JPH1077293A - 結晶成長用装置 - Google Patents

結晶成長用装置

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JPH1077293A
JPH1077293A JP25379396A JP25379396A JPH1077293A JP H1077293 A JPH1077293 A JP H1077293A JP 25379396 A JP25379396 A JP 25379396A JP 25379396 A JP25379396 A JP 25379396A JP H1077293 A JPH1077293 A JP H1077293A
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Akira Miki
明 三城
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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C30CRYSTAL GROWTH
    • C30BSINGLE-CRYSTAL GROWTH; UNIDIRECTIONAL SOLIDIFICATION OF EUTECTIC MATERIAL OR UNIDIRECTIONAL DEMIXING OF EUTECTOID MATERIAL; REFINING BY ZONE-MELTING OF MATERIAL; PRODUCTION OF A HOMOGENEOUS POLYCRYSTALLINE MATERIAL WITH DEFINED STRUCTURE; SINGLE CRYSTALS OR HOMOGENEOUS POLYCRYSTALLINE MATERIAL WITH DEFINED STRUCTURE; AFTER-TREATMENT OF SINGLE CRYSTALS OR A HOMOGENEOUS POLYCRYSTALLINE MATERIAL WITH DEFINED STRUCTURE; APPARATUS THEREFOR
    • C30B7/00Single-crystal growth from solutions using solvents which are liquid at normal temperature, e.g. aqueous solutions

Abstract

(57)【要約】 【課題】 蛋白質等の生体高分子の結晶化を促進できる
装置を提供する。 【解決手段】 不純物の濃度および/または種類を制御
することによって価電子が制御されたシリコン基板20
上に、複数の溶液貯留部20a、24および28を形成
する。これらの溶液貯留部は流路22a、26によって
連結されている。流路22aはたとえば階段状の形状を
有しており、流路において溶液は溶液保持部20aから
溶液保持部24の方向に流される。また溶液保持部24
からオーバフローした溶液は流路26を介して溶液貯留
部28に排出される。溶液貯留部24には、溶液に含ま
れる蛋白質等の結晶化を促進できるよう不純物の濃度お
よび/または種類が制御された領域が設けられている。
貯留部24には、複数の液をそれぞれ供給して混合し、
結晶化のための適当な濃度を有する混合液を調製する。
混合液を保持する貯留部24において蛋白質等の結晶を
成長させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高分子化合物の結
晶化を行なうための技術に関し、特に、価電子が制御さ
れた半導体基板等を用いて、蛋白質を初めとする種々の
生体高分子の結晶化を行なうための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】蛋白質を初めとする各種生体高分子およ
びそれらの複合体における特異的性質および機能を理解
する上で、それらの詳細な立体構造は不可欠な情報とな
っている。たとえば、基礎化学的な観点からは、蛋白質
等の3次元構造の情報が、酵素やホルモン等による生化
学系での機能発現のメカニズムを理解する上で基礎とな
る。また、産業界のうち特に薬学、遺伝子工学、化学工
学の分野においては、3次元構造は、ドラッグデザイ
ン、プロテインエンジニアリング、生化学的合成等を進
める上で合理的な分子設計に欠かせない情報を提供す
る。
【0003】このような生体高分子の原子レベルでの3
次元立体構造情報を得る方法としては、現在のところX
線結晶構造解析が最も有力かつ高精度な手段である。近
年のX線光源・回折装置のハードウェア上の改良による
測定時間の短縮、測定精度の向上に加え、コンピュータ
の計算処理速度の飛躍的な向上により、解析スピードが
大幅に向上してきている。今後も、この手法を主流とし
て3次元構造が明らかにされていくものと思われる。
【0004】一方、X線結晶構造解析により生体高分子
の3次元構造を決定するためには、目的とする物質を抽
出・精製後、結晶化することが必須となる。しかし、現
在のところ、どの物質に対しても適用すれば必ず結晶化
できるといった手法および装置がないため、勘と経験に
頼ったトライアンドエラーを繰返しながら結晶化を進め
ているのが実状である。生体高分子の結晶を得るために
は、非常に多くの実験条件による探索が必要であり、結
晶成長がX線結晶解析の分野での最も大きなボトルネッ
クとなっている。
【0005】蛋白質等の生体高分子の結晶化は、通常の
無機塩等の低分子量化合物の場合と同様、高分子を含む
水または非水溶液から溶媒を奪う処理を施すことによ
り、過飽和状態にして、結晶を成長させるのが基本とな
っている。このための代表的な方法として、(1)バッ
チ法、(2)透析法、(3)拡散法があり、試料の種
類、量、性質等によって使い分けられている。
【0006】バッチ法は、生体高分子を含む溶液に、水
和水を奪う沈殿剤を直接添加して、生体高分子の溶解度
を低下させ、固相へ変化させる方法である。この方法で
は、たとえば固体の硫酸アンモニウム(硫安)がよく使
用される。この方法は、溶液試料を大量に必要とし、塩
濃度、pHの微妙な調整が困難であること、さらに操作
に熟練を要し、再現性が低いといった欠点を有する。透
析法は、バッチ法の欠点を改善した方法で、たとえば図
18に示すように、透析チューブ171の内部に生体高
分子を含む溶液172を密封し、透析チューブ外液17
3(たとえば緩衝溶液)のpH等を連続的に変化させ結
晶化を行なう方法である。この方法によれば、内外液の
塩濃度、pH差を任意の速度で調節可能であるため、結
晶化の条件を見出しやすい。拡散法のうち、たとえば気
液相間拡散法は、図19に示すように、カバーガラス等
の試料台181上に、試料溶液の液滴182を載せ、密
閉した容器183内にこの液滴と沈殿剤溶液184を入
れることにより、両者間の揮発成分の蒸発によって緩や
かに平衡を成立させる手法である。また、拡散法のうち
液相間拡散法は、図20に示すように、基板190上
に、目的とする物質を含有する母液の液滴192と沈澱
剤の液滴191とを約5mmほど隔てて置き、両者の間
に針等の先によって細い液の流れ193を形成する。こ
の液の流れ193を介して相互拡散が行なわれ、結晶化
