JPH1068071A - 化合物薄膜の形成方法 - Google Patents

化合物薄膜の形成方法

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JPH1068071A
JPH1068071A JP24433296A JP24433296A JPH1068071A JP H1068071 A JPH1068071 A JP H1068071A JP 24433296 A JP24433296 A JP 24433296A JP 24433296 A JP24433296 A JP 24433296A JP H1068071 A JPH1068071 A JP H1068071A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 イオンボンバード処理方法を改善することに
より、密着力が高くしかも表面の平滑性の高い化合物薄
膜を形成することができる方法を提供する。 【解決手段】 陰極16付近に反応性ガス6を供給して
陰極付近のガス圧をその周囲よりも高めるガス供給機構
24を有するアーク式蒸発源14aを用いて、イオンボ
ンバード処理時に、当該アーク式蒸発源14aのガス供
給機構24から反応性ガス6をその陰極16付近に供給
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば工具、金
型、装飾品等の耐摩耗性を向上させること等に用いられ
るものであって、アーク式蒸発源を用いて、まず基材に
イオンボンバード処理を施し、次に当該基材の表面に化
合物薄膜を形成する方法に関し、より具体的には、その
イオンボンバード処理方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】アーク式蒸発源を用いた薄膜形成方法
は、アーク式イオンプレーティング法と呼ばれており、
アークで直接陰極を溶解させるため、しかもアーク電
流を容易に大きくすることができるため、生産性が高
い、アーク式蒸発源から蒸発させられる陰極物質中に
は、イオン化した粒子が大きな割合で含まれており、そ
れを負バイアス電圧によって基材に向けて加速して基材
に衝突させることができるため、密着性の高い薄膜の形
成が可能である、という利点を有している。
【0003】これには例えば図2に示すような装置が用
いられる。この装置は、図示しない真空排気装置によっ
て真空排気される真空容器2と、この真空容器2内に設
けられていて基材8を保持するホルダ10と、この基材
8に向くように真空容器2の壁面に取り付けられた1台
以上の(図示例は2台の)アーク式蒸発源14とを備え
ている。
【0004】アーク式蒸発源14は、金属または合金か
ら成る陰極16を有していてそれと陽極兼用の真空容器
2(但し陽極を設ける場合もある)との間のアーク放電
によって陰極16を局部的に溶解させて陰極物質18を
蒸発させるものである。陰極16と真空容器2との間に
は、直流のアーク電源20から、前者を負側にして、例
えば数十V〜数百V程度のアーク放電電圧が印加され
る。これによって、陰極16に例えば数十A〜300A
程度のアーク電流を流せるようにしている。
【0005】真空容器2内には、その壁面に設けられた
ガス導入口4から、上記陰極16を構成する物質と反応
して化合物を形成する反応性ガス6が導入される。
【0006】ホルダ10およびそれに保持された基材8
には、直流のバイアス電源22から0または負のバイア
ス電圧、例えば−2000V程度以下の、より具体的に
は0V〜−1000V程度のバイアス電圧が印加され
る。
【0007】成膜時は、真空容器2内を例えば1×10
-5Torr以下になるまで真空排気した後、真空容器2
内にガス導入口4から反応性ガス6を導入すると共に、
基材8にバイアス電源22から例えば−数百V程度のバ
イアス電圧を印加した状態で、アーク式蒸発源14にお
いてアーク放電を行わせる。それによって、陰極16か
