JPH1088220A - 製鋼スラグの水浸膨張性の低減方法 - Google Patents

製鋼スラグの水浸膨張性の低減方法

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JPH1088220A
JPH1088220A JP8241609A JP24160996A JPH1088220A JP H1088220 A JPH1088220 A JP H1088220A JP 8241609 A JP8241609 A JP 8241609A JP 24160996 A JP24160996 A JP 24160996A JP H1088220 A JPH1088220 A JP H1088220A
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Hisahiro Matsunaga
久宏 松永
Hiroyuki Toubou
博幸 當房
Masato Kumagai
正人 熊谷
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 製鋼スラグの水浸膨張性を、エージング処理
を必要とすることなしに低減する。 【解決手段】 製錬処理中におけるCaO源、SiO2源およ
び Al2O3源の投入量を調整して、重量比で、スラグ中の
Al2O3成分量を13%以上にすると共に、(CaO%/SiO2
%)を 3.0以下でかつ、( Al2O3%/MgO%)を 1.3以
上の範囲に制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、製鋼スラグの水
浸膨張性の低減方法に関し、特に路盤材やアスファルト
混入材等に使用される製鋼スラグの水浸膨張率の有利な
低減を図ろうとするものである。
【0002】
【従来の技術】溶銑予備処理スラグ、転炉スラグおよび
溶融還元炉スラグ等の製鋼スラグは、遊離CaOや遊離Mg
Oを多量に含有する。ここに、遊離CaOは次式 (1)に示
す水和反応により、また遊離MgOは次式 (2)に示す水和
反応により、それぞれ Ca(OH)2、Mg(OH)2 となり、この
時に体積が約2倍になる。 CaO+H2O → Ca(OH)2 (1) MgO+H2O → Mg(OH)2 (2)
【0003】従って、遊離CaOや遊離MgOを多量に含有
するスラグを、路盤材等に使用した場合、水和反応によ
る膨張のため、路盤に凹凸を生じて車両の走行に支障が
生じることになる。このため、道路用製鋼スラグの物性
としてJIS A 5015では、水浸膨張率を1.5%以下に制限
しており、この規定を満足させることが重要である。
【0004】従来、製鋼スラグの膨張を防止する手段と
しては、次のような方法が知られている。 (a) 自然エージング処理方法 この処理は、これまで最も一般的に行われてきた方法で
あり、所定粒度に破砕した製鋼スラグを、山積みし、大
気中の水分、雨水等によって (1), (2) 式の水和反応を
行わせることにより、遊離CaO、遊離MgOを Ca(OH)2
Mg(OH)2 として体積的に安定化する方法である。
【0005】(b) 水蒸気エージング処理方法 この処理は、特開昭61−101441号公報に記載されている
ように、所定粒度に破砕した製鋼スラグを、山積みし、
高温度で蒸気を吹き込み、大気中で48時間以上暴露させ
ることにより、遊離CaOを Ca(OH)2として体積的に安定
化する方法である。
【0006】(c) 温水エージング処理方法 この処理は、「神戸製鋼技報」Vol.42, No.1 (1992) P.
