JPH108458A - 杭継手の接続方法及びその接続構造 - Google Patents

杭継手の接続方法及びその接続構造

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JPH108458A
JPH108458A JP15964096A JP15964096A JPH108458A JP H108458 A JPH108458 A JP H108458A JP 15964096 A JP15964096 A JP 15964096A JP 15964096 A JP15964096 A JP 15964096A JP H108458 A JPH108458 A JP H108458A
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joint
male
female
pile
male joint
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JP15964096A
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English (en)
Inventor
Shinichi Yamato
和 真 一 大
Masao Tanaka
中 昌 穂 田
Tadashi Maejima
嶋 匡 前
Takeshi Iguchi
口 武 士 井
Takeshi Ikeda
田 剛 池
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
Hiraoka Metal Industrial Co Ltd
Original Assignee
Asahi Chemical Industry Co Ltd
Hiraoka Metal Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】従来の雄継手と雌継手とをネジ式で接続する杭
継手の接続方法及びその接続構造に於いては、地震等の
ように強大な力が杭本体及び杭継手に作用した場合に、
継手部分が大きく弾性変形してしまうので、ネジ部の接
続が山越えなどによって脱離してしまう問題があった。 【解決手段】筒状の杭本体1,2をネジ部7を外周面に
有する雄継手3と、ネジ部9を内周面に有する雌継手4
とを用いて接続する杭継手の構造に於いて、雌継手4の
先端部と雄継手3の外径基部6とを押合わせ、かつ雄継
手3の先端部と雌継手4の内底部10とも相互に押合わ
せて接続した杭継手の接続構造に関するものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は土木建築用基礎杭、
土工事用のアンカ(以下単に杭と総称する)に使用され
る杭継手の接続方法及びその接続構造に係り、特に過密
都市の狭隘な搬入経路しかない現場における杭や、その
施工機器の搬入が困難な個所に於いて施工される雄継手
と、雌継手とのネジ接続による杭継手の接続方法と構造
とに関するものである。
【0002】
【従来の技術】鋼管杭は、施工がコンクリート既成杭に
比較して簡単であり、同様の強度を発現する既製コンク
リート杭に比較して、非常に軽量であることから過密都
市の狭隘な搬入経路しかない施工現場や短期間に施工を
完了しなければならない港湾事業、橋梁の基礎杭として
多用されるようになってきた。
【0003】しかし、支持杭として使用される場合、安
定した岩盤までの深さは、場所によってさまざまであ
り、既製コンクリート杭と同様にある一定の長さで製作
して所要の深さに達するまでは、溶接などにより延長し
ていく必要があった。また、溶接継手の構造では、溶接
によって継手部の強度を得るため、非常に熟練した職人
を必要とし、またそのような溶接作業は天候や、環境に
大きく影響されるために、著しく信頼性に欠ける問題が
あった。
【0004】前述の溶接方式による継手の欠点を改善す
るために、例えば実開昭60ー195328号公報、特
公昭50ー25255号公報、実公昭40ー6043号
公報、実開昭61ー84734号公報、実開昭56ー1
