JPH1080636A - メタノールの合成・改質用触媒として有用な複合超微粒子及びその製造方法 - Google Patents

メタノールの合成・改質用触媒として有用な複合超微粒子及びその製造方法

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JPH1080636A
JPH1080636A JP8260352A JP26035296A JPH1080636A JP H1080636 A JPH1080636 A JP H1080636A JP 8260352 A JP8260352 A JP 8260352A JP 26035296 A JP26035296 A JP 26035296A JP H1080636 A JPH1080636 A JP H1080636A
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和弘 佐山
Hitoshi Kusama
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 高温下においても粒子同士の焼結現象による
粒子の粗大化が抑制され、メタノールの合成・改質用触
媒として長期にわたって高い触媒活性を維持し得る複合
超微粒子及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 触媒作用を有するM元素(MはCu,A
g,Au,Ni,Pd,Pt,Fe,Co,Rh及びR
uからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属であ
る)又はその酸化物、或は更にQ元素(QはAl,G
a,Cr及びSiからなる群から選ばれた少なくとも1
種の金属であり、TがAl,Ga又はCr以外の元素の
場合、上記QとしてAl,Ga又はCrが選ばれ得る)
もしくはその酸化物を含む超微粒子をアークプラズマ法
により作製し、該超微粒子の表面に、触媒作用を促進す
るT元素(TはZn,Al,Ga及びCrからなる群か
ら選ばれた少なくとも1種の金属である)の酸化物から
なる多孔質の被膜を沈殿法により形成させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複合超微粒子、さ
らに詳しくは触媒作用を有する粒子の表面に触媒作用を
促進する多孔質の被膜を形成してなる複合超微粒子及び
その製造方法並びに該複合超微粒子のメタノール合成・
改質用触媒としての用途に関する。
【0002】
【従来の技術】メタノールは、触媒及び水蒸気の存在下
で、下記反応式(1)に示すように、比較的容易に水素
含有量の高いガスに改質される。 CH3 OH + H2 O → 3H2 + CO2 … (1) 得られる改質ガスは、水素を分離して燃料電池、発電用
燃料等のエネルギー源として利用される他、化学工業用
の原料としても利用される。一方、上記メタノールの水
蒸気改質反応と逆の反応、すなわち下記反応式(2)で
示されるように、二酸化炭素と水素とによりメタノール
を得るメタノール合成反応(もしくは二酸化炭素固定化
反応)は、二酸化炭素の再資源化法の一つとして注目さ
れている。 3H2 + CO2 → CH3 OH + H2 O … (2) すなわち、近年の経済活動の活発化に伴い、CO2 排出
量は年と共に増加の傾向にあり、このCO2 の蓄積によ
る地球温暖化が最近深刻化し、CO2 排出量の削減が地
球的規模で急務となっている。その解決策として種々の
CO2 削減法が検討されているが、中でも有力な方法と
してCO2 とH2 とを反応させてメタノールなどのアル
コール原料に変換し、再資源化する方法がある。この方
法により得られるメタノールは、エネルギー源として利
用することもできるが、化学品合成の際の基幹原料でも
あるため、この方法が確立できればCO2 排出量の削減
が可能となるだけでなく、石油資源の節約にも貢献でき
る。
【0003】前記メタノールの水蒸気改質反応やその逆
反応であるメタノール合成反応の触媒としては、酸化物
系触媒(特開平6−178938号、特開平4−122
450号、特公平5−67336号等参照)、金属系触
媒(特開平3−258738号、特公平4−30383
号等参照)及び合金系触媒が知られており、これらの中
では酸化物系触媒の性能が良いと考えられている。酸化
物の粉末は一般に共沈法を利用した液相法(湿式法)に
より製造されている。しかしながら、液相中で製造する
ために、不純物が粉末中に残留してしまい、高純度な粉
末が得られ難いという欠点がある。また、この液相法に
より製造した酸化物粉末を触媒材料として利用する場
合、得られる酸化物は触媒前駆体であるため、使用に先
立って還元処理によって触媒の活性化を施す必要がある
と共に、不純物の影響により充分な触媒活性が得られ難
いという問題もある。
【0004】また、従来の湿式法により触媒を作製する
場合、触媒を形成している粒子自身の形態を制御するこ
とは行われていないため、粒子同士の界面制御が不充分
であり、触媒活性の面において改良の余地があった。特
に、CO2 再資源化用触媒に用いられるCu−Zn−A
l−O系工業触媒では、メタノール空時収量STYW
(触媒1kg、単位時間当たりのメタノール収量)が5
00(g−CH3 OH/kg−catalyst・h
r)程度であり、CO2 を固定化させるためにはさらに
高活性を持つ触媒材料が望まれていた。
【0005】前記したような問題点に鑑み、最近では気
相法による酸化物系触媒の製造方法が提案されている。
例えば、林主税、上田良二、田崎明編「超微粒子」19
88年三田出版会発行、第115〜122頁には、He
ガス雰囲気中でCuとZnを高周波誘導加熱して蒸発さ
せ、超微粒子を作製する方法(所謂、ガス中蒸発法)が
開示されている。前記ガス中蒸発法では、数百オングス
トローム径のCu粒子の表面を20〜30オングストロ
ーム径のZnO粒子が覆った2層構造の超微粒子が得ら
れると報告されている(前掲刊行物「超微粒子」第11
