JPH1084125A - 光電変換装置およびその製造方法 - Google Patents

光電変換装置およびその製造方法

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JPH1084125A
JPH1084125A JP9191776A JP19177697A JPH1084125A JP H1084125 A JPH1084125 A JP H1084125A JP 9191776 A JP9191776 A JP 9191776A JP 19177697 A JP19177697 A JP 19177697A JP H1084125 A JPH1084125 A JP H1084125A
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semiconductor
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Shunpei Yamazaki
舜平 山崎
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 製造コストが低く、かつ高い変換効率の太陽
電池を製造する。 【解決手段】 太陽電池級の半導体基板101内に残留
する欠陥等に対して、意図的にNi等の触媒元素を結合
させ、欠陥のエネルギー状態を安定状態とする。この状
態でハロゲン元素を含む雰囲気において加熱処理を行
い、前記触媒元素を酸化膜104中に取り込むなどして
ゲッタリングする。ゲッタリングにより触媒元素が脱離
することで切り離された結合は、加熱処理により再結合
し、結晶性が大幅に向上される。よって半導体級と同程
度の結晶性を有するの半導体基板105を得ることがで
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体基板を用い
た光電変換装置に関するものであり、具体的には太陽電
池に関する。太陽電池の構造の形態としては、周知の単
結晶ウェハーや多結晶ウェハー等のバルク半導体を用い
た様々なタイプの太陽電池に応用することができる。
【0002】更に、本発明は、絶縁性または導電性の基
板上に形成した薄膜半導体を光電変換層に利用した光電
変換装置に関するものであり、薄膜半導体を用いた太陽
電池に応用することができる。
【0003】本発明は、PN接合を基本とする接合型太
陽電池、ショットキー障壁やMIS構造等による非接合
型太陽電池、多層接合型太陽電池、ヘテロ接合型太陽電
池などに応用することが可能である。
【0004】
【従来の技術】太陽電池は、各種半導体材料や有機化合
物材料を用いて作製が可能であるが、工業的には半導体
であるシリコン(珪素)が主に用いられている。シリコ
ンを用いた太陽電池は、大別して単結晶シリコンや多結
晶シリコン等のウェハ−を用いたバルク型太陽電池と、
基板上にシリコン薄膜を形成した薄膜太陽電池に分類す
ることができる。
【0005】また、太陽電池の普及には、製造コストの
削減が必要とされているが、特に薄膜太陽電池はバルク
型太陽電池と比較して使用する原材料が少なくて済むた
め、低コスト化の効果が期待されている。
【0006】現在、薄膜太陽電池の分野では、非晶質シ
リコン太陽電池が実用化されているが、単結晶シリコン
や多結晶シリコンを利用した太陽電池と比較して変換効
率が低く、また、光劣化等の問題を有しているため用途
が限定されている。そのために、その他の手段として結
晶性シリコン膜を用いた薄膜太陽電池の開発も行われて
いる。
【0007】この様に、太陽電池は高い変換効率と製造
コストの削減を同時に求められるのであるが、実質的に
両者は相反するものである。例えば、変換効率を追及す
る場合、高級グレード(欠陥等が極めて少ない)の単結
晶ウェハーを用いることで比較的容易に達成できるが、
その分製造コストは高くなる。
【0008】逆に、低級グレード(いわゆる太陽電池級
など)の単結晶ウェハーを用いることでコストを削減す
ることができても、変換効率は多少落ちるのは止むを得
ないのが現状である。特に、多結晶ウェハーや薄膜太陽
電池等は、コスト削減が主体となって開発されたもので
あり、変換効率は二の次となっている。
【0009】また低コストの面で、結晶性シリコン薄膜
を用いた薄膜太陽電池は特に注目を浴びている。しか
し、結晶性シリコン薄膜、例えば多結晶シリコン薄膜は
吸収係数が小さいので、膜厚を稼がないと光電変換素子
としてと十分な機能を果たさないといった問題がある。
【0010】一般的に得られる多結晶シリコン薄膜には
必ず結晶粒界が存在するので、その結晶粒界が禁止帯に
相当するエネルギーを持つ電子状態を形成し、キャリア
のライフタイムを低下させる。即ち、膜厚を稼ぐと電極
に到達する前に再結合してしまい、十分な光電変換率を
確保することが困難である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、近年
新しいエネルギー源として注目される太陽電池の開発は
重要視されており、如何に製造コストを抑えて、変換効
率の高い太陽電池を製造するかが、この先のエネルギー
開発に向けて大きな課題となっている。
【0012】そこで、上述した課題を解決するために、
本発明は。バルク型太陽電池にによく利用される、程度
の低い結晶性シリコン基板(例えば、太陽電池級など)
を、さらに欠陥等の少ない、程度の高い結晶性を有する
結晶性(例えば、半導体級など)に変成させるための技
術を提供することを第1の課題とする。そして、その高
い結晶性を有する結晶性シリコン基板を用いて太陽電池
を製造することによって、高い変換効率と低コストとを
同時に達成するバルク型太陽電池を提供することを目的
とする。
【0013】更に本発明は、薄膜太陽電池において、光
電変換領域となる結晶性シリコン薄膜を、従来よりさら
に欠陥等の少ない、高い結晶性を有する結晶性シリコン
薄膜とするための技術を提供することを第2の課題とす
る。そして、その高い結晶性を有する結晶性シリコンを
用いて太陽電池を製造し、高い変換効率と低コストとを
同時に達成可能な薄膜太陽電池を提供することを目的と
する。
【0014】
【課題を解決するための手段】
(イ)上述した課題を解決するために、本明細書で開示
する発明の構成は、結晶性を有する半導体基板を用いた
光電変換装置において、半導体基板内部の欠陥に前記触
媒元素を偏析させる。しかる後、ハロゲン元素又は15
族元素によって、半導体基板内の触媒元素をゲッタリン
グすると同時に、半導体基板内部の欠陥を除去すること
を主要な構成とする。
【0015】上記半導体基板としては、Si系、GaA
s系、CdS系材料を用いた基板などが挙げられるが、
特に一般的な例として例えば単結晶シリコンウェハーや
多結晶シリコンウェハーを挙げることができる。現在に
おいては、シリコンウェハー上に太陽電池を形成する手
段は様々な手段が公知となっている。
【0016】例えば、一般的には、例えばP型シリコン
ウェハーの表面に浅い逆導電型を有する層(N型層)を
設けてPN接合を形成し、N型層に収集されたキャリア
を電極で引き出して電流を得る構成となっている。ま
た、PN接合に限らず、PIN接合(結晶シリコンの場
合、実質的にはP+ PN接合、P+ - N接合などを指
す)などの接合形態を利用する場合もある。
【0017】(ロ)また、明細書で開示する発明の構成
は、結晶性を有する半導体基板と、前記半導体基板上に
密接して保持された触媒元素を含む層とに対して加熱処
理を加え、前記半導体薄膜内部の欠陥に前記触媒元素を
偏析させる。しかる後、結晶性半導体薄膜内の触媒元素
をハロゲン元素又は15族元素によってゲッタリングす
ると同時に、半導体薄膜内部の欠陥を除去することを主
要な構成とする。
【0018】上記(ロ)において、基板材料としては、
例えばセラミック、ステンレス、金属シリコン、タング
ステン、石英、サファイア等を用いることができる。ま
た、薄膜太陽電池の作製方法については様々な手段が報
告されているが、本発明は太陽電池の構造および作製方
法に関わらず、広い範囲で応用することが可能である。
【0019】例えば、実質的に真性なI型(または弱い
P型)を有する結晶性シリコン薄膜に対し、その主表面
(太陽光が入射する側)近傍にP(リン)等の逆導電型
を付与する不純物(N型層を形成する)を添加してIN
(またはPN)接合を形成する方法がある。また、結晶
性シリコン薄膜上にN型を有する結晶性シリコン層を積
層してIN(またはPN)接合を形成する場合もある。
さらに、場合によってはP型導電層、実質的に真性なI
型導電層、N型導電層を積層したPIN接合を形成して
も良い。
【0020】この様にして形成される太陽電池は、I型
(またはP型)層とN型層との接合部において光励起に
よりキャリアを生成し、N型層に収集されたキャリアを
電極で引き出して電流を得る構成となっている。また、
PN接合、PIN接合に限らず、P+ PN接合などの接
合を利用する場合もある。
【0021】本発明の基本的な構成は、バルク型太陽電
池や、薄膜太陽電池等の光電変換装置において、光電変
換領域の結晶性を改善するため、触媒元素の結晶化を助
長する作用を利用する点にある。
【0022】しかし、この触媒元素は結晶化を助長する
作用を有するものの、光電変換領域に含まれていると電
気的特性、信頼性を損なうおそれがある。そこで本発明
はおいては、光電変換領域から触媒元素を除去するため
に、ハロゲン元素または15族元素のゲッタリング作用
を利用する。
【0023】上記(イ)、(ロ)において、触媒元素と
しては、Fe、Co、Pt、Cu、Au等を用いること
ができ、触媒元素層の形成方法として、プラズマ処理
法、蒸着法、スピンコート法等を利用することができ
る。好ましくは、半導体基板表面または半導体薄膜に損
傷を与えにくい点で蒸着法、スピンコート法が有利であ
る。特に、スピンコート法は触媒元素の添加量の制御性
が良く、本発明者らはこの方法を主に利用している。
【0024】また、上記(イ)、(ロ)において、触媒
元素をゲッタリングする方法には大別して2種類あり、
第1に、ハロゲン元素を含む雰囲気において、加熱処理
する方法が上げられる。ゲッタリングに利用できるハロ
ゲン元素としては、Cl(塩素)、F(フッ素)が特に
好ましい。ハロゲン元素を雰囲気に添加するためのガス
としては、HCl、HF、HBr、Cl2、NF3 、Cl
3 、F2 、Br2 から選ばれた一種または複数種類の
ガスなどが挙げられる。
【0025】第2に、15族に属する元素を含む層を半
導体基板表面又は半導体薄膜表面に形成し、半導体基板
表面又は半導体薄膜表面と15族に属する元素を含む層
に加熱処理する方法が挙げられる。15族に属する元素
を含む層を形成するには、液相法、気相法を用いること
ができる。例えば、15族に属する元素を添加された酸
化珪素膜やシリコン膜を形成すればよい。あるいは、イ
オン注入法やプラズマドーピング法等によって、15族
に属する元素を半導体基板又は半導体薄膜に導入する方
法も用いることができる。
【0026】15族に属する元素としては、N(窒
素)、P(リン)、As(砒素)、Sb(アンチモ
ン)、Bi(ビスマス)が挙げられる。本発明人の研究
によると、顕著なゲッタリング効果を奏するものはPで
あった。
【0027】また15族に属する元素を含む層内の15
族に属する元素の濃度は最低でも、半導体基板または半
導体薄膜内の触媒濃度よりも1桁高くなるようにするこ
とが重要である。例えば触媒が偏析された半導体基板の
触媒濃度が約1×1019/cm3であれば、15族に属する
元素を含む層内の15族元素の濃度は1×1020/cm3
上にする。
【0028】また、ハロゲン元素又は15族に属する元
素用いたゲッタリングにおいて、加熱温度、加熱時間に
よりゲッタリングの効果は変化する。そのため、ゲッタ
リングのための加熱処理の条件は、基板の耐熱性等の材
料の特性、生産性、経済性等を考慮して適宜に設定すれ
ばよい。
【0029】
【発明の実施の形態】
[実施形態1] 本実施形態を図1を用いて説明する。
本発明の実施の形態は、バルク型太陽電池に関するもの
であり、触媒元素としてNiを用いる。またNiを除去
するためにハロゲン元素を用いる例を示す。
【0030】図1(A)において、101は半導体基板
であり、ここでは太陽電池級の単結晶シリコン基板であ
る。なお、図1(A)において、半導体基板101の内
部にバツ印で示したのは単結晶シリコンの内部に僅かに
残留する欠陥である。この欠陥は転移や未結合手などで
あり、1100℃以上のかなり高温の加熱処理を行わないと
除去することは困難である。
【0031】勿論、結晶性を有する他のシリコン基板を
用いることもできる。従って、ここでは一例として単結
晶シリコン基板を用いる例を示すが、例えば多結晶シリ
コン基板に対しても同様に適用することができる。
【0032】次に、この半導体基板101表面に対し
て、Ni(ニッケル)元素を含んだ層の形成を行う。N
i層102の形成は、プラズマ処理法、蒸着法、スピン
コート法等を利用することができる。好ましくは、基板
表面に損傷を与えにくい点で蒸着法、スピンコート法が
有利である。特に、スピンコート法は半導体基板に対し
て極微量にNiを添加する際の制御性が良く、本発明者
らはこの方法を主に利用している。
【0033】こうして図1(A)に示す状態が得られた
ら、450 〜700 ℃の温度範囲で加熱処理を行う。加熱処
理は不活性雰囲気で行うことが好ましい。この加熱処理
によりNi層102よりNi元素が拡散し、バツ印で示
した欠陥において優先的にSi−Ni結合を生成してゆ
く。図1(A)でバツ印で示した欠陥を図1(B)にお
いてマル印で示したのは、Ni元素が欠陥で結合し、実
質的に欠陥が補償されたことを示すためである。
【0034】図1(B)に示した加熱処理により、半導
体基板101の表面にはNi層102と半導体基板10
1とが反応してニッケルシリサイド層103が形成され
る。このニッケルシリサイド層103は高濃度にNi元
素を含むので、次に行うNiゲッタリング処理の前に予
めフッ酸等の薬液でエッチング除去しておくことが望ま
しい。
【0035】次に、半導体基板101内部に拡散させた
Ni元素のゲッタリング除去を行う。ゲッタリングに利
用できる元素としては、Cl、F等のハロゲン元素が好
ましい。ハロゲン元素を導入するためのガスとしては、
HCl、HF、HBr、Cl2、NF3 、F2 、Br2
ら選ばれた一種または複数種類のガスなどが挙げられ
る。
【0036】ここでは、上記ハロゲン元素をその組成に
含むガス、代表的にはHCl、NF3 等のガスを用いた
気相法によりゲッタリング処理を行う例を示す。この処
理は700 〜1100℃の温度範囲で行われ、加熱処理の処理
雰囲気にHCl、NF3 等のガスが含まれた状態で行わ