30034号公報、特開平8ー60652号公報、特公
昭56ー36248号公報等に示す如く、雄継手と雌継
手とをネジを用いて接続するネジ式継手の技術が種々記
載されている。
【0005】前述の公知技術を簡単に説明すると、実開
昭60ー19528号公報に記載された技術は、ネジ継
手を利用したコンクリート製の既製杭の継手部に対し、
回り止め金物とこれを固定するためボルトとを使用し、
先行打設された下側杭と、継ぎ足された上側杭とに取付
けられた雄継手と雌継手とを回り止め金物で固定して、
螺合が緩まないようにした構成が開示されている。
【0006】特公昭50ー25255号公報では、雌ね
じ、雄ねじのクリアランスに接合後、溶融状態で注入し
た後に収縮することなく凝固する金属、セメント、ある
いは合成樹脂を充填する方法を開示している。また、実
公昭40ー6043号公報では、中空元杭の内周部に周
溝を設けると共に、接続杭の下端に中空元杭の内部に嵌
入し得る突棒を突設し、この突棒の周りに前記周溝に嵌
入し得る金属線を取付けた接続装置が開示されている。
【0007】実開昭61ー84734号公報は、夫々ネ
ジ接続し得る雄継手と雌継手とを上下の杭の杭端に取付
け、これ等の雄雌継手を螺合することによって上下の杭
を接続する構造が示されている。また、実開昭56ー1
30034号公報は、上下杭の内周面に夫々ネジを設
け、かつ外周面にネジを有する継手金物を上下杭の内周
面にネジ込むことによって、継手金物を介して上下杭を
接続する構成が示されている。
【0008】特開平8ー60652号公報では、逆転緩
止機構はないものの、テーパネジを利用した継手の構成
が示されている。また、特公昭56ー36248号公報
では、複数のカム状突起を設けた回転筒を継手に内蔵
し、外部から回転筒を回転させることにより継手部を係
脱させる構造を提案している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】然るに、前述のような
多数の公知技術に於いても、夫々次のような問題があっ
た。即ち、実開昭60ー195328号公報の技術は、
既製コンクリート杭でしかもプレボーリング工法で使用
される杭のため、杭自体が正転逆転のトルクを直接受け
ながら施工される無排土回転埋設工法では、強大なトル
クが作用するため転用できる技術ではない。また回り止
め金物を接合後にボルトなどを使用して取り付けねばな
らず、省力化にならない問題があった。
【0010】実公昭50ー25255号公報の技術は、
実際に実験によって再現した処、実験では、接合性と接
合後の鉛直性を確保するためにクリアランスを0.5m
mとし、合成樹脂接着剤を充填した。前項と同様に無排
土回転埋設工法では、強大なトルクが作用するため樹脂
が剪断され実用にならない問題があった。また、実公昭
40ー6043号公報、実開昭61ー84734号公
報、実開昭56ー130034号公報及び特開平8ー6
0652号公報に示す技術は、いずれも地震等のように
短時に強大な力が作用したような場合に、継手部分が弾
性変形してしまうので、ネジ部の接続が山越えなどによ
って脱離してしまう問題があった。
【0011】特公昭56ー36248号公報の技術は、
製作精度をかなり高くする必要があり、基礎杭の継手に
使用する構造としては、高価な部品をつくる必要があ
り、経済的に不適となる問題があった。
【0012】前述のように鋼管杭が多用されるようにな
った背景の一つに、同様の性能を有するコンクリート杭
より廉価で、施工性がよいことのほかにコンクリートに
はない靱性を発揮できることがもっとも大きな要因であ
る。すなわち、垂直荷重のみを支持する場合には、コン
クリートの圧縮に強い性質が生かされるが、横荷重をも
加味しなければならない場合、特に短期で強大な力が作
用する地震などの場合には、靱性、すなわち粘りや耐変
形性が要求されることになり、継手にも同様の要求が高
まってきた。
【0013】従来からも前述したような開示技術によっ
て継手が開発使用されてきたが、いずれも従来のネジ式
継手、ほぞ式継手では雌雄の端面が継手の外周側か、内
底側から一方のみで押圧される構造であるため、局部に
応力が集中し継手部を大きくしたり、ネジあるいはほぞ