ら陰極物質18が蒸発させられる。この陰極物質18の
一部はイオン化しており(即ち金属イオンを含んでお
り)、それは、0または負のバイアス電圧が印加された
基材8に引き付けられて衝突すると共に、周りの反応性
ガス6と反応し、それよって基材8の表面に化合物薄膜
が形成される。バイアス電圧が0Vであっても、基材8
に負のバイアス電圧を印加した場合と同様に化合物薄膜
が形成されるのは、次の理由による。即ち、アーク放電
熱によって陰極16が溶融し、金属原子、金属粒子等が
陰極16から飛び出すが、金属原子は電子と衝突して金
属イオンになり、これが陰極近傍で正の電位のクラウド
を形成するため、基材8に印加されるバイアス電圧が0
Vであっても、陰極16と基材8間で電位勾配が生じ、
この電位勾配によって金属イオンは基材8に向けて引き
つけられ加速されて基材8に衝突すると共に、その際に
周りの反応性ガスと反応し、それによって基材8の表面
に化合物薄膜が形成される。基材8に0Vのバイアス電
圧を印加するということは、具体的には、バイアス電源
22の出力電圧を0Vにすることであり、換言すれば基
材8にバイアス電圧を印加しないことであり、従ってこ
の場合はバイアス電源22を設けずに基材8を単に接地
(アース)しておいても良い。
【0008】その場合、密着性のより高い薄膜を得るた
めに、上記のような成膜工程の前処理として、イオンボ
ンバード処理が通常は行われる。このイオンボンバード
処理は、真空容器2内を例えば10-5〜10-6Torr
程度に真空排気した状態で真空容器2内に反応性ガス6
を導入しないで、かつ基材8に比較的大きな負のバイア
ス電圧、例えば−1000V前後のバイアス電圧を印加
した状態で、アーク式蒸発源14を働かせてそれから陰
極物質18を蒸発させてそれに含まれる金属イオンを基
材8にその負バイアス電圧によって引き寄せて基材表面
をスパッタするものである。このイオンボンバード処理
(金属イオンボンバード処理)によれば、金属イオンに
よる基材表面のスパッタ洗浄と加熱効果の両方が得られ
るので、その後に形成する薄膜の密着性が向上する。
【0009】このイオンボンバード処理後に、基材8に
印加するバイアス電圧をイオンボンバード処理時よりも
小さくして、例えば−200V程度に下げて、かつ真空
容器2内に反応性ガス6を導入して、基材表面に化合物
薄膜を形成する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上記イオンボンバード
処理を長時間行うほど、それによる基材表面のスパッタ
洗浄効果が上がり、得られる薄膜の密着性は向上する。
しかし、イオンボンバード処理時には、アーク式蒸発源
14の陰極16から細かい陰極物質18と共に大きな塊
の(例えば1〜5μm程度の大きさの)陰極物質(これ
はドロップレットと呼ばれる)も同時に発生し、これが
基材表面に付着するので、イオンボンバード処理を長時
間行うほど、基材8に付着するドロップレットの数も増
えてしまう。従って、基材8にイオンボンバード処理を
長時間行った後に化合物薄膜を形成すると、多数のドロ
ップレットの付着によって、表面の平滑性の悪い(即ち
表面粗度の悪い)薄膜しか得られなくなる。そのような
薄膜は、摩擦抵抗が大きい。また、ドロップレット部分
の密着性が悪く、これが被膜品の耐摩耗性や耐食性にも
悪影響を及ぼす。
【0011】従って従来は、密着力の高い薄膜を得るこ
とと、表面の平滑性の高い薄膜を得ることとを両立させ
ることはできなかった。
【0012】そこでこの発明は、上記のようなイオンボ
ンバード処理方法を改善することによって、密着力が高
くしかも表面の平滑性の高い化合物薄膜を形成すること
ができる方法を提供することを主たる目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】この発明の化合物薄膜の
形成方法は、前記アーク式蒸発源として、その陰極付近