れる。
【0037】この様にして得られた図1(C)の状態で
は、半導体基板101内に存在していたNi元素は殆ど
ハロゲン元素によってゲッタリング除去され、半導体基
板101表面に形成された酸化膜104内に取り込まれ
るか、ガス状になって揮発してしまう。従って、半導体
基板101の内部には実質的にNi元素は残留せず、例
え残ったとしても、その濃度は1/10〜1/1000にまで低減
される。具体的には、5×1018/cm3 以下、好ましくは
5×1016/cm3 以下とすることができる。なお、本明細
書における元素の濃度は、SIMS(二次イオン質量分
析法)で測定された測定値の最小値として定義される。
【0038】また、半導体基板101は太陽電池級であ
るので最初からある程度の金属元素が含有されている
が、Ni元素の除去と同時にこれらの金属元素もゲッタ
リングされるので半導体基板101内部の不純物は殆ど
除去されると考えられる。
【0039】また、この加熱処理と同時に半導体基板1
01の内部では次に様なことが起こると考えられる。ま
ず、ハロゲン元素によりNi元素がゲッタリングされて
脱離する時、代表的には次の様な反応が生じていると考
えられる。 2Si−Ni+4Cl(またはF ) → Si−Si+2NiCl2
(またはNiF2) 上記反応に式に示すように、Niが脱離することで形成
されたSiの未結合手は互いに隣接しているので、図1
(A)においてバツ印で示した未結合手よりも少ないエ
ネルギーで互いに再結合してSi−Si結合を形成す
る。
【0040】特に、NiCl2 は揮発性が高いため、加熱処
理中に熱酸化膜に取り込まれる以外に大部分は気相中へ
と拡散してしまう。図20には、参考資料としてNiCl2
(塩化ニッケル)の蒸気圧と温度の関係を示す。例え
ば、950 ℃におけるNiCl2 の蒸気圧は約0.8 atm とな
り、大気圧に近い圧力を示す。
【0041】以上の様に、図1(C)に示す工程におい
て、Ni元素のゲッタリングとSi同士の再結合が同時
に行われ、半導体基板101の内部に存在した欠陥を殆
ど無くすことが可能となるのである。従って、図1
(D)に示す様に、酸化膜104をエッチング除去して
得られた半導体基板105は、図1(A)に示す状態の
半導体基板101と比較して欠陥密度が少なく、半導体
級シリコン基板に匹敵するグレードの高いシリコン基板
とすることができる。
【0042】なお、このゲッタリング工程において、半
導体基板101の内部にはハロゲン元素が 1×1016〜 1
×1020/cm3 の濃度で残留する。このハロゲン元素はS
iの未結合手を終端する形で存在していることが多い。
【0043】また、ここではNi元素を触媒元素として
用い、ハロゲン元素によりゲッタリングする例を示した
が、同様の効果を得られる触媒元素としては、Fe、C
o、Pt、Cu、Au等を用いることができる。
【0044】以上の様に、本発明を利用することで太陽
電池級といった低級グレードのシリコン基板を、半導体
級といった高級グレードのシリコン基板に匹敵する結晶
性の高いシリコン基板に変成して利用することが可能と
なる。従って、可能な限り安価な材料を用いて、高い変
換効率を達成する太陽電池を製造することができるので
ある。
【0045】図1(D)に示す様な半導体基板105が
得られたら、表面(図1(D)において上面)に半導体
基板105とは逆の導電型を有する不純物イオンを注入
する。なお、この先、半導体基板105がP型シリコン
基板であると仮定して説明を行うこととする。
【0046】そして、加熱処理により前記不純物イオン
(この場合はP(リン))を拡散させて、半導体基板1
05の表面層に浅いN型層を形成する。このN型層の最
表面層はイオン注入により損傷を受けているので、ウェ
ット法によるエッチング等で除去することが望ましい。
また、その際、N型層の表面に意図的に凹凸を設けるテ
クスチャー構造とすると太陽光を効率良く活用すること
ができる。また、必要に応じてその上に反射防止膜を形
成しても良い。
【0047】最後に、半導体基板105の表面および裏
面に、取り出し電極を形成して太陽電池が完成する。太
陽光が入射する側の取り出し電極は、太陽光を遮蔽しな
い様な形状(例えば、櫛歯形状)とする必要がある。ま
た、取り出し電極として透明電極を用いることもでき
る。
【0048】この様にして製造した太陽電池は、安価な
シリコン基板を利用して形成されているので製造コスト
を抑えることができる。さらに、安価な低級グレードの
シリコン基板でありながら、高級グレードに匹敵する結
晶性を有しているので、高い変換効率を達成するバルク
型太陽電池を製造することが可能である。
【0049】また、本実施の形態では、バルク型太陽電
池の半導体基板の結晶性を改善する方法について述べた
が、薄膜太陽電池の半導体薄膜に同様な処理を施すこと
により、高い変換効率を達成する薄膜太陽電池を製造す
ることが可能である。
【0050】[実施形態2]本実施の形態を図3を用い
て説明する。本実施形態は、バルク型太陽電池に関する
ものであり、触媒元素としてNiを用い、Niを除去す
るために15族元素を用いる例を示す。
【0051】図3(A)において、先ず半導体基板20
1表面に対して触媒元素(例えばNi元素)を保持さ
せ、加熱処理を行うことで半導体基板201内にNi元
素を拡散させる。そして、半導体基板201内部の欠陥
に対して優先的にNi元素を偏析させる。
【0052】次に、半導体基板201表面に、リンを含
有する層202を気相法、液相法によって、形成する。
リンを含有する層202として、リン・シリケーと・ガ
ラス(PSG)や、リンドープ多結晶シリコンを形成す
ればよい。または、イオン注入法によって、半導体基板
201に浅くリンを注入して、N型層を形成することが
できる。
【0053】そして、図3(B)に示すように、半導体
基板201とリンを含有する層202とを加熱処理す
る。触媒元素としてニッケルを用いて、ゲッタリング元
素としてリンを用いた場合、600℃前後の加熱によって
ニッケルとリンが安定な結合状態、Ni3P、Ni
52、Ni2P、Ni32、Ni23、NiP3をとりう
る。
【0054】このため、このため図3(B)に示す加熱
処理によって、半導体基板201中のニッケルがリンを
含有する層202に吸い取られる。
【0055】半導体基板201の粒界では、シリコンの
不対結合とニッケルが結合し、Si−Ni−Siのような結合
状態で示されるようにシリサイド化しているが、ゲッタ
リングのための加熱処理を施すことにより、ニッケルと
シリコンの結合が切れる。そしてNiが脱離することで
形成されたSiの未結合手は互いに隣接しているので、
未結合手よりも少ないエネルギーで互いに再結合してS
i−Si結合を形成する。
【0056】以上の様に、図3(B)に示す工程におい
て、Ni元素のゲッタリングとSi同士の再結合が同時
に行われ、半導体基板201の内部に存在した欠陥を殆
ど無くすことが可能となるのである。よって、図3
(C)に示すリンを含有する層202をエッチング除去
して得られた半導体基板203は、図3(A)に示す状
態の半導体基板201と比較して欠陥密度が少なく、半
導体級シリコン基板に匹敵するグレードの高いシリコン
基板とすることができる。
【0057】なお、ゲッタリングのための加熱処理は電
気炉内において、500℃以上、好ましくは550〜650℃で
加熱し、加熱温度は2時間以上、好ましくは4〜12時
間とする。なお、650℃以上の温度で加熱すると、Ni
をゲッタリングしたリンが再拡散してしまい、所望の効
果がえられなくなってしまう。また加熱処理の雰囲気と
しては、不活性雰囲気、水素雰囲気、酸化性雰囲気で行
えばよい。特に、酸化性雰囲気にハロゲン元素を添加さ
せることにより、ゲッタリングの効果を増大させること
ができる。
【0058】以上に様にして得られた半導体基板203
は、元の状態よりも結晶性が向上したものとなる。例え
ば、低級グレードのシリコン基板を高級グレードのシリ
コン基板と同等の結晶性を有する基板とすることができ
る。
【0059】また、本実施の形態では、バルク型太陽電
池の半導体基板の結晶性を改善する方法について述べた
が、薄膜太陽電池の半導体薄膜に同様な処理を施すこと
により、高い変換効率を達成する薄膜太陽電池を製造す
ることが可能である。
【0060】
【実施例】
〔実施例1〕 本実施例では、半導体基板として低級グ
レード、具体的には太陽電池級と呼ばれる単結晶シリコ
ン基板(シリコンウェハー)上に、太陽電池の如き光電
変換素子を製造する例を示す。
【0061】なお、本発明は太陽電池を構成する主要部
分である半導体の結晶性を向上させる技術であるので、
あらゆる公知となっているあらゆる構造および構成の太
陽電池に適用することができる。従って、本実施例はそ
の中の一例を示すものであり、実施例中の構成や数値に
関してはこれに限るものではない。
【0062】まず、シリコン基板の前処理について図1
を用いて説明する。まず、主表面(図中の上面側)の面
方位が(100)面である太陽電池級シリコン基板10
1を準備する。膜厚は300 μmである。なお、バツ印で
示したのは内部に残留した欠陥である。太陽電池用のシ
リコン基板は内部の欠陥密度や不純物等に関して多少許
容範囲を広くとってあるので、インゴットを作製する段
階での精製が荒く、比較的低コストであるメリットがあ
る。
【0063】また、本実施例では一般的に用いられるP
型のシリコン基板を用いる。なお、N型であっても構わ
ないがN型とする場合は本実施例と全て導電型を逆にす
る必要がある。即ち、N型はP型に、P型はN型に置き
換えれば良い。
【0064】次に、シリコン基板101の表面に対して
スピンコート法により触媒元素(本実施例ではNi元素
を例にする)を含む溶液の塗布を行う。塗布工程は以下
の様にして行う。
【0065】まず、シリコン基板101の表面に薄い酸
化膜層(図示せず)を形成する。図示しない酸化膜層の
形成方法は、過水アンモニア溶液に基板を浸して70
℃、5分間処理する方法、UV処理により5分間処理す
る方法などを用いれば良い。こうして形成された図示し
ない酸化膜層は、Ni元素を含むニッケル塩溶液(例え
ば、酢酸ニッケル塩や硝酸ニッケル塩など)を塗布する
際にシリコン表面の濡れ性を改善する。
【0066】次に、図示しない回転支持体上でスピン回
転する基板中央にニッケル塩溶液を滴下して、基板表面
の全体に薄いニッケル塩溶液の水膜を形成する。そし
て、スピナの回転の回転数を上げて水膜を吹き飛ばし、
ニッケル層102を形成する。こうして図1(A)に示
す状態となる。
【0067】次に窒素雰囲気中において、450 〜700
℃、代表的には550 〜650 ℃の温度範囲で加熱処理を行
い、Ni元素の拡散を行う。本実施例では、600 ℃、4h
r の加熱処理を行う。この加熱処理によりNi元素はシ
リコン基板101内部へと拡散して、優先的にシリコン
基板101内部の欠陥に偏析する。
【0068】このNi元素の導入量は半導体膜中におい
て 1×1019〜 1×1020/cm3 となる様に、塗布溶液中に
Ni濃度、塗布量等の条件を調節する。この濃度以下で
は効率良く欠陥にNi元素を偏析させられず、本発明の
効果を得にくい。また、この濃度以上では後にゲッタリ
ングすることが困難となるので好ましくない。
【0069】また、欠陥に形成されるニッケルシリサイ
ドは格子定数がシリコンの格子定数に近いので、整合性
の良い結合状態となる。また、Ni層102は接したシ
リコン基板101と反応して高濃度にNi元素を含むニ
ッケルシリサイド層103となる(図1(B))。
【0070】本発明の大きな特徴は、欠陥に対して意図
的に触媒元素であるNi元素を偏析させた点であり、そ
の理由は上述の様に不規則な結合状態にあった欠陥を整
合性の良好な結合状態とすることにある。これは、後の
ハロゲン元素によるNi元素のゲッタリング工程におい
て重要な意味を持つ。
【0071】なお、本実施例ではシリコン基板を例とし
て説明しているのでNi元素が有効であると説明した
が、他の半導体基板(例えばGaAs系、CdS系な
ど)を用いる場合であっても、格子定数の近い触媒元素
(遷移金属が好ましい)を用いることで本実施例と同様
の効果を得ることができる。
【0072】次に、フッ酸溶液等でシリコン基板101
に対してエッチング処理を施して、ニッケルシリサイド
層103を除去する。ニッケルシリサイド層103は高
濃度にNi元素を含有しているため、後のゲッタリング
によるNi元素の除去工程において不都合だからであ
る。
【0073】次に、ハロゲン元素を含む雰囲気におい
て、700 〜1100℃、代表的には800 〜950 ℃の温度範囲
での加熱処理を行う。本実施例では、酸素に対して0.1
〜10wt%、代表的には3wt%のHCl(塩化水素)を混
合した酸化性雰囲気において、950 ℃、30min の加熱処
理を行う。この加熱処理により、シリコン基板101内
部の欠陥を補償していたNi元素は、Cl元素によって
ゲッタリングされて脱離する。
【0074】Cl元素によってゲッタリングされたNi
元素は、揮発性ガスであるニッケルクロライドとなって
空中へ拡散したり、シリコン基板101の表面に形成さ
れた酸化膜104の内部に取り込まれたりして、シリコ
ン基板101の内部から除去される。
【0075】従って、シリコン基板101の内部に残留
するNi元素の濃度は極めて低いものとなり、処理後は
元の状態の1/10〜1/1000にまで低減される。具体的に
は、 5×1018/cm3 以下、好ましくは 5×1016/cm3
下とすることができる。このNi元素が 5×1018/cm3
以上含まれた状態では、半導体に金属としての特性が顕
れてしまい好ましくない。即ち、ゲッタリングによって
Ni濃度を 5×1018/cm3 以下、好ましくは 5×1016
cm3 以下に低減することで、太陽電池としての機能に何
ら影響を与えないシリコン基板とすることができる。
【0076】さらに、Ni元素が脱離した後に残された
Siの未結合手は相互に近接して、かつ活性な状態にあ
るため、加熱処理の間にSi−Si結合を形成して整合
性に優れた結晶性を実現する。即ち、実質的に欠陥は除
去される。
【0077】ここで注意すべきなのは、この工程がNi
元素のゲッタリングのみを目的としたものではない点で
ある。ゲッタリング工程自体は公知の手段であるが、前
述のNi元素の導入と、ハロゲン元素によるNi元素の
ゲッタリングと、ゲッタリングと同時に行われる欠陥の
除去(再結合)と、が組み合わさってはじめて本発明の
目的が達成されるのである。
【0078】また、図1(C)に示すように、ゲッタリ
ングのための加熱処理によって半導体基板101の表面
が酸化されて、酸化膜104が形成される。このままで
は、比較的高濃度にNi元素を含有した酸化膜104か
