JPH1061206A - 構造体の補修・補強方法 - Google Patents

構造体の補修・補強方法

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JPH1061206A
JPH1061206A JP13429097A JP13429097A JPH1061206A JP H1061206 A JPH1061206 A JP H1061206A JP 13429097 A JP13429097 A JP 13429097A JP 13429097 A JP13429097 A JP 13429097A JP H1061206 A JPH1061206 A JP H1061206A
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JP
Japan
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resin
fiber
base material
sheet
reinforcing
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JP13429097A
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Taku Kobayashi
卓 小林
Ikuo Horibe
郁夫 堀部
Akira Nishimura
明 西村
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Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】繊維基材への樹脂の含浸性を良好なものとしつ
つ、構造体を補強するFRPの表面がボイドや樹脂によ
って凸凹しない表面平滑なものが得られるとともに、得
られるFRPが補強繊維の持つ高強度の特性を十分に発
現し得るため、構造体を長期の使用に耐え得るようにで
きる構造体の補修・補強方法を提供する。 【解決手段】構造体の表面に、補強繊維からなる繊維基
材を樹脂含浸させつつ貼り、次いで繊維シートを貼って
樹脂含浸させ、その後前記樹脂が硬化して後、さらに補
強繊維からなる繊維基材を樹脂含浸させつつ貼って樹脂
硬化せしめることを特徴とする構造体の補修・補強方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、構造体の補修・
補強方法に関する。
【0002】
【従来の技術】コンクリート、鉄、FRPや木材などの
材料で作られている建物、船、橋、トンネル、ダム、煙
突などの構造体は長年の使用によって劣化して寿命を終
え、新たに造り変えることが必要となるが、これら構造
物を補修または補強、すなわちリフォームすることによ
って寿命を延ばすことが出来る。とくに、近年、交通量
の急激な増加によるコンクリート構造体の耐久性の低下
や地震などに備え、たとえば、平成7年9月25日発行
の “REFORM”((株)テツアドー出版)、19
95年10月号、p38に記載されているように、橋脚
のコンクリート表面に炭素繊維強化プラスチック(以下
CFRPと呼称)を接着させ補強することが行われてい
る。
【0003】この工法は、炭素繊維織物などの繊維基材
を補修・補強箇所に貼付けながら同時にマトリックス樹
脂の含浸も行い、その後樹脂を常温で硬化させてFRP
とすることにより構造体を補強するものである。この方
法では、作業員が繊維基材への樹脂塗布や、繊維基材へ
の樹脂含浸をローラやへらによって行うので、含浸性な
どの出来栄えが作業者の技術に依存する。樹脂含浸が手
作業であるため、樹脂含浸が不完全となる部分の空気や
貼付け時に抱込んだ空気が集まってボイドとなり、繊維
を部分的に持上げてぼこついたり、樹脂が部分的に偏在
しぼこつき、樹脂硬化後に表面が凸凹し見栄えが悪くな
ってしまう。
【0004】補強繊維が厚み方向へ屈曲していると補強
繊維の持つ高強度の特性を十分に発現できず、所望の強
