JPH1072493A - 蛋白質及びその製造方法 - Google Patents

蛋白質及びその製造方法

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JPH1072493A
JPH1072493A JP8266789A JP26678996A JPH1072493A JP H1072493 A JPH1072493 A JP H1072493A JP 8266789 A JP8266789 A JP 8266789A JP 26678996 A JP26678996 A JP 26678996A JP H1072493 A JPH1072493 A JP H1072493A
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泰幸 瀬戸
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彰 木村
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 細胞、特に上皮細胞を培養容器に効率よく接
着させ、増殖させることができ、培養用基材等として非
常に有用な蛋白質及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 ラクトバチルス属に属する菌に由来し、
細胞接着活性を有する蛋白質。ラクトバチルス属に属す
る菌からアルカリ金属塩又は界面活性剤を用いて菌体表
層蛋白質を抽出することを特徴とする前記蛋白質の製造
方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な蛋白質及び
その製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、ラ
クトバチルス属に属する菌に由来し、上皮細胞接着活性
を有する新規な蛋白質及びラクトバチルス属に属する菌
から菌体表層蛋白質を抽出することを特徴とする当該蛋
白質の製造方法に関する。本発明の蛋白質は、上皮細胞
を培養容器に効率よく接着させ、増殖させるための培養
用基材等として非常に有用である。
【0002】
【従来の技術】現在、培養細胞は生物学的、医学的研究
に幅広く用いられている。細胞培養を行う際、特に、新
規な細胞株を樹立する場合や凍結保存した細胞を新たに
培養する場合等には、細胞の培養容器への接着性が重要
となる。中でも、上皮細胞は、培養容器の表面に接着し
て初めて増殖することのできる付着依存性(anchorage-
dependent)の細胞であるため、通常の培養容器を用い
た場合には、細胞の接着性が低く、細胞の増殖が遅れ、
培養が効率的に行われないことが知られている。従っ
て、従来より、細胞、特に上皮細胞の培養容器への接着
性を向上させるため、動物組織に由来するコラーゲンや
ゼラチン等の細胞接着性蛋白質を培養容器の表面にコー
ティングすることが一般的に行われており、コーティン
グを施された容器が市販されている。尚、コラーゲン
は、動物の結合組織に含まれ、上皮細胞と結合組織とを
接着させる役割を持つ細胞接着性の蛋白質であり、I型
〜V型等のいくつかのタイプに分かれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、現在のとこ
ろ、コラーゲンには遺伝子工学的手法等を利用した大量
調製方法がなく、入手が比較的困難な動物組織から分離
精製しなければならず、その調製は手間、コスト面とも
に負担が大きい。また、コラーゲンの市販品は非常に高
価であり、日常的に細胞培養に用いることは一般的では
ない。他の細胞接着性蛋白質としては、ビトロネクチ
ン、ラミニン、フィブロネクチン等が知られているが、
いずれも動物組織に由来するものであり、コラーゲン以
上に高価であり、細胞培養に用いることは一般的ではな
かった。
【0004】従って、本発明者らは、上記の従来技術の
課題を解決すべく、細胞接着性を有し、しかも、簡単か
つ安価に製造することができる新規な蛋白質を提供する
ことを目的として鋭意研究を重ねた。その結果、ラクト
バチルス属に属する菌の菌体表層蛋白質中に細胞接着活
