JP3147013B2 - 結晶成長用装置 - Google Patents

結晶成長用装置

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JP3147013B2 JP31927996A JP31927996A JP3147013B2 JP 3147013 B2 JP3147013 B2 JP 3147013B2 JP 31927996 A JP31927996 A JP 31927996A JP 31927996 A JP31927996 A JP 31927996A JP 3147013 B2 JP3147013 B2 JP 3147013B2
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    • C30CRYSTAL GROWTH
    • C30BSINGLE-CRYSTAL GROWTH; UNIDIRECTIONAL SOLIDIFICATION OF EUTECTIC MATERIAL OR UNIDIRECTIONAL DEMIXING OF EUTECTOID MATERIAL; REFINING BY ZONE-MELTING OF MATERIAL; PRODUCTION OF A HOMOGENEOUS POLYCRYSTALLINE MATERIAL WITH DEFINED STRUCTURE; SINGLE CRYSTALS OR HOMOGENEOUS POLYCRYSTALLINE MATERIAL WITH DEFINED STRUCTURE; AFTER-TREATMENT OF SINGLE CRYSTALS OR A HOMOGENEOUS POLYCRYSTALLINE MATERIAL WITH DEFINED STRUCTURE; APPARATUS THEREFOR
    • C30B7/00Single-crystal growth from solutions using solvents which are liquid at normal temperature, e.g. aqueous solutions

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高分子化合物の結
晶化を行なうための技術に関し、特に、価電子が制御さ
れた半導体基板等を用いて、蛋白質を初めとする種々の
生体高分子の結晶化を行なうための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】蛋白質を初めとする各種生体高分子およ
びそれらの複合体における特異的性質および機能を理解
する上で、それらの詳細な立体構造は不可欠な情報とな
っている。たとえば、基礎化学的な観点からは、蛋白質
等の3次元構造の情報が、酵素やホルモン等による生化
学系での機能発現のメカニズムを理解する上で基礎とな
る。また、産業界のうち特に薬学、遺伝子工学、化学工
学の分野においては、3次元構造は、ドラッグデザイ
ン、プロテインエンジニアリング、生化学的合成等を進
める上で合理的な分子設計に欠かせない情報を提供す
る。
【0003】このような生体高分子の原子レベルでの3
次元立体構造情報を得る方法としては、現在のところX
線結晶構造解析が最も有力かつ高精度な手段である。近
年のX線光源・回折装置のハードウェア上の改良による
測定時間の短縮、測定精度の向上に加え、コンピュータ
の計算処理速度の飛躍的な向上により、解析スピードが
大幅に向上してきている。今後も、この手法を主流とし
て3次元構造が明らかにされていくものと思われる。
【0004】一方、X線結晶構造解析により生体高分子
の3次元構造を決定するためには、目的とする物質を抽
出・精製後、結晶化することが必須となる。しかし、現
在のところ、どの物質に対しても適用すれば必ず結晶化
できるといった手法および装置がないため、勘と経験に
頼ったトライアンドエラーを繰返しながら結晶化を進め
ているのが実状である。生体高分子の結晶を得るために
は、非常に多くの実験条件による探索が必要であり、結
晶成長がX線結晶解析の分野での最も大きなボトルネッ
クとなっている。
【0005】蛋白質等の生体高分子の結晶化は、通常の
無機塩等の低分子量化合物の場合と同様、高分子を含む
水または非水溶液から溶媒を奪う処理を施すことによ
り、過飽和状態にして、結晶を成長させるのが基本とな
っている。このための代表的な方法として、(1)バッ
チ法、(2)透析法、(3)拡散法があり、試料の種
類、量、性質等によって使い分けられている。
【0006】バッチ法は、生体高分子を含む溶液に、水
和水を奪う沈殿剤を直接添加して、生体高分子の溶解度
を低下させ、固相へ変化させる方法である。この方法で
は、たとえば固体の硫酸アンモニウム(硫安)がよく使
用される。この方法は、溶液試料を大量に必要とし、塩
濃度、pHの微妙な調整が困難であること、さらに操作
に熟練を要し、再現性が低いといった欠点を有する。透
析法は、バッチ法の欠点を改善した方法で、たとえば図
19に示すように、透析チューブ171の内部に生体高
分子を含む溶液172を密封し、透析チューブ外液17
3(たとえば緩衝溶液)のpH等を連続的に変化させ結
晶化を行なう方法である。この方法によれば、内外液の
塩濃度、pH差を任意の速度で調節可能であるため、結
晶化の条件を見出しやすい。拡散法のうち、たとえば気
液相間拡散法は、図20に示すように、カバーガラス等
の試料台181上に、試料溶液の液滴182を載せ、密
閉した容器183内にこの液滴と沈殿剤溶液184を入
れることにより、両者間の揮発成分の蒸発によって緩や
かに平衡を成立させる手法である。また、拡散法のうち
液相間拡散法は、図21に示すように、基板190上
に、目的とする物質を含有する母液の液滴192と沈澱
剤の液滴191とを約5mmほど隔てて置き、両者の間
に針等の先によって細い液の流れ193を形成する。こ
の液の流れ193を介して相互拡散が行なわれ、結晶化
が促進される。この拡散法は、バッチ法等と比較して溶
液の量が非常に少なくて済むといった利点を有してい
る。
【0007】しかし、蛋白質等の生体高分子の結晶化に
は、前述したように種々の問題点があるのが実状であ
る。
【0008】まず、結晶性の良好なものや、大型の単結
晶を得ることが困難であった。これは、生体高分子が一
般的に分子量が大きいために、重力の影響を受けやす
く、溶液内で対流を引起こすことが原因であると考えら
れている(たとえばF. Rosenberger, J. Cryst. Growt
h, 76, 618 (1986))。すなわち、生体高分子や生成
した微小な結晶核が自重で沈降し、これによって分子や
核周辺での溶液の対流が引起こされる。さらには、生成
した結晶表面部でも、分子の濃度が低下するために局所
的な溶液の対流が発生する。以上のようにして発生した
溶液内の対流によって、生成する結晶は溶液内で移動
し、しかも、周辺の拡散による分子の供給層は著しく減
少する。このため、結晶成長速度が低下したり、結晶面
における成長の異方性等が発生し、結晶化が妨げられる
ものと思われる。
【0009】また、生体高分子結晶には、他の物質の結
晶とは異なり、多量の溶媒(主として水)が含まれる
(≧50体積%)。この溶媒が、無秩序であり、かつ結
晶中で分子間の空隙となっている部分を容易に動き得
る。また、分子が巨大であるにもかかわらず、結晶中で
広範囲な分子間のパッキングコンタクトがほとんどな
く、わずかの分子−分子間コンタクト(ファンデルワー
