発明では、乾燥、硬化の
後、合成樹脂の100%モジュラスが上記の特定の範囲
となるものを使用することができる。この下塗り塗料と
しては、特に第2発明の「一液型ウレタン樹脂塗料」及
び第4発明の「ウレタン系熱可塑性エラストマー及び塩
化ビニル系熱可塑性エラストマーの少なくとも一方を含
む塗料」が好ましい。尚、第2発明においては、この一
液型ウレタン樹脂塗料として、特に熱可塑性ウレタン樹
脂を用いた塗料及び乾燥、硬化によって樹脂中にそれほ
ど多くの架橋構造が形成されない塗料を使用することが
好ましい。それによって、比較的柔軟な中間層が形成さ
れ、柔らかい触感の装飾材が得られる。
【0018】合成樹脂或いは熱可塑性エラストマーとと
もに中間層を構成する上記「マイクロカプセル」は、熱
膨張性マイクロカプセルが熱膨張したものである。中間
層は、熱膨張したマイクロカプセルと、このマイクロカ
プセルの外表面により形成される空間を埋める合成樹脂
又は熱可塑性エラストマーによって構成されている。熱
膨張性マイクロカプセルは、直径が5〜50μmの球形
であり、加熱によって4〜30倍に体膨張するものであ
る。本発明においては、特に、直径が15〜25μmで
あって、8〜15倍に体膨張するものが好ましく、この
ようなマイクロカプセルを使用すれば、適度な厚さ及び
柔軟性を有する中間層とすることができる。
【0019】尚、熱膨張性マイクロカプセルは、通常、
ブタン、イソブタン等の揮発性炭化水素を内包し、その
外殻は、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体、
ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリルニ
トリル等によって形成されており、本発明においては、
いずれのものも問題なく使用することができる。
【0020】また、中間層を100重量%とした場合
に、この中間層におけるマイクロカプセルの含有量が2
重量%未満である場合は、装飾材の表面に形成される凹
凸模様が荒く、且つ少なく、スエード調の外観が損なわ
れる。また、含有量が30重量%を越える場合は、マイ
クロカプセルの損傷、脱落が十分に抑えられず、実用に
供することができない。このマイクロカプセルの含有量
は5〜25重量%、特に15〜25重量%とすることが
好ましく、この範囲の含有量であれば、柔らかい触感の
スエード調の外観を有する装飾材を得ることができる。
尚、第6発明において、特に、100%モジュラスが1
50kg/cm2 を越える硬い樹脂を用いる場合は、マ
イクロカプセルの含有量を15〜25重量%の範囲とす
ることが好ましい。
【0021】上記「表層」は、乾燥した下塗り塗料の表
面に塗布される上記「上塗り塗料」によって形成され
る。この上塗り塗料は特に限定されないが、表層の硬
さ、質感等が中間層のそれに比べて大きく相違する場合
は、中間層の有する好ましい特性が減殺されてしまう。
そのため、マイクロカプセルを熱膨張させるために加熱
した場合に、相似た硬さ、質感等となる塗料を使用する
ことが好ましい。特に下塗り塗料、上塗り塗料ともに一
液型ウレタン樹脂塗料或いはウレタン系熱可塑性エラス
トマー等を含む塗料、とりわけ同一又は近似の組成を有
する樹脂成分又はエラストマー成分を用いれば、同様の
硬さ等となるばかりでなく、中間層と表層との密着性、
接着性も向上し、両層が容易に剥離することがない。ま
た、それに伴って中間層に分散、含有されるマイクロカ
プセルの損傷、脱落を抑える効果も併せ奏される。
【0022】更に、第5発明のように、第1及び第3発
明においても、第6発明と同様、その表層には、「シリ
コンオイル、シリコンビーズ及びウレタンビーズのうち
の少なくとも1種」を含有させることが好ましい。これ
によって、装飾材表面の滑りがよくなり、触感がより向
上し、且つマイクロカプセルの脱落も防止される。ま
た、摩擦による色落ちも抑えられ、凸部の傷付きも防止
される。
【0023】上記のシリコンオイル等は、第10発明の
ように、表層を形成することになる上塗り塗料に配合し