性を有する新規な蛋白質が存在すること、さらに、それ
を容易にかつ安価に製造する方法を見出し、本発明を完
成させた。
【0005】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、ラクト
バチルス属に属する菌に由来し、細胞接着活性を有する
蛋白質である。本発明はまた、細胞接着活性が、上皮細
胞に対する接着活性である前記蛋白質である。本発明は
また、ラクトバチルス属に属する菌が、ラクトバチルス
・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラ
クトバチルス・ガセリ(Lactobacillusgasseri)、ラク
トバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatu
s)又はラクトバチルス・ジョンソニ(Lactobacillus j
ohnsonii)である前記蛋白質である。本発明はまた、ラ
クトバチルス・アシドフィルスがラクトバチルス・アシ
ドフィルスSBT2062株(FERM P-10730)、ラクト
バチルス・ガセリがラクトバチルス・ガセリSBT20
55(FERM P-15535)、ラクトバチルス・クリスパタス
がラクトバチルス・クリスパタスJCM5808、ラク
トバチルス・ジョンソニがラクトバチルス・ジョンソニ
SBT1839(FERM P-15534)である前記蛋白質であ
る。本発明はまた、下記の性質により特定される請求項
1〜4のいずれかに記載の蛋白質である。 由来:ラクトバチルス・アシドフィルスSBT2062
株。 活性:細胞接着活性を有する。 N末端アミノ酸配列:配列表の配列番号1に表されるア
ミノ酸配列を有する。 本発明はまた、前記蛋白質に対する抗体である。本発明
はまた、ラクトバチルス属に属する菌からアルカリ金属
塩又は界面活性剤を用いて菌体表層蛋白質を抽出するこ
とを特徴とする前記蛋白質の製造方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳しく説明する。
本発明において使用することができるラクトバチルス属
に属する菌は、特に限定されないが、培養細胞の由来す
る動物の腸内に定着する菌種、菌株から選択することが
より望ましい。ヒト細胞の培養に利用し得るラクトバチ
ルス属に属する菌としては、特に限定されないが、好ま
しいものの例として、ラクトバチルス・アシドフィルス
(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ガ
セリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ク
リスパタス(Lactobacillus crispatus)又はラクトバ
チルス・ジョンソニ(Lactobacillus johnsonii)等を
挙げることができる。これらの中でも、ラクトバチルス
・アシドフィルス、特にラクトバチルス・アシドフィル
スSBT2062株が好ましい。このラクトバチルス・
アシドフィルスSBT2062株は、通商産業省工業技
術院微生物工業技術研究所(現:通商産業省工業技術院
生命工学工業技術研究所)に、FERM P−1073
0として、平成元年5月18日に寄託されている。ま
た、ラクトバチルス・ガセリ、特にラクトバチルス・ガ
セリSBT2055株は好ましい。このラクトバチルス
・ガセリSBT2055株は、通商産業省工業技術院生
命工学工業技術研究所に、FERM P−15535と
して、平成8年3月27日に寄託されている。また、ラ
クトバチルス・クリスパタス、特にラクトバチルス・ク
リスパタスJCM5808株が好ましい。また、ラクト
バチルス・ジョンソニ、特にラクトバチルス・ジョンソ
ニSBT1839株が好ましい。このラクトバチルス・
ジョンソニSBT1839株は、通商産業省工業技術院
生命工学工業技術研究所に、FERM−P15534と
して、平成8年3月27日に寄託されている。
【0007】また、本発明の蛋白質の接着の対象となる
細胞は特に限定されないが、培養において接着性が特に
重要とされる上皮細胞に対しては利用価値が高く、ほと