が促進される。この拡散法は、バッチ法等と比較して溶
液の量が非常に少なくて済むといった利点を有してい
る。
【0007】しかし、蛋白質等の生体高分子の結晶化に
は、前述したように種々の問題点があるのが実状であ
る。
【0008】まず、結晶性の良好なものや、大型の単結
晶を得ることが困難であった。これは、生体高分子が一
般的に分子量が大きいために、重力の影響を受けやす
く、溶液内で対流を引起こすことが原因であると考えら
れている(たとえばF. Rosenberger, J. Cryst. Growt
h, 76, 618 (1986))。すなわち、生体高分子や生成
した微小な結晶核が自重で沈降し、これによって分子や
核周辺での溶液の対流が引起こされる。さらには、生成
した結晶表面部でも、分子の濃度が低下するために局所
的な溶液の対流が発生する。以上のようにして発生した
溶液内の対流によって、生成する結晶は溶液内で移動
し、しかも、周辺の拡散による分子の供給層は著しく減
少する。このため、結晶成長速度が低下したり、結晶面
における成長の異方性等が発生し、結晶化が妨げられる
ものと思われる。
【0009】また、生体高分子結晶には、他の物質の結
晶とは異なり、多量の溶媒(主として水)が含まれる
(≧50体積%)。この溶媒が、無秩序であり、かつ結
晶中で分子間の空隙となっている部分を容易に動き得
る。また、分子が巨大であるにもかかわらず、結晶中で
広範囲な分子間のパッキングコンタクトがほとんどな
く、わずかの分子−分子間コンタクトまたは水を介した
水素結合によるコンタクトしか存在していない。このよ
うな状態も結晶化を妨げている要因である。
【0010】さらに、生体高分子は結晶化に用いられる
条件に非常に敏感である。生体高分子は、個々の分子表
面間の相互作用により溶媒中で安定化されている一方、
分子表面の電荷分布、特にアミノ酸の分子表面近傍での
コンフォメーション等は、環境、すなわち溶液のpH、
イオン強度、温度、緩衝溶液の種類、誘電率等により大
きく変化する。したがって、結晶化プロセスは、複雑な
種々の条件の絡み合ったマルチパラメータプロセスとな
り、どの物質に対しても適用できる統一的な手法が確立
できてない。また蛋白質については、水溶性蛋白質に比
べ、生化学的に非常に重要であるにもかかわらず、疎水
性の膜蛋白質の結晶化が、現在非常に困難であり、結晶
化を行ないさらに高分解能の解析に成功した例はこれま
でわずか2件のみである。
【0011】また、得られる生体高分子は微量であるこ
とが多い。たとえば酵素等の蛋白質は、一般に細胞等か
ら抽出され、精製されるが、その含有量が少ないため、
最終的に結晶化のため得られる試料は非常に少ない場合
が多い。結晶化を行なう際には、溶液における生体高分
子の濃度は50mg/ml程度必要であると言われてい
る。したがって、できるだけ少ない量の溶液について種
々の条件で結晶化実験を繰返すこと(スクリーニング)
を行なう必要がある。
【0012】上述したように拡散法では、試料の量が少
なくてすむが、良質の結晶を得るためには沈澱剤の塩濃
度、pHなどを広い範囲にわたって変えて結晶化の最適
条件を見出していかなければならない。この場合、条件
はトライ・アンド・エラーによてしか見出すことができ
ない。さらに、試料の液滴を形成するガラス基板は、不
要な結晶核の大量発生を起こしやすい。これを抑制する
ため、表面研磨および撥水処理等の表面処理を予め施す
必要がある。
【0013】以上のように、蛋白質を初めとする生体高
分子およびこれらの複合体の結晶化は、学術および産業
上の重要なプロセスであるにもかかわらず、これまで試
行錯誤を繰返しながら進められてきたため、X線結晶構
造解析の最大のネックとなっている。したがって、今後
結晶化の基本原理を理解して、どの分子に対しても適用
し得る結晶化技術を開発する必要がある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
したように多様な特性を有するためにどの物質に対して
も適用できる手法がなく、試行錯誤を繰返しながら進め
られてきた従来の結晶化プロセスの欠点を、技術的に解
消することである。
【0015】具体的には、本発明は、種々の生体高分子
および生体高分子から主として構成される生体組織の結
晶化において、重力の影響による溶液内対流の影響を低
減し、核形成を制御することを目的とする。
【0016】さらに本発明は、微結晶の大量生成を抑制
または制御し、X線構造解析を可能にし得る大型の結晶
を得るための技術を提供することを目的とする。
【0017】さらに本発明の目的は、少量の溶液で結晶
化を可能にするための方法および装置を提供することに
ある。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明による結晶成長用
装置は、溶液中に含まれる高分子化合物の結晶を成長さ
せるための装置であって、高分子化合物を含む溶液の環
境に応じて表面部分の正孔または電子の濃度を制御でき
るよう価電子が制御された基板を備える。この基板の表
面は、2種類以上の溶液をそれぞれ保持するための複数
の第1溶液貯留部と、複数の第1溶液貯留部からそれぞ
れ溶液を排出させて1方向に流すための複数の第1流路
と、複数の第1流路によりそれぞれ送られる2種類以上
の溶液を同時に受入れる第2溶液貯留部と、第2溶液貯
留部から溶液を排出させて1方向に流すための第2流路
と、第2流路により送られる溶液を受入れる第3溶液貯
留部とを備える。基板の少なくとも第2溶液貯留部にお
いて、高分子化合物を含む溶液の環境に応じて表面部分
の正孔または電子の濃度を制御できるよう価電子が制御
されている。
【0019】第1流路および/または第2流路は、基板
上に形成された溝とすることができる。この溝は溶液を
1方向に流すために階段形状であるかまたは勾配を有す
るものとすることができる。また第1流路および/また
は第2流路は、基板上に形成された幅および深さの異な
る複数の溝から構成することができる。溝の幅は、上流
から下流にいくに従って広げることができ、溝の深さは
上流から下流にいくに従って深くなっていることが好ま
しい。
【0020】基板の表面において、第2溶液貯留部の特
定領域で高分子化合物の結晶核の形成および結晶の成長
が促進され、かつその他の領域で結晶核の形成が抑制さ
れるよう、価電子が制御されていることが好ましい。こ
のように価電子を制御することによって、第2溶液貯留
部の特定の領域において選択的に結晶を成長させること
ができる。
【0021】また本発明の装置において基板の第2溶液
貯留部に溝または孔を形成することが好ましい。溝また
は孔は、結晶成長が溶液の対流によって阻害されること
を効果的に抑制することができる。
【0022】本発明の装置は、基板を加熱するための手
段をさらに備えることができる。このような手段は、た
とえば基板の表面に形成された電極とすることができ
る。
【0023】本発明の装置において第2溶液貯留部を複
数設けることができる。これらの第2溶液貯留部には同
種類の溶液を運ぶ複数の第1流路が接続される。これら
の第1流路のうち、第2溶液貯留部の1つに向かう流路
は、第2溶液貯留部の他の1つに向かう流路と異なる長
さおよび/または幅を有することができる。さらに必要