101 および特開昭57−152411号公報に記載されているよ
うに、所定粒度に破砕した製鋼スラグを、温水に浸漬す
ることにより、遊離CaOを Ca(OH)2として体積的に安定
化する方法である。
【0007】(d) 赤泥添加処理方法 この処理は、特公昭57−2768号公報に記載されているよ
うに、溶融状態の転炉スラグまたは電気炉スラグに赤泥
を添加することにより、遊離CaOを消失させ、スラグの
膨張性を安定化する方法である。なお、上記した (b)お
よび(c) の方法は、遊離CaOを Ca(OH)2に変えて、体積
的に安定化する方法として紹介されているが、遊離MgO
の Mg(OH)2への転換も同時に起こると考えられる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、製鋼ス
ラグ中の遊離CaOおよび遊離MgOは、スラグ塊の表面だ
けでなく、塊の内部にも取り込まれており、その存在状
態は様々であるため、遊離CaO、遊離MgOを含む製鋼ス
ラグの膨張現象は複雑なものとなっている。例えば、自
然エージング処理法では、遊離CaO、遊離MgOを安定化
するのに通常1年以上の長期間を要するという問題があ
った。また、水蒸気エージング処理法および温水エージ
ング処理法でも、48時間以上のエージング時間を要する
という問題があった。さらに、赤泥添加処理法は、溶融
状態で赤泥を添加することから、スラグの塩基度が低下
し、転炉等の耐火物を損耗させる原因になっていた。な
お、遊離MgOの水和反応速度は遊離CaOのそれよりも遅
いため、遊離MgOを10wt%以上含むスラグの膨張性をエ
ージング処理によって低減するのは、極めて困難であっ
た。
【0009】この発明は、上記の問題を有利に解決する
もので、遊離CaOだけでなく遊離MgOによる膨張性を
も、エージング処理を必要とすることなしに有利に低減
することができる新規な方法を提案することを目的とす
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】さて、発明者らは、上記
の問題を解決すべく種々の実験と検討を重ねた結果、遊
離CaOおよび遊離MgOの存在性はスラグ組成と密接な関
係にあることを新たに知見した。この発明は、上記の新
規知見に立脚するものである。
【0011】すなわち、この発明は、MgO成分を含む原
料または副原料を使用する製鋼工程において、製錬処理
中におけるCaO源、SiO2源および Al2O3源の投入量を調
整することにより、重量比で、スラグ中の Al2O3成分量
を13%以上にすると共に、(CaO%/SiO2%)を 3.0以
下でかつ、( Al2O3%/MgO%)を 1.3以上の範囲に制
御することを特徴とする、製鋼スラグの水浸膨張性の低
減方法である。
【0012】この発明で対象とする製鋼スラグには、溶
銑予備処理スラグ、転炉スラグ、溶融還元炉スラグ、脱
炭炉スラグは勿論のこと、取鍋スラグや電気炉スラグ等
も含まれる。また、この発明において、SiO2源として
は、砂利、高Si濃度の銑鉄、フライアッシュ、コーク
ス、石炭およびFe−Si等が、また Al2O3源としては、ア
ルミ灰、金属アルミニウム、フライアッシュ、コーク
ス、石炭およびクロム鉱石等が適している。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、この発明を由来するに至っ
た実験結果について説明する。遊離CaOを含まないよう
に種々の組成のCaO−SiO2−MgO−Al2O3 系スラグを合
成し、その水浸膨張率と遊離MgO濃度との関係について
調査した結果を、図1に示す。なお、遊離MgO濃度はX
線回折法により定量した。同図から明らかなように、遊
離CaOを含まなければ、遊離MgO濃度を12wt%以下とす
ることにより確実に水浸膨張率を1.5 %以下にすること
できる。従って、エージングを必要とすることなしに、
スラグを路盤材として使用するためには、少なくとも遊
離MgO濃度を12wt%以下とする必要がある。
【0014】次に、種々の塩基度(CaO/SiO2)のCaO
−SiO2−MgO−Al2O3 系スラグを合成し、その存在鉱物
相をX線回折により定性した結果を、表1に示す。ま
た、表2は、これらのスラグの化学組成を示す。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】表1から明らかなように、MgO成分は、
(CaO/SiO2)が3.5 以上では遊離MgOとしてのみ存在
しているのに対し、(CaO/SiO2)が3.0 以下では遊離
MgOとしてだけでなく、Ca2MgSi2O7およびMgAl2O4 とし