んどの上皮細胞に対して利用可能である。また、ラクト
バチルス属に属する菌は動物の腸内に生息していること
から、本発明の蛋白質は腸管上皮細胞の培養には有効で
ある。尚、本発明の細胞接着活性を有する蛋白質は、そ
の活性画分のみでなく、その活性画分を含むもの、例え
ばラクトバチルス属に属する菌の菌体から菌体の表層蛋
白質のみを分離したもの等も包含する。即ち、本発明の
細胞接着活性を有する蛋白質は、ラクトバチルス属に属
する菌の菌体から抽出した菌体表層蛋白質、及びそれを
精製して得られる蛋白質の両者を包含する。
【0008】本発明の蛋白質は、例えば下記の方法によ
り製造することができる。最初に、ラクトバチルス属に
属する菌を培地において一晩培養し、遠心分離により菌
体を回収する。ラクトバチルス属に属する菌の好ましい
菌種または菌株は上記した通りである。培地としては、
MRS培地、BL培地、BLA培地、GPV培地等が挙
げられ、培養は、37℃において、16時間程度行うこ
とが好ましい。遠心分離は、5000rpmで、15分程
度行うことが好ましい。次に、回収した菌体をイオン交
換水に懸濁した後、遠心分離により菌体を再回収するこ
とを繰り返し、洗浄菌体を調製する。この場合の遠心分
離は、5000rpmで、15分程度行うことが好まし
く、それを3〜4回繰り返すことが好ましい。
【0009】次に、このようにして得られた洗浄菌体か
ら表層蛋白質を抽出する。表層蛋白質の抽出には、アル
カリ金属塩を用いる方法、又は菌体を破砕した後、膜画
分を得て界面活性剤を用いる方法等、公知の方法を利用
することができる。このうち、アルカリ金属塩を用いる
方法の場合には、1M以上の高濃度のアルカリ金属塩溶
液をあらかじめ作製しておき、洗浄菌体に加え、氷冷し
ながら激しく攪拌することにより抽出を行うことが好ま
しい。アルカリ金属塩は、特に限定されないが、塩化リ
チウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられ
る。次に、これを7000rpm程度で20分間程度遠心
分離を行うことにより、上清にラクトバチルス属に属す
る菌の表層蛋白質の粗抽出液を得ることができる。次
に、得られた粗抽出液をイオン交換水に対して透析し、
表層蛋白質を沈殿として析出させるとともに、低分子の
不純物を除去する。透析は、分子量画分6000〜80
00の透析膜を用いることが好ましい。次に、析出した
表層蛋白質を、遠心分離を行うことにより回収し、イオ
ン交換水で数回遠心洗浄した後、凍結乾燥を行うことに
より、本発明の蛋白質の乾燥標品を得ることができる。
【0010】また、菌体を破砕した後、膜画分を取得し
て界面活性剤を用いる方法の場合には、例えば、最初
に、上記のようにして調製した洗浄菌体に、N−アセチ
ルムラミダーゼ溶液(50μg/ml)を加え、37℃で3
0分間静置することにより、細胞壁を溶解させプロトプ
ラスト化する。次に、これを3000rpmで20分間の
遠心分離で集めた後、蒸留水を加えることにより、菌体
を破裂させる。菌体の破砕は超音波処理、フレンチプレ
ス等の物理的処理によっても行うことができる。破砕後
の菌液を5000rpmで10分間の遠心分離を行って、
沈殿する未破砕の菌体を除去した後、15000rpmで
30分間の遠心分離により膜画分を沈殿させる。沈殿し
た膜画分から表層蛋白質を界面活性剤を用いて抽出す
る。この時用いる界面活性剤は特に限定しないが、後に
透析して除去することを考えると、0.5〜2%のCH
APまたはオクチルグルコシド等が望ましい。次に、得
られた粗抽出液をイオン交換水に対して透析し、表層蛋
白質を沈殿として析出させるとともに、低分子の不純物
を除去する。透析は、分子量画分6000〜8000の
透析膜を用いることが好ましい。次に、析出した表層蛋
白質を、遠心分離を行うことにより回収し、イオン交換
水で数回遠心洗浄した後、凍結乾燥を行うことにより、
本発明の蛋白質の乾燥標品を得ることができる。
【0011】また、このようにして抽出された本発明の
菌体表層蛋白質を、さらに、SDS−PAGE等の通常
の精製法により精製することにより、本発明の蛋白質の
活性画分を得ることができる。
【0012】このようにして製造された本発明の蛋白質