に応じて、その深さを変えてもよい。それにより、第1
流路のそれぞれによって送られる溶液の流速は異なって
くる。第2溶液貯留部の1つは他の1つと異なる流量で
溶液を受入れる。このため、複数の第2溶液貯留部にお
いて、2種類以上の溶液が異なる比率で混合された液を
調製することができる。
【0024】また、本発明の装置は、少なくとも第2溶
液貯留部に電圧を印加するための電極をさらに有するこ
とができる。
【0025】本発明の装置は、たとえば不純物添加され
た半導体基板からなることが好ましい。半導体基板にお
ける価電子制御は、不純物の濃度および/または種類の
制御により行なうことができる。好ましい半導体基板と
してシリコン結晶基板を用いることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】蛋白質を初めとする生体高分子の
ほとんどは、溶液内において幾何学的に特異的な構造お
よび静電的な相互作用(静電斥力・引力、ファンデルワ
ールス力)によって分子間同士の認識が行なわれてい
る。静電的なエネルギに基づく分子間の相互作用におい
ては、個々の分子最表面でのわずかな空間的な電荷分布
の相違が、分子間の認識度合い、分子集合体の作りやす
さに決定的な影響を及ぼすことが予想される。したがっ
て、溶液内をブラウン運動しながら衝突を繰返している
個々の分子では、周期的かつ規則的な構造を有する分子
集合体の核が非常に形成されにくいと考えられる。さら
に、結晶核が形成されたとしても、各分子表面の分子構
造、電荷分布が全く同一ではなく冗長性を有しておれ
ば、核の周囲に集合する各分子は互いに緩く結合するこ
とになり、よって結晶性が低下するものと考えられる。
【0027】蛋白質分子の結晶生成に関しては、その核
生成の初期過程が重要であるとの報告がなされている。
Yonath等は、Bacillus Stearothermophilus より抽出さ
れた巨大なリボソームサブユニットの結晶化初期過程を
電子顕微鏡により観察している。それによれば、結晶化
が進行するためには、初期過程として、各分子が2次元
的な規則構造(編み目状、星状、千鳥格子状等)をとっ
て凝集することが必須であると述べている(Biochemist
ry International, Vol. 5, 629-636 (1982))。
【0028】これがすべての物質に共通して必須である
かどうかは不明である。しかし、一般に蛋白質分子は分
子間相互作用が弱く、しかも分子表面が局部的に帯電し
ているため、凝集しにくいことを考慮すると、結晶化の
初期過程において核となる分子を2次元的に配列させる
何らかの条件が整えば、その後の結晶化は、これを核と
してエピタキシャル的に進行するものと考えられる。
【0029】本発明では、結晶核を安定して生成させる
ため、価電子が制御された固体素子(基板)を結晶化す
べき物質を含む液に接触させる。該固体素子は、液と接
触する表面から内部に向かって、あるいは該固体素子の
断面内において、価電子制御により電子および正孔の濃
度を制御することができ、それによって固体素子表面の
電気的状態を制御することができる。たとえば図1に、
本発明に従い、固体素子表面において結晶核が固定さ
れ、結晶が成長していく様子を模式的に示す。図1
(a)に示すように、価電子制御により、所定の電気的
状態とされる固体素子1の表面に、結晶核2が静電的な
作用によって固定される。そして、図1(b)に示すよ
うに、蛋白質等の化合物は、静電的な相互作用により、
固体素子表面に凝集し、結晶核の生成が促進され、結晶
の成長がもたらされる。したがって、固体素子表面の電
気的特性を制御することにより、結晶化の制御が可能と
なる。たとえば、固体素子表面に固定される結晶核の種
類、量、配列密度等を価電子制御により調整することが
でき、それによって結晶化の制御が可能となる。また、
生成された結晶核が固体素子表面に固定されるため、溶
液内の対流等による核の微小な変動が抑制され、核の形
成に従って規則的に分子が集合し、結晶性が向上するこ
とも期待される。結晶化すべき分子の表面の電荷分布が
溶液のpHや分子の変性によって微妙に変化しても、固
体素子表面には必ず該分子の実効表面電荷と補償する空
間電荷が誘起されるため、結晶核の2次元的な生成が容
易にかつ優先的に行なわれることが期待される。
【0030】本発明では、基板の表面に、複数種の溶液
(たとえば母液、沈澱剤、緩衝溶液等)をそれぞれ液滴
として保持するための複数の第1溶液貯留部と、複数の
第1溶液貯留部から排出された溶液を受入れ目的の結晶
を成長させるための第2溶液貯留部と、第2溶液貯留部
から排出される溶液を受入れるための第3溶液貯留部と
が形成されている。本発明の装置では、第1流路によっ
て溶液を第1溶液貯留部から第2溶液貯留部に流す。ま
た第2流路により、溶液を第2溶液貯留部から第3溶液
貯留部に流す。流れの方向は一定の方向であり、逆流は
抑制される。これらの流路によって、2種以上の溶液の
相互拡散を空間的および時間的に変化させ、2種以上の
溶液が混合される第2溶液貯留部において結晶化に適し
た条件を再現性よく制御することができる。一般に化学
反応において、反応系を非平衡な開放系(散逸系)とす
ることで、反応生成物が時間的および/または空間的に
安定に維持されたり、好ましい反応条件が達成される場
合がある。本発明では、このような非平衡の開放系を実
現するために、結晶を成長させるべき第2溶液貯留部か
ら溶液を徐々に排出させて第3溶液貯留部に導いてい
る。第2溶液貯留部における溶液の余剰分を第2流路を
介して排出していくことが好ましい。このように第2溶
液貯留部を開放系にすることで、第2溶液貯留部におけ
る溶液の濃度をほぼ一定に保つことができ、結晶成長に
最適な濃度、pH等の条件を長時間維持することができ
るようになる。
【0031】本発明の装置では、開放系を得るため、溶
液を選択的に一定方向に流す。逆流を抑制して溶液を一
定方向に流すため、第1流路および/または第2流路
は、重力の方向に溶液を徐々に落下させていく構造とす
ることができる。たとえば第1流路および/または第2
流路は、基板上に形成された溝であり、かつ階段状であ
るかまたは勾配を有するものとすることができる。また
第1流路および/または第2流路は、幅および深さの異
なる複数の溝から構成することができる。溝の幅は上流
から下流にいくに従って広がっていることが好ましい。
また溝を上流から下流にいくに従って深くすることで、
階段状または勾配を有する構造を形成することができ
る。本発明の装置において、溶液の拡散は、微細な溝部
での毛管現象を駆動力として用いることができる。そし
て上述した構造により、溶液の流れの方向および流量を
制御することができる。なお、溝は基板自体を加工して
作製してもよいし、基板上に酸化膜等の膜を形成し、そ
の膜を加工して作製してもよい。
【0032】また、流路のサイズを変えることにより、
溶液の供給量を変えることができる。結晶化を行なうべ
き第2溶液貯留部に供給される溶液の流量を変えること
によって、複数種の溶液の混合比を制御することができ
る。複数の流路ごとに流量を調節すれば、より多様な混
合比を得ることができ、したがって結晶化のためより多
くの条件を調製することができる。
【0033】また本発明において、基板や貯留される溶