ルス力による結合)または水を介した水素結合によるコ
ンタクトしか存在していない。このような状態も結晶化
を妨げている要因である。
【0010】さらに、生体高分子は結晶化に用いられる
条件に非常に敏感である。生体高分子は、個々の分子表
面間の相互作用により溶媒中で安定化されている一方、
分子表面の電荷分布、特にアミノ酸の分子表面近傍での
コンフォメーション等は、環境、すなわち溶液のpH、
イオン強度、温度、緩衝溶液の種類、誘電率等により大
きく変化する。したがって、結晶化プロセスは、複雑な
種々の条件の絡み合ったマルチパラメータプロセスとな
り、どの物質に対しても適用できる統一的な手法が確立
できてない。また蛋白質については、水溶性蛋白質に比
べ、生化学的に非常に重要であるにもかかわらず、疎水
性の膜蛋白質の結晶化が、現在非常に困難であり、結晶
化を行ないさらに高分解能の解析に成功した例はこれま
でわずか2件のみである。
【0011】また、得られる生体高分子は微量であるこ
とが多い。たとえば酵素等の蛋白質は、一般に細胞等か
ら抽出され、精製されるが、その含有量が少ないため、
最終的に結晶化のため得られる試料は非常に少ない場合
が多い。結晶化を行なう際には、溶液における生体高分
子の濃度は50mg/ml程度必要であると言われてい
る。したがって、できるだけ少ない量の溶液について種
々の条件で結晶化実験を繰返すこと(スクリーニング)
を行なう必要がある。
【0012】上述したように拡散法では、試料の量が少
なくてすむが、良質の結晶を得るためには沈澱剤の塩濃
度、pHなどを広い範囲にわたって変えて結晶化の最適
条件を見出していかなければならない。この場合、条件
はトライ・アンド・エラーによてしか見出すことができ
ない。さらに、試料の液滴を形成するガラス基板は、不
要な結晶核の大量発生を起こしやすい。これを抑制する
ため、表面研磨および撥水処理等の表面処理を予め施す
必要がある。
【0013】以上のように、蛋白質を初めとする生体高
分子およびこれらの複合体の結晶化は、学術および産業
上の重要なプロセスであるにもかかわらず、これまで試
行錯誤を繰返しながら進められてきたため、X線結晶構
造解析の最大のネックとなっている。したがって、今後
結晶化の基本原理を理解して、どの分子に対しても適用
し得る結晶化技術を開発する必要がある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
したように多様な特性を有するためにどの物質に対して
も適用できる手法がなく、試行錯誤を繰返しながら進め
られてきた従来の結晶化プロセスの欠点を、技術的に解
消することである。
【0015】具体的には、本発明は、種々の生体高分子
および生体高分子から主として構成される生体組織の結
晶化において、重力の影響による溶液内対流の影響を低
減し、核形成を制御することを目的とする。
【0016】さらに本発明は、微結晶の大量生成を抑制
または制御し、X線構造解析を可能にし得る大型の結晶
を得るための技術を提供することを目的とする。
【0017】さらに本発明の目的は、少量の溶液で結晶
化を可能にするための装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明による結晶成長用
装置は、溶液中に含まれる高分子化合物の結晶を成長さ
せるための装置であって、対向する1対の主表面を有
し、かつ高分子化合物を含む溶液の環境に応じて主表面
部分の正孔または電子の濃度を制御できるよう価電子が
制御された基板を備える。この基板は、1対の主表面の
一方に設けられた、結晶成長のために用いられる溶液を
保持するための第1溶液貯留部と、1対の主表面の一方
に設けられた、第1溶液貯留部から溶液を排出させて所
定の方向に流すための流路と、1対の主表面の一方に設
けられた、該流路より送られる溶液を受入れるための第
2溶液貯留部と、第2溶液貯留部にある溶液を1対の主
表面の他方に導くための貫通孔と、貫通孔を介して送ら
れる溶液を1対の主表面の他方において受入れるための
第3溶液貯留部とを備える。この基板の少なくとも第2
溶液貯留部および/または第3溶液貯留部において、高
分子化合物を含む溶液の環境に応じて表面部分の正孔ま
たは電子の濃度を制御できるよう価電子が制御されてい
る。
【0019】流路は、幅および/または深さの異なる複
数の溝から構成することができる。これらの溝は、基板
自体に形成してもよいし、基板上に設けられた膜を加工
することにより形成してもよい。流路を構成する溝の幅
は、上流から下流にいくに従って広げることができる。
また、流路を構成する溝は、上流から下流にいくに従っ
て深くすることができる。このような構成により、流路
において溶液を一方向に流すことが可能である。また、
流路を構成する溝は、溶液を一方向に流すために階段形
状であるかまたは勾配を有するものとすることができ
る。
【0020】基板には、複数の第2溶液貯留部と第3溶
液貯留部を設けることができる。この場合、1つの第2
溶液貯留部から溶液を送る貫通孔の径は、他の第2溶液
貯留部から溶液を送る貫通孔の径と異なってもよい。貯
留部ごとに貫通孔の径を変えることで、結晶成長に対し
て異なる条件および環境を提供できる。
【0021】本発明の装置は、基板を加熱するための手
段をさらに備えることができる。このような手段は、た
とえば基板の表面に形成された電極とすることができ
る。
【0022】本発明の装置において、基板の第2溶液貯
留部に溝または孔を形成することが好ましい。溝または
孔は、結晶成長が溶液の対流によって阻害されることを
効果的に抑制することができる。
【0023】基板の表面において、第2溶液貯留部およ
び/または第3溶液貯留部の特定領域で高分子化合物の
結晶核の形成および結晶の成長が促進され、かつその他
の領域で結晶核の形成が抑制されるよう、価電子が制御
されていることが好ましい。このように価電子を制御す
ることによって、第2溶液貯留部および/または第3溶
液貯留部の特定の領域において選択的に結晶を成長させ
ることができる。
【0024】本発明の装置は、たとえば不純物添加され
た半導体基板からなることが好ましい。半導体基板にお
ける価電子制御は、不純物の濃度および/または種類の
制御により行なうことができる。好ましい半導体基板と
してシリコン結晶基板を用いることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】蛋白質を初めとする生体高分子の
ほとんどは、溶液内において幾何学的に特異的な構造お
よび静電的な相互作用(静電斥力・引力、ファンデルワ
ールス力)によって分子間同士の認識が行なわれてい
る。静電的なエネルギに基づく分子間の相互作用におい
ては、個々の分子最表面でのわずかな空間的な電荷分布
の相違が、分子間の認識度合い、分子集合体の作りやす
さに決定的な影響を及ぼすことが予想される。したがっ
て、溶液内をブラウン運動しながら衝突を繰返している
個々の分子では、周期的かつ規則的な構造を有する分子
集合体の核が非常に形成されにくいと考えられる。さら
に、結晶核が形成されたとしても、各分子表面の分子構
造、電荷分布が全く同一ではなく冗長性を有しておれ
ば、核の周囲に集合する各分子は互いに緩く結合するこ
とになり、よって結晶性が低下するものと考えられる。
【0026】蛋白質分子の結晶生成に関しては、その核
生成の初期過程が重要であるとの報告がなされている。
Yonath等は、Bacillus Stearothermophilus より抽出さ
れた巨大なリボソームサブユニットの結晶化初期過程を