の長さを接続される軸径の3〜4倍にする必要があっ
た。逆に被接合物の材料と同じ材料を使用すると被接合
物の強度以上に継手部の強度を向上させることは困難で
あった。
【0014】従来のネジ式継手で、溶接継手の強度と同
様の曲げ強度を得るために種々の実験を繰り返したが、
これらの権利によって開示されている技術は、雄雌の継
ぎ手が接する外径側または、内径側の一方のみで押圧し
合う構造であるため薄肉鋼管では、弾性変形が大きく鋼
管の曲げ強度に達するまでにネジ部で山越えなどによっ
て脱離してしまうことがわかった。
【0015】つまり、ネジ式継手を用いた杭の曲げ試験
を行ってみると雌継手の先端部と底部、雄継手の基部と
先端部では、変形の状態が全く異なることを発見した。
すなわち、前述の弾性変形のもっとも大きい部位は、雌
継手の先端部と、雄継手の先端部であり、変形の方向も
全く異なることがわかった。これは、前述の特開平8ー
60652号公報中に開示されている鋼管の断面係数を
基本とする思考方法では解決することはできないことが
わかった。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明に係る杭継手の接
続方法は、前述の従来の多くの問題点を根本的に改善し
た発明であって、その発明の要旨は、筒状或いは軸状の
杭をネジ式雄雌継手を用いて接続する方法に於いて、雄
継手と雌継手とを相互に締結する際に該雌継手の先端部
と雄継手の外径基部とを押圧し合わせ、かつ前記雄継手
の先端部と雌継手の内底部とも押圧し合わせて接続する
ことを特徴とした杭継手の接続方法である。
【0017】また、本発明に係る杭継手の接続構造の第
1発明の要旨は、筒状或いは軸状の杭をネジ式雄雌継手
を用いて接続する構造に於いて、雄継手と雌継手とを相
互に締結した状態で雌継手の先端部と雄継手の外径基部
とが押圧し合い、かつ前記雄継手の先端部と雌継手の内
底部とも押圧し合わされて接続構成されていることを特
徴とした杭継手の接続構造である。
【0018】また、本発明に係る杭継手の接続構造の第
2発明の要旨は、前記雌継手の先端部と雄継手の外径基
部との接する個所の面積と、雄継手の先端部と雌継手の
内底部との接する個所の面積とにおいて、前記雌継手の
先端部と雄継手の外径基部の接する面積より雄継手の先
端部と雌継手の内底部の接する面積が小さく、かつ雄継
手の先端部と雌継手の内底部が接する個所が、継手材料
の少なくとも降伏点以上の応力を発生する面積と形状と
を備えていることを特徴とする第1発明の杭継手の接続
構造である。
【0019】更に、本発明に係る杭継手の接続構造の第
3発明の要旨は、前記第1発明及び第2発明の杭継手の
接続構造に於いて、(イ)雌継手の先端部と雄継手の外
径基部が接する個所は、杭本体の肉厚と等しいかそれ以
上の肉厚を有し、かつ該杭本体の長手方向に対して直角
な平面または最大2分1のテーパーを有しており、
(ロ)雄継手と雌継手とに設けられるネジ部はクリアラ
ンスが0.1mm〜1.0mm以内であり(ハ)雌継手
の内底部には雄継手の先端部を支える杭本体の長手方向
に対して直角な平面または該雄継手の先端部の端面と同
一の形状を持った支圧部を有し、(ニ)雄雌の継手の外
径寸法は杭本体の外径寸法と同一であることを特徴とし
た請求項2及び請求項3のいずれかの杭継手の接続構造
である。
【0020】
【発明の実施の形態】図により本発明に係る杭継手の接
続方法及びその接続構造について説明すると、図1
(A),(B)は本発明に係る杭継手の接続構造の構成
を示す断面説明図、図2(A),(B),(C),
(D),(E)は夫々杭継手の所定部分の変形を示す簡
略図、図3は杭継手の上下方向に荷重が作用した場合の
雌継手の先端部に於ける曲げモーメントと応力分布との
状態を示す説明図、図4は雄継手の先端部に於ける曲げ
モーメントと応力分布との状態を示す説明図、図5は雄
雌継手で接続された杭の曲げ試験の方法を示す正面図、
図6は杭継手の材料変化による強度変化を比較する説明
図である。
【0021】図7は杭継手を強度の高い材料で構成した
場合の曲げ試験の比較説明図、図8は雌継手と雄継手と
