JPH1072666A - アパタイト薄膜の成膜方法 - Google Patents

アパタイト薄膜の成膜方法

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JPH1072666A
JPH1072666A JP8248728A JP24872896A JPH1072666A JP H1072666 A JPH1072666 A JP H1072666A JP 8248728 A JP8248728 A JP 8248728A JP 24872896 A JP24872896 A JP 24872896A JP H1072666 A JPH1072666 A JP H1072666A
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JP
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film
substrate
coating
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apatite
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JP8248728A
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English (en)
Inventor
Takashi Ebisawa
孝 海老沢
Hideaki Ito
秀明 伊藤
Tatsuaki Sakakawa
竜昭 坂川
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Japan Steel Works Ltd
Original Assignee
Japan Steel Works Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生体材料基材に結晶性のアパタイト膜を
効率よく成膜する。 【解決手段】 生体材料基材に、ガス圧力1×10-3
orr以上5×10-2Torr未満、基板温度250℃
以上、膜厚0.3μm以上50μm以下でスパッタリン
グ法によりアパタイト薄膜を成膜する。 【効果】 比較的温度の低い基材に対しても結晶性
の良好なアパタイト膜を効率的に成膜して被覆できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、人工関節や人工歯
根、人工血管等の生体材料の基材に、生体との癒着性を
向上させるために被覆するハイドロキシアパタイト薄膜
の成膜方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】人工関節や人工歯根、人工血管等の生体
材料基材は、生体内に配置した際に、生体に癒着してよ
り良い生体適合性を得るために、予めその表面にハイド
ロキシアパタイト(Hydroxyapatite;H
Ap)膜を成膜して被覆する方法が採られている。この
ハイドロキシアパタイト膜の成膜方法としては、材料粉
末を高温プラズマ中で溶融し不活性または反応性ガスと
共に吹き付けて膜にするプラズマ溶射法や溶液中で化学
反応を利用して析出させるバイオミメティック法、ゾル
・ゲル法などが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、プラズマ溶射
法で被覆した場合は、厚い膜が短時間にできるというメ
リットはあるものの、膜が粗面になったりポーラスにな
るばかりか、高温を伴うため基材への悪影響があり、微
細な構造部への被覆や熱に弱い材料への被覆が困難であ
るという欠点がある。また、バイオミメティック法やゾ
ル・ゲル法などでは、沈殿した堆積物を膜とするため沈
殿後に高温の熱処理が必要なことや膜の密着性が得られ
ないという問題がある。
【0004】本発明は、上記事情を背景としてなされた
ものであり、アパタイト膜の成膜方法としてスパッタリ
ング法を採用することにより、基材への熱的影響を少な
くし、さらに適切なスパッタリング条件を規定すること
により、成膜速度が遅いなどのスパッタリング法独特の
問題を解消して、目的組成の膜を再現性良く得ることが
でき、さらに基材への熱影響を小さくし、かつ良好な結
晶膜を効率的に生成することができるアパタイト薄膜の