電子顕微鏡により観察している。それによれば、結晶化
が進行するためには、初期過程として、各分子が2次元
的な規則構造(編み目状、星状、千鳥格子状等)をとっ
て凝集することが必須であると述べている(Biochemist
ry International, Vol. 5, 629-636 (1982))。
【0027】これがすべての物質に共通して必須である
かどうかは不明である。しかし、一般に蛋白質分子は分
子間相互作用が弱く、しかも分子表面が局部的に帯電し
ているため、凝集しにくいことを考慮すると、結晶化の
初期過程において核となる分子を2次元的に配列させる
何らかの条件が整えば、その後の結晶化は、これを核と
してエピタキシャル的に進行するものと考えられる。
【0028】本発明では、結晶核を安定して生成させる
ため、価電子が制御された固体素子(基板)を結晶化す
べき物質を含む液に接触させる。該固体素子は、液と接
触する表面から内部に向かって、あるいは該固体素子の
断面内において、価電子制御により電子および正孔の濃
度を制御することができ、それによって固体素子表面の
電気的状態を制御することができる。たとえば図1に、
本発明に従い、固体素子表面において結晶核が固定さ
れ、結晶が成長していく様子を模式的に示す。図1
(a)に示すように、価電子制御により、所定の電気的
状態とされる固体素子1の表面に、結晶核2が静電的な
作用によって固定される。そして、図1(b)に示すよ
うに、蛋白質等の化合物は、静電的な相互作用により、
固体素子表面に凝集し、結晶核の生成が促進され、結晶
の成長がもたらされる。したがって、固体素子表面の電
気的特性を制御することにより、結晶化の制御が可能と
なる。たとえば、固体素子表面に固定される結晶核の種
類、量、配列密度等を価電子制御により調整することが
でき、それによって結晶化の制御が可能となる。また、
生成された結晶核が固体素子表面に固定されるため、溶
液内の対流等による核の微小な変動が抑制され、核の形
成に従って規則的に分子が集合し、結晶性が向上するこ
とも期待される。結晶化すべき分子の表面の電荷分布が
溶液のpHや分子の変性によって微妙に変化しても、固
体素子表面には必ず該分子の実効表面電荷と補償する空
間電荷が誘起されるため、結晶核の2次元的な生成が容
易にかつ優先的に行なわれることが期待される。
【0029】本発明では、基板の表面に、結晶成長のた
めに用いられる溶液(たとえば母液、沈澱剤、緩衝溶液
等)を液滴として保持するための第1溶液貯留部と、第
1溶液貯留部から排出された溶液を受入れ、目的の結晶
を成長させるための第2溶液貯留部と、第2溶液貯留部
からの溶液を受入れるための第3溶液貯留部とが形成さ
れている。第1溶液貯留部は、複数種の溶液をそれぞれ
保持するため、複数設けられることが好ましい。第1溶
液貯留部と第2溶液貯留部とは、基板の表面に設けられ
た流路によってつながっている。この流路により、結晶
成長のために用いられる溶液が第1貯留部から第2貯留
部に送られる。第2溶液貯留部が複数設けられる場合、
第1溶液貯留部の各々から第2溶液貯留部に溶液を送る
ため、複数の流路が設けられる。本発明の装置におい
て、第2溶液貯留部は基板の表面に設けられ、第3溶液
貯留部は基板の裏面に設けられる。第2溶液貯留部と第
3溶液貯留部とは、基板を貫通する貫通孔によってつな
がっている。このように、3つの溶液貯留部を流路およ
び貫通孔によって連絡することで、各貯留部に保持され
る溶液の相互拡散を空間的および時間的に変化させ、特
に第2溶液貯留部および/または第3溶液貯留部におい
て結晶化に適した条件を再現性よくもたらそうとしてい
る。一般に化学反応において、反応系を非線形でかつ非
平衡な開放系(散逸系)とすることで、化学反応が時間
的および/または空間的に安定に維持されたり、好まし
い反応条件が達成されたりする場合がある。また、この
ような開放系によって、生体内に類似する微妙な反応条
件が実現され得る場合もある。本発明では、このような
非平衡の開放系を人工的に実現するため、基板の表面に
形成された第2溶液貯留部と、基板の裏面に形成された
第3溶液貯留部とを貫通孔によってつなぎ、これらの貯
留部の間での液の流通を可能にしている。このような構
造は、後述するように、2つの貯留部間で相互に物質の
移動が起こる非平衡な系を実現する。
【0030】本発明の装置において第2溶液貯留部を複
数設けることができる。これらの第2溶液貯留部には、
溶液を運ぶ複数の流路がそれぞれ接続される。これらの
流路のうち、第2溶液貯留部の1つに向かう流路は、第
2溶液貯留部の他の1つに向かう流路と異なる長さおよ
び/または幅を有することができる。さらに必要に応じ
て、その深さを変えてもよい。それにより、流路のそれ
ぞれによって送られる溶液の流速は異なってくる。複数
の第2溶液貯留部間で、受入れる溶液の流量は異なって
くる。このため、複数の第2溶液貯留部間において、2
種類以上の溶液が異なる比率で混合された液を調製する
ことができる。
【0031】本発明の装置において、溶液貯留部間にお
ける溶液の拡散は、微細な溝および微細な貫通孔での毛
管現象を駆動力とすることができる。たとえば、溶液を
通過させるための流路は、微細な複数の溝から構成する
ことができる。溝は、基板自体をエッチング等によって
加工することにより形成してもよいし、基板上に設けら
れた膜をエッチング等により加工することにより形成し
てもよい。流路を構成するために、幅および/または深
さの異なる複数の溝を形成し、溝の幅を上流から下流に
いくに従って広げることが好ましい。また、溝を上流か
ら下流にいくに従って深くすることで、階段状または勾
配を有する構造を形成することができる。溝の幅および
/または深さは、連続的に変化させてもよいし、段階的
に変化させてもよい。このように溝の幅および/または
深さを上流から下流にいくに従って変化させることで、
溶液の流れの方向および流量を制御することが可能にな
る。
【0032】また、流路のサイズを変えることにより、
溶液の供給量を変えることができる。結晶化を行なうべ
き第2溶液貯留部に供給される溶液の流量を変えること
によって、複数種の溶液の混合比を制御することができ
る。複数の流路ごとに流量を調節すれば、より多様な混
合比を得ることができ、したがって結晶化のためより多
くの条件を調製することができる。
【0033】また本発明において、基板や貯留される溶
液を加熱するための手段を設けることができる。このよ
うな手段は、たとえば基板に形成される加熱電極とする
ことができる。加熱された各溶液は、その体積の膨張を
推進力として流路に押出される。また加熱された溶液は
粘性が低下するため流れやすくなる。したがって、加熱
により溶液の移行は促進される。また加熱手段によって
基板を部分的に加熱すれば、基板内に温度勾配を設ける
ことができる。温度勾配に従って、複数の第2溶液貯留
部に温度差が生じる。温度の異なる溶液において、結晶
化すべき物質の溶解度も異なる。したがって、温度差に
より1つの装置においてより多くの結晶化のための条件
を得ることができる。また、第2溶液貯留部および/ま
たは第3溶液貯留部のそれぞれに温度勾配をもたせるこ
とで、貯留部内の溶液が熱力学的に非平衡な状態とな
る。この場合、さらに好ましい反応条件が生成されるこ
とが期待される。
【0034】また、第2溶液貯留部に微細加工によって
溝または孔を形成することにより、基板に働く静電引力
の対流抑制に対する効果を向上させることができる。特
に基板に形成された溝の底部では、結晶化すべき分子に