が1個所のみで押圧し合う場合と、2個所で押圧し合う
場合との比較説明図、図9(A),(B),(C)は雌
継手と雄継手との接する個所をテーパー面とした場合の
説明図、図10(A),(B)は夫々雌継手と雄継手と
が2個所で押圧し合う状態と、これ等の継手に曲げ力が
作用した状態の説明図である。
【0022】図1に於いて、1,2は夫々の鋼管製の杭
本体であり、杭本体1の端部には円筒状の雄継手3が取
付けられており、かつ杭本体2の端部には円筒状の雌継
手4が取付けられている。前記雄継手3の外周壁には、
杭本体1の端部を嵌着し得る段部5と雌継手4の先端部
を当接し得る外径基部6とが設けられ、かつ雄継手3の
先端小径部の外周面にはネジ部7が設けられている。
【0023】前記雌継手の外周壁には杭本体2が嵌着し
得る段部8が設けられている。また雌継手4の内周面に
は、前記雄継手3のネジ部7に螺合し得るネジ部9が設
けられている。前述のような構造を有する雄継手3と雌
継手4とを相互に接続した場合には、雌継手4の先端部
が雄継手3の外径基部6に当接されると同時に、雄継手
3の先端部が雌継手4の内底部10に当接され、雄継手
3と雌継手4とがこれ等の2個所に於いて、相互に押圧
し合わされるように構成されている。
【0024】上記実施例に於いて、雄継手3の外径基部
6は雄継手3の長手方向に対して直角な平面(起立平
面)を持って形成されている。また、この外径基部6の
起立平面は杭本体1,2の管断面の肉厚と等しいかそれ
以上の肉厚を有している。
【0025】雌継手4の内底部10に当接される雄継手
3の先端部は先細状に形成されおり、その先端部の肉厚
は他の部分の肉厚よりも小さくなっている。従って、雌
継手4の先端部が雄継手3の外径基部6に接する面積よ
りも、雄継手3の先端部が雌継手4の内底部10に接す
る面積の方が小さくなるように構成されている。
【0026】前記雄継手3と雌継手4との外径寸法は杭
本体1,2の外径寸法と同一の寸法を持って形成され、
これ等の継手3,4を介して杭本体1,2を接続した場
合には、全部の外周が面一になるように構成されてい
る。また、これ等の継手3,4に夫々設けられるネジ部
7,9のクリアランスは0.1mm〜1.0mm以内に
なるように構成されている。
【0027】前述の雄継手3と雌継手4とに夫々図1
(A)に示すような曲げ力が作用した場合には、図2
(B),(C),(D),(E)に夫々示すような形状
に雄継手3と雌継手4とが変形することが明らかとなっ
た。本件発明者等は、曲げ力が作用した場合に於ける雄
継手3と雌継手4との変形状態を調査測定するために、
図5に示すような曲げ試験装置を用いて実施した。この
図5に示す装置による曲げ試験はコンクリート製品の曲
げ試験方法に準拠するものであって、装置の中央部に前
記図1(A)に示すような状態で相互に接合された雄雌
継手3,4が来るようにして試験を行ったものである。
【0028】図2(A)は、前記雄雌継手3,4の断面
を表す図であって、後述の曲げ力の作用によって変化す
る状態を比較するための基準図であり、以後の変形状態
を観測し易くするために、頂部から時計回り方向に符号
a,b,c,dを付けたものである。前述のような継手
部の曲げ実験によって雄継手3、雌継手4の各部の変形
を測定した結果は、図2(B),(C),(D),
(E)に示す通りである。
【0029】即ち、図2(B)は雌継手4の先端部の変
形を示す図であり、同図(C)は雌継手4の内底部10
の変形を示す図である。同図(D)は雄継手3の外径基
部6の変形を示す図であり、かつ同図(E)は雄継手3
の先端部の変形を示した図である。これ等の図に於ける
破線で示した円は、変形する以前に元の継手3,4を示
す図である。
【0030】図2(B),(C)に示す如く、雌継手4
は全体的傾向として縦方向に変形するのに対し、図2
(D),(E)に示す如く、雄継手3は全体的傾向とし
て横方向に変形している。更に詳細に検討すると、図2
(B)のように雌継手4の先端部はa方向に持ち上げら
れながらラッパ状に変形している。また、図2(E)の
ように雄継手3の先端部はc方向に変形しているが、図
2(C)及び図2(D)に示す如く、雌継手4の内底部
