JPH1066587A - 選択マーカー遺伝子を持たない形質転換体の作製方法 - Google Patents

選択マーカー遺伝子を持たない形質転換体の作製方法

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JPH1066587A
JPH1066587A JP9179131A JP17913197A JPH1066587A JP H1066587 A JPH1066587 A JP H1066587A JP 9179131 A JP9179131 A JP 9179131A JP 17913197 A JP17913197 A JP 17913197A JP H1066587 A JPH1066587 A JP H1066587A
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dna
yeast
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Keiko Sakakibara
圭子 榊原
Hiroyuki Araki
弘之 荒木
Taiji Oshima
泰治 大嶋
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 酵母染色体に目的遺伝子を挿入した後に選択
マーカーが排除されるようにした形質転換系の提供。 【解決手段】 誘導性プロモーターの制御下に配置され
たR遺伝子と発現可能な選択マーカー遺伝子を挟む、同
方向に配置された1対のR認識配列を含んで成るDNA
断片の両端に、酵母の染色体DNAとの間で組換え可能
なDNA断片が直接又は間接に連結されているDNA構
成物において、前記R認識配列が非対称に短縮されてい
るために、R遺伝子の発現によってR認識配列の組換が
生じて選択マーカーが排除された後には、機能し得るR
認識配列が残らないようにしたDNA構成物。選択マー
カー排除後に機能し得るR認識配列が残らないので再組
換えが生じず、同一の選択マーカーを用いて外来遺伝子
を複数回挿入することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酵母の部位特異的
組換えを用いて、選択マーカー遺伝子が欠失した形質転
換体を作製する方法に関する。この方法を利用すること
により、目的とする遺伝子を酵母に導入した後に、選択
マーカー遺伝子を有しない酵母の形質転換体を得ること
ができる。
【0002】
【従来の技術】現在までに多くの遺伝子導入方法が報告
されているが、遺伝子導入効率が低いため、それらのい
ずれの方法も組換え体を選択するマーカーが必要であ
る。選択マーカーとしては酵母などで用いられている栄
養要求性の回復などがあるが、一般的には抗生物質など
の薬剤に対する抵抗性遺伝子が用いられる。しかしなが
ら、形質転換体を選択した後は組換え体の実用化におけ
る安全性の面などから、選択マーカー遺伝子を取り除く
ことが望ましい。また、効率良く利用できる選択マーカ
ー遺伝子の種類が少ないことから同一個体を繰り返し形
質転換するためにはマーカー遺伝子の再利用を行うこと
が望まれる。
【0003】これらの問題を解決するために形質転換体
から選択マーカー遺伝子を除くいくつかの方法が開発さ
れている。例えば、コトランスフォーメーションの様に
導入したい遺伝子と選択マーカー遺伝子を別のプラスミ
ドまたはDNA断片上にのせ、別々の構成物として同時
に細胞に導入する方法がある。この方法ではそれぞれの
遺伝子が独立して存在するために、後代をとることによ
り、導入目的遺伝子を持つが選択マーカー遺伝子を持た
ない個体を得ることが可能である。また、トランスポゾ
ンを利用する方法も開発されている。
【0004】これらは遺伝子導入後、トランスポゾンを
働かせることにより、導入目的遺伝子と選択マーカー遺
伝子の連鎖をなくし、その後に先ほどの例と同じく後代
をとることにより、導入目的遺伝子を持つが選択マーカ
ー遺伝子を持たない個体を得ることが可能である。しか
しながらこれらの方法は後代をとる必要があり、操作が
煩雑で時間がかかる。また、後代をとることによるばら
つきが生じ、実用的ではない。
【0005】一方、部位特異的な組換えを利用した方法
も開発されている。部位特異的組換えは組換えを行う酵
素とその酵素が認識する特異的な塩基配列の2つの要素
からなっており、組換え酵素は2個の認識配列間で組換
えを引き起こすことが知られている。これらの組換えは
認識配列の配置により、欠失、挿入、逆位などの現象を
引き起こす。部位特異的な組換えとしてバクテリオファ
ージP1由来のCre/lox、出芽酵母(Saccharomy
ces cerevisiae)由来のFLP/FRT、醤油酵母(Zy
gosaccharomyces rouxii)由来のR/RS、そして、バ
クテリオファージMu由来のGin/gixの4つが知
られている。
【0006】これらの系を用いた部位特異的組換えは数
多く報告されている(Odell, J. T.and Russell, S.
H., In : Paszkowski ( ed.) Homologous Recombinatio
n andGene Silencing in Plants, pp 219-270, 1994 、
Kluwer Academic Publishers, Netherlands 、Yoder,
J. I. and Goldsbrough A. P., Bio/Technology , 12,2
63- 267, 1994 )。例えば、出芽酵母のFLP/FRT
の系を用いてメタノール酵母(Pichia pastoris )でマ
ーカー遺伝子の切り出しが行われている(Cregg, J. M.
