JPH107498A - 結晶成長方法および結晶成長用装置 - Google Patents

結晶成長方法および結晶成長用装置

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JPH107498A
JPH107498A JP18659496A JP18659496A JPH107498A JP H107498 A JPH107498 A JP H107498A JP 18659496 A JP18659496 A JP 18659496A JP 18659496 A JP18659496 A JP 18659496A JP H107498 A JPH107498 A JP H107498A
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    • C30CRYSTAL GROWTH
    • C30BSINGLE-CRYSTAL GROWTH; UNIDIRECTIONAL SOLIDIFICATION OF EUTECTIC MATERIAL OR UNIDIRECTIONAL DEMIXING OF EUTECTOID MATERIAL; REFINING BY ZONE-MELTING OF MATERIAL; PRODUCTION OF A HOMOGENEOUS POLYCRYSTALLINE MATERIAL WITH DEFINED STRUCTURE; SINGLE CRYSTALS OR HOMOGENEOUS POLYCRYSTALLINE MATERIAL WITH DEFINED STRUCTURE; AFTER-TREATMENT OF SINGLE CRYSTALS OR A HOMOGENEOUS POLYCRYSTALLINE MATERIAL WITH DEFINED STRUCTURE; APPARATUS THEREFOR
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 蛋白質等の生体高分子の結晶化を促進できる
方法を提供する。 【解決手段】 蛋白質等の生体高分子を含む緩衝溶液1
26の環境に応じて表面部分の正孔または電子の濃度を
制御できるよう価電子が制御されたシリコン結晶120
および130を溶液126に接触させる。溶液126
は、スペーサ125を介して重ねられたシリコン結晶1
20と130のわずかな隙間の間に保持される。それぞ
れのシリコン結晶には、サイズの異なる複数の溝または
孔が形成されており、溝または孔の外よりも中で生体高
分子の結晶化が促進されるよう、価電子が制御されてい
る。溶液126と接触する溝または孔において、生体高
分子の結晶が成長する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高分子化合物の結
晶化を行なうための方法およびそれに用いる装置に関
し、特に、価電子が制御された半導体基板等を用いて、
蛋白質を初めとする種々の生体高分子の結晶化を行なう
ための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】蛋白質を初めとする各種生体高分子およ
びそれらの複合体における特異的性質および機能を理解
する上で、それらの詳細な立体構造は不可欠な情報とな
っている。たとえば、基礎化学的な観点からは、蛋白質
等の3次元構造の情報が、酵素やホルモン等による生化
学系での機能発現のメカニズムを理解する上で基礎とな
る。また、産業界のうち特に薬学、遺伝子工学、化学工
学の分野においては、3次元構造は、ドラッグデザイ
ン、プロテインエンジニアリング、生化学的合成等を進
める上で合理的な分子設計に欠かせない情報を提供す
る。
【0003】このような生体高分子の原子レベルでの3
次元立体構造情報を得る方法としては、現在のところX
線結晶構造解析が最も有力かつ高精度な手段である。近
年のX線光源・回折装置のハードウェア上の改良による
測定時間の短縮、測定精度の向上に加え、コンピュータ
の計算処理速度の飛躍的な向上により、解析スピードが
大幅に向上してきている。今後も、この手法を主流とし
て3次元構造が明らかにされていくものと思われる。
【0004】一方、X線結晶構造解析により生体高分子
の3次元構造を決定するためには、目的とする物質を抽
出・精製後、結晶化することが必須となる。しかし、現
在のところ、どの物質に対しても適用すれば必ず結晶化
できるといった手法および装置がないため、勘と経験に
頼ったトライアンドエラーを繰返しながら結晶化を進め
ているのが実状である。生体高分子の結晶を得るために
は、非常に多くの実験条件による探索が必要であり、結
晶成長がX線結晶解析の分野での最も大きなボトルネッ
クとなっている。
【0005】蛋白質等の生体高分子の結晶化は、通常の
無機塩等の低分子量化合物の場合と同様、高分子を含む
水または非水溶液から溶媒を奪う処理を施すことによ
り、過飽和状態にして、結晶を成長させるのが基本とな
っている。このための代表的な方法として、(1)バッ
チ法、(2)透析法、(3)気液相間拡散法があり、試
料の種類、量、性質等によって使い分けられている。
【0006】バッチ法は、生体高分子を含む溶液に、水
和水を奪う沈殿剤を直接添加して、生体高分子の溶解度
を低下させ、固相へ変化させる方法である。この方法で
は、たとえば固体の硫酸アンモニウム(硫安)がよく使
用される。この方法は、溶液試料を大量に必要とし、塩
濃度、pHの微妙な調整が困難であること、さらに操作
に熟練を要し、再現性が低いといった欠点を有する。透
析法は、バッチ法の欠点を改善した方法で、たとえば図
16に示すように、透析チューブ161の内部に生体高
分子を含む溶液162を密封し、透析チューブ外液16
3(たとえば緩衝溶液)のpH等を連続的に変化させ結
晶化を行なう方法である。この方法によれば、内外液の
塩濃度、pH差を任意の速度で調節可能であるため、結
晶化の条件を見出しやすい。気液相間拡散法は、たとえ
ば図17に示すように、カバーガラス等の試料台171
上に、試料溶液の液滴172を載せ、密閉した容器17
3内にこの液滴と沈殿剤溶液174を入れることによ
り、両者間の揮発成分の蒸発によって緩やかに平衡を成
立させる手法である。