液を加熱するための手段を設けることができる。このよ
うな手段は、たとえば基板に形成される加熱電極とする
ことができる。加熱された各溶液は、その体積の膨張を
推進力として流路に押出される。また加熱された溶液は
粘性が低下するため流れやすくなる。したがって、加熱
により溶液の移行は促進される。また加熱手段によって
基板を部分的に加熱すれば、基板内に温度勾配を設ける
ことができる。温度勾配に従って、複数の第2溶液貯留
部に温度差が生じる。温度の異なる溶液において、結晶
化すべき物質の溶解度も異なる。したがって、温度差に
より1つの装置においてより多くの結晶化のための条件
を得ることができる。
【0034】さらに本発明では、基板に電圧を印加する
ことができる。電圧は、たとえば溶液貯留部が形成され
た面と反対の基板面に形成される電極を介して印加する
ことができる。このような電極は、少なくとも第2溶液
貯留部に電圧を印加できるよう設けることが好ましい。
電極を介してバイアス電圧を印加することにより、基板
表面に働く静電的な効果を増大させたり減少させたりす
ることができる。特に第2溶液貯留部においてたとえば
基板の表面電位を増加させることにより、結晶成長の促
進を図ることができる。電圧の印加により、結晶化すべ
き分子の基板表面に対する選択的な反応および凝集作用
を向上させることができる。
【0035】また、第2溶液貯留部に微細加工によって
溝または孔を形成することにより、基板に働く静電引力
の対流抑制に対する効果を向上させることができる。特
に基板に形成された溝の底部では、結晶化すべき分子に
対して静電的相互作用をほぼ等方的に及ぼすことができ
る。溝の底部で結晶核が形成される場合、静電的相互作
用により結晶核を溝の底部に静止させ、重力の影響に基
づく対流から結晶核を保護することが可能になる。ほぼ
静止した核に基づいて結晶が成長していけば、過剰な微
結晶の生成は抑制され、結晶核の表面に規則的に分子が
集合した大型の結晶を得ることができると期待される。
一方、第2溶液貯留部の周囲に溝を形成することで、溶
液が流路より供給される際に発生しやすい結晶化部での
対流を抑制することができる。すなわち、溶液の供給時
に対流を溝内で主に発生させ、結晶化部では対流の影響
を緩和できる。
【0036】また、一般に電解質溶液内における帯電物
質または分子の凝集性は、それらの間の電気二重層斥力
とファンデールワールス力との和に依存するため、物質
または分子同士を凝集させる場合、電解質溶液中に添加
する表面電位を調整するための塩濃度をコントロールす
ることが非常に重要となる。しかし本発明によれば、固
体素子表面の静電特性は予め価電子制御により調整でき
るため、塩濃度の調整が容易または不要になるというメ
リットも生じる。
【0037】このような目的に供される基板としては、
上述したような静電特性を有し、電荷量および極性の制
御が可能な物質で、さらに溶液中で化学的に安定な物質
であれば、どのようなものでもよい。この目的を達成す
るために最適な材料の1つとしてシリコン結晶を挙げる
ことができる。以下、シリコン結晶を用いた場合につい
て予想される結晶化のメカニズムを以下に説明する。し
かしながら、以下に記載されるメカニズムは、本発明に
従って用いられる他の基板にも当てはめることができ
る。
【0038】本発明の装置における溶液貯留部および流
路の配置の一具体例を図2に示す。装置を構成する基板
の表面には、第1溶液貯留部に相当する溶液セル10a
および10b、第2溶液貯留部に相当する反応セル14
a、ならびに第3溶液貯留部に相当する廃液セル18
a、18bおよび18cが適当な位置に形成されてい
る。溶液セル10aおよび10bと反応セル14aとは
それぞれ第1流路12aおよび12bで連結される。反
応セル14aと廃液セル18aとの間は第2流路16a
で連結され、さらに廃液セル18aと18bの間ならび
に18bと18cの間に第2流路16bおよび16cが
設けられている。溶液は矢印の方向に沿って流れるよう
になっている。なお、各セルの個数は図2に示した数以
外であっても差し支えない。たとえば溶液セルは3以上
とすることができ、反応セルは2以上とすることができ
る。一方廃液セルは1または2個としてもよいし、4個
以上であってもよい。それぞれの反応セルの個数および
配置に応じて、流路を設けることができる。たとえば、
溶液セル10aから結晶化を行なうべき蛋白質等の高分
子化合物を含む母液を供給し、溶液セル10bから緩衝
溶液等の結晶化の条件を制御するための溶液を供給する
ことができる。反応セル14aは、これらの溶液を受入
れ、結晶化に適した混合液を調製する。また、分子複合
体を形成したいとき、反応セル14aにおいて複合体を
形成すべき1つの分子種を保持させ、溶液セル10aに
他の分子種を保持させ、溶液セル10bに条件設定のた
めの溶液を保持させてもよい。反応セル14aに溶液セ
ルからそれぞれ溶液を供給して反応を起こさせることが
できる。
【0039】図3は、流路の一例を示している。図に示
す流路は、基板表面に形成された複数のV字状の溝(V
溝)から構成される。図4は図3のL−L′断面図であ
り、図5は、図3のX−X′断面図、Y−Y′断面図お
よびZ−Z断面図をそれぞれ示している。流路22は、
幅および深さの異なるV溝部22a、22bおよび22
cから構成される。溶液の流される方向は矢印によって
示される。V溝部の幅および深さは上流から下流にいく
に従って大きくなっている。また流路の幅は一定である
ため、V溝の密度は上流から下流にいくに従って小さく
なっている。このような構造により、図4に示すように
流路22はV溝部22a、22bおよび22cによって
階段状の形状とされている。このような構造を有する流
路において、溶液は毛管現象によって矢印の方向に進む
一方、溶液の逆流は妨げられることになる。
【0040】図3には、基板の表面にV溝を形成した流
路を示したが、溝の形状はこの形状に限られるものでは
ない。たとえばU字型の溝等、他の形状の溝を形成して
もよい。また溝は、基板自体に形成してもよいし、基板
上に絶縁性の膜等の膜を形成した後、これを加工して作
製してもよい。
【0041】図6は、基板上に形成された溶液保持部お
よび流路の一例を示している。たとえばシリコン結晶か
らなる基板20上には、第1溶液貯留部に相当する溶液
セル20a、第2溶液貯留部に相当する反応セル24お
よび第3溶液貯留部に相当する廃液セル28が配置され
ている。溶液セル20aは、たとえば酸化シリコンから
なる膜20′aによって囲まれた領域とすることができ
る。膜20′aが形成されていない窪んだ領域に母液、
緩衝溶液等の溶液の液滴21が保持される。溶液は第1
流路22aを伝わって次第に反応セル25に拡散してい
く。第1流路22aは、たとえば図3〜5に示すような
溝とすることができる。一方、反応セル24は、基板表
面のエッチングによって形成された溝または孔とするこ
とができる。この溝または孔に溶液が次第に流入し、反
応セル24に保持される溶液の体積は増大していく。反
応セル24と廃液セル28との間には、反応セル24を
オーバフローした溶液が廃液セル28に流入するよう第
2流路26が形成されている。廃液セル28は、たとえ
ば反応セル24よりも深い溝または孔で構成されること