を、蒸留水に溶解させ、常法によって市販のポリスチレ
ン製ディッシュ、プレート等の培養容器にコーティング
することにより、容易に細胞培養用の基材を得ることが
できる。尚、本発明の蛋白質を培養容器にコーティング
する際の濃度は、コーティング溶液(通常、5M塩化リ
チウム溶液)1mlあたり本発明の蛋白質を0.1〜10m
gとすることが望ましい。
【0013】本発明の蛋白質は、例えば、以下の方法に
より同定することができる。まず、上皮細胞を細胞培養
用の培地においてコンフリュエントに達するまで培養
し、トリプシン−EDTA処理により細胞をはがした
後、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を用いて遠心洗
浄し、再びPBSに懸濁する。一方、本発明の蛋白質
の、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、
蛋白質を分子量別に分離した後、ブロッティング装置を
用いてニトロセルロース膜に分離した蛋白質を移行さ
せ、1%牛血清アルブミン(BSA)を含むPBS中
で、4℃において一晩ブロッキングする。ブロッキング
後の膜に、PBSに懸濁した上皮細胞を重層し、37℃
において1時間緩やかに振盪すると、細胞接着活性を持
つ蛋白質に上皮細胞が接着する。続いて、膜をPBSで
洗浄した後、3%パラホルムアルデヒド溶液により接着
した細胞を固定し、40%アミドブラック溶液に浸漬し
た後、メタノールにて脱色すると、細胞が接着した蛋白
質のみが染色され、それにより同定することができる。
【0014】また、このように同定される本発明の蛋白
質が、細胞接着因子として作用していることの証明は、
抗体を利用して行うことができる。抗体は、本発明の蛋
白質のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行っ
た後、クマシーブリリアントブルー溶液にて染色した
後、ゲルを切り出すことにより、精製した細胞接着性蛋
白質を用いて作製することができる。抗体の作製は公知
の方法を利用して行うことができる。本発明の蛋白質を
塗布した細胞培養容器に、腸管細胞の懸濁液と、上記の
ようにして取得した抗体とを添加する。また、対照とし
て抗体を添加しない細胞培養容器を準備する。抗体を添
加した細胞培養容器の細胞接着性が低下すれば、本発明
の表層蛋白質中の細胞接着性蛋白質に抗体が先に結合
し、細胞接着性が失われたと考えることができ、本発明
の蛋白質が培養容器中で細胞接着の役割を果たしている
ことが証明される。
【0015】尚、本発明の蛋白質は、イオン交換、ゲル
濾過等の公知のカラムクロマトグラフィーにより精製す
ることができるが、本発明の蛋白質に対する抗体を利用
すると、より簡単に精製することができる。この場合、
抗体はポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗
体であってもよい。最初に、得られた抗体を臭化シアン
活性化セファロース4Bのような蛋白質固定化用担体に
固定化することにより、抗体カラムを作製し、PBS中
に溶解させた上記の表層蛋白質をこのカラムに負荷す
る。カラムを洗浄した後、抗体に結合している蛋白質を
適当な溶出液にて溶出することにより、目的の精製蛋白
質を得ることができる。このようにして得られた精製蛋
白質も、表層蛋白質の場合と同様の操作により、細胞培
養用の基材とすることが可能であり、表層蛋白質より少
量の蛋白質で、高い細胞接着効果を得ることが可能であ
る。しかし、一般的な細胞培養には、表層蛋白質で十分
であり、経済的にも有利である。
【0016】このようにして製造した本発明の蛋白質に
腸管上皮細胞を接種すると、従来の培養基材と比較し
て、細胞を効率よく接着させ、増殖させることができ、
培養の期間を短縮することができる。特に、初代培養細
胞等では接着率が著しく高まり、細胞株の樹立に有用で
ある。
【0017】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが、これらは単に例示を目的としたものであり、
