JP6501231B2 - アンカー鉄筋接続金具 - Google Patents

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Description

本発明は、地盤に打設したプレキャストコンクリート杭、鋼管杭等の既製杭の杭頭部と基礎コンクリートとを、アンカーボルトや異形鉄筋などのアンカー鉄筋を介して剛接合する場合に、複数本のアンカー鉄筋を杭頭部に立設状態で固定するためのアンカー鉄筋接続金具に関するものである。
杭と基礎コンクリートの接合方式は、杭頭剛結合タイプと杭頭ヒンジ結合タイプに大別される。プレキャストコンクリート杭の杭頭剛結合において、地震時に杭頭部が曲げモーメントを受けた時の基礎コンクリートとの接合部における基礎コンクリートの圧縮力負担部と、アンカー鉄筋による引張力との力の釣り合い関係の仮定を模式的に図9(a),(b)に示す。図において、網掛けで表示した部分は圧縮力負担部60であり、黒く塗りつぶした丸は引張力を負担するアンカー鉄筋70を表示している。なお、これらの部位は他の図でも同様に表示している。力の釣り合いにより、アンカー鉄筋の引張力T=コンクリートの圧縮力Cの関係となる。ところが、プレキャストコンクリート杭10では、杭体11が基礎コンクリート50に使用されるコンクリート強度の2〜3倍以上の強度を有していることと、杭体11の先端に端板12(鋼製プレート)が一体化されていることにより、杭頭部の面は高い剛状態となり、杭頭部の端面は曲げ変形を許容しない構造になっている。このことから、図9(b)で示した仮定のようにはならず、図10に示すように地震等により曲げモーメントを受けたときに杭頭部の端部が回転の中心点となってしまう。この時、基礎コンクリート50側のコンクリートでは圧縮力の負担面積が極端に小さくなり、集中的に圧縮力を負担する結果、基礎コンクリート50に局部的な圧縮破壊が発生する。このことにより、T=Cの仮定が成立しなくなり、杭頭部と基礎コンクリートの応力伝達がスムーズにいかなくなるという問題がある。
一方、アンカー鉄筋が鋼管の外周面に接合された鋼管杭や鋼管コンクリート杭における圧縮力負担部と、地震時に想定される実際の回転状況は、図11,12のように示すことができる。鋼管杭と鋼管コンクリート杭は、いずれも外周部が鋼管であることから、剛性の高い鋼管端部での回転となる。図示の鋼管コンクリート杭80では、基礎コンクリート50側の圧縮力の負担面積は、鋼管81の断面積の一部に対応する僅かなコンクリート面積となることから、基礎コンクリート50は局部的な圧壊破壊を引き起こし、接合部での杭頭部と基礎コンクリートの応力伝達がスムーズに行かなくなるという点では、上述したプレキャストコンクリート杭10と大差はない。
さらに、杭頭結合工事における施工面において、プレキャストコンクリート杭だけで杭頭部を基礎コンクリートに定着させるには、杭径の2倍以上の長さを基礎コンクリート中に埋め込ませる必要がある、この場合、基礎コンクリート側の鉄筋が障害となることから、建築用の基礎梁(基礎コンクリート)では採用されない。このため、プレキャストコンクリート杭では、杭頭部(頂部)にアンカー鉄筋を接続して杭の定着を図るのが一般的となっている。図13に示すように、プレキャストコンクリート杭10において、杭体11の先端の鋼製端板12にアンカー鉄筋30を接合させる場合、予め杭の頂部が正確な高さ位置に打設されていることが前提条件である。杭工事においては、固い地盤まで杭を確実に到達させることが重要であるが、現実的には地中の硬い地盤までの距離と杭の長さを事前に正確に設定することはなかなか難しい。固い地盤が想定よりも浅い場合には、必要以上に杭頭部が露出することになるが、プレキャストコンクリート杭を切断すると端板も除去されることになるから、アンカー鉄筋30の取り付けが不可能となる。また、アンカー鉄筋30による基礎コンクリートへの十分な定着耐力を確保するには、杭自身の耐力とその耐力に対応するアンカー鉄筋30の必要な数量を設置する必要がある。しかしながら、杭頭部に接合できる場所は限られ、杭の耐力に対応したアンカー鉄筋30が設置できない場合も生じるなど、施工性に改善の余地がある。