に前記反応性ガスを供給して陰極付近のガス圧をその周
囲よりも高めるガス供給機構を有するアーク式蒸発源を
用いて、前記イオンボンバード処理時に、当該アーク式
蒸発源のガス供給機構から反応性ガスをその陰極付近に
供給することを特徴とする。
【0014】従来のイオンボンバード処理は、反応性ガ
スを導入せずに単なる真空雰囲気中で行われていたた
め、陰極から蒸発した金属イオンのみが負バイアス電圧
を印加した基材に入射していた。
【0015】これに対してこの発明は、ガス供給機構を
有するアーク式蒸発源を用いて、イオンボンバード処理
時に反応性ガスを陰極付近に供給して陰極付近のガス圧
をその周囲よりも高めるので、陰極付近でのアーク放電
に伴って当該反応性ガスも効率良くイオン化され、それ
によって生成されるガスイオンと陰極から蒸発した金属
イオンとが混じり合ってプラズマ流となって負バイアス
電圧を印加した基材に入射する。従って基材に入射する
イオン量が、従来のイオンボンバード処理時の金属イオ
ンのみの場合よりも増加する。
【0016】その結果、短時間での基材加熱が可能にな
り、その分イオンボンバード処理時間を短縮することが
できるので、基材に付着するドロップレットの量を低減
することができる。従って、その後に形成する薄膜表面
の平滑性が高くなる。しかも、金属イオンとガスイオン
の両方を用いることによって、従来のイオンボンバード
処理時の金属イオンのみの場合よりも基材に対するスパ
ッタ洗浄効果が増加するので、その後に形成する薄膜の
密着力も高くなる。このようにこの発明によれば、密着
力が高くしかも表面の平滑性の高い化合物薄膜を形成す
ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】図1は、この発明に係る化合物薄
膜の形成方法の実施に用いるアーク式イオンプレーティ
ング装置の一例を示す断面図である。図2の装置と同一
または相当する部分には同一符号を付し、以下において
は前述した従来例との相違点を主に説明する。
【0018】この装置は、従来例のアーク式蒸発源14
の代わりに、ガス供給機構24を有するアーク式蒸発源
14aを備えている。ガス供給機構24は、当該アーク
式蒸発源14aの陰極16付近に、前述した反応性ガス
6を供給して、陰極16付近のガス圧をその周囲よりも
高めるものである。具体例としては、この例では、ガス
供給機構24から陰極16の前面付近に反応性ガス6を
吹き付けるよう構成されている。
【0019】陰極16は、前述したように、金属または
合金から成る。例えば、陰極16は、元素周期表の4A
族金属(即ちTi、Zr、Hf)、5A族金属(即ち
V、Nb、Ta)もしくは6A族金属(即ちCr、M
o、W)またはこれらの金属を含んだ合金(例えばTi
Zrに代表されるチタン系合金、AlTiに代表される
アルミニウム合金、TiCrに代表されるクロム合金
等)から成る。
【0020】反応性ガス6は、前述したように、陰極1
6を構成する物質と反応して化合物を作るガスであり、
例えば、窒素、酸素および炭素の内の一つ以上の元素を
含むガス、より具体的には、窒素ガス、酸素ガス、炭化
水素系ガスまたはこれらの混合ガスである。また、反応
性ガス6は、窒素ガス、酸素ガス、炭化水素系ガスのよ
うな反応ガスのみであっても良いし、これらと不活性ガ
スとの混合ガス、例えば窒素ガスとアルゴンガス、酸素
ガスとネオンガス等の混合ガスであっても良く、放電の
安定性等に応じて様々な組み合わせが採り得る。不活性
ガスを混合すれば、不活性ガスは、イオン化し易い、
放電を維持し易い、スパッタ効果が高い、という利
点を有しているのでイオンボンバード効果をより高める
ことができる。
【0021】上記ガス供給機構24から、成膜処理時に
も、真空容器2内に反応性ガス6を導入することができ
るので、従来例のように真空容器2の壁面にガス導入口
4を設けなくても良いが、当該ガス導入口4を設けてお
いてそれを併用しても良い。その場合、ガス供給機構2
