JPH1078410A - 準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯の冷間圧延方法 - Google Patents

準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯の冷間圧延方法

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JPH1078410A
JPH1078410A JP23230796A JP23230796A JPH1078410A JP H1078410 A JPH1078410 A JP H1078410A JP 23230796 A JP23230796 A JP 23230796A JP 23230796 A JP23230796 A JP 23230796A JP H1078410 A JPH1078410 A JP H1078410A
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JP
Japan
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amount
steel strip
rolling
temperature
pass
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JP23230796A
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English (en)
Inventor
Nobukazu Tsukuda
宣和 佃
Hiroki Shiotani
礼機 塩谷
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Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Original Assignee
Nisshin Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯の板
厚および加工誘起マルテンサイト量を高精度で制御でき
る冷間圧延方法を提供する。 【解決手段】 各パスにおけるα′量測定値とそのα′
量目標値との差が、予め定める値以下であれば、α′量
測定値がα′量目標値に一致するように、鋼帯の温度を
制御する。鋼帯の温度は、圧延油の流量によって制御さ
れる。各パスにおけるα′量測定値とそのα′量目標値
との差が、予め定める値を超えるときには、鋼帯の温度
の制御量を最大にして、α′量測定値がα′量目標値に
一致するように、圧延速度が制御される。このように鋼
帯の温度および圧延速度を制御することによって、板厚
に影響を与えないように、α′量を制御することが可能
である。また、生産性の低下につながるおそれのある圧
延速度の制御をなるべく少なくして、生産性の低下を最
小限に止めることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、ばね材などの高強
度薄板材として汎用されるたとえばSUS301および
SUS304に代表される準安定オーステナイト(γ)
系ステンレス鋼帯を、多パス冷間圧延時に加工誘起マル
テンサイト量(以下、「α′量」と略記する場合があ
る)を制御して、硬さ、耐力および引張強さなどの機械
的特性の安定化および高精度化を図って圧延するために
好適に実施することができる準安定オーステナイト系ス
テンレス鋼帯の冷間圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】たとえば自動車のシートベルトを巻き取
るためのリトラクタゼンマイは、ばね材から成ってい
る。このようなばね材などの高強度薄板材として汎用さ
れるたとえばSUS301およびSUS304は、焼鈍
状態では均一なオーステナイト組織であるが、わずかな
冷間圧延によってオーステナイト相がマルテンサイト相
に変態する不安定なオーステナイト組織である。このよ
うなSUS301およびSUS304を代表鋼種とする
準安定オーステナイト系ステンレス鋼は、ばね材および
スチールベルトをはじめ、プレス加工用およびその他の
薄板成型用材として広範囲に用いられるため、鉄鋼メー
カにおいては、全長にわたって客先の要求する一定の機
械的性質を満たしたステンレス鋼帯を提供する必要があ
る。特に、ばね材およびスチールベルト用材として用い
られる場合には、薄肉で高いトルク値が要求されるた
め、一定の曲げおよび巻きによる塑性変形を少なくして
弾性変形域を広くし、ばね特性を向上し、しかもそのば
ね特性は全長にわたって安定したものでなければならな
い。そのため従来では、準安定オーステナイト系ステン
レス鋼帯の多パス冷間圧延時に、鋼帯の冷間圧延によっ
て発生した加工誘起マルテンサイト量をオンライン中に
測定しながら圧延速度と圧下量とを制御し、目標硬さお
よび目標板厚に的中させようとする冷間圧延方法が、本
件出願人によって、特開昭62−199214号公報に
提案されている。
【0003】この従来の技術では、次のようにして、目
標硬さおよび目標板厚が得られるように、圧延時の圧延
速度および圧下量を制御している。すなわち、準安定オ
ーステナイト系ステンレス鋼の強度は、オーステナイト
相の加工硬化に加えて、加工誘起マルテンサイト相の存
在が大きく関与し、硬さは固溶強化元素であるC(炭
素)およびN(窒素)量、圧延率ならびにα′量によっ
て実質上決定される。前記CおよびN量は製鋼時に決ま
る変動値であり、前記圧延率は圧延前の板厚と製品板厚
とによって決まる変動値であり、前記α′量は成分によ
るγ安定度、圧延率、各パスあたりの圧下量配分、圧延
速度、および各パス圧延時の鋼帯温度に影響される。前
記鋼帯温度は、圧延時の大気温度、ロール温度、圧延油
の温度および流量、圧延速度、ならびに各パスあたりの
