JPH1073741A - 光ファイバー用フェルールの製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】フェルールの端面頂部を滑らかな凸球面に研摩
する仕上げ研摩時間を短縮し、フェルールの生産効率を
向上させる。 【解決手段】光ファイバーを挿通固定する長手方向の軸
孔を有する円筒状体の端面を、上記軸孔から周縁部に向
かって深さが深くなる複数の溝を放射状に設けてなる曲
率半径ｒの略凸球面状に形成したあと、前記軸孔に光フ
ァイバーを挿通固定し、しかるのち、上記略凸球面状を
した端面の頂部を前記曲率半径ｒより大きい曲率半径Ｒ
に研摩して上記頂部と光ファイバーの端面が同一球面と
なるようにして光ファイバー用フェルールを製造する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、光通信などの光信
号処理に用いられる光ファイバーを保持する光ファイバ
ー用フェルールの製造方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、光通信などの光信号処理に用いら
れる光ファイバーコネクタは、図８にその概略図を示す
ように、石英からなるシングルモード光ファイバー１０
を挿通固定したセラミックスからなる光ファイバー用フ
ェルール１１の先端面１２同士を当接させて光接続する
ようになっている。そして、先端面１２間における光損
失は極力低減する必要があることから、低損失接続を実
現する方法として、図７に示すような先端面１２を曲率
半径１０〜２５ｍｍ程度の凸球面状に形成し、その表面
を鏡面研摩した光ファイバー用フェルール１１を使用し
たものがあった。

【０００３】この光ファイバー用フェルール１１は、予
め先端面１２を曲率半径が１０〜２５ｍｍの凸球面状に
形成しておき、軸孔１４に光ファイバー１０を挿入して
先端面１２より若干突出させた状態で接着剤（不図示）
により固着し、光ファイバー１０の突出部分を除去した
のち、先端面１２全体に仕上げ研摩を施してその表面を
鏡面に仕上げることによって製造されていた（特開昭６
３−２０５６１８号）。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところが、図７に示す
ような光ファイバー用フェルール１１では、光ファイバ
ー１０を接着固定したあとの仕上げ研摩に時間がかか
り、作業効率が悪いといった課題があった。

【０００５】即ち、光ファイバー１０を接着固定したフ
ェルール１１の先端面１２に仕上げ研摩を施して光ファ
イバー１０の端面と先端面１２の凸球面とを同一曲率と
なるように仕上げようとすると、先端面１２全体を研摩
しなければならないことから研摩代が多く、しかも、フ
ェルール１１は高硬度を有するセラミックスからなるた
めに、仕上げ研摩時間をこれ以上短くすることは難しい
ものであった。

【０００６】

【課題を解決するための手段】そこで、本発明は上記課
題に鑑み、光ファイバーを挿通固定する長手方向の軸孔
を有する円筒状体の端面を、上記軸孔から周縁部に向か
って深さが深くなる複数の溝を放射状に設けてなる曲率
半径ｒの略凸球面状に形成し、前記軸孔に光ファイバー
を挿通固定したあと、上記略凸球面状をした端面の頂部
を前記曲率半径ｒよりも大きい曲率半径Ｒに研摩して頂
部と光ファイバーの端面とが同一曲率となるようにして
光ファイバー用フェルールを製造したものである。

【０００７】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を説明す
る。本発明に係る光ファイバー用フェルール（以下、フ
ェルールと略称する）は、まず、フェルールを構成する
各種セラミック原料にバインダーと溶媒を添加混合して
造粒体あるいは泥漿を形成し、ラバープレス成形法、射
出成形法、射出成形法などの通常のセラミック成形法に
より軸心に長手方向の軸孔を有する円筒状の成形体を製
作する。なお、上記成形体は金型プレス成形法やラバー
プレス成形法でもって円柱状の成形体に形成したあと、
軸心に両端面まで貫通する軸孔を設けても良い。

【０００８】そして、得られた成形体を各種セラミック
原料を焼結させるのに必要な温度にて焼成することで、
図２に示すような軸心に光ファイバーと略同径の軸孔４
を有する円筒状体７を製作する。

【０００９】次に、研摩装置を用いて図４（ａ）、
（ｂ）に示すように、上記円筒状体７の一方端を、軸孔
４から周縁部に向かって深さが深くなる複数の溝５を放
射状に設けてなる略凸球面状に形成する。