4から導入する反応性ガス6とガス導入口4から導入す
る反応性ガス6とは、通常は互いに同種のものである
が、別種のものとしても良い。
【0022】上記のようなアーク式蒸発源14aを用い
て、成膜の前処理としての前述したイオンボンバード処
理時に、当該アーク式蒸発源14aのガス供給機構24
から反応性ガス6をその陰極16付近に供給する。それ
によって、陰極16付近でのアーク放電に伴って当該反
応性ガス6も効率良くイオン化され、それによって生成
されるガスイオンと陰極16から蒸発した陰極物質18
中に含まれる金属イオンとが混じり合ってプラズマ流と
なって、負バイアス電圧を印加した基材8に引き寄せら
れて入射する。従って、基材8に入射するイオン量が、
従来のイオンボンバード処理時の金属イオンのみの場合
よりも増加する。
【0023】基材8に入射するイオン量が増加する結
果、短時間での基材加熱が可能になり、その分イオンボ
ンバード処理時間を短縮することができるので、陰極1
6から仮に従来と同じ量のドロップレットが飛散すると
しても、処理時間が短い分、基材8に付着するドロップ
レットの量を低減することができる。従って、その後に
形成する薄膜表面の平滑性が高くなる(即ち表面粗度が
良好になる)。しかも、金属イオンとガスイオンの両方
を用いることによって、従来のイオンボンバード処理時
の金属イオンのみの場合よりも基材8に対するスパッタ
洗浄効果が増加するので、その後に形成する薄膜の密着
力も高くなる。
【0024】ちなみに、イオンボンバード処理時に単に
真空容器2内にその壁面に設けられたガス導入口から反
応性ガス6を導入したのでは、陰極16付近のガス圧を
その周囲よりも高めることができないので、陰極16付
近において反応性ガス6の効率的なイオン化が行われ
ず、また金属イオンとガスイオンとのプラズマ流が形成
されにくいので、基材8へのドロップレットの付着を低
減させ、かつ基材8をスパッタ洗浄する効果は劣る(後
述する実施例参照)。
【0025】上記イオンボンバード処理時のガス供給機
構24から陰極付近への反応性ガス6の供給は、イオン
ボンバード処理の最初から行えば上記効果は最も大きく
なる。但し、必要に応じて、例えば基材8や形成する薄
膜の種類等に応じて、最初は反応性ガス6を供給せずに
従来と同様の金属イオンボンバード処理を行い、その後
(即ちイオンボンバード処理の途中から)反応性ガス6
を陰極付近へ供給して上記のようなイオンボンバード処
理を行っても良く、そのようにしても、従来法よりかは
基材8へのドロップレットの付着が低減し、かつ基材8
のスパッタ洗浄効果が増加する。また、上記最初からお
よび途中からのいずれの場合も、ガス供給機構24から
陰極付近への反応性ガス6の供給を断続して行っても良
い。
【0026】上記イオンボンバード処理時に基材8に印
加する負のバイアス電圧は、−400V〜−2000V
の範囲内が好ましい。−400Vよりも小さいと、スパ
ッタ洗浄効果が小さ過ぎて薄膜の密着性向上が期待でき
ない。−2000Vよりも大きいと、スパッタ作用が強
過ぎて基材8の温度が急上昇し過ぎる。
【0027】上記イオンボンバード処理時にガス供給機
構24から一つの陰極16付近に供給する反応性ガス6
の流量は、10ccm〜1000ccmの範囲内が好ま
しい。10ccmよりも小さいと、反応性ガス6を陰極
付近に供給する効果は殆ど得られない。1000ccm
よりも大きいと、真空容器2内のガス圧が上昇し過ぎ、
それを防止するためには真空排気設備を大容量化さぜる
を得なくなる。
【0028】また、ガス供給機構24から陰極付近に供
給する反応性ガス6が、陰極16を構成する物質と反応
して当該陰極構成物質そのものよりも融点の高い化合物
を形成する元素を含んでいても良い。例えば、陰極16
が前述した元素周期表の4A、5Aもしくは6A族金属
またはそのような金属を含む合金の場合、反応性ガス6
に窒素、酸素および炭素の内の一つ以上の元素を含めて