10及び雄継手3の外径基部6はほとんど変形していな
いことが明らかである。
【0031】これ等の実験による計測結果からも判明す
るように、雄継手3と雌継手4とは、弾性変形が大きく
現れる所と、ほどんど変形が発生しない場所とが混在し
ていることが明らかとなった。従って、雄継手3と雌継
手4とをネジ接続した状態で弾性変形が発生すると、終
局的な状態では、雄継手3と雌継手4とのネジ部7,9
が山越え現象を起こし、両者の接続が解除されてしまう
ことも明らかになった。
【0032】更に、雄雌継手3,4を予め変形を予想し
た一様な断面形状を持つ部材として計画して製造するこ
とは不可能であること、かつ曲げ力により発生する応力
は非常に小さいのに、雄雌継手3,4の変形によってネ
ジ部7,9の山越えが前述のように発生するので、これ
によってネジ式継手の機能が簡単に損なわれてしまうこ
とを発見した。
【0033】次に、雌継手4の先端部の管厚について考
察すると次の通りである。即ち、前述した特開平8ー6
0652号公報によれば、必要管厚は、断面係数に関係
すると記述されているが、中実軸や、鋼管半径と管厚の
比が、理論的には、100以下、実験的には64以下の
場合には厚肉鋼管として算定する。この場合は、鋼管の
中立軸の移動がないものとして設定するのが常道であ
る。今回実験に供した試験体は、上記の値が9.5〜2
2.3の範囲にあり厚肉鋼管の範囲に入る。
【0034】しかし、曲げ試験の結果を考察すると、断
面内での大きなつぶれ変形を伴っており、通常の断面係
数の理論がそのまま適用出来ないことが判明した。図3
及び図4は、夫々杭本体1,2の上下方向に荷重が作用
した場合に於ける、雌継手4の先端部と雄継手3の先端
部での曲げモーメントと応力分布との状態を示す図であ
る。
【0035】前記図3及び図4で明らかな如く、雄継手
3及び雌継手4のような円環より構成されているもの
は、荷重の作用する方向とそれに直角な方向により内部
の状態が異なっており、荷重の作用する方向の方がそれ
に直角な方向よりも大きな値を示すことが明らかであ
る。
【0036】本発明に係る図1に示すような杭継手構造
について、前述の図5に示す曲げ試験を行った処、雄雌
継手3,4の材質を杭本体1,2と同様な材質で構成し
た場合には、雄雌継手3,4のネジ部7,9より破壊さ
れてしまった。これに対して雄雌継手3,4の材質を杭
本体1,2の材料より35%程度の強度の高い材料を使
用した場合には、杭本体1,2と同等か或いはそれ以上
の曲げ強度を有することが判明した。
【0037】図6及び図7は夫々雄雌継手3,4に使用
される材料による曲げ強度の変化を示すものであって、
図6に於けるグラフは、杭本体1,2と同一の材料を
用いて雄雌継手3,4を作成した場合の強度を示し、グ
ラフは杭本体1,2そのものの強度を示している。こ
のグラフ、の比較によって、杭本体1,2と同一の
材料で作成した雄雌継手3,4は杭本体1,2そのもの
の約60%の強度しか得られないことが明らかである。
従って杭本体と比較的同一の材料で製造した雄雌継手
3,4は、小さな曲げでネジ部7,9が山越え現象を起
こし、雄雌継手3,4が継手としての機能を失うことが
明らかとなった。
【0038】図7に於けるグラフは、雄雌継手3,4
の材料を杭本体1,2の材料より約30%強度の高い材
料を使用した場合の曲げ試験による結果であり、この場
合には前述の杭本体1,2の曲げ試験強度を示すグラフ
よりも弱冠ではあるが強度が上回っていることが明ら
かとなった。従って、雄継手3,4の材料を強度の高い
材料にすれば、杭本体1,2の強度と同等か、或いはそ
れ以上の強度にすることが判明した。
【0039】次に、本発明に於ける大きな課題である雄
継手3と雌継手4との締結状態について詳述する。即
ち、本発明に於いては、前述の図1(A)に示すよう
に、雌継手4の先端部と雄継手3の外径基部6が押圧し
合うと共に、雄継手3の先端部と雌継手4の内底部10
とが押圧し合って構成されている。このように、雄雌継
手3,4を2ヶ所で相互に押し合わせて構成する技術
は、前述の従来の技術の中には全く記載されていない新
しい技術である。