これに対して、鋼管杭や鋼管コンクリート杭の場合、杭の先端を地中の固い地盤まで埋込むことはプレキャストコンクリート杭と同様であるが、杭の長さをあらかじめ所定の長さ以上に設定しておき、杭の打設後に余長分を切断できる利点がある。この種の既製杭80では、図14に示すように鋼管81の外周部にアンカー鉄筋30を直に溶接するのが一般的である。この溶接は現場作業であり、雨水などによるぬかるみ状態の土の上での溶接作業となる場合もある。特に、溶接作業が行われる杭頭部は、ぬかるみ状態の土と接する箇所でもある。このような場所での作業では、事前に十分な乾燥を行っていても確実な乾燥状態が得られ難いので、水分が溶接された金属中に溶接欠陥として現れやすい。しかも溶接作業者にとって、ぬかるみ状態は足元が悪く、中腰で下向きの作業となるために過酷な作業環境となり、施工性の改善が望まれている。
上記のような従来技術が抱える施工性の問題を改善するため、外周面に複数のカプラを溶接した半円状のプレート(円弧状プレート)の一対を用い、これを既製杭の頭部側面に円環状に配置してボルト・ナット等で緊締した後、各カプラに対してネジ節鉄筋あるいは端部をネジ加工した異形鉄筋を螺着する技術が提案されている(特許文献1)。この場合でも、既製杭にアンカー鉄筋を接続した場合の曲げモーメントに対する抵抗は、既製杭の外周端部からアンカー鉄筋までの距離と、アンカー鉄筋の抵抗力との積(モーメント)になるので、設計上では、アンカー鉄筋をできるだけ既製杭の外周面から径方向外方の離れた位置に設置するのが耐力的に有利である。この引張抵抗力の点においても、既製杭の表面からアンカー鉄筋が間隔をおいて立設される特許文献1の方法は、図14に示した方法に比べて耐力的に有利である。
ところが、特許文献1の方法では既製杭の外周端部からアンカー鉄筋までの距離が半円状プレートの板厚によって決まるため、距離を離すには厚い材料を使用することになり、経済的でなくなる。しかも、このような場合には、一対の半円状プレートをボルトとナットで緊締しても、半円状プレートが変形しにくく、杭自体にも公差があって必ずしも真円でないことから、既製杭に対して密着状態が得られない。このため、アンカー鉄筋に引張力が負荷されたときに半円状プレートと既製杭の間で滑りが生じやすく、却って引張抵抗力の低下につながるという問題点があった。
特許第5008532号公報
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みなされたもので、既製杭と基礎コンクリートとの間の接合耐力と接合剛性を高めるとともに、既製杭に対するアンカー鉄筋の取付作業を向上させることができ、また高止まりによって切断された杭頭部への適用が可能で経済性も向上したアンカー鉄筋接続金具の提供をその目的とするものである。
上記従来技術の問題点を解決する手段として、本願のアンカー鉄筋接続金具では、複数の湾曲プレートがネジ部材を介して円筒状に連結一体化され、設置後の既製杭の杭頭部外周面に対してネジ部材の締付けにより固定可能な円筒状リング体と、この円筒状リング体の周囲に沿ってそれぞれ一対の挟持プレートを介してほぼ等角度間隔で固着され、基礎コンクリート内に埋設される複数のアンカー鉄筋の下端側を、前記既製杭の外周面よりも離れた位置で鉛直方向上方に向けて支持する複数のスリーブからなる組合せを基本構成として採用する点に特徴がある。