らの逆拡散が起こってしまうので、フッ酸溶液等で酸化
膜104をエッチング除去して図1(D)に示す様なシ
リコン基板105を得ることができる。
【0079】さらに、ドライエッチング法またはヒドラ
ジンや水酸化ナトリウム等によるウェットエッチング法
により半導体基板105の表面層を0.1 〜1 μm程度除
去すると、半導体基板105と酸化膜103との界面に
偏析していたNi元素も除去できるので好ましい。
【0080】この図1(D)の状態にあるシリコン基板
105は、元々低級グレードであったものが、内部の欠
陥を極力低減してあるので、いわゆる半導体級と呼ばれ
る単結晶シリコン基板と同程度の結晶性を有している。
こうしてシリコン基板の前処理が終了する。以下に記載
するのは太陽電池を製造する一例である。この説明は図
2を用いて行う。
【0081】まず、本実施例では(100)面を主表面
(図中において上面)とするシリコン基板105に対し
て、NaOH等の薬液を用いてアルカリエッチング処理
を施すことで選択的に(111)面のみを露出させて、
シリコン基板105の最表面に意図的に凹凸部(テクス
チャー部)106を形成したテクスチャ構造をとる。図
2(A)に示す様に、表面に凹凸部106を形成したテ
クスチャ構造は、太陽光を散乱させて光路長を稼ぎ、効
率良く太陽光を吸収することができるので有効である。
【0082】本実施例では、2%NaOH水溶液を80℃
に加熱し、シリコン基板105の表面層をエッチングし
てテクスチャ処理を行う。エッチングは5分間とし、そ
の後反応を瞬時に止めるために沸騰水に浸漬し、さらに
純水で十分に洗浄する。電子顕微鏡による表面観察で
は、不規則ではあるが0.1 〜5 μm程度の凹凸が観察さ
れた。
【0083】次に、図2(B)において、上記の工程を
経て得られたシリコン基板105の表面(図において上
面)にシリコン基板105とは逆の導電型(本実施例で
はN型)を有する導電性領域を形成する。この形成方法
は、N型導電性を有するシリコン膜を堆積する方法や、
N型を付与する不純物元素(例えばP(リン))を添加
する方法などがあるが、本実施例では後者を採用する。
【0084】本実施例では図2(B)に示す様に、シリ
コン基板105に対してPイオンの注入をイオンドーピ
ング法またはプラズマドーピング法により行う。そし
て、シリコン基板105の表面近傍に打ち込まれたPイ
オンを加熱処理により拡散させてN型の導電性領域10
7を形成する。
【0085】こうしてシリコン基板105および導電性
領域107の接合部において良好なPN接合108が形
成される。この接合深さは、ここでは0.5 μmとする。
なお、前述のイオン注入工程は、イオンドーピング法の
方が接合深さの制御が容易であるので好ましい。
【0086】なお、上記の様にして形成されたN型導電
性領域107の最表面はイオン注入の際に損傷を受けて
結晶性が悪くなっているので、表面近傍をヒドラジン、
水酸化ナトリウム、フッ硝酸(フッ酸と硝酸を混合した
もの)等でエッチング除去して、結晶性の悪い領域は排
除するのが好ましい。
【0087】次いで、N型導電性領域107上に反射防
止膜109を形成する。本実施例では反射防止膜109
として、CVD法により成膜した厚さ0.1 〜1 μmのS
iO2 膜を用いる。この膜厚はシリコン基板105の屈
折率と反射防止膜108の屈折率とで最適値を選ぶ必要
がある。また、反射防止膜109としては、他にもSi
O、SiN、TiO2 、ITO、MgF2 等の様々な材
料を用いることができる。
【0088】次に、図2(C)において、シリコン基板
105の裏面(図中の下面)にBSF(back surface f
ield) として、半導体基板105よりも高いP型の導電
性を有したP+ 領域110を形成する。形成方法は固相
拡散法やイオン注入法などがあるが、本実施例ではイオ
ン注入により0.2 μmの深さに形成する。
【0089】この様なBSF構造とすると、シリコン基
板105とP+ 領域110との間にフェルミ準位の差に
よる電界ができるので、基板105内で生成した小数キ
ャリアの内裏面に向かうものは、そこで反射されてPN
接合部へ到達しやすくなる。特に、単結晶シリコンは長
波長光に対する光吸収係数が小さいので、シリコン基板
105の奥深く(裏面近く)で小数キャリアが生成し易
い。BSF構造はその様なキャリアを有効に利用できる
ので、長波長領域の太陽光に対する感度を向上させる上
で有効である。
【0090】最後に、導電性領域107とP+ 領域11
0にアルミニウム膜等の導電性膜でなる取り出し電極1
11、112を形成する。導電性膜はスパッタ法や蒸着
法により形成すれば良い。また、電極111、112を
形成した後、150 〜300 ℃で数分間の加熱処理を行うと
下地膜との密着性が高まり、良好な電気特性を得られ
る。
【0091】また、必要に応じてシリコン基板105の
裏面側にAl、Au、Ag、Cu等の裏面反射膜を設け
ることもできる(図中において基板105の上面側から
太陽光が入射する場合)。こうすることで、シリコン基
板105内で吸収されなかった太陽光を裏面で反射さ
せ、太陽光の利用効率を向上させることができる。
【0092】以上の様にして、図2(D)に示す様な太
陽電池を製造することができる。こうして製造された太
陽電池は、次の様な利点がある。(1)母体となるシリ
コン基板が低コストなので、太陽電池そのものの製造コ
ストを低減することが可能となる。(2)シリコン基板
は低コストであるが本発明により結晶性を著しく改善し
てあるので、高い変換効率を実現することができる。
【0093】従って、本発明を利用することで安価な値
段で、高い変換効率を有する太陽電池を製造することが
可能である。即ち、太陽電池を次世代のエネルギー媒体
として日常生活に利用するにあたって、その普及率に大
きく貢献する技術であると言える。
【0094】〔実施例2〕 本実施例では、シリコン基
板として多結晶シリコン基板を用いた場合の例を示す。
本実施例による太陽電池の製造方法は、実施例1と同様
であるので、多結晶シリコン基板を用いた場合の特徴の
みを記載する。
【0095】多結晶シリコン基板は、単結晶シリコン基
板よりも安価であるため、太陽電池の製造コストを低減
する上で有力視されている。しかしながら、多結晶シリ
コンには必ず粒界が存在するため、PN接合部で生成し
たキャリアが粒界にトラップされて再結合することが問
題となっている。
【0096】本発明を用いて多結晶シリコン基板の結晶
性を改善した場合、結晶粒内の結晶性が向上することは
勿論のこと、粒界においても同様の効果が期待できる。
即ち、シリコン基板内に添加されたNi元素は粒界にお
いても偏析してニッケルシリサイドを形成する。そし
て、ハロゲン元素やリン元素によるゲッタリング処理を
行うと同時に、粒界に形成されたSiの未結合手は整合
性良く再結合して、実質的に結晶粒界のエネルギーギャ
ップを低減することができる。
【0097】以上の様に、本発明は単結晶シリコン基板
のみならず、多結晶シリコン基板に対しても十分に適用
することが可能な技術である。多結晶シリコン基板を用
いて太陽電池を形成すると、大幅に太陽電池の製造コス
トを削減することが可能となる。
【0098】〔実施例3〕 実施例1ではHClガスを
用いて触媒元素(Ni元素)のゲッタリングを行った
が、例えばNF3 、ClF3 ガス等のフッ素系ガスを用
いることもできる。この場合、ゲッタリング処理の際に
未結合手がフッ素で終端されるが、Si−F結合はSi
−H結合よりも結合力が強いので好ましい。
【0099】また、NF3 ガスは実施例1のHClガス
よりも低温で分解するので、加熱処理の温度を低くする
ことができる。ただし、本発明の様に比較的高い温度の
加熱処理でSi同士を再結合させる必要がある場合には
そのメリットを生かすことができない。そこで、本実施
例では酸素に対してHClを0.1 〜10wt%、代表的には
3wt%、NF3 ガスを0.1 〜3wt %、代表的には0.3wt%
混合させた雰囲気中において、800 ℃30〜60min の加熱
処理を行うことでNi元素のゲッタリングおよびシリコ
ン基板中の欠陥の除去を行う。
【0100】以上の様に、触媒元素を除去した後にSi
の未結合手をSi同士で再結合させ、再結合しきれなか
った未結合手をフッ素で終端することで欠陥の除去が効
率的に行われる。
【0101】また、酸素に対して水素を3wt%、ClF
3 ガスを0.3wt%混合させた雰囲気中において、500 〜60
0 ℃の温度範囲で30〜60min のウェット酸化処理を行う
ことでも同様の効果を得ることが可能である。この場合
はさらにCl元素とF元素とでNi元素のゲッタリング
が行われるので、欠陥の除去がより効果的に達成される
が、温度が低いのでSi同士の再結合の効率は犠牲にな
る。
【0102】〔実施例4〕 実施例1〜3においては、
ゲッタリング元素としてハロゲン元素である塩素、フッ
素を用いた例を示した。本実施例ではゲッタリング元素
として15族元素に属するリンを用いた例を示し、リン
を含有する層を気相法、液相法で形成する例を示す。本
実施例を、図3を用いて説明する。
【0103】まず、主表面(図中の上面側)の面方位が
(100)面である太陽電池級のP型シリコン基板20
1を準備する。膜厚は300 μmである。そして、実施例
1と同様に、シリコン基板201にニッケルを導入し
て、欠陥にニッケルを偏析させる。
【0104】次に、シリコン基板201表面に、リンを
含有する層として、PSG膜202を形成する。なお、
シリコン基板表面にニッケルシリサイドが形成されてい
れば、PSG膜202を形成する前に、ニッケルシリサ
イドを除去する。PSG膜202は、常圧CVD法によ
ってシラン、フォスフィン、酸素を原料に形成した。P
SG膜202内のリン濃度は最低でも、シリコン基板内
のニッケル濃度よりも1桁高くなるようにすることが重
要である。例えばニッケルが偏析されたシリコン基板の
ニッケル濃度が約1×1019/cm3であれば、PSG膜2
02内のリン濃度は1×1020/cm3以上になるようにす
る(図3(A))。
【0105】次に、図3(B)に示すようにゲッタリン
グのために、550℃〜650 ℃で、数時間加熱処理をす
る。本実施例では、窒素雰囲気にした電気炉内で、加熱
温度600 ℃で、8時間加熱した。この加熱処理により、
シリコン基板201内部に拡散して欠陥を補償していた
Ni元素は、PSG膜202内のリンによってゲッタリ
ングされてシリコン基板201から除去される。
【0106】従って、シリコン基板201の内部に残留
するNi元素の濃度は極めて低いものとなり、処理後は
元の状態の1/10〜1/1000にまで低減される。具体的に
は、 5×1018/cm3 以下、好ましくは 5×1016/cm3
下とすることができる。このNi元素が 5×1018/cm3
以上含まれた状態では、半導体に金属としての特性が顕
れてしまい好ましくない。即ち、ゲッタリングによって
Ni濃度を 5×1018/cm3 以下、好ましくは 5×1016
cm3 以下に低減することで、太陽電池としての機能に何
ら影響を与えないシリコン基板とすることができる。
【0107】さらに、Ni元素が脱離した後に残された
Siの未結合手は、相互に近接して、かつ活性な状態に
あるため、加熱処理の間にSi−Si結合を形成して整
合性に優れた結晶性を実現する。即ち、実質的に欠陥は
除去される。
【0108】このままでは、比較的高濃度にNi元素を
含有したPSG膜202からの逆拡散が起こってしまう
ので、フッ酸溶液等でPSG膜202をエッチング除去
することによって、図3(C)に示す結晶性が改善され
たシリコン基板203を得ることができる。
【0109】さらに、ドライエッチング法またはヒドラ
ジンや水酸化ナトリウム等によるウェットエッチング法
によりシリコン基板203の表面層を0.1 〜1 μm程度
除去すると、シリコン基板203とPSG膜202との
界面に偏析していたNi元素も除去できるので好まし
い。
【0110】本実施例ではシリコン基板203は元々低
級グレードであったものを、リンのゲッタリング作用に
よってシリコン基板201の内部の欠陥が極力低減され
たため、いわゆる半導体級と呼ばれる単結晶シリコン基
板と同程度の結晶性を有している。以上により、シリコ
ン基板の前処理が終了する。得られたシリコン基板20
3を用いて、例えば実施例1に記載された太陽電池を製
造すればよい。
【0111】〔実施例5〕 実施例4では、ゲッタリン
グ膜として、気相法でPSG膜202を形成する例を示
したが、他のリンを含む層を用いることができる。
【0112】例えば、液相法を用いて膜を形成すること
もできる。例えば、リンを添加した有機珪化物の溶液
を、スピンコーティング法により、シリコン基板201
表面に塗布し、しかる後、焼成することにより、リンを
添加した酸化珪素膜が形成される。
【0113】また、気相法によって、リンが添加された
非晶質もしくは多結晶シリコン膜で形成することもでき
る。ゲッタリング膜はゲッタリング工程の後エッチング
により除去されるため、ゲッタリング膜は半導体基板と
のエッチング選択比が大きなものが好ましい。よって、
ゲッタリング膜にリン添加シリコン膜を用いる場合に
は、ゲッタリング膜の除去に注意が必要である。
【0114】リン添加シリコン膜のエッチングを容易に
する方法として、ゲッタリングのための加熱工程におい
て、リン添加シリコン膜を酸化させる方法が挙げられ
る。この結果、酸化されたシリコン膜のみを選択的に除
去することができる。シリコンを酸化させるためには、
加熱処理雰囲気を酸化性雰囲気とすればよい。例えば、
窒素(分圧比89%)、酸素(分圧比10%)、塩化水
素(分圧比1%)の混合気体雰囲気とすればよい。ある
いは、加熱時間と加熱温度を制御して、シリコン膜を酸
化させればよい。
【0115】〔実施例6〕 実施例4、5においては、
ゲッタリング膜となるリンを含む層を気相法、あるいは
液相法で形成する方法を示したが、本実施例では、この
リンを含む層を、半導体基板にリンをドーピングする方
法で作製する例を示す。また本実施例では、半導体基板
への前処理のみを示す。本実施例を、図4を用いて説明
する。
【0116】まず、主表面(図中の上面側)の面方位が
(100)面である太陽電池級P型のシリコン基板21
1を準備する。膜厚は300 μmである。そして、実施例
1と同様な工程によって、シリコン基板211内にニッ
ケルを偏析させる。この際、シリコン基板211の表面
に図示しないシリサイド層が形成されるので、エッチン
グ処理を施して、このニッケルシリサイド層を除去す
る。
【0117】次に、図4(A)に示すように、イオン注
入法、プラズマドーピング法を用いてシリコン基板21
1表面に、リンを導入して、リン添加領域212を形成