対して静電的相互作用をほぼ等方的に及ぼすことができ
る。溝の底部で結晶核が形成される場合、静電的相互作
用により結晶核を溝の底部に静止させ、重力の影響に基
づく対流から結晶核を保護することが可能になる。ほぼ
静止した核に基づいて結晶が成長していけば、過剰な微
結晶の生成は抑制され、結晶核の表面に規則的に分子が
集合した大型の結晶を得ることができると期待される。
一方、第2溶液貯留部の周囲に溝を形成することで、溶
液が流路より供給される際に発生しやすい結晶化部での
対流を抑制することができる。すなわち、溶液の供給時
に対流を溝内で主に発生させ、結晶化部では対流の影響
を緩和できる。
【0035】また、一般に電解質溶液内における帯電物
質または分子の凝集性は、それらの間の電気二重層斥力
とファンデールワールス力との和に依存するため、物質
または分子同士を凝集させる場合、電解質溶液中に添加
する表面電位を調整するための塩濃度をコントロールす
ることが非常に重要となる。しかし本発明によれば、固
体素子表面の静電特性は予め価電子制御により調整でき
るため、塩濃度の調整が容易または不要になるというメ
リットも生じる。
【0036】このような目的に供される基板としては、
上述したような静電特性を有し、電荷量および極性の制
御が可能な物質で、さらに溶液中で化学的に安定な物質
であれば、どのようなものでもよい。この目的を達成す
るために最適な材料の1つとしてシリコン結晶を挙げる
ことができる。以下、シリコン結晶を用いた場合につい
て予想される結晶化のメカニズムを以下に説明する。し
かしながら、以下に記載されるメカニズムは、本発明に
従って用いられる他の基板にも当てはめることができ
る。
【0037】本発明の装置の一具体例を図2および図3
に示す。図2は、各溶液貯留部、流路および電極の配置
を模式的に示している。図3は、装置の構造の一具体例
を示す断面図である。装置を構成する基板10の表面に
は、第1溶液貯留部に相当する複数の溶液セル12a、
12b、12c、14a、14bおよび14c、ならび
に第2溶液貯留部に相当する反応セル18a、18bお
よび18cが適当な位置に形成されている。これらの溶
液セルと反応セルとの間には、それぞれ流路16a、1
6b、16c、16′a、16′bおよび16′cが形
成されている。これらの流路は、溶液セルから反応セル
への溶液の移動を可能にする。図3に示すように、溶液
セルおよび反応セルは、基板10に形成された凹部また
は孔とすることができる。また流路は、基板10上に形
成された膜17を加工することにより形成することがで
きる。図3に示すように、基板10の裏面において、反
応セル18aに対向する位置に第3溶液貯留部に相当す
る反応セル20aが形成されている。反応セル20a
も、基板10に形成された凹部または孔とすることがで
きる。表面の反応セル18aと裏面の反応セル20aと
の間には、複数の貫通孔22aが形成されている。貫通
孔22aは、基板表面と裏面との間の液の流通を可能に
する。図示を省略したが、基板10の裏面において反応
セル18bおよび18cに対向する位置にも同様に反応
セルがそれぞれ設けられ、貫通孔22bおよび22cに
よって表面の反応セルと裏面の反応セルとの間の液の流
通が可能になっている。なお、各セルの個数は図2に示
した数以外であっても何ら差し支えない。さらに図2に
示すように、基板10の端部には、加熱用電極26およ
び温度測定用電極24が設けられている。この装置にお
いて、反応セルに予め結晶化すべき高分子たとえば蛋白
質等の母液を供給しておき、複数の溶液セルから、結晶
化のために必要な溶液を反応セルに供給するようにして
もよい。また、溶液セル12a〜12cから、それぞれ
結晶化を行なうべき蛋白質等の高分子化合物を含む母液
を供給し、溶液セル14a〜14cからそれぞれ緩衝溶
液等の結晶化の条件を制御するための溶液を供給するこ
とができる。反応セル18a〜18cはそれぞれこれら
の溶液を受入れ、結晶化に適した混合液を調製する。ま
た、分子複合体を形成したいとき、反応セル18a〜1
8cにおいてそれぞれ複合体を形成すべき1つの分子種
を保持させ、溶液セル12a〜12cにそれぞれ他の分
子種を保持させ、溶液セル14a〜14cにそれぞれ条
件設定のための溶液を保持させてもよい。反応セル18
a〜18cに溶液セルからそれぞれ溶液を供給して反応
を起こさせ、分子複合体を調製することができる。さら
に、裏面の反応セルに予め溶液を保持させておき、次い
で、各溶液セルより流路を介して表面の反応セルに溶液
を供給してもよい。この操作により、裏面に保持された
溶液と表面に保持された溶液との相互拡散を徐々に行な
うことができる。
【0038】図4は、第2溶液貯留部に相当する反応セ
ルの種々の構造を示している。図4(a)に示す反応セ
ルは、最も基本的な構造を有している。基板40aの表
面には凸部または孔が形成され、反応セル48aとされ
ている。基板40aの裏面にも凸部または孔が形成さ
れ、反応セル50とされている。反応セル48aと反応
セル50とは、複数の貫通孔42によって連結される。
図4(b)に示す構造では、基板40bの表面に、不純
物層41bが形成されており、表面の反応セル48bに
おいては、不純物層41bが除去された部分と不純物層
41bが残された部分とが所定のパターンで配置されて
いる。不純物層41bが残された部分43bは、山状の
形状を有する。後述するように、反応セルにおいて不純
物層を所定のパターンで配置することにより、核形成が
促進される位置を制御することができる。図4(c)に
示す反応セル48cにおいては、不純物層41cが残さ
れた部分43cは、台状の形状を有している。基板40
cの裏面には、同様に反応セル50が設けられている。
図4(d)に示す反応セル48dにおいては、不純物が
導入されていない部分43cが所定のパターンで配置さ
れる。基板40dの表面において他の部分は不純物層4
1dによって覆われている。
【0039】図5は、本発明の装置の使用例を模式的に
示している。基板60からなる本発明の装置は支持脚8
7等によって支持され、容器81内に収容される。容器
81の底には緩衝溶液等の溶液85が保持されており、
容器81の開口部は、溶液の蒸発を防ぐために蓋83に
よって密閉されている。支持脚87によって水平に保持
された基板60の溶液セル62および64には、緩衝溶
液等の結晶化の条件を調節するための溶液または蛋白質
等の結晶化すべき物質を含む溶液等が滴下されている。
溶液セル62および64にそれぞれ保持される液滴71
および73の一部は、それぞれ流路66および66′を
介して基板60の上面に形成された上部反応セル68に
流れ込むようになる。流れ込んだ溶液は、貫通孔72を
介して基板の下面に形成された下部反応セル70に移行
する。このようにして、下部反応セル70には、重力の
方向に垂れ下がった液滴75が保持される。溶液は、毛
管現象により、移動し、各反応セルに保持されていく。
このような溶液の流通を行ないながら、反応セルにおい
て所望の結晶化および/または反応を行なわせることが
できる。
【0040】図6は、貫通孔によって連結された上部反
応セルと下部反応セルの動作原理を示す。図6(a)に
示すように、溶液は流路66および66′を介して基板
60の上面に形成された上部反応セル68に流入する
が、流入した液は貫通孔72によって下部反応セル70
に流れ落ち、液滴75として保持される。図6(b)に
示すように、溶液をさらに上部反応セル68に流入させ
ていくと、重力の方向に垂れ下がった液滴75が下部反
応セル70に保持されたまま、上部反応セル68にも溶