and Madden, K. R. , Mol. Gen. Genet. 219, 320- 32
3, 1989 )。
【0007】彼らはARG4遺伝子を選択マーカーと
し、同方向に繰り返し配置したFRTの間にARG4遺
伝子を組み込み、arg4変異株のメタノール酵母を形
質転換した。その後、組換え酵素の遺伝子であるFLP
を持つプラスミドを同じメタノール酵母に導入し、部位
特異的な組換えを誘発し、選択マーカー遺伝子であるA
RG4の切り出しに成功している。この様に部位特異的
な組換えをマーカーの切り出しに利用できることは既に
報告されているが、Cregg らの例にもみられるように、
部位特異的な組換えを誘発するために最初の形質転換体
が得られた後、組換え酵素の遺伝子を導入し、部位特異
的組換えを誘導するという方法が採られている。
【0008】つまり、誘導には2回の形質転換が必要で
あり、さらにはそのための別の選択マーカーが必要とな
る。その他に報告されている部位特異的な組換えも組換
え酵素遺伝子の導入は最初の形質転換体を得た後に行わ
れており、再度の形質転換か、交雑による組換え酵素遺
伝子の導入が必須である。また、Araki らにより醤油酵
母のプラスミドpSR1に部位特異的組換えの機構が存
在することが明らかになっている(Araki, H., et al
J. Mol. Biol., 182, 191-203, 1985)。
【0009】プラスミドpSR1は、6251bpから
なる環状プラスミドで、分子中に959bpからなる一
対の逆向き反復配列を持ち、この逆向き反復配列間で部
位特異的組換えを起こすことが知られている。この逆向
き反復配列内の組換え部位は、7bpのスペーサー配列
を挟む12bpの短い逆向き反復配列から構成され、さ
らに、片側には、4個の同じ12bp配列の繰り返しが
続く。部位特異的組換えは、プラスミド自身にコードさ
れた組換えを行う酵素(R蛋白質)が、逆向き反復配列
内の組換え部位に存在する特異的な塩基配列であるR認
識配列に結合することによって起こる。
【0010】なお、R認識配列(RS配列)としては、
7bpのスペーサー部分と12bpの逆向き反復配列か
らなる31bpの配列が知られている(Matsuzaki, H.,
etal. Biosci. Biotech. Biochem., 58, 1632-1637, 1
994)。この配列を配列表・配列番号1に示す。しかし
ながら、31bpのR認識配列を用いて部位特異的組換
えを行うと、組換え後の構造として、染色体あるいはプ
ラスミドDNA中に部位特異的酵素の認識配列が残り、
目的としない組換えを誘導する可能性があることから実
用的ではない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者ら
は、部位特異的組換えにより選択マーカー遺伝子を除去
した後に残存する配列が、R遺伝子産物により認識され
にくい配列となるDNA構成物を作製し、該DNA構成
物を用いて形質転換を行うことにより、選択マーカー遺
伝子を欠失した形質転換体を作製する方法を提供するこ
とを課題とした。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め、本発明は、誘導性プロモーターの制御下に配置され
たR遺伝子と発現可能な選択マーカー遺伝子とを挟む、
同方向に配置された1対のR認識配列を含んで成るDN
A断片の両端に、酵母染色体DNAとの間で組換えが可
能なDNA断片が連結されているDNA構成物におい
て、前記R認識配列が次の塩基配列:
【0013】
【化2】
【0014】を含んで成るか又はこれと実質的に同一な
配列を含んで成り、但し前記R遺伝子の近傍に位置する
R認識配列は該R遺伝子に近接する側とは反対側に存在
する逆向き反復配列のスペーサー配列から遠位の側の1
0個以下の塩基が欠けており、そして選択マーカー遺伝
子の近傍に位置するR認識配列は該選択マーカー遺伝子
に近接する側とは反対側に存在する逆向き反復配列のス
ペーサー配列から遠位の側の10個以下の塩基配列が欠
けていることを特徴とするDNA構成物を提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明においては、1対のR認識
配列の内、R遺伝子(例えば図7におけるRgene)
の近傍に位置するR認識配列(例えば図7におけるRS
4)は、該R遺伝子に近接する側とは反対側に存在する
逆向き反復配列(例えば化1における逆向き反復配列
(2);ちなみに図7におけるRS4は左側が3′−末
端であり、右側が5′−末端である)において、スペー
サー配列から遠位の側の10個以下の塩基配列が欠けて
いる。
【0016】また、他方のR認識配列は、選択マーカー
遺伝子(例えば、図7における Geneticin耐性遺伝子)
の近傍に位置し(例えば、図7においてRS304)、
該選択マーカー遺伝子に近接する側とは反対側に存在す
る逆向き反復配列(例えば化1に示す逆向き反復配列
(1);ちなみに、図7におけるRS304は左側が
3′−末端であり、右側が5′−末端である)におい
て、スペーサー配列から遠位の側の10個以下の塩基配
列が欠けている。
【0017】1例として、配列番号:4に示すRS4
は、化1(配列番号:1)に示す配列の内、12個の塩
基から成る逆向き反復配列(2)の内の6塩基が欠けて
いる。また、配列番号:16中の5′−末端の5塩基及
び3′−末端の5塩基(これらは制限酵素認識部位であ
ってR認識配列の部分ではない)を除く中央の3ブロッ
クの配列が図7におけるRS304配列であり、この配
列においては、化1(配列番号:1)に示す逆向き反復
配列(1)を構成する12個の塩基の内6個が欠けてい
る。本発明のR認識配列において、上記の意味における
欠けることができる塩基数は、スペーサー配列に隣接す
る反復配列を構成する塩基(計12個)の内の10個以
下であり、例えば8個まで、好ましくは6個までであ
る。塩基が10個より多く欠けると、DNA組換えの可
能性が極めて低くなり好ましくない。
【0018】上記のごとく、本発明のR認識配列は、化
1(配列番号:1)に示す配列を含んで成るが、その一
方の側の逆向き反復配列において、上記のごとく短縮さ
れている。しかしながら、短縮された逆向き反復配列と
は反対側の逆向き反復配列では12個の塩基がそのまま
維持されていることが望ましく、さらに1〜4個の反復
配列が連結されて延長されていてもよい。ちなみに、前
記のごとく、天然のR認識配列においては、化1(配列
番号:1)に示す配列の各端が、さらに4個づつの反復
配列により延長された構造を有しており、本発明のR認
識配列においても、前記のごとく短縮された反復配列の
側とは反対の反復配列は、天然配列と同様に複数回反復
していてもよい。
【0019】本発明のR認識配列は、上に定義した配列
を有するものの他に、それと実質的に同じ塩基配列を有
するものも含まれる。ここで「実質的に同じ配列とは、
上記に定義した配列に対して、スペーサー配列以外の部
分において、およそ1個の塩基の置換、欠失又は付加に
より修飾されている塩基配列を意味する。上記のごとき
一対のR認識配列を有するDNA構成物に対して、R遺
伝子産物が作用すれば、例えば図10に示すようにDN
Aの組換えが生ずる。すなわち、1対のR認識配列(例
えば図7におけるRS4とRS304は図9に示すごと
く配置され、図10の(A)に示すごとく、RS4配列
とRS304配列がオーバーラップする領域内(例え
ば、図10(A)において2本の交線で示す位置)にお
いて組換えが生ずる。
【0020】その結果、R遺伝子及び選択マーカー遺伝
子が除去されると共に、一方のR認識配列(例えばRS
4)の短縮された側の部分と、他方のR認識配列(例え
ば、RS304)の短縮された側の部分とが融合した配