が好ましい。反応セル24には、複数の溶液セルから複
数種の溶液が供給され、混合液が調製される。結晶化す
べき分子種を含む母液は、反応セル24において他の溶
液により希釈される。母液を含む液滴25のうち過剰な
部分は反応セル24から第2流路26を介して廃液セル
28に流入するようになる。この流れにより、反応セル
24内の溶液の体積はほぼ一定に保たれ、しかも母液が
極限まで希釈された平衡状態に達することを防ぐことが
できる。すなわち、反応セル24において液の流入のバ
ランスにより所定の希釈率を得ることが可能である。
【0042】図7に本発明の装置のもう1つの具体例を
示す。基板30上には、溶液セル30a、30bおよび
30cが適当な間隔を空けて配置される。溶液セル30
aおよび30bからそれぞれ供給される溶液を受入れる
べく、反応セル34−1、34−2、34−3、34−
4…34−nが設けられている。一方溶液セル30aお
よび30cからそれぞれ供給される溶液を受入れるべ
く、反応セル34′−1、34′−2、34′−3、3
4′−4…34′−nが設けられている。溶液セル30
aからは、第1流路32−1a〜32−naならびに3
2′−1a〜32′−naが各反応セルに延びている。
溶液セル30bからは第1流路32−1b〜32−nb
が各反応セルに延びており、溶液セル30cからは第1
流路32′−1b〜32′−nbが各反応セルに延びて
いる。図に示すように、複数の反応セルにはそれぞれ長
さおよび幅の異なる第1流路が連結されているため、溶
液セルから各反応セルに流入する溶液の流速は異なるこ
とになる。したがって、各反応セルにおいてそれぞれ異
なった濃度の混合液が得られる。さらに基板上には各反
応セルに対応して廃液セル38−1〜38−nならびに
38′−1〜38′−nが設けられている。これらの廃
液セルと各反応セルとは、それぞれ第2流路36−1〜
36−nならびに36′−1〜36′−nにより連結さ
れる。
【0043】また基板30上には、加熱用電極31aお
よび31b、ならびに測温用電極35aおよび35bが
所定のパターンで形成されている。加熱用電極31aお
よび31bには、基板30上に形成された端子33aお
よび33bを介して電力が供給される。測温用電極35
aおよび35bは、基板30上に形成された端子37a
および37bにそれぞれ接続されている。これらの電極
および端子は、予め基板上にたとえば酸化シリコンから
なる絶縁膜39aおよび39bを所定のパターンで形成
し、その上にたとえばクロム薄膜のパターンを形成する
ことにより容易に作製することができる。加熱用電極3
1aおよび31bに通電することにより、基板を加熱す
ることができる。
【0044】以上に示してきた本発明の装置の構造は、
半導体装置の製造プロセスに用いられる技術によって得
ることが可能である。この技術は、薄膜形成、レジスト
パターン形成、フォトリソグラフィ、エッチング等の技
術を含む。特に基板としてシリコン結晶を用いる場合、
半導体装置の製造プロセスにおいて確立された種々の技
術を容易に適用することができる。図8は、本発明の装
置における流路を形成するための1プロセスを示してい
る。基板としてシリコン結晶を用いる場合、まずシリコ
ン基板40上に酸化シリコン(SiO2 )膜41を形成
する(図8(a))。次に、酸化シリコン膜を所定のパ
ターン41′にエッチングする(図8(b))。露出し
たシリコン表面に異方性エッチングを施せば、V溝42
aおよび42bが得られる(図8(c))。また、必要
に応じて酸化シリコン膜をエッチングにより除去する
(図8(d))。このようなプロセスにより、V溝によ
って構成される流路を得ることができる。
【0045】溶液貯留部は、結晶化したい物質の性質、
結晶化の難易に応じて種々の構造とすることができる。
シリコン結晶の表面は通常、結晶欠陥および固定電荷が
極めて少ないため、余分な結晶核を生成させにくいとい
った長所を有する。したがって、シリコン結晶の表面を
結晶成長のための溶液貯留部としてそのまま用いること
も可能である。また、結晶化すべき蛋白質等の分子の特
性に応じてシリコン結晶の表面にシリコン酸化膜を形成
すれば、親水性を高めることもできる。
【0046】以下に、基板における価電子制御により結
晶化が制御されるメカニズムを説明する。解離して負の
実効表面電荷を有する高分子化合物を含有する電解質水
溶液を、価電子制御されたnまたはp型シリコン結晶に
接触させると、n型シリコン表面に対してはショットキ
ー障壁が形成される一方、p型シリコン表面に対しては
オーミック性接触が得られる。p型シリコン表面では、
負の電荷を有する高分子電解質に対して、バルクシリコ
ン側から常に正孔が供給されるため(オーミック特
性)、高分子は常にシリコン表面に凝集し続けることが
予想される。一方、n型シリコンの表面には、水溶液の
電解質濃度に依存した表面電位が発生するとともに、内
部に空間電荷層領域が形成される。この空間電荷量は、
n型シリコンのドーパント濃度にも依存する。したがっ
て、電解質溶液中において負の電荷を有する高分子は、
このn型シリコンの有する正の空間電荷を少なくとも補
償するまで、シリコン表面に凝集し続けることが予想さ
れる。よって、空間電荷層領域が形成されるシリコン表
面に対しては、高分子化合物の凝集および結晶化が制限
されて起こるのに比べ、オーミック性接触が形成される
シリコン表面に対しては、高分子化合物の凝集が無制限
に進行することが予想される。
【0047】また、たとえばn型シリコンにおいて、不
純物濃度が異なる2つ以上の領域が形成されている場合
も、それらの領域によって異なる態様で結晶化が進むこ
とが予想される。n型シリコンの不純物濃度が低く高抵
抗の場合と、不純物濃度が高く低抵抗の場合について、
その効果の相違について述べる。n型シリコンの場合、
低不純物濃度(あるいは高抵抗)基板では、ドーパント
濃度が低いため表面近傍に形成される空間電荷層の幅が
広くなることにより、空乏層容量が小さく、したがって
シリコン表面に誘起される表面電位は高不純物濃度(あ
るいは低抵抗)基板の場合と比較して、大きくなること
が予想される。この表面電位は、高分子化合物の有する
実効表面電位と極性が逆となるため、静電的な引力の作
用により凝集が促進されると予想される。すなわち、低
不純物濃度で高抵抗のn型シリコン基板の方が、高不純
物濃度で低抵抗のn型シリコン基板より、基板表面によ
り多くの結晶を析出させることができると予想される。
【0048】以上に示してきた特性を利用して、結晶核
の形成を促進および抑制する一具体例を以下に示す。た
とえば、図9および図10に示すように、n型シリコン
層上に所定のパターンでp型シリコン層を積層すること
によって、n型シリコン表面への結晶の析出を抑制し、
所定のパターンで形成されたn型シリコン層上にのみ選
択的に結晶を成長させることができる。図9および10
に示す反応セル54では、n型シリコン層54b上に、
所定の間隔を空けて複数のp型シリコン層からなるアイ
ランド54aが配列されている。n型シリコン層の上部
にp型シリコン層のアイランドを形成することによっ
て、両者の空間電荷により形成される表面電位は、たと
えば図11のようになることが予想される。よって、こ
の表面電位の分布に対応して結晶核が二次的に生成され