度が得られないという問題がある。また、FRPの表面
がより凸凹し見栄えが悪くなる。FRPのボイドが多い
と、ボイドにコンクリートのクラックから進入した雨水
などが溜まり、冬季には凍結して水が体積膨張すること
により、FRP内部にクラックが発生、成長し、コンク
リート構造体と補強繊維材料層の剥離に繋ながる。
【0005】特開平3−224901号公報には、繊維
基材として、ガラスクロスなどの支持体上に補強繊維を
一方向に配列した一方向性繊維基材を、多層貼り付けて
樹脂含浸して硬化させた補強方法の記載がある。この方
法では支持体側に、樹脂の垂れ落ちが少ない、すなわち
樹脂粘度の高い樹脂を塗布し、ガラスクロスなどの支持
体を通して一方向性繊維基材へ樹脂が移動して、繊維基
材への樹脂含浸を行うことになるため、繊維基材への樹
脂の含浸が悪くなるという問題がある。また、基材とし
ての形態保持のため、補強繊維は支持体と接着させてい
るため、接着剤が付着している補強繊維の部分は膜を形
成していて樹脂の含浸が阻害されて、ボイドの多いFR
Pとなってしまう。
【0006】繊維基材として、たて方向に補強繊維が配
列し、よこ方向に細い補助糸で組織させた、いわゆる一
方向性補強繊維織物を単に用いても、樹脂の垂れ落ちを
防ぐために樹脂は高粘度であるから、ボイドの程度は支
持体で荷担した一方向性繊維基材よりは改善されるもの
の、防ぐことは困難である。また、かかる繊維基材を用
いた場合、樹脂含浸直後は補強繊維基材表面は平滑であ
るが、ボイドの集中などによる、補強繊維のスプリング
バック現象で、厚み方向へ繊維が屈曲し、表面にぼこつ
きが発生する。
【0007】特に、FRPによる構造体の補修・補強の
作業は長期間に亘って行われることが多く、一旦樹脂含
浸繊維基材を貼り樹脂が硬化した後に さらに樹脂含浸
繊維基材を貼るという工程が採られる。かかる場合に
は、上記したようなFRP表面に凸凹が存在すると、こ
の上にさらに樹脂含浸繊維基材を積層する場合には、下
面の凸凹に沿うため、凸凹の箇所が増加し、最終的に仕
上がったFRP表面はさらに見栄えの悪いものになって
しまう。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
の問題を解決すること、すなわち、繊維基材への樹脂の
含浸性を良好なものとしつつ、構造体を補強するFRP
の表面がボイドや樹脂によって凸凹しない表面平滑なも
のが得られるとともに、得られるFRPが補強繊維の持
つ高強度の特性を十分に発現し得るため、構造体を長期
の使用に耐え得るようにできる構造体の補修・補強方法
を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、構造体の表面に、補強繊維を含む繊維基
材を、樹脂を含浸しながら貼り付け、次いで該繊維基材
の上に、繊維シートを貼り付けるとともに樹脂を含浸
し、前記樹脂を硬化させた後、さらに補強繊維を含む繊
維基材を、樹脂を含浸しながら貼り付けて、該樹脂を硬
化せしめることを特徴とする構造体の補修・補強方法を
採用する。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の詳細を、図1に示した一
実施態様にもとづいて説明するに、まず、補修・補強す
る構造体面2に付着している油などの不純物をアセトン
などの有機溶剤や石鹸水で除去し、コンクリート面のヒ
ビ割れ部やコンクリートの欠けた箇所に、モルタルや樹
脂を充填し、また、コンクリートの凸部を削り接着面を
平滑に、必要に応じて、サンダーでコンクリート表面を
あらすなどの下地処理を行う。ついで、コンクリート面
と硬化後のCFRP板との接着性をよくするために、粘
度の低いエポキシ樹脂系プライマーを塗布し、1〜2日
間程度プライマー樹脂が硬化するまで放置する。つぎ
に、コンクリート面にCFRPのマトリックスとなる樹
脂を塗布ローラで塗布し、基材の長さ方向に炭素繊維が
配列した一方向性炭素繊維基材3−1、3−1、3−3
を用い、先ず、基材3−1を炭素繊維軸方向がコンクリ
ート柱の長さ方向となるように構造体の全面に貼り、基