9頁参照)。
【0006】このようにCu粒子の表面をそれよりも微
細なZnO粒子が覆った構造の超微粒子では、300〜
400℃程度の高温でのCu粒子の粒成長が起こり難
く、粒子の粗大化が比較的に抑えられるという利点は得
られるが、反面、触媒粒子中に含有される触媒活性を持
つCu量が見掛け上少なくなるため、触媒活性が低いと
いう問題がある。すなわち、このようなガス中蒸発法に
おいて、蒸発源の加熱温度を約1500℃と推定する
と、この温度におけるCuの蒸気圧は2Torrである
が、Znの蒸気圧は105 Torrであるため、Cuと
Znの蒸気圧は5桁の差がある。このように蒸気圧が大
きく異なる2成分を同一るつぼ内で溶解し、蒸発させる
と、蒸発初期には選択的に蒸気圧の大きい元素が先に蒸
発してしまい、Cuが蒸発されずに残ってしまう。その
結果、作製時間に応じて生成された超微粒子の組成に偏
りが生じ、触媒活性を持つCu量が見掛け上少なくな
る。その結果、得られる触媒粒子の触媒活性が低くな
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、高純度で極めて微細であり、従来から知られている
共沈法などの液相法やガス中蒸発法などの気相法で得ら
れるものよりも触媒活性が高く、メタノールの合成・改
質用触媒等として有利に用いることができる複合超微粒
子を比較的簡単な方法で提供することにある。さらに本
発明の目的は、触媒作用を有する金属元素又はその酸化
物の超微粒子の表面に、該超微粒子の触媒作用を促進す
る酸化物からなる多孔質の被膜が形成された形態を有
し、メタノールの合成・改質用触媒等としての触媒活性
が高いと共に、高温下においても粒子同士の焼結現象に
よる粒子の粗大化が抑制され、長期にわたって高い触媒
活性を維持し得る耐久性に優れた複合超微粒子、及びそ
の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明の一つの側面によれば、メタノールの合成・
改質用触媒として有用な複合超微粒子が提供される。そ
の一つの態様によれば、触媒作用を有するM元素(但
し、MはCu,Ag,Au,Ni,Pd,Pt,Fe,
Co,Rh及びRuからなる群から選ばれた少なくとも
1種の金属である。)又はその酸化物を含む超微粒子の
表面に、該超微粒子の触媒作用を促進するT元素(但
し、TはZn,Al,Ga及びCrからなる群から選ば
れた少なくとも1種の金属である。)の酸化物からなる
多孔質の被膜が形成されてなることを特徴とするM−T
系又は(M−T)−O系複合超微粒子が提供される。上
記M−T系又は(M−T)−O系複合超微粒子は、好適
には、原子%表示で(M50-97 −T3-5040-99 −O
1-60の組成を有する。
【0009】本発明の他の態様によれば、前記触媒作用
を有するM元素(但し、Mは前記定義と同じである。)
もしくはその酸化物、及びQ元素(但し、QはAl,G
a,Cr及びSiからなる群から選ばれた少なくとも1
種の金属であり、TがAl,Ga又はCr以外の元素の
場合、上記QとしてAl,Ga又はCrが選ばれ得
る。)もしくはその酸化物を含む超微粒子の表面に、該
超微粒子の触媒作用を促進するT元素(但し、Tは前記
定義と同じである。)の酸化物からなる多孔質の被膜が
形成されてなることを特徴とするM−Q−T系又は(M
−Q−T)−O系複合超微粒子が提供される。上記M−
Q−T系又は(M−Q−T)−O系複合超微粒子は、好
適には、原子%表示で(M50-97 −Q0-50−T3-50
40-99 −O1-60(但し、QとTの合計量は49.5原子
%以下である。)の組成を有する。
【0010】前記複合超微粒子の好適な態様において
は、前記超微粒子がCu、Cu2 O、CuO、Cu−A
l、Cu−Al−O、Cu−Cr、Cu−Cr−O、C
u−Si、Cu−Si−O、Cu−Ga及びCu−Ga
−Oからなる群から選ばれた少なくとも1種からなり、
前記被膜がZnOからなる。また、前記触媒作用を有す
る超微粒子の粒径は2〜100nmであり、前記被膜の
膜厚は0.5〜10nmであることが好ましい。前記し
たようなM−T系、(M−T)−O系、M−Q−T系又
は(M−Q−T)−O系複合超微粒子は、メタノールの
合成反応及び水蒸気改質反応の触媒として極めて有利に
用いることができる。
【0011】本発明の別の側面によれば、前記のような
複合超微粒子の製造方法も提供され、その方法は、M元
素(但し、Mは前記定義と同じである。)からなる原材
料、又は該M元素とQ元素(但し、Qは前記定義と同じ
である。)とからなる原材料を不活性ガスを含む雰囲気
中で加熱蒸発させ、M元素もしくはその酸化物、あるい
はさらにQ元素もしくはその酸化物を含む超微粒子を作
製する工程、及び該工程により作製された超微粒子をT
元素(但し、Tは前記定義と同じである。)のイオンを
含む溶液中に分散させ、該分散液中で上記超微粒子表面
にT元素の水酸化物の被膜を析出させて複合超微粒子を
作製し、次いで得られた複合超微粒子を加熱脱水して上
記被膜を多孔質とする工程を含むことを特徴としてい
る。
【0012】好適な態様においては、前記超微粒子の作
製を、M元素又はM元素とQ元素とからなる合金を原材
料として用い、酸化性ガスを含む不活性ガス雰囲気中で
アーク溶解し、蒸発した材料を該雰囲気中の酸化性ガス
と反応させ、M元素もしくはその酸化物、あるいはさら
にQ元素もしくはその酸化物を含む超微粒子を作製し、
また、前記超微粒子をT元素の塩を含有する水溶液中に
分散させ、該分散液中にアルカリを加えて中和反応を行
い、上記超微粒子表面にT元素の水酸化物の被膜を析出
させ、次いで得られた複合超微粒子を加熱脱水して上記
被膜を酸化物の多孔質膜とする。より具体的な態様にお
いては、前記M元素としてCuを用い、作製されたCu
−O系の超微粒子を硝酸亜鉛水溶液中に分散させ、該水
溶液にアルカリを添加することにより上記Cu−O系超
微粒子の表面に水酸化亜鉛の被膜を形成させて複合超微
粒子を作製し、得られた複合超微粒子をさらに加熱処理