るものと考えられる。反応セルの特定の領域に価電子制
御によって結晶化に適した部分を形成することにより、
余分な結晶核の生成や双晶の成長を抑制して、特定領域
に結晶性が良好でかつサイズの大きな結晶を成長させる
ことができる。このような構造は、結晶を析出させる位
置を制御することを可能にする。
【0049】このように空間的に抵抗および/または不
純物元素の種類の異なる領域を形成することは、シリコ
ン結晶等からなる基板に選択的に不純物をドーピングす
ることによって容易に達成することができる。さらに別
の方法として、シリコン結晶等からなる基板の表面をエ
ッチングすることによって抵抗値の異なるシリコン表面
を露出させてもよい。図12は、基板の表面をエッチン
グした一例を示している。n型シリコン層74b上にp
型シリコン層を全面的に形成した後、エッチングにより
溝74cを形成し、p型シリコン層のアイランド74a
が得られる。このような構造の基板における表面電位は
図12に示すとおりである。エッチングによりn型シリ
コン層74bが露出した部分は表面電位が低くなってい
る。
【0050】さらに、図9および10に示す装置におい
て、反応セル54の周囲にはV溝54cが形成されてい
る。この溝は結晶化の目的に応じて適宜形成することが
できる。流路52aおよび52bから供給される溶液は
一旦溝54cに貯留された後、p型シリコン層のアイラ
ンドを有する窪みに供給される。また溶液は溝54cを
介して流路56から廃液セルへと送られる。図13は、
反応セルに形成された溝部の役割を説明するためのもの
である。結晶化を始めるにあたって、高分子化合物を含
む母液は溝部54cに供給され、表面張力によって液滴
51として保持される(図13(a))。この状態にお
いて結晶の生成は抑制される。液滴と接触する基板の表
面は、価電子制御により結晶の生成を抑制するものだか
らである。次いで、図13(b)に示すように、溶液が
流路を介して供給されるに従い、液滴51の体積が増大
し、やがて溶液は反応セル54内のp型シリコン層のア
イランドを含む平坦部に移動するようになる。最終的に
図13(c)に示すように、溶液51′は平坦部全体を
覆い、p型シリコン層のアイランド54bにおいて結晶
化が促進される。このように結晶化を行なうべき母液の
周囲にV溝を形成することで、結晶化を行なうべき領域
における対流を抑制することが期待できる。すなわち、
溶液の供給時に対流はV溝内で主に発生し、結晶化を行
なう平坦部では対流が緩和されると考えられる。
【0051】本発明にもちいられるn型およびp型シリ
コン結晶は、通常のLSIプロセスに用いられるシリコ
ン上と同等の特性を有するものでよい。シリコン結晶の
比抵抗は0.0001〜1000Ωcm程度の範囲内で
あればよく、より好ましくは0.001〜100Ωcm
の範囲のものを用いることができる。n型およびp型に
価電子制御されたシリコンの調整方法として、種々のも
のが考えられ、どのような方式のものでもよいが、最も
簡便で不純物濃度の制御が正確に行なえる方法として、
イオン注入法が挙げられる。この場合、p型およびn型
の価電子制御は、それぞれ周期律表第III族および第
V族に属する元素のイオンをシリコン中に注入、アニー
ルすることによって容易に行なうことができる。p型に
するためのIII族元素としてB,Al、Ga、In、
Tl等を挙げることができる。特にBが一般的である。
n型にするための第V族元素としてN、P、As、S
b、Bi等を挙げることができ、特にP、As、Sbが
一般的である。また、結晶の表面は、ミラーポリッシュ
されたものが、析出する結晶核の制御を行なう上で好ま
しい。
【0052】本発明において、シリコン基板表面に不純
物層を形成する際、その厚みは、0.1〜200μmが
好ましく、1〜50μmの範囲がより好ましい。これ以
外の範囲では、作製が容易でなかったり、効果がなくな
ったりするため望ましくない。
【0053】以上、価電子制御が容易な半導体結晶シリ
コンを用いた例について説明したが、本目的を達成する
ため、同様の機能を有する他の材料を適宜用いることが
できる。たとえば、シリコン以外の半導体結晶を好まし
く用いることもでき、さらには、半導体結晶以外の材
料、たとえば電荷分布の制御された無機化合物、有機化
合物、高分子化合物、およびそれらの複合物を候補とし
て挙げることができる。
【0054】本発明の装置において、第2溶液貯留部と
しての反応セルの表面には、上述したように複数の溝ま
たは不純物元素が添加されたアイランドを形成すること
ができる。複数種のサイズの溝またはアイランドを1つ
の反応セルに作製しておいてもよい。基板表面に形成さ
れる溝のサイズおよび深さ、ならびにアイランドのサイ
ズは、結晶化すべき高分子化合物の種類によって適宜変
更することが望ましい。一般的に、溝またはアイランド
の幅は0.01〜100μmの範囲とすることができ
る。溝の長さはたとえば0.1〜10mmの範囲とする
ことができる。また溝は、1μm〜1mmの範囲の間隔
で複数作製することができる。サイズの異なるアイラン
ドおよび溝を多数形成しておけば、結晶化により好まし
い領域を提供できる可能性が高くなる。また溝の深さ
は、0.01〜200μmの範囲で調整することができ
る。なおこれらのサイズは、主として装置の製造上好ま
しい範囲であるが、これらの範囲以外であっても、装置
の性能、すなわち結晶化に決定的な悪影響を及ぼすもの
ではない。
【0055】基板表面に形成される第2溶液貯留部とし
ての反応セルのサイズは、用いられる溶液の量によって
決定されるべきである。一般に反応セルのサイズは、
0.1〜10mm角程度が好ましい。また、基板表面を
エッチングすることによって孔または窪みを有する反応
セルを形成する場合には、孔または窪みの深さは、0.
01〜500μm程度の範囲が好ましい。
【0056】流路は、基板自体または基板表面に形成さ
れた酸化膜等の膜をエッチングすることによって形成す
ることができる。溝の幅は、たとえば0.01〜100
00μmの範囲とすることができる。溝の長さは0.1
〜100mmの範囲で作製することが好ましい。また、
0.01〜10000μmの範囲の間隔で複数の溝を作
製することが好ましい。さらに溝の深さは、0.01〜
200μmの範囲で調整することが好ましい。これらの
範囲のサイズをそれぞれ有する複数の溝によって、流路
を構成することができる。複数の溝によって構成される
流路全体の幅は、1μm〜10mmの範囲とすることが
できる。
【0057】また、シリコン基板等の固体素子表面に
は、溶液貯留部および流路を取囲むように撥水性の層を
形成することが好ましい。この層は、溶液を保持する際
に、溶液が周囲に流出するのを効果的に防止することが
できる。たとえば表面の酸化膜が除去されたシリコン表
面は、一般に酸、アルカリのみを含む水や純水に対して
十分に撥水性であるが、緩衝溶液のような塩を含有する
水溶液に対して撥水性は低下する。したがって、緩衝溶
液を用いる場合、シリコン基板の周囲に撥水性の物質か
らなる層を形成する必要がある。撥水性の層は、たとえ
ば有機系の樹脂によって形成することができ、ポリイミ
ド樹脂は最も簡便に撥水性の層を形成できる材料の1つ
である。ポリイミドからなる撥水性の層を形成する場
合、たとえば感光性または非感光性のポリイミド樹脂を