列が再構成される。この再構成された配列は、スペーサ
ー配列の両端に短縮された逆向き反復配列を有してお
り、例えばRS4配列とRS304配列とからは、図1
0(B)(配列番号:5)に示すRS4W配列が生ず
る。
【0021】実施例1に示すごとく、スペーサー配列を
中心にして、一方の側の逆向き反復配列のみが短縮され
たR認識配列はR遺伝子産物の作用によって組換えを生
ずるが、両側の逆向き反復配列が短縮された場合(例え
ば、RS4W配列)にはR遺伝子産物の作用による組換
が生じにくくなる。R遺伝子を発現させるための誘導性
プロモーターとしては、酵母細胞中で機能する任意の誘
導性プロモーターを使用することができ、例えばガラク
トースにより誘導されるGAL1プロモーター、銅によ
り誘導されるCUP2プロモーター、熱ショックにより
誘導される熱ショック蛋白質遺伝子のプロモーター、低
リン酸濃度により誘導されるPHO5プロモーター等が
使用可能である。
【0022】また、選択マーカー遺伝子としては、酵母
において使用される任意の選択マーカー遺伝子を用いる
ことができ、例えばゲネチシン含有培地で選択可能なゲ
ネチシン耐性遺伝子、セルレニン耐性遺伝子等を使用す
ることができる。酵母の染色体との間で組換えが可能な
DNA断片は、酵母染色体上の遺伝子の一部分と相同性
を有するDNA断片であり、酵母染色体上の遺伝子とし
ては、その遺伝子が破壊されても酵母の増殖が阻害され
ない遺伝子であって、例えばプロテアーゼA遺伝子、リ
ボソームDNA遺伝子、CYC7遺伝子等、が挙げられ
る。
【0023】本発明はまた、上記のDNA構成物を用い
る、酵母の形質転換方法を提供する。この方法において
は、
【0024】(1)前記のDNA構成物を酵母細胞に導
入し、該DNA構成物の両端に存在する酵母の染色体と
の間で組換え可能なDNA配列と酵母染色体DNAとの
間の組換えにより、該DNA構成物を酵母染色体に組み
込み、(2)前記発現可能な選択マーカー遺伝子の発現
により、前記DNA構成物が酵母染色体に導入された酵
母細胞を選択し、(3)前記誘導性プロモーターを誘導
することによりR遺伝子を発現せしめ、これによって前
記1対のRS配列間において組換えを起こし、前記誘導
性プロモーターの制御下に配置されたR遺伝子と発現可
能な選択マーカー遺伝子とを切除する。
【0025】この形質転換操作は複数回反復することが
でき、これにより、下記に説明するように、同一の選択
マーカーを用いて多数の目的遺伝子を酵母の染色体に導
入することができる。上記の方法において、DNA構成
物はそれ自体からなる、もしくはそれ自体を含むDNA
断片として、又は該DNA構成物が挿入されたプラスミ
ドの形で酵母細胞中に導入することができる。この導入
は、すでに知られている任意の方法、例えば酢酸リチウ
ム法、塩化リチウム法、プロトプラスト法等により行う
ことができる。
【0026】同方向に配置したR認識配列の間にR遺伝
子と発現可能な選択マーカー遺伝子を配置したDNA構
成物、例えばDNA断片、プラスミド、その他のベクタ
ー等を用いて形質転換を行うが、その際、前記のごとく
定義される1対のR認識配列を用いることにより、組換
え後に残存する配列がR遺伝子により認識されにくい配
列になり、目的としない組換えを誘導する可能性が低減
し、形質転換体から選択マーカー遺伝子を特異的に除去
し、目的とする形質転換体を得ることができる。さらに
詳しくは、R認識配列として、5’側のR認識配列の
5’側を1bpないし10bp欠失させたもの及び/又
は3’側のR認識配列の3’側を1bpないし10bp
欠失させたものを用いることにより、組換え後に残存す
る配列が、R遺伝子により認識されにくい配列になり、
目的とする形質転換体を得ることができる。
【0027】本発明の方法を用いることにより、後代を
とったり、再度の形質転換や交配などの操作を伴うこと
なく、選択マーカー遺伝子の除去が可能となった。ま
た、選択マーカー遺伝子に関する安全性評価を省略する
ことも可能となった。さらに、選択マーカー遺伝子が欠
失した形質転換個体を用いて、再び同じ選択マーカー遺
伝子を用いた形質転換が可能となり、複数の遺伝子を繰
り返し導入することも可能となる。本発明の方法は、例
えば有用な蛋白質をコードする目的遺伝子Aを酵母の染
色体に導入する場合に、次のようにして用いることがで
きる。
【0028】本発明のDNA構成物においては、前記の
ごとく配列された1対のR認識配列(RS配列)を含ん
で成るDNA断片の両端に、1対のR認識配列を挟むよ
うに、酵母の染色体DNAとの間で組換えが可能なDN
A断片(酵母染色体組換え領域と称する場合がある)が
直接に又は間接に連結されている。R認識配列と右又は
左ボーダーとが間接的に連結されている場合には、それ
らの間に酵母の染色体に組み込むべき目的とする遺伝子
が挿入されている(図11を参照のこと)。このDNA
構成物が酵母に導入されれば、このDNA構成物の酵母
染色体組換え領域と酵母の対応する染色体遺伝子との間
で組換えが生じ、DNA構成物が全体として酵母染色体
DNAに組み込まれる。
【0029】次に、この酵母を、R遺伝子のプロモータ
ーを誘導する条件下で培養すればR遺伝子産物が生産さ
れ、これがR認識配列(RS配列)に作用して、1対の
R認識配列間で前記のごとき組換えが生じ、これら1対
のR認識配列に挟まれた領域(R遺伝子及びマーカー遺
伝子を含む)が除去され、組換えにより融合した(両端
が短縮された)R認識配列と酵母染色体組換え領域との
間の目的遺伝子が酵母染色体遺伝子に組み込まれたまま
残る。そして、上記の両端が短縮されたR認識配列はも
はや組換えを生じないから、挿入された目的遺伝子は酵
母染色体中に安定に維持される。
【0030】すなわち、本発明によれば、目的遺伝子が
酵母染色体に挿入された後マーカー遺伝子(及びR遺伝
子)が除去され、且つR認識配列が機能できなくなる。
従って、目的遺伝子を1回導入した後、同じマーカー遺
伝子を含有する遺伝子導入用ベクター(本発明のDNA
構成物)を用いて、さらなる目的遺伝子の導入を行うこ
とができる。
【0031】
【実施例】以下に本発明を実施例に基づいて詳細に説明
するが、それらの実施例は例示を目的として提供されて
いるだけであって本発明の範囲を限定することを意図し
ているものではない。実験の手順は特に記述しない限
り、SambrookらのMolecularCloning (Cold Spring Har
bor Laboratory Press, 1989 )に従った。実施例1. 部位特異的組換え酵素認識配列の解析 (1)プラスミドの構築 R遺伝子発現用プラスミドとして、pHM153(Mats
uzaki, H., et al., J. Bacteriol., 172, 610-618, 19
90)のR遺伝子とGAL1プロモーターを含むHindIII
−Sal I 断片を、YEplac195(Gietz, R. D. a
nd Sugino, A.,Gene, 74, 527-534, 1988)のマルチク
ローニングサイトのHindIII ーSal I 間に挿入し、Ur
+ 形質でR遺伝子の上流にGAL1プロモーターを持
つR蛋白質生産プラスミドpHM999を作製した。こ
れを図1に示す。
【0032】次に、組換え検出用のプラスミドとして、
LEU2遺伝子の両端に2個のRS配列(おのおのRS
−A、RS−Bと称する)部位を持つプラスミドpSR
T117(Araki, H., et al., J Mol. Biol., 225, 25
-37, 1992 )のLEU2遺伝子を含むHindIII −BglII
断片を、YCplac22(Gietz, R. D. and Sugino,
A., Gene, 74, 527-534, 1988)のTRP1遺伝子を含