【0007】しかし、蛋白質等の生体高分子の結晶化に
は、前述したように種々の問題点があるのが実状であ
る。
【0008】まず、結晶性が良好なものや、大型の単結
晶を得ることが困難であった。これは、生体高分子が一
般的に分子量が大きいために、重力の影響を受けやす
く、溶液内で対流を引起こすことが原因であると考えら
れている(たとえばF. Rosenberger, J. Cryst. Growt
h, 76, 618 (1986))。すなわち、生体高分子や生成
した微小な結晶核が自重で沈降し、これによって分子や
核周辺での溶液の対流が引起こされる。さらには、生成
した結晶表面部でも、分子の濃度が低下するために局所
的な溶液の対流が発生する。以上のようにして発生した
溶液内の対流によって、生成する結晶は溶液内で移動
し、しかも、周辺の拡散による分子の供給層は著しく減
少する。このため、結晶成長速度が低下したり、結晶面
における成長の異方性等が発生し、結晶化が妨げられる
ものと思われる。
【0009】また、生体高分子結晶には、他の物質の結
晶とは異なり、多量の溶媒(主として水)が含まれる
(≧50体積%)。この溶媒が、無秩序であり、かつ結
晶中で分子間の空隙となっている部分を容易に動き得
る。また、分子が巨大であるにもかかわらず、結晶中で
広範囲な分子間のパッキングコンタクトがほとんどな
く、わずかの分子−分子間コンタクトまたは水を介した
水素結合によるコンタクトしか存在していない。このよ
うな状態も結晶化を妨げている要因である。
【0010】さらに、生体高分子は結晶化に用いられる
条件に非常に敏感である。生体高分子は、個々の分子表
面間の相互作用により溶媒中で安定化されている一方、
分子表面の電荷分布、特にアミノ酸の分子表面近傍での
コンフォメーション等は、環境、すなわち溶液のpH、
イオン強度、温度、緩衝溶液の種類、誘電率等により大
きく変化する。したがって、結晶化プロセスは、複雑な
種々の条件の絡み合ったマルチパラメータプロセスとな
り、どの物質に対しても適用できる統一的な手法が確立
できてない。また蛋白質については、水溶性蛋白質に比
べ、生化学的に非常に重要であるにもかかわらず、疎水
性の膜蛋白質の結晶化が、現在非常に困難であり、結晶
化を行ないさらに高分解能の解析に成功した例はこれま
でわずか2件のみである。
【0011】また、得られる生体高分子は微量であるこ
とが多い。たとえば酵素等の蛋白質は、一般に細胞等か
ら抽出され、精製されるが、その含有量が少ないため、
最終的に結晶化のため得られる試料は非常に少ない場合
が多い。結晶化を行なう際には、溶液における生体高分
子の濃度は50mg/ml程度必要であると言われてい
る。したがって、できるだけ少ない量の溶液について種
々の条件で結晶化実験を繰返すこと(スクリーニング)
を行なう必要がある。
【0012】以上のように、蛋白質を初めとする生体高
分子およびこれらの複合体の結晶化は、学術および産業
上の重要なプロセスであるにもかかわらず、これまで試
行錯誤を繰返しながら進められてきたため、X線結晶構
造解析の最大のネックとなっている。したがって、今後
結晶化の基本原理を理解して、どの分子に対しても適用
し得る結晶化技術を開発する必要がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
したように多様な特性を有するためにどの物質に対して
も適用できる手法がなく、試行錯誤を繰返しながら進め
られてきた従来の結晶化プロセスの欠点を、技術的に解
消することである。
【0014】具体的には、本発明は、種々の生体高分子
および生体高分子から主として構成される生体組織の結
晶化において、重力の影響による溶液内対流の影響を低
減し、核形成を制御することを目的とする。
【0015】さらに本発明は、微結晶の大量生成を抑制
または制御し、X線構造解析を可能にし得る大型の結晶
を得るための技術を提供することを目的とする。
【0016】さらに本発明の目的は、少量の溶液で結晶
化を可能にするための方法および装置を提供することに
ある。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明の結晶成長方法
は、溶液中に含まれる高分子化合物の結晶を成長させる
方法であって、高分子化合物を含む溶液の環境に応じて
表面部分の正孔または電子の濃度を制御できるよう価電
子が制御され、かつ深さおよび/または開口部の幅が異
なる2つ以上の溝または孔を有する固体素子を複数与え
る工程と、複数の固体素子の前記溝または孔が形成され
た面同士を向かい合わせにし、所定の隙間を開けて複数
の固体素子を保持する工程と、該隙間に高分子化合物を
含む溶液を保持させて、溝または孔の形成された複数の
固体素子の表面に溶液を接触させる工程とを備える。上
記固体素子において、溝または孔の外よりも内で高分子
化合物の結晶化が促進されるよう価電子が制御されてい
る。この方法では、溶液を保持する溝または孔におい
て、制御された価電子により固体素子の表面にもたらさ
れる電気的状態の下、高分子化合物の結晶を成長させ
る。
【0018】該固体素子として、不純物添加された半導
体基板を用いることができる。半導体基板には、深さお
よび/または開口部の幅が異なる2つ以上の溝または孔
が形成されている。この半導体基板において、溝または
孔の外よりも内で高分子化合物の結晶化を促進させるた
め、添加された不純物の種類および/または濃度を、溝
または孔の内と外とで異ならしめることができる。
【0019】まが、複数の固体素子を隙間を開けて保持
する工程において、向かい合わせにされた複数の固体素
子間の距離が連続的に減少または増加するよう、固体素
子を保持することができる。
【0020】本発明の装置は、高分子化合物を含む溶液
の環境に応じて表面部分の正孔または電子の濃度を制御
できるよう価電子が制御され、かつ深さおよび/または
開口部の幅が異なる2つ以上の溝または孔を有する複数
の固体素子と、複数の固体素子を向かい合わせにし、所
定の隙間を開けて保持するための手段とを備える。固体
素子の溝または孔の内と外とにおいて異なる態様で価電
子は制御されている。
【0021】本発明の装置において、固体素子として上
述したような不純物添加された半導体基板を用いること
ができる。添加された不純物の種類および/または濃度