コーティングし、硬化させた後、所望のパターンとなる
ようエッチングまたは現像により不要な部分を除去する
ことができる。
【0058】本発明で用いられる撥水層の厚みは機能的
に特に限定する必要はないが、0.1〜100μmの範
囲の厚みのものが比較的作製しやすい。また、撥水性を
示しかつ溶液中で化学的に安定であれば、種々の材料を
この層のために用いることができる。
【0059】本発明では、固体素子に電圧を印加するこ
とにより表面電位の分布を制御することができる。図1
4を参照して、本発明の装置を構成する基板にバイアス
電圧を印加した場合の動作原理について説明する。図に
示す基板において、第1のシリコン層150a上には第
2のシリコン層150bが形成される。溶液が貯留され
る部分には、第2のシリコン層が形成されておらず、第
1のシリコン層が露出している。第1のシリコン層15
0aの裏側には電極層159が形成され、バイアス電圧
を印加できるようになっている。第1のシリコンとして
たとえば高抵抗シリコン(n- シリコン)を用い、第2
のシリコンとして低抵抗シリコン(n+シリコン)を用
いることができる。この場合、バイアス電圧が印加され
ていないとき、シリコン表面の表面電位の分布はAで示
されるチャートのようになる。基板に正のバイアス電圧
が印加されると、表面電位の分布は正の方向にシフト
し、全体的に電位が増加する(チャートB参照)。一
方、負のバイアス電圧を印加すると、シリコン表面は溶
液に対して電気的にオーミック性となるため、表面電位
の分布はほぼフラットになり、全体的に電位はほぼ0に
なる(チャートC)。このように、電圧を印加すること
によって、シリコン基板表面の電位分布を任意に変える
ことができる。電圧印加による表面電位の制御により、
高分子化合物の素子表面における凝集および結晶化をよ
り積極的に制御することができる。なお、電圧を印加す
るための電極は、固体素子の裏面全体に設けてもよい
が、結晶成長を行なわせたい部分のみに形成してもよ
い。
【0060】本発明は、種々の高分子化合物、特に高分
子電解質を結晶化するために用いることができる。本発
明は特に、酵素および膜蛋白質等の蛋白質、ポリペプチ
ド、ペプチド、ポリサッカライド、核酸、ならびにこれ
らの複合体および誘導体等を結晶化させるため好ましく
適用される。本発明は、生体高分子の結晶化のため好ま
しく適用される。また、本発明は、生体内または生体外
において蛋白質、酵素、核酸を始めとする種々の生体高
分子の捕捉、精製、合成等を行なうためのマイクロ・リ
アクター装置に応用することができる。本発明の装置
は、上述した技術によって、微細化および集積化が可能
である。
【0061】
【実施例】ニワトリ卵白製リゾチーム(Lysozyme, from
Chicken Egg White)をpH4.5の標準緩衝溶液に溶
解し、30mg/mlの濃度とした。シリコン結晶より
なる2種類の装置において結晶化を行なった。
【0062】(1) サンプル−1 約30Ω・cmの比抵抗のn型シリコン基板の表面に、
リン元素のイオン注入を行なった後アニールを施して低
抵抗のp型シリコン層(比抵抗:約0.01Ω・cm、
厚み:約5μm)を全面的に形成した。その後、表面に
熱酸化によって酸化シリコン層を200nmの厚みで形
成した。次いで、図15に示すような2つの溶液セル、
3つの反応セル、3つの廃液用セルが流路で結ばれた構
造をシリコン基板の表面に形成した。シリコン基板10
0上において、溶液セル100aおよび100bは適当
な間隔を空けて配置されている。反応セル104a、1
04bおよび104cは横方向に1列に配列されてい
る。溶液セル100aと各反応セルとは流路102a、
102cおよび102eにより連結される。溶液セル1
00bと各反応セルとは流路102b、102dおよび
102fでそれぞれ連結される。これらの流路は図3〜
5に示すような構造を有している。各反応セルに対して
廃液用セル108a、108bおよび108cが設けら
れている。各反応セルと各廃液用セルとは、流路106
a、106bおよび106cでそれぞれ連結される。こ
れらの流路は基板100上に形成されたV溝である。
【0063】結晶化のための装置(マイクロ・リアクタ
ー)全体のサイズは30mm角であった。溶液セル10
0aおよび100bのサイズは3mm×20mmであっ
た。このサイズの領域の周囲に、幅約10μmのV溝を
エッチングによって形成することにより、この領域を他
の領域から仕切って溶液セルを形成した。3個の反応セ
ルのサイズは2mm×5mmとした。各反応セルにおい
て、2mm×5mmの領域の周辺部に深さが40μm、
幅が200μmのV溝を設けた。V溝はエッチングによ
り形成した。さらに2mm×5mmの平坦な領域を10
μmの深さで異方性エッチングするとともに、約1mm
のピッチで表面に約0.2mmの幅を有する薄いp型層
の領域を残すよう加工を行なった。このようにして、内
側の平坦な領域に分子の凝集および結晶化に関して空間
的な選択性を付与した。各反応セルに接続される各廃液
用セルのサイズは2mm×5mmであり、深さは100
μmであった。
【0064】溶液セル100aおよび100bから3個
の反応セル104a、104bおよび104cまでの流
路の長さは、それぞれ5mm、10mm、20mmであ
った。流路の幅はすべて1mmであった。1mmの幅を
有する流路は、すべてシリコンの異方性エッチングによ
って形成されたV溝で構成される。図3〜5に示すよう
な構造において、流路全長の3分の1ごとに溝の幅およ
び深さを変えていった。流路の最初の3分の1では、溝
の幅と溝の間隔との比(L/S)は1であった。次の3
分の1ではL/Sは1/10であり、最後の3分の1で
はL/Sは1/20であった。また溝の深さは、流路の
最初の3分の1において1μm、次の3分の1において
5μm、最後の3分の1において50μmであった。す
なわち、10mmの長さの流路であれば、最初の3.3
mmの長さにおいて、L/Sは1μm/1μm、深さは
1μmであり、次の3.3μmの部分においてL/Sは
5μm/50μm、深さは5μmであり、最後の3.3
mmの部分においてL/Sは50μm/1000μm、
深さは50μmであった。
【0065】また3個の廃液用セルは長さが2mmの流
路により各反応セルと接続された。各流路の幅は1mm
であった。流路を形成するV溝のサイズに関し、L/S
は100μm/200μmであり、深さは約100μm
であった。
【0066】溝部を形成した後、シリコン基板表面に感
光性ポリイミドを塗布し、フォトリソグラフィによっ
て、各セルおよび流路以外の表面に10μmの厚みを有
するポリイミド層を形成した。
【0067】(2) サンプル−2 3つの廃液用セルおよびそれに通じる流路を形成しなか
った以外は、サンプル−1と同様にしてマイクロ・リア
クターを作製した。
【0068】以上のようにして得られたサンプル−1お
よび2を、直径が約50mmの蓋付セルプレート内に、
微細加工を施した表面が上となるように入れた。なお、
セルプレートの底部には予めpH4.5の緩衝溶液を約
5ml滴下しておいた。その後、サンプル1および2の
3つの反応セル内に前述のリゾチームの溶液をそれぞれ
500μm滴下し、さらに溶液セル100aにpH4.