上記構成によれば、杭頭部に作用する曲げモーメントに対して、引張力を受ける一端側のアンカー鉄筋と、このアンカー鉄筋の対向位置にあって圧縮力を受ける他端側のアンカー鉄筋付近の部位との間の距離、すなわち引張力を受ける部位と圧縮力を受ける部位との間隔が、一対の挟持プレートを杭頭部外周面との間に介在させた分だけ広がることになる。このため、アンカー鉄筋を端板の上面に立設するプレキャストコンクリート杭や杭体外周面に直に溶接する鋼管杭などの従来技術に比較して、アンカー鉄筋の引張力が低減されるので、その分だけサイズの小さいアンカー鉄筋の選択が可能となり、コストダウンが図れる。
さらに、基礎コンクリートの打設時において、スリーブを支持する一対の挟持プレートで囲まれた部分(隙間)、およびスリーブの周辺にコンクリートが確実に充填されることにより、局所的な圧縮力の負担による基礎コンクリートの圧縮破壊を防ぐことができる。
また、一対の挟持プレートが円筒状リング体の外周面の所々に接合されることにより、それら挟持プレートのリブ効果で円筒状リング体の剛性が高まることから、個々の湾曲プレートの板厚を薄くすることができ、コストダウンにつながる。
上記構成において、スリーブの上部に、アンカー鉄筋を挿通した状態でナット等で固定される圧縮力負担プレートを設けることができる。この場合には、圧縮力負担プレートがアンカー鉄筋の引張力も負担することにより、アンカー鉄筋の引張力の負担がさらに低減されることから、より経済的なアンカー鉄筋を適用することができる。
さらに、上記構成において、スリーブと既製杭外周面との間の距離は、使用するアンカー鉄筋の外径の2倍以上とするのが好適である。この場合には、引張り力を受ける部位と圧縮力を受ける部位との間隔が広がり、アンカー鉄筋の引張力を低減する上記効果がより効果的に発揮される。
また、上記一対の挟持プレートは、スリーブから円筒状リング体側に向けて両プレート間の間隔を広げた状態で固着してもよい。この場合には、基礎コンクリートの打設時に、それら挟持プレートで囲まれた部分の空間にコンクリートが充填されやすくなり、局所的な圧縮力の負担による基礎コンクリートの圧縮破壊をより効果的に防ぐことができる。
なお、上記構成において、円筒状リング体は、2分割された一対の半円状の湾曲プレートとすることができる。この場合には、ボルト・ナット等のネジ部材による連結箇所が少ないので、杭頭部への取付けに要する作業時間が短縮し、施工性の向上につながる。さらに、連結箇所が少ない分だけスリーブの設置スペースに余裕ができるので、スリーブの個数を増やして多数本のアンカー鉄筋に対応するのに好都合である。
本発明のアンカー鉄筋接続金具では、上記構成を採用したことにより、次のような効果が得られる。
(1)杭頭部に作用する曲げモーメントに対して、引張り力を受ける部位と圧縮力を受ける部位との距離が、一対の挟持プレートを介在させた分だけ広がることにより、従来の接続構造に比べてアンカー鉄筋の引張り力が低減され、より経済的なアンカー鉄筋の選択が可能となって、コストダウンが図れる。さらに、スリーブの上部に、アンカー鉄筋を挿通した状態でナット等により固定される圧縮力負担プレートを設けた場合には、アンカー鉄筋の引張力がさらに低減されることから、より経済的なアンカー鉄筋を適用することができる。
(2)基礎コンクリートの打設時において、スリーブを支持する一対の挟持プレート間の隙間、およびスリーブ周辺にコンクリートが確実に充填されることにより、局所的な圧縮力の負担による基礎コンクリートの圧縮破壊を防ぐことができる。
(3)一対の挟持プレートが円筒状リング体の外周面の所々に接合される構造であるから、それらプレートのリブ効果で円筒状リング体の剛性が高まるので、個々の湾曲プレートの板厚を薄くすることによりコストダウンにつながる。
(4)ボルト・ナットなどのネジ部材で円筒状リング体を杭頭部に簡単に取り付けることができるとともに、スリーブを利用してアンカー鉄筋を簡便に取り付けることができるので、杭頭部に対するアンカー鉄筋の接続作業の時間短縮が図れる。