する。本実施例では、イオン注入法を用いてリンをドー
ピングした。この結果リン添加領域212はリンを高濃
度に含有した領域となるとともに、ドーピングの衝撃に
より非晶質化される。リン添加領域212内のリン濃度
は最低でも、半導体基板211内のニッケル濃度よりも
1桁高くなるようにすることが重要である。例えばニッ
ケルが偏析された半導体基板211のニッケル濃度が約
1×1019/cm3であれば、リン添加領域212内のリン
濃度は1×1020/cm3以上にする。
【0118】次に、図4(B)に示すようにゲッタリン
グのための加熱処理を行った。本実施例では、窒素(分
圧比89%)、酸素(分圧比10%)、塩化水素(分圧
比1%)の混交気体でなる酸化性雰囲気にした電気炉内
で、600℃、4時間加熱した。この加熱処理により、
シリコン基板211内部に拡散して欠陥を補償していた
Ni元素は、リン添加領域212内のリンによってゲッ
タリングされてシリコン基板211から除去される。さ
らに、ニッケルがゲッタリングされると同時に、シリコ
ン基板211の欠陥が実質的に除去される。本実施例で
は、リン添加領域212を非晶質化したため、リンのゲ
ッタリング効果だけでなく、結晶構造の欠陥、転位によ
るゲッタリング効果、雰囲気に添加された塩素のゲッタ
リング効果との相乗効果を得ることができる。
【0119】また、加熱処理によって、リン添加領域2
12は酸化されて、熱酸化膜213が形成される。な
お、加熱処理の条件によって、熱酸化膜213はリンが
添加されなかった半導体基板211が酸化された部分も
含む。リン添加領域212を酸化させたことによって、
シリコン基板211とのエッチング選択比を大きくする
ことができる。
【0120】熱酸化膜213が残存したままでは、比較
的高濃度にNi元素を含有した酸化膜213からの逆拡
散が起こってしまうので、フッ酸溶液等で酸化膜213
をエッチング除去して図4(C)に示す様な、欠陥が除
去されたシリコン基板214を得ることができる。
【0121】以上により、シリコン基板の前処理が終了
する。得られたシリコン基板214を用いて、例えば実
施例1に記載された太陽電池を製造すればよい。
【0122】〔実施例7〕 本実施例も、実施例6を同
様にリンをゲッタリングに用いる例を示す。実施例6で
は、半導体基板表面全体にリンイオンを添加したが、本
実施例では、半導体基板に選択的にリン添加領域を形成
する例を示す。以下に、本実施例を図5を用いて説明す
る。
【0123】まず、主表面(図中の上面側)の面方位が
(100)面であり、膜厚は300 μmの太陽電池級P型
のシリコン基板221を準備する。そして、実施例1と
同様に、シリコン基板221内の欠陥にニッケルを偏析
させた。
【0124】そして、図5(A)に示すように、シリコ
ン基板221にリンイオンを選択的に導入する。そのた
めに、シリコン基板221表面に酸化珪素でなるマスク
222を形成した。
【0125】マスク222を形成した後、プラズマドー
ピング法を用いてリンイオンをドーピングした。この結
果、シリコン基板221にはリン添加領域223が選択
的に形成された。リン添加領域223内のリン濃度は最
低でも、シリコン基板221内のニッケル濃度よりも高
くする必要があり、ニッケルの濃度よりも1桁以上高く
なるようにすることが重要である。
【0126】次に、図5(B)に示すようにゲッタリン
グのための加熱処理を行った。本実施例では、窒素雰囲
気にした電気炉内で、600℃、8時間加熱した。この
加熱処理により、シリコン基板401内部に拡散して欠
陥を補償していたNi元素は、リン添加領域223内の
リンによってゲッタリングされてシリコン基板221か
ら除去されるとともに、シリコン基板221の欠陥が実
質的に除去される。その結果、半導体級のシリコン基板
224を得ることができる。
【0127】以上により、シリコン基板の前処理が終了
する。得られたシリコン基板224を用いて、例えば実
施例1に記載された太陽電池を製造する。まず、図5
(C)に示すように実施例1と同様にテクスチャ処理を
行って、シリコン基板224に凹凸部225を形成し
た。電子顕微鏡による表面観察では、不規則ではあるが
0.1 〜5 μm程度の凹凸が観察されていた。
【0128】次に、シリコン基板224に対してPイオ
ンの注入をイオンドーピング法またはプラズマドーピン
グ法により行う。そして、シリコン基板224の表面近
傍に打ち込まれたPイオンを加熱処理により拡散させ
て、N型の導電性領域226を形成する。N型の導電性
領域226の接合深さは、0.5 μmとする。イオン注入
方法は、イオンドーピング法の方が接合深さの制御が容
易であるので好ましい。
【0129】ここで、ゲッタリングシンクに用いたリン
添加領域223も、半導体にリンが添加された領域であ
るのでN型導電性領域として機能する。こうしてシリコ
ン基板224と導電性領域226の接合部、シリコン基
板224とリン添加領域223の接合部においてPN接
合227が形成される。
【0130】次いで、N型導電性領域226上に反射防
止膜228を形成する。本実施例では反射防止膜228
として、CVD法により成膜した厚さ0.1 〜1 μmのS
iO2 膜を用いる。この膜厚はシリコン基板105の屈
折率と反射防止膜228の屈折率とで最適値を選ぶ必要
がある。また、反射防止膜228としては、他にもSi
O、SiN、TiO2 、ITO、MgF2 等の様々な材
料を用いることができる。
【0131】次にシリコン基板224の裏面(図中の下
面)に、イオン注入によりP+ 領域229を0.2 μmの
深さに形成して、図5(D)に示す構造を得る。
【0132】最後に、N型導電性領域226、P+ 領域
229に接続される、アルミニウム膜等の導電性膜でな
る取り出し電極230、231を成膜する。以上の様に
して、図5(E)に示す様な太陽電池を製造することが
できる。
【0133】本実施例では、ゲッタリングシンクに用い
たリン添加領域223も太陽電池のN型導電性領域に用
いたが、リン添加領域223にはニッケルを含有してお
り、このニッケルが半導体基板へ逆拡散してしまうおそ
れがあるため、リン添加領域223を除去してもよい。
たとえば、工程数を増加させずに除去する場合は、ゲッ
タリング後の半導体基板226のエッチングによる表面
層の除去工程や、テクスチャー処理工程と同時に行えば
よい。
【0134】〔実施例8〕 実施例1〜7では、太陽電
池を作製する前に、半導体基板にニッケルを添加し、し
かる後ニッケルをゲッタリングすることにより、太陽電
池級の半導体基板を半導体級に結晶性を高める方法を示
したが、本実施例では、このように得られた半導体基板
中のニッケル濃度をより低減する太陽電池の作製方法を
示す。本実施例を図6に従って、説明する。
【0135】まず、図6(A)に示すように実施例1〜
7で説明された前処理を施した、N型の半導体基板に対
して、実施例1と同様にテクスチャ処理を行って、シリ
コン基板241に凹凸部242を形成した。
【0136】次に、図5(B)に示す様に、シリコン基
板241に0.5 μmの深さにPイオンを注入して、N型
の導電性領域243を形成する。しかる後、窒素雰囲気
において加熱処理を施して、シリコン基板241に残存
するニッケルをN型の導電性領域243にゲッタリング
させる。なお、加熱温度は、ゲッタリング効果が得られ
る600℃前後とすればよい。
【0137】シリコン基板241内のニッケルの濃度
は、前処理によってSIMSの測定限界以下である5×
1016/cm3以下とすることができるが、更にこの加熱
処理によって、よりその濃度を下げることができる。
【0138】以下図6(D)に示すように、実施例1と
同様に、反射防止膜244、P+ 領域245を順次に形
成し、最後に、N型導電性領域243、P+ 領域245
に接続される、アルミニウム膜等の導電性膜でなる取り
出し電極246、247を形成する。
【0139】〔実施例9〕 本実施例では、実施例1と
は異なる構造の太陽電池を製造する場合の例を示す。説
明は図7を用いて行う。
【0140】先ず、実施例1と同様の手順で図7(A)
に示す状態(図2(A)に示す状態と同じ)を得る。こ
の状態でP型のシリコン基板301の表面にはテクスチ
ャーが形成されている。
【0141】この状態でシリコン基板301に対して熱
酸化処理を施す。熱酸化のための加熱処理は、酸素に対
して3wt%のHClを添加した雰囲気中で1000℃、30min
という条件とする。この熱酸化処理によりシリコン基板
301全面に熱酸化膜302が1000Åの厚さに形成され
る。熱酸化の方法はこれに限らず公知の様々な手段を用
いることができる。例えば、ドライまたはウェットO2
酸化、パイロジェニック酸化等であっても良い。ハロゲ
ン元素を添加した雰囲気にすることにより、半導体基板
301に残存するニッケル元素を一層低減する効果を得
ることができる(図7(A)) 。
【0142】次に、熱酸化膜302の内、シリコン基板
301の側面に形成された領域のみを残す様に選択的に
熱酸化膜302を除去する。この方法としては、例え
ば、側面のみを残す様なマスクを用いてドライエッチン
グ法で除去すれば良い。この工程により図7(B)に示
す様な状態で熱酸化膜303が残存する。
【0143】図7(B)に示す状態で、シリコン基板3
01の表面側にN型を付与するPイオンの注入を行い、
N型導電性領域(N+ 領域)304を形成する。また、
裏面側にはP型を付与するBイオンの注入を行い、シリ
コン基板301よりも強い導電性領域(P+ 領域) 30
5を形成する。
【0144】ところで、従来、上記導電性領域を形成す
る際に、シリコン基板の側面に対しても僅かなイオンが
回り込みにより注入され、導電性領域、即ち電流パスが
形成されてリーク電流の原因となることが問題となって
いた。しかしながら、本実施例によれば熱酸化膜303
が保護膜として機能するため、側面に電流パスとなる導
電層が形成されることがない。
【0145】即ち、シリコン基板301の側面では酸化
膜303によって保護されているのでN型またはP型を
付与するイオンがシリコン基板303まで到達できず、
酸化膜303中でストップしてしまうのである。従っ
て、側面に形成された酸化膜303中にはPおよび/ま
たはBイオンが 1×1016〜 1×1020/cm3 の濃度で含ま
れることになる。
【0146】次に、シリコン基板301の表面側を覆う
様に、パッシベーション膜として窒化珪素膜306を10
00Åの厚さに成膜する。成膜方法は、プラズマダメージ
を避けて、減圧熱CVD法で行うのが好ましい。また、
膜厚を適宜設定することで、窒化珪素膜306は反射防
止膜としても機能する。
【0147】次に、窒化珪素膜306にコンタクトホー
ル(紙面に向かって奥手方向に長い溝状を有する)を形
成し、シリコン基板301の表面側に取り出し電極30
7を、裏面側に取り出し電極308を形成する。本実施
例では表面側の電極307を櫛歯形状にして太陽光を取
り入れ易い構成とする。また、裏面側の電極308も櫛
歯形状とする。基板全面に裏面電極308を形成する構
成とすることも可能であるが、電極と半導体との界面で
は生成したキャリアが再結合し易いのでなるべく接触面
積の少ない構成が望ましい。
【0148】以上の様にして、図7(D)に示す構造の
太陽電池が完成する。この構造では、前述の様にシリコ
ン基板301の側面に電流パスとなる様な導電領域が形
成されないのでリーク電流がなく、高性能な太陽電池を
実現することができる。
【0149】〔実施例10〕 本実施例では、実施例1
〜9とは異なる構造のバルク型太陽電池を製造する場合
の例を示す。説明は図8を用いて行う。
【0150】先ず、実施例1と同様の手順で図8(A)
に示す状態(図2(A)に示す状態と同じ)を得る。こ
の状態でP型のシリコン基板311の表面にはテクスチ
ャーが形成されている。
【0151】この状態でシリコン基板311に対して熱
酸化処理を施し、熱酸化膜312を形成する。熱酸化の
条件は実施例9と同様の条件でも良いし、他の熱酸化方
法や熱酸化条件でも良い。即ち、形成したい熱酸化膜の
膜質、膜厚に応じて変えることができる(図8(A))
【0152】次に、熱酸化膜312の一部に、後の取り
出し電極を形成するためのコンタクトホール313を形
成する。コンタクトホール313の形成は、レジストを
用いた公知のフォトリソグラフィ技術を用いれば良い。
また、紙面に向かって奥手方向に長い溝状形状となって
いる。
【0153】次に、図8(B)に示す状態で、シリコン
基板311の表面側にN型を付与するPイオンの注入を
行い、N型導電性領域(N+ 領域)314を形成する。
また、裏面側にはP型を付与するBイオンの注入を行
い、シリコン基板311よりも強い導電性領域(P+
域) 315を形成する(図8(B))。
【0154】本実施例では、イオン注入の際にコンタク
トホール313以外の領域は、熱酸化膜312を通して
スルードーピングを行うことになる。従って、スルード
ーピングによってイオン注入された領域は、直接的にイ
オン注入による損傷を受けないので、半導体層に欠陥等
に再結合中心が形成されないという利点がある。
【0155】また、残存した熱酸化膜312はそのまま
反射防止膜としても機能するので、別途設けることも可
能であるが、反射防止膜を省略することもできる。
【0156】また、本実施例においても、実施例9と同
様に熱酸化膜312が保護膜として機能するため、側面
に電流パスとなる導電層が形成されることがない。
【0157】次に、シリコン基板311の表面側に取り
出し電極316を、裏面側に取り出し電極317を形成
する。本実施例においても、表面側および裏面側の取り
出し電極の形状は櫛歯形状とする。以上の様にして、図
8(C)に示す構造の太陽電池が完成する。
【0158】本実施例の場合、図8(C)からも明らか
な様に、導電性領域314(または315)は、電極3
16(または317)と接する領域と接しない領域とで
深さ方向のイオン濃度分布が異なるという特徴がある。
【0159】〔実施例11〕 本実施例では、実施例9
においてシリコン基板301の表面側および裏面側に形
成された取り出し電極307、308の材料を変えた場
合の例を示す。基本的な構造は図7(D)と同様である
ので、必要に応じて図7(D)の符号を参照して説明す
る。
【0160】まず、実施例9において、図7(D)に示
された取り出し電極307を透明電極(例えば、ITO
膜に代表されるインジウム、スズの酸化化合物)321
とした場合の例を図9(A)に示す。この場合、透明電
極501を用いる利点としては、まず太陽光を遮蔽する
ことなく有効に活用することができる点である。
【0161】従って、図9(A)に示す様に、シリコン
基板の表面側の全面に透明電極321を形成することが
できる。即ち、透明電極321をパターニングする必要