ても存在するようになる。その結果、表2に示すように
遊離MgO濃度は12wt%以下まで低くなる。従って、(Ca
O/SiO2)を3.0 以下にすることにより、遊離MgO濃度
の低減が可能となる。
【0018】前述したように、遊離CaOを含まなけれ
ば、遊離MgO濃度を12wt%以下とすることにより、確実
に水浸膨張率を1.5 %以下にすることができるが、遊離
CaOが存在する場合には遊離MgO濃度をさらに低くする
必要がある。そこで、遊離MgO濃度が10wt%のCaO−Si
O2−MgO−Al2O3 系スラグを合成し、遊離CaO濃度と水
浸膨張率との関係について調査した。得られた結果を図
2に示す。なお、遊離CaO濃度はエチレングリコール溶
解法により定量した。また、遊離MgO濃度が10wt%のス
ラグは、スラグのMgO成分:10wt%かつ(CaO/SiO2
> 3.0(MgO成分が全量遊離MgOとなる)とすることに
より合成することができる。
【0019】図2から明らかなように、遊離MgO濃度が
10wt%のスラグの場合、遊離CaO濃度を1.0 wt%以下に
することにより、水浸膨張率を1.5 %以下にすることが
できる。従って、遊離MgO濃度が10wt%以下かつ遊離Ca
O濃度が1.0 wt%以下ならば、確実に水浸膨張率を1.5
%以下にすることができるわけである。
【0020】そこで、製鋼スラグの膨張性を低減すべく
種々実験・検討を重ねた結果、遊離CaOおよび遊離MgO
濃度によるスラグの膨張性は、スラグの(CaO/SiO2
および( Al2O3/MgO) と強い相関があることが判明し
た。図3および図4にそれぞれ、MgO成分を10wt%以上
含むスラグの(Al2O3/MgO) と水浸膨張率との関係を
(CaO/SiO2)比をパラメータとして示す。
【0021】図3から明らかなように、(CaO/SiO2
が3.0 以下ならば、(Al2O3/MgO)を1.3 以上とするこ
とによって、水浸膨張率を1.5 %以下に低減することが
できた。なお、これらのスラグは全て、遊離MgO濃度が
10wt%以下でかつ、遊離CaO濃度が1.0 wt%以下であっ
た。一方、(CaO/SiO2)が3.0 よりも大きいと、(Al2
O3/MgO) を1.3 以上にしても多くのスラグの水浸膨張
率は1.5 %以下にはならなかった。また、これらのスラ
グは全て、遊離MgO濃度が10wt%よりも高かった。
【0022】この理由について、遊離MgOと遊離CaOの
それぞれの点から以下に述べる。前述したように、MgO
成分は、(CaO/SiO2)が3.5 以上では遊離MgOとして
のみ存在しているのに対し、(CaO/SiO2)が3.0 以下
では遊離MgOとしてだけでなく、Ca2MgSi2O7およびMgAl
2O4 としても存在するようになる。したがって、Al2O3
成分は(CaO/SiO2)が3.0 以下ではMgO成分と化合
し、遊離MgO濃度を低減する効果がある。一方、スラグ
中のCaO成分は、(CaO/SiO2)の如何にかかわらず、
主にCa12Al14O33 、Ca3Al2O6、β−Ca2SiO2 として存在
していた。したがって、Al2O3 成分はCaO成分と化合
し、遊離CaO濃度を低くする効果がある。このため、
(CaO/SiO2)が 3.0以下の場合、遊離MgO濃度および
遊離CaO濃度は、 Al2O3濃度およびMgO濃度によって決
まり、発明者らの実験によれば、Al 2O3 成分が13wt%以
上ならば、(Al2O3/MgO) を 1.3以上とすることによ
り、遊離MgOが10wt%以下でかつ遊離CaO濃度が1.0 wt
%以下となり、その結果、水浸膨張率を1.5 %以下にす
ることができたのである。
【0023】この発明は、上記の知見に基づいて創作さ
れたものであり、MgO成分を含む原料または副原料を使
用する製鋼工程において、処理中にCaO源、SiO2源、Al
2O3源の投入量を調整することにより、スラグの Al2O3
成分を13wt%以上にすると共に、スラグの(CaO/Si
O2)を3.0 以下でかつ、(Al2O3/MgO) を1.3 以上に制
御することにより、発生スラグの冷却後の水浸膨張性を
効果的に低減するものである。ここに、Al2O3 成分を13
wt%以上とした理由は、Al2O3 成分が13wt%よりも低い
と、MgO成分をCa2MgSi2O7およびMgAl2O4 として、ま
た、CaO成分を12CaO・7Al2O3および3CaO・Al2O3
して十分に安定化させることができず、遊離MgO濃度を
10wt%以下でかつ遊離CaO濃度を1.0 wt%以下にするこ
とができないからである。なお、(CaO/SiO2)は3.0