むHindIII −BamHI 断片に連結し、Trp+ Leu+
質のpODA2を作製した。これを図2に示す。
【0033】このプラスミドはR遺伝子の働きにより2
個のRS間で組換えが起こるとLEU2遺伝子を含む
5.7kbのプラスミドとTRP1遺伝子を含む4.5
kbのプラスミドに分かれる。LEU2遺伝子を含むプ
ラスミドは、選択圧をかけない状態においては自己複製
能を持たないので細胞から脱落し、細胞はLeu- の表
現型を示す。つまり、R遺伝子による組換えはこれら細
胞のロイシンの要求性を調べることによってわかる。
【0034】次に、pODA2のRS−Aの野生型RS
を、制限酵素部位HindIII と、XbaIまたはBamHI とを利
用し、合成DNAにより作製された種々のRSに置き換
えたプラスミドを作製した。用いた合成DNAの配列は
以下に示す通りであるが、4個の繰り返し配列を欠失さ
せたRS1を基にして、RS1の逆向き反復配列の一方
を徐々に欠失させた種々のRS、その合成段階において
できたと考えられる点突然変異を持つRS1M、RS2
M、RS4MおよびRS1の逆向き反復配列の両方の一
部を欠失させたRS4Wである。
【0035】 RS1 TTGATGAAAGAA TACGTTA TTCTTTCATCAA (配列番号:1) RS2 TTGATGAAAGAA TACGTTA TTCTTTCATC (配列番号:2) RS3 TTGATGAAAGAA TACGTTA TTCTTTCA (配列番号:3) RS4 TTGATGAAAGAA TACGTTA TTCTTT (配列番号:4) RS4W AAAGAA TACGTTA TTCTTT (配列番号:5) RS5 TTGATGAAAGAA TACGTTA TTCT (配列番号:6) RS6 TTGATGAAAGAA TACGTTA TT (配列番号:7) RS7 TTGATGAAAGAA TACGTTA (配列番号:8) RS1M TTGATGAAAGAA TACGTTA T CTTTCATCAA (配列番号:9) RS2M TTGATGAAAGAA TA GTTA TTCTTTCATC (配列番号:10) RS4M TTGATGAAATAA TACGTTA TTCTTT (配列番号:11)
【0036】以上の配列は合成DNA作製時に5′側に
HindIII 認識部位を、3′側にXbaIまたはBamHI 認識部
位とを導入し、同時に合成した逆鎖の配列とアニーリン
グ後、pODA2 のHindIII 部位と、XbaIまたはBamH
I 部位との間に導入した。RS1、RS2、RS3、R
S4、RS4W、RS5、RS6、RS7、RS1M、
RS2M又はRS4Mを導入したプラスミドをそれぞれ
pODA21、pODA22、pODA23、pODA
24、pODA24W、pODA25、pODA26、
pODA27、pODA21M、pODA22M又はp
ODA24Mと名付けた。 また、同様に、pODA2
のRS−Bの野生型RSを合成DNAにより作製された
次のRSに置き換えたプラスミドを作製した。
【0037】 RS201 TTGATGAAAGAA TACGTTA TTCTTTCATCAA (配列番号:12) RS201配列は合成DNAの作製時に5′側にSal
I認識部位を、3′側にSacI認識部位を導入し、同
時に合成した逆鎖の配列とアニーリング後、pODA2
のRS−Bの野性型RSに置き換えた。RS−AをRS
1で置き換え且つRS−BをRS201で置き換えたプ
ラスミドをpODA21201と名付け、そしてRS−
AをRS4で置き換え且つRS−BをRS201で置き
換えたプラスミドをpODA24201と名付けた。
【0038】(2)In vivoにおける組換え頻度
の検討 まず、pHM999によりKA311A株(MAT a
trp1 leu2ura3 his3)をUra+
に形質転換し、この株に225bpの野生型組換え部位
を持つpODA2を導入し、Ura+ Trp+ Leu+
株を選択した。この株をUra- Trp- の選択圧をか
けた50g/L濃度のガラクトースまたはグルコース液
体培地で30℃で一晩培養し、pHM999上のR遺伝
子を発現させて、pODA2内の2個のRS間で組換え
を誘導した。
【0039】培養液を希釈しUra- Trp- 選択培地
に塗布し、28℃で2日間静置培養した。これをLeu
- 選択培地にレプリカしコロニーを数えた。Ura-
rp- 選択培地で増殖し、Leu- 選択培地で増殖しな
い細胞が組換えが起こった細胞である。また、同様に、
実施例1(1)において作製した種々のプラスミドを、
pHM999を持つ株に導入し、ガラクトース培地及び
グルコース培地における組換え頻度を調べた。結果を表
1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】表1に示す通り、pODA2では、ガラク
トース培地においては100%の効率で切り出しが起こ
った。また、グルコース培地においても26%の効率で
切り出しが起こった。さらに、pODA2を持つ株とp
ODA21を持つ株との間ではガラクトース培地、グル
コース培地ともに切り出し頻度に差は見られなかった。
従って4個の繰り返し配列は、少なくとも切り出しにお
いては必要でないと考えられる。
【0042】また、ガラクトース培地では、pODA2
1、pODA22、pODA23及びpODA24にお
いてはほぼ100%の頻度で切り出しが起こったが、p
ODA25でその頻度が急激に低下し、pODA26及
びpODA27ではほとんど切り出しが起こらなかっ
た。グルコース培地では、pODA21及びpODA2
2はpODA2と同程度の切り出し頻度であった。これ
らのことより、組換えには、逆向き反復配列の一方は2
bp以上存在することが望ましいことがわかった。
【0043】一方、RSに点突然変異を持つプラスミド
で、スペーサー部分に変異点を持つpODA22Mとス
ペーサー部分近くに変異点をもつpODA21Mは切り
出しはほとんど起こらず、pODA24Mでガラクトー
ス培地において48%の頻度で切り出しが起こった。従
って、効率のよい組換えにはスペーサー部分が保存され
ていることが必須であると言える。pODA24Wを持
つ株ではガラクトース培地において37%の頻度で切り
出しが起こり、pODA24を持つ株との間で組換えの
頻度に大きな差が見られた。このことは、両方の反復配
列の欠失が一方のみと比べ組換え能が大きく低下するこ
とを示している。
【0044】(3)In vitroにおける組換え頻
度の検討 一方、大腸菌で生産し部分精製したR蛋白質を用いて、
in vitroにおける変異RSを持つプラスミドで
の組換え頻度を調べた。in vitroにおける組換
え効率の測定は以下の方法に従った。50mM Tri
s−HCl(pH7.4)10mM MgCl2 からな
る反応液100μl中にDNAと1μlの大腸菌で生産
し部分精製したR蛋白質(Biore x 70 画分:Araki,
H., et al., J Mol. Biol., 225, 25-37, 1992 )を加
え、30℃で30分間反応させた。エタノール沈殿を行
った後、適当な制限酵素で切断し、アガロース電気泳動
で確認した。結果を前記の表1に示す。
【0045】pODA2、pODA21、pODA22
及びpODA21201では組換え頻度は高く、pOD
A23ではごく僅かではあるが切り出しが検知できる。
pODA24ではR蛋白質量を2〜6倍に増加させると
切り出しが検知できる。pODA24W、pODA2
5、pODA26、pODA27、pODA21M、p
ODA22M、pODA24M及びpODA24201
では切り出しは検知されなかった。
【0046】実施例2. 出芽酵母のプロテアーゼA遺
伝子の破壊 (1)R認識配列を含むプラスミドpRS304−4の