(5)既製杭の設置後に、杭頭部の上面側または側面側から所望の高さ位置に取付けが可能であるので、既製杭の高止まりによって杭頭部を切断した場合でも支障なく適用することができる。
(a)〜(c)は、それぞれ本発明の第1実施形態に係るアンカー鉄筋接続金具の正面図、側面図および平面図である。 図1のアンカー鉄筋接続金具の使用方法を示す説明図である。 図1のアンカー鉄筋接続金具の施工状態を示す断面図である。 (a)および(b)は、それぞれ本発明のアンカー鉄筋接続金具を取り付けた杭頭部に対して、曲げモーメントが作用した時の基礎コンクリートの圧縮力負担部とアンカー鉄筋による引張力との力の釣り合い関係の仮定を模式的に示した説明図である。 本発明の第2実施形態に係るアンカー鉄筋接続金具の使用方法を示す説明図である。 (a)および(b)は、図5に示した第2実施形態で使用する圧縮力負担プレートの平面図と側面図である。 (a)および(b)は、それぞれ図5に示した第2実施形態のアンカー鉄筋接続金具を取り付けた杭頭部に対して、曲げモーメントが作用した時の基礎コンクリートの圧縮力負担部とアンカー鉄筋による引張力との力の釣り合い関係の仮定を模式的に示した説明図である。 図5の第2実施形態に係るアンカー鉄筋接続金具の施工状態を示す断面図である。 (a)および(b)は、それぞれ従来のプレキャストコンクリート杭の端板にアンカー鉄筋を接続した杭頭部に対して、曲げモーメントが作用した時の圧縮力負担部とアンカー鉄筋による引張力との力の釣り合い関係の仮定を模式的に示した説明図である。 図9のプレキャストコンクリート杭の地震時に想定される実際の回転状況を示す説明図である。 従来の鋼管杭の外周面にアンカー鉄筋を溶接した杭頭部に対して、曲げモーメントが作用した時のアンカー鉄筋の引張力と基礎コンクリートの圧縮力負担部を模式的に示した説明図である。 図11の鋼管杭の地震時に想定される実際の回転状況を示す説明図である。 従来のプレキャストコンクリート杭におけるアンカー鉄筋の接続方法を示す斜視図である。 従来の鋼管杭におけるアンカー鉄筋の接続方法を示す斜視図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明するが、もちろん例示した実施形態に限定されるものではなく、各構成部材の材質、形状、数量、位置の変更など、本発明の技術思想内での種々の変更はもちろん可能である。図1の(a)〜(c)は、それぞれ本発明の第1実施形態に係るアンカー鉄筋接続金具の正面図、側面図および平面図である。図2はアンカー鉄筋接続金具の使用方法、図3は同じく施工状態を示している。
図1(a)〜(c)に示すように、本発明のアンカー鉄筋接続金具1は、円筒状リング体2の周囲に複数のスリーブ3を設けた構成である。円筒状リング体2は、一対の半円状の湾曲プレート21からなり、各湾曲プレート21の両端側がそれぞれ径方向外方に向けて屈曲されている。それら屈曲部22には、三角形状の補強プレート23が溶接されるとともに、それぞれ2個のボルト挿通孔24(図2参照)が上下に形成され、互いに対向した状態で挿通されるネジ部材としてのボルト25とナット26により、一対の半円状の湾曲プレート21を円筒状に連結一体化することができる。なお、湾曲プレート21は、半円状の2分割に限らず、適用する既製杭の杭径や施工性などを考慮して3分割以上にすることはもちろん可能である。
さらに、湾曲プレート21の外周面の所定位置には、6個のスリーブ3がそれぞれ一対の挟持プレート27を介して円筒状リング体2の軸心と平行に離れた状態で固着されている。この場合、一対の挟持プレート27は、図1(c)に明示されるように、湾曲プレート21側に向けて広がった状態、すなわち平面視でV字状となるように溶接される。なお、6個のスリーブ3は、後述する既製杭の杭頭部に取り付けた状態において、ほぼ等角度間隔となるような位置に固着されている。また、一対の湾曲プレート21は、同じく杭頭部に取り付けた状態において、対向する屈曲部22間に多少の隙間を残してほぼ真円状となるように曲率が設定されている。