材3−1上にマトリックスとなる樹脂を塗布し、その上
を脱泡ローラがけし、基材3−1への樹脂含浸と同時に
脱泡を行い、構造体に貼り付けを行う。さらにその上に
基材3−2を繊維軸方向が基材3−1と同じになるよう
に、基材3−1の上に貼り、樹脂塗布および脱泡ローラ
がけを行う。この上にさらに基材を貼り、樹脂塗布およ
び含浸を行って後、繊維シート4−1を貼っても良い
が、本発明では通常図1に示すように繊維基材3−2へ
の樹脂含浸を行った後、繊維シート4−1を貼る。
【0011】繊維シートの貼付けは、基材3−2の樹脂
含浸で使用した常温硬化型の樹脂のゲル化が始まる前の
段階に行うと、新たな樹脂を塗布しなくとも、脱泡ロー
ラがけにより基材3−2の表面に付着している樹脂が繊
維シートへ含浸する。また、繊維シートの上から脱泡ロ
ーラがけを行うと、基材にも加圧されることになるの
で、基材への脱泡ローラがけで樹脂含浸されなかった箇
所への含浸も若干進む。また、基材3−1、3−2の含
浸に使用した余分な樹脂が絞られるので、樹脂の偏在に
よる繊維の部分的な盛り上がりによるぼこつきを防ぐこ
とができる。
【0012】また、一方向性炭素繊維基材では、炭素繊
維の直交方向には繊維がほとんど存在しないので、とく
に、ボイドの集中などによる、炭素繊維のスプリングバ
ック現象で、厚み方向へ繊維が部分的に屈曲し、表面に
ぼこつきが発生しやすいが、繊維シートが樹脂含浸炭素
繊維基材の最外層を覆っているので、炭素繊維が厚み方
向へ部分的に屈曲するのを押さえ、表面にぼこつきが出
なくなり、表面が平滑なFRPとなる。また、炭素繊維
の厚み方向への屈曲を押さえることができるので、炭素
繊維の持つ高強度の特性を十分に発現することができ
る。
【0013】もっとも、繊維シートの貼付けは、繊維基
材の樹脂含浸で使用した常温硬化型の樹脂のゲル化が始
まった後に行うこともできる。この場合には、樹脂が固
まっているので、表面に新たに樹脂を追加塗布し、その
上に、繊維シートを貼り、樹脂含浸させればよい。基材
3−2のCFRP層表面の凹部に樹脂が埋まるので、一
旦、基材3−2の凸凹したCFRP層を平らに補正する
ことが出来る。
【0014】次に、強化材3−3を繊維軸方向がコンク
リート柱の周方向となるように貼り、樹脂塗布および脱
泡ローラがけを行った後、必要に応じ前記と同様に繊維
シート4−2を最外層に貼付け、樹脂含浸、樹脂の硬化
を行う。
【0015】このような補修・補強によって、表面が平
滑なFRPで補強された構造体が得られ、補強繊維の持
つ高強度の特性を十分に発現出来、耐久性に優れるFR
P補強構造体が得られるのである。
【0016】補修・補強の度合いにより、これら積層作
業を繰り返し、積層枚数、すなわち補強繊維量や繊維の
方向を決められる。また、繊維シートの貼付けを各基材
ごとに行うか、数層ごとに行うか、あるいは、最外層の
みに行なうかは、補強FRPの表面状態によって適宜決
めることができる。
【0017】繊維シートを構成する繊維は、炭素繊維、
ガラス繊維、金属繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピ
レン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、ビニロ
ン繊維、ポリビニールアルコール繊維、ポリアラミド繊
維、綿繊維、レーヨン繊維などであるが、なかでもポリ
エステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊
維、ポリアミド繊維、ビニロン繊維、ポリビニールアル
コール繊維、ポリアラミド繊維、綿繊維、レーヨン繊維
などの有機繊維にすると、樹脂が含浸したFRPになっ
ても刃物や衝突による傷が付きにくいので、これらに対
する保護層としての役割を持たすことが出来る。
【0018】繊維シートの形態は、不織布、織物、編物
などの布帛で、繊維配向が2方向以上に配列している繊
維シートであると、基材の補強繊維を押さえるという観
点から好ましい。なかでも、繊維が多方向に、ランダム
に配列し、面内において変形量が一様であり、また、表