構築 R認識配列をプラスミドに導入するために4種類のオリ
ゴヌクレオチドを合成した。 (RS4-S )5'-C TTGATGAAAGAA TACGTTA TTCTTT G-3'
(配列番号:13) (RS4-L )5'-AATTC AAAGAA TAACGTA TTCTTTCATCAA GAG
CT-3' (配列番号:14) (RS304-S )5'-C TTGATGAAAGAA TAACGTA TTCTTT A-3'
(配列番号:15) (RS304-L )5'-AGCTT AAAGAA TACGTTA TTCTTTCATCAA G
CATG-3' (配列番号:16)
【0047】まず、市販のプラスミドであるpUC19
を制限酵素EcoR I及びSac I で切断した。合成DNAで
あるRS4−S及びRS4−Lをアニーリングし、pU
C19のEcoR IーSac I 断片とライゲーションすること
により、pRS4を構築した。さらにpRS4を制限酵
素Sph I 及びHind IIIで切断し、合成DNARS304
−S及びRS304−Lとライゲーションすることによ
りプラスミドpRS304−4−4を構築した。これを
図3に示す。
【0048】(2)形質転換用プラスミドの構築 (2−1)プラスミド pRS153dB1の作製 R遺伝子発現用プラスミドpHM153中において、R
遺伝子はガラクトースで発現が誘導されるプロモーター
(GAL1プロモーター)で発現が制御されている。p
HM153をBamHI で消化した後、DNA Blunt
ing kit(宝酒造社製)を用いて平滑末端処理を
行った。
【0049】得られたDNA断片をセルフライゲーショ
ンすることにより得られたプラスミドをpHM153d
Bとした。また、実施例2(1)において得られたプラ
スミドpRS304−4−4をSmaIとSacIで消化した
後、同様に平滑末端処理を行った。得られた約2.9k
bのDNA断片に、pHM153dBをEcoR IとSalIで
処理した後、同じく平滑末端処理を行って得られた約
2.8kbのDNA断片を組み込んで得られたプラスミ
ドをpRS153dB1とした。これを図4に示す。
【0050】(2−2)プラスミドpPRA153dB
1の作製 プラスミドpRS153dB1をEcoR IとHind IIIで消
化して得られる約2.8kbのDNA断片と酵母(Sacc
haromyces cerevisiae )のプロテアーゼA遺伝子の全
長を含むプラスミドpPRA1−2(Woodford, C.A.,
et al., Mol. Cell. Biol., 6, 2500-2510, 1988)をEc
oR IとHind IIIで消化して得られる約4.2kbのDN
A断片とを連結して得られるプラスミドをpPRA15
3dB1とした。これを図5に示す。なお、プラスミド
pPRA1−2をEcoR IとHind IIIで消化して得られる
約4.2kbのDNA断片には、プロテアーゼAの5’
上流領域82bpおよび開始コドンであるATGを含む
N末端アミノ酸残基136残基が欠けている。
【0051】(2−3)プラスミドpPRAG418の
作製 プラスミドpPRA153dB1をBamHI で消化した
後、大腸菌(E.coli A19)のアルカリホスファターゼで
脱リン酸化し得られたDNA断片に、プラスミドpIG
Z2(Nakazawa, N., et al., J. Ferment. Bioeng., 7
3, 265-270, 1992)をBamHI で消化して得られる約2.
4kbのDNA断片を連結し、プラスミドpPRAG4
18を作製した。これを図6に示す。このBamHI 断片に
は、酵母の構成的なプロモーターの一つであるグリセロ
アルデヒド 3リン酸脱水素酵素のプロモーターの下流
に連結されたG418耐性を付与する遺伝子が含まれて
いる。
【0052】(3)研究室株を用いたマーカー遺伝子の
除去 一倍体の酵母としてR27−7C−1C(MAT α
trp1 leu2his3 ura3)を用いた。酵
母の形質転換はリチュウムクロライドを用いた方法(Ko
dama, Y., et al. , J. Am. Soc. Brew. Chem., 53, 24
-29, 1995 )により行うことが可能である。実施例2
(2−3) において得られたpPRAG418をSacI
とNcoIで処理して得られた約5.8kbのDNA断片
(約10μg)を酵母への組換えに使用し、形質転換体
のゲネチシン耐性により選択した。すなわち、300μ
g/mlの濃度のゲネチシンを含むYPD寒天プレート
(ペプトン2%、グルコース2%、酵母エキス1%、寒
天2%)に上記形質転換操作をした酵母をまき、30℃
で72時間インキュベートする。
【0053】G418遺伝子を含む形質転換株のみがこ
の寒天培地で生育可能であるため、出現したコロニーを
形質転換株として選択した。得られた形質転換体はガラ
クトースを含む培地で培養することにより、R蛋白質を
コードする遺伝子が発現し酵母細胞内でR蛋白質が誘導
生産される。生産されたR蛋白質はG418薬剤耐性遺
伝子の両端に挿入された認識配列を認識し、この認識配
列にはさまれた領域を切断除去することが可能である。
そこで、得られた形質転換体のコロニーを10mlのY
PGal(ペプトン2%、ガラクトース5%、酵母エキ
ス1%)液体培地にて30℃、48時間培養し認識配列
の組換えを誘導した。
【0054】培養液を無菌水で10万倍に希釈した後、
そのうちの20μlをYPD寒天培地にまき、30℃で
48時間培養した。得られた約1万コロニーのうち11
株を無作為に選択し、600μg/mlの濃度でゲネチ
シンを含むYPD寒天培地とゲネチシンを含まない同培
地で、30℃、48時間それぞれ培養した。選択した1
1株は全てゲネチシンを含まない培地のみで生育が可能
であり、選択マーカー遺伝子が除去されたと考えられ
る。なお、ここで行われたプロテアーゼA遺伝子の破壊
及び部位特異的組換えによる選択マーカーの除去につい
て、図7にその概略を示す。
【0055】(4)醸造用酵母を用いたマーカー遺伝子
の除去 (4−1)1回目の形質転換 形質転換体の作出は研究室株を用いた場合と同じ方法で
行った。宿主としては高次倍数体の醸造用株BH84
(Kodama, Y., et al. , J. Am. Soc. Brew. Chem., 5
3, 24-29, 1995 )を用いたが、二倍以上の倍数性を持
つ酵母であればいずれの酵母を用いても良い。得られた
形質転換体のコロニーを、5%のガラクトースを含む1
0mlのYNB液体培地にて30℃、48時間培養し
た。
【0056】ガラクトースを含む培地で培養することに
より、R蛋白質をコードする遺伝子を発現させ酵母細胞
内でR蛋白質を生産させる。R蛋白質はG418薬剤耐
性遺伝子の両端に挿入されたR認識配列を認識し、この
R認識配列部分を切断除去することが可能である。よっ
て、5%ガラクトースを含む酵母最少培地(Yeast Nitr
ogen Base w/o amino acid (DIFCO 社))液体培地で
48時間培養した後の培養液を純水で10万倍に希釈
し、そのうちの20μlを5%ガラクトースを含むYN
B寒天培地にまき、30℃で48時間培養した。
【0057】得られた約1 万コロニーのうち125株を
選択し、2%グルコースと600μg/mlのゲネチシ
ンを含む酵母最少寒天培地とゲネチシンを含まない同培
地で、30℃、48時間それぞれ培養した。そのうち、
ゲネチシンを含む培地では生育できないが、ゲネチシン
を含まない培地には生育可能な株が1株得られた。
【0058】(4−2)2回目の形質転換 上記操作によって得られたプロテアーゼA遺伝子が1遺
伝子破壊され、さらに耐性マーカーが欠失した株を基に
2回目の形質転換を行った。コンピテント細胞の調製な