成膜方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は上記事情を背景
としてなされたものであり、スパッタリング法において
ガス圧力、基板温度、膜厚、その他に添加窒素ガス分圧
を変えることで膜の構造、組成を制御し、さらに所望に
よりポストアニールにより結晶性の改善を行うものであ
る。また成膜速度を改善するためにハイドロキシアパタ
イトターゲットの密度を調整して破損しにくくするとと
もに、組成の異なるターゲットにより、できた膜の組成
調整を行うものである。
【0006】すなわち、本発明のアパタイト薄膜の成膜
方法のうち第1の発明は、生体材料基材にスパッタリン
グ法によりアパタイト薄膜を成膜するに当たり、成膜中
のガス圧力を1×10-3Torr以上5×10-2Tor
r未満、基板温度を250℃以上とし、かつ成膜する膜
厚を0.3μm以上50μm以下とすることを特徴とす
る。
【0007】第2の発明のアパタイト薄膜の成膜方法
は、第1の発明において、スパッタリングに際し調整さ
れた不活性ガス雰囲気中に、窒素(N2)ガスを圧力比
で30%から70%の範囲内で含むことを特徴とする。
第3の発明のアパタイト薄膜の成膜方法は、第1または
第2の発明において、スパッタリング用のターゲットに
相対密度が55%〜80%の焼結体を使用することを特
徴とする。
【0008】第4の発明のアパタイト薄膜の成膜方法
は、第1〜第3の発明において、スパッタリング用のタ
ーゲットにCa227ターゲットを使用するととも
に、成膜中のガス圧力を3×10-3Torr以上5×1
-2Torr未満、基板温度200℃以上にすることを
特徴とする。第5の発明のアパタイト薄膜の成膜方法
は、成膜後の膜の結晶性を向上させるために行う熱処理
に際し、熱処理前のアパタイト薄膜の結晶構造とCa2
27ターゲットの結晶構造を制御することにより、熱
処理後のアパタイト薄膜の結晶構造を制御することを特
徴とする。
【0009】
【発明の実施形態】本発明は、生体基材へのアパタイト
薄膜の成膜を目的としており、生体基材である限りは、
その用途や使用場所、材質は限定されない。特に本発明
は、基材への熱影響を小さくしてより低い温度で成膜を
行えるので、基材における材質の制約が小さくなり、従
来法では困難であるとされていた、熱に弱い合成樹脂等
の材料への成膜が可能になる。
【0010】スパッタリング時には、ガス圧力の範囲調
整は必須であり、このガス圧力は成膜速度や膜質に影響
する。スパッタリング法では、ターゲットから飛び出し
た原子は基材表面に到達するまでにガス分子と衝突す
る。従って、ガス圧力が高い場合、衝突確率が増加し基
板に到達する原子数が減少(スパッタリング原子の平均
自由行程が減少)して成膜速度の低下を招く。またスパ
ッタリングガス分子は成膜中の膜表面に吸着し膜内部に
取り込まれて膜質を悪化させる原因となることがある。
特に反応性の高いガスを用いるとこの傾向が顕著であ
る。これらの点から良質のアパタイト薄膜を効率的に形
成するためには、ガス圧を1×10-3Torr以上5×
10-2Torr未満とする。なお、同様の理由で3×1
-3Torr以上3×10-2以下とするのが望ましい。
特にCa227ターゲットを用いた場合は、圧力が高
いと結晶性が悪化するので、特に3×10-2Torr以
下とするのが望ましい。
【0011】また、スパッタリングの際の雰囲気を構成
するガスの成分としてはAr等の不活性ガスを用いるの
が望ましく、これに、上記したように窒素ガスを適量含
むのが望ましい。また、ガス中には不活性ガス以外に酸
素や水蒸気等のその他の少量のガスを含むものであって
も良い。上記した窒素ガスを圧力比で30%以上含むこ
とにより通常アモルファスになりやすかった低い基板温
度でも癒着性に優れた良質の結晶膜が得られ、これ未満
ではアモルファス膜になりやすい。一方、窒素ガスの圧
力比が増えて、70%を越えると、成膜速度が低下する
ため、雰囲気中の窒素ガスの圧力比を30〜70%とす
るのが望ましい。
【0012】なお、スパッタリングガス中に窒素や酸素
などのガスを入れると、ターゲット材料とガスとの反応
により化合物膜ができたり、酸化物では欠損した酸素の
補給などの効果がある。また反応性ガスの膜面への吸着
により結晶成長時の表面エネルギーが変わり、結晶配向
性など膜構造が変化する。従ってこの現象をうまく利用