圧下量によって変動する。
【0004】このような多くの変動要因のすべてを目標
α′量が得られるように、あるいは目標硬さが得られる
ように個別に制御することは、各要因が相互に関与し合
うために困難である。この問題を解決するために、ミル
本体を通過する鋼帯の各パスでの圧延速度と圧下量とを
操作因子として、目標硬さに対応するα′量と圧延率と
の相関を予め求めておいて目標パターンとし、各パスに
おける入側と出側とにおけるα′量、板厚および材料温
度を計測して得られた計測情報、ならびに各パスにおけ
る圧延速度、圧下量および圧延油温度の圧延情報をコン
ピュータに入力し、このコンピュータによって入力した
入力情報と目標パターンとを比較して、目標パターンに
近似させるために必要な次パス圧延での圧延速度と圧下
量とを算出し、この算出値に基づいて次パス圧延の圧延
速度と圧下量とを制御し、この制御を最終パスまで繰り
返して目標硬さおよび目標板厚を達成し得るように構成
されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このような従来の技術
では、鋼帯温度は、圧延時の大気温度、ロール温度、圧
延油の温度および流量、ならびに各パスあたりの圧下量
という多くの温度変動の要因が存在して相互に関与し合
い、すべての変動要因を制御することが困難であるとし
て、各パス毎に1つ前のパス圧延から求めた圧延速度と
圧下量とによって測定α′量が目標α′量となるよう
に、制御している。しかしながら一般にα′量を制御対
象に含まない冷間圧延では、最終パスで目標板厚を得る
ことが主目的であるために、各パス毎に板厚が目標パタ
ーンとして設定され、圧下量および圧延速度などの圧延
条件が、各パス毎に実測板厚が目標パターンに近似する
ように、制御されている。
【0006】上記の従来の技術では、このような制御量
に目標硬さを得るための制御量が重畳的に付加され、し
かも板厚制御とα′量制御とが独立して制御されていな
いため、板厚だけを制御目的としたとき、各パス毎の板
厚がほぼ全長にわたって目標板厚に高精度で近似できる
場合であっても、測定α′量と目標α′量との差を補償
するための制御量を付加すると、結果的に目標板厚から
離れる方向に前記圧延速度および圧下量を制御してしま
う場合が生じ得る。さらに詳しく述べると、所定のパス
スケジュールに従って圧延機に通板したとき、1パスあ
たりの板厚を目標板厚に近似させるために圧延速度およ
び圧下量が制御されて目標板厚に対して許容範囲内の板
厚が得られる場合に、α′量を増加させて目標α′量に
近似させるための制御が重畳されると、前記圧延速度は
低下する方向に制御され、かつ圧下量は増加する方向に
制御される。したがって、板厚とその目標値との差を0
にするための制御だけで冷間圧延したときに、各パス毎
の板厚を目標板厚の許容範囲内に合致させることができ
たにも拘わらず、α′量とその目標値との差を0とする
ための制御によって前記板厚がその目標板厚の許容範囲
から外れてしまうおそれがあるという問題が生じる。
【0007】また、板厚およびα′量の測定値と、板厚
およびα′量の目標パターンとの差から、次パス圧延で
の圧延速度と圧下量とを算出して、次パス圧延の圧延速
度と圧下量とを制御し、この制御を最終パスまで繰り返
しているので、各パス毎の板厚およびα′量の精度が低
くなってしまい、当然最終パスでの精度も低く、製品の
精度が低くなってしまう。万一、板厚またはα′量が最
終目標値の許容範囲から外れてしまった場合には、板厚
が最終目標値より大きい方向にかつα′量が少ない方向
に、許容範囲から外れてしまった場合を除いて修正する
ことができない。すなわち、パス圧延する度に、板厚は
小さくなり、α′量は多くなるので、板厚が最終目標値
より小さい方向に、またはα′量が最終目標値より多い
方向に外れている場合には、修正が不可能である。仮
に、修正が可能であったとしても、パス圧延を追加する
ことは、生産性の低下につながる。
【0008】したがって本発明の目的は、高精度の板厚
およびα′量を高い信頼性で得ることができる準安定オ
ーステナイト系ステンレス鋼帯の冷間圧延方法を提供す
ることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、冷間圧延ライ
ンの所定位置に設けられる加工誘起マルテンサイト量測
定センサおよび板厚測定センサによって、冷間圧延中の
準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯の加工誘起マル
テンサイト量および板厚をそれぞれ測定し、これらの加
工誘起マルテンサイト量測定値および板厚測定値が、各
パス毎に予め定める加工誘起マルテンサイト量目標値お
よび板厚目標値となるように、圧延条件を制御する準安
定オーステナイト系ステンレス鋼帯の冷間圧延方法にお
いて、各パス毎の加工誘起マルテンサイト量測定値とそ
の目標値との差が予め定める値以下であれば、前記各パ
ス毎の加工誘起マルテンサイト量測定値がその目標値に
一致するように、鋼帯の温度を制御し、前記各パス毎の
加工誘起マルテンサイト量測定値とその目標値との差が
前記予め定める値を超えたとき、鋼帯の温度の制御量を
最大にして、前記各パス毎の加工誘起マルテンサイト量
測定値がその目標値に一致するように、圧延速度を制御
することを特徴とする準安定オーステナイト系ステンレ
ス鋼帯の冷間圧延方法である。本発明に従えば、準安定
オーステナイト系ステンレス鋼帯の冷間圧延において、
各パスにおける加工誘起マルテンサイト量(α′量)測
定値とそのα′量目標値との差が、予め定める値以下で
あれば、α′量測定値がα′量目標値に一致するよう
に、鋼帯の温度が制御される。鋼帯の温度は、たとえば
圧延油の流量を制御することによって制御可能であり、
このように鋼帯の温度を制御することによって、板厚に
影響を与えないように、α′量を制御することができ