【0040】鋼管杭にもっとも求められる最も重要な機
能として曲げ耐力が大きいことは、前述した。継手につ
いても同様の要求がなされるのは当然である。しかも廉
価で限られた空間の中に収容しなければならないことも
当然である。このような要求の中で、杭継手の接続に強
度を持たせるためには、雄雌継手3,4を2ヶ所で押圧
し合わせることが、以下の図等で説明するように、最良
の策であることが明らかとなった。
【0041】即ち、図8に示すように、ネジ式継手の曲
げ試験を実施した処、雄雌継手3,4を1個所のみで押
圧し合う場合と、2個所で押圧し合う場合とでは大きな
差が生ずることが判明した。グラフは、雌継手4の先
端部と雄継手3の外径基部6のみで押圧し合うネジ式継
手の曲げ試験の結果であり、グラフは、雌継手4の先
端部と雄継手3の外径基部6との押圧し合いと、雄継手
3の先端部と雌継手4の内底部10との押圧も同様にし
合う場合の曲げ試験の結果であり、これ等のグラフ,
を比較することによって、後者の2個所で押圧し合う
構造の杭継手の方が1個所で押圧し合う構造の杭継手よ
りも最終強度で約30%優れていることが明らかであ
る。
【0042】図10(A),(B)は夫々雄雌継手3,
4が前述のように2ヶ所で押圧し合う接合時の状態と、
この接合時の状態のものに曲げ力が作用した状態のもの
を示している。図10(A)に示すように規定の締結ト
ルクで雄雌継手3,4を接合した場合には、雌継手4の
先端部と雄継手3の外径基部6との押圧し合っている部
分にかかる押圧力F1よりも、雄継手3の先端部と雌継
手4の内底部10との押圧し合っている部分にかかる押
圧力F2の方が少し大きくなっており、F2>F1の関
係が成立している。
【0043】次に、図10(B)に示すように雄雌継手
3,4の接続部分に曲げ力が作用した場合には、この曲
げ力によって圧縮を受ける側の押圧力F1′は引っ張り
を受ける側の押圧力F1”より大きくなり、F1′>F
1>F1”の関係が成立する。同様に雌継手4の底部に
おいてもF2′>F2>F2”の関係が成立する。これ
等のいずれの継手の先端面にも、継手を締結した後の継
手内部に残留する力があり、曲げ力がこれ等に作用して
も、押圧力がマイナスになることはないと考えられる。
【0044】本発明に於いては、図1(A),(B)及
び前記説明で明らかなように、雌継手4の内底部10に
当接される雄継手3の先端部の肉厚が他の部分の肉厚よ
り小さく形成されており、この先端部と内底部10との
接する面積よりも雌継手4の先端部が雄継手3の外径基
部6に接する面積の方が大きくなるように構成されてい
るが、その理由は次の通りである。
【0045】即ち、ネジの効用として捻じる力より大き
な軸力を発生させることができるという点である。杭の
ように一度の接合によって、接合部は再び緩めることの
ない場合には、締結時には座面の圧力を1500kg/
cm2 以上に上げても問題はない。雌継手4の内底部1
0と雄継手3の先端部との押圧面においては、座面の圧
力を組成領域に設定した。つまり、雄継手3の先端部を
図1で示したようにテーパー状に加工し、雄継手3の先
端部の圧力が降伏点以上に容易に上がるような面積と形
状に設定した。このような形状であるため、雄継手3の
先端部は、接合力によって加工され変形する。
【0046】ここでは、雌継手4の側の形状を平面と
し、雄継手3の側の形状を操作することによって初期の
目的を達したが、雄継手3の側において、雌雄いずれの
一端か、あるいはその双方に変形しやすい形状を考慮す
れば、初期の目的を達成することが可能である。この発
明においては、雄継手3側の先端面に4500kg/c
2 の応力が発生するように面積と形状を設定した。
【0047】雄雌継手,3,4の双方の接合面で押圧し
合う構造は、変形を伴う接合面をどちらに設けるかとい
うことにより2種類の方法が考えられるが、雌継手4の
先端部と雄継手3の外径基部6の押圧する面を変形面に
設定すると、前述したように杭本体1,2の垂直性を確
保することが不可能になるため適さない。
【0048】上記実施例に於いては、杭本体1,2用の
鋼管としては、外径114.3mm〜267.4mm、