して脱水反応を起こさせることにより、上記Cu−O系
超微粒子の表面に多孔質のZnO被膜を形成してCu−
T系、(Cu−T)−O系、Cu−Q−T系又は(Cu
−Q−T)−O系複合超微粒子を製造する。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明者らは、触媒作用を有する
Cu等からなる超微粒子の表面を、触媒作用を促進する
ZnO等からなる多孔質の被膜で覆うことにより、触媒
粒子の高温における焼結、粒成長が抑制され、かつ触媒
特性が著しく向上することを見い出し、本発明を完成す
るに到った。一般に、微細なCn−Zn系触媒粒子は、
当初は比較的大きな比表面積を有しているため、例えば
300℃程度までの温度環境下では比較的優れた初期触
媒活性を示すが、その温度環境下に長時間保持すると粒
子相互間に焼結現象が発生し、粒子の粗大化が起こるた
め、触媒活性が著しく低下するという問題がある。これ
に対して本発明の複合超微粒子は、触媒作用を有する超
微粒子の表面がZnO等の高融点の多孔質の被膜で覆わ
れているため、触媒作用を有する超微粒子同士の接触が
防止され、上記超微粒子同士が高温においても融着し難
くなり、触媒粒子の高温における焼結、粒成長が抑制さ
れる。従って、メタノールの合成反応や水蒸気改質反応
において、粒子の粗大化を生ずることなく安定な複合状
態を保持できる。
【0014】また、一般に触媒反応は触媒表面で進行す
るため、単位質量あたりの活性点が多ければそれだけ高
活性が期待できる。図2は一般のCu/ZnO触媒の状
態の模式図を示しているが、このCu/ZnO触媒の場
合、Cu粒子とZnO粒子が混合状態のため、粉末同士
の接点が接合部21となる。これに対して、本発明の複
合超微粒子では、図1の模式図に示されるように、触媒
作用を有する超微粒子(M、M−O、M−Q又はM−Q
−O)がZnO等の被膜(T−O)で覆われており、触
媒作用を有する超微粒子(M、M−O、M−Q又はM−
Q−O)の表面全体と多孔質の被膜(T−O)との間の
多数の接点が接合部20となる。そして、上記被膜(T
−O)は多孔質であるため反応ガス等の原料は該被膜中
を通過又は浸透することができる。上記のような接合部
が触媒反応が起こる活性点と考えた場合、一般のCu/
ZnO触媒に比べて、本発明の複合超微粒子の場合、触
媒作用を有する超微粒子と触媒作用を促進する物質との
界面の活性点の面積が非常に大きくなる。そのため、著
しく高い触媒活性を示す。従って、本発明の複合超微粒
子は、比較的高温域での上記反応において優れた触媒活
性を示し、また長期にわたって安定した高い触媒活性を
示し、耐久性に優れたメタノールの合成・改質用触媒と
して有利に用いることができる。
【0015】前記したように、本発明の複合超微粒子の
一つの態様は、触媒作用を有するM元素又はその酸化物
を含む超微粒子の表面に、該超微粒子の触媒作用を促進
するT元素の酸化物からなる多孔質の被膜が形成された
M−T系又は(M−T)−O系複合超微粒子である。触
媒作用を有するM元素としては、Cu,Ag,Au,N
i,Pd,Pt,Fe,Co,Rh及びRuからなる群
から選ばれた少なくとも1種の金属が用いられる。一
方、触媒作用を促進するT元素としては、Zn,Al,
Ga及びCrからなる群から選ばれた少なくとも1種の
金属が用いられ、これらの金属は水素分子を吸着し、こ
れを解離させる作用を有するため、上記超微粒子の触媒
作用を促進する働きを有する。ここで、(M−T)−O
という表現は、M元素及びT元素がそれぞれ又は両方と
も金属及び/又は酸化物の構造を有する概念を示す包括
的表現と理解されるべきであり、他の表現についても同
様である。
【0016】上記M−T系又は(M−T)−O系複合超
微粒子の金属成分のみの組成範囲は、原子%表示でM
50-97 −T3-50、好ましくはM55-95 −T5-45、さらに
好ましくはM75-90 −T10-25 である。触媒粒子中のM
成分(超微粒子部分)の量が50原子%未満の場合、触
媒活性を示すM金属又はその酸化物の割合が少なく、多
孔質被膜部分の量が多く(厚く)なるため、全体として
の触媒活性が低下する。
【0017】本発明の複合超微粒子においては、前記M
元素の一部、好ましくは50原子%以下を、Al,G
a,Cr及びSiからなる群から選ばれた少なくとも1
種のQ元素で置換することもできる。すなわち、本発明
の複合超微粒子の他の態様は、前記触媒作用を有するM
元素もしくはその酸化物、及びQ元素もしくはその酸化
物を含む超微粒子の表面に、該超微粒子の触媒作用を促
進する前記T元素の酸化物からなる多孔質の被膜が形成
されたM−Q−T系又は(M−Q−T)−O系複合超微
粒子である。ここで、Q元素は、M元素又はその酸化物
からなる超微粒子中に固溶しているか、金属又は酸化物
の形態でM元素又はその酸化物からなる粒子内部に一体
的に取り込まれているか、あるいは金属又は酸化物の粒
子として存在し又はM元素又はその酸化物からなる粒子
の表面に付着して存在しており、それによって超微粒子
同士がくっ付き合わないように分散度を向上させる効果
がある。なお、前記T元素としてAl,Ga又はCr以
外の元素が用いられる場合、上記Q元素としてAl,G
a又はCrを選択して用いることが好ましい。
【0018】上記M−Q−T系又は(M−Q−T)−O
系複合超微粒子の金属成分のみの組成範囲は、原子%表
示でM50-97 −Q0-50−T3-50(但し、QとTの合計量
は50原子%以下である。)、好ましくはM55-95 −Q
5-40−T3-30、さらに好ましくはM75-90 −Q7-15−T
4-12である。触媒粒子中のQ成分の量及びQ成分とT成
分の合計量がそれぞれ50原子%を超える場合、触媒活
性を示すM金属又はその酸化物の割合が相対的に少なく
なり、全体としての触媒活性が低下するため好ましくな
い。
【0019】触媒材料としての特性を考慮した場合、前
記超微粒子の粒径は2〜100nm、好ましくは2〜5
0nm、超微粒子の表面に被覆される被膜の膜厚は0.