ておけばよい。その配合量は、上塗り塗料が乾燥、硬化
して形成される表層を100重量%とした場合の含有量
が1〜50重量%、好ましくは10〜30重量%となる
ようにすればよい。この含有量が1重量%未満では、滑
りが不十分であり、マイクロカプセルの脱落が十分に防
止されない。また、通常、20重量%の配合で所要の効
果が得られ、50重量%の配合で十分な効果が奏され
る。尚、第6発明においても、このシリコンオイル等の
好ましい含有量及び得られる作用、効果は同様である。
【0024】尚、本発明の装飾材は、少なくとも基材
と、中間層と、表層とからなる3層の積層体によって構
成することができる。また、中間層が基材に十分に接合
されない場合は、これら両層の間に接着剤層を設け、4
層の積層体とすることもできる。更に、中間層と表層と
が十分に接合されない場合は、これら両層の間にも接着
剤層を設け、5層の積層体とすることもできる。接着剤
としては、接合される両層の材質によって適宜のものを
選択して用いればよい。この接着剤としては、例えば、
エポキシ樹脂系接着剤、酢酸ビニル樹脂系接着剤、アク
リルエマルジョン系接着剤等の樹脂系接着剤、及びクロ
ロプレンゴム系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、天然ゴ
ム系接着剤等のゴム系接着剤が挙げられる。
【0025】また、第7発明において、下塗り塗料は、
第8発明のように、有機溶剤によって希釈されたもので
あることが好ましい。更に、上塗り塗料も、第9発明の
ように、有機溶剤によって希釈されたものであることが
好ましい。この有機溶剤としては、一般に溶剤系の塗料
に使用されるトルエン、メチルエチルケトン等を用いる
ことができる。このように溶剤によって希釈することに
よって、スプレーガンなどによって容易に塗布すること
ができる。そのため、基材表面に均一な塗膜を形成する
ことができ、装飾材表面に緻密、微細であって、且つ均
質な凹凸模様を形成することができる。
【0026】塗料を希釈するための有機溶剤の使用量は
特に限定されないが、スプレーガンなどによって塗布す
るに要する以上に希釈する必要はなく、過剰の有機溶剤
は乾燥、除去に多くの操作、時間を費やすことになり好
ましくない。尚、上塗り塗料を有機溶剤によって希釈し
た場合は、第7発明における加熱工程の前に、マイクロ
カプセルの熱膨張温度より低い温度で乾燥し、予め有機
溶剤を除去しておくことが好ましい。
【0027】更に、下塗り塗料は、熱膨張性マイクロカ
プセルが熱膨張する前の乾燥状態での厚さが30〜10
0μm、特に40〜70μm程度、上塗り塗料は、同じ
く乾燥状態での厚さが5〜20μm、特に10μm程度
となるように塗布すればよい。塗膜厚さをこの程度と
し、第1、第3及び第6発明に特定する量のマイクロカ
プセルを含有させれば、マイクロカプセルが加熱され、
膨張することにより、緻密な凹凸模様が形成され、スエ
ード調の外観を有し、特定の合成樹脂或いは熱可塑性エ
ラストマーを使用した場合は、柔らかい触感をも併せ備
える装飾材を得ることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、実施例によって本発明を詳
しく説明する。 (1) 使用材料 基材としては表面にしぼ加工が施されたポリ塩化ビニル
のシートを使用した。中間層を形成するための下塗り塗
料としては、一液型ウレタン樹脂塗料(特殊色料株式会
社製)を用いた。この塗料を乾燥、硬化させて得られる
ウレタン樹脂の100%モジュラスは80kg/cm2
であった。尚、この100%モジュラスはJIS K6
301によって測定した値である。
【0029】上記の下塗り塗料には、この塗料を100
重量%とした場合に、100重量%のトルエンを加え
た。また、塗料が乾燥、硬化してなるウレタン樹脂(こ
れは第1発明の中間層の合成樹脂である。)を100重
量%とした場合に、表1に示す量比となる熱膨張性マイ
クロカプセルを配合した。使用したマイクロカプセル