る。各パスにおけるα′量測定値とそのα′量目標値と
の差が、予め定める値を超えるときには、鋼帯の温度の
制御量を最大、たとえば鋼帯の温度を圧延油の流量によ
って制御する場合には、流量を最大または最小にして、
α′量測定値がα′量目標値に一致するように、圧延速
度が制御される。圧延速度は、板厚に実質上影響を与え
ない程度に制御され、圧延速度が変化されることによっ
て、圧延油流量の見かけ上の流量を変化させる。このよう
に鋼帯の温度を制御することだけでα′量の制御が困難
または不可能であるような場合には、圧延速度の制御を
重畳的に付加して、板厚に影響を与えないように、α′
量を制御することができる。このように、α′量の制御
は、板厚の制御と独立して成されるとともに、各パス毎
に成されるので、各パス毎に、高い信頼性で高精度に、
板厚およびα′量を制御することができる。また、板厚
への影響または生産性の低下につながるおそれのある圧
延速度の制御をなるべく少なくして、生産性が低下する
ことを最小限に止めることができる。
【0010】また本発明は、前記鋼帯の温度の制御は、
圧延油の温度および流量を、前記各パス毎の加工誘起マ
ルテンサイト量測定値とその目標値との差に応じて調整
することを特徴とする。本発明に従えば、加工誘起マル
テンサイト量(α′量)を制御するための鋼帯の温度の
制御は、圧延油の温度および流量を調整することによっ
て成される。圧延油の温度の調整は、応答性は低いが鋼
帯の温度への影響力が大きい。圧延油の流量の調整は、
鋼帯温度への影響力は小さいが応答性が高い。これによ
って、圧延油の温度および流量を調整することによっ
て、鋼帯の温度に大きな影響力を有し、かつ応答性良く
鋼帯の温度を制御することができる。また圧延油は圧延
に不可欠であり、この圧延油を調整することによって鋼
帯の温度を制御することができるので、鋼帯の温度を制
御するために、装置の大きな改造を必要としない。
【0011】さらに本発明は、前記加工誘起マルテンサ
イト量測定センサは、冷間圧延ラインで走行する鋼帯の
表面から1〜4mmの間隔をあけて非接触に配置され、
励磁周波数が約50kHz〜約2MHzの励磁電流によ
って励磁されるコイルを内蔵して、鋼帯の冷間圧延によ
って発生する加工誘起マルテンサイト量を冷間圧延ライ
ンのオンライン中で非破壊的かつ連続的に測定すること
を特徴とする。本発明に従えば、約50kHz〜2MH
zの励磁電流によって励磁される測定センサを用い、こ
の測定センサを鋼帯の表面から1〜4mmの間隔をあけ
た位置に非接触に配置されるように保持手段によって保
持し、圧延ラインの所定位置で走行する鋼帯の加工誘起
マルテンサイト量(α′量)を測定する。このように測
定センサと鋼帯の表面との間隔を1〜4mmとし、測定
センサのコイルを励磁する励磁電流の周波数を約50k
Hz〜約2MHzに選ぶことによって、鋼帯の厚み、通
板速度、鋼帯の温度などの条件変化に対して測定センサ
の出力への影響を極力少なくすることができ、α′量の
変化に対するセンサ出力の変化を大きくして、的確に鋼
帯のα′量を検出することができる。上記の励磁周波数
の下限値が約50kHzであるとは、50±10kHz
の範囲をいい、また励磁周波数の上限が約2MHzであ
るとは、2±0.4MHzの範囲をいう。このような励
磁周波数の下限値および上限値の幅は、センサの感度お
よび精度の点において、ある程度のばらつきがあるため
である。このような測定センサによって、走行中の鋼帯
を傷つけることなく、鋼帯に誘起されるマルテンサイト
相を正確に、しかも連続して高精度で検出することがで
きる。
【0012】さらに本発明は、前記加工誘起マルテンサ
イト量測定値は、測定対象の鋼帯の温度、板厚および張
力が前記加工誘起マルテンサイト量測定センサの出力に
与える影響を補正した値であることを特徴とする。本発
明に従えば、加工誘起マルテンサイト量測定センサによ
るα′量測定値は、測定対象の鋼帯の温度、板厚および
張力が与える影響を補正した値である。これによって、
鋼帯中の正確なα′量測定値に基づいて、鋼帯の温度お
よび圧延速度を制御することができるので、α′量を目
標値に高い精度で一致させることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の実施の一形態の
準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯1の冷間圧延方
法が実施される冷間圧延ライン2の系統図である。冷間
圧延ライン2は、基本的に、ステンレス鋼帯(以下、
「鋼帯」と略記する場合がある)1を圧下するミル本体
3と、鋼帯1を巻取りまたは巻戻しする第1リール4お
よび第2リール5と、ミル本体3と第1および第2リー
ル4,5との間で鋼帯1をそれぞれ支持する第1デフレ
クタロール6および第2デフレクタロール7とを備え
る。
【0014】ミル本体3は、たとえば12段クラスタ型
冷間圧延機であり、鋼帯1を上下に挟んで対称に配置さ
れるロール群を有する。各ロール群は、鋼帯1の厚み方
向両側の表面にそれぞれ当接するワークロール8と、各
ワークロール8をそれぞれ支持する2本の中間ロール9
と、各中間ロール9をそれぞれ支持する3本のバックア
ップロール10とを備えている。鋼帯1の一方側(下方
側)のロール群は、油圧シリンダ11によって上下に変
位可能であり、一方側のロール群を変位させることによ
って、各ワークロール8間の間隔を調整して、圧下量を
調整することができる。このような計12本のロールを
備えるミル本体3は、被圧延材に大きな圧下力を与える
ことが可能であり、ステンレス鋼帯1の圧延に好適に用
いることができる。
【0015】このようなミル本体3を有する冷間圧延ラ
イン2では、たとえば次のようにして、ステンレス鋼帯
1が圧延される。被圧延材であるステンレス鋼帯1とし
ては、焼鈍およびデスケーリング済みの熱間圧延ステン
レス鋼帯、または焼鈍およびデスケーリング済みの冷間