面が平滑であることから、ニードルパンチングや融着で
繊維を結合した不織布がより好ましい。
【0019】また、繊維シートは上記形態に限らず、シ
ートを構成する繊維糸条が2方向以上に並列に配列し、
かつ、これら複数の繊維糸条間に配列された空隙部を有
するメッシュであってもよい。メッシュは、樹脂が空隙
部から表面へ透過し、樹脂不足の部分へ容易に移動し、
効率的に表面を平滑かつ見栄えよくできるので好まし
い。
【0020】メッシュにおいて繊維糸条の配列する方向
が多いと、異なる方向に配列する繊維糸条同志は互いに
繊維シートの厚み方向への重なり部分を有するため、シ
ートの厚みが大きくなり、繊維糸条間の空隙部を埋めて
表面を平滑にするために必要な樹脂量が多くなり、作業
が非効率的となる。この問題に対して、繊維糸条を細く
すると繊維シートの厚みを小さくすることができる。し
かし、カバーファクターが低下し、押さえ効果の低下を
来してしまうので、さらに繊維量を増やす必要を生じ、
樹脂の透過性が低下する。したがって、十分に目的とす
る効果を得ることができる2方向メッシュがより好まし
い。
【0021】また、不織布などランダムに多方向に繊維
が配列した繊維シートでも、パンチングなどでシートの
厚み方向に穴を開けることで、メッシュ同様、樹脂透過
の効果と繊維基材を押さえる効果を合わせもつことがで
きるので好ましい。
【0022】さらに、繊維シートは、異なる方向に配列
する繊維糸条が交絡していても、いなくてもよく、さら
に異なる方向の繊維糸条の交点がバインダーや繊維糸条
の融着によって接着されていてもよい。交点の存在によ
り、ある繊維糸条に力が加わった場合に、この力は隣接
する同方向、異方向の繊維糸条へ伝わり、繊維基材のあ
る面積の押さえに関与する繊維シートの面積が大きくな
る。よって、低いカバーファクターのシートでも、スプ
リングバック現象による補強繊維の厚み方向への屈曲な
どの発生を防ぎ、ぼこつきを防止することができる。
【0023】本発明で用いる繊維シートは、樹脂の透過
性を有するために、そのカバーファクターは10〜95
%であることが好ましい。カバーファクターが95%を
越えるとシートの繊維による開口部の面積が小さくな
り、樹脂がシートを透過しにくく、樹脂含浸時にシート
へ樹脂透過せず、強化材に含浸させた樹脂が絞りきれ
ず、シートへのローラがけによって強化基材の最外層と
シートとの間に局部的に樹脂が集中する箇所ができ、F
RPの表面が凸凹することがある。カバーファクターが
10%よりも小さいと、繊維による開口部の面積が大き
くなるので、スプリングバック現象による補強繊維の厚
み方向の盛り上がりを防止する作用が十分には認められ
ない。繊維シートのカバーファクターが前記範囲である
と、シートへのローラがけによって余分な樹脂を絞り出
して、除去することが出来るし、ローラの加圧により基
材の補強繊維への樹脂含浸を促進させることができ、ま
た、スプリングバック現象による補強繊維の厚み方向の
盛り上がりを防止することが出来、表面平滑なFRP補
強構造体とするに好適である。
【0024】本発明におけるカバーファクター(Cf)
は、繊維シートにおける繊維がシートの面を被覆する割
合を示すものである。
【0025】このカバーファクターは、繊維シートを上
面から見た時に、ある測定範囲において、その面積(S
1)における開口部の面積を(S2)とした時に以下の
式で表される。
【0026】 Cf=(S1−S2)/S1×100 (%) 本発明においてはカバーファクターの測定は次のように
行う。まず、繊維シートの表面を真上から顕微鏡、例え
ば株式会社ニコン社製顕微鏡MM−22Uを用いて撮影
する。撮影時には透過照明装置を用い、シートの下面か
ら光線をあて、光線が通過しない部分(繊維部分)が黒
っぽい色に、また、光線が通過する部分(開口部分)が
白っぽい色の濃淡に差を生じるようにする。光量は繊維
と開口部分の境界がはっきり認識できる範囲の強さに設
定する。ここで不織布などは開口部の一個あたりの面積
が小さいため25倍に拡大撮影する。そして、顕微鏡の