おいても良く、そのようにすれば、陰極16の表面に元
よりも高融点の窒化物、酸化物または炭化物等の化合物
が形成される。そのようにすれば、この融点の高い化合
物の存在によって、アークによる溶融部が陰極表面で多
数に分散されるので、陰極表面での粗大溶融部の発生が
抑制され、ドロップレットの発生そのものが抑制され
る。その結果、基材8に付着するドロップレットを一層
低減することができるので、その後に形成する膜表面の
平滑性を一層高めることができる。
【0029】上記イオンボンバード処理後は、基材8に
印加するバイアス電圧をイオンボンバード処理時よりも
小さく下げて、例えば−200V〜−400V程度に下
げて、かつ真空容器2内に反応性ガス6を導入して、基
材8の表面に化合物薄膜を形成する成膜処理を行う。こ
のときの反応性ガス6の導入は、前述したように、アー
ク式蒸発源14aのガス供給機構24から行うのが簡単
で良いが、真空容器の壁面にガス導入口4を設けている
場合は、そこから行っても良いし、両者を併用しても良
い。
【0030】その場合、ガス供給機構24から陰極付近
に供給する反応性ガス6が、前述したように陰極構成物
質と反応して当該陰極構成物質そのものよりも融点の高
い化合物を形成する元素を含んでいる場合は、成膜処理
時にも、ガス供給機構24から反応性ガス6を供給する
のが好ましい。そのようにすれば、前述したイオンボン
バード処理時と同様の作用によって、陰極表面での粗大
溶融部の発生を抑制して、成膜処理時にも陰極16から
のドロップレットの発生を抑制することができるので、
基材8の表面に平滑性の一層高い化合物薄膜を形成する
ことができる。
【0031】なお、以上では、アーク式蒸発源14aま
たは14が2台のものを例示したが、それに限られるも
のではなく、アーク式蒸発源14は1台でも良いし3台
以上でも良い。
【0032】
【実施例】実施例では図1に示した装置を用いて、比較
例では図1または図2に示した装置を用いて、アーク
式蒸発源14a、14の陰極16の材料、イオンボン
バード処理時にガス供給機構24またはガス導入口4か
ら供給するガスの種類および流量、イオンボンバード
処理時に基材8に印加するバイアス電圧、を様々に変え
てイオンボンバード処理を行い、その後成膜処理を行っ
た結果得られた化合物薄膜の最大表面粗さ(Rma
x)、平均表面粗さ(Ra)および密着性を示す臨界荷
重(Lc)を測定した結果を表1にまとめて示す。最大
表面粗さおよび平均表面粗さは値が小さい方が平滑性に
富んでいることを示しており、臨界荷重は値の大きい方
が密着性に富んでいることを示している。
【0033】いずれの例においても、陰極16の直径は
100mmとし、基材8には高速度鋼製平板を用い、真
空容器2内を1×10-5Torr以下になるまで真空排
気した後に処理を行った。
【0034】比較例1〜4は、図2に示す装置を用い
て、真空容器2内に反応性ガス6を導入せずに、アーク
電流120A、バイアス電圧−1000V等(詳しくは
表1参照)にて基材8に対してイオンボンバード処理を
行って、基材8を400℃まで加熱した。バイアス電圧
が−1000Vのとき、バイアス電源22に流れる電流
は0.4Aであり、400℃に至るのに要した時間は9
分であった。その後、バイアス電圧を−200Vに下げ
た状態で、真空容器2内にガス導入口4から反応性ガス
6として窒素ガスを導入し、真空容器2内のガス圧が1
×10-2Torrになるように調整して、基材8に対し
て30分間成膜を行った。
【0035】比較例Aは、図2に示す装置を用いて、真
空容器2内にその上部のガス導入口4から反応性ガス6
として窒素ガスを100ccm供給しながら、アーク電
流120A、バイアス電圧−1000Vにて基材8に対
してイオンボンバード処理を行って、基材8を400℃
まで加熱した。このとき、バイアス電源22に流れる電
流は0.6Aであり、400℃に至るのに要した時間は
6分であった。その後は、上記比較例と同様に成膜を行