がなくなり、製造プロセスを簡略化することができる。
【0162】また、例えばITO膜の様な透明電極は反
射防止膜としても機能するので、透明電極321と窒化
珪素膜306との積層膜を反射防止膜として利用するこ
とも可能である。
【0163】次に、実施例9において、図7(D)に示
された取り出し電極308を裏面全面に形成する場合の
例を図9(B)に示す。図9(B)に示す様に取り出し
電極322をシリコン基板の裏面全面に設ける利点は、
実施例9においてP+ 領域305をイオン注入法で形成
する必要がない点である。
【0164】具体的には、シリコン基板の裏面全面に形
成された取り出し電極322を、P型を付与する不純物
の拡散源として固相拡散法を用いてP+ 領域323を形
成することができる。即ち、イオン注入による半導体層
の損傷などがないので、生成されたキャリアが再結合す
るのを低減することが可能である。
【0165】また、取り出し電極322としてAl、A
u、Ag、Cu等の金属を用いれば、半導体層で吸収し
きれなかった太陽光を裏面側から反射させて再び半導体
層中へ戻す反射膜として機能させることができる。これ
は、いわゆるBSR構造と呼ばれるもので、太陽光を有
効に活用するために効果的である。
【0166】〔実施例12〕 本実施例では、実施例9
〜11とは異なる方法でシリコン基板側面の電流パスの
形成を防止する例を示す。説明は図10を用いて行う。
図10(A)において331で示すのは、実施例1と同
様の工程を経て形成されたテクスチャー構造を有するシ
リコン基板である。
【0167】このシリコン基板(P型)331に対して
N型導電性を付与するPイオンを含む雰囲気において加
熱処理を施し、Pイオンを拡散させてN型導電層332
を形成する。本実施例ではこの加熱処理において、シリ
コン基板331の全面(表面、裏面、側面)にN型導電
層332を0.3 μmの厚さに形成する。
【0168】次に、シリコン基板331の裏面を1 〜10
μm程度ドライエッチング法またはウェットエッチング
法によりエッチング除去して図10(B)に示す状態を
得る。この工程によりシリコン基板331の裏面は露出
面333が生じる。
【0169】また、この際、シリコン基板331の表面
側は、例えばUV処理等で形成した薄い酸化膜で保護し
ておくと汚染を防ぐことができるので好ましい。ただ
し、後で除去する必要がある。
【0170】図10(B)の状態が得られたら、後の工
程は例えば実施例9に従えば良く、パッシベーション膜
および反射防止膜として機能する窒化珪素膜(勿論、酸
化珪素膜であっても良い)334を成膜する。
【0171】次いで、シリコン基板331の裏面側に必
要に応じてP+ 領域336を形成する。この時、シリコ
ン基板331の側面付近において、N型導電性領域33
2とP+ 領域336とが接触しない様に注意しなければ
ならない。P+ 領域336の形成方法は、イオン注入法
によっても固相拡散法によっても構わないが、本実施例
では固相拡散法により形成する。
【0172】この場合、図10(C)に示す様に、例え
ばAl電極335をフォトリソグラフィ技術を用いて形
成し、加熱処理によりAl元素を拡散させて336で示
されるP+ 領域を形成する。固相拡散法を用いた理由
は、パターニング精度が良いのでN型導電性領域332
とAl電極335との距離を正確に設定することができ
る点にある。
【0173】図10(C)に示す状態が得られたら、窒
化珪素膜334の必要箇所にコンタクトホールを形成し
て、シリコン基板331の表面側とコンタクトする櫛歯
形状の取り出し電極337を形成する。以上の様にし
て、図10(D)に示す構造の太陽電池を製造すること
ができる。
【0174】〔実施例13〕 実施例1〜12では、半
導体基板を用いたバルク型太陽電池を示したが、本実施
例では、石英基板上に形成した半導体薄膜、具体的には
結晶性シリコン薄膜を用いて薄膜太陽電池を製造する場
合の例を示す。結晶性シリコン薄膜は、減圧熱CVD法
等で直接成膜することも可能であるが、本実施例では非
晶質シリコン薄膜を結晶化して得ることにする。説明は
図11を用いて行う。
【0175】まず、石英基板401上に下地膜として、
酸化シリコン膜402を0.3 μmの厚さに成膜する。こ
の酸化シリコン膜は、四珪酸メチル(TEOS)を原料
としたプラズマCVD法により成膜したが、他の方法と
してスパッタ法やスピンコート法でも形成可能である。
また、窒化珪素膜等の絶縁膜を用いても良い。
【0176】次に、プラズマCVD法によって、シラン
ガスを原料として、非晶質シリコン膜(アモルファスシ
リコン膜)403の成膜を行う。非晶質シリコン薄膜の
形成は、プラズマCVD法の他にも、減圧熱CVD法、
スパッタ法、真空蒸着法を用いても良い。また、非晶質
シリコン膜は、実質的に真正な非晶質シリコン薄膜でも
良いし、ボロン(B)が0.001 〜0.1 原子%添加された
非晶質シリコン薄膜であっても良い。なお、本実施例で
は非晶質シリコン薄膜403の厚さは10μmとする。
勿論この厚さは、必要とする厚さとすればよい。
【0177】次に、非晶質シリコン薄膜403の表面に
薄い酸化膜層(図示せず)を形成する。図示しない酸化
膜層の形成方法は、過水アンモニア溶液に基板を浸して
70℃、5分間処理する方法、UV処理により5分間処
理する方法などを用いれば良い。こうして形成された図
示しない酸化膜層は、Ni元素を含むニッケル塩溶液
(例えば、酢酸ニッケル塩や硝酸ニッケル塩など)を塗
布する際にシリコン表面の濡れ性を改善する。
【0178】次に、図示しない回転支持体上でスピン回
転する基板中央にニッケル塩溶液を滴下して、基板表面
の全体に薄いニッケル塩溶液の水膜を形成する。そし
て、スピン回転の回転数を上げて水膜を吹き飛ばし、ニ
ッケル層404を形成する。こうして図11(A)に示
す状態となる。
【0179】なお、Ni元素は、非晶質シリコン膜が結
晶化する際に結晶化を助長する触媒元素としても機能す
る。結晶化を助長する効果については、本出願人による
特開平6-232059号公報、特開平6-244103号公報に詳細が
記載してある。同公報では、他の元素として、Fe、C
o、Pt、Cu、Au等の金属元素を用いることができ
る旨が記載してある。
【0180】次に窒素雰囲気中において、450 ℃の温度
で1時間保持することにより、非晶質シリコン膜403
中の水素を離脱させる。これは、非晶質シリコン膜40
3中に不対結合手を意図的に形成することにより、後の
結晶化に際してのしきい値エネルギーを下げるためであ
る。
【0181】そして窒素雰囲気中において、450 〜700
℃、代表的には550 〜65℃、4 〜8hr の加熱処理を施す
ことにより、非晶質シリコン薄膜403を結晶化させ
て、結晶性シリコン薄膜405を得る。この結晶化の際
の温度を550 ℃とすることができたのは、Ni元素の作
用によるものである。
【0182】上記加熱処理中、Ni元素は結晶性を促進
させながらシリコン薄膜中を移動して粒内の欠陥を優先
的に補償してゆく。特に、この様にして形成される結晶
性シリコン薄膜405は多数の結晶粒界(結晶性シリコ
ン薄膜405を横切る線で表される)を有しているの
で、エネルギー的に不連続な結晶粒界には他の領域と比
較して高濃度のNi元素が偏析する。この様にしてNi
元素が偏析した様子を図11(B)において、バツ印で
表す。
【0183】このNi元素の導入量は結晶性シリコン薄
膜405中において 1×1019〜 1×1020/cm3 となる様
に、塗布溶液中のNi濃度、塗布量等の条件を調節す
る。この濃度以下では効率良く欠陥にNi元素を偏析さ
せられず本発明の効果を得にくい。他方この濃度以上で
は後にゲッタリングすることが困難となるので好ましい
ものではない。
【0184】また、欠陥に形成されるニッケルシリサイ
ドは格子定数がシリコンの格子定数に近いので、整合性
の良い結合状態となる。また、Ni層404は接した結
晶性シリコン薄膜403と反応して高濃度にNi元素を
含むニッケルシリサイド層406となって存在する(図
11(B))。
【0185】本発明の大きな特徴は、欠陥に対して意図
的に触媒元素であるNi元素を偏析させた点であり、そ
の理由は上述の様に不規則な結合状態にあった欠陥を、
整合性の良好な結合状態とすることにある。これは、後
のハロゲン元素によるNi元素のゲッタリング工程にお
いて重要な意味を持つ。
【0186】次に、フッ酸溶液等でエッチング処理を施
し、ニッケルシリサイド層406を除去する。ニッケル
シリサイド層406は高濃度にNi元素を含有している
ため、後のゲッタリングによるNi元素の除去工程にお
いて不都合だからである。
【0187】次に、ハロゲン元素を含む雰囲気におい
て、700 〜1100℃、代表的には800 〜950 ℃の温度範囲
での加熱処理を行う。本実施例では、酸素に対して0.1
〜10wt%、代表的には3wt%のHCl(塩化水素)を混
合した酸化性雰囲気において、950 ℃30min の加熱処理
を行う。この加熱処理により、結晶性シリコン薄膜40
5内部に拡散して欠陥を補償していたNi元素はCl元
素によってゲッタリングされて、多結晶シリコン薄膜4
05から脱離する。
【0188】Cl元素によってゲッタリングされたNi
元素は、揮発性ガスであるニッケルクロライドとなって
空中へ拡散したり、結晶性シリコン薄膜405の表面に
形成された熱酸化膜206の内部に取り込まれたりし
て、結晶性シリコン薄膜405の内部からは除去され
る。この様にしてNi元素がゲッタリングされた様子を
図11(C)においてはバツ印で表している。
【0189】従って、結晶性シリコン薄膜405の内部
に残留するNi元素の濃度は極めて低いものとなり、処
理後は元の状態の1/10〜1/1000にまで低減される。具体
的には、 5×1018/cm3 以下、好ましくは 5×1016/cm
3 以下とすることができる。
【0190】このNi元素が 5×1018/cm3 以上含まれ
た状態では、半導体に金属としての特性が顕れてしまい
好ましくない。即ち、ゲッタリングによってNi濃度を
5×1018/cm3 以下、好ましくは 5×1016/cm3 以下に
低減することで、太陽電池としての機能に何ら影響を与
えない結晶性シリコン薄膜を得ることができる。
【0191】さらに、Ni元素が脱離した後に残された
Siの未結合手は、相互に近接して、かつ活性な状態に
あるため、加熱処理の間にSi−Si結合を形成して整
合性に優れた結晶性を実現する。即ち、実質的に欠陥は
除去される。
【0192】また、同様の現象が結晶粒界においても行
われるので、結晶粒界のエネルギー障壁は極めて低くな
る、若しくは実質的に結晶粒界が存在しないと見なせる
状態となる。なお、本実施例ではその状態を示すために
熱酸化後の結晶粒界は点線で示すこととする。
【0193】ここで注意すべきなのは、この工程がNi
元素のゲッタリングのみを目的としたものではない点で
ある。ゲッタリング工程自体は公知の手段であるが、前
述のNi元素の導入と、ハロゲン元素によるNi元素の
ゲッタリングと、ゲッタリングと同時に行われる欠陥の
除去(再結合)と、が組み合わさってはじめて本発明の
目的が達成されるのである。
【0194】こうして、図11(C)に示すように、結
晶性シリコン薄膜405は、Ni濃度が極めて低く、か
つ実質的に欠陥が消滅された結晶性シリコン薄膜407
とされる。また、結晶性シリコン薄膜407の表面は、
ニッケルを高濃度に含む熱酸化膜408が形成される。
このままでは、比較的高濃度にNi元素を含有した熱酸
化膜407からの逆拡散が起こってしまうので、フッ酸
溶液等で熱酸化膜408をエッチング除去して結晶性シ
リコン薄膜407を露出させる。
【0195】さらに、ドライエッチング法またはヒドラ
ジンや水酸化ナトリウム等によるウェットエッチング法
により結晶性シリコン薄膜407の表面層を数百Åだけ
除去すると、結晶性シリコン薄膜407と熱酸化膜40
8との界面に偏析していたNi元素も除去できるので好
ましい。
【0196】次に、図11(D)に示すように、結晶性
シリコン薄膜407の表面にN型を有する結晶性シリコ
ン薄膜409を減圧熱CVD法により成膜する。また、
その厚さは0.01〜0.5 μmの厚さで成膜すれば良いが、
本実施例では、0.1 μmの厚さに成膜する。通常、直接
成膜した結晶性シリコン薄膜はあまり結晶性が高くない
ので、レーザーアニールやランプアニール等を利用した
熱アニールで結晶性を改善する必要がある。
【0197】あるいは、N型を有する結晶性シリコン薄
膜409もゲッタリングシンクとして機能させるよう
に、熱処理を施してもよい。この結果、塩素のゲッタリ
ング作用と、リンのゲッタリング作用によって、結晶性
シリコン薄膜407内のニッケル濃度を一層下げること
ができる。
【0198】なお、N型を有する結晶性シリコン薄膜4
09は微結晶状態で用いる構成としても良い。また、本
実施例では結晶性シリコン薄膜を用いているが、場合に
よっては非晶質シリコン薄膜を用いることも可能であ
る。
【0199】次いで、N型結晶性シリコン膜409上に
透明電極410を形成する。透明電極410は、スパッ
タ法を用いて、酸化インジウム・スズ合金(ITO)を
0.1 μmの厚さに形成する。この透明電極410は反
射防止膜としての機能を有している。なお、反射防止膜
としては、他にも酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化チタン
膜、フッ化マグネシウム膜、酸化スズ膜、酸化タンタル
膜、酸化セリウム、酸化アルミニウム等の様々な材料を
用いることができる(図11(D))。
【0200】最後に、取り出し電極を設ける工程を行
う。取り出し電極を設けるに当たっては、先ず図11
(E)に示すように、透明電極410、N型結晶性シリ
コン409、結晶性シリコン薄膜407の一部を除去す
る。そして、結晶性シリコン薄膜407に接続されるプ
ラス側の電極411を設ける構成とする。透明電極41
0に接続されるマイナス側の電極412を形成する。
【0201】そして、取り出し電極411、412は、
スパッタ法や真空蒸着法で形成する、アルミニウムや
銀、または、銀ペ−スト等を用いて形成することができ
る。さらに、電極を設けた後、150 〜300 ℃で数分間熱
処理すると、下地膜との密着性が良くなり、良好な電気
的特性が得られる。本実施例では、オ−ブンを用い、窒
素雰囲気中で200 ℃、30min の熱処理を行う。
【0202】なお、本実施例ではマイナス側の電極41
2は遮光面積を可能な限り抑えるために櫛歯状の構造と
している。即ち、櫛歯形状に歯の部分の断面が図11
(E)の様に見えるのである。従って、図面では電極4
12が3つある様に見えるが、実際には全て電気的に繋
がっている。