は、半導体基板に形成された溝または孔の内と外とで異
ならしめることができる。
【0022】本発明の装置は、上述した複数の固体素子
およびそれを保持するための手段を乾燥剤または緩衝溶
液とともに密閉状態で収容できる容器と、この容器内で
固体素子を支持するための手段とをさらに備えることが
できる。
【0023】本発明の装置において、向かい合わせにさ
れた複数の固体素子間の距離が連続的に減少または増加
するよう、固体素子を配置することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】蛋白質を初めとする生体高分子の
ほとんどは、溶液内において幾何学的に特異的な構造お
よび静電的な相互作用(静電斥力・引力、ファンデルワ
ールス力)によって分子間同士の認識が行なわれてい
る。静電的なエネルギに基づく分子間の相互作用におい
ては、個々の分子最表面でのわずかな空間的な電荷分布
の相違が、分子間の認識度合い、分子集合体の作りやす
さに決定的な影響を及ぼすことが予想される。したがっ
て、溶液内をブラウン運動しながら衝突を繰返している
個々の分子では、周期的かつ規則的な構造を有する分子
集合体の核が非常に形成されにくいと考えられる。さら
に、結晶核が形成されたとしても、各分子表面の分子構
造、電荷分布が全く同一ではなく冗長性を有しておれ
ば、核の周囲に集合する各分子は互いに緩く結合するこ
とになり、よって結晶性が低下するものと考えられる。
【0025】蛋白質分子の結晶生成に関しては、その核
生成の初期過程が重要であるとの報告がなされている。
Yonath等は、Bacillus Stearothermophilus より抽出さ
れた巨大なリボソームサブユニットの結晶化初期過程を
電子顕微鏡により観察している。それによれば、結晶化
が進行するためには、初期過程として、各分子が2次元
的な規則構造(編み目状、星状、千鳥格子状等)をとっ
て凝集することが必須であると述べている(Biochemist
ry International, Vol. 5, 629-636 (1982))。
【0026】これがすべての物質に共通して必須である
かどうかは不明である。しかし、一般に蛋白質分子は分
子間相互作用が弱く、しかも分子表面が局部的に帯電し
ているため、凝集しにくいことを考慮すると、結晶化の
初期過程において核となる分子を2次元的に配列させる
何らかの条件が整えば、その後の結晶化は、これを核と
してエピタキシャル的に進行するものと考えられる。
【0027】本発明では、結晶核を安定して生成させる
ため、価電子が制御された固体素子を結晶化すべき物質
を含む液に接触させる。該固体素子は、液と接触する表
面から内部に向かって、あるいは該固体素子の断面内に
おいて、価電子制御により電子および正孔の濃度を制御
することができ、それによって固体素子表面の電気的状
態を制御することができる。たとえば図1に、本発明に
従い、固体素子表面において結晶核が固定され、結晶が
成長していく様子を模式的に示す。図1(a)に示すよ
うに、価電子制御により、所定の電気的状態とされる固
体素子1の表面に、結晶核2が静電的な作用によって固
定される。そして、図1(b)に示すように、蛋白質等
の化合物は、静電的な相互作用により、固体素子表面に
凝集し、結晶核の生成が促進され、結晶の成長がもたら
される。したがって、固体素子表面の電気的特性を制御
することにより、結晶化の制御が可能となる。たとえ
ば、固体素子表面に固定される結晶核の種類、量、配列
密度等を価電子制御により調整することができ、それに
よって結晶化の制御が可能となる。また、生成された結
晶核が固体素子表面に固定されるため、溶液内の対流等
による核の微小な変動が抑制され、核の形成に従って規
則的に分子が集合し、結晶性が向上することも期待され
る。結晶化すべき分子の表面の電荷分布が溶液のpHや
分子の変性によって微妙に変化しても、固体素子表面に
は必ず該分子の実効表面電荷と補償する空間電荷が誘起
されるため、結晶核の2次元的な生成が容易にかつ優先
的に行なわれることが期待される。
【0028】また、後により詳細に説明するように、固
体素子に形成された溝の底部では、結晶化すべき分子に
対して静電的相互作用をほぼ等方的に及ぼすことができ
る。溝の底部で結晶核が形成される場合、重力の影響に
基づく対流から結晶核を保護することが可能になる。す
なわち、静電的相互作用により結晶核を溝の底部に静止
させることができる。ほぼ静止した核に基づいて結晶が
成長していけば、過剰な微結晶の生成は抑制され、結晶
核の表面に規則的に分子が集合した大型の結晶を得るこ
とができると期待される。
【0029】さらに本発明において、複数の固体素子を
所定の隙間を開けて対向させ、この隙間に結晶化すべき
分子を含む溶液を保持させることにより、より微量の溶
液で結晶化を行なうことができる。なお、隙間に保持さ
れる溶液には対流の原因となる表面張力が働くが、後述
するように表面張力による影響は固体素子表面において
もたらされる静電引力の作用により抑制することができ
る。
【0030】また、一般に電解質溶液内における帯電物
質または分子の凝集性は、それらの間の電気二重層斥力
とファンデールワールス力との和に依存するため、物質
または分子同士を凝集させる場合、電解質溶液中に添加
する表面電位を調整するための塩濃度をコントロールす
ることが非常に重要となる。しかし本発明によれば、固
体素子表面の静電特性は予め価電子制御により調整でき
るため、塩濃度の調整が容易または不要になるというメ
リットも生じる。
【0031】このような目的に供される固体としては、
上述したような静電特性を有し、電荷量および極性の制
御が可能な物質で、さらに溶液中で化学的に安定な物質
であれば、どのようなものでもよい。この目的を達成す
るために最適な材料の1つとしてシリコン結晶を挙げる
ことができる。以下、シリコン結晶を用いた場合につい
て予想される結晶化のメカニズムを以下に説明する。し
かしながら、以下に記載されるメカニズムは、本発明に
従って用いられる他の固体素子にも当てはめることがで
きる。
【0032】図2、3および4は、本発明の装置の一具
体例を示している。図2に示すように、結晶成長用装置
において、2つの固体素子10および20が所定のギャ
ップ25を介して配置される。固体素子10の表面には