本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】実施例1 (本発明の蛋白質の製造)前培養したラクトバチルス・
アシドフィルスSBT2062株を、5LのMRS培地
に3%接種し、37℃において24時間培養した。この
培養菌体を7000rpm、20分の遠心分離により回収
し、イオン交換水を用いて菌体を遠心洗浄した。得られ
た洗浄菌体に、3倍量の5M塩化リチウム溶液を加え、
氷冷しながら30分間激しく攪拌することにより、表層
蛋白質を抽出した。続いて、遠心分離を行って、菌体破
砕物を分離し、表層蛋白質抽出液を得、透析膜(分子量
画分6,000以下)を用いて、イオン交換水に対して透析
した。沈殿した表層蛋白質を遠心分離により回収し、凍
結乾燥を行うことにより、表層蛋白質の凍結乾燥標品を
得た。
【0019】試験例1 (細胞接着活性の確認)実施例1で得られた凍結乾燥標
品(透析沈殿画分)と、上清に可溶化している蛋白質
(透析可溶画分)から得た凍結乾燥標品(比較品)を、
それぞれ、5M塩化リチウム溶液に溶解させ、0.00
1〜10mg/mlまでの各濃度の溶液を調製し、96穴マ
イクロプレートに100μL重層した。4℃で一晩静置
することにより、各表層蛋白質をコーティングした後、
PBSで2回洗浄した。一方、小腸由来の細胞HCT−
8を、RPMI1640培地にてコンフリュエントに達
するまで培養し、トリプシン−EDTA処理にて、細胞
を培養容器から剥がした後、PBSで、1000rpm、
5分間の遠心洗浄を3回繰り返し、PBSに懸濁した。
この細胞懸濁液を上記のプレートに重層し、37℃にお
いて1時間静置した後、プレートを洗浄した。接着して
いる細胞の数を顕微鏡で観察するとともに、ヘキソサミ
ニダーゼ活性で測定した。結果を図1に示す。図1から
明らかなように、透析沈殿画分には、透析可溶画分に比
べて、強い細胞接着活性が認められた。
【0020】試験例2 (活性画分の同定及び分子量測定)実施例1で得られた
ラクトバチルス・アシドフィルスSBT2062株の表
層蛋白質乾燥標品2.5μgを、200μLのサンプルバ
ッファーに溶解させ、そのうちの7μLを用いてSDS
−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った。分子量別
に分離された蛋白質を、ブロッティング装置(TEFC
O社)を用いてニトロセルロース膜に移行させ、1%牛
血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝化生理食塩
水(PBS)中で4℃、一晩ブロッキングした。一方、
小腸由来の細胞HCT−8をRPMI1640培地にて
コンフリュエントに達するまで培養し、トリプシン−E
DTA処理にて、細胞を培養容器から剥離した後、PB
Sで1000rpmで5分間の遠心洗浄を3回繰り返し、
PBSに懸濁した。この細胞懸濁液をブロッキング後の
膜に重層し、37℃において1時間軽く振とうして細胞
を接着させた。続いて、この膜をPBSで洗浄した後、
3%パラホルムアルデヒド溶液にて接着した細胞を固定
し、40%アミドブラック溶液に浸漬した後メタノール
により脱色することにより、接着した細胞の染色を行な
った。同様の手順を用いて、その他のラクトバチルス属
に属する菌の菌株である、ラクトバチルス・ガセリ、ラ
クトバチルス・クリスパタス及びラクトバチルス・ジョ
ンソニについても試験を行った。結果を図2に示す。図
2に示されるように、これら全てのラクトバチルス属に
属する菌株に、細胞接着性蛋白質が存在することが明ら
かとなった。例えば、ラクトバチルス・アシドフィルス
SBT2062株には、分子量33kDa付近に、細胞が
強く接着する蛋白質が存在するが、この蛋白質をLA5
と命名した。
【0021】試験例3 (細胞接着性試験)試験例2の方法に従い、十二指腸由
来のHutu−80、大腸由来のCaco−2及び胃由
来のKATOIIIの各上皮細胞に対する、ラクトバチル
ス・アシドフィルスに由来する本発明の蛋白質の細胞接
着性試験を行った。結果を図3に示す。図3から明らか
なように、いずれの細胞を用いた場合でも、本発明の蛋
白質(LA5)が細胞接着性の蛋白質として染色され
た。即ち、本発明の蛋白質(LA5)は、多くの上皮細