は、日本フェライト式会社製であり、球径は18〜24
μm、この実施例における加熱条件による体膨張率は8
倍であった。
【0030】また、表層を形成するための上塗り塗料と
しても、上記と同一の一液型ウレタン樹脂塗料を使用し
た。この上塗り塗料にも上記と同量比のトルエンを加
え、更に、装飾材の表面の滑りをよくするために、この
塗料が乾燥、硬化してなる表層を100重量%とした場
合に20重量%となる量のウレタンビーズ等を配合し
た。尚、このように上塗り塗料にも有機溶剤を加えた場
合は、第9発明のように、上塗り塗料を塗布した後、有
機溶媒を除去するための乾燥工程を設けることが好まし
い。
【0031】
【表1】
【0032】(2) 装飾材の製造 基材の表面に、下塗り塗料をスプレーガンによって吹き
付け、塗布した後、110℃で1分乾燥してトルエン他
の揮発分を除去した。乾燥後の塗膜厚さは約50μmで
あった。その後、この乾燥した下塗り塗料の塗膜表面
に、上塗り塗料を同様にスプレーガンによって吹き付
け、塗布した後、110℃で1分乾燥してトルエン他の
揮発分を除去した。乾燥後の塗膜厚さは約10μmであ
った。次いで、基材と、乾燥した下塗り塗料及び上塗り
塗料からなる塗膜とを180℃で1分加熱し、各塗料を
硬化させるとともにマイクロカプセルを熱膨張させて装
飾材を製造した。得られた装飾材の外観、触感等を表1
に併記する。
【0033】上記の塗料の乾燥温度及び時間は塗料の種
類、溶剤で希釈した場合は用いた溶剤の種類等によって
適宜設定することができる。例えばこの実施例において
使用した塗料の場合、80〜130℃、1〜5分程度の
乾燥温度及び時間とすることができる。また、塗料の硬
化温度及び時間は、塗料の種類の他、熱膨張性マイクロ
カプセルの所望の膨張率を勘案し、適宜設定することが
できる。この実施例で使用した塗料及びマイクロカプセ
ルの場合、150〜190℃、30秒〜1分程度の硬化
及び膨張温度、時間とすることができる。
【0034】図1は、上記の製造工程において、上塗り
塗料を乾燥させた時点での断面を模式的に表した模式図
〔図1(a)〕及び加熱によって下塗り塗料と上塗り塗
料を硬化させ、且つマイクロカプセルを膨張させて得ら
れた装飾材の断面を模式的に表す模式図〔図1(b)〕
である。1は基材、2は下塗り塗料からなる塗膜、3は
上塗り塗料からなる塗膜である。また、4は中間層、5
は表層、6は熱膨張性マイクロカプセル、6’は膨張後
のマイクロカプセル、7はウレタンビーズ等である。
尚、目視で観察した結果では、基材は、そのしぼ模様の
凹凸が明瞭であり、表面には艶がある。一方、得られた
装飾材の表面には同様のしぼ模様が観察されるが、しぼ
模様の細かい部分では明瞭でなくなった箇所もあり、表
面は艶消しになっていた。また、基材表面はかなり硬い
触感であるが、装飾材では、しっとりとした柔らかい触
感になっていた。
【0035】(3) ウレタンビーズ等の効果 本発明の装飾材において、その表面の滑りに及ぼすウレ
タンビーズ等の影響は大きい。図2に示す装置(表面性
測定器、新東科学株式会社製、型式「HEIDON−1
4S/DR」)によって、実験例3及びウレタンビーズ
等を含有させなかった以外は実験例3と同様にして調製
した上塗り塗料を使用した場合(比較実験例)につい
て、マイクロカプセルを熱膨張させるための加熱の前後
の表面の動摩擦係数を求めた。その結果、加熱前は、実
験例3が25、比較実験例が50、加熱後は、実験例3
が95、比較実験例が75であった。
【0036】上記のような一般的な測定方法によれば、
加熱後の動摩擦係数は、ウレタンビーズ等を含有する実
験例3のほうがむしろ大きくなる。しかし、実際の製品
では、例えば、手指等が触れた場合に実験例3のものの
表面の滑りは良好であり、マイクロカプセルの脱落もな
い、優れた品質の装飾材を得ることができる。尚、図2
において、8は重さ100gの錘、9は圧接子、10は
幅30mm、長さ100mmの試験片、11は移動台及
び12は荷重変換器である。錘8がない状態では圧接子