液が少しずつ保持されるようになる。このときの溶液の
流れの方向は、主に矢印で示すとおりである。さらに溶
液を上部反応セル68に流入させると、図6(c)に示
すような液の流通が行なわれるようになる。貫通孔72
の径を適当なサイズにしておくと、図6(c)のAに示
すように、1つの貫通孔内で上方向および下方向の流れ
が同時に生じるようになる。また、図6(c)のBに示
すように、複数の貫通孔間で、同調して逆向きの流れが
生じるようにもなる。一見すると、反応セル内で溶液が
平衡状態にあるように見えるが、実際には、このような
非線形的な振動現象のため、反応セルに保持される溶液
は、熱力学的な平衡状態にはなく、溶液の流れがリズム
をもって変動する生物学的な「生きた状態」にある。こ
のような非平衡的環境により、結晶化の現象を含む化学
的反応が永続的に進行することが期待できる。
【0041】図7(a)は、図6に示す現象を時間に対
する溶液濃度の変化として示したものである。図7
(a)において、横軸は時間、縦軸は溶液濃度を表わし
ている。たとえば、溶液同士をビーカー等の中で単純に
混合すると、ビーカーにおいてある物質の濃度は次第に
減少し、やがて一定の値となり、その後は全く変化しな
い。そのような経過は、図7(a)において曲線Zで示
される。一方、本発明の装置においては、図6に示すよ
うな流れが反応セル間で生じるため、物質濃度の経時的
変化は図7(a)の曲線XまたはYに示すような経過を
辿っていく。すなわち、濃度は、長時間にわたって周期
的に変動するようになる。このような濃度変化は、生体
内における種々の物質に起こる現象と類似する。図7
(b)は、図7(a)に示す濃度変化の位相軌道曲線を
示している。図7(b)に示す曲線X′、Y′および
Z′は、図7(a)に示す曲線X、YおよびZにそれぞ
れ対応している。
【0042】図8に、本発明の装置に形成される流路の
一具体例を模式的に示す。流路86は、複数種の溝86
a、86b、86c、86dおよび86eによって構成
される。各溝86a〜86eは所定の長さを有し、隣り
合う溝と部分的に重なっている。図面に向かって右側の
溝は左側の溝よりも広い幅を有する。このように溝の幅
を変えていくことによって、毛管現象による駆動力によ
り図に示す矢印の方向に溶液を流すことができる。流路
を構成する溝は、たとえば図9に示すような断面構造を
有する。図9(a)に示す溝96は、基板90上に形成
された複数の壁91によって構成される。基板としてシ
リコンを用いた場合、垂直に切り立った壁91は、たと
えば酸化シリコンから構成することができる。また図9
(b)に示すように、基板90上にたとえば異方性エッ
チングによってV字形の溝96′を形成することもでき
る。基板にたとえばシリコンを用いる場合、このような
V溝は、半導体装置の製造に用いられる通常の方法によ
って形成することができる。
【0043】図10に、流路の他の例を示す。図に示す
流路は、基板表面に形成された複数のV字状の溝(V
溝)から構成される。図11は、図10のL−L′断面
図であり、図12は図10のX−X′断面図、Y−Y′
断面図およびZ−Z′断面図をそれぞれ示している。流
路106は、幅および深さの異なるV溝部106a、1
06bおよび106cから構成される。溶液の流される
方向は矢印によって示される。V溝部の幅および深さは
上流から下流にいくに従って大きくなっている。また流
路の幅は一定であるため、V溝の密度は上流から下流に
いくに従って小さくなっている。このような構造によ
り、図11に示すように流路106はV溝部106a、
106bおよび106cによって階段状の形状とされ
る。このような構造を有する流路において、溶液は毛管
現象によって矢印の方向に進む一方、溶液の逆流は妨げ
られることになる。図10には、基板の表面にV溝を形
成した流路を示したが、溝の形状はこの形状に限られる
ものではない。たとえばU字形の溝等、他の形状の溝を
形成してもよい。また、溝は、基板自体に形成してもよ
いし、基板上に絶縁性の膜等の膜を形成した後、これを
加工して作製してもよい。
【0044】以上に示してきた本発明の装置の構造は、
半導体装置の製造プロセスに用いられる技術によって得
ることが可能である。この技術は、薄膜形成、レジスト
パターン形成、フォトリソグラフィ、エッチング等の技
術を含む。特に基板としてシリコン結晶を用いる場合、
半導体装置の製造プロセスにおいて確立された種々の技
術を容易に適用することができる。図13は、本発明の
装置における流路を形成するための1プロセスを示して
いる。基板としてシリコン結晶を用いる場合、まずシリ
コン基板110上に酸化シリコン(SiO2 )膜111
を形成する(図8(a))。次に、酸化シリコン膜を所
定のパターン111′にエッチングする(図8
(b))。露出したシリコン表面に異方性エッチングを
施せば、V溝116aおよび116bが得られる(図8
(c))。また、必要に応じて酸化シリコン膜をエッチ
ングにより除去する(図8(d))。このようなプロセ
スにより、V溝によって構成される流路を得ることがで
きる。
【0045】溶液貯留部は、結晶化したい物質の性質、
結晶化の難易に応じて種々の構造とすることができる。
シリコン結晶の表面は通常、結晶欠陥および固定電荷が
極めて少ないため、余分な結晶核を生成させにくいとい
った長所を有する。したがって、シリコン結晶の表面を
結晶成長のための溶液貯留部としてそのまま用いること
も可能である。また、結晶化すべき蛋白質等の分子の特
性に応じてシリコン結晶の表面にシリコン酸化膜を形成
すれば、親水性を高めることもできる。
【0046】以下に、基板における価電子制御により結
晶化が制御されるメカニズムを説明する。解離して負の
実効表面電荷を有する高分子化合物を含有する電解質水
溶液を、価電子制御されたnまたはp型シリコン結晶に
接触させると、n型シリコン表面に対してはショットキ
ー障壁が形成される一方、p型シリコン表面に対しては
オーミック性接触が得られる。p型シリコン表面では、
負の電荷を有する高分子電解質に対して、バルクシリコ
ン側から常に正孔が供給されるため(オーミック特
性)、高分子は常にシリコン表面に凝集し続けることが
予想される。一方、n型シリコンの表面には、水溶液の
電解質濃度に依存した表面電位が発生するとともに、内
部に空間電荷層領域が形成される。この空間電荷量は、
n型シリコンのドーパント濃度にも依存する。したがっ
て、電解質溶液中において負の電荷を有する高分子は、
このn型シリコンの有する正の空間電荷を少なくとも補
償するまで、シリコン表面に凝集し続けることが予想さ
れる。よって、空間電荷層領域が形成されるシリコン表
面に対しては、高分子化合物の凝集および結晶化が制限
されて起こるのに比べ、オーミック性接触が形成される
シリコン表面に対しては、高分子化合物の凝集が無制限
に進行することが予想される。
【0047】また、たとえばn型シリコンにおいて、不
純物濃度が異なる2つ以上の領域が形成されている場合
も、それらの領域によって異なる態様で結晶化が進むこ
とが予想される。n型シリコンの不純物濃度が低く高抵
抗の場合と、不純物濃度が高く低抵抗の場合について、
その効果の相違について述べる。n型シリコンの場合、
低不純物濃度(あるいは高抵抗)基板では、ドーパント
濃度が低いため表面近傍に形成される空間電荷層の幅が
広くなることにより、空乏層容量が小さく、したがって
シリコン表面に誘起される表面電位は高不純物濃度(あ
るいは低抵抗)基板の場合と比較して、大きくなること