胞に対して接着性を持ち、上皮細胞の培養に有効である
ことが確認された。
【0022】実施例2 (ポリクローナル抗体の作製)本発明の蛋白質の乾燥標
品2.5μmを200μmのサンプルバッファーに溶解さ
せ、そのうちの7μLを用いてSDS−ポリアクリルア
ミドゲル電気泳動を行った。クマシーブリリアントブル
ー溶液にて染色した後、本発明の蛋白質(LA5)を切
り出し、電気的に溶出させることにより精製した。精製
した本発明の蛋白質(LA5)を用いて、Balb/c系マウ
スに免疫した。免疫は1週間おきに4回行い、初回の免
疫はフロインド完全アジュバント(FCA)、以降の免
疫はフロインド不完全アジュバント(FIA)と混合し
て行った。最終免疫終了後、腹水型のガンを起こすMe
thA細胞をマウス腹腔に注射した。1週間後、腹腔に
たまった腹水を採取し、本発明の蛋白質(LA5)に対
するポリクローナル抗体を得た。
【0023】試験例4 (ポリクローナル抗体による本発明の蛋白質の細胞接着
性試験)実施例2で得られた本発明の蛋白質に対するポ
リクローナル抗体を用いて、本発明の蛋白質の細胞接着
性試験を行った。即ち、本発明の表層蛋白質(LA5)
を塗布したマイクロプレートを用いて、試験例1の方法
に従い、HCT−8細胞の接着性試験を行った。その
際、実施例2で得られた蛋白質(LA5)に対するポリ
クローナル抗体を3〜50倍の希釈率になるように細胞
懸濁液に添加し、プレートに重層した。結果を図4に示
す。比較のために、免疫していない通常マウスの抗体
(腹水)を添加した場合についても同様の細胞接着性試
験を行った。結果を図5に示す。さらに、ラクトバチル
ス・アシドフィルスの全菌体に対するポリクローナル抗
体を添加した場合についても、同様の細胞接着性試験を
行った。結果を図6に示す。図4〜6から明らかなよう
に、本発明の蛋白質(LA5)に対する抗体を添加する
と、通常のマウスの抗体を添加した場合や、ラクトバチ
ルス・アシドフィルスの全菌株に対するポリクローナル
抗体を添加した場合と比較して、細胞の接着性が大きく
低下した。このことより、本発明の蛋白質は培養容器中
で細胞接着活性を持つ蛋白質であることが確認された。
【0024】試験例5 (N末端アミノ酸配列の決定)実施例1で得られたラク
トバチルス・アシドフィルスSBT2062株由来の分
子量33kDの蛋白質について、N末端アミノ酸配列を解
析した。即ち、実施例1において5M塩化リチウムにて
抽出した表層蛋白質を、10%ゲルを用いて、調製用S
DS−PAGE(TEFCO−CELL TC−16;
TEFCO社製、及び491 PREP CELL;BI
O−RAD社製)にて泳動を行い、活性画分である33
kDの蛋白質を溶出回収した。回収された精製蛋白質を、
再度分析用SDS−PAGE(10%ゲル、C−80
8;TEFCO社製)に供した後、CAPSバッファー
(pH11)にて、50V、60分の条件下、PVDF膜
(03056;TEFCO社製)にトランスブロットし
た。得られた膜上の蛋白質(4μg相当)を、40%メ
タノールに溶解したクマシ−ブリリアントブルーにて染
色した後、40%メタノールにて脱色し、染色されたバ
ンドを切り出し、風乾した。切り出したバンドについ
て、プロテインシークエンサー(476A;パーキンエ
ルマー社製)にて、そのプロトコールに従い、N末端ア
ミノ酸配列を決定した。結果を配列表の配列番号1に示
す。
【0025】
【発明の効果】本発明によれば、ラクトバチルス属に属
する菌由来の細胞接着活性を有する新規な蛋白質、及び
ラクトバチルス属に属する菌から菌体表層蛋白質を抽出
することを特徴とする当該蛋白質の製造方法が提供され
る。本発明の新規な蛋白質は、細胞、特に上皮細胞を培
養容器に効率よく接着し、増殖するための培養用基材等
として非常に有用である。従って、本発明の新規な蛋白
質は、新規細胞株を樹立する場合や、凍結保存した細胞
を新たに培養する場合等、医薬の生産、検査、生化学試
薬等、生物学や医学等の幅広い分野の研究における利用
が大いに期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ラクトバチルス・アシドフィルス表層蛋白質を