らびにプラスミドpPRAG418を用いた形質転換は
すべて1回目の形質転換と同条件にて行った。1回目の
形質転換の時に用いたものと同じゲネチシンを含むYP
D寒天培地で形質転換株の選択を行ったところ、5株の
ゲネチシン耐性を持つ形質転換株が得られた。
【0059】上記操作により得られた5株の形質転換株
から1株を選び、選択マーカー遺伝子の切断除去を行っ
た。R蛋白質の誘導と選択マーカー遺伝子の除去は全て
1回目の場合と同様に行った。その結果、600μg/
mlのゲネチシンを含む培地では生育できないが、ゲネ
チシンを含まない培地では生育可能な株が3株得られ
た。
【0060】(4−3)プロテアーゼA遺伝子の破壊 形質転換が成功し、プロテアーゼAをコードする染色体
上の遺伝子が破壊されたことは、次のようなサザンブロ
ット解析をすることにより確認することができる。R遺
伝子を発現した後の形質転換株の染色体DNAを常法に
従い抽出し、制限酵素Hind IIIで切断する。アガロース
ゲルにて泳動した後ニトロセルロースにブロッティング
し、プロテアーゼAをコードするプラスミド(pPRA
1−2)を制限酵素SacI-XhoI で切断した1.9kbp
の断片をプローブとしてサザンブロットを行う。
【0061】その結果、野性株では4.2及び1.2k
bのバンドが検出され(図8のレーン1及び2)、一回
目の形質転換では7.9及び1.2kbのバンドが検出
され(図8のレーン3)、そしてR遺伝子を発現した後
の形質転換体では3.7及び1.2kbのバンドが検出
される(図8のレーン4)。バンドの濃淡から遺伝子破
壊された染色体数が推定できる。このようにして、プロ
テアーゼA遺伝子の1遺伝子破壊株、2遺伝子破壊株を
確認した。この結果を図8に示す。
【0062】実施例3. リゾパス属由来グルコアミラ
ーゼ遺伝子の野生型酵母への導入及びその発現 酵母(Saccharomyces cerevisiae) AY-01株は2倍体であ
る。グルコアミラーゼ遺伝子を導入する際、形質転換と
部位特異的組換え配列でのマーカー遺伝子の切り出しを
2回繰り返えすことにより、対立する両方の染色体の同
じ位置にグルコアミラーゼ遺伝子のみを導入することが
出来る。
【0063】(1)形質転換用のプラスミドpUPRGA3 の
構築 R認識配列をプラスミドに導入するために4種類のオリ
ゴヌクレオチドを合成した。 (RS3-S) 5'-C TTGATGAAAGAA TACGTTA TTCTTTCA-3'
(配列番号:17) (RS3-L) 5'-AATTC TGAAAGAA TAACGTA TTCTTTCATCAA G
AGCT-3'(配列番号:18) (RS303-S) 5'-C TTGATGAAAGAA TAACGTA TTCTTTCA-3'
(配列番号:19) (RS303-L) 5'-AGCT TGAAAGAA TACGTTA TTCTTTCATCAA GC
ATG-3' (配列番号:20) これらの合成DNAの5'末端をリン酸化したのち、RS3-
S とRS3-L 、RS303-SとRS303-L をそれぞれアニーリン
グし、前者をpUC19 の制限酵素EcoRI-SacIサイトに、つ
づいて後者を制限酵素SphI-HindIIIサイトに挿入し、プ
ラスミドpRS303-3を構築した。
【0064】次に、pRS303-3を制限酵素SacI消化後Bulu
nting Kit (宝酒造( 株) 製)で末端を平滑化したのち
制限酵素SphIで消化して得た2.7kb の断片と、プラスミ
ドpPRACer11 (図12)を制限酵素SalIで消化後Bulunt
ing Kit で末端を平滑化したのち制限酵素SphIで消化し
て得た2.7kb の断片とを連結し、プラスミドpRS303-3-C
erを得た。pRS303-3-Cerの制限酵素SalIサイトに、pPRA
Cer11 を制限酵素SalIで消化して得られる2.7kb 断片を
挿入し、プラスミドpRCer303-3-1を構築した。
【0065】pRCer303-3-1をHindIII で消化後、Bulunt
ing Kit で末端を平滑化し、pSmaIlinker(宝酒造( 株)
製)を挿入してpRCer303-3-2を構築した。pUC19 を制
限酵素EcoRI-HindIII で消化し、pRCer303-3-2を制限酵
素SmaI-EcoRIで消化して得られる5.5kb 断片と、YEp24
(Botstein, D., et al. Gene, 8,17,1979) のURA3遺伝
子を含む1.1kb の制限酵素HindIII-SmaI断片とを連結し
て挿入し、pU5'RCerRS3 を構築した。
【0066】pUC18 を制限酵素EcoRI 及びSphIで消化
し、Bulunting Kit (宝酒造)で末端を平滑化したあと
連結し、pUC18HSpを構築した。この制限酵素HindIII サ
イトにYEp24 のURA3遺伝子を含む1.2kb の制限酵素Hind
III 断片を挿入し、pURA34を構築した。pURA34のSmaIサ
イトにpEcoRI linker (宝酒造)を挿入してpURA35を構
築し、これを制限酵素EcoRI で消化し、制限酵素HindII
I で部分消化した2.8kb の断片とpU5'RCerRS3 の6.6kb
の制限酵素HindIII-EcoRI 断片を連結し、プラスミドpU
PRRS3 を構築した。
【0067】pUPRRS3 の制限酵素SmaIサイトに、PYGA22
69(Ashikari,T.,et al., Appl. Microbiol. Biotechno
l., 30,535,1989 )の3.2kb の制限酵素HindIII 断片を
Bulunting Kit (宝酒造)で末端を平滑化したのち挿入
しプラスミドpUPRGA3 を構築した(図13)。このプラ
スミドでは、図13に示すとおり、URA3遺伝子のコード
領域の下流に以下の遺伝子が挿入されている。
【0068】A .構成的に発現される酵母グリセルアル
デヒド3−リン酸脱水素酵素遺伝子(GAP) プロモーター
につないだグルコアミラーゼ遺伝子。これが本実施例に
おいて導入したい遺伝子である。 B .部位特異的組換え配列(RS303,RS3 )で挟まれた、
マーカー遺伝子(PDR4;セルレニン及びシクロヘキシミ
ド耐性遺伝子)および部位特異的組換え配列間の組換え
を触媒する酵素のR遺伝子。R遺伝子はガラクトースで
発現誘導されるようにGAL1プロモーターにつないでい
る。これらの遺伝子は、形質転換株の選択の後、部位特
異的組換え配列での組換えにより除去されるように設計
した。
【0069】(2)形質転換(その1) 形質転換には5μgのプラスミドpUPRGA3 を制限酵素Hin
dIII で消化し、エタノール沈殿後、10μlのTE緩衝液
に溶解してその全量を使用した。宿主として酵母(Sacc
haromyces cerevisiae)AY-01 株(a/α野生型)を用
い、プラスミドpUPRGA3 の制限酵素HindIII 消化物でリ
チウム法により形質転換した。その後、1.0 %シクロヘ
キシミドを含むYPDプレートにひろげ、30℃で3日間
培養してシクロヘキシミド耐性株を選択した。
【0070】得られた約400 株の形質転換株のうち、4
株(GA3-PDR4- #1 、#2 、#3 及び#4 )をサザンブ
ロッティングで解析した。染色体は制限酵素HindIII で
消化しURA3遺伝子をプローブとした。その結果、4株と
も1.2kb と9.7kb の断片が検出された。これは親株のAY
-01 株と比較すると、染色体の一方のURA3遺伝子の位置
に8.5kb の挿入があることを示しており、上記のA 、B
両方が挿入されているものと考えられた。
【0071】(3)マーカー遺伝子の切り出し(その