これにより、一対の湾曲プレート21の杭頭部に対する密着性が高まり、ボルト25とナット26で円筒状リング体2を縮径方向に緊締して杭頭部に強固に取り付けることができる。ここで用いるボルト25としては、高力ボルトが好適である。なお、一つの湾曲プレート21に対し、最低2個のスリーブ3を取り付ける。そして、この湾曲プレート21に取り付けられたすべてのスリーブ3は、円筒状リング体2が杭に固定された状態で、杭の軸芯に対して対称配置であると同時に、軸芯からの距離がほぼ同一となるように設定することが特に重要である。
次に、アンカー鉄筋接続金具1の使用方法について説明する。図2に示すように、一対の湾曲プレート21を対向させた状態で屈曲部22のボルト挿通孔24にボルト25を挿通し、これにナット26を螺合して湾曲プレート21同士を緩い状態で仮に連結する。そして、既製杭10(プレキャストコンクリート杭)の頭部に上方から挿入し、所定の高さ位置でボルト25とナット26で締め付ける。最後に、アンカー鉄筋30をそれぞれのスリーブ3に挿通し、上下のナット31,32で固定する。これにより複数本のアンカー鉄筋30が、既製杭10の頭部に対して、その外周面よりも離れた位置で鉛直方向上方に向けて支持することができる。ここで使用するアンカー鉄筋30は、棒鋼の一方の端部に定着板33が結合されるとともに、他端側には雄ネジ部34が形成されたものである。なお、アンカー鉄筋30としてネジ節鉄筋などの使用も可能であり、またアンカー鉄筋接続金具1を既製杭10に取り付ける場合、一対の湾曲プレート21を分離した状態で既製杭10に対して側面から宛がい、ボルト25とナット26で締め付けるようにしてもよい。
図3は、アンカー鉄筋接続金具1の施工状態を示す断面図である。地盤40の表面から突出している既製杭10の頭部に対して、本発明のアンカー鉄筋接続金具1を上記手順で固定した後、各スリーブ3にそれぞれアンカー鉄筋30を取り付け、基礎コンクリート50を打設する。これにより、既製杭10と基礎コンクリート50とがアンカー鉄筋30を介して一体化される。図において、左右に位置するアンカー鉄筋30は、それぞれ一対の挟持プレート27により既製杭10の外周面から距離Lだけ離れされている。この距離Lは、アンカー鉄筋30の外径dの2倍以上が好ましい。すなわち、杭頭部に作用する曲げモーメントに対して、引張り力を受ける一端側のアンカー鉄筋30と、圧縮力を受ける他端側のアンカー鉄筋30付近の部位との間の距離(図4(b)参照)、すなわち引張り力を受ける部位と圧縮力を受ける部位との間隔が、一対の挟持プレート27を介在させた分だけ広がることになる。このため、アンカー鉄筋30の引張力が低減されることになり、より経済的なアンカー鉄筋の選択が可能となって、杭頭接合工事のコストダウンにつながる。また、基礎コンクリート50の打設時において、スリーブ3を支持する一対の挟持プレート27で囲まれた空間28(図1(c)参照)やスリーブ3の周囲にコンクリートが確実に充填されることにより、局所的な圧縮力の負担による基礎コンクリート50の圧縮破壊を防ぐことができる。
さらに、本発明のアンカー鉄筋接続金具1を用いた杭頭接合構造における耐力メカニズムについて、図4(a)、(b)で説明する。(a)は本発明のアンカー鉄筋接続金具を取り付けた杭頭部に曲げモーメントが作用した時の圧縮力負担部の位置、(b)は応力度分布をそれぞれ模式的に示した説明図である。なお、図ではアンカー鉄筋30が8本の場合を示している。本発明のアンカー鉄筋接続金具1を使用すれば、基礎コンクリート50の打設時に、コンクリートが一対の挟持プレート27の間、およびアンカー鉄筋30を支持するスリーブ3の周辺に確実に充填されることで、圧縮力負担部60の面積(図4(a)参照)を仮定の応力状態とほぼ同様な圧縮面積で確保することが可能となり、局所的な圧縮力の負担による基礎コンクリート50の圧縮破壊を防ぐことができる。また、引張力Tと圧縮力Cがそれぞれ作用する位置の間の距離Jは、図5(b)および図8に示す従来技術と比較して長く取れることから、アンカー鉄筋30の引張力の低減が可能となり、より経済的なアンカーの選択ができる。