5〜10nmの範囲が好ましい。なお、本発明の複合超
微粒子は、前記反応式(1)で示されるメタノールの水
蒸気改質反応や前記反応式(2)で示される二酸化炭素
と水素からメタノールを合成する反応の他にも、類似の
反応、例えば一酸化炭素と水素からメタノールを合成す
る反応及びその逆反応、二酸化炭素+一酸化炭素+水素
からメタノールを合成する反応(二酸化炭素と一酸化炭
素が混ざっている場合)及びその逆反応の触媒としても
有利に用いることができる。
【0020】以上のような本発明の複合超微粒子は、M
元素からなる原材料、又は該M元素とQ元素とからなる
原材料を不活性ガス雰囲気中で加熱蒸発させ、M元素も
しくはその酸化物、あるいはさらにQ元素もしくはその
酸化物を含む超微粒子を作製する工程、及び該工程によ
り作製された超微粒子をT元素のイオンを含む溶液中に
分散させ、通常の沈殿法により、上記分散液中で超微粒
子表面にT元素の水酸化物の被膜を析出させて複合超微
粒子を作製し、次いで得られた複合超微粒子を加熱脱水
して上記被膜を多孔質とする工程により得ることができ
る。すなわち、本発明の複合超微粒子の製造方法は、乾
式法による超微粒子の作製と湿式法による多孔質被膜の
形成とを組み合わせたことに特徴を有する。以下、本発
明の複合超微粒子の製造方法について説明する。
【0021】超微粒子の作製:まず、原材料を不活性ガ
ス雰囲気中で加熱蒸発させ、M元素もしくはその酸化
物、あるいはさらにQ元素もしくはその酸化物を含む超
微粒子を作製する。加熱溶解法としては、アーク溶解法
の他、高周波加熱溶解法、プラズマジェット加熱法、高
周波誘導加熱法(高周波プラズマ加熱)、電子ビーム加
熱法、レーザービーム加熱法なども用いることが可能で
あるが、特にアークプラズマ法が作製する超微粒子の収
量等の点で好ましい。
【0022】前記雰囲気ガスとしては、Ar、He、N
2 等の不活性ガス、あるいは不活性ガスと酸素、オゾ
ン、一酸化二窒素等の酸化性ガスの混合ガスを用いるこ
とができる。この場合、酸素ガスの割合は0.1〜50
%の範囲が好ましい。雰囲気中の酸素ガスの割合が0.
1%未満の場合、酸素プラズマの効果が殆どなくなり、
酸化物が生成し難くなる。一方、酸素ガスの割合が50
%を超えると、酸素プラズマの効果が強くなり、電極の
消耗が激しく、短時間に電極が短くなりすぎて、アーク
が不安定になったり、最悪の場合発生しなくなり、超微
粒子が作製されなくなる恐れがある。なお、窒素−酸素
混合ガスを用いる場合には、乾燥空気も利用することが
でき、それによって超微粒子を安価に製造することがで
きる。なお、雰囲気ガスとして不活性ガスのみを用いた
場合、超微粒子生成の段階では酸化物は生成しないが、
これらの超微粒子の一部は徐酸化処理の過程で酸化され
て酸化物となる。ここで、徐酸化処理とは、蒸発室内で
生成した超微粒子をそのまま大気中に出すと燃焼してし
まうため、酸素を徐々にチャンバー内に供給して粒子表
面に酸化膜を形成して安定化する処理をいう。
【0023】雰囲気ガスの圧力(全圧)は3〜200k
Paの範囲が適当である。3kPa未満ではアークプラ
ズマが不安定となり、超微粒子が発生し難くなる。一
方、200kPaを超えると、発生する超微粒子の生成
量は殆ど変化しなくなる。以下、アークプラズマ法に好
適に用いることができる超微粒子作製装置を示す図3を
参照しながら説明する。
【0024】図3は、本発明に従ってアーク溶解により
触媒作用を示す超微粒子を作製するのに好適な装置の一
例を示し、後述する実施例において使用した装置の概略
構成図である。この装置1は、溶解室2とグローブボッ
クス3とからなる。溶解室2内には、原料(母合金)A
を配置するハース4がモータ12により回転自在に配設
されている。また、溶解室2内のハース4上部には、ハ
ース4に配置された母合金Aに接近自在にアーク電極5
が配設されている。溶解室2とグローブボックス3は収
集管6によって連通されており、該収集管6のグローブ
ボックス3内に位置する収集管後端7にはフィルター8
が着脱自在に取り付けられている。符号9はガス混合器
であり、所定濃度の酸素ガスを含む窒素ガスを溶解室2
中へ供給する。符号10はターボ分子ポンプ、11はメ
カニカルブースターポンプとロータリーポンプであり、
これらによって溶解室2とグローブボックス3との間の
差圧が制御される。
【0025】次に、操作手順について説明する。まず、
所定分圧の酸素を含む雰囲気ガスを所定の流量で溶解室
2内へ供給し、溶解室2内のガス圧を所定の圧力に設定
する。この際、雰囲気ガスとして大気を用いる場合以外
は、一旦、装置内を真空引きしておいた方が好ましい。
その後、通常のアーク溶解と同様、母合金Aとアーク電
極5との間でアーク放電を起こしてアークプラズマCを
発生させることにより、母合金Aが高温になり、蒸発
し、超微粒子Bが発生する。この母合金Aから発生した
超微粒子Bは、雰囲気中の酸素と反応し、溶解室2とグ
ローブボックス3との間の差圧によって生ずるガスの流
れに乗って収集管6に吸引され、その後端に設置された
フィルター8により捕集される。
【0026】超微粒子表面への多孔質被膜の形成:上記
のようにして作製した超微粒子をT元素の塩、例えば硝
酸塩、硫酸塩、塩化物等を含有する水溶液中に分散さ
せ、該分散液中にNH4 OH(アンモニア水)、炭酸ナ
トリウム等のアルカリを加えて中和反応を行い、上記超
微粒子表面にT元素の水酸化物の被膜を析出させる。次
いで、得られた複合超微粒子を加熱脱水して上記被膜を
多数の開放気孔を有する酸化物の多孔質膜とする。
【0027】例えば、Cu−Al−O系超微粒子の表面
に酸化亜鉛の多孔質膜を形成する場合、まず、作製した
Cu−Al−O系超微粒子をZn(NO32 水溶液中
に分散させ、この分散液にアルカリとして例えばNH4
OHを適量滴下すると、中和反応によりCu−Al−O
系超微粒子表面にZn(OH)2 が膜状に析出した沈殿
物が得られる。得られた沈殿物を濾過し、加熱乾燥する
ことにより、Zn(OH)2 は脱水反応により多数の開
放気孔を有する多孔質の酸化物(ZnO)膜となる。こ
のようにして、触媒作用を示すCu−Al−O系超微粒
子表面が多孔質のZnO膜で覆われたCu−Al−Zn
−O系複合超微粒子を得ることができる。形成するZn
O膜の量は、分散させる超微粒子の量、Zn(NO3
2 水溶液の濃度及び滴下するNH4 OH量によりコント
ロールすることができる。
【0028】