肉厚4.5mm〜9.3mmの引っ張り強さ400N/
mm 2 を使用し、雄雌継手3,4用の鋼管としては、同
様の外径を持ち、引っ張り強さ540N/mm2 の材料
を使用した。また、ネジ山の高さは、かみ合い高さが
3,071mm、ピッチ6mmの形状に加工して実施し
た。
【0049】雄雌継手3,4に於いて、雌継手4の先端
部と雄継手3の外径基部6との当接面は、杭本体1,2
の垂直性を確保するためと、接合の確実性を守るため
に、図1に示す如く、雄雌継手3,4の長手方向に対し
て直角の面を有するか、或いは図9(A),(B),
(C)で説明するように、最大2分の1のテーパー状の
座面が必要である。また、この座面の面積は、杭本体
1,2の肉厚と等しいかそれ以上の肉厚を有しているこ
とが必要である。
【0050】図9(A),(B),(C)に示す構造
は、雌継手4の先端部と雄継手3の外径基部6とが接す
る座面を前述のように長手方向に対して直角となる面に
した場合に、充分な面積の確保が出来ないために、最大
2分の1の範囲で雌継手4の先端部の端面と雄継手3の
外径基部6とにテーパー面を設けて、充分な面積を有す
る座面を確保した構造である。図9(B)は同図(A)
の雌継手4の先端部と雄継手3の外径基部6との接する
テーパー部分を拡大した図であり、図9(C)はその部
分のテーパーの基準について表示説明したものである。
【0051】また、雄雌継手3,4のネジ部7,8の形
状は、三角ネジが加工性、コスト、性能を比較した場
合、もっとも優れている。つまり、曲げを受ける継手の
ネジであり、特殊な工具を必要とせず、量産が可能なネ
ジ形状を選ぶと三角ネジが残ることになる。台形ネジ
や、角ネジ、のこ刃ネジ等もそれぞれの特徴があり、特
出した面を有しているが、総合評価をすると三角ネジが
最も適している。
【0052】更に、雄雌継手3,4のネジ部7,8のク
リアランスは、環境の悪い施工現場においては、0.1
mm未満では接合に支障を来たし、かえって時間を必要
とする。1mmを越えると前述したように雌継手4、雄
継手3の弾性変形により山越えを発生して継手の機能を
失う。加工性、作業性を中心におくとクリアランスは、
0.5mm付近が最もよい。クリアランスと曲げ強度の
関係を実験により確かめたが、適切な接合トルクを与え
るかぎり、0.1mm〜1.0mmの間では、強度に優
位性は発見できなかった。
【0053】本発明の実施例に於いては、外径側接触面
の面積を内径側接触面の面積より大きくすることによ
り、内径接触面での応力を高め、雄継手3の先端部が変
形を起こしやすい形状にすることにより内径側、外径側
の双方で押圧できるようにした。また、杭本体1,2を
打設する地盤の状況によっては、雄雌継手3,4の間に
図示さざる逆転緩止機構を介在させる必要もあるが、そ
の逆転緩止機構については省略する。
【0054】
【発明の効果】本発明に係る杭継手の接続方法及び接続
構造は、前述のような構成と作用とを有しているので、
次のような多大な効果を有している。
【0055】(1)ネジ山の荷重負担が均等になるた
め、継手長を継手外径の1/2.5〜1/6とすること
ができ、非常にコンパクトな継手を供給することができ
る。(2)初期応力が作用しているため、耐曲げ性と耐
圧縮性に優れる継手とすることができる。(3)雌雄の
ネジのバックラッシュが無くなり、雌雄が一体化され継
手の効率を改善することが出来る。
【0056】(4)雄ねじ基部に応力集中が発生せず継
手内に均等に分布するため、切り欠き効果による強度低
下を発生させることがない。(5)また、外径接触面で
の押圧は、曲げ剛性を高め、内径側での押圧は継手の一
体化による剛性を高め、双方が剛性の補完を行うことに
より、より強度の高い継手を開発することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(A),(B)は本発明に係る杭継手の接
続構造の構成を示す断面説明図である。
【図2】図2(A),(B),(C),(D),(E)
は夫々杭継手の所定部分の変形を示す簡略図である。
【図3】杭継手の上下方向に荷重が作用した場合の雌継
手の先端部に於ける曲げモーメントと応力分布との状態