深さおよび/または開口部の幅の異なる複数のV字状の
溝(V溝)11a、11b、11cが形成されている。
固体素子20の表面にも、サイズの異なる複数のV溝2
1a、21b、21c、21dが形成されている。2つ
の固体素子10および20は、V溝が形成された面を向
かい合わせにして保持される。この装置では、それぞれ
の溝の長手方向がほぼ垂直になるように2つの固体素子
が配置されている。なお図2では、ギャップ25を維持
するためのスペーサを省略している。
【0033】図3は、図2の装置において2つの固体素
子間のギャップがスペーサによって維持されている状態
を示している。固体素子10と固体素子20との間には
スペーサ15aおよび15bが設けられ、所定のギャッ
プ25が維持されている。このスペーサによって形成さ
れた両固体素子間の隙間に結晶化を行なうための分子を
含む母液16が注入される。固体素子間の隙間を所定の
サイズのスペーサによって極わずかなものにすれば、注
入された母液は毛管現象によってこの隙間内に保持され
る。保持された母液16は、V溝の形成された固体素子
表面に接触している。このわずかな隙間に保持される母
液の量は、極微量で済む。
【0034】図4は、固体素子の一方について、さらに
詳細な構造を示すものである。固体素子20において、
P型シリコンからなる基板22上にはN型シリコン層2
3が形成されている。基板22の表面には複数のV溝2
1a、21b、21cおよび21dが形成される。V溝
部ではP型シリコンが露出している。一方、V溝の外で
溶液と接触する表面はN型シリコン層23によって覆わ
れている。基板22の表面には、V溝を取囲むようにし
てたとえば撥水性の樹脂からなる撥水層24がさらに設
けられている。撥水性の層を介してスペーサ15aおよ
び15bを設ければ、隙間内に結晶化すべき分子を含む
母液をより安定に保持することができる。図4に示すよ
うにP型シリコン上にN型シリコン層を形成した素子
は、溶液中で解離して負の実効表面電荷を有する高分子
化合物の結晶化に好ましく用いることができる。一方、
溶液中で解離して正の実効表面電荷を有する高分子化合
物に対しては、図4に示すものと逆の極性のシリコンを
用いた固体素子を好ましく用いることができる。すなわ
ち、N型シリコン基板上にP型シリコン層を形成し、溝
においてN型シリコンを露出させた固体素子を、正の実
効表面電荷を有する高分子化合物の結晶化のため適用す
ることができる。
【0035】図5は、図2〜図4に示す固体素子の製造
プロセスの概略を示したものである。まず、表面が清浄
にされ、たとえば鏡面研磨されたP型シリコン基板32
を準備する(図5(a))。次いで、P型シリコン基板
32の表面にイオン注入等の方法によってN型シリコン
層33を形成する(図4(b))。その後、CVD等の
方法によってシリコン酸化膜(SiO2 )39を形成す
る(図5(c))。次いで、ホトリソグラフィー等の適
当な方法を行なった後、溝部を形成すべき領域のシリコ
ン酸化膜を除去する(図5(d))。酸化膜で覆われて
いない部分についてエッチングを行なっていけば、溝3
1a、31b、31cおよび31dが形成される(図5
(e))。次に、シリコン酸化膜を除去した後、溝31
a〜dを取囲むように撥水性樹脂層34を形成する(図
5(f))。なお、図示していないが、シリコン酸化膜
を除去した後、固体素子の全面にシリコン酸化膜を再び
形成してもよい。このようにしてN型シリコン層および
溝が形成された基板32および32′をガラススペーサ
35aおよび35bを介して重ねる(図5(g))。ス
ペーサ35aおよび35bは、基板上に形成された撥水
性樹脂層34および34′の間に挟まれている。2つの
基板を接着剤等により固定すれば、結晶化のための装置
を得ることができる。
【0036】以下に、本発明の固体素子を用いて結晶化
が制御されるメカニズムを説明する。解離して負の実効
表面電荷を有する高分子化合物を含有する電解質水溶液
を、価電子制御されたNまたはP型シリコン結晶に接触
させると、N型シリコン表面に対してはショットキー障
壁が形成される一方、P型シリコン表面に対してはオー
ミック性接触が得られる。P型シリコン表面では、負の
電荷を有する高分子電解質に対して、バルクシリコン側
から常に正孔が供給されるため(オーミック特性)、高
分子は常にシリコン表面に凝集し続けることが予想され
る。一方、N型シリコンの表面には、水溶液の電解質濃
度に依存した表面電位が発生するとともに、内部に空間
電荷層領域が形成される。この空間電荷量は、N型シリ
コンのドーパント濃度にも依存する。したがって、電解
質溶液中において負の電荷を有する高分子は、このN型
シリコンの有する正の空間電荷を少なくとも補償するま
で、シリコン表面に凝集し続けることが予想される。よ
って、空間電荷層領域が形成されるシリコン表面に対し
ては、高分子化合物の凝集および結晶化が制限されて起
こるのに比べ、オーミック性接触が形成されるシリコン
表面に対しては、高分子化合物の凝集が無制限に進行す
ることが予想される。
【0037】また、たとえばN型シリコンにおいて、不
純物濃度が異なる2つ以上の領域が形成されている場合
も、それらの領域によって異なる態様で結晶化が進むこ
とが予想される。N型シリコンの不純物濃度が低く高抵
抗の場合と、不純物濃度が高く低抵抗の場合について、
その効果の相違について述べる。N型シリコンの場合、
低不純物濃度(あるいは高抵抗)基板では、ドーパント
濃度が低いため表面近傍に形成される空間電荷層の幅が
広くなることにより、空乏層容量が小さく、したがって
シリコン表面に誘起される表面電位は高不純物濃度(あ
るいは低抵抗)基板の場合と比較して、大きくなること
が予想される。この表面電位は、高分子化合物の有する
実効表面電位と極性が逆となるため、静電的な引力の作
用により凝集が促進されると予想される。すなわち、低
不純物濃度で高抵抗のN型シリコン基板の方が、高不純
物濃度で低抵抗のN型シリコン基板より、基板表面によ
り多くの結晶を析出させることができると予想される。
【0038】以上のように、空間的に抵抗の異なる領域
を形成するには、シリコン表面に選択的に不純物をドー
ピングすることで容易に達成される。また別の方法とし
て、シリコン表面をエッチングすることによって、抵抗