【実施例】以下、実施例を示して本発明についてさらに
具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定される
ものでないことはもとよりである。
【0029】実施例1 触媒作用を示す超微粒子の作製:Cu−Al系母合金を
用いて前述した図3に示すような装置によりアーク溶解
を行い、Cu−Al−O系超微粒子を作製した。作製条
件を下記表1に示す。
【表1】
【0030】複合超微粒子の作製:前記アークプラズマ
法により作製されたCu−Al−O系超微粒子をZn
(NO32 水溶液中に均一に分散させ、この分散液に
NH4 OHを滴下することにより、上記Cu−Al−O
系超微粒子の表面にZn(OH)2 が膜状に析出した沈
殿物が得られた。次いで、この沈殿物を洗浄、濾過し、
85℃で脱水・乾燥させたものを触媒材料として用い
た。
【0031】触媒特性の評価:上記のようにして作製し
たCu−Al−Zn−O系複合超微粒子を用いて、メタ
ノール合成触媒としての評価を行った。触媒特性評価
は、加圧固定床流通式反応装置を用い、下記表2に示す
条件に基づいて行った。
【表2】 また、比較例としてZnO被膜を形成していないCu−
Al−O系超微粒子を用いて上記と同様の触媒評価を行
った。評価試験の結果を下記表3に示す。
【0032】
【表3】 上記表3から明らかなように、Cu−Al−O系超微粒
子表面にZnO多孔質膜が被覆されている本発明の複合
超微粒子のメタノール空時収量は、ZnO多孔質膜を形
成していない超微粒子の350(g−CH3 OH/kg
・hr)に比べて2倍以上の820(g−CH3 OH/
kg・hr)と大幅に向上していた。また、市販の工業
用触媒(Cu−Zn−Al−O系触媒)の約500(g
−CH3OH/kg・hr)に比べても著しく高いメタ
ノール空時収量であった。
【0033】前記触媒特性評価により、Cu−Al−O
系超微粒子表面にZnO多孔質膜を被覆することでメタ
ノール合成触媒としての特性が大幅に向上することが確
かめられたが、より高特性となる最適な組成を見い出す
ため、各Cu、Al及びZnの組成の違いに対する触媒
特性の変化を調査した。図4及び図5は、触媒超微粒子
中のZnの含有量を5at%に固定(Oを除外してC
u、Al及びZnで規格化した組成)したときのCu含
有量に対するCO2 転化率及びメタノール空時収量の変
化をそれぞれ示している。これらの図から明らかなよう
に、触媒性能はCu含有量が増加するに従ってCO2
化率及びメタノール空時収量ともに増加し、80at%
程度のCu含有量で最大の触媒特性を示した。特にメタ
ノール空時収量では1000(g−CH3OH/kg・
hr)を越える触媒特性が得られた。
【0034】次に、ZnO多孔質膜の最適被覆量を求め
るため、Cuの含有量を固定し、Znの含有量の触媒特
性に及ぼす影響について調査した。図6及び図7は、C
uの含有量を80at%に固定(Oを除外してCu、A
l及びZnで規格化した組成)したときのCO2 転化率
及びメタノール空時収量の変化をそれぞれ示している。
これらの図から明らかなように、触媒性能はZn含有量
数%の違いに対して大きく変化し、Zn:6at%程度
で最大のメタノール空時収量を示した。しかしながら、
図6及び図7から明らかなように、CO2 転化率とメタ
ノール空時収量の最大を示すZn組成が若干ズレてい
る。これは、CO2 転化率の高いZn:8at%では、
選択率が若干低いため、この様な最高特性に対しズレが
生じたものと判断される。
【0035】前記図4乃至図7に示すデータを基に、C
u、Al及びZnの最適組成を有するものと考えられる
Cu−Al−Zn−O複合超微粒子を前記と同様にアー
クプラズマ法及び沈殿法により作製し、触媒特性を調べ
た。なお、触媒評価の条件は前記表2に示すとおりであ
る。結果は以下のとおりであった。 組成:Cu81Al13.2Zn5.8 −O CO2 転化率:19.9% CH3 OH選択率:50.6% CH3 OH収率:10.1% メタノール空時収量:1056(g−CH3 OH/kg
・hr)
【0036】図8に、前記表3に示す触媒反応後のCu
79.7Al12Zn8.3 −Oの組成を有する複合超微粒子の
透過電子顕微鏡写真(TEM像)を示す。このTEM像
による観察から、10〜50nm程度の超微粒子のまわ
りに数nmの多孔質膜あるいは不規則な形態をした粒子
が付着している複合超微粒子となっていることが確認で
きた。次に、この複合超微粒子の中心部の粒子やそのま
わりの数nmの多孔質膜の構成元素を調べるため、ED
Xにより分析を行った。尚、この分析はAlメッシュを
用いて行った。この結果、複合超微粒子の中心部の部分
からは主にCuが検出され、また、弱いAlのピークも
観察された。他方、まわりの膜状の部分からはZnが検
出された。尚、Alの強いピークも検出されたが、この
Alのピークはメッシュの影響と考えられる。
【0037】次に、種々の複合超微粒子の触媒反応の前
後の相変化について調査した。図9はCu79.9Al16.8
Zn3.3 −O複合超微粒子の触媒反応前のX線回折図、
図10は触媒反応後のX線回折図を示している。また、
図11はCu57.1Al38.5Zn4.4 −O複合超微粒子の
触媒反応前のX線回折図、図12は触媒反応後のX線回
折図を示している。図9に示されるように、Cu含有量
の多いCu79.9Al16.8Zn3.3 −O複合超微粒子では
触媒反応前はCu2 O相及びCuO相から成っていた。
この超微粒子より20at%程度Cu量を少なくしたC
57.1Al38.5Zn4.4 −O複合超微粒子では、図11
に示されるように、触媒反応前ではCuO相及びCu2
O相の他に若干の複合化合物がみられた。尚、この複合
化合物相はJCPDSよりCu3 Zn3 Al2 (OH)
16CO3.42 相と考えられた。しかし、触媒反応後で
はこれらの複合超微粒子はH2 ガスにより還元されるた
め、酸化物相及び複合化合物相が消失し、金属Cu相に
変化したことが確認できた。種々の複合超微粒子の触媒
反応前後の相変化及び触媒特性についての調査結果か
ら、Cu含有量が低い程複合化合物相の生成割合が多く
なり、それに伴ってメタノール空時収量も低下すること
が確認された。従って、複合超微粒子中に触媒作用を示
す金属(Cu)の酸化物相(Cu2 O、CuO)が存在
することが、高活性の触媒材料を得るためには重要なフ
ァクターと考えられる。