圧延ステンレス鋼帯が適用される。鋼帯1は、コイル状
態で第1リール4に装着された後に、第1リール用モー
タ12によって第1リール4が巻戻し方向に回転駆動さ
れることによって、第1リール4から巻戻され、第1デ
フレクタロール6に巻掛けられて各ワークロール8間に
通板される。鋼帯1は、一方(下方)のワークロール8
が、ワークロール用モータ13によって回転駆動され、
各ワークロール8間に噛込まれて1パス目の所定板厚に
なるように、油圧シリンダ11によって圧下調整された
状態で、冷間圧延が開始される。
【0016】各ワークロール8間を通過した鋼帯1は、
第2デフレクタロール7に巻掛けられ、トップエンドが
第2リール5に係止され、第2リール5が第2リール用
モータ14によって巻取り方向に回転駆動されて第2リ
ール5に巻取られる。その後、ワークロール用モータ1
3によるワークロール8の回転速度を高くして、圧延速
度が増速され、これに伴って鋼帯1の通板速度が増速さ
れるとともに、第1および第2張力制御手段60,61
によって、第1および第2リール用モータ12,14が
駆動制御され、これによって第1および第2リール4,
5の回転速度が調整されて、入側および出側における所
定の圧延張力が付与される。鋼帯1のボトムエンド付近
まで1パス目の冷間圧延が終了すると、ワークロール用
モータ13によるワークロール8の回転速度を低くし
て、圧下速度が減速され、これに伴って鋼帯1の通板速
度が減速される。このように通板速度が低下された後
に、ボトムエンドが第1リール4に係止されたままの状
態でワークロール8が停止され、1パス目の冷間圧延が
終了する。
【0017】1パス目の冷間圧延が終了した後に、各ワ
ークロール8間に鋼帯1を挟んだままの状態で、前述の
予め定める圧延パススケジュールに従って、1パス目と
同様に油圧シリンダ11によって圧下調整され、この状
態で1パス目と逆方向に、鋼帯1を通板させながら2パ
ス目の冷間圧延が行われる。このようなリバース圧延で
は、さらに3パス目、4パス目…と、鋼帯1の板厚が最
終的な目標値に達するまで、複数回のパス圧延が繰返さ
れる。
【0018】また、冷間圧延ライン2には、圧延油噴射
手段26が備えられる。圧延油噴射手段26は、基本的
に、タンク27と、油温調節器28と、ポンプ29と、
複数のノズル30とを有する。タンク27内に貯留され
ている圧延油は、ポンプ用モータ32によって駆動され
るポンプ29によって、油温調節器28を介して汲上げ
られ、油温調節器28でたとえば冷却されて所定温度に
調節された後に、各ノズル30から圧延中の鋼帯1に向
けて噴射される。このように、圧延油をワークロール8
近傍の鋼帯1に噴射して、鋼帯1の温度上昇を防止する
とともに、潤滑させて焼付きを防止している。ノズル3
0から噴射された圧延油は、オイルパン60によって受
けて回収され、タンク27に戻される。
【0019】一般に冷間圧延は、所定の板厚を有する鋼
帯1を得るための加工操作であり、リバース式の冷間圧
延ライン2では、ミル本体3の圧下能力に応じた各パス
における圧下量に基づいて、たとえば図2(1)に示す
ように、圧延前の板厚T0が3mmの鋼帯1を10回の
パス圧延を繰り返すことによって、10回目の最終パス
終了後の板厚Tfが0.8mmとなるように、各パス毎
の板厚目標値が設定された圧延パススケジュールが組ま
れる。また鋼帯1は、前述のように、広範囲に用いられ
ており、特に、ばね材およびスチールベルト用材として
用いられる場合には、薄肉で高いトルク値が要求される
ため、一定の曲げおよび巻きによる塑性変形を少なくし
て弾性変形域を広くし、ばね特性を向上し、しかもその
ばね特性は全長にわたって安定したものでなければなら
ない。このために、以下に図3〜図6を参照して説明す
るように、板厚とともに所定のα′量の鋼帯1を得るこ
とが目的とされ、図2(2)に示すように、各パス毎に
α′量目標値が設定される。
【0020】図3は、オーステナイト系ステンレス鋼の
機械的性質に影響を及ぼす影響因子を説明するための図
である。ステンレス鋼の機械的性質は、α′量、圧延
率、成分(C,N量)、γ安定度に依存する。特に影響
力の大きいα′量は、圧延率、γ安定度などに加えて圧
延速度や1パス当たりの圧下率、気温、油温などの圧延
条件のわずかな違いによって、その生成量が大きく変化
する。
【0021】図4は、α′相の体積率Vα′とビッカー
ス硬さHVとの関係からα′量の硬さに及ぼす影響を示
す図である。圧延率を60%にして圧延温度を0℃、2
0℃、50℃、70℃および120℃の5水準に変化さ
せて冷間圧延して、α′量の体積率Vα′と圧延温度と
ビッカース硬さHVとの関係をみたとき、圧延温度が低
いほどα′量が増加し、硬くなることが判る。
【0022】図5は、α′相の生成量に及ぼす圧延率お
よび圧延時の鋼帯温度の影響を示すグラフである。試料
AはC含有量が0.098重量%、N含有量が0.01
6重量%、Ni当量が19.4であり、試料BはC含有
量が0.107重量%、N含有量が0.030%、Ni
当量が21.1であって、上記鋼帯温度を20℃、70
℃、120℃とそれぞれ異なる温度で冷間圧延を行った
ときの圧延率と鋼帯温度とα′相の体積率Vα′との関
係を示す。同図から、各試料A,Bのいずれも鋼帯温度
が低いほどα′相の生成量が高くなることが判る。また
試料Bは試料Aに比べてNi当量が高く、準安定オース
ナイト系ステンレス鋼の中でもγ相が安定しており、試
料Aに比べてα′相を生成しにくいことが判る。一般に
ばね材はオースナイト系ステンレス鋼の加工硬化を利用
して製造されるが、一定の機械的性質を得るために、圧
延時にコイルを加温して初期温度を一定に保ち、圧延速
度のばらつきを抑制するために圧延速度を100〜20
0m/分程度に規制している。
【0023】図6は、α′相生成に及ぼす圧延速度の影
響を示すグラフである。一定量の圧延油を供給しながら