すれば、膜構造をコントロールすることができる。また
スパッタリング時のスパッタリング原子のエネルギーコ
ントロールもでき、同様に膜質や膜構造の制御に結びつ
けることができる。
【0013】スパッタリングに使用するターゲットは、
目的とする薄膜と同成分のアパタイトや、構成元素が異
なる材質のものを使用することができる。目的薄膜と異
なる成分のターゲットであっても、上記したようにガス
の圧力や成分調整や複数種のターゲットの使用等によっ
てスパッタリング膜の成分を制御することができる。ま
た、スパッタリング後のアニールによる構造変化を予定
して、目的薄膜と異なる構造のスパッタリング薄膜を形
成することもでき、さらに、上記ガス圧力や成分調整を
考慮してターゲットの構造を定めることができる。な
お、ターゲットの材質としては、アパタイト膜とは成分
が異なるものの高速の成膜が可能であるCa227
望ましく、このターゲットを用いてアパタイトからなる
スパッタリング膜を形成することができる。
【0014】また、ターゲットとしては、適度な相対密
度を有する焼結体が望ましい。アパタイトは熱伝導性が
悪く、スパッタリング法のようにターゲット表面の温度
が上がり、裏側が冷却されているような場合、ターゲッ
トが熱応力により破損しやすくなる。これを避けるため
に熱応力を低減すればよいが、そのためにはスパッタリ
ング時の出力を低くしなければならず成膜速度が遅くな
るため有効な方法ではない。なお、特にターゲットの焼
結密度が高い場合は、緻密な組織になるので熱応力の影
響を受けやすく、一方、ターゲット密度を低くすると応
力がある程度緩和され、ターゲットの破損を抑えること
ができる。またターゲットの組織を変えれば材料の物性
が変わり、熱伝導性や機械的特性の改善につながるため
ターゲットの破損を防止できる。この点から上述したC
227が優れている。なお、ターゲットの破損がな
くなれば高出力でのスパッタリングが可能になるので、
高速成膜ができるようになる。これらの点から焼結体か
らなるターゲットの相対密度は80%以下とするのが望
ましい。なお、焼結体の製造上の制約から相対密度の下
限を55%とするのが望ましい。
【0015】また、スパッタリング時の基板の温度は膜
の結晶性に影響する。アパタイト膜では、基板温度が低
い場合はできた膜がアモルファスになるが、ある温度以
上では結晶性の膜になり、生体との癒着性を良好にした
り体液による膜の溶出を抑制することができる。また基
板温度が高い場合には吸着ガスの脱離が多くなり、膜へ
のガス吸着を抑制する効果もあるので、膜質の改善にも
寄与する。これらの点からは基板の温度が高い方が良い
ことになるが、その一方で、基板への熱影響が大きくな
り、熱に弱い材質の基板への適用が困難になる。本発明
では、適当なガス圧の規定や後述する膜厚の制御により
良質の膜が得られること、またこのため後のアニールに
より良質な結晶膜が得られやすいことから、基板の加熱
温度を低くしても結晶膜が得られることになる。これら
の点から、基板の加熱温度は250℃以上とすればよ
い。但し、ターゲットにCa227を使用する場合に
は、より低い基板温度で結晶膜が得られるため、基板の
加熱温度は200℃以上であればよい。
【0016】基板上に形成するアパタイト膜の膜厚は膜
の結晶構造に影響する。膜が薄い場合には、下地の影響
により歪みを持ったり、下地との反応層ができたり、結
晶粒が微細であったりして材料本来の結晶構造や特性で
はない場合が多い。従って、本来の性質を得るために
は、ある程度の膜厚が必要であり、この観点から膜厚は
0.3μm以上とする。一方、膜厚が厚すぎると、膜の
剥離や表面の粗面化の問題が生じるため、膜厚の上限を
50μmとする。
【0017】スパッタリングによる成膜後は、熱処理を
することにより、結晶性をより改善することができる。
具体的には、500〜1300℃の温度で加熱すること
により行う。この加熱は短時間でも効果があり、例えば
10分以上の加熱で効果が見られる。なお、この熱処理
を大気中や酸素、水蒸気中で行えば酸素欠損の修復や水
分の補給もすることができる。このときに、ターゲット
(特にCa227)の結晶構造および成膜時(熱処理
前)の結晶構造を制御しておくことにより、熱処理によ
って所望の結晶構造に制御することも可能となる。
【0018】本発明によれば、スパッタリング法で問題
となる組成のずれや構造の制御が容易にできるばかりで