【0038】実施例2 原料として銅を用いて実施例1と同様なアーク溶解法に
よりCu−O系超微粒子を作製し、その後、T元素(T
=Zn,Al,Ga又はCr)の塩を含む溶液中に分散
させ、実施例1と同様の沈殿法により複合超微粒子を作
製した。得られたCu−T−O系複合超微粒子の触媒特
性について、実施例1と同様の方法により評価した。種
々のCu含有量におけるCO2 転化率の変化を図13
に、またメタノール空時収量の変化を図14に示す。
【0039】実施例3 原料として銀を用いて実施例1と同様なアーク溶解法に
よりAg−O系超微粒子を作製し、その後、T元素(T
=Zn,Al,Ga又はCr)の塩を含む溶液中に分散
させ、実施例1と同様の沈殿法により複合超微粒子を作
製した。得られたAg−T−O系複合超微粒子の触媒特
性について、実施例1と同様の方法により評価した。種
々のAg含有量におけるCO2 転化率の変化を図15
に、またメタノール空時収量の変化を図16に示す。
【0040】実施例4 原料として金を用いて実施例1と同様なアーク溶解法に
よりAu−O系超微粒子を作製し、その後、T元素(T
=Zn,Al,Ga又はCr)の塩を含む溶液中に分散
させ、実施例1と同様の沈殿法により複合超微粒子を作
製した。得られたAu−T−O系複合超微粒子の触媒特
性について、実施例1と同様の方法により評価した。種
々のAu含有量におけるCO2 転化率の変化を図17
に、またメタノール空時収量の変化を図18に示す。
【0041】実施例5 原料としてニッケルを用いて実施例1と同様なアーク溶
解法によりNi−O系超微粒子を作製し、その後、T元
素(T=Zn,Al,Ga又はCr)の塩を含む溶液中
に分散させ、実施例1と同様の沈殿法により複合超微粒
子を作製した。得られたNi−T−O系複合超微粒子の
触媒特性について、実施例1と同様の方法により評価し
た。種々のNi含有量におけるCO2 転化率の変化を図
19に、またメタノール空時収量の変化を図20に示
す。
【0042】実施例6 原料としてパラジウムを用いて実施例1と同様なアーク
溶解法によりPd−O系超微粒子を作製し、その後、T
元素(T=Zn,Al,Ga又はCr)の塩を含む溶液
中に分散させ、実施例1と同様の沈殿法により複合超微
粒子を作製した。得られたPd−T−O系複合超微粒子
の触媒特性について、実施例1と同様の方法により評価
した。種々のPd含有量におけるCO2 転化率の変化を
図21に、またメタノール空時収量の変化を図22に示
す。
【0043】実施例7 原料として白金を用いて実施例1と同様なアーク溶解法
によりPt−O系超微粒子を作製し、その後、T元素
(T=Zn,Al,Ga又はCr)の塩を含む溶液中に
分散させ、実施例1と同様の沈殿法により複合超微粒子
を作製した。得られたPt−T−O系複合超微粒子の触
媒特性について、実施例1と同様の方法により評価し
た。種々のPt含有量におけるCO2 転化率の変化を図
23に、またメタノール空時収量の変化を図24に示
す。
【0044】実施例8 原料として鉄を用いて実施例1と同様なアーク溶解法に
よりFe−O系超微粒子を作製し、その後、T元素(T
=Zn,Al,Ga又はCr)の塩を含む溶液中に分散
させ、実施例1と同様の沈殿法により複合超微粒子を作
製した。得られたFe−T−O系複合超微粒子の触媒特
性について、実施例1と同様の方法により評価した。種
々のFe含有量におけるCO2 転化率の変化を図25
に、またメタノール空時収量の変化を図26に示す。
【0045】実施例9 原料としてコバルトを用いて実施例1と同様なアーク溶
解法によりCo−O系超微粒子を作製し、その後、T元
素(T=Zn,Al,Ga又はCr)の塩を含む溶液中
に分散させ、実施例1と同様の沈殿法により複合超微粒
子を作製した。得られたCo−T−O系複合超微粒子の
触媒特性について、実施例1と同様の方法により評価し
た。種々のCo含有量におけるCO2 転化率の変化を図
27に、またメタノール空時収量の変化を図28に示
す。
【0046】実施例10 原料としてロジウムを用いて実施例1と同様なアーク溶
解法によりRh−O系超微粒子を作製し、その後、T元
素(T=Zn,Al,Ga又はCr)の塩を含む溶液中
に分散させ、実施例1と同様の沈殿法により複合超微粒
子を作製した。得られたRh−T−O系複合超微粒子の
触媒特性について、実施例1と同様の方法により評価し
た。種々のRh含有量におけるCO2 転化率の変化を図
29に、またメタノール空時収量の変化を図30に示
す。
【0047】実施例11 原料としてルテニウムを用いて実施例1と同様なアーク
溶解法によりRu−O系超微粒子を作製し、その後、T
元素(T=Zn,Al,Ga又はCr)の塩を含む溶液
中に分散させ、実施例1と同様の沈殿法により複合超微
粒子を作製した。得られたRu−T−O系複合超微粒子
の触媒特性について、実施例1と同様の方法により評価
した。種々のRu含有量におけるCO2 転化率の変化を
図31に、またメタノール空時収量の変化を図32に示
す。
【0048】実施例12 原料として銅とQ元素(Q=Ga,Cr又はSi)を用
いて実施例1と同様なアーク溶解法によりCu−Q−O
系超微粒子を作製し、その後、硝酸亜鉛水溶液中に分散
させ、実施例1と同様の沈殿法により複合超微粒子を作
製した。得られたCu−Q−Zn−O系複合超微粒子の
触媒特性について、実施例1と同様の方法により評価し
た。触媒超微粒子中のQ元素の含有量を5at%に固定
(Oを除外してCu,Q及びZnで規格化した組成)し
たときの種々のCu含有量におけるCO2 転化率を図3
3に、またメタノール空時収量を図34に示す。また、
触媒超微粒子中のCuの含有量を80at%に固定(O
を除外してCu,Q及びZnで規格化した組成)したと
きの種々のQ含有量におけるCO2 転化率を図35に、
またメタノール空時収量を図36に示す。
【0049】
【発明の効果】以上のように、本発明の複合超微粒子
は、触媒作用を有する金属元素又はその酸化物の超微粒
子の表面に、該超微粒子の触媒作用を促進する他の金属
元素の酸化物からなる多孔質の被膜が形成された形態を
有し、触媒作用を有する超微粒子と触媒作用を促進する
多孔質被膜との界面の活性点(接触点)の面積が非常に
大きいため、著しく高い触媒活性を示す。また、メタノ
ールの合成反応や水蒸気改質反応において、粒子同士の
焼結現象による粒子の粗大化が抑制され、長期にわたっ
て高い触媒活性を維持し得る。従って、本発明の複合超
微粒子は、触媒活性、耐久性に優れたメタノールの合成