圧延速度を50m/分、100m/分および150m/
分で1パスあたりの圧延率を10%として冷間圧延した
ときに、圧延率が増加すると、α′相の生成量が増加
し、しかも圧延速度が小さいほどα′相の生成量が多い
ことが判る。これは圧延速度が小さいほど、見かけ上の
圧延油の流量すなわち供給量が多くなり、鋼帯温度が低
くなるからである。
【0024】特に、ばね材を製造するときには、時効処
理(歪時効)を行い、1次巻の型を付けた後、2次巻
(逆巻)したときに塑性変形してトルクが低下してしま
い、所定のトルク特性を達成し得ない場合が生じる。こ
のようなばね材は、所定のトルクまたはトルク範囲を満
たさなければ欠陥品として取扱われてしまう。そのた
め、前記鋼帯の機械的性質、特にα′量を高精度で制御
することができる技術が求められ、ステンレス鋼帯1の
冷間圧延時に、鋼帯1中に冷間圧延によって発生する加
工誘起マルテンサイト量を制御する必要がある。α′量
は、前述のように、圧延速度および鋼帯の温度に依存す
るので、これら圧延速度および鋼帯の温度を制御するこ
とによって、α′量を制御することが可能である。たと
えば、α′量測定値がα′量目標値よりも多い場合に
は、圧延油の流量を下げるまたは圧延速度を上げること
によって、α′量測定値をα′量目標値に近付けること
ができる。
【0025】冷間圧延ライン2には、鋼帯1の通板経路
に沿って、ミル本体3と第1デフレクタロール6との間
に、第1板厚測定センサ15が設けられ、ミル本体3と
第2デフレクタロール7との間に、第2板厚測定センサ
18が設けられている。第1および第2板厚測定センサ
15,18は、たとえばX線板厚計であり、鋼帯1の厚
み方向一方側に設けられたX線発生器と、鋼帯1の厚み
方向他方側に設けられるX線測定器(カウンタ)とを有
する。X線発生器からX線を放射し、放射されたX線と
鋼帯1を透過してX線測定器に入射されたX線とから減
衰率を検出し、予め求められた板厚と減衰率との関係を
表す検量線に基づいて板厚を求めることができる。この
ようにして、板厚を非接触で測定することができる。
【0026】このような第1および第2板厚測定センサ
15,18の出力は、板厚比較器21に与えられる。板
厚比較器21には、圧延パススケジュールに従って各パ
ス毎に予め設定された板厚目標値が、板厚設定手段22
から与えられる。板厚比較器21では、各パスにおい
て、第1および第2板厚測定センサ15,18によって
測定される板厚測定値と、図2(1)に示されるような
圧延パススケジュールに従って板厚設定手段22から与
えられる板厚目標値とが比較される。たとえば図1の矢
符Fで示す圧延方向に通板されるパスにおいて、出側の
板厚の測定値、すなわち第2板厚測定センサ18による
板厚測定値と板厚目標値とが比較される。このような比
較演算結果が自動板厚制御手段23に与えられる。自動
板厚制御手段23は、板厚比較器21から与えられる板
厚の比較演算結果に基づいて、圧延後の板厚、すなわち
第2板厚測定センサ18による板厚測定値が、板厚設定
手段22によって設定される板厚目標値となるように、
油圧シリンダ11を駆動制御し、圧下量を調整して板厚
を制御する。このように、フィードバック制御すること
によって、各パス毎に、板厚を高精度で目標値に近似さ
せることができる。
【0027】鋼帯1の機械的性質を左右するα′量は、
鋼帯1の温度および圧延速度を制御することによって、
制御される。鋼帯1の温度は、前記の圧延油噴射手段2
6から噴射される圧延油の温度および流量を調整するこ
とによって制御することができ、本形態では、圧延油の
流量を制御することによって鋼帯1の温度を制御する。
圧延速度は、前述のように、ワークロール8の回転駆動
するワークロール用モータ13を駆動制御して、ワーク
ロール8を回転制御することによって、制御することが
できる。
【0028】冷間圧延ライン2には、このようにα′量
を制御するために、さらに鋼帯1の通板経路に沿って、
第1板厚測定センサ15と第1デフレクタロール6との
間に、第1板厚測定センサ15から第1デフレクタロー
ル6に向かって第1α′量測定センサ16および第1鋼
帯温度測定センサ17が、この順序で相互にかつ第1板
厚測定センサ15に近接して設けられている。また、第
2板厚測定センサ18と第2デフレクタロール7との間
に、第2板厚測定センサ18から第2デフレクタロール
7に向かって、第2α′量測定センサ19および第2鋼
帯温度測定センサ20が、この順序で相互にかつ第2板
厚測定センサ18に近接して設けられている。
【0029】図7は第1α′量測定センサ16の外観を
示す拡大正面図であり、図8は、第1α′量測定センサ
16によるα′量の測定のための概略的構成を示すブロ
ック図である。第2α′量測定センサ19も同様の構成
を有するので同時に説明する。第1および第2α′量測
定センサ16,19は、一対の車輪70a,70bによ
って支持されるセンサ本体69を有し、センサ本体69
は、その下端面69aが鋼帯1の表面1aから間隔ΔL
をあけて設けられ、この間隔ΔLは、1〜4mmに選ば
れる。この間隔ΔLが1mm未満であれば、鋼帯1の表
面1aに生じた異物にセンサ本体69の下端面69aが
接触して測定が困難となり、また間隔ΔLが4mmを越
えると、正常な測定範囲を越えてしまい、正確な加工誘
起マルテンサイト量を測定することができなくなってし
まう。このように間隔を1〜4mmに選ぶことによっ
て、高精度で加工誘起マルテンサイト量を測定すること
が可能である。
【0030】センサ本体69は、強磁性材料から成る探
触子72と、探触子72の軸線方向両端部付近に装着さ
れる上下2段の励磁コイル73と、励磁コイルの内側に
同軸上に配置される検出コイル74とを有し、これらの
コイル73,74は差動変圧器を構成している。励磁コ
イル73は、測定時に5kHz〜2MHzの交流電流に
よって励磁され、検出コイル74の巻線中に一定の起電
力が発生する。測定しないときには、励磁コイル73と