9は無荷重になるように調整されており、錘8を加える
ことにより、圧接子9を介して試験片10に100gの
荷重が加わる。圧接子9は、ステンレス鋼製であり、直
径10mm、長さ25mmの半円柱形である。そして試
験片10に圧接子9の周面の一部が線状に接した状態
で、移動台11を200mm/分の速度で右方に30m
m移動させ、荷重変換器12のチャートから動摩擦係数
を読み取った。
【0037】(4) 表1の結果の考察 表1の結果によれば、中間層の100%モジュラスが第
1発明の範囲内にある実験例1〜4の装飾材では、スエ
ード調の外観を有し、且つ柔らかい触感の製品が得られ
ていることが分かる。特に、マイクロカプセルの含有量
が3〜30重量%の範囲にある実験例2〜4の装飾材で
は、その全面に緻密で均質な凹凸模様が形成され、優れ
た外観及び触感となっている。また、マイクロカプセル
の含有量が2重量%と下限である実験例1の装飾材で
は、凹凸模様の形成がやや不十分、不均質であった。
【0038】一方、マイクロカプセルの含有量が第1発
明の上限を少し越えている実験例5では、十分な凹凸模
様は形成されたが、マイクロカプセルの一部が損傷を受
けたり、脱落したりする傾向がみられた。また、実験例
6〜9では、マイクロカプセルの含有量は20重量%と
適正な範囲であるが、下塗り塗料又は上塗り塗料或いは
両塗料ともに、伸びが小さい硬い硬化塗膜となる塗料を
使用した装飾材である。そのため、これらの装飾材は、
たとえいずれか一方に前記の一液型ウレタン樹脂塗料を
使用した場合であっても、硬い樹脂をマイクロカプセル
が無理に引き伸ばすことになり、スエード調の外観とは
なるものの、柔らかい触感をも併せ備える装飾材ではな
かった。尚、実験例6及び7の二液型ウレタン樹脂塗料
及び実験例8及び9のアクリル樹脂塗料を乾燥、硬化さ
せて得られる塗膜の伸びはいずれも100%未満であっ
た。
【0039】
【発明の効果】第1及び第3発明のスエード調の外観を
有する装飾材は、スエード調の外観を有し、柔らかい触
感の、装飾材であって、車両の内装材、内装建材等、各
種の用途において優れた性能の装飾材として使用するこ
とができる。また、第2及び第4発明によれば、特に触
感に優れた、良好な外観を有する装飾材とすることがで
きる。更に、第5発明によれば、表面の滑りに優れ、他
の物品との擦れにより表面が損傷を受けたりして触感、
外観が低下することのない装飾材を得ることができる。
尚、本発明によれば、特に真空成形等による絞りの深い
箇所などにおいても、他の部分と比べ何ら遜色のない触
感、外観を有する装飾材を得ることができる。尚、第6
発明によれば、触感は低下するかもしれないが、スエー
ド調の外観を有する装飾材を得ることができる。
【0040】また、第7発明のスエード調の外観を有す
る装飾材の製造方法は、基材に特定のマイクロカプセル
を含有する塗料を塗布し、乾燥させ、加熱するという簡
便な方法であって、容易に優れた性能の装飾材を製造す
ることができる。更に、第8〜10発明によれば、より
優れた触感、外観及び表面状態を有する装飾材を製造す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、製造工程中、上塗り塗料を乾燥させ
た時点での断面を模式的に表した模式図である。また、
(b)は、加熱によって下塗り塗料と上塗り塗料を硬化
させ、且つマイクロカプセルを膨張させて得られた装飾
材の断面を模式的に表す模式図である。
【図2】動摩擦係数の測定に使用した装置の概略図であ
る。
【符号の説明】
1;基材、2;下塗り塗料からなる塗膜、3;上塗り塗
料からなる塗膜、4;中間層、5;表層、6;熱膨張性
マイクロカプセル、6’;膨張後のマイクロカプセル、
7;ウレタンビーズ等、8;錘、9;圧接子、10;試
験片、11;移動台、12;荷重変換器。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI B32B 33/00 C09D 5/28 C09D 5/28 D06N 3/00 D06N 3/00 B29C 67/22 // B29K 105:04 B29L 31:58