・改質用触媒として有利に用いることができる。また、
本発明の方法によれば、上記のような優れた触媒特性を
有する複合超微粒子を、乾式法による超微粒子の作製と
湿式法による多孔質被膜の形成との組み合わせにより効
率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複合超微粒子の模式図である。
【図2】従来の一般的な触媒であるCu/ZnO触媒の
状態の模式図である。
【図3】本発明に従ってアーク溶解により複合超微粒子
を作製する装置の一例の概略構成図である。
【図4】酸素以外の構成成分割合でZnを5at%に固
定した種々のCu−Al−Zn−O系複合超微粒子を触
媒として用いたときのCu含有量とCO2 転化率との関
係を示すグラフである。
【図5】酸素以外の構成成分割合でZnを5at%に固
定した種々のCu−Al−Zn−O系複合超微粒子を触
媒として用いたときのCu含有量とメタノール空時収量
との関係を示すグラフである。
【図6】酸素以外の構成成分割合でCuを80at%に
固定した種々のCu−Al−Zn−O系複合超微粒子を
触媒として用いたときのZn含有量とCO2 転化率との
関係を示すグラフである。
【図7】酸素以外の構成成分割合でCuを80at%に
固定した種々のCu−Al−Zn−O系複合超微粒子を
触媒として用いたときのZn含有量とメタノール空時収
量との関係を示すグラフである。
【図8】触媒反応後のCu79.7Al12Zn8.3 −O複合
超微粒子の透過電子顕微鏡写真である。
【図9】触媒反応前のCu79.9Al16.8Zn3.3 −O複
合超微粒子のX線回折図である。
【図10】触媒反応後のCu79.9Al16.8Zn3.3 −O
複合超微粒子のX線回折図である。
【図11】触媒反応前のCu57.1Al38.5Zn4.4 −O
複合超微粒子のX線回折図である。
【図12】触媒反応後のCu57.1Al38.5Zn4.4 −O
複合超微粒子のX線回折図である。
【図13】Cu−T−O系複合超微粒子を触媒として用
いたときのCu含有量とCO2 転化率との関係を示すグ
ラフである。
【図14】Cu−T−O系複合超微粒子を触媒として用
いたときのCu含有量とメタノール空時収量との関係を
示すグラフである。
【図15】Ag−T−O系複合超微粒子を触媒として用
いたときのAg含有量とCO2 転化率との関係を示すグ
ラフである。
【図16】Ag−T−O系複合超微粒子を触媒として用
いたときのAg含有量とメタノール空時収量との関係を
示すグラフである。
【図17】Au−T−O系複合超微粒子を触媒として用
いたときのAu含有量とCO2 転化率との関係を示すグ
ラフである。
【図18】Au−T−O系複合超微粒子を触媒として用
いたときのAu含有量とメタノール空時収量との関係を
示すグラフである。
【図19】Ni−T−O系複合超微粒子を触媒として用
いたときのNi含有量とCO2 転化率との関係を示すグ
ラフである。
【図20】Ni−T−O系複合超微粒子を触媒として用
いたときのNi含有量とメタノール空時収量との関係を
示すグラフである。
【図21】Pd−T−O系複合超微粒子を触媒として用
いたときのPd含有量とCO2 転化率との関係を示すグ
ラフである。
【図22】Pd−T−O系複合超微粒子を触媒として用
いたときのPd含有量とメタノール空時収量との関係を
示すグラフである。
【図23】Pt−T−O系複合超微粒子を触媒として用
いたときのPt含有量とCO2 転化率との関係を示すグ
ラフである。
【図24】Pt−T−O系複合超微粒子を触媒として用
いたときのPt含有量とメタノール空時収量との関係を
示すグラフである。
【図25】Fe−T−O系複合超微粒子を触媒として用
いたときのFe含有量とCO2 転化率との関係を示すグ
ラフである。
【図26】Fe−T−O系複合超微粒子を触媒として用
いたときのFe含有量とメタノール空時収量との関係を
示すグラフである。
【図27】Co−T−O系複合超微粒子を触媒として用
いたときのCo含有量とCO2 転化率との関係を示すグ
ラフである。
【図28】Co−T−O系複合超微粒子を触媒として用
いたときのCo含有量とメタノール空時収量との関係を
示すグラフである。
【図29】Rh−T−O系複合超微粒子を触媒として用
いたときのRh含有量とCO2 転化率との関係を示すグ
ラフである。
【図30】Rh−T−O系複合超微粒子を触媒として用
いたときのRh含有量とメタノール空時収量との関係を
示すグラフである。
【図31】Ru−T−O系複合超微粒子を触媒として用
いたときのRu含有量とCO2 転化率との関係を示すグ
ラフである。
【図32】Ru−T−O系複合超微粒子を触媒として用
いたときのRu含有量とメタノール空時収量との関係を
示すグラフである。
【図33】酸素以外の構成成分割合でQ(Ga,Cr又
はSi)を5at%に固定した種々のCu−Q−Zn−
O系複合超微粒子を触媒として用いたときのCu含有量
とCO2 転化率との関係を示すグラフである。
【図34】酸素以外の構成成分割合でQ(Ga,Cr又
はSi)を5at%に固定した種々のCu−Q−Zn−
O系複合超微粒子を触媒として用いたときのCu含有量
とメタノール空時収量との関係を示すグラフである。
【図35】酸素以外の構成成分割合でCuを80at%
に固定した種々のCu−Q−Zn−O系複合超微粒子を
触媒として用いたときのQ(Ga,Cr又はSi)含有
量とCO2 転化率との関係を示すグラフである。
【図36】酸素以外の構成成分割合でCuを80at%
に固定した種々のCu−Q−Zn−O系複合超微粒子を
触媒として用いたときのQ(Ga,Cr又はSi)含有
量とメタノール空時収量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 超微粒子作製装置 2 溶解室 3 グローブボックス 5 アーク電極 6 収集管 8 フィルター 9 ガス混合器 10 ターボ分子ポンプ 11 メカニカルブースターポンプ、ロータリーポンプ A 母合金 B 超微粒子 C アークプラズマ 20,21 接合部