値の異なる表面を露出させることも可能である。
【0039】本発明に用いられるN型およびP型シリコ
ン結晶は、通常のLSIプロセスに用いられるシリコン
ウエハと同等の特性を有するものでよい。シリコン結晶
の比抵抗は0.0001〜1000Ωcm程度の範囲内
であればよく、より好ましくは0.001〜100Ωc
mの範囲のものを用いることができる。N型およびP型
に価電子制御されたシリコンの調製方法として、種々の
ものが考えられ、どのような方式のものでもよいが、最
も簡便で不純物濃度の制御が正確に行なえる方法とし
て、イオン注入法が挙げられる。この場合、P型および
N型の価電子制御は、それぞれ周期律表第III族およ
び第V族に属する元素のイオンをシリコン中に注入、ア
ニールすることによって容易に行なうことができる。P
型にするためのIII族元素としてB,Al、Ga、I
n、Tl等を挙げることができる。特にBが一般的であ
る。N型にするための第V族元素としてN、P、As、
Sb、Bi等を挙げることができ、特にP、As、Sb
が一般的である。また、結晶の表面は、ミラーポリッシ
ュされたものが、析出する結晶核の制御を行なう上で好
ましい。
【0040】本発明において、シリコン基板表面に不純
物層を形成する際、その厚みは、0.1〜200μmが
好ましく、1〜50μmの範囲がより好ましい。これ以
外の範囲では、作製が容易でなかったり、効果がなくな
ったりするため望ましくない。
【0041】以上、価電子制御が容易な半導体結晶シリ
コンを用いた例について説明したが、本目的を達成する
ため、同様の機能を有する他の材料を適宜用いることが
できる。たとえば、シリコン以外の半導体結晶を好まし
く用いることもでき、さらには、半導体結晶以外の材
料、たとえば電荷分布の制御された無機化合物、有機化
合物、高分子化合物、およびそれらの複合物を候補とし
て挙げることができる。
【0042】本発明において、固体素子には複数の溝ま
たは孔が形成される。第2図に示す素子は複数のV溝を
有している。溝の代わりに、たとえば角錐状または円錐
状の孔を固体素子表面に設けてもよい。溝または孔は、
深部に行くに従って開口の幅が狭くなっていることがよ
り好ましい。実際の結晶成長に際しては、何種類かのサ
イズの溝または孔を1つの素子表面に多数設けておく方
が有利である。
【0043】結晶化のために用いる固体素子は、あらゆ
る高分子化合物について適用できることが望ましい。一
方、結晶化の対象となる分子のサイズや帯電特性等によ
って、必要とされる固体素子の特性も変わってくると考
えられる。溝または孔のサイズについても、結晶化すべ
き分子のサイズ、帯電特性等に応じて変える必要がある
と考えられる。しかしながら、対象となる個々の高分子
化合物ごとに溝を有する固体素子を調製していたので
は、コストおよび時間がかかり、効率的とはいえない。
そこで、予め固体素子上にサイズの異なる溝を複数形成
しておけば、対象となる分子種が変わったとしても、い
ずれかの溝において、より好ましい結晶化の条件を提供
できるはずである。したがって、1つの固体素子で、種
々の分子の結晶化を行なうことが可能になる。これによ
り、固体素子作製のための労力およびコストも低減され
る。
【0044】基板表面に形成される溝または孔の開口部
のサイズおよび溝または孔の深さは、対象とする高分子
の種類によって、適宜好ましい範囲を設定することが望
ましい。一般的には、溝または孔の開口部の幅は0.0
1〜100μmの範囲が好ましく、溝の長さは1〜10
mmの範囲が好ましい。また、複数の溝または孔は、1
μm〜1mmの範囲の間隔で適宜作製することができ
る。溝または孔の深さは、たとえば0.01〜200μ
mの範囲で調整するのが好ましい。しかしながら、以上
に述べたサイズは、主として固体素子の作製上の制約か
らくるものであって、これ以外のサイズであっても、固
体素子の性能、すなわち結晶化に決定的な悪影響を及ぼ
すものではない。
【0045】図6〜図8は、溝または孔の結晶成長に対
する作用効果を説明するためのものである。図6に示す
ように、結晶化すべき分子を含有する電解質溶液に固体
素子を接触させると、PまたはP- シリコンよりなるV
溝部41および51は、NまたはN+ シリコン層よりな
る表面部43および53と比較して、解離した高分子と
の静電相互作用が及ぶ範囲(電気二重層の幅と考えても
よい)が広くなることが期待される。図において、点線
で示した領域58および58′が、電気相互作用の及ぶ
範囲である。すなわち、表面部43および53上よりも
V溝部41および51の方が領域58および58′は厚
くなっている。特に、V溝部の最も深い中央部は、この
作用の及ぶ領域に重なりにより、領域58および58′
の幅が最も広くなることが予想される。
【0046】したがって、PまたはP- シリコンからな
るV溝部の最深部において、結晶核または結晶核となる
分子凝集体47は、V溝表面から静電引力49をほぼ等
方的に受け、V溝内において拘束されることになる。V
溝深部にある分子凝集体47について、重力に基づく溶
液内の対流の影響と静電引力とが相殺されるため、結晶
核の生成および結晶の成長が安定して起こり得ると期待
される。
【0047】一方、図7に示すように、NまたはN+
リコンからなる表面部43および53上では、表面張力
によりギャップ内で内側に向かって溶液の対流59が引
起こされることが予想される。しかしながら、狭いギャ
ップ内では、表面張力の方向とほぼ垂直な方向に働く静
電引力49によって、結果として対流が抑制されるよう
になる。この静電引力は、シリコン基板からもたらされ
るものである。より大きな静電引力が働く溝内では、対
流の影響がほとんど抑制されるのに対し、小さな静電引
力しか働かない溝の外では、結晶化すべき分子は対流の
影響を若干受けるようになる。したがって、溝の外で
は、結晶核近傍での拡散供給層幅が変動するため、結晶
性の低下または成長速度の低下がもたらされると考えら
れる。
【0048】図8(a)に示すように、対流のない状態
において形成された結晶核80について分子の供給層8
2が均一かつ等方的であれば、結晶は均一かつ等方的に
成長し、その成長速度は大きくなる。一方、図8(b)
に示すように、溶液内で対流89が発生する場合、結晶
核81について分子の供給層82′が対流により狭めら