鏡筒の部分に挿入したCCD(charge coupled device)
カメラで撮影し、撮影画像を白黒の明暗を表すデジタル
データに変換してメモリーに記憶し、それを画像処理装
置で解析し、白と黒の2値化を行い、全体の面積S1と
黒い部分の面積(S1−S2)とから、上述した式にも
とづいてカバーファクターを計算する。同様のことを同
じ繊維シートについて10ヵ所行い、その単純平均をも
ってこの発明でいうカバーファクターとする。後述する
実施例では、CCDカメラおよび画像処理装置として、
株式会社ピアス社製パーソナル画像解析システムLA−
525を使用した。ここで、白黒の明暗を記憶したデジ
タルデータには、繊維と開口部分との境界に白と黒の中
間色が含まれる。この中間部分を繊維部分(黒)と開口
部分(白)に区別するため、モデル的に、幅1mmのテ
ープを1mmの間隔をあけて縦横に平行に貼り付け、こ
の表面のカバーファクターが75%になるようにした。
すなわち、CCDカメラの絞りを8に設定し、画像解析
システムLA−525のメモリ値が128以下の部分を
繊維の部分とした(このシステムでは、白黒の明暗が0
〜255段階のメモリ値として記憶される)。
【0027】また、繊維シートには樹脂が硬化するまで
繊維基材を押さえておくことが要求されるため、ある程
度剛軟であることが望まれる。
【0028】この繊維シートの剛軟度は、JIS L1
096のA法(45゜カンチレバー法)による測定値
で、20〜300mmの範囲であるのがよい。20mm
より小さければシートが柔らかいため、樹脂含浸時に繊
維シートが変形することや成形後の樹脂の垂れ落ちなど
の樹脂の移動があれば基材を部分的にしか押さえること
ができない。また、300mmを超えると繊維シート全
体で基材を押さえることができるが、構造体が曲面を有
するような場合には繊維シートそのものが曲面に沿いに
くくなり補強繊維基材を部分的にしか押さえることがで
きない。
【0029】本発明で用いる繊維シートの厚みは補強の
対象となる構造体の大きさや補強の程度や繊維シートの
剛軟度にもよるが、通常は、0.1mm〜1mm程度で
ある。厚みが0.1mm未満であるとシ−ト自体が柔ら
かいために樹脂含浸時に発生する補強繊維の屈曲を押さ
えることができず形態が不安定で樹脂含浸時の含浸ロー
ラがけ時に繊維シートの形態が崩れてしまうことが多
い。また、1mmを超えると樹脂含浸時の補強繊維の屈
曲を押さえることができるものの樹脂が透過するのに時
間がかかり、また、ボイドが抜けにくくなることや樹脂
の持込み量も多くなり重量が大きくなってしまう。
【0030】本発明に用いる補強繊維は、炭素繊維、ポ
リアラミド繊維やガラス繊維などであるがなかでも炭素
繊維は耐アルカリ性に優れ、引張強度および引張弾性率
の機械的性質に優れるので好ましく用いられる。補強繊
維の引張強度が2,000MPa以上,引張弾性率15
0GPa以上の特性を有する補強繊維であって、より好
ましくは、引張強度が3,500MPa以上、引張弾性
率200GPa以上の特性を有する炭素繊維である。
【0031】ここで、引張強度、弾性率はJIS R7
601により測定したものである。
【0032】繊維基材の形態は、強化材の形態を保持で
きることや取り扱い性の面から、一方向に補強繊維が配
列した一方向性補強繊維織物が好ましい。
【0033】繊維基材の補強繊維目付は、100g/m
2 〜500g/m2 程度である。100g/m2 未満で
あれば1枚当たりの補強効果が小さいため積層枚数を増
やす必要があり、積層・樹脂含浸作業が煩雑となる。ま
た、500g/m2 を超えると厚みが厚くなるため樹脂
の含浸作業が不十分になる可能性があることや重いため
貼り付け作業時に取り扱いにくくなる。
【0034】本発明で用いる樹脂は、施工を簡便なもの
とする観点から、通常、常温硬化型のものを用いる。こ
こで、常温硬化型の樹脂とは、使用雰囲気の温度が20
℃の時、主剤と硬化剤を混合してから30分〜5時間程
度でゲル化が始まるものである。
【0035】マトリックス樹脂は、補修・補強に使用す
るため、剛性に優れたエポキシ樹脂、ビニルエステル樹