検出コイル74との各巻線には電圧が等しくなるように
バランスされるが、測定時にはこのバランスがくずれ、
検出コイル74の巻線中に異なった大きさの起電力が誘
起され、その電圧差は加工誘起マルテンサイト相の絶対
量に支配される。
【0031】第1および第2α′量測定センサ16,1
9には、励磁コイル73に励磁電流を供給し、また検出
コイル74によって誘起された検出電流を検出する検出
手段76が設けられる。センサ本体69と鋼帯1との間
隔ΔLを一定とした状態で、検出電流を検出することに
よって、磁気特性、すなわち鋼帯1の材質を加工誘起マ
ルテンサイト量として測定することができる。この第1
および第2α′量測定センサ16,19からの出力は
α′量演算手段31に与えられる。
【0032】第1および第2α′量測定センサ16,1
9の加工誘起マルテンサイト量の測定については、鋼帯
1の板厚、張力、および温度などの影響因子による誤差
が発生することが知られている。本形態においては、励
磁周波数が前述の5kHz〜2MHzに選ばれているの
で、検出値が鋼帯1の板厚および温度などの影響を受け
にくくなっている。さらにα′量を正確に求めるため
に、第1および第2板厚測定センサ15,18ならびに
第1および第2鋼帯温度測定センサ17,20の出力が
α′量演算手段31に与えられるとともに、冷間圧延ラ
イン2には、鋼帯1の張力を検出する第1張力計33お
よび第2張力計34が設けられており、第1および第2
張力計33,34の出力がα′量演算手段31に与えら
れる。
【0033】第1および第2鋼帯温度測定センサ17,
20は、放射温度計によって実現され、鋼帯1から放出
される赤外線を収束させてセンサ本体に入射させ、この
赤外線エネルギを検出することによって、鋼帯1の温度
を、非接触で測定することができる。第1および第2張
力計33,34は、たとえば歪みゲージを備えたロード
セルによって実現され、第1および第2デフレクタロー
ル6,7にかかる荷重を検出し、この荷重から張力を導
き出すことができる。
【0034】α′量演算手段31では、第1および第2
板厚測定センサ15,18による板厚測定値、第1およ
び第2α′量測定センサ16,19によるα′量測定
値、第1および第2鋼帯温度測定センサ17,20によ
る鋼帯温度測定値、ならびに第1および第2張力計3
3,34による張力測定値に基づいて、第1および第2
α′量測定センサ16,19によるα′量測定値の鋼帯
1の板厚、張力、および温度の影響因子による誤差を補
正して、α′量演算値をα′量比較器37に出力する。
たとえば図1の矢符Fで示す圧延方向に通板されるパス
において、出側において測定された鋼帯のα′量、板
厚、温度および張力、すなわち第2α′量測定センサ1
9によるα′量測定値、第2板厚測定センサ18による
板厚測定値、第2鋼帯温度測定センサ20による鋼帯温
度測定値および第2張力計34による張力測定値に基づ
いてα′量が演算され、そのα′量演算値がα′量比較
器37に出力される。α′量比較器37では、α′量演
算手段31で演算されたα′量演算値と、前述の圧延パ
ススケジュールに従ってα′量設定手段38によって与
えられるα′量目標値とが比較され、その比較演算結
果、すなわち偏差Δα′量が、各分配係数乗算器40,
41に出力される。
【0035】各分配係数乗算器40,41では、各分配
係数設定手段42,43において偏差Δα′量に対応し
て設定されている係数k1,1−k1に基づいて、圧延
速度の制御と圧延油の流量の制御との比率が決定され
る。さらに詳しく述べると、α′量演算値がα′量目標
値となるように、すなわち偏差Δα′量が0となるよう
に、圧延速度および/または圧延油流量を制御するけれ
ども、そのα′量の制御のための圧延速度および/また
は圧延油流量の制御の比率が決定される。この比率は、
たとえば本形態において、偏差Δα′量が予め定める値
以下であれば、圧延油流量だけによって制御する比率に
設定され、偏差Δα′量が予め定める値を超えるときに
は、圧延油流量の制御量を最大にして、さらに圧延速度
の制御を重畳する比率に設定されている。
【0036】各分配係数乗算器40,41で決定された
比率に応じた値が、速度係数乗算器44および流量係数
乗算器45にそれぞれ与えられ、速度係数乗算器44で
は、速度影響係数設定手段46によって設定された圧延
速度がα′量に与える影響係数k2が与えられて、分配
係数乗算器40によって決定された比率および偏差Δ
α′量に基づいて圧延速度偏差が演算され、流量係数乗
算器45では、流量影響係数設定手段47によって設定
された圧延油流量がα′量に与える影響係数k3が与え
られて、分配係数乗算器41によって決定された比率お
よび偏差Δα′量に基づいて圧延油の流量偏差が演算さ
れる。
【0037】また、冷間圧延ライン2には、ワークロー
ル用モータ13の回転数を検出するためのパルスジェネ
レータ50が設けられており、このパルスジェネレータ
50によってワークロール用モータ13の単位時間あた
りの回転数を検出し、ワークロール8の単位時間あたり
の回転数が検出されて圧延速度が検出される。その圧延
速度検出値は、速度加算器51に与えられる。速度加算
器51では、圧延速度検出値に圧延速度偏差が加算さ
れ、その演算結果が圧延速度制御手段52に与えられ、
圧延速度制御手段52は、圧延速度検出値に対して速度
偏差分の増減速をするようにワークロール用モータ13
を駆動制御する。
【0038】また、ポンプ29と各ノズル30との間に
は、流量計55が介在され、各ノズル30から噴射され
る圧延油流量が検出され、その流量検出値は、流量加算
器56に与えられる。流量加算器56では、流量検出値
に流量偏差が加算され、その演算結果が流量制御手段5
7に与えられ、流量制御手段57は、流量検出値に対し
て流量偏差分の増減量をするように、ポンプ用モータ3
2を駆動制御する。
【0039】図9は本形態の冷間圧延ライン2のα′量