なく、成膜速度を従来の約10倍にすることができる。
また従来熱に弱いため成膜がほとんどなされていなかっ
た樹脂などへも成膜することができ、人工血管等の生体
材料製品への応用拡大を図ることが可能となる。
【0019】
【実施例】
(実施例1)図1に示したスパッタリング装置を用意
し、HApターゲット1に対向するように試料支持台2
上に基板3を配置し、HAp膜をスパッタリング成膜し
た。なお、図中4は別ターゲット電極(陰極)、5は電
源部、6はバラトロン真空計、7はガス導入口、8はN
2リーク口、9はシャッター、10は圧力コントロール
バルブ、11はターボポンプ、12はロータリーポンプ
である。このときガスの圧力、基板温度、膜厚をそれぞ
れ変えて成膜速度と膜構造の変化を調べた。
【0020】先ず、ガス圧力による成膜速度の変化を調
べるため、装置内に導入するガス圧力を5×10-3、7
×10-3、1×10-2、2×10-2、3×10-2、5×
10-2Torrと変化させ成膜した。このときRF出力
75W、成膜時間30分、基板温度を常温で一定とし
た。この結果を図2に示す。図から明らかなように、1
〜2×10-2Torrの間で最も成膜速度が速いことが
わかった。しかし、圧力が低い場合は高い場合に比べ成
膜速度の減少がそれほどでないことがわかる。
【0021】次に、ガス圧力を1.5×10-2Tor
r、RF出力75W、成膜時間30分一定とし、基板温
度を常温、200℃、250℃、300℃と変化させて
成膜し回折強度を測定した。この結果、常温の基板では
アモルファス膜が得られ、また図3に示すように250
℃以上で配向性が見られ、結晶性の膜(膜厚1μm)が
得られることがわかった。
【0022】さらに、ガス圧力を1.5×10-2Tor
r、基板温度300℃、RF出力75Wと一定にし、成
膜時間を変えることで膜厚を0.21μm、0.33μ
m、0.56μm、1.13μmと変化させた膜を成膜
し、膜厚と膜の構造の関係を調べた。また、その他に膜
厚が50μmと60μmになるように長時間の成膜を行
い回折強度を測定した。この結果、図4に示すように膜
厚が約0.5μm以上の厚さとしたもので結晶性のよい
膜ができることがわかった。また長時間の成膜を行った
もののうち50μmのものでは、同様の傾向を示した
が、60μmを目標に成膜したものは、膜の残留応力に
より剥離した。以上の結果より、ガス圧力、基板温度、
膜厚を適当に制御することにより結晶性の膜を効率よく
製造できることが明らかとなった。
【0023】(実施例2)次に、アパタイトの成膜条件
をガス圧力1.5×10-2Torr、基板温度240
℃、膜厚1μm、RF出力75Wの一定とし、Ar雰囲
気ガス中に窒素ガスを流量比で0.5%、1%、5%、
10%、20%、40%、60%、80%導入した場合
の結晶構造と成膜速度の変化を調べた。この結果、窒素
ガスが0.5%〜20%に至るまでは変化はなかった
が、40%で結晶性の膜が得られた。図5には40%と
それ以下の窒素分圧での結晶構造の違いを示したが、図
示しないものの窒素流量比40%以上で結晶性の膜が得
られていた。しかし、同時に、図6に示すように窒素ガ
スの導入量が増えるとスパッタリング時の成膜速度も遅
くなった。上記の結果より、窒素ガスを適量導入するこ
とでアパタイト膜の結晶化を促進させることがわかっ
た。窒素ガス導入量は流量比で20%を越えることが必
要と考えられるが、その一方で窒素ガス導入により成膜
速度が遅くなるので、導入量は結晶構造と成膜速度の関
係を見極めたうえで決定することが望ましい。即ち、窒
素ガス導入量は流量比で30〜70%の範囲内が望まし
い。
【0024】(実施例3)アパタイトは熱伝導性が悪く
機械的強度が弱いので、スパッタリング成膜時に発生す
る熱応力でターゲットが破損しやすい。そこで応力を緩
和させターゲットの破損を防止するため、アパタイトタ
ーゲットにおいて焼結時の相対密度を98%、90%、
80%、70%、65%、60%、55%としたものを
作製し、スパッタリング出力を上げた場合の耐久性を調
査した。なお密度50%以下の焼結体ターゲットは作製
できなかった。テスト条件は、ガス圧力が1.5×10
-2TorrでRF出力を50〜500Wの間で変化させ
た。この時各出力で5分以上保持し、破損の有無を目視
により調べた。この結果、表1に示すように焼結時の相
対密度98%、90%のターゲットは約100Wの出力