った。
【0036】実施例1〜11は、図1に示す装置を用い
て、ガス供給機構24から陰極付近に反応性ガス6とし
て窒素ガス等を例えば100ccm供給しながら(詳し
くは表1参照)、アーク電流120A、バイアス電圧−
1000V等(詳しくは表1参照)にて基材8に対して
イオンボンバード処理を行って、基材8を400℃まで
加熱した。バイアス電圧が−1000Vのとき、バイア
ス電源22に流れる電流は1.6Aであり、400℃に
至るのに要した時間は2.5分に短縮された。その後
は、上記比較例と同様にして成膜を行った。
【0037】比較例aおよびbは、実施例1〜11と同
様に、図1に示す装置を用いて、ガス供給機構24から
陰極付近に反応性ガス6を供給しながらイオンボンバー
ド処理を行ったのであるが、比較例aはイオンボンバー
ド処理時のガス流量が5ccmと少なすぎる点が、比較
例bはイオンボンバード処理時のバイアス電圧が−20
0Vと低すぎる点が、それぞれ実施例1〜11と異な
る。
【0038】
【表1】 ○:良、×:不可
【0039】この表から分かるように、比較例1〜4の
方法によって得られた薄膜は、バイアス電圧が同条件の
実施例1〜3に比べて膜の平滑性および密着力に劣り、
比較例Aの方法によって得られた薄膜は、バイアス電圧
およびガス流量が同条件の実施例2に比べて膜の平滑性
および密着力に劣り、比較例aの方法によって得られた
薄膜は、バイアス電圧が同条件の実施例1〜3に比べて
膜の平滑性に劣り、比較例bの方法によって得られた薄
膜は、ガス流量が同条件の実施例4〜7に比べて膜の密
着力に劣る。これに対して、実施例1〜11の方法によ
って得られた薄膜は、膜の平滑性および密着力が著しく
改善されている。
【0040】
【発明の効果】この発明は、上記のとおり構成されてい
るので、次のような効果を奏する。
【0041】請求項1記載の発明によれば、ガス供給機
構を有するアーク式蒸発源を用いて、イオンボンバード
処理時に反応性ガスを陰極付近に供給して陰極付近のガ
ス圧をその周囲よりも高めるので、陰極付近でのアーク
放電に伴って当該反応性ガスも効率良くイオン化され、
それによって生成されるガスイオンと陰極から蒸発した
金属イオンとが混じり合ってプラズマ流となって負バイ
アス電圧を印加した基材に入射する。従って基材に入射
するイオン量が増加する。その結果、短時間での基材加
熱が可能になり、その分イオンボンバード処理時間を短
縮することができるので、基材に付着するドロップレッ
トの量を低減することができる。従って、その後に形成
する薄膜表面の平滑性が高くなる。しかも、金属イオン
とガスイオンの両方を用いることによって基材に対する
スパッタ洗浄効果が増加するので、その後に形成する薄
膜の密着力も高くなる。このようにこの発明によれば、
密着力が高くしかも表面の平滑性の高い化合物薄膜を形
成することができる。
【0042】その結果、薄膜の密着力が向上するため、
基材の耐摩耗性向上等を図ることができる。また、薄膜
の平滑性が向上するため、高い寸法精度を必要とする部
品への被膜が可能になる、表面に光沢が生まれ装飾品へ
の利用可能性が増大する、薄膜表面の凹凸が減り摩擦が
低減されるので被膜品の耐摩耗性が向上する、等の更な
る効果を奏することができる。
【0043】請求項2記載の発明によれば、ガス供給機
構から陰極付近への反応性ガスの供給をイオンボンバー
ド処理の最初から行うので、基材へのドロップレットの
付着を低減させる効果および基材のスパッタ洗浄効果は
最も大きくなる。従って、密着力および平滑性の極めて
高い化合物薄膜を形成することができる。
【0044】請求項3記載の発明のようにガス供給機構
から陰極付近への反応性ガスの供給をイオンボンバード
処理の途中から行っても、従来法よりかは基材へのドロ
ップレットの付着を低減させることができ、かつ基材の
スパッタ洗浄効果を高めることができる。従って、密着
力および平滑性の高い化合物薄膜を形成することができ
る。