【0203】以上の工程により、図11(E)に示す様
な薄膜太陽電池を完成することができる。この薄膜太陽
電池は結晶性シリコン薄膜中において、生成したキャリ
アの再結合中心となる欠陥や結晶粒界が極めて低減され
るので、吸収係数の小さい結晶性シリコン薄膜であって
も、膜厚を稼ぐことで十分な変換効率を達成することが
できる。
【0204】〔実施例14〕 実施例13ではHClガ
スを含む雰囲気において熱処理を施し、ハロゲン元素
(実施例1ではCl元素)による触媒元素のゲッタリン
グを行ったが、例えばNF3 ガスやClF3 等のフッ素
系ガスを用いることもできる。
【0205】フッ素系ガスの特徴としては、HClガス
よりも低い温度、具体的には500 〜700 ℃程度の温度で
熱酸化膜の形成およびゲッタリング効果が得られる点が
挙げられる。この事は、基板として安価なガラス基板を
利用できることを意味しており、製造コストを低減する
上で非常に有効である。また、例えば柔軟性を有する薄
いステンレス基板上に太陽電池を形成して、フレキシブ
ルな太陽電池を形成することも可能となる。
【0206】また、HClガスよりも少ない導入量でゲ
ッタリング効果を得られることも製造コストを低減する
上で大きな利点である。実際には、HClの約1/10
の量を導入することで、十分な効果を期待できる。
【0207】本実施例では、酸素に対して水素を3wt%、
NF3 ガスを50〜200ppm混合させた雰囲気中において、
500 〜600 ℃の温度範囲で30〜60min のウェット酸化処
理を行うこととする。ただし、実施例1と比較すると処
理温度が低いので、Ni元素をゲッタリングした後のS
i同士の再結合は効率が良いとは言えない。
【0208】しかしこの場合、ゲッタリング処理の際に
未結合手をフッ素で終端する二次的な効果が期待でき
る。即ち、加熱処理の際に再結合しきれなかった未結合
手をフッ素で終端して不活性化することが可能である。
この場合、Si−F結合はSi−H結合よりも結合力が
強いので結晶性の向上に効果的である。
【0209】この様に、NF3 ガスを用いての加熱処理
はあくまで触媒元素のゲッタリングが目的なのである
が、未結合手の終端効果と製造コストの低減といった効
果も付加されるので、本実施例の様に結晶性シリコン薄
膜などの結晶粒界を有する半導体層を用いて太陽電池を
製造する様な場合においては効果的である。
【0210】なお、フッ素を含有する酸化性雰囲気とし
ては、上記条件以外にも次の(1)、(2)に示す条件
で行っても良い。(1)酸素に対してHClを 1〜5wt
%、NF3 を10〜200ppm含んだ雰囲気。(2)酸素に対
して水素を3wt%、ClF3 を50〜100ppm含んだ雰囲気。
特に、(2)の条件で行えばCl元素とF元素の両方の
ゲッタリング効果を期待することができる。
【0211】〔実施例15〕 実施例13、14におい
ては、ゲッタリング元素としてハロゲン元素である塩
素、フッ素を用いた例を示した。本実施例ではゲッタリ
ング元素として15族元素に属するリンを用いた例を示
す。本実施例を、図12を用いて説明する。
【0212】まず、実施例13と同様に、石英基板42
1上に下地膜として、プラズマCVD法により図示しな
い酸化シリコン膜を0.3 μmの厚さに成膜する。次に、
プラズマCVD法によって、シランガスを原料として、
非晶質シリコン膜(アモルファスシリコン膜)を厚さ1
0μm形成し、実施例1と同様に、Ni元素を用いて結
晶化し、結晶性シリコン薄膜422を形成する。
【0213】なお、結晶性シリコン薄膜422中におい
てNi元素の導入量は1×1019〜 1×1020/cm3 となる
様に、塗布溶液中のNi濃度、塗布量等の条件を調節す
る。また、結晶性シリコン薄膜中の結晶粒界には他の領
域と比較して高濃度のNi元素が偏析する。この様にし
てNi元素が偏析した様子を図12(A)において、バ
ツ印で表す。
【0214】このNi元素の導入量は結晶性シリコン薄
膜422中において 1×1019〜 1×1020/cm3 となる様
に、塗布溶液中のNi濃度、塗布量等の条件を調節す
る。この濃度以下では効率良く欠陥にNi元素を偏析さ
せられず、本発明の効果を得にくい。また、この濃度以
上では後にゲッタリングすることが困難となるので好ま
しいものではない。
【0215】また、欠陥に形成されるニッケルシリサイ
ドは格子定数がシリコンの格子定数に近いので、整合性
の良い結合状態となる
【0216】次に、結晶性シリコン薄膜422表面に、
リンを含有する層として、PSG膜423を形成する。
PSG膜423は、常圧CVD法によってシラン、フォ
スフィン、酸素を原料に形成した。PSG膜423内の
リン濃度は最低でも、結晶性シリコン薄膜422内のニ
ッケル濃度よりも1桁高くなるようにすることが重要で
ある。例えばニッケルが偏析された結晶性シリコン薄膜
422のニッケル濃度が約1×1019/cm3であれば、P
SG膜423内のリン濃度は1×1020/cm3以上になる
ようにする。
【0217】次に、図12(D)に示すようにゲッタリ
ングのために、500℃〜650℃で、数時間加熱処理をす
る。本実施例では、窒素雰囲気にした電気炉内で、加熱
温度600 ℃で、8時間加熱した。この加熱処理により、
結晶性シリコン薄膜422内部に拡散して欠陥を補償し
ていたNi元素は、PSG膜423内のリンによってゲ
ッタリングされて結晶性シリコン薄膜422から除去さ
れる。
【0218】従って、結晶性シリコン薄膜422の内部
に残留するNi元素の濃度は極めて低いものとなり、処
理後は元の状態の1/10〜1/1000にまで低減される。具体
的には、 5×1018/cm3 以下、好ましくは 5×1016/cm
3 以下とすることができる。このNi元素が 5×1018
cm3 以上含まれた状態では、半導体に金属としての特性
が顕れてしまい好ましくない。即ち、ゲッタリングによ
ってNi濃度を 5×1018/cm3 以下、好ましくは 5×10
16/cm3 以下に低減することで、太陽電池としての機能
に何ら影響を与えない結晶性シリコン薄膜とすることが
できる。
【0219】さらに、Ni元素が脱離した後に残された
Siの未結合手は、相互に近接して、かつ活性な状態に
あるため、加熱処理の間にSi−Si結合を形成して整
合性に優れた結晶性を実現する。即ち、実質的に欠陥は
除去される。
【0220】こうして、図12(B)に示す状態が得ら
れる。このままでは、比較的高濃度にNi元素を含有し
たPSG膜423からの逆拡散が起こってしまうので、
フッ酸溶液等でPSG膜423をエッチング除去して、
図12(C)に示す結晶性が改善された結晶性シリコン
薄膜424を得ることができる。
【0221】さらに、ドライエッチング法またはヒドラ
ジンや水酸化ナトリウム等によるウェットエッチング法
により結晶性シリコン薄膜424の表面層を0.1 〜1 μ
m程度除去すると、結晶性シリコン薄膜424とPSG
膜423との界面に偏析していたNi元素も除去できる
ので好ましい。
【0222】本実施例ではリンのゲッタリング作用によ
って、結晶性シリコン薄膜424の欠陥は極力低減され
たため、いわゆる単結晶シリコンと同程度の結晶性を有
している。この結晶性シリコン薄膜424を光電変換層
に用いて、例えば実施例13に記載された太陽電池を製
造すればよい。
【0223】〔実施例16〕 本実施例15では、ゲッ
タリングシンクとして、気相法でPSG膜を形成する例
を示したが、他のリンを含む層を用いることができる。
【0224】例えば、液相法を用いてリンを含む被膜を
形成することもできる。リンを添加した有機珪化物の溶
液をスピンコーティング法により塗布し、しかる後焼成
することにより、リンを添加した酸化珪素膜を形成して
もよい。
【0225】また、気相法によって、リンが添加された
非晶質もしくは多結晶シリコン膜を形成することもでき
る。また、イオン注入法やプラズマドーピング法を用い
て、結晶性シリコン薄膜表面にリンイオンを注入して、
リン添加層を形成してもよい。だたし、ゲッタリング膜
はゲッタリング工程の後エッチングにより除去されるた
め、ゲッタリング膜は半導体基板とのエッチング選択比
が大きなものが好ましい。よって、ゲッタリング膜にリ
ン添加シリコン膜を用いる場合には、ゲッタリング膜の
除去に注意が必要である。
【0226】リン添加シリコン膜のエッチングを容易に
する方法として、ゲッタリングのための加熱工程におい
て、リン添加シリコン膜を酸化させる方法が挙げられ
る。この結果、酸化されたシリコン膜のみを選択的に除
去することができる。シリコンを酸化させるためには、
加熱処理雰囲気を酸化性雰囲気とすればよい。例えば、
窒素(分圧比89%)、酸素(分圧比10%)、塩化水
素(分圧比1%)の混合気体雰囲気とすればよい。ある
いは、加熱時間と加熱温度を制御して、シリコン膜を酸
化させればよい。
【0227】〔実施例17〕本実施例では、結晶性シリ
コン薄膜に選択的にリンイオンを添加して、ゲッタリン
グシンクを形成する方法を示す。
【0228】まず、石英基板431上に下地膜として、
プラズマCVD法により酸化シリコン膜432を0.3 μ
mの厚さに成膜する。次に、プラズマCVD法によっ
て、シランガスを原料として、非晶質シリコン膜(アモ
ルファスシリコン膜)を厚さ10μm形成し、実施例1
と同様に、Ni元素を用いて結晶化し、結晶性シリコン
薄膜433を形成する。
【0229】なお、結晶性シリコン薄膜433中におい
て、Ni元素の導入量は1×1019〜1×1020/cm3 となる
様に、塗布溶液中のNi濃度、塗布量等の条件を調節す
る。また、結晶性シリコン薄膜433中の結晶粒界には
他の領域と比較して高濃度のNi元素が偏析し、不対結
合を補償している。この様にしてNi元素が偏析した様
子を図13(A)において、バツ印で表す。
【0230】次に、図13(B)に示すように、結晶性
シリコン薄膜433上に、酸化珪素膜でなるマスク膜4
34を形成する。そして、プラズマドーピング法、イオ
ン注入法を用いて結晶性シリコン薄膜433に燐イオン
を選択的に導入して、リン添加領域435を形成する。
【0231】次に、マスク膜を除去した後、窒素、酸
素、塩素の混合気体雰囲気において、600℃、8時間加
熱処理した。この加熱処理によって、結晶性シリコン薄
膜433内部に拡散して欠陥を補償していたNi元素
は、リン添加領域435内のリンによってゲッタリング
されて、結晶性シリコン薄膜433から脱離する。
【0232】この結果、結晶性シリコン薄膜433の内
部に残留するNi元素の濃度は極めて低くくなり、処理
後は元の状態の1/10〜1/1000にまで低減される。具体的
には、 5×1018/cm3 以下、好ましくは 5×1016/cm3
以下とすることができる。また、Niが脱離することに
よって、粒界でのSiの不対結合手がSi−Si結合を
形成するため、実質的に粒界が除去される。
【0233】本実施例では、Ni元素の導入と、リンに
よるNi元素のゲッタリングと、ゲッタリングと同時に
行われる欠陥の除去(再結合)とが組み合わさって、は
じめて本発明の目的が達成されるのである。
【0234】こうして、結晶性シリコン薄膜433は、
Ni元素の濃度が極めて低く、かつ欠陥が実質的に除去
された結晶性シリコン薄膜436とされる。また、結晶
性シリコン薄膜436、リン添加領域435の表面は酸
化されて薄い酸化膜が形成されるているので、フッ酸溶
液等で熱酸化膜をエッチング除去する。(図13
(B))
【0235】次に、図13(C)に示すように、結晶性
シリコン薄膜436の表面にN型を有する結晶性シリコ
ン膜437を減圧熱CVD法により厚0.1 μmの厚さに
成膜する。次いで、N型結晶性シリコン膜437上に透
明電極438を形成する。透明電極438は、スパッタ
法を用いて、酸化インジウム・スズ合金(ITO)を
0.1 μmの厚さに形成した。
【0236】最後に、取り出し電極を設ける工程を行
う。取り出し電極を設けるに当たっては、図13(D)
に示すように、先ず透明電極438、N型結晶性シリコ
ン437、そして結晶性シリコン薄膜436の表面層の
一部を除去する(図13(D))。
【0237】そして、図13(E)に示すように、スパ
ッタ法や真空蒸着法で形成したアルミニウムや銀、また
は、銀ペ−スト等を用いて、透明電極438に接続され
るマイナス側の電極439と、結晶性シリコン薄膜43
6に接続されるプラス側の電極440を設ける。
【0238】なお、本実施例では、N型導電性領域をN
型を有する結晶性シリコン薄膜437だけでなく、一部
のリン添加領域435とで構成されているが、リン添加
領域435はニッケルを比較的高濃度に含有している。
そのため、信頼性等の問題が懸念される場合は、リン添
加領域435を全て除去してもよい。例えば、図13
(D)示した結晶性シリコン薄膜436を除去する箇所
にだけリン添加領域435を形成すればよい。あるい
は、結晶性シリコン薄膜436を分断するような太陽電
池の構造にする場合は、その分断部分だけにリン添加領
域435を形成するようにすればよい。
【0239】〔実施例18〕 実施例13ないし実施例
17において、得られた結晶性シリコン薄膜表面に対し
てテクスチャー構造を形成すると、太陽光の吸収効率が
向上し、光電変換率を上げることができる。これは、表
面に形成された凹凸部(テクスチャー)が太陽光を散乱
させて光路長を稼ぐので効率良く太陽光を吸収すること
ができるからである。本実施例では、以下の様な技術で
テクスチャ構造を形成している。
【0240】まず、2%NaOH水溶液を80℃に加熱
し、結晶性シリコン薄膜表面層をエッチングしてテクス
チャ処理を行う方法を採用する。エッチングは5分間と
し、その後反応を瞬時に止めるために沸騰水に浸漬し、
さらに純水で十分に洗浄する。電子顕微鏡による表面観
察では、不規則ではあるが0.1 〜5 μm程度の凹凸が観
察されている。
【0241】なお、単結晶シリコンを用いた太陽電池で
は(100)面をアルカリエッチングすることで(11
1)面のみを選択的にエッチングしてピラミッド構造の
テクスチャーを形成しているが、本実施例の様に結晶性
シリコン薄膜(ただし、非単結晶、例えば多結晶、微結
晶)を用いる場合においては、配向性が不規則であるの
でテクスチャー構造も不規則なものとなる。
【0242】従って、テクスチャー構造の効果を十分に
引き出すために、テクスチャー処理をパターニングと組
み合わせて行い、積極的にパターン構造(テクスチャー
構造)を制御することも効果的である。
【0243】この様なテクスチャー構造を有した太陽電
池の断面図を図14(A)に示す。構造は図11で説明
した薄膜太陽電池と殆ど同一であるので、同じ部分につ
いては図11で用いた符号を用いる。
【0244】図14(A)において、石英基板401上