れる。その結果、不均一に結晶が成長し、双晶が形成さ
れやすい。またその成長速度は遅くなる。重力や浮力等
により発生する対流の影響を抑制するために、本発明で
は、固体素子表面に働く静電的な引力により、結晶化す
べき分子を溝内に拘束し、その動きを止めようとする。
たとえば溶液を2枚の固体素子で挟んだ場合、溶液内の
分子は、それぞれの素子から静電引力を受けることにな
る。すなわち、静電引力は上下または左右から働くよう
になる。このように、固体素子表面において分子に対す
る静電的な効果は重畳される。したがって、分子は、静
電的引力によりより拘束されやすくなる。分子は、ギャ
ップ内において表面張力や重力等の影響により移動しよ
うとしても、やがて静電的な効果により溝内に拘束さ
れ、そこにおいて結晶が成長することになる。
【0049】上述したように、溝内に結晶化すべき分子
が拘束されるため、溶液を挟む溝部はなるべく重なりあ
っているほうが好ましいと考えられる。一方、溝のない
平坦部での結晶化は抑制される。したがって、長手方向
が一致するように溶液を挟んで溝を対向させることがよ
り好ましいと考えられる。しかしながら、溝のサイズた
とえば幅は非常に小さいため、それぞれの溝の位置がう
まく重なるように固体素子を配置することはかなり困難
であると考えられる。したがって、図2に示すように、
対向する溝の長手方向がほぼ垂直に交わるよう複数の固
体素子を配置するのがより実用的である。この場合、対
向する溝の重なりを最も多くすることができる。
【0050】また図9に示すように、複数の固体素子間
の距離を、位置によって異ならしめることができる。図
9に示す装置では、固体素子90と90′との間の一端
にのみスペーサ95を挿入している。この構造では、固
体素子上においてスペーサ95から遠ざかるに従って素
子間の距離は小さくなっている。すなわち、スペーサ9
5から遠ざかるに従ってギャップは連続的に減少する。
この装置では1つのスペーサを用いているが、サイズの
異なる2つのスペーサを用いることによって、ギャップ
を連続的に減少または増加させることも可能である。図
3に示すように、一定の間隔で2つの素子を保持する場
合、結晶化すべき物質によっては所定のギャップが最適
なものでないことも考えられる。ギャップは、素子間に
おいて静電的な引力の及ぶ領域や表面電位の分布を反映
するからである。よって、図9に示すように1つの装置
において素子間の間隔を変えれば、いずれかの位置にお
いて結晶化のため最適な条件を提供できると考えられ
る。たとえば図に示すようにXの領域において物質Aに
対する最適の条件を提供できる一方、Yの領域において
Aと異なる物質Bに対し最適な結晶化の条件を提供する
ことができる。したがって、1つの装置において種々の
分子の結晶化を行なうことが可能になる。これにより、
装置作製のための労力およびコストも低減される。
【0051】以上、V溝を有する固体素子を示したが、
溝の形状は種々のものを用いることができ、たとえば、
図10に示すような凹状の溝を形成してもよい。固体素
子100において、P型シリコン基板112上にはN型
シリコン層113が形成され、開口の異なる凹状溝10
1a、101b、101cが設けられている。
【0052】シリコン基板等の固体素子を隙間を開けて
対向させるため、上述したようにスペーサが用いられ
る。スペーサの材質は特に限定されるものではないが、
たとえばガラスを好ましく用いることができる。スペー
サとして、円柱形状のものや角柱形状のものをたとえば
用いることができる。素子間の距離は、たとえば0.1
〜10mmの範囲であることが好ましい。したがって、
円柱形状のスペーサを用いる場合、スペーサの直径は
0.1〜10mmの範囲に設定することができる。たと
えば、接着や溶着によって、スペーサを挟んだ複数の固
体素子を固定することができる。
【0053】また図3に示すように、シリコン基板等の
固体素子表面には、溝を取囲むように撥水性の層を形成
することが好ましい。この層は、素子間に溶液を保持す
る際に、溶液が周囲に流出するのを効果的に防止するこ
とができる。たとえば表面の酸化膜が除去されたシリコ
ン表面は、一般に酸、アルカリのみを含む水や純水に対
して撥水性であるが、緩衝溶液のような塩を含有する水
溶液に対して撥水性ではない。したがって、緩衝溶液を
用いる場合、シリコン基板の周囲に撥水性の物質からな
る層を形成する必要がある。撥水性の層は、たとえば有
機系の樹脂によって形成することができ、ポリイミド樹
脂は最も簡便に撥水性の層を形成できる材料の1つであ
る。ポリイミドからなる撥水性の層を形成する場合、た
とえば感光性または非感光性のポリイミド樹脂をコーテ
ィングし、硬化させた後、所望のパターンとなるようエ
ッチングまたは現像により不要な部分を除去することが
できる。
【0054】本発明で用いられる撥水層の厚みは機能的
に特に限定する必要はないが、0.1〜100μmの範
囲の厚みのものが比較的作製しやすい。また、撥水性を
示しかつ溶液中で化学的に安定であれば、種々の材料を
この層のために用いることができる。さらに、シリコン
等の固体素子に対して撥水性を示す溶液を用いる場合
は、このような撥水層は不要である。
【0055】図11は、本発明を行なうためのより具体
的な装置を示す。図11に示す装置では、容器111内
に緩衝溶液112が収容され、その中に透析膜チューブ
113が設けられている。透析膜チューブ113内に
は、高分子化合物を含む母液112とともに、結晶化制
御用の固体素子、たとえば上述したようなシリコン半導
体基板を2枚所定の間隔を開けて向かい合わせた結晶成
長用装置110が収容されている。透析膜チューブ11
3は、クローサ115aおよび115bで密封され、緩
衝溶液112に浸漬される。容器114の開口は、蓋1
16によって覆われる。この装置において、透析が進め
られるとともに、結晶成長用装置110上に母液112
から高分子の結晶が析出されていく。なお、この装置以
外にも、たとえば透析チューブを使用せず、シリコン基
板上に母液を液滴状に保持して結晶化を行なう等の方法
および装置も適用可能である。
【0056】図12は、非常に少ない母液量で結晶成長
を可能にする装置の一例を示している。この装置におい
て、固体素子である上基板120と下基板130がスペ
ーサ125を介して重ねられたものは、支持台143に