が予想される。この表面電位は、高分子化合物の有する
実効表面電位と極性が逆となるため、静電的な引力の作
用により凝集が促進されると予想される。すなわち、低
不純物濃度で高抵抗のn型シリコン基板の方が、高不純
物濃度で低抵抗のn型シリコン基板より、基板表面によ
り多くの結晶を析出させることができると予想される。
【0048】解離して正の表面実効電荷を有する高分子
化合物については、上述したと逆関係の導電型または抵
抗値について、同様の効果がもたらされると考えられ
る。
【0049】以上に示してきた特性を利用して、結晶核
の形成を促進および抑制する一具体例を以下に示す。た
とえば、図14および図15に示すように、高抵抗n型
シリコン層上に所定のパターンで低抵抗n型シリコン層
を形成することによって、高抵抗n型シリコン表面への
結晶の析出を抑制し、所定のパターンで形成された低抵
抗n型シリコン層上にのみ選択的に結晶を成長させるこ
とができる。図14および15に示す反応セル128で
は、高抵抗n型シリコン層128b上に、所定の間隔を
空けて複数の低抵抗n型シリコン層からなるアイランド
128aが配列されている。このようなアイランドを形
成することによって、両者の空間電荷により形成される
表面電位は、たとえば図16のようになることが予想さ
れる。よって、この表面電位の分布に対応して結晶核が
二次的に生成されるものと考えられる。反応セルの特定
の領域に価電子制御によって結晶化に適した部分を形成
することにより、余分な結晶核の生成や双晶の成長を抑
制して、特定領域に結晶性が良好でかつサイズの大きな
結晶を成長させることができる。このような構造は、結
晶を析出させる位置を制御することを可能にする。
【0050】このように空間的に抵抗および/または不
純物元素の種類の異なる領域を形成することは、シリコ
ン結晶等からなる基板に選択的に不純物をドーピングす
ることによって容易に達成することができる。さらに別
の方法として、シリコン結晶等からなる基板の表面をエ
ッチングすることによって抵抗値の異なるシリコン表面
を露出させてもよい。図17は、基板の表面をエッチン
グした一例を示している。高抵抗n型シリコン層138
b上に低抵抗n型シリコン層を全面的に形成した後、エ
ッチングにより溝138cを形成し、低抵抗n型シリコ
ン層のアイランド138aが得られる。このような構造
の基板における表面電位は図12に示すとおりである。
エッチングにより高抵抗n型シリコン層138bが露出
した部分は表面電位が高くなっている。
【0051】さらに、図14および15に示す装置にお
いて、反応セル128の周囲にはV溝128cが形成さ
れている。この溝は結晶化の目的に応じて適宜形成する
ことができる。流路126aおよび126′bから供給
される溶液は一旦溝128cに貯留された後、低抵抗n
型シリコン層のアイランドを有する窪みに供給される。
また溶液は貫通孔132を介して対向するセル(図示省
略)へと送られる。図18は、反応セルに形成された溝
部の役割を説明するためのものである。結晶化を始める
にあたって、高分子化合物を含む母液は溝部128cに
供給され、表面張力によって液滴121として保持され
る(図18(a))。この状態において結晶の生成は抑
制される。液滴と接触する基板の表面は、価電子制御に
より結晶の生成を抑制するものだからである。次いで、
図18(b)に示すように、溶液が流路を介して供給さ
れるに従い、液滴121の体積が増大し、やがて溶液は
反応セル128内の低抵抗n型シリコン層のアイランド
を含む平坦部に移動するようになる。最終的に図18
(c)に示すように、溶液121′は平坦部全体を覆
い、低抵抗n型シリコン層のアイランド54bにおいて
結晶化が促進される。このように結晶化を行なうべき母
液の周囲にV溝を形成することで、結晶化を行なうべき
領域における対流を抑制することが期待できる。すなわ
ち、溶液の供給時に対流はV溝内で主に発生し、結晶化
を行なう平坦部では対流が緩和されると考えられる。
【0052】以上、高抵抗n型シリコン上に、低抵抗n
型シリコンの領域を形成する例を示したが、たとえばn
型シリコン上にp型シリコン層のアイランドを形成した
場合も、同様の効果を期待することができる。また、結
晶化すべき物質の荷電状態に応じて、シリコンの導電型
および抵抗値を適宜選択すればよい。
【0053】本発明にもちいられるn型およびp型シリ
コン結晶は、通常のLSIプロセスに用いられるシリコ
ン上と同等の特性を有するものでよい。シリコン結晶の
比抵抗は0.0001〜1000Ωcm程度の範囲内で
あればよく、より好ましくは0.001〜100Ωcm
の範囲のものを用いることができる。n型およびp型に
価電子制御されたシリコンの調整方法として、種々のも
のが考えられ、どのような方式のものでもよいが、最も
簡便で不純物濃度の制御が正確に行なえる方法として、
イオン注入法が挙げられる。この場合、p型およびn型
の価電子制御は、それぞれ周期律表第III族および第
V族に属する元素のイオンをシリコン中に注入、アニー
ルすることによって容易に行なうことができる。p型に
するためのIII族元素としてB,Al、Ga、In、
Tl等を挙げることができる。特にBが一般的である。
n型にするための第V族元素としてN、P、As、S
b、Bi等を挙げることができ、特にP、As、Sbが
一般的である。また、結晶の表面は、ミラーポリッシュ
されたものが、析出する結晶核の制御を行なう上で好ま
しい。
【0054】本発明において、シリコン基板表面に不純
物層を形成する際、その厚みは、0.1〜200μmが
好ましく、1〜50μmの範囲がより好ましい。これ以
外の範囲では、作製が容易でなかったり、効果がなくな
ったりするため望ましくない。
【0055】以上、価電子制御が容易な半導体結晶シリ
コンを用いた例について説明したが、本目的を達成する
ため、同様の機能を有する他の材料を適宜用いることが
できる。たとえば、シリコン以外の半導体結晶を好まし
く用いることもでき、さらには、半導体結晶以外の材
料、たとえば電荷分布の制御された無機化合物、有機化
合物、高分子化合物、およびそれらの複合物を候補とし
て挙げることができる。
【0056】本発明の装置において、第2溶液貯留部と
しての反応セルの表面には、上述したように複数の溝ま
たは不純物元素が添加されたアイランドを形成すること
ができる。複数種のサイズの溝またはアイランドを1つ
の反応セルに作製しておいてもよい。基板表面に形成さ
れる溝のサイズおよび深さ、ならびにアイランドのサイ
ズは、結晶化すべき高分子化合物の種類によって適宜変
更することが望ましい。一般的に、溝またはアイランド
の幅は0.01〜100μmの範囲とすることができ
る。溝の長さはたとえば0.1〜10mmの範囲とする
ことができる。また溝は、1μm〜1mmの範囲の間隔
で複数作製することができる。サイズの異なるアイラン
ドおよび溝を多数形成しておけば、結晶化により好まし
い領域を提供できる可能性が高くなる。また溝の深さ
は、0.01〜200μmの範囲で調整することができ
る。なおこれらのサイズは、主として装置の製造上好ま
しい範囲であるが、これらの範囲以外であっても、装置
の性能、すなわち結晶化に決定的な悪影響を及ぼすもの
ではない。
【0057】基板表面に形成される第2溶液貯留部とし
ての反応セルのサイズは、用いられる溶液の量によって
決定されるべきである。一般に反応セルのサイズは、
0.1〜10mm角程度が好ましい。また、基板表面を
エッチングすることによって孔または窪みを有する反応
セルを形成する場合には、孔または窪みの深さは、0.