透析した後の沈殿画分(本発明)と可溶画分(比較)の
細胞接着性を示す。
【符号の説明】
○:透析沈殿画分 ●:透析可溶画分
【図2】ラクトバチルス属に属する各菌種から得た細胞
接着性蛋白質の、SDS−PAGEにおける分子量を示
す。
【符号の説明】
レーン1:分子量マーカー レーン2:菌体表層蛋白質 レーン3:細胞接着性蛋白質
【図3】各種上皮細胞に対する本発明の蛋白質の細胞接
着性を示す。
【符号の説明】
レーン1:分子量マーカー レーン2:菌体表層蛋白質 レーン3:細胞接着性蛋白質
【図4】本発明の蛋白質に対するポリクローナル抗体に
よる、ラクトバチルス・アシドフィルスの細胞接着阻害
効果を示す。
【図5】通常マウスの抗体による、ラクトバチルス・ア
シドフィルスの細胞接着阻害効果を示す。
【図6】ラクトバチルス・アシドフィルス全菌体に対す
るポリクローナル抗体による、ラクトバチルス・アシド
フィルスの細胞接着阻害効果を示す。
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:21 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド フラグメント型:N末端フラグメント 起源 生物名:ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacill
us acidophilus) 株名:SBT2062 配列 Ala Tyr Phe Val Asn Gly Asn Glu Ile Phe Arg Glu Ala Arg Lys His 1 5 10 15 Xaa Tyr Ala Val Gly 20

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ラクトバチルス属に属する菌に由来し、
    細胞接着活性を有する蛋白質。
  2. 【請求項2】 細胞接着活性が、上皮細胞に対する接着
    活性である請求項1記載の蛋白質。
  3. 【請求項3】 ラクトバチルス属に属する菌が、ラクト
    バチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilu
    s)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasser
    i)、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus c
    rispatus)又はラクトバチルス・ジョンソニ(Lactobac
    illus johnsonii)である請求項1又は2記載の蛋白
    質。
  4. 【請求項4】 ラクトバチルス・アシドフィルスがラク
    トバチルス・アシドフィルスSBT2062株(FERM P
    -10730)、ラクトバチルス・ガセリがラクトバチルス・
    ガセリSBT2055(FERM P-15535)、ラクトバチル
    ス・クリスパタスがラクトバチルス・クリスパタスJC
    M5808、ラクトバチルス・ジョンソニがラクトバチ
    ルス・ジョンソニSBT1839(FERM P-15534)であ
    る請求項3記載の蛋白質。
  5. 【請求項5】 下記の性質により特定される請求項1〜
    4のいずれかに記載の蛋白質。 由来:ラクトバチルス・アシドフィルスSBT2062
    株。 活性:細胞接着活性を有する。 N末端アミノ酸配列:配列表の配列番号1に表されるア
    ミノ酸配列を有する。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の蛋白質
    に対する抗体。
  7. 【請求項7】 ラクトバチルス属に属する菌からアルカ
    リ金属塩又は界面活性剤を用いて菌体表層蛋白質を抽出
    することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の
    蛋白質の製造方法。
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