5の緩衝溶液を約1ml、溶液セル100bに0.1M
の塩化ナトリウム水溶液を1ml、液滴が溢れないよう
滴下した。
【0069】次にセルプレートの蓋を閉め、装置を10
℃の冷暗所内に静置した。サンプルを冷暗所に72時間
保管した後、サンプルを取り出して基板上のリゾチウム
の結晶を顕微鏡によって観察した。その結果を図16お
よび17に示す。図16に示すように、サンプル−1上
では、反応セル内のp型シリコン層の領域に約1mmの
サイズを有する結晶面の平滑な大型の単結晶が得られ
た。またエッチングにより露出したn型シリコン層の領
域には結晶の成長が全く起こっていなかった。したがっ
て本発明の装置が結晶化に有効であることが明らかにな
った。
【0070】一方、サンプル−2上では、図17に示す
ように、反応セル内のp型シリコン層の領域に比較的大
きなサイズの結晶が得られた。しかしながら、得られた
結晶のほとんどは双晶となっていた。また、n型シリコ
ン層の領域にまで結晶が析出していることが認められ
た。この結果は、サンプル−2上において常に反応セル
内に溶液セルより緩衝溶液および沈澱剤が供給され、液
が排出されないため、反応セル内で過剰な結晶核が生成
し、さらにこれらの核がセル内で浮遊して種々の箇所で
結晶成長が進行したものと考えられた。サンプル−1の
ように反応セルから溶液を排出させて濃度のバランスを
保つことにより、品質のよい結晶が得られることがわか
った。
【0071】以上に示すように、サンプル−1に示すよ
うな本発明の装置を用いることによって、微量な試料で
あっても大型の品質のよい単結晶を調製することが可能
である。
【0072】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
上述したように多様な特性を有するためどの物質に対し
ても適用できる手法がなく試行錯誤を繰返しながら進め
られてきた従来の結晶化プロセスの欠点を解決すること
かできる。特に本発明によれば、重力による溶液の対流
の影響を抑制し、結晶化の初期過程における核の形成を
安定して行なわせることができる。また本発明によれ
ば、微結晶の大量生成を抑制または制御することがで
き、X線構造解析を可能にし得る大型の結晶を得ること
ができる。さらに本発明によれば、1つの基板上で微量
な溶液について多数の異なる結晶化のための条件を調製
することができる。これにより、特定の分子について結
晶化のための最適な条件を作り出すことができる。また
本発明において、電圧の印加により基板の表面に、分子
の凝集および結晶化のためより適切な電気的状態をもた
らすことができる。電圧の印加によって、結晶の成長を
促進させることができる。さらに、本発明によれば、溝
部において溶液の対流の影響を抑制し、結晶の成長を安
定して行なわせることができる。本発明は、試料が微量
であっても、大型の結晶を成長させるためより適切な条
件を短時間のうちに作り出すことが可能である。
【0073】本発明は、製薬産業や食品産業等におい
て、有用な物質、特に蛋白質、核酸等の生体高分子の研
究、開発および製造に適用される。本発明によれば、X
線構造解析を可能にする結晶性の良好な結晶を成長させ
ることができる。結晶解析の結果、その分子構造および
活性のメカニズムについて得られる情報は、薬剤の設計
および製造に生かされる。また、本発明は、関心のある
分子の生成または結晶化に適用される。さらに、本発明
は、蛋白質等の生体高分子を用いた電子デバイスの作製
に応用が期待される。また本発明の装置は、生体高分子
等を選択的に吸着および固定化することが可能なため、
バイオセンサ、バイオセンサによる各種生体組織および
生体物質の測定装置への応用等が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従って、基板の表面に結晶核が固定化
され、結晶成長が進んでいく様子を示す模式図である。
【図2】本発明の結晶成長用装置の一具体例を示す模式
図である。
【図3】本発明の装置における流路の一具体例を示す平
面図である。
【図4】図3に示す流路のL−L′断面図である。
【図5】図3に示す流路のX−X′、Y−Y′およびZ
−Z′断面図である。
【図6】本発明の結晶成長用装置において溶液保持部お
よび流路の配置を示す概略断面図である。
【図7】本発明の結晶成長用装置のもう1つの具体例を
示す模式図である。
【図8】本発明の結晶成長用装置の流路を形成するため
のプロセスを示す概略断面図である。
【図9】本発明の結晶成長用装置における第2溶液貯留
部の一具体例を示す平面図である。
【図10】図9に示す溶液貯留部の概略断面図である。
【図11】図9に示す溶液貯留部の表面電位を示す模式
図である。
【図12】結晶化のための溶液貯留部のもう1つの具体
例を示す模式図である。
【図13】結晶化のための溶液貯留部に溶液が保持され
ていく様子を説明するための概略断面図である。
【図14】結晶成長用装置にバイアス電荷を印加した場
合に発生する表面電位を示す模式図である。
【図15】本発明の結晶成長用装置の他の具体例を示す
模式図である。
【図16】本発明の実施例において生成した結晶構造の
顕微鏡写真である。
【図17】比較例において生成した結晶構造の顕微鏡写
真である。
【図18】従来の方法に用いられる装置の一例を示す模
式図である。
【図19】従来の方法に用いられる装置のもう1つの例
を示す模式図である。
【図20】従来の方法に用いられる装置の他の例を示す
模式図である。
【符号の説明】
1 基板 2 結晶核 10a、10b 溶液セル 12a、12b 第1流路 14a 反応セル 16a、16b、16c 第2流路 18a、18b、18c 廃液セル

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶液中に含まれる高分子化合物の結晶を
    成長させるための装置であって、 前記高分子化合物を含む溶液の環境に応じて表面部分の
    正孔または電子の濃度を制御できるよう価電子が制御さ
    れた基板を備え、 前記基板の表面は、 2種類以上の溶液をそれぞれ保持するための複数の第1
    溶液貯留部と、 前記複数の第1溶液貯留部からそれぞれ溶液を排出させ
    て1方向に流すための複数の第1流路と、 前記複数の第1流路によりそれぞれ送られる前記2種類
    以上の溶液を同時に受入れる第2溶液貯留部と、 前記第2溶液貯留部から溶液を排出させて1方向に流す
    ための第2流路と、 前記第2流路により送られる溶液を受入れる第3溶液貯
    留部とを備え、 少なくとも前記第2溶液貯留部において、前記高分子化
    合物を含む溶液の環境に応じて表面部分の正孔または電
    子の濃度を制御できるよう価電子が制御されていること
    を特徴とする、結晶成長用装置。
  2. 【請求項2】 前記第1流路および/または第2流路
    は、前記基板上に形成された溝であり、かつ前記溝は前
    記溶液を1方向に流すため階段状であるかまたは勾配を
    有するものであることを特徴とする、請求項1の結晶成
    長用装置。
  3. 【請求項3】 前記第1流路および/または第2流路
    は、前記基板上に形成された幅および深さの異なる複数
    の溝から構成されており、上流から下流にいくに従っ
    て、前記溝の幅は広がりかつ前記溝は深くなっているこ
    とを特徴とする、請求項1または2記載の結晶成長用装
    置。
  4. 【請求項4】 前記基板の表面において、前記第2溶液
    貯留部の特定領域で前記高分子化合物の結晶核の形成お
    よび結晶の成長が促進され、かつその他の領域で前記結
    晶核の形成が抑制されるよう、前記価電子が制御されて
    いることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記
    載の結晶成長用装置。
  5. 【請求項5】 前記第2溶液貯留部に溝または孔が形成
    されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか
    1項記載の結晶成長用装置。
  6. 【請求項6】 前記基板を加熱するための手段をさらに
    備えることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項
    記載の結晶成長用装置。
  7. 【請求項7】 同種類の溶液を運ぶ複数の前記第1流路
    のうち、前記第2溶液貯留部の1つに向かう前記第1流
    路の長さおよび/または幅が、前記第2溶液貯留部の他
    の1つに向かう前記第1流路と異なっており、それによ
    り、前記第2溶液貯留部の1つは前記他の1つと異なる
    流速で前記第1溶液貯留部から溶液を受入れることを特
    徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載の結晶成長
    用装置。
  8. 【請求項8】 少なくとも前記第2溶液貯留部に電圧を
    印加するための電極をさらに有することを特徴とする、
    請求項1〜7のいずれか1項記載の結晶成長用装置。
  9. 【請求項9】 前記基板が不純物添加された半導体基板
    からなり、前記価電子制御は不純物の濃度および/また
    は種類の制御によりなされていることを特徴とする、請
    求項1〜8のいずれか1項記載の結晶成長用装置。
  10. 【請求項10】 前記半導体基板がシリコン結晶からな
    ることを特徴とする、請求項9記載の結晶成長用装置。
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JP2016517387A (ja) * 2013-03-15 2016-06-16 デノブクス,エルエルシー 表面エネルギーを改質した非晶質を使用した溶液からの意図された核形成及び結晶成長

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