01〜500μm程度の範囲が好ましい。
【0058】流路は、基板自体または基板表面に形成さ
れた酸化膜等の膜をエッチングすることによって形成す
ることができる。溝の幅は、たとえば0.01〜100
00μmの範囲とすることができる。溝の長さは0.1
〜100mmの範囲で作製することが好ましい。また、
0.01〜10000μmの範囲の間隔で複数の溝を作
製することが好ましい。さらに溝の深さは、0.01〜
200μmの範囲で調整することが好ましい。これらの
範囲のサイズをそれぞれ有する複数の溝によって、流路
を構成することができる。複数の溝によって構成される
流路全体の幅は、1μm〜10mmの範囲とすることが
できる。
【0059】また、シリコン基板等の固体素子表面に
は、溶液貯留部および流路を取囲むように撥水性の層を
形成することが好ましい。この層は、溶液を保持する際
に、溶液が周囲に流出するのを効果的に防止することが
できる。たとえば表面の酸化膜が除去されたシリコン表
面は、一般に酸、アルカリのみを含む水や純水に対して
十分に撥水性であるが、緩衝溶液のような塩を含有する
水溶液に対して撥水性は低下する。したがって、緩衝溶
液を用いる場合、シリコン基板の周囲に撥水性の物質か
らなる層を形成する方がよい。撥水性の層は、たとえば
有機系の樹脂によって形成することができ、レジスト樹
脂、ポリイミド樹脂は最も簡便に撥水性の層を形成でき
る材料の例である。ポリイミドからなる撥水性の層を形
成する場合、たとえば感光性または非感光性のポリイミ
ド樹脂をコーティングし、硬化させた後、所望のパター
ンとなるようエッチングまたは現像により不要な部分を
除去することができる。本発明で用いられる撥水層の厚
みは機能的に特に限定する必要はないが、0.1〜10
0μmの範囲の厚みのものが比較的作製しやすい。ま
た、撥水性を示しかつ溶液中で化学的に安定であれば、
種々の材料をこの層のために用いることができる。
【0060】基板に形成される貫通孔は、たとえばエッ
チングによって形成することができる。たとえばシリコ
ン結晶基板を用いる場合、異方性エッチングまたはドラ
イエッチングにより形成が可能である。貫通孔のサイズ
は、溶液貯留部に保持される溶液の周期的な変動に影響
を及ぼす。したがって、貫通孔のサイズは、所望の変動
が生じるよう設定される。通常、貫通孔の径は1.0μ
m〜5mmの範囲であることが望ましく、10μm〜1
mmの範囲がさらに好ましい。各貯留部に形成される貫
通孔の数は、特に限定されるものではない。
【0061】本発明の装置に形成することのできる加熱
用電極および温度測定用電極は、金属抵抗体からなる薄
膜をパターニングすることによって容易に作製すること
ができる。金属抵抗体の材質として、主にCr、Ti、
NiCr等を用いることができる。これらはスパッタリ
ング等によって基板に堆積することができ、その後、通
常の方法によってパターニングすることにより所望の特
性を有する電極を得ることができる。なお、シリコン基
板を加熱する場合、発熱体近傍において30〜100℃
の温度範囲が好ましく、40〜80℃の範囲がより好ま
しい。
【0062】本発明は、種々の高分子化合物、特に高分
子電解質を結晶化するために用いることができる。本発
明は特に、酵素および膜蛋白質等の蛋白質、ポリペプチ
ド、ペプチド、ポリサッカライド、核酸、ならびにこれ
らの複合体および誘導体等を結晶化させるため好ましく
適用される。本発明は、生体高分子の結晶化のため好ま
しく適用される。また、本発明は、生体内または生体外
において蛋白質、酵素、核酸を始めとする種々の生体高
分子の捕捉、精製、合成等を行なうためのマイクロ・リ
アクター装置に応用することができる。本発明の装置
は、上述した技術によって、微細化および集積化が可能
である。
【0063】
【実施例】マッコウクジラ由来のミオグロビンをpH
7.2のリン酸緩衝液に溶解し、20mg/mlの濃度
とした。この溶液について、シリコン結晶よりなる2種
類の装置において結晶化を行なった。
【0064】(1) サンプル−1 約20Ω・cmの比抵抗のn型シリコン基板の表面に、
リン元素のイオン注入を行なった後アニールを施して低
抵抗のn型シリコン層(比抵抗:約0.01Ω・cm、
厚み:約3μm)を全面的に形成した。その後、表面に
熱酸化によって酸化シリコン層を200nmの厚みで形
成した。次いで、図2に示すような配置で、基板表面に
3対の溶液セル、3個の上部反応セル、3対の流路、加
熱用電極および温度測定用電極を形成し、基板の裏面に
3個の下部反応セルを形成した。
【0065】シリコン基板のサイズは、30mm角であ
り、その表面に形成される凹状の溶液セルのサイズは5
mm角であった。また、シリコン基板の表面と裏面にそ
れぞれ形成される反応セルのサイズは共に3mm角とし
た。上部反応セルのそれぞれには、周辺部に深さが40
μm、幅が200μmのV溝を設けた。V溝はエッチン
グにより形成した。さらに、その内側の平坦な領域を5
0μmの深さで異方性エッチングし、表面に約0.2m
m幅の薄い低抵抗n型層の領域を0.5mmのピッチで
残した。このような加工により、内側の平坦な領域に分
子の凝集および結晶化に関して空間的な選択性を付与し
た。
【0066】基板表面における溶液セルから反応セルま
での流路の長さは、5mmとし、流路の幅はすべて3m
mとした。流路は、すべて酸化シリコンを加工すること
によって得られた複数の溝から構成された。溝を構成す
る壁は、酸化シリコン層を所定のパターンでエッチング
することによって形成した。図10に示すような構造に
おいて、流路全長の3分の1毎に溝の幅を変えていっ
た。流路の最初の3分の1では、溝の幅は1μmであ
り、次の3分の1では5μm、最後の3分の1では50
μmであった。また、溝の幅と溝の間隔との比(L/
S)は流路の最初の3分の1において1:1、次の3分
の1において1:10、最後の3分の1において1:2
0であった。すなわち、5mmの長さの流路において、
最初の1.67mmの長さの部分はL/Sが1μm/1
μmであり、次の1.67μmの部分はL/Sが5μm
/50μmであり、最後の1.67μmの部分はL/S
が50μm/1000μmであった。
【0067】次いで、基板にブラスト処理により貫通孔
を形成した。基板の表面に形成される3つの反応セルに
おいて、直径の異なる貫通孔を異なるピッチで形成し
た。3つの反応セルのうち第1のセルにおいては直径
0.1mmの貫通孔を0.2mmのピッチ(間隔)で複
数形成した。第2のセルにおいては、直径が0.3mm
の貫通孔を0.5mmのピッチで複数形成した。第3の
セルにおいては、直径が0.6mmの貫通孔を0.8m
mのピッチで複数形成した。
【0068】次に、シリコン基板の表面に0.3μmの
厚みでCr膜を形成した後、パターニングを行なって、
100μm幅の発熱体および2μm幅の測温体を基板の
端部に形成した。なお、Cr薄膜のパッド上には、Al
を約1μmの厚みで堆積した。次いで、シリコン基板表
面に感光性ポリイミドを塗布し、フォトリソグラフィに
よってパターニングを行ない、各セルおよび流路以外の
表面に10μmの厚みのポリイミド層を形成した。
【0069】(2) サンプル−2 サンプル1と、同様の方法で装置を作製したが、サンプ
ル2においては貫通孔を形成しなかった。すなわち、サ
ンプル2の装置において表面および裏面にそれぞれ形成
された反応セルはつながっていない。
【0070】以上のように作製したサンプル−1および
サンプル−2の装置(マイクロリアクタ)を図5に示す
ように、それぞれ直径が約50mmの蓋付きセルプレー
ト内に保持した。セルプレートの底部には、pH7.2
の緩衝溶液を約5ml滴下した。次いで、サンプル−1
およびサンプル−2の3つの反応セルにそれぞれ上述し
たミオグロビン溶液を500μl滴下し、さらにそれぞ
れの反応セルにつながる一方の溶液セルにpH7.2の
緩衝溶液を約1ml、他方の溶液セルに0.2molの
塩化ナトリウム水溶液を1ml、液滴がこぼれないよう
滴下した。その後、セルプレートの蓋を閉め、装置を1
0℃の冷暗所内に静置するとともに、シリコン基板上の
発熱体に通電し、発熱体近傍の温度を約45℃まで上昇
させた。それぞれのサンプルを冷暗所に72時間保管し
た後、試料を取り出して顕微鏡によりミオグロビンの結
晶化状態を観察した。その結果を以下に示す。
【0071】サンプル−1の第1の反応セルにおいて
は、主に低抵抗n型領域に、約0.1mmの微小なサイ
ズの結晶が大量に析出した。双晶の状態のものも存在し
た。サンプル−1の第2の反応セルにおいては、低抵抗
n型領域に、約0.8mmの大型のサイズの表面が平滑
な単結晶が得られた。一方、高抵抗n型シリコンの領域
には結晶成長が全く起こっていなかった。サンプル−1
の第3の反応セルにおいては、第1の反応セルと同様な
微小な結晶が大量に析出した。以上の結果より、サンプ
ル−1の装置において第2の反応セルが結晶化により有
効であることが明らかになった。
【0072】一方、サンプル−2の装置では、反応セル
における低抵抗n型層の領域に比較的大きなサイズの結
晶が得られたが、双晶が多かった。このことは、サンプ
ル−2の反応セルでは、絶えず供給される緩衝溶液およ
び沈澱剤によって過剰な結晶核が生成しやすく、さらに
乱流が発生しやすいため、生成した核が反応セル内を浮