には下地膜402が成膜され、その上には実施例13で
示したニッケル導入、ゲッタリング処理を施された結晶
性シリコン薄膜405が形成される。結晶性シリコン薄
膜407はその主表面を上記テクスチャー処理によりエ
ッチングされ、501で示される様な凹凸形状を有する
テクスチャーが形成される。そして、N型導電層40
9、透明導電膜410、電極410、411を形成して
図14(A)に示す太陽電池を構成することができる。
【0245】なお、同様にして、テクスチャー処理を基
板に対して施し、基板表面にテクスチャーを形成するこ
とも可能である。この場合の太陽電池の断面構造は図1
4(B)に示す様になる。この場合、502で示すよう
に、基板401表面層を化学的にエッチングしたり、サ
ンドブラスト等で物理的にエッチングして、テクスチャ
ー構造を形成する。図14(A)に示す方法では、結晶
性シリコン薄膜の膜厚が減少するのに対し、図14
(B)に示す方法では、膜厚を変えることなくテクスチ
ャー構造を得られる。
【0246】テクスチャー構造は、太陽光を効率良く利
用することが可能となるので、吸収係数の小さい結晶性
シリコン薄膜を利用する太陽電池にとって非常に有効な
技術である。従って、本発明に対してテクスチャー構造
を併用した図14で示される太陽電池は非常に高い変換
効率を有するものとなる。
【0247】〔実施例19〕 実施例13で説明した太
陽電池は、図11(D)において上面からの太陽光を利
用するものであった。従って、図15(A)に示す様
に、基板401の裏面にアルミニウム膜やチタン膜等の
遮光性を有する薄膜511を形成すると、半導体層40
5、408で吸収されずに透過した太陽光を反射して再
び利用し、太陽光の吸収効率を向上させることができ
る。
【0248】また、実施例13の様に基板401として
透光性基板(ここでは石英基板)を使用した場合には、
基板401の裏面側から入射した太陽光を利用すること
も可能である。その場合、図15(B)に示す様に、図
11(D)の透明導電膜409の代わりに遮光性を有す
る薄膜512を用いることで、太陽光を効率良く利用す
ることができる。
【0249】ただし、この場合は基板401の裏面側で
の太陽光の反射を防ぐため、反射防止膜513として酸
化珪素膜や窒化珪素膜等を形成することが望ましい。
【0250】また、本実施例は実施例3で説明したテク
スチャー構造と併用するとさらに太陽光の吸収効率を向
上させる上で効果的である。特に、本実施例の様に、光
電変換層に吸収係数の小さい結晶性シリコン薄膜を用い
る場合においては、非常に有効な技術である。
【0251】〔実施例20〕 本実施例では、実施例1
3とは異なる方法でN型を有する結晶性シリコン薄膜を
形成する例を示す。具体的には、図11(D)において
結晶性シリコン薄膜の主表面に対してN型導電性を付与
する不純物元素を添加する例を示す。
【0252】図16(A)は、実施例13ないし17に
示した、ニッケル導入工程、ゲッタリング工程によって
結晶性シリコン薄膜を形成した状態であり、基板52
1、下地膜522、結晶性シリコン薄膜523で構成さ
れている。この状態でN型を付与する不純物元素として
リンをイオン注入法またはプラズマドープ法により添加
する。こうして、図16(B)に示す様なN型導電層5
24が形成される。
【0253】また、不純物元素の添加量はN型導電層5
24の主表面からの深さ(接合深さ)を0.01〜0.5 μm
とする様に調節する。N型導電層524はキャリアを収
集して電極へ送り込むだけの機能しか有していないの
で、可能な限り接合深さを浅くしてキャリアが再結合す
る確率を減じることが望ましい。
【0254】さらに、形成されたN型導電層524をレ
ーザーアニールやランプアニール等で活性化することが
望ましい。この活性化はイオン注入等により損傷を受け
た結晶性を回復する効果を併せ持っている。勿論、特に
損傷を受けやすいN型導電層524の表面(図16
(B)において上面側)を化学的にエッチング除去する
ことは非常に効果的である。
【0255】以上の様にしてN型導電層524が形成さ
れたら、その上に反射防止膜525を成膜する。本実施
例では、反射防止膜として1000Å厚の酸化珪素膜を用い
ることにする。
【0256】反射防止膜525を成膜したら、コンタク
トホールの形成および結晶性シリコン薄膜のエッチング
を行い、取り出し電極526、527を形成して図16
(C)に示す様な構造の太陽電池が完成する。
【0257】なお、結晶性シリコン薄膜523上に反射
防止膜525を成膜した後に、不純物元素をスルードー
ピングにより添加することも可能である。この様な構成
とすると、結晶シリコン薄膜523(正確にはN型導電
層524)の主表面に与える損傷を抑えることができる
ので、再結合中心となる欠陥を低減できる。
【0258】〔実施例21〕 本実施例では、本発明を
利用した太陽電池の別の構造の例を示す。まず、実施例
13等で説明したように、ニッケル元素による結晶化工
程、ハロゲン元素やリンによるゲッタリング工程を経
て、本発明を利用した結晶性を改善した結晶性シリコン
薄膜を得る。図17(A)において、531はアルミナ
基板、532は酸化珪素膜でなる下地膜、533は本発
明により得られた結晶性シリコン薄膜である。
【0259】また、結晶性シリコン薄膜533上には反
射防止膜として窒化珪素膜534が成膜されており、窒
化珪素膜534の少なくとも一部にはコンタクトホール
535が形成されている。このコンタクトホール535
は、後に取り出し電極を形成するために形成している。
(図17(A))
【0260】こうして図17(A)に示す状態が得られ
たら、この状態でN型を付与する不純物元素としてPイ
オンをイオン注入(イオンドーピング)法により添加す
る。即ち、この場合、窒化珪素膜に覆われた領域はスル
ードーピングによりPイオンが添加され、コンタクトホ
ール535により露出した領域は直接Pイオンの添加が
行われる。
【0261】従って、Pイオンを添加されることによっ
て形成されたN型導電層536は図17(B)に示す様
な形状となる。即ち、N型導電性領域536は結晶性シ
リコン薄膜533(厳密にはN型導電層536)の主表
面から見て深さ方向にイオン濃度分布が異なる領域を有
することになる。
【0262】そして、実施例13と同様の手段により取
り出し電極537、538を形成して、図17(C)に
示す構造の太陽電池が完成する。以上の様にして形成さ
れた本実施例の太陽電池は、基本的には窒化珪素膜53
4を通して不純物元素の添加を行っているので、結晶性
シリコン薄膜533に大きな損傷を与えることなく、N
型導電層536を形成することができる。
【0263】また、窒化珪素膜534の膜厚を変えるこ
とで不純物元素の添加する深さを調節することができる
ので、PN接合の接合深さを制御しやすい。さらに、結
晶性シリコン薄膜533とN型導電層536との接合面
積が実質的に増加するので変換効率の改善が期待され
る。
【0264】〔実施例22〕 本実施例では、本発明を
利用した太陽電池の別の構造の例を示す。まず、実施例
13ないし実施例17で説明したように、ニッケル元素
による結晶化工程、ハロゲン元素やリンによりゲッタリ
ング工程を経て、本発明を利用した結晶性を改善した結
晶性シリコン薄膜を得る。図18(A)において、54
1はセラミックス基板、542は窒化珪素膜でなる下地
膜、543は本発明により得られた結晶性シリコン薄膜
である。セラミックス基板541の上面はサンドブラス
ト処理により人工的に凹凸が形成されており、テクスチ
ャー構造となっている。
【0265】次に、結晶性シリコン薄膜543上にN型
導電層(N型を有する結晶性シリコン薄膜)544を成
膜し、レーザーアニールにより結晶性の改善を行う。さ
らに、結晶性シリコン薄膜543、N型導電層544の
一部を選択的にエッチング除去して図18(B)に示す
状態を得る。
【0266】図18(B)の状態が得られたら、熱酸化
処理を行い結晶性シリコン薄膜543、N型導電層54
4の表面に対して熱酸化膜545を形成する。この熱酸
化処理は、500 〜700 ℃程度の酸素雰囲気中で行えば十
分である。勿論、さらに高い温度で行っても構わない。
【0267】この熱酸化処理により、例えば546で示
される様な結晶性シリコン薄膜の側面にも熱酸化膜54
5が形成される。この様な側面に形成された熱酸化膜5
45は結晶性シリコン薄膜が大気中に露出するのを防ぐ
保護膜として機能する。こうして、図18(C)に示す
状態が得られる。
【0268】次に、反射防止膜547として例えばTi
2 で示される酸化チタン膜を成膜する。なお、熱酸化
膜545を反射防止膜として利用することも可能である
が、膜厚が薄すぎる場合などには十分に機能しないこと
がある。その様な場合には、本実施例に様に反射防止膜
を2層構造とすると良い。
【0269】そして、熱酸化膜545、反射防止膜54
7の一部に対してコンタクトホールを形成し、取り出し
電極548、549を形成して、図18(D)に示す構
造の太陽電池が完成する。
【0270】本実施例で示す太陽電池は、熱酸化膜54
5によって結晶性シリコン薄膜543が覆われているの
で、大気中に露出する面が存在しないことに特徴があ
る。この様な構造とすると、大気中からの汚染や水分等
の影響を受けず、高い信頼性を有する太陽電池を製造す
ることが可能である。
【0271】〔実施例23〕 実施例1〜12で説明し
たPN接合タイプのバルク型太陽電池または、実施例1
3〜22で説明したPN接合タイプの薄膜太陽電池に以
外にも、本発明はMINP構造、埋め込み電極構造とい
った構造においても適用することができる。
【0272】本発明は母体となる半導体層(光電変換
層)の結晶性を向上させる技術であるので、その応用で
ある太陽電池の構成および構造は問わない。従って、本
発明は極めて広い範囲の太陽電池に適用することができ
るのである。
【0273】〔実施例24〕 本発明を利用して製造し
た太陽電池は、様々な分野で使用することができる。例
えば、電卓、時計、ソーラーカー(バッテリー)は勿論
のこと、家庭の電力供給システム、電話BOX、自動販
売機、携帯機器、人工衛星を利用した発電システム、電
気分解装置(海水を酸素と水素に分解する場合などに利
用)、などに応用することが可能である。
【0274】ここで、本発明を様々な用途に利用した例
を図19を用いて説明する。なお、ここで挙げるのは一
例であり、太陽光の存在する範囲内ならば、これ以外の
用途であっても十分応用可能である。
【0275】まず、図19(A)に示すのは、家庭の電
力供給システムである。家屋601の屋根と一体化して
光電変換装置(太陽電池)602が設置されている。屋
根を利用するのは大面積を確保する上で都合が良い。光
電変換装置602の変換効率が向上すれば、占有面積を
下げることも可能となる。また、603は昼間に蓄えた
余剰電力を一時的に貯蔵し、夜間に有効利用するための
装置である。
【0276】図19(B)に示すのは、電話BOXであ
る。604はBOX、605は電話、606は光電変換
装置である。現状において電話BOXは道端などに無数
に配置されているが、太陽光を利用すれば大幅な電力の
節約になる。また、同様の理由で自動販売機に適用して
も有効であることは言うまでもない。
【0277】図19(C)に示すのは、携帯端末機器
(モバイルコンピュータまたはモービルコンピュータ)
であり、607は本体、608は電源となる光電変換装
置、609は入力ペンである。即ち、この携帯端末機器
は入力ペン609で液晶ディスプレイ610の画面上を
押すと、表示画面611が現れるタッチパネルタイプの
例である。携帯端末機器は低消費電力が要求されている
ので、光電変換装置608を電源として利用することが
可能である。
【0278】図19(D)に示すのは、人工衛星を利用
した発電システムであり、612は送電ユニット、61
3は光電変換装置である。送電ユニット612は人工衛
星としての機能や光電変換装置613で得られた直流を
マイクロ波に変換する機能などを有して構成される。
【0279】宇宙空間においては得られる太陽光614
の放射エネルギー密度が、地上で得られる太陽光よりも
1.4 倍程大きく、かつ昼夜の区別がないというメリット
を有している。従って、太陽光614は光電変換装置6
13、送電ユニット612を経由して、最終的にマイク
ロ波615として地球上で受信され利用される。
【0280】これらの応用製品は、基本的に電力を供給
できない場所においても恒久的に電気機器を使用する目
的や、太陽光という永久的なエネルギー源を有効に活用
する目的で開発されるものであり、これらが日常生活に
普及するためには必ず製造コストの削減が要求される。
【0281】本発明は、その様な場合において極めて有
効な技術であり、太陽電池の発展において、非常に有益
な技術である。
【0282】
【発明の効果】本発明を利用して製造されたバルク型太
陽電池は、安価なシリコン基板等を利用して形成するこ
とができるので製造コストを大幅に低減することができ
る。さらに、比較的低級グレードのシリコン基板(また
はシリコン薄膜)であっても、内部欠陥等の様な生成さ
れたキャリアの再結合中心となるトラップを低減するこ
とで高級グレードに匹敵する結晶性を有しているので、
高い変換効率を達成する太陽電池を製造することが可能
である。
【0283】また、本発明を利用して製造された薄膜太
陽電池は、結晶性シリコン薄膜を光電変換層として用い
ても、結晶性シリコン薄膜の内部欠陥が極めて少ないの
で膜厚を稼ぐことができる。即ち、結晶性シリコン薄膜
の吸収係数が小さいというデメリットを克服し、再結合
中心の極めて少ない太陽電池を形成することが可能であ
る。
【0284】また、本発明を利用して得られる結晶性シ
リコン薄膜は内部欠陥が極めて少なく、かつ、結晶性に
優れているので高い変換効率を達成する太陽電池を製造
することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の結晶性を向上させる過程を説明す
るための図。
【図2】 実施例1の太陽電池の製造過程を説明するた
めの図。
【図3】 実施例4、5の結晶性を向上させる過程を説
明するための図。
【図4】 実施例6の結晶性を向上させる過程を説明す
るための図。
【図5】 実施例7の太陽電池の製造過程を説明するた
めの図。
【図6】 実施例8の太陽電池の製造過程を説明するた
めの図。
【図7】 実施例9の太陽電池の製造過程を説明するた
めの図。
【図8】 実施例10の太陽電池の製造過程を説明する
ための図。
【図9】 実施例11の太陽電池の製造過程を説明する
ための図。
【図10】 実施例12の太陽電池の製造過程を説明す
るための図。
【図11】 実施例13の太陽電池の製造過程を説明す
るための図。
【図12】 実施例16の結晶性を向上させる過程を説