よって容器140の上部に保持される。基板120と基
板130の間には、たとえば蛋白質等の結晶化すべき物
質を含む溶液(母液)126が少量、その側面からピペ
ット等により注入される。基板の隙間から母液の液滴が
落下せず安定に保持される状態となったところで、母液
の注入を中止する。容器140の底部には、予め緩衝溶
液146が満たされている。緩衝溶液146は、母液1
26について気液平衡を保持するために用いられる。母
液126を保持する基板が緩衝溶液146とともに収容
された容器140は、キャップ141によって密封する
ことができる。密封状態において、母液126を基板の
間に保持させたまま静置すれば、基板に形成された溝部
において結晶が成長するようになる。なお、図12に示
す装置において、緩衝溶液の代わりに母液中の溶媒(た
とえば水分)を吸収するための乾燥剤を用いることもで
きる。
【0057】本発明は、種々の高分子化合物、特に高分
子電解質を結晶化するために用いることができる。本発
明は特に、酵素および膜蛋白質等の蛋白質、ポリペプチ
ド、ペプチド、ポリサッカライド、核酸、ならびにこれ
らの複合体および誘導体等を結晶化させるため好ましく
適用される。本発明は、生体高分子の結晶化のため好ま
しく適用される。
【0058】
【実施例】ニワトリ卵白製リゾチーム(Lysozyme, From
Chicken Egg White)をpH=4.5の標準緩衝溶液と
0.1M NaClを10:1の体積比で混合した溶液
に溶解し、50mg/mlの濃度とした。結晶化のため
の固体素子として以下に示す2種類のシリコン結晶を用
いた。
【0059】(1) サンプル−1 約20Ωcmの比抵抗のP型シリコン基板表面に、リン
のイオン注入によって低抵抗のN型シリコン層を全面的
に形成した。その後、図5に示すようなプロセスに従っ
て、サイズの異なる6種類のV溝を形成した。V溝の幅
はそれぞれ0.1、0.5、2.0、10、50、10
0μmであった。各V溝の深さはそれぞれの幅とほぼ同
一であった。V溝の長さはすべて10mmであり、6種
類のV溝は1.0mmのピッチで作製された。さらに、
6種類のV溝を取囲むように厚さ10μmのポリイミド
層を形成した。得られたシリコン基板を縦15mm、横
15mmのサイズに切断し、固体素子として用いた。な
お表面に形成したN型シリコン層の比抵抗は約0.2Ω
cmであり、その厚みは約0.7μmであった。
【0060】(2) サンプル−2 サンプル−1と同様の方法でイオン注入を行ない、P型
シリコン基板上にN型シリコン層を形成した。比抵抗お
よびN型層の厚みはサンプル−1と同一である。一方、
基板上にはV溝を形成しなかった。
【0061】サンプル−1の溝を有するシリコン結晶を
2組準備し、それらを直径が2mm、長さが約5mmの
ガラス製ロッドを挟んで重ねた。ガラス製ロッドは、そ
れぞれのシリコン基板上に形成されたポリイミド層の上
にくるよう配置された。2組のシリコン基板は、対向す
る溝の長手方向が垂直に交わるよう配置した。
【0062】シリコン基板をガラスロッドを介して重ね
たものを図12に示すような容器に収容した。容器とし
て直径が約20mmのリアクティブバイアルを用いた。
このバイアルの上部において、基板表面が水平になるよ
う支持台上に保持し、上述したリゾチームの母液を基板
の間に約0.5ml注入した。なお、バイアルの底部に
は、予めpH=4.5の標準緩衝溶液を約10ml注入
しておいた。バイアルをキャップにより密封し、10℃
の冷暗所内に保管した。
【0063】サンプル−1と同一の条件でサンプル−2
のシリコン基板を2枚対向させ、結晶化のための装置を
作製した。ガラスロッドを介して重ねられた基板を、サ
ンプル−1と同様にリアクティブバイアルの上部に保持
し、上述したリゾチームの母液を基板の間に約0.5m
l注入した。なお、バイアルの底部には予めpH=4.
5の標準緩衝溶液を注入しておいた。キャップによりバ
イアルを密封した後、10℃の冷暗所内に保管した。
【0064】それぞれのサンプルについて冷暗所で72
時間保管した後、重ねられたシリコン基板を注意深く開
き、その表面に形成されたリゾチームの結晶を顕微鏡に
よって観察した。サンプル−1の基板上では、溝のサイ
ズによって析出する結晶の大きさが異なっていた。幅が
0.1、0.5、2.0μmのV溝部およびN型シリコ
ン層の表面では、図13に示すように微結晶および双晶
が無秩序に析出していた。一方、幅が10、50、10
0μmのV溝においては図14に示すようなサイズが約
0.3mmの大型単結晶が溝に沿って規則的に析出し
た。
【0065】サンプル−2の基板上では、図15に示す
ように、シリコン基板表面全体にリゾチームの微結晶ま
たは双晶が無秩序に多量に析出した。析出した結晶の平
均的なサイズは約0.05mmであった。
【0066】よって、本発明によれば、図12に示すよ
うな装置を用いることによって、微量な試料で大型の品
質のよい単結晶を作製できることがわかった。
【0067】なお、以上の実施例ではP型シリコン上に
N型シリコン層を形成した素子を用いたが、高抵抗であ
るN型基板上に低抵抗であるN型層を形成し、同様に溝
を形成して高抵抗N型基板を露出させても、同様の結果
が得られると予想される。すなわち、溝部において露出
した高抵抗N型領域に結晶の核となる析出物が選択的に
凝集・集合し、大きな結晶にまで成長することが期待で
きる。
【0068】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
上述したように多様な特性を有するためどの物質に対し
ても適用できる手法がなく試行錯誤を繰返しながら進め
られてきた従来の結晶化プロセスの欠点を解決すること
かできる。特に本発明によれば、重力による溶液の対流
の影響を抑制し、結晶化の初期過程における核の形成を
安定して行なわせることができる。また本発明によれ
ば、微結晶の大量生成を抑制または制御することがで
き、X線構造解析を可能にし得る大型の結晶を得ること
ができる。さらに本発明によれば、サイズの異なる複数
の溝を設けた固体素子を結晶化に用いることによって、
あらゆる種類の高分子の結晶化に対応することができ
る。複数の溝を形成することにより、結晶化すべき高分
子の種類に応じて基板を個々に加工する手間が省け、低