で破損した。一方、密度80%以下のターゲットは出力
250Wまで耐え、300Wで破損した。従って、アパ
タイトターゲットの焼結時の相対密度を80%から55
%の範囲内にすれば、スパッタリング出力を250Wま
で上げることが可能になる。
【0025】
【表1】
【0026】(実施例4)ターゲットの組成による耐久
性を調べるため、ターゲットをアパタイトと同じリン酸
カルシウム系化合物であるCa227(焼結密度66
%)に変え、実施例3と同様にターゲットの耐久性試験
を行った。この結果、出力400W以上でターゲットは
赤熱したが、600Wまで上げても破損は起こらなかっ
た。ターゲットが赤熱しない350Wの時の成膜速度は
図7から約5.2Å/sでアパタイトの約10倍であっ
た。ターゲットが赤熱した場合、ターゲットと冷却用の
バッキングプレートとのボンディング加工部が溶解して
破損する恐れがあるので、赤熱状態で長時間使用するの
は避けた方が良い。従って400W以下で使用すること
が望ましいが、長時間使用しなければ400W以上で使
用しても構わない。以上より、Ca227の使用によ
り高速の成膜が可能になる。
【0027】(実施例5)成膜速度の速いCa227
ターゲットの成膜条件を調べるため、ガス圧力を3×1
-3、7×10-3、1.5×10-2、5×10-2Tor
r、基板温度を150、200、250、300℃と変
化させた。尚、膜厚、スパッタリング出力はそれぞれ1
μm、350W一定で、ガス圧力を変える場合は基板温
度を300℃、基板温度を変える場合はガス圧力を1.
5×10-2Torr一定とした。
【0028】ガス圧力を変えた場合の成膜速度の変化を
図8に示した。アパタイトと同様に1.5×10-2To
rrを越える圧力で成膜速度は遅くなるものの、図9に
示すように膜の結晶性は維持されている。膜の結晶性は
ガス圧力が5×10-2Torrに達すると悪化する。た
だし、図には示していないが、それ以下の圧力、例えば
3×10-2Torrの圧力でも結晶構造は維持されてい
ることが確認されている。また膜の組成は、図10のよ
うにガス圧力が高いほどリン(P)の濃度が減少してア
パタイトの組成に近づくことがわかった。基板温度を変
えた場合は、図11に示すように200℃から結晶構造
が表れアパタイトより結晶化温度が低いことがわかる。
一方、この圧力ではアパタイトに比べPの濃度が高いに
もかかわらず結晶構造はアパタイトと同じ構造になるこ
ともわかった。上記の結果より、Ca227ターゲッ
トは組成が異なるにもかかわらずできた膜はアパタイト
であり、成膜速度がアパタイトより約10倍速いのでア
パタイトターゲットを使用するより有利である。またこ
の時の成膜条件は、基板温度を200℃以上、ガス圧力
を3×10-3から3×10-2Torrの範囲に設定する
ことが望ましい。ガス圧力が3×10-3Torr以上な
のは、RFスパッタリングの場合これ以下の圧力だとプ
ラズマが不安定で、安定な成膜速度が得られないからで
ある。
【0029】(実施例6)アパタイト膜として、ガス圧
力1.5×10-2Torr、RF出力75W、膜厚1μ
m、常温でアモルファス膜を成膜した後、大気中で、4
00、500、600℃に加熱温度を変えて熱処理を1
時間施し、結晶構造の変化を調査した。この結果、図1
2に示すように500℃以上の温度で熱処理した場合に
アモルファス膜は結晶化しており、熱処理が有効に作用
している。
【0030】(実施例7)次に基板温度を300℃に
し、他の条件を実施例6と同条件で成膜した結晶膜を5
00℃一定の温度で、処理時間を10分、60分、12
0分と変えて熱処理した。この結果、図13に示すよう
に10分程度の熱処理でもX線回折強度は急激に強くな
り結晶性が改善されることがわかる。またこの場合膜は
(002)面に強く配向することがわかった。また、基
板を300℃に加熱したこの実施例のものは、常温で成
膜した図12のものに比べて、配向が強く現れており、
成膜時の基板温度を変えることで熱処理後の膜の結晶配
向性を制御できることがわかる。
【0031】(実施例8)更に、六方晶系のCa22
7組成の化合物には1200℃以上の高温でできるα相
(Orthorhombic)とそれ以下の温度ででき
るβ相(Tetragonal)がある。そこでターゲ
ットの結晶構造の違いが、できた膜の構造に影響するか
を調査した。成膜時の基板温度が高い場合にはできた膜
はすべて同じ構造になったので、ここでは実施例6と同