1) マーカー遺伝子を切り出すために、前記形質転換(その
1)で得られた形質転換株(GA3-PDR4- #1 、#2 、#
3 及び#4)1白金耳を合成培地(yeast nitrogen bas
e w/o amino acid 6.7g 、ガラクトース2g /1L)10mlに
植菌し、30℃で一晩振とう培養してR 遺伝子を誘導し
た。適当に希釈しYPD プレートにひろげて3日間30℃で
培養した。これらのコロニーを各形質転換株由来のもの
から200 個ずつ計800 個選択し、YPD プレートおよび1.
0mg/mlのシクロヘキシミドを含むYPDプレートにレプ
リカし、30℃で3 日間培養し、シクロヘキシミド耐性を
調べた。
【0072】その結果、3株(GA3-#1028、#1151及び
#1171)のシクロヘキシミド感受性の株が得られた。こ
れらの株をサザンブロッティングで解析した結果、GA3-
#1028、#1151及び#1171の3 株では4.2kb と1.2kb の
断片が検出され、一方の染色体のURA3領域に約3kb の挿
入があることを示していた。これは形質転換株のマーカ
ーが部位特異的組換えにより切り出され、グルコアミラ
ーゼ遺伝子のみが挿入されていることを示している。
【0073】(4)形質転換(その2) GA3-#1028及び#1171を、前記形質転換(その1)と同
様に形質転換した。形質転換株として前者由来のものが
6株、後者由来のものが3株得られた。これらをサザン
ブロッティングで解析した。その結果、1株(GA3-PDR4-
#135)は4.2kbと9.7kb の断片が検出された。これは一
方の染色体のURA3遺伝子の位置にはA のみ、他方はA と
B の両方が挿入されていることを示しており、すでに遺
伝子が挿入されている染色体とはちがう染色体に新たに
遺伝子が挿入されたものと考えられる。
【0074】(5)マーカー遺伝子の切り出し(その
2) マーカー遺伝子の切り出し(その1)と同様にして、GA
3-PDR4- #135 株を1日間ガラクトースを含む培地で培
養し、R遺伝子を誘導した。800 個のコロニーを選択し
シクロヘキシミド耐性を調べたが、シクロヘキシミド感
受性の株はなかった。そこでR遺伝子を誘導期間を2日
間にし、そのうち400 株を選択してシクロヘキシミド耐
性を調べた。その結果、7株(GA3-#5197、#5198、#
5199、#5200、#6198、#6199及び#6200 )がシクロヘ
キシミド感受性になった。これらの株は誘導後まいたY
PDプレート上で若干大きめのコロニーを形成してい
た。サザンブロッティングで解析したところ、4.2kb の
断片が検出され、両方の染色体のURA3領域に約3kbの挿
入があることを示しており、グルコアミラーゼ遺伝子の
みが挿入されていると考えられた。
【0075】(6)グルコアミラーゼ遺伝子の発現 親株AY-01 株とグルコアミラーゼ遺伝子導入株3株(GA
3-PDR4- #1 、GA3-#1028及びGA3-#5197)をYPD培
地に1白金耳植菌し、30℃で18時間培養した。培養
液の一部を取り、遠心分離後の上清を用いてグルコアミ
ラーゼ活性を測定した。測定は熱により糊化させた可溶
性澱粉を用い40℃で反応させた後に遊離したグルコー
スの量を定量することにより測定した。
【0076】グルコアミラーゼの酵素活性は40℃で1
分間に1μmoleのグルコースを遊離する活性を1単位と
した。その結果、親株であるAY-01 株ではグルコアミラ
ーゼ活性を全く示さなかったが、グルコアミラーゼ遺伝
子導入株3株、GA3-PDR4- #1 、GA3-#1028及びGA3-#
5197では、培溶液上清1ml当たりそれぞれ0.173 、0.17
9 及び0.389 ユニットのグルコアミラーゼを分泌生産し
ていた。
【0077】
【発明の効果】以上のように酵母の部位特異的組換え機
構を用いて形質転換体から選択マーカー遺伝子を除く技
術が確立された。その結果、後代をとったり、再度の形
質転換や交配などの操作を伴うことなく、選択マーカー
遺伝子の除去が可能となった。また、本発明において定
義する1対のR認識配列を用いることにより、組換え後
に残存する配列がもはやR蛋白質により認識されにくい
配列になることから、選択マーカー遺伝子除去後の形質
転換個体を用いて再び、同じ選択マーカーを用いた形質
転換が可能となった。
【0078】このことは理論的には同じ選択マーカーを
もちいて無限の遺伝子を同一個体に導入する技術が可能
となったことを意味する。また、我々が発明した方法を
用いることにより、形質転換体から選択マーカー遺伝子
を特異的に除去できることから、組換え体の安全性評価
においても選択マーカー遺伝子に関する評価を省略する
ことが可能であり、育種された個体の産業利用において
非常に有用な技術を提供することができる。
【0079】
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:31 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 TTGATGAAAG AATACGTTAT TCTTTCATCA A 31
【0080】配列番号:2 配列の長さ:29 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 TTGATGAAAG AATACGTTAT TCTTTCATC 29
【0081】配列番号:3 配列の長さ:27 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 TTGATGAAAG AATACGTTAT TCTTTCA 27
【0082】配列番号:4 配列の長さ:25 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 TTGATGAAAG AATACGTTAT TCTTT 25
【0083】配列番号:5 配列の長さ:19 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 AAAGAATACG TTATTCTTT 19
【0084】配列番号:6 配列の長さ:23 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 TTGATGAAAG AATACGTTAT TCT 23
【0085】配列番号:7 配列の長さ:21 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 TTGATGAAAG AATACGTTAT T 21
【0086】配列番号:8 配列の長さ:19 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 TTGATGAAAG AATACGTTA 19
【0087】配列番号:9 配列の長さ:30 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 TTGATGAAAG AATACGTTAT CTTTCATCAA 30
【0088】配列番号:10 配列の長さ:28 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 TTGATGAAAG AATAGTTATT CTTTCATC 28
【0089】配列番号:11 配列の長さ:25 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 TTGATGAAAT AATACGTTAT TCTTT 25
【0090】配列番号:12 配列の長さ:31 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 TTGATGAAAG AATACGTTAT TCTTTCATCA A 31