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B01J 23/62 B01J 23/62 Z 23/652 23/66 Z 23/66 23/68 Z 23/68 23/72 Z 23/72 23/86 Z 23/745 9155−4H C07C 29/154 23/75 9155−4H 29/158 23/755 9155−4H 31/04 23/835 C07B 61/00 300 23/86 B01J 23/64 103Z C07C 29/154 23/74 301Z 29/158 311Z 31/04 321Z // C07B 61/00 300 23/82 Z (72)発明者 福井 英夫 宮城県仙台市若林区若林3丁目15−15 (72)発明者 荒川 裕則 東京都千代田区霞が関1丁目3番1号 工 業技術院内 (72)発明者 岡部 清美 茨城県つくば市東1丁目1番 物質工学工 業技術研究所内 (72)発明者 佐山 和弘 茨城県つくば市東1丁目1番 物質工学工 業技術研究所内 (72)発明者 草間 仁 茨城県つくば市東1丁目1番 物質工学工 業技術研究所内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 触媒作用を有するM元素(但し、MはC
    u,Ag,Au,Ni,Pd,Pt,Fe,Co,Rh
    及びRuからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属
    である。)又はその酸化物を含む超微粒子の表面に、該
    超微粒子の触媒作用を促進するT元素(但し、TはZ
    n,Al,Ga及びCrからなる群から選ばれた少なく
    とも1種の金属である。)の酸化物からなる多孔質の被
    膜が形成されてなることを特徴とするM−T系又は(M
    −T)−O系複合超微粒子。
  2. 【請求項2】 原子%表示で(M50-97 −T3-50
    40-99 −O1-60の組成を有する請求項1に記載の複合超
    微粒子。
  3. 【請求項3】 触媒作用を有するM元素(但し、MはC
    u,Ag,Au,Ni,Pd,Pt,Fe,Co,Rh
    及びRuからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属
    である。)もしくはその酸化物、及びQ元素(但し、Q
    はAl,Ga,Cr及びSiからなる群から選ばれた少
    なくとも1種の金属であり、TがAl,Ga又はCr以
    外の元素の場合、上記QとしてAl,Ga又はCrが選
    ばれ得る。)もしくはその酸化物を含む超微粒子の表面
    に、該超微粒子の触媒作用を促進するT元素(但し、T
    はZn,Al,Ga及びCrからなる群から選ばれた少
    なくとも1種の金属である。)の酸化物からなる多孔質
    の被膜が形成されてなることを特徴とするM−Q−T系
    又は(M−Q−T)−O系複合超微粒子。
  4. 【請求項4】 原子%表示で(M50-97 −Q0-50−T
    3-5040-99 −O1-60(但し、QとTの合計量は49.
    5原子%以下である。)の組成を有する請求項3に記載
    の複合超微粒子。
  5. 【請求項5】 前記超微粒子がCu、Cu2 O、Cu
    O、Cu−Al、Cu−Al−O、Cu−Cr、Cu−
    Cr−O、Cu−Si、Cu−Si−O、Cu−Ga及
    びCu−Ga−Oからなる群から選ばれた少なくとも1
    種からなり、前記被膜がZnOからなる請求項1乃至4
    のいずれか一項に記載の複合超微粒子。
  6. 【請求項6】 前記触媒作用を有する超微粒子の粒径が
    2〜100nmであり、前記被膜の膜厚が0.5〜10
    nmである請求項1乃至5のいずれか一項に記載の複合
    超微粒子。
  7. 【請求項7】 前記請求項1乃至6のいずれか一項に記
    載の複合超微粒子からなるメタノールの合成・改質用触
    媒。
  8. 【請求項8】 M元素(但し、MはCu,Ag,Au,
    Ni,Pd,Pt,Fe,Co,Rh及びRuからなる
    群から選ばれた少なくとも1種の金属である。)からな
    る原材料、又は該M元素とQ元素(但し、QはAl,G
    a,Cr及びSiからなる群から選ばれた少なくとも1
    種の金属であり、TがAl,Ga又はCr以外の元素の
    場合、上記QとしてAl,Ga又はCrが選ばれ得
    る。)とからなる原材料を、不活性ガスを含む雰囲気中
    で加熱蒸発させ、M元素もしくはその酸化物、あるいは
    さらにQ元素もしくはその酸化物を含む超微粒子を作製
    する工程、及び該工程により作製された超微粒子をT元
    素(但し、TはZn,Al,Ga及びCrからなる群か
    ら選ばれた少なくとも1種の金属である。)のイオンを
    含む溶液中に分散させ、該分散液中で上記超微粒子表面
    にT元素の水酸化物の被膜を析出させて複合超微粒子を
    作製し、次いで得られた複合超微粒子を加熱脱水して上
    記被膜を多孔質とする工程を含むことを特徴とする複合
    超微粒子の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記超微粒子の作製を、M元素又はM元
    素とQ元素とからなる合金を原材料として用い、酸化性
    ガスを含む不活性ガス雰囲気中でアーク溶解し、蒸発し
    た材料を該雰囲気中の酸化性ガスと反応させ、M元素も
    しくはその酸化物、あるいはさらにQ元素もしくはその
    酸化物を含む超微粒子を作製する請求項8に記載の方
    法。
  10. 【請求項10】 前記超微粒子をT元素の塩を含有する
    水溶液中に分散させ、該分散液中にアルカリを加えて中
    和反応を行い、上記超微粒子表面にT元素の水酸化物の
    被膜を析出させ、次いで得られた複合超微粒子を加熱脱
    水して上記被膜を酸化物の多孔質膜とする請求項8又は
    9に記載の方法。
  11. 【請求項11】 前記M元素がCuであり、作製された
    Cu−O系の超微粒子を硝酸亜鉛水溶液中に分散させ、
    該水溶液にアルカリを添加することにより上記Cu−O
    系超微粒子の表面に水酸化亜鉛の被膜を形成させて複合
    超微粒子を作製し、得られた複合超微粒子をさらに加熱
    処理して脱水反応を起こさせることにより上記Cu−O
    系超微粒子の表面に多孔質のZnO被膜を形成する請求
    項8又は9に記載の方法。
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