様にアモルファス膜を500℃で熱処理して構造変化を
調べた。この結果、図14に示すように熱処理後の膜は
Ca227の構造ではなく、アパタイトの構造を持っ
た膜になった。一方、α構造のターゲットから成膜した
膜は(002)や(112)面の強度が比較的強くなる
が、β構造のターゲットから成膜した膜は(211)面
の強度が比較的強い通常のアパタイト粉末の回折パター
ンと同様になった。従って、ターゲット構造を変えた場
合にも成膜後の膜の構造を制御できることがわかった。
【0032】
【発明の効果】すなわち、本発明によれば、スパッタリ
ング成膜法により低温でも結晶性のアパタイト膜がで
き、熱に弱い基材への成膜ができるようになるととも
に、成膜速度も従来よりも大幅に大きく(例えば約10
倍)にすることができる。また、成膜後に熱処理を組み
合わせることにより、結晶性を制御したアパタイト膜の
生成が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に用いたRFスパッタリング装置の概
略図である。
【図2】 Arガス圧力とアパタイトの成膜速度の関係
を示した図である。
【図3】 基板温度とアパタイト膜の結晶構造の関係を
示した図である。
【図4】 膜厚とアパタイト膜の結晶構造の関係を示し
た図である。
【図5】 Arガス中に導入した窒素ガスの流量比とア
パタイトの結晶構造の関係を示した図である。
【図6】 窒素流量比とアパタイトの成膜速度の関係を
示した図である。
【図7】 RF出力とアパタイトおよびCa227
成膜速度の関係を示した図である。
【図8】 Arガス圧力とCa227膜の成膜速度を
示した図である。
【図9】 Arガス圧力とCa227膜の構造の関係
を示した図である。
【図10】 Arガス圧力とCa227膜の組成の関
係を示した図である。
【図11】 基板温度とCa227膜の結晶構造の関
係を示した図である。
【図12】 アパタイトアモルファス膜の成膜後の熱処
理温度と結晶構造の関係を示した図である。
【図13】 300℃で成膜したアパタイト結晶膜を5
00℃で各時間熱処理した場合の熱処理時間と結晶構造
の関係を示した図である。
【図14】 αおよびβ構造のCa227ターゲット
を用いて成膜したアモルファス膜を500℃で1時間熱
処理した場合の各膜の構造を示した図である。
【符号の説明】
1 HApターゲット 3 基材 4 電極 5 電源部
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C01B 25/32 C01B 25/32 P C23C 14/58 C23C 14/58 A

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 生体材料基材にスパッタリング法により
    アパタイト薄膜を成膜するに当たり、成膜中のガス圧力
    を1×10-3Torr以上5×10-2Torr未満、基
    板温度を250℃以上とし、かつ成膜する膜厚を0.3
    μm以上50μm以下とすることを特徴とするアパタイ
    ト薄膜の成膜方法
  2. 【請求項2】 スパッタリングに際し調整された不活性
    ガス雰囲気中に、窒素(N2)ガスを圧力比で30%か
    ら70%の範囲内で含むことを特徴とする請求項1記載
    のアパタイト薄膜の成膜方法
  3. 【請求項3】 スパッタリング用のターゲットに相対密
    度が55%〜80%の焼結体を使用することを特徴とす
    る請求項1または2に記載のアパタイト薄膜の成膜方法
  4. 【請求項4】 スパッタリング用のターゲットにCa2
    27ターゲットを使用するとともに、成膜中のガス圧
    力を3×10-3Torr以上5×10-2Torr未満、
    基板温度200℃以上にすることを特徴とする請求項1
    〜3のいずれかに記載のアパタイト薄膜の成膜方法
  5. 【請求項5】 成膜後の膜の結晶性を向上させるために
    行う熱処理に際し、熱処理前のアパタイト薄膜の結晶構
    造とCa227ターゲットの結晶構造を制御すること
    により、熱処理後のアパタイト薄膜の結晶構造を制御す
    ることを特徴とするアパタイト薄膜の成膜方法
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