【００１０】具体的には図３に示すように外周面に曲率
半径１０〜２５ｍｍの凹部２１を有する円筒状をした研
摩砥石２０を２０００〜２００００ｒｐｍ程度の速度で
回転させるとともに、０．１μｍ以上の振幅巾で振動を
与え、上記研摩砥石２０に対して垂直にフェルール１の
一方端を当接させ、研摩砥石２０に対し回転数比で１／
２〜１／５０の速度で回転させることにより、フェルー
ル１の端面２は常時砥石２０と接触せずにバタ付きなが
ら砥石２０と摺動し、軸孔４を中心にして円筒状体１の
端面２が研摩され、図４（ａ）、（ｂ）に示すような軸
孔４から周縁部に向かって深さが深くなる複数の溝５を
放射状に設けてなる曲率半径ｒの略凸球面状に形成する
ことができる。なお、上記曲率半径ｒとは溝５が連続す
る稜線６を円の一曲面とした時の曲率半径のことであ
り、この曲率半径ｒは前記研摩砥石２０の曲率半径より
小さくなる。

【００１１】このように、フェルール１の端面２を軸孔
４から周縁部に向かって深さが深くなる複数の溝５を放
射状に設けてなる略凸球面状とすることで、後述する光
ファイバー接着後の端面２の頂部３における仕上げ研摩
時には、各溝５が連続する稜線６のみを研摩すれば良い
ために研摩代が少なく、仕上げ研摩時間を大幅に短縮す
ることができる。

【００１２】しかも、図３に示す方法を用いることによ
りフェルール１の端面２に短時間で複数の溝５を放射状
に設けてなる略凸球面状に形成することができるため、
フェルール１の生産効率を高めることができる。

【００１３】ただし、各溝５が連続する稜線６から溝５
の底面までの深さが最も深くなる周縁部の深さＳ（以
下、溝深さＳという）は０．０１〜５．０μｍとなるよ
うにすることが好ましい。

【００１４】これは溝深さＳが０．０１μｍより浅い時
にはフェルール１の寸法上、端面２の頂部３に形成され
る溝５の深さが浅すぎたり、あるいは頂部３において溝
５を形成することができないために、端面２の頂部３に
仕上げ研摩を施すと研摩代が多く、研摩時間を短縮する
効果が小さいからであり、逆に５．０μｍより深くなる
と、先端面２の頂部３に形成される溝５の深さが深くな
りすぎることから、先端面２の頂部３に仕上げ研摩を施
したとしても頂部３の所望の領域に溝５が残ってしま
い、光コネクタを構成するためにフェルール１の端面２
同士を当接させると光ファイバー間に隙間ができ、良好
な光接続を行うことができなくなる恐れがあるからであ
る。

【００１５】なお、溝５の数や溝深さＳは研摩砥石２０
の回転速度や振幅巾、あるいは、フェルール１の回転比
を適宜調整することで制御することができる。

【００１６】次に、図５に示すように上記フェルール１
の他方端側より軸孔４に光ファイバー１０を挿入して光
ファイバー１０の端面１０ａがフェルール１の頂部３と
同一面（稜線６と同一面）上に位置するように配置した
あと接着剤（不図示）にて軸孔４内に接着固定する。な
お、光ファイバー１０の端面１０ａはフェルール１の頂
部３より若干突出させて配置しても良い。

【００１７】しかるのち、光ファイバー１０を固定した
フェルール１の略凸球面状をした端面２に研摩加工を施
すことにより図１（ａ）、（ｂ）に示すような頂部３を
滑らかな凸球面に形成する。

【００１８】具体的には図６に示すように、ゴム板２５
に研摩砥粒２６を固着した研摩シート２７を貼り付けた
研摩部材２８に対して垂直にフェルール１の略凸球面状
をした端面２を押圧し、フェルール１を８の字に回転さ
せることで、上記略凸球面状の曲率半径ｒより大きい曲
率半径Ｒに研摩し、光ファイバー１０の端面１０ａとフ
ェルール１の頂部３とが同一の曲率をもった凸球面とな
るように形成する。ここでフェルール１の頂部３におけ
る曲率半径Ｒはゴム板２５の硬度によって決定され、例
えば、頂部３の曲率半径Ｒを１０〜２５ｍｍとする場
合、ゴム硬度が８０〜９０のゴム板２５を使用すること
で研摩することができる。

【００１９】ただし、頂部３の滑らかな凸球面は少なく
とも軸孔４を中心に直径２００μｍ以上の領域において
設けてあることが好ましい。

【００２０】この理由は、光ファイバー１０の直径が１
２５μｍ程度であるために、滑らかな凸球面をした頂部
３の領域が直径２００μｍの領域より小さいと、フェル
ール１の端面２同士を当接させた時に光ファイバー１０
間に隙間ができ、光損失が大きくなる恐れがあるからで
ある。その為、頂部３を直径２００μｍ以上の領域にお
いて溝５のない滑らかな凸球面とすることにより光ファ
イバー１０間に隙間を生じることなく当接させることが
でき、確実な光接続を行うことができる。