の制御の1サイクルを示すフローチャートである。図1
をも参照して、矢符Fで示す圧延方向に圧延する場合に
ついて説明する。まずステップn1で、第2α′量測定
センサ19によってα′量が測定され、第2板厚測定セ
ンサ18によって板厚が測定され、第2鋼帯温度測定セ
ンサ20によって鋼帯温度が測定され、第2張力計34
によって張力が測定され、これらのα′量測定値、板厚
測定値、鋼帯温度測定値および張力測定値がα′量演算
手段31に与えられる。
【0040】次にステップn2で、α′量演算手段31
によって、第2α′量測定センサ19によるα′量測定
値の鋼帯1の板厚、温度および張力の影響因子による誤
差が補正される。次にステップn3で、α′量比較器3
7によって、α′量演算手段31において板厚などの誤
差を補正して得られたα′量演算値と、α′量設定手段
38からのα′量目標値とが比較されて、偏差Δα′量
が演算される。次にステップn4で、偏差Δα′量が所
定値すなわち予め定める値以下か否が判断される。
【0041】ステップn4において、偏差Δα′量が予
め定める値以下であれば、ステップn5に移行し、圧延
油の流量の制御だけによるα′量の制御とされる。さら
に詳しく述べると、分配係数を支配する変数k1=0と
され、圧延油の流量の制御によるα′量の制御と圧延速
度の制御によるα′量の制御との比率が1対0となり、
速度係数乗算器44に0が与えられ、流量係数乗算器4
5に偏差Δα′量が与えられる。次にステップn6で流
量係数乗算器45において、偏差Δα′量に影響係数k
3が乗算されて、流量偏差が算出される。このとき速度
偏差は0である。次にステップn7で、流量加算器56
において流量計による圧延油の流量検出値に流量偏差が
加算され、その演算結果に基づいて、圧延油流量制御手
段57によって圧延油の流量が増減量制御される。この
とき、圧延速度は、圧延パススケジュールに従って制御
されている。
【0042】ステップn4において、偏差Δα′量が予
め定める値を超えるときには、ステップn8に移行し、
圧延油の流量の制御量が最大とされ、圧延速度の制御が
付加される。さらに詳しく述べると、分配係数を支配す
る変数k1≠0となり、圧延油の流量の制御によるα′
量の制御と圧延速度の制御によるα′量の制御との比率
が、圧延油の流量の制御が最大となり、残余の部分を圧
延速度によって制御する比率に決定される。速度係数乗
算器44に偏差Δα′量×k1が与えられ、流量係数乗
算器45に偏差Δα′量×(1−k1)が与えられる。
次にステップn7で流量係数乗算器45において、偏差
Δα′量×(1−k1)に影響係数k3が乗算されて、
流量偏差が算出されるとともに、速度係数乗算器44に
おいて、偏差Δα′量×k1に影響係数k2が乗算され
て、速度偏差が算出される。次にステップn8で、流量
加算器56において流量計による圧延油の流量検出値に
流量偏差が加算され、その演算結果に基づいて、圧延油
流量制御手段57によって圧延油の流量が増減量制御さ
れるとともに、速度加算器51においてパルスジェネレ
ータ50による圧延速度検出値に速度偏差が加算され、
その演算結果に基づいて、速度制御手段52によって圧
延速度が増減側制御される。このようなα′量の制御
が、各パスにおいて、随時行われ、鋼帯1のトップエン
ドからボトムエンドまで一様に、α′量目標値に一致す
るように行われている。
【0043】またリバース式の冷間圧延ライン2では、
鋼帯1のトップエンドおよびボトムエンド付近は、圧延
速度を可変せざるを得ないが、このような場合にも上述
のように圧延油の流量の制御を主体として、α′量を制
御するので好適に実施することができる。
【0044】このようにして、各パス毎に、α′量をフ
ィードバック制御して、各パス毎に、高精度で、実際の
α′量を目標値に近似させることができる。しかも、
α′量は、主として板厚に実質上影響を与えない圧延油
流量による鋼帯温度の制御、および圧延速度の制御によ
って、制御されるので、板厚およびα′量を高い信頼性
で高精度に、目標値に一致させることができる。
【0045】本発明の実施の他の形態として、鋼帯1の
温度の制御を、圧延油の温度の制御によって成すように
構成してもよく、また圧延油の流量および温度両方の制
御によって成すように構成してもよい。またパルスジェ
ネレータ50による速度検出値に代えて、予め設定され
た速度基準値を採用して、その速度基準値に速度係数乗
算器44による速度偏差を加算してワークロール用モー
タ13を駆動制御するようにしてもよい。同様に、流量
計55による流量検出値にかえて、予め設定された流量
基準値を採用して、その流量基準値に流量係数乗算器4
5による流量偏差を加算してポンプ用モータ31を駆動
制御するようにしてもよい。
【0046】
【発明の効果】本発明によれば、鋼帯のα′量は、各パ
ス毎に鋼帯の温度および圧延速度を制御することによっ
て成されるので、板厚に影響を与えないように、α′量
を制御することができ、高い信頼性で高精度に、板厚お
よびα′量を制御することができる。α′量測定値とそ
のα′量目標値との差が、予め定める値以下であれば、
鋼帯の温度が制御され、α′量測定値とそのα′量目標
値との差が、予め定める値を超えるときには、鋼帯の温
度の制御量を最大にして、圧延速度が制御される。この
ような鋼帯の温度または圧延速度の制御によるα′量の
制御は、各パス毎になされるので、各パス毎に、高い信
頼性で高精度に、板厚およびα′量を制御することがで
きる。また、板厚への影響および生産性の低下につなが
るおそれのある圧延速度の制御をなるべく少なくして、
板厚精度が低下したり生産性が低下することを最小限に
することができる。
【0047】また本発明によれば、圧延油の温度および
流量を調整するので、大きな影響力で応答性良く、鋼帯
の温度を制御することができる。また圧延に不可欠な圧
延油によって鋼帯の温度を制御することができるので、