【0045】請求項4記載の発明によれば、基材温度の
急上昇や真空排気設備の容量増大を惹き起こすことな
く、密着力および平滑性の高い化合物薄膜を形成するこ
とができる。
【0046】請求項5記載の発明によれば、アークによ
る溶融部が陰極表面で多数に分散されるので、陰極表面
での粗大溶融部の発生が抑制され、ドロップレットの発
生そのものが抑制される。その結果、基材に付着するド
ロップレットを一層低減することができるので、その後
に形成する膜表面の平滑性を一層高めることができる。
【0047】請求項6記載の発明によれば、成膜処理時
にも陰極からのドロップレットの発生を抑制することが
できるので、基材の表面に平滑性の一層高い化合物薄膜
を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る化合物薄膜の形成方法の実施に
用いるアーク式イオンプレーティング装置の一例を示す
断面図である。
【図2】従来の化合物薄膜の形成方法の実施に用いるア
ーク式イオンプレーティング装置の一例を示す断面図で
ある。
【符号の説明】
2 真空容器 6 反応性ガス 8 基材 10 ホルダ 14a アーク式蒸発源 16 陰極 18 陰極物質 20 アーク電源 22 バイアス電源 24 ガス供給機構

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属または合金から成る陰極をアーク放
    電によって溶解させるアーク式蒸発源を用いて、まず基
    材に負のバイアス電圧を印加した状態で、アーク式蒸発
    源から陰極物質を蒸発させてそれに含まれる金属イオン
    を基材に負バイアス電圧によって引き寄せて基材表面を
    スパッタするイオンボンバード処理を行い、次に基材に
    イオンボンバード処理時よりも小さい0または負のバイ
    アス電圧を印加した状態で、かつ陰極構成物質と反応し
    て化合物を作る反応性ガス雰囲気中で、アーク式蒸発源
    から陰極物質を蒸発させてそれと反応性ガスとが反応し
    た化合物薄膜を基材表面に形成する成膜処理を行う化合
    物薄膜の形成方法において、前記アーク式蒸発源とし
    て、その陰極付近に前記反応性ガスを供給して陰極付近
    のガス圧をその周囲よりも高めるガス供給機構を有する
    アーク式蒸発源を用いて、前記イオンボンバード処理時
    に、当該アーク式蒸発源のガス供給機構から反応性ガス
    をその陰極付近に供給することを特徴とする化合物薄膜
    の形成方法。
  2. 【請求項2】 前記ガス供給機構から陰極付近への反応
    性ガスの供給を、前記イオンボンバード処理の最初から
    行う請求項1記載の化合物薄膜の形成方法。
  3. 【請求項3】 前記ガス供給機構から陰極付近への反応
    性ガスの供給を、前記イオンボンバード処理の途中から
    行う請求項1記載の化合物薄膜の形成方法。
  4. 【請求項4】 前記イオンボンバード処理時に基材に印
    加するバイアス電圧を−400V〜−2000Vの範囲
    内にし、かつ前記アーク式蒸発源のガス供給機構からそ
    の陰極付近に供給する反応性ガスの流量を10ccm〜
    1000ccmの範囲内にする請求項1、2または3記
    載の化合物薄膜の形成方法。
  5. 【請求項5】 前記ガス供給機構から陰極付近に供給す
    る反応性ガスが、陰極構成物質と反応して当該陰極構成
    物質そのものよりも融点の高い化合物を形成する元素を
    含んでいる請求項1、2、3または4記載の化合物薄膜
    の形成方法。
  6. 【請求項6】 前記成膜処理時にも、前記アーク式蒸発
    源のガス供給機構から反応性ガスをその陰極付近に供給
    する請求項5記載の化合物薄膜の形成方法。
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