【００２１】このように、本発明は予めフェルール１の
一方端を複数の溝５を放射状に設けてなる略凸球面状に
形成したことから、光ファイバー１０を接着固定したあ
との仕上げ研摩では、溝５が連続する稜線６のみを研摩
すれば良く、仕上げ研摩時間を大幅に短縮することがで
き、さらにはフェルール１の生産効率を向上させること
ができる。

【００２２】（実施例）仕上げ研摩前の本発明に係る光
ファイバー用フェルール１と従来の光ファイバー用フェ
ルール１１をそれぞれ各２０個ずつ用意し、各フェルー
ル１、１１に光ファイバー１０を接着固定したあと、端
面２、１２の頂部３、１３に仕上げ研摩加工を施した時
の研摩時間について実験を行った。

【００２３】本試験ではいずれのフェルール１、１１も
外径が２．５ｍｍのジルコニアセラミックスからなる円
筒状体とし、本発明品においては各溝５の数と溝深さＳ
を異ならせた略凸球面をしたものをそれぞれ用意し、ま
た、従来品には先端面１２を曲率半径２０ｍｍ程度の凸
球面としたものを用意した。

【００２４】そして、図６に示すようにゴム硬度が８５
のゴム板２５に５μｍ程度のアルミナ砥粒２６を固着し
てなる研摩シート２７を貼り付けた研摩部材２８に対し
て垂直に各フェルール１、１１の端面２、１２を押圧
し、８の字研摩を行うことにより端面２、１２の頂部３
を滑らかな凸球面に形成し、該頂部３の滑らかな凸球面
が軸孔４、１４を中心に直径２００μｍ以上の領域にお
いて得られるまでの時間を測定し、各々２０個のフェル
ール１、１１の平均値を測定した。

【００２５】それぞれのフェルール１、１１の仕様およ
び結果は表１に示す通りである。

【００２６】

【表１】

【００２７】この結果、従来品のフェルール１１では、
本発明のように端面１２に溝がなく、端面１２全面を若
干研摩しなければならないことから、仕上げ研摩を終了
するまでに平均４２秒を要した。

【００２８】これに対し、本発明品のフェルール１は、
平均３０秒以下で仕上げ研摩をすることができ、特に、
溝５の数を１０としたものでは平均２５秒と従来のフェ
ルール１１に対し３８％もの大幅な時間削減ができた。

【００２９】

【発明の効果】以上のように、本発明によれば、光ファ
イバーを挿通固定する長手方向の軸孔を有する円筒状体
の端面を、上記軸孔から周縁部に向かって深さが深くな
る複数の溝を放射状に設けてなる曲率半径ｒの略凸球面
状に形成し、前記軸孔に光ファイバーを挿通固定したあ
と、上記略凸球面状をした端面の頂部を前記曲率半径ｒ
よりも大きい曲率半径Ｒに研摩して上記頂部と光ファイ
バーの端面とが同一曲率となるようにして光ファイバー
用フェルールを製造したことから、フェルール端面にお
ける仕上げ研摩時間を短縮することができ、フェルール
の生産効率を大幅に向上させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る光ファイバー用フェルールを示す
図であり、（ａ）は斜視図、（ｂ）は正面図、（ｃ）は
（ｂ）のＸ−Ｘ線断面図である。

【図２】製造工程中の本発明に係るフェルールを示す斜
視図である。

【図３】フェルールの端面を略凸球面状に形成する状態
を示す概略図である。

【図４】端面を略凸球面状とした製造工程中の本発明に
係るフェルールを示す図であり、（ａ）は正面図、
（ｂ）は（ａ）のＹ−Ｙ線断面図である。

【図５】図４のフェルールに光ファイバーを固着した状
態を示す一部を破断した斜視図である。

【図６】フェルールの頂部を滑らかな凸球面とする状態
を示す概略図である。

【図７】従来の光ファイバー用フェルールを示す斜視図
である。

【図８】一般的な光ファイバーコネクタの接合部を示す
概略図である。

【符号の説明】

１・・・光ファイバー用フェルール、 ２・・・端面、
３・・・頂部、４・・・軸孔、 ５・・・溝、 ６・
・・稜線、１０・・・光ファイバー

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】光ファイバーを挿通固定する長手方向の軸
   孔を有する円筒状体の端面を、上記軸孔から周縁部に向
   かって深さが深くなる複数の溝を放射状に設けてなる曲
   率半径ｒの略凸球面状に形成し、前記軸孔に光ファイバ
   ーを挿通固定したあと、上記略凸球面状をした端面の頂
   部を前記曲率半径ｒよりも大きい曲率半径Ｒに研摩して
   頂部と光ファイバーの端面とが同一曲率となるようにす
   ることを特徴とする光ファイバー用フェルールの製造方
   法。