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材、中間層及び表層を備える積層体に
    よって構成される装飾材であって、上記中間層は、10
    0%モジュラスが20〜150kg/cm2の合成樹脂
    中に、熱膨張したマイクロカプセルが分散されてなり、
    上記中間層を100重量%とした場合に、該マイクロカ
    プセルは2〜30重量%であることを特徴とするスエー
    ド調の外観を有する装飾材。
  2. 【請求項2】 上記合成樹脂は、一液型ウレタン樹脂塗
    料が乾燥、硬化してなるものである請求項1記載のスエ
    ード調の外観を有する装飾材。
  3. 【請求項3】 基材、中間層及び表層を備える積層体に
    よって構成される装飾材であって、上記中間層は、熱可
    塑性エラストマー中に、熱膨張したマイクロカプセルが
    分散されてなり、上記中間層を100重量%とした場合
    に、該マイクロカプセルは2〜30重量%であることを
    特徴とするスエード調の外観を有する装飾材。
  4. 【請求項4】 上記熱可塑性エラストマーは、ウレタン
    系熱可塑性エラストマー及び塩化ビニル系熱可塑性エラ
    ストマーの少なくとも一方を含む塗料が乾燥してなるも
    のである請求項3記載のスエード調の外観を有する装飾
    材。
  5. 【請求項5】 上記表層に、シリコンオイル、シリコン
    ビーズ及びウレタンビーズのうちの少なくとも1種が含
    有されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載のス
    エード調の外観を有する装飾材。
  6. 【請求項6】 基材、中間層及び表層を備える積層体に
    よって構成される装飾材であって、上記表層には、シリ
    コンオイル、シリコンビーズ及びウレタンビーズのうち
    の少なくとも1種が含有されており、上記中間層は、合
    成樹脂中に、熱膨張したマイクロカプセルが分散されて
    なり、上記中間層を100重量%とした場合に、該マイ
    クロカプセルは2〜30重量%であることを特徴とする
    スエード調の外観を有する装飾材。
  7. 【請求項7】 請求項1、3及び6項のいずれか1項に
    記載の装飾材を製造する方法であって、熱膨張性マイク
    ロカプセルが分散、含有された下塗り塗料を基材に塗布
    する工程、上記熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張温度
    より低い温度で乾燥する工程、上塗り塗料を塗布する工
    程、及び上記熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張温度よ
    り高い温度で加熱し、上記中間層及び上記表層を形成す
    る工程を、この順に備えることを特徴とするスエード調
    の外観を有する装飾材の製造方法。
  8. 【請求項8】 上記下塗り塗料は、有機溶剤によって希
    釈されたものである請求項7記載のスエード調の外観を
    有する装飾材の製造方法。
  9. 【請求項9】 上記上塗り塗料は有機溶剤によって希釈
    されており、上記加熱工程の前に、上記熱膨張性マイク
    ロカプセルの熱膨張温度より低い温度で乾燥する工程を
    備える請求項7又は8記載のスエード調の外観を有する
    装飾材の製造方法。
  10. 【請求項10】 上記上塗り塗料に、シリコンオイル、
    シリコンビーズ及びウレタンビーズのうちの少なくとも
    1種が配合されている請求項7乃至9のいずれか1項に
    記載のスエード調の外観を有する装飾材の製造方法。
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