次に、図5〜8に基づき本発明の第2実施形態に係るアンカー鉄筋接続金具について説明する。なお、第1実施形態と同一部分については同一符号で示し、重複する説明は省略する。図5に示すように、この実施形態では、アンカー鉄筋30の下端側を圧縮力負担プレート29に挿通し、圧縮力負担プレート29を上下のナット31,32でスリーブ3の上部に固定した点に特徴がある。ここで使用する圧縮力負担プレート29は、図6に示すように、中央に挿通孔29aが形成された円板状からなる。斯かる第2実施形態によれば、図7に示すように、圧縮力を負担すると同時に、アンカー鉄筋30の引張力も負担するので、アンカー鉄筋30の引張力負担が低減し、より細径のものを使用することができ、経済的である。
本発明によるアンカー鉄筋接続金具1は、各種の既製の基礎杭に適用することができる。具体的に例示すると、PHC杭、PRC杭、外殻鋼管付きコンクリート杭、鋼管杭などである。本発明によるアンカー鉄筋接続金具1では、杭頭部の任意の高さ位置に嵌合し、ネジ部材で円筒状リング体2を縮径する方向に外側から締め付け、既製杭に対して圧接状態で固定するものである。これにより、杭頭部の加工が不要になると同時に、熟練者でなくとも簡単かつ確実に装着することができるから、アンカー鉄筋の接続作業が大幅に合理化される。特に、既製杭の設置作業において、高止まりによって杭頭部を切断した場合でも、アンカー鉄筋接続金具1をそのまま適用できる利点がある。
本発明のアンカー鉄筋接続金具は、既製杭の杭頭部と基礎コンクリートとを高い定着耐力で簡便に剛結合することができ、しかもコストダウンが可能であるので、杭頭補強手段としてのさらなる展開が期待される。
1:アンカー鉄筋接続金具、2:円筒状リング体、3:スリーブ、10:プレキャストコンクリート杭、21:湾曲プレート、22:屈曲部、23:補強プレート、25:ボルト、26:ナット、27:挟持プレート、29:圧縮力負担プレート、30:アンカー鉄筋、40:地盤、50:基礎コンクリート、60:圧縮力負担部、80:鋼管コンクリート杭

Claims (5)

  1. 複数の湾曲プレートがネジ部材を介して円筒状に連結一体化され、設置後の既製杭の杭頭部外周面に対して前記ネジ部材の締付けにより固定可能な円筒状リング体と、この円筒状リング体の周囲に沿ってそれぞれ一対の挟持プレートを介してほぼ等角度間隔で固着され、基礎コンクリート内に埋設される複数のアンカー鉄筋の下端側を、前記既製杭の外周面よりも離れた位置で鉛直方向上方に向けて支持する複数のスリーブを備えることを特徴とするアンカー鉄筋接続金具。
  2. 前記スリーブの上部に、前記アンカー鉄筋を挿通した状態で固定される圧縮力負担プレートを有することを特徴とする請求項1に記載のアンカー鉄筋接続金具。
  3. 前記スリーブの前記既製杭に対する離間距離が、前記アンカー鉄筋の外径の2倍以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のアンカー鉄筋接続金具。
  4. 前記一対の挟持プレートが、前記円筒状リング体に向けて間隔を広げた状態で固着されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のアンカー鉄筋接続金具。
  5. 前記円筒状リング体が、一対の半円状の湾曲プレートからなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のアンカー鉄筋接続金具。
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