【0091】配列番号:13 配列の長さ:27 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 CTTGATGAAA GAATACGTTA TTCTTTG 27
【0092】配列番号:14 配列の長さ:35 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 AATTCAAAGA ATAACGTATT CTTTCATCAA GAGCT 35
【0093】配列番号:15 配列の長さ:27 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 CTTGATGAAA GAATAACGTA TTCTTTA 27
【0094】配列番号:16 配列の長さ:35 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 AGCTTAAAGA ATACGTTATT CTTTCATCAA GCATG 35
【0095】配列番号:17 配列の長さ:28 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 CTTGATGAAA GAATACGTTA TTCTTTCA 28
【0096】配列番号:18 配列の長さ:37 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 AATTCTGAAA GAATAACGTA TTCTTTCATC AAGAGCT 37
【0097】配列番号:19 配列の長さ:28 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 CTTGATGAAA GAATAACGTA TTCTTTCA 28
【0098】配列番号:20 配列の長さ:36 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 AGCTTGAAAG AATACGTTAT TCTTTCATCA AGCATG 36
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、プラスミドpHM999の構造を示す
図である。
【図2】図2は、プラスミドpODA2の構造を示す図
である。
【図3】図3は、プラスミドpRS304−4−4の構
造を示す図である。
【図4】図4は、プラスミドpRS153dB1の構築
の概略を示す図である。
【図5】図5は、プラスミドpPRA153dB1の構
築の概略を示す図である。
【図6】図6は、プラスミドpPRAG418の構築の
概略を示す図である。
【図7】図7は、プロテアーゼA遺伝子の破壊及び部位
特異的組換えによる選択マーカー遺伝子の除去について
の概略を示す図である。
【図8】図8は、サザンブロット解析の結果を示し、電
気泳動の結果を示す図面代用写真である。
【図9】図9は、1対のR認識配列内で組換えが生ずる
際の1対のR認識配列の配置を示す。2本の交線(X記
号)は組換えが生ずる部位を示す。
【図10】図10において、(A)は1対のR認識配列
間で組換えが生ずる際のR認識配列の塩基配列の配置を
様式的に示す図である。(B)は、Aに示す1対のR認
識配列間で組換えが生じた際に生成するR認識配列の融
合体の塩基配列を示す図である。
【図11】図11は、本発明の方法を用いて酵母の染色
体に目的遺伝子を組み込む場合の方法を示す模式図であ
る。
【図12】図12は、プラスミドpPRACerllの
構造を示す図である。
【図13】図13は、プラスミドpUPRGA3の構造
を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 (C12N 1/19 C12R 1:865) (72)発明者 荒木 弘之 大阪府箕面市西宿2−21−501 (72)発明者 大嶋 泰治 大阪府高槻市日吉台2番町6−5

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 誘導性プロモーターの制御下に配置され
    たR遺伝子と発現可能な選択マーカー遺伝子とを挟む、
    同方向に配置された1対のR認識配列を含んで成るDN
    A断片の両端に、酵母の染色体DNAとの間で組換えが
    可能なDNA断片が直接又は間接に連結されているDN
    A構成物において、前記R認識配列が次の塩基配列: 【化1】 を含んで成るか又はこれと実質的に同一な配列を含んで
    成り、但し前記R遺伝子の近傍に位置するR認識配列は
    該R遺伝子に近接する側とは反対側に存在する逆向き反
    復配列においてスペーサー配列から遠位の側の10個以
    下の塩基が欠けており、そして選択マーカー遺伝子の近
    傍に位置するR認識配列は該選択マーカー遺伝子に近接
    する側とは反対側に存在する逆向き反復配列においてス
    ペーサー配列から遠位の側の10個以下の塩基配列が欠
    けていることを特徴とするDNA構成物。
  2. 【請求項2】 前記酵母の染色体DNAとの間で組換え
    可能なDNA断片と、その近傍にあるR認識配列との間
    に、酵母染色体に組み込むべき目的遺伝子が挿入されて
    いる、請求項1に記載のDNA構成物。
  3. 【請求項3】 プラスミド中に挿入されている請求項1
    又は2項に記載のDNA構成物。
  4. 【請求項4】 酵母の形質転換方法において、 (1)請求項1〜3のいずれか1項に記載のDNA構成
    物を酵母細胞に導入し、該DNA構成物の両端に存在す
    る酵母の染色体との間で組換可能なDNA断片と酵母染
    色体DNAとの間の組換により、該DNA構成物を酵母
    染色体に組み込み、 (2)前記発現可能な選択マーカー遺伝子の発現によ
    り、前記DNA構成物が酵母染色体に導入された酵母細
    胞を選択し、 (3)前記誘導性プロモーターを誘導することによりR
    遺伝子を発現せしめ、これによって前記1対のR認識配
    列間において組換えを起こし、前記誘導性プロモーター
    の制御下に配置されたR遺伝子と発現可能な選択マーカ
    ー遺伝子とを切除する、ことを特徴とする方法。
  5. 【請求項5】 前記酵母の染色体DNAとの間で組換え
    可能なDNA配列と、その近傍にあるR認識配列との間
    に、酵母染色体に組み込むべき目的遺伝子が挿入されて
    いるDNA構成物を用い、該目的遺伝子を酵母染色体に
    挿入することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記操作を複数回反復することを特徴と
    する、請求項4又は5に記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002520061A (ja) * 1998-07-16 2002-07-09 ノボ ノルディスク アクティーゼルスカブ 形質転換した酵母細胞におけるタンパク質の製造方法
JP2009082119A (ja) * 2007-09-29 2009-04-23 Nippon Paper Industries Co Ltd 新規な部位特異的組換え酵素認識配列及びベクター

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JP2002520061A (ja) * 1998-07-16 2002-07-09 ノボ ノルディスク アクティーゼルスカブ 形質転換した酵母細胞におけるタンパク質の製造方法
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