明するための図。
【図13】 実施例17の太陽電池の製造過程を説明す
るための図。
【図14】 実施例18の太陽電池の構造を説明するた
めの図。
【図15】 実施例19の太陽電池の構造を説明するた
めの図。
【図16】 実施例20の太陽電池の構造を説明するた
めの図。
【図17】 実施例21の太陽電池の構造を説明するた
めの図。
【図18】 実施例22の太陽電池の構造を説明するた
めの図。
【図19】 実施例24の太陽電池の応用例を示す図。
【図20】 ニッケル塩化物の蒸気圧特性を示す図。
【符号の説明】
101 半導体(シリコン)基板 102 Ni層 103 ニッケルシリサイド 104 酸化膜 105 結晶性が向上したシリコン基板 106 テクスチャー部 107 N型導電性領域 109 反射防止膜 110 強いP型を示す領域 111、112 取り出し電極 401 石英基板 402 下地膜(酸化珪素膜) 403 非晶質シリコン薄膜 404 Ni(ニッケル)層 405 結晶性シリコン薄膜 406 ニッケルシリサイド層 407 結晶性が向上したシリコン 408 酸化膜 409 N型導電層 410 透明導電膜 411、412 取り出し電極

Claims (34)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 結晶性を有する半導体基板と、前記半導
    体基板上に密接して保持された触媒元素を含む層とに対
    して加熱処理を加え、前記半導体基板内部の欠陥に前記
    触媒元素を偏析させる第1の工程と、 該半導体基板に対して少なくともハロゲン元素を含む雰
    囲気において加熱処理を加え、前記触媒元素をゲッタリ
    ングすると同時に前記半導体内部の欠陥を除去する第2
    の工程と、 前記第2の工程において前記半導体基板表面に形成され
    た酸化膜をエッチング除去することにより前記半導体表
    面を露出させる第3の工程と、 を少なくとも経て得られた半導体基板を用いて形成され
    た光電変換装置において、 前記半導体基板の内部における前記触媒元素の濃度は 5
    ×1018/cm3 以下であり、かつ、前記ハロゲン元素の濃
    度は 1×1016〜 1×1020/cm3 であることを特徴とする
    光電変換装置。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記触媒元素とは、
    Fe、Co、Ni、Pt、Cu、Auから選ばれた一種
    または複数種類の元素であることを特徴とする光電変換
    装置。
  3. 【請求項3】 請求項1において、前記ハロゲン元素と
    は、HCl、HF、HBr、Cl2、NF3 、F2 、Br
    2 から選ばれた一種または複数種類のガスから得られる
    ことを特徴とする光電変換装置。
  4. 【請求項4】 請求項1において、前記半導体基板は、
    結晶性シリコン基板であることを特徴とする光電変換装
    置。
  5. 【請求項5】 請求項1において、前記半導体基板の側
    面は酸化膜で覆われており、前記酸化膜の内部にはPイ
    オンおよび/またはBイオンが 1×1016〜 1×1020/cm
    3 の濃度で含まれていることを特徴とする光電変換装
    置。
  6. 【請求項6】 請求項1において、前記半導体基板の表
    面および/または裏面には一導電型を有する導電性領域
    が設けられており、 前記導電性領域はその一部において電極と接しており、 前記導電性領域は、前記電極と接する領域と、該電極と
    接しない領域とで深さ方向のイオン濃度分布が異なるこ
    とを特徴とする光電変換装置。
  7. 【請求項7】 結晶性を有するN型の半導体基板と、 前記半導体基板とPN接合する第1、第2のP型導電層
    とを有する光電変換装置であって、 結晶性を有するN型の半導体基板は触媒元素を含み、第
    1のP型導電層の前記触媒元素の濃度は、前記第2のP
    型導電層よりも高いことを特徴とする光電変換装置。
  8. 【請求項8】 結晶性を有する半導体基板と、前記半導
    体基板上に密接して保持された触媒元素を含む層とに対
    して加熱処理を加える第1の工程と、 該半導体基板に対して少なくともハロゲン元素を含む雰
    囲気において加熱処理を施す第2の工程と、 前記第2の工程において前記半導体基板表面に形成され
    た酸化膜をエッチング処理することにより前記半導体基
    板表面を露出させる第3の工程と、 を少なくとも有することを特徴とする光電変換装置の製
    造方法。
  9. 【請求項9】 結晶性を有する半導体基板と、 前記半導体基板上に密接して保持された触媒元素を含む
    層と、 に対して加熱処理を加える第1の工程と、 該半導体基板に対して少なくともハロゲン元素を含む雰
    囲気において加熱処理を施す第2の工程と、 前記第2の工程において前記半導体基板表面に形成され
    た酸化膜をエッチング処理することにより前記半導体基
    板表面を露出させる第3の工程と、 前記半導体基板の全面に酸化膜を形成する第4の工程
    と、 前記酸化膜の一部にコンタクトホールを形成する第5の
    工程と、 前記半導体基板の表面側および/または裏面側からイオ
    ン注入を行い、一導電性を有する導電性領域を形成する
    第6の工程と、 前記コンタクトホールを形成した位置に電極を形成する
    第7の工程と、 を有することを特徴とする光電変換装置の製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項8または請求項9において、前
    記第1の工程の温度範囲は450 〜700 ℃であり、前記第
    2の工程の温度範囲は700 〜1100℃であることを特徴と
    する光電変換装置の製造方法。
  11. 【請求項11】 請求項8または請求項9において、前
    記触媒元素とは、Fe、Co、Ni、Pt、Cu、Au
    から選ばれた一種または複数種類の元素であることを特
    徴とする光電変換装置の製造方法。
  12. 【請求項12】 請求項8または請求項9において、前
    記ハロゲン元素とは、HCl、HF、HBr、Cl2、N
    3 、F2 、Br2 から選ばれた一種または複数種類の
    ガスから得られることを特徴とする光電変換装置の製造
    方法。
  13. 【請求項13】 請求項8または請求項9において、前
    記半導体とは結晶性シリコンであることを特徴とする光
    電変換装置の製造方法。
  14. 【請求項14】 請求項9において、前記第4の工程で
    形成される酸化膜の一部は前記半導体基板の側面を覆っ
    ており、かつ、その内部にはPイオンおよび/またはB
    イオンが 1×1016〜 1×1020/cm3 の濃度で含まれてい
    ることを特徴とする光電変換装置の製造方法。
  15. 【請求項15】 請求項9において、前記第6の工程で
    形成される導電性領域は、前記第7の工程で形成される
    電極と接する領域と、該電極と接しない領域とで深さ方
    向のイオン濃度分布が異なることを特徴とする光電変換
    装置の製造方法。
  16. 【請求項16】 結晶性を有する半導体基板と、前記半
    導体基板上に密接して保持された触媒元素を含む層とに
    対して加熱処理を加える第1の工程と、 前記半導体基板表面に、15族に属する元素を含む層を
    形成する第2工程と、 前記半導体基板と前記5族に属する元素を含む層とに対
    して加熱処理と加える第3の工程と、 を有することを特徴とする光電変換装置の製造方法。
  17. 【請求項17】 結晶性を有する半導体基板と、前記半
    導体基板上に密接して保持された触媒元素を含む層とに
    対して加熱処理を加える第1の工程と、 前記半導体基板表面層に15族に属する元素を選択的に
    添加して、15族に属する元素を含む層を形成する第2
    工程と、 前記半導体基板と前記5族に属する元素を含む層とに対
    して加熱処理と加える第3の工程と、 を有することを特徴とする光電変換装置の製造方法。
  18. 【請求項18】 請求項16または請求項17におい
    て、前記15族に属する元素として、N、P、As、
    S、Biから選ばれた少なくとも1種類の元素を用いる
    ことを特徴とする光電変換装置の製造方法。
  19. 【請求項19】 基板上に形成された非単結晶半導体薄
    膜と、前記半導体薄膜上に密接して保持された触媒元素
    を含む層とに対して加熱処理を加え、前記半導体薄膜内
    部の欠陥に前記触媒元素を偏析させる第1の工程と、 該半導体薄膜に対して少なくともハロゲン元素を含む雰
    囲気において加熱処理を加え、前記触媒元素をゲッタリ
    ングすると同時に前記半導体薄膜内部の欠陥を除去する
    第2の工程と、 前記半導体薄膜の主表面に形成された酸化膜をエッチン
    グ除去することにより前記半導体薄膜の主表面を露出さ
    せる第3の工程と、 を少なくとも経て得られた半導体薄膜を用いて形成され
    た光電変換装置において、 前記半導体薄膜の内部には前記触媒元素が 5×1018/cm
    3 以下の濃度で残留し、かつ、前記ハロゲン元素が 1×
    1015〜 1×1020/cm3 の濃度で残留することを特徴とす
    る光電変換装置。
  20. 【請求項20】 請求項19において、前記第1の工程
    の温度範囲は450 〜700℃であり、前記第2の工程の温
    度範囲は700 〜1100℃であることを特徴とする光電変換
    装置。
  21. 【請求項21】 請求項19において、前記触媒元素と
    は、Fe、Co、Ni、Pt、Cu、Auから選ばれた
    一種または複数種類の元素であることを特徴とする光電
    変換装置。
  22. 【請求項22】 請求項19において、前記ハロゲン元
    素とは、HCl、HF、HBr、Cl2、NF3 、ClF
    3 、F2 、Br2 から選ばれた一種または複数種類のガ
    スから得られることを特徴とする光電変換装置。
  23. 【請求項23】 請求項19において、前記半導体薄膜
    とは結晶性シリコン薄膜であることを特徴とする光電変
    換装置。
  24. 【請求項24】 請求項19において、前記基板とは柔
    軟性を有する基板であることを特徴とする光電変換装
    置。
  25. 【請求項25】 請求項19において、前記半導体薄膜
    の主表面には一導電型を有する導電性領域が設けられて
    おり、 前記導電性領域は前記半導体薄膜の主表面から見て深さ
    方向にイオン濃度分布が異なる領域を有することを特徴
    とする光電変換装置。
  26. 【請求項26】 基板上に形成された非単結晶半導体薄
    膜と、前記半導体薄膜上に密接して保持された触媒元素
    を含む層とに対して加熱処理を加える第1の工程と、 該半導体薄膜に対して少なくともハロゲン元素を含む雰
    囲気において加熱処理を施す第2の工程と、 前記第2の工程において前記半導体薄膜表面に形成され
    た酸化膜をエッチング処理することにより前記半導体薄
    膜表面を露出させる第3の工程と、 を少なくとも有することを特徴とする光電変換装置の製
    造方法。
  27. 【請求項27】 基板上に形成された非単結晶半導体薄
    膜と、前記半導体薄膜上に密接して保持された触媒元素
    を含む層とに対して加熱処理を加える第1の工程と、 該半導体薄膜に対して少なくともハロゲン元素を含む雰
    囲気において加熱処理を施す第2の工程と、 前記第2の工程において前記半導体薄膜の主表面に形成
    された酸化膜をエッチング処理することにより前記半導
    体薄膜の主表面を露出させる第3の工程と、 前記半導体薄膜の主表面に反射防止膜を成膜する第4の
    工程と、 前記反射防止膜の少なくとも一部にコンタクトホールを
    形成する第5の工程と、 前記反射防止膜の上方からイオン注入法またはプラズマ
    ドーピング法により一導電性を付与する不純物元素を添
    加し、前記半導体薄膜の主表面近傍に前記半導体層と導
    電型の異なる導電性領域を形成する第6の工程と、 を少なくとも有し、 前記導電性領域は前記半導体薄膜の主表面から見て深さ
    方向にイオン濃度分布が異なる領域を有することを特徴
    とする光電変換装置の製造方法。
  28. 【請求項28】 請求項26または請求項27におい
    て、前記第1の工程の温度範囲は450 〜700 ℃であり、
    前記第2の工程の温度範囲は700 〜1100℃であることを
    特徴とする光電変換装置の製造方法。
  29. 【請求項29】 請求項26または請求項27におい
    て、前記触媒元素とは、Fe、Co、Ni、Pt、C
    u、Auから選ばれた一種または複数種類の元素である
    ことを特徴とする光電変換装置の製造方法。
  30. 【請求項30】 請求項26または請求項27におい
    て、前記ハロゲン元素とは、HCl、HF、HBr、C
    l2、NF3 、ClF3 、F2 、Br2 から選ばれた一種
    または複数種類のガスから得られることを特徴とする光
    電変換装置の製造方法。
  31. 【請求項31】 請求項26または請求項27におい
    て、前記半導体薄膜とは結晶性シリコン薄膜であること
    を特徴とする光電変換装置の製造方法。
  32. 【請求項32】 請求項26または請求項27におい
    て、前記基板とは柔軟性を有する基板であることを特徴
    とする光電変換装置の製造方法。
  33. 【請求項33】 基板上に形成された非単結晶半導体薄
    膜と、前記非単結晶半導体薄膜上に密接して保持された
    触媒元素を含む層とに対して加熱処理を加える第1の工
    程と、 前記非単結晶半導体表面層に15族に属する元素を選択
    的に添加して、15族に属する元素を含む層を形成する
    第2工程と、 前記非単結晶半導体と前記5族に属する元素を含む層と
    に対して加熱処理を加える第3の工程と、を有すること
    を特徴とする光電変換装置の製造方法。
  34. 【請求項34】 請求項33において、前記15族に属
    する元素として、N、P、As、S、Biから選ばれた
    少なくとも1種類の元素を用いることを特徴とする光電
    変換装置の製造方法。
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