以下ならば特に限定されることはないが、(CaO/Si
O2) が低すぎると転炉等の耐火物を損耗させる原因とな
るので、2.2 以上とすることが好ましい。また、この発
明の範囲内において、処理中にCaO源、SiO2源およびAl
2O3 源の投入量を調整しても、出鋼成分への影響はほと
んど無い。
【0024】
【実施例】各種精錬炉で操業を行った場合に発生した種
々の Al2O3濃度、(CaO/SiO2)、(Al2O3/MgO) にな
るスラグに対し、冷却後、JIS A 5015による水浸膨張試
験を行った。得られた結果を表3に示す。
【0025】
【表3】
【0026】表3から明らかなように、Al2O3 成分、
(CaO/SiO2)および(Al2O3/MgO)の少なくともいず
れかがこの発明の要件を満足していない比較例1〜5は
いずれも、水浸膨張率が1.5 %より高く、このままでは
路盤材として使用することができなかった。従って、遊
離CaO、遊離MgOを安定化するためのエージング処理が
必要になる。これに対し、処理中に、CaO源である焼石
灰、ドロマイト、またSiO2源である砂利、フライアッシ
ュ、コークス、石灰、クロム鉱石、高Si銑鉄 (Si 2.8wt
%)、Fe−Si、さらにAl2O3 源であるアルミ灰、金属ア
ルミニウム、フライアッシュ、クロム鉱石等の投入量を
調整して、この発明の要件を全て満足させた適合例1〜
7はいずれも、遊離MgO濃度が10wt%以下かつ遊離CaO
濃度が1.0 wt%となる結果、水浸膨張率を1.5 %以下ま
で低減することができた。従って、エージング処理を施
す必要なくそのままで、路盤材として使用することがで
きる。
【0027】なお、適合例1の溶銑予備処理スラグは、
トピードにおいて処理しており、表3に示す副原料を予
備処理時間の終了5分前までに全て装入した。適合例2
の転炉スラグは、底吹き転炉において、表3に示す副原
料を吹錬終了5分前までに全て装入した。適合例3の取
鍋スラグは、表3に示す副原料を二次精錬開始前に全て
装入した。適合例4および5の溶融還元炉スラグは、表
3に示すドロマイト、焼石灰、高Si銑鉄、コークスをガ
ス吹き終了5分前までに、クロム鉱石および石炭をガス
吹き終了までに装入した。適合例6の脱炭炉スラグは、
ガス吹き終了5分前までに全て装入した。適合例7の電
気炉スラグは、吹錬終了5分前までに全て装入した。従
って、適合例のMgOを含む原料および副原料、焼石灰は
全て溶融しており、未滓化MgOおよび未滓化CaOは存在
しない。
【0028】
【発明の効果】前述したとおり、従来、製鋼スラグは自
然エージング処理、水蒸気エージング処理等のエージン
グ処理により、遊離CaOを Ca(OH)2とし安定化する必要
があった。また、遊離MgOを10wt%以上含むスラグの膨
張性をエージング処理により低減するのは極めて困難で
あった。しかしながら、この発明によれば、MgOを含む
原料または副原料を使用する製鋼工程において、処理中
にCaO源、SiO2源およびAl2O3 源の投入量を調整して、
スラグのAl2O3 を13wt%以上にすると共に、(CaO/Si
O2)を 3.0以下でかつ、(Al2O3/MgO) を1.3 以上の範
囲に制御することにより、発生スラグの冷却後の水浸膨
張性を効果的に低減することができ、その結果、エージ
ング処理を必要とすることなしに路盤材として使用が可
能となり、その経済的効果は極めて大と言える。
【図面の簡単な説明】
【図1】遊離MgO濃度と水浸膨張率との関係を示したグ
ラフである。
【図2】遊離CaO濃度と水浸膨張率との関係を示したグ
ラフである。
【図3】(CaO/SiO2)が 3.0以下の場合における、(A
l2O3/MgO) と水浸膨張率との関係を示したグラフであ
る。
【図4】(CaO/SiO2)が 3.0以上を超える場合におけ
る、(Al2O3/MgO) と水浸膨張率との関係を示したグラ
フである。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 MgO成分を含む原料または副原料を使用
    する製鋼工程において、製錬処理中におけるCaO源、Si
    O2源および Al2O3源の投入量を調整することにより、重
    量比で、スラグ中の Al2O3成分量を13%以上にすると共
    に、(CaO%/SiO2%)を 3.0以下でかつ、( Al2O3
    /MgO%)を 1.3以上の範囲に制御することを特徴とす
    る、製鋼スラグの水浸膨張性の低減方法。
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