コストで結晶化が可能になる。また、複数の固体素子を
重ね、その隙間に結晶化すべき分子を含む溶液を保持さ
せることにより、極微量の試料について結晶化を行なう
ことが可能になる。
【0069】本発明は、製薬産業や食品産業等におい
て、有用な物質、特に蛋白質、核酸等の生体高分子の研
究、開発および製造に適用される。本発明によれば、X
線構造解析を可能にする結晶性の良好な結晶を成長させ
ることができる。結晶解析の結果、その分子構造および
活性のメカニズムについて得られる情報は、薬剤の設計
および製造に生かされる。また、本発明は、関心のある
分子の生成または結晶化に適用される。さらに、本発明
は、蛋白質等の生体高分子を用いた電子デバイスの作製
に応用が期待される。また本発明の装置は、生体高分子
等を選択的に吸着および固定化することが可能なため、
バイオセンサ、バイオセンサによる各種生体組織および
生体物質の測定装置への応用等が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従って、固体素子の表面に結晶核が固
定化され、結晶成長が進んでいく様子を示す模式図であ
る。
【図2】本発明の結晶成長用装置の一具体例を示す斜視
図である。
【図3】図2に示す装置において、スペーサにより2枚
の固体素子の間隔が保持される状態を示す概略断面図で
ある。
【図4】図3に示す装置の要部についてその構造を詳細
に示す断面図である。
【図5】本発明の結晶成長用装置を製造するためのプロ
セスを示す概略断面図である。
【図6】固体素子に形成された溝において結晶成長がい
かに進むかを説明するための概略断面図である。
【図7】固体素子間に保持された溶液において、表面張
力の方向および静電引力の方向を示す概略断面図であ
る。
【図8】溶液において対流がある場合とない場合の結晶
成長の状態を模式的に示す図である。
【図9】本発明の結晶成長用装置の他の例を示す概略断
面図である。
【図10】本発明に用いられる固体素子の他の例を示す
概略断面図である。
【図11】本発明の結晶成長方法を行なうための装置の
一具体例を示す模式図である。
【図12】本発明の結晶成長用装置の一具体例を示す概
略断面図である。
【図13】実施例において生成した結晶構造の顕微鏡写
真である。
【図14】実施例において生成した結晶構造の顕微鏡写
真である。
【図15】実施例において生成した結晶構造の顕微鏡写
真である。
【図16】従来の方法に用いられる装置の一例を示す模
式図である。
【図17】従来の方法に用いられる装置のもう1つの例
を示す模式図である。
【符号の説明】
1 固体素子 2 結晶核 10、20 固体素子 11a〜c、21a〜d V溝 15a、15b スペーサ 16 母液 24 撥水層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B01D 9/02 620 B01D 9/02 620 621 621 625 625E 625Z C30B 7/00 C30B 7/00 30/02 30/02

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶液中に含まれる高分子化合物の結晶を
    成長させる方法であって、 前記高分子化合物を含む溶液の環境に応じて表面部分の
    正孔または電子の濃度を制御できるよう価電子が制御さ
    れ、かつ深さおよび/または開口部の幅が異なる2つ以
    上の溝または孔を有する固体素子を複数与える工程と、 前記複数の前記固体素子の前記溝または孔が形成された
    面同士を向かい合わせにし、所定の隙間を開けて前記複
    数の固体素子を保持する工程と、 前記隙間に前記高分子化合物を含む溶液を保持させて、
    前記溝または孔の形成された前記複数の固体素子の表面
    に前記溶液を接触させる工程とを備え、 前記固体素子において、前記溝または孔の外よりも内で
    前記高分子化合物の結晶化が促進されるよう前記価電子
    が制御されており、 前記溶液を保持する前記溝または孔において、前記制御
    された価電子により前記固体素子の表面にもたらされる
    電気的状態の下、前記高分子化合物の結晶を成長させる
    ことを特徴とする、結晶成長方法。
  2. 【請求項2】 前記固体素子が不純物添加された半導体
    基板であり、前記半導体基板における前記不純物の種類
    および/または濃度が、前記溝または孔の内と外とで異
    なっていることを特徴とする、請求項1の方法。
  3. 【請求項3】 前記向かい合わせにされた前記複数の固
    体素子間の距離が、連続的に減少または増加するよう、
    前記固体素子が保持されることを特徴とする、請求項1
    または2の方法。
  4. 【請求項4】 請求項1の方法に用いる結晶成長用装置
    であって、 高分子化合物を含む溶液の環境に応じて表面部分の正孔
    または電子の濃度を制御できるよう価電子が制御され、
    かつ深さおよび/または開口部の幅が異なる2つ以上の
    溝または孔を有する複数の固体素子と、 前記複数の固体素子を向かい合わせにし、所定の隙間を
    開けて保持するための手段とを備え、 前記溝または孔の内と外とにおいて異なる態様で価電子
    が制御されていることを特徴とする、結晶成長用装置。
  5. 【請求項5】 前記固体素子が不純物添加された半導体
    基板であり、前記半導体基板における前記不純物の種類
    および/または濃度が、前記溝または孔の内と外とで異
    なっていることを特徴とする、請求項4の装置。
  6. 【請求項6】 前記複数の固体素子および前記保持する
    ための手段を、乾燥剤または緩衝溶液とともに密閉状態
    で収容できる容器と、前記容器内で前記固体素子を支持
    するための手段とをさらに備えることを特徴とする、請
    求項4または5の装置。
  7. 【請求項7】 前記向かい合わせにされた前記複数の固
    体素子間の距離が、連続的に減少または増加するよう前
    記固体素子が保持されることを特徴とする、請求項4〜
    6のいずれか1項の装置。
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