遊し、種々の場所で結晶成長が進行することを示唆して
いる。サンプル−1における結果が示すように、本発明
に従う装置を用いることによって、微量な試料であって
も大型の品質のよい単結晶を調製することが可能にな
る。
【0073】なお、上記実施例では、基板の上面に形成
される反応セルに価電子が制御された領域、すなわち低
抵抗n型領域を所定のパターンで配置したが、そのよう
な領域を基板下面の反応セルのみに形成してもよいし、
上面および下面の両方の反応セルにそのような領域を形
成してもよい。
【0074】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
上述したように多様な特性を有するためどの物質に対し
ても適用できる手法がなく試行錯誤を繰返しながら進め
られてきた従来の結晶化プロセスの欠点を解決すること
かできる。特に本発明によれば、重力による溶液の対流
の影響を抑制し、結晶化の初期過程における核の形成を
安定して行なわせることができる。また本発明によれ
ば、微結晶の大量生成を抑制または制御することがで
き、X線構造解析を可能にし得る大型の結晶を得ること
ができる。さらに本発明によれば、1つの基板上で微量
な溶液について多数の異なる結晶化のための条件を調製
することができる。これにより、特定の分子について結
晶化のための最適な条件を作り出すことができる。さら
に、本発明によれば、溝部において溶液の対流の影響を
抑制し、結晶の成長を安定して行なわせることができ
る。本発明は、試料が微量であっても、大型の結晶を成
長させるためより適切な条件を短時間のうちに作り出す
ことが可能である。
【0075】本発明は、製薬産業や食品産業等におい
て、有用な物質、特に蛋白質、核酸等の生体高分子の研
究、開発および製造に適用される。本発明によれば、X
線構造解析を可能にする結晶性の良好な結晶を成長させ
ることができる。結晶解析の結果、その分子構造および
活性のメカニズムについて得られる情報は、薬剤の設計
および製造に生かされる。また、本発明は、関心のある
分子の生成または結晶化に適用される。さらに、本発明
は、蛋白質等の生体高分子を用いた電子デバイスの作製
に応用が期待される。また本発明の装置は、生体高分子
等を選択的に吸着および固定化することが可能なため、
バイオセンサ、バイオセンサによる各種生体組織および
生体物質の測定装置への応用等が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従って、基板の表面に結晶核が固定化
され、結晶成長が進んでいく様子を示す模式図である。
【図2】本発明の結晶成長用装置の一具体例を示す模式
図である。
【図3】本発明の装置の一具体例を示す断面図である。
【図4】本発明の装置における第2溶液貯留部および第
3溶液貯留部の具体例を示す断面図である。
【図5】本発明の装置を用いて結晶を成長させる様子を
示す模式図である。
【図6】本発明の装置において基板の両面に形成される
2つの溶液貯留部間でどのように溶液の流れが生じるか
を示す模式図である。
【図7】溶液貯留部における溶液濃度の変化を示す図で
ある。
【図8】本発明の装置に形成される流路の一具体例を示
す模式図である。
【図9】流路を構成する溝の具体例を示す概略断面図で
ある。
【図10】本発明の結晶成長用装置に形成される流路の
もう1つの具体例を示す平面図である。
【図11】図10に示す流路のL−L′断面図である。
【図12】図10に示す流路のX−X′、Y−Y′およ
びZ−Z′断面図である。
【図13】流路を形成するためのプロセスを示す概略断
面図である。
【図14】本発明の装置における第2溶液貯留部の他の
具体例を示す平面図である。
【図15】図14に示す溶液貯留部の概略断面図であ
る。
【図16】図14に示す溶液貯留部の表面電位を示す模
式図である。
【図17】結晶化のための溶液貯留部のさらなる具体例
を示す模式図である。
【図18】結晶化のための溶液貯留部に溶液が保持され
ていく様子を説明するための概略断面図である。
【図19】従来の方法に用いられる装置の一例を示す模
式図である。
【図20】従来の方法に用いられる装置のもう1つの例
を示す模式図である。
【図21】従来の方法に用いられる装置の他の例を示す
模式図である。
【符号の説明】
1 基板 2 結晶核 12a、12b、12c、14a、14b、14c 溶
液セル 16a、16b、16c、16′a、16′b、16′
c 流路 18a、18b、18c 反応セル 20a 反応セル 22a、22b、22c 貫通孔 24 温度測定用電極 26 加熱用電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C07K 1/30 C07K 1/30 C30B 7/00 C30B 7/00 (56)参考文献 特開 平2−18373(JP,A) 特開 平1−111799(JP,A) 特開 平8−294601(JP,A) 特開 平8−34699(JP,A) 特開 平6−116098(JP,A) 特開 平5−319999(JP,A) F.Rosenberger,”IN ORGANIC AND PROTEI N CRYSTAL GROWTH−S IMILARITIES AND DI FFERENCES”,Journal of Crystal Growt h,Vol.76,No.3,1986,p. 618−636 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C30B 1/00 - 35/00 B01D 9/02 C07B 63/00 C07H 21/00 C07K 1/14 C08H 1/00 C12N 9/00 H01L 51/00 CA(STN) JICSTファイル(JOIS)

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶液中に含まれる高分子化合物の結晶を
    成長させるための装置であって、 対向する1対の主表面を有し、かつ前記高分子化合物を
    含む溶液の環境に応じて前記主表面部分の正孔または電
    子の濃度を制御できるよう価電子が制御された基板を備
    え、 前記基板は、 前記1対の主表面の一方に設けられた、結晶成長のため
    に用いられる溶液を保持するための第1溶液貯留部と、 前記1対の主表面の一方に設けられた、前記第1溶液貯
    留部から溶液を排出させて所定の方向に流すための流路
    と、 前記1対の主表面の一方に設けられた、前記流路より送
    られる溶液を受入れるための第2溶液貯留部と、 前記第2溶液貯留部にある溶液を前記1対の主表面の他
    方に導くための貫通孔と、 前記貫通孔を介して送られる溶液を前記1対の主表面の
    他方において受入れるための第3溶液貯留部とを備え、 少なくとも前記第2溶液貯留部および/または前記第3
    溶液貯留部において、前記高分子化合物を含む溶液の環
    境に応じて表面部分の正孔または電子の濃度を制御でき
    るよう価電子が制御されていることを特徴とする、結晶
    成長用装置。
  2. 【請求項2】 前記流路は、前記基板上に形成された幅
    および/または深さの異なる複数の溝から構成されてお
    り、上流から下流にいくに従って、前記溝の幅は広がり
    かつ/または前記溝は深くなっていることを特徴とす
    る、請求項1記載の結晶成長用装置。
  3. 【請求項3】 前記基板は、複数の前記第2溶液貯留部
    および第3溶液貯留部を備え、かつ1つの前記第2溶液
    貯留部と前記第3溶液貯留部とを連絡する前記貫通孔の
    径が、他の前記第2溶液貯留部と前記第3溶液貯留部と
    を連絡する前記貫通孔の径と異なっていることを特徴と
    する、請求項1または2記載の結晶成長用装置。
  4. 【請求項4】 前記基板を加熱するための手段をさらに
    備えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項
    記載の結晶成長用装置。
  5. 【請求項5】 前記第2溶液貯留部に溝または孔が形成
    されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか
    1項記載の結晶成長用装置。
  6. 【請求項6】 前記第2溶液貯留部および/または第3
    溶液貯留部の特定の領域で前記高分子化合物の結晶核の
    形成および結晶の成長が促進され、かつその他の領域で
    前記結晶核の形成が抑制されるよう、前記価電子が制御
    されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか
    1項記載の結晶成長用装置。
  7. 【請求項7】 前記基板が不純物添加された半導体基板
    からなり、前記価電子制御は不純物の濃度および/また
    は種類の制御によりなされていることを特徴とする、請
    求項1〜6のいずれか1項記載の結晶成長用装置。
  8. 【請求項8】 前記半導体基板がシリコン結晶からなる
    ことを特徴とする、請求項7記載の結晶成長用装置。
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