を示す説明図である。
【図4】雄継手の先端部に於ける曲げモーメントと応力
分布との状態を示す説明図である。
【図5】雄雌継手で接続された杭の曲げ試験の方法を示
す正面図である。
【図6】杭継手の材料変化による強度変化を比較する説
明図である。
【図7】杭継手を強度の高い材料で構成した場合の曲げ
試験の比較説明図である。
【図8】雌継手と雄継手とが1個所のみで押圧し合う場
合と、2個所で押圧し合う場合との比較説明図である。
【図9】図9(A),(B),(C)は雌継手と雄継手
との接する個所をテーパー面とした場合の説明図であ
る。
【図10】図10(A),(B)は夫々雌継手と雄継手
とが2個所で押圧し合う状態と、これ等の継手に曲げ力
が作用した状態の説明図である。
【符号の説明】
1,2 杭本体 3 雄継手 4 雌継手 5 段部 6 外径基部 7 ネジ部 8 段部 9 ネジ部 10 内底部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 前 嶋 匡 千葉県船橋市上山町1ー157ー1 (72)発明者 井 口 武 士 茨城県下館市玉戸1064ー16 平岡金属工業 株式会社内 (72)発明者 池 田 剛 茨城県下館市玉戸1064ー16 平岡金属工業 株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】筒状或いは軸状の杭をネジ式雄雌継手を用
    いて接続する方法に於いて、雄継手と雌継手とを相互に
    締結する際に該雌継手の先端部と雄継手の外径基部とを
    押圧し合わせ、かつ前記雄継手の先端部と雌継手の内底
    部とも押圧し合わせて接続することを特徴とした杭継手
    の接続方法。
  2. 【請求項2】筒状或いは軸状の杭をネジ式雄雌継手を用
    いて接続する構造に於いて、雄継手と雌継手とを相互に
    締結した状態で雌継手の先端部と雄継手の外径基部とが
    押圧し合い、かつ前記雄継手の先端部と雌継手の内底部
    とも押圧し合わされて接続構成されていることを特徴と
    した杭継手の接続構造。
  3. 【請求項3】前記雌継手の先端部と雄継手の外径基部と
    の接する個所の面積と、雄継手の先端部と雌継手の内底
    部との接する個所の面積とにおいて、前記雌継手の先端
    部と雄継手の外径基部の接する面積より雄継手の先端部
    と雌継手の内底部の接する面積が小さく、かつ雄継手の
    先端部と雌継手の内底部が接する個所が継手材料の少な
    くとも降伏点以上の応力を発生する面積と形状とを備え
    ていることを特徴とする請求項2の杭継手の接続構造。
  4. 【請求項4】前記請求項2及び請求項3の杭継手の接続
    構造に於いて、(イ)雌継手の先端部と雄継手の外径基
    部が接する個所は、杭本体の肉厚と等しいかそれ以上の
    肉厚を有し、かつ該杭本体の長手方向に対して直角な平
    面または最大2分1のテーパーを有しており、(ロ)雄
    継手と雌継手に設けられるネジ部はクリアランスが0.
    1mm〜1.0mm以内であり(ハ)雌継手の内底部に
    は雄継手の先端部を支える杭本体の長手方向に対して直
    角な平面または該雄継手の先端部の端面と同一の形状を
    持った支圧部を有し、(ニ)雄雌の継手の外径寸法は杭
    本体の外径寸法と同一であることを特徴とした請求項2
    及び請求項3のいずれかの杭継手の接続構造。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003105755A (ja) * 2001-10-02 2003-04-09 Asahi Kasei Corp 異径鋼管杭間の継手構造
KR20140124628A (ko) * 2013-04-17 2014-10-27 이엑스티 주식회사 파일 조립체
JP2020060028A (ja) * 2018-10-10 2020-04-16 Jfeスチール株式会社 鋼管の接合継手

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