鋼帯の温度を制御するために、装置の大きな改造を必要
としない。
【0048】さらに本発明によれば、鋼帯の厚み、通板
速度、鋼帯の温度などの条件変化に対して測定センサの
出力への影響を極力少なくすることができ、α′量の変
化に対するセンサ出力の変化を大きくして、的確に鋼帯
のα′量を検出することができる。このような測定セン
サによって、走行中の鋼帯を傷つけることなく、鋼帯に
誘起されるマルテンサイト相を正確に、しかも連続して
高精度で検出することができる。
【0049】さらに本発明によれば、板厚、温度および
張力の影響を補正した正確なα′量測定値に基づいて、
鋼帯の温度および圧延速度を制御することができるの
で、α′量を目標値に高い精度で一致させることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態の準安定オーステナイト
系ステンレス鋼帯1の圧延方法が実施される冷間圧延ラ
イン2の系統図である。
【図2】圧延パススケジュールの一例を示す図であり、
(1)は各パス毎の板厚目標値を示し、(2)は各パス
毎のα′量目標値を示す。
【図3】オーステナイト系ステンレス鋼の機械的性質に
影響を及ぼす影響因子を説明するための図である。
【図4】α′相の体積率Vα′と硬さHVとの関係から
α′量の硬さに及ぼす影響を示す図である。
【図5】α′相の生成量に及ぼす材料温度の影響を示す
グラフである。
【図6】α′相生成に及ぼす圧延速度の影響を示すグラ
フである。
【図7】第1α′量測定センサ16の外観を示す拡大正
面図である。
【図8】第1α′量測定センサ16によるα′量の測定
のための概略的構成を示すブロック図である。
【図9】α′量の制御動作を示すフローチャートであ
る。
【符号の説明】
1 鋼帯 2 冷間圧延ライン 3 ミル本体 15,18 板厚測定センサ 16,19 α′量測定センサ 17,20 鋼帯温度測定センサ 31 α′量演算手段 33,34 張力計 37 α′量比較器 38 α′量設定手段 40,41 分配係数乗算器 42,43 分配係数設定手段 44 速度係数乗算器 45 流量係数乗算器 46 速度影響係数設定手段 47 流量影響係数設定手段 50 パルスジェネレータ 51 速度加算器 55 流量計 56 流量加算器 69 センサ本体 73,74 コイル 76 検出手段

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 冷間圧延ラインの所定位置に設けられる
    加工誘起マルテンサイト量測定センサおよび板厚測定セ
    ンサによって、冷間圧延中の準安定オーステナイト系ス
    テンレス鋼帯の加工誘起マルテンサイト量および板厚を
    それぞれ測定し、これらの加工誘起マルテンサイト量測
    定値および板厚測定値が、各パス毎に予め定める加工誘
    起マルテンサイト量目標値および板厚目標値となるよう
    に、圧延条件を制御する準安定オーステナイト系ステン
    レス鋼帯の冷間圧延方法において、 各パス毎の加工誘起マルテンサイト量測定値とその目標
    値との差が予め定める値以下であれば、前記各パス毎の
    加工誘起マルテンサイト量測定値がその目標値に一致す
    るように、鋼帯の温度を制御し、 前記各パス毎の加工誘起マルテンサイト量測定値とその
    目標値との差が前記予め定める値を超えたとき、鋼帯の
    温度の制御量を最大にして、前記各パス毎の加工誘起マ
    ルテンサイト量測定値がその目標値に一致するように、
    圧延速度を制御することを特徴とする準安定オーステナ
    イト系ステンレス鋼帯の冷間圧延方法。
  2. 【請求項2】 前記鋼帯の温度の制御は、圧延油の温度
    および流量を、前記各パス毎の加工誘起マルテンサイト
    量測定値とその目標値との差に応じて調整することを特
    徴とする請求項1記載の準安定オーステナイト系ステン
    レス鋼帯の冷間圧延方法。
  3. 【請求項3】 前記加工誘起マルテンサイト量測定セン
    サは、冷間圧延ラインで走行する鋼帯の表面から1〜4
    mmの間隔をあけて非接触に配置され、励磁周波数が約
    50kHz〜約2MHzの励磁電流によって励磁される
    コイルを内蔵して、鋼帯の冷間圧延によって発生する加
    工誘起マルテンサイト量を冷間圧延ラインのオンライン
    中で非破壊的かつ連続的に測定することを特徴とする請
    求項1または2記載の準安定オーステナイト系ステンレ
    ス鋼帯の冷間圧延方法。
  4. 【請求項4】 前記加工誘起マルテンサイト量測定値
    は、測定対象の鋼帯の温度、板厚および張力が前記加工
    誘起マルテンサイト量測定センサの出力に与える影響を
    補正した値であることを特徴とする請求項1〜3のいず
    れかに記載の準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯の
    冷間圧延方法。
JP23230796A 1996-09-02 1996-09-02 準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯の冷間圧延方法 Withdrawn JPH1078410A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5843019B2 (ja) * 2012-08-20 2016-01-13 新日鐵住金株式会社 ステンレス鋼板とその製造方法

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JP5843019B2 (ja) * 2012-08-20 2016-01-13 新日鐵住金株式会社 ステンレス鋼板とその製造方法

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