脂、不飽和ポリエステル樹脂が好ましい。この中でも、
構造体がコンクリートからなる場合には、コンクリート
がアルカリ性であるため、耐アルカリ性に優れる点から
エポキシ樹脂やビニルエステル樹脂が好ましい。また、
難燃性に優れたフェノール樹脂も好ましいマトリックス
樹脂の一つである。
【0036】なお、上記の実施例では構造体を構成する
材料がコンクリートの場合について記載したが、鉄、F
RPや木材などの材料で作られた構造体であっても同様
な補修・補強方法が可能であり、実施例と同様な効果が
得られる。
【0037】
【実施例】
実施例1 横断面の一辺が30cmの正方形のコンクリート柱の表
面をサンダーを用いてサンディングした。次に、はけに
よりサンディング面の研磨紛を取り除いた後、有機溶剤
を用いて脱脂し、サンディング面にエポキシ樹脂系の常
温硬化型プライマーを塗付し、一昼夜放置した。次に、
まず、コンクリート面に常温硬化型のエポキシ樹脂を3
00g/m2 となるように均一に塗布し、炭素繊維の目
付が300g/m2 の一方向性炭素繊維織物を、柱の長
手方向に繊維が配列するように貼り、その上にエポキシ
樹脂を500g/m2 となるように均一に塗布し、含浸
ローラにより炭素繊維織物にエポキシ樹脂を含浸させ
た。次に、2層目となる、1層目と同じ一方向性炭素繊
維織物を貼り、1層目と同様にエポキシ樹脂を塗布し、
樹脂含浸させ、合計3層の一方向性炭素繊維織物を積層
し、樹脂を含浸した。
【0038】その後、繊維基材に含浸させた樹脂のゲル
化が始まる前に、この炭素繊維織物を貼り付けたコンク
リート柱全体をカバーファクターが85%のポリエステ
ル長繊維の不織布、繊維目付:60g/m2 を貼り付
け、不織布の上から含浸ローラがけを行った。不織布を
通してボイドを含んだ樹脂が透過した。この後、表面の
樹脂をヘラにより除去し、そのまま、7日間放置し、樹
脂を硬化させた。
【0039】表面の観察を行ったところ炭素繊維織物は
織物全体をポリエステルの不織布で面として押さえられ
ているために図2に示すように炭素繊維の部分的な屈曲
によるぼこつきの発生がなかった。また、CFRPを剥
がし、断面観察したところ炭素繊維ストランド内のボイ
ドが少なかった。さらに、表面が平滑なために見栄えも
よかった。 実施例2 実施例1と同様にして合計3層の一方向性炭素繊維織物
を積層し、樹脂を含浸した。
【0040】その後、繊維基材に含浸させた樹脂のゲル
化が始まる前に、この炭素繊維織物を貼り付けたコンク
リート柱全体をカバーファクターが23%でガラス繊維
が二方向に配列したメッシュ(繊維目付:38g/
2 )を貼り付け、メッシュの上から含浸ローラーがけ
を行なった。メッシュの空隙を通してボイドを含んだ樹
脂が透過した。この後、表面の樹脂をヘラで除去し、そ
のまま7日間放置し樹脂を硬化させた。
【0041】表面の観察を行なったところ、炭素繊維織
物は、織物を構成する炭素繊維がメッシュで押さえられ
ていたために、図3に示すように炭素繊維の部分的な屈
曲によるぼこつきの発生はなかった。また、CFRPを
剥がし、断面観察をしたところ炭素繊維ストランドない
のボイドが少なかった。さらに、表面が平滑なために見
栄えもよかった。 比較例1 不織布を用いなかった点を除けば上記実施例と同じ方法
により、FRP補強コンクリート柱を作製し、7日間放
置し、樹脂を硬化させた。
【0042】表面の観察を行ったところ図4に示すよう
に炭素繊維の屈曲により部分的に浮き上がっていた。ま
た、CFRPを剥がし、断面観察したところ、CFRP
が凸状になっている箇所には、炭素繊維織物のストラン
ド内にも大きなボイドが観察された。さらに、FRP層
は表面が凸凹し、見栄えも良くなかった。
【0043】
【発明の効果】構造体に補強繊維からなる繊維基材を貼
付けながら同時に樹脂含浸し、常温で樹脂硬化させる工
程において、樹脂含浸繊維基材の上にさらに繊維シート
を貼付けているから、樹脂含浸の際、シートの表面をロ
ーラ掛けすることによって、基材の補強繊維への樹脂含
浸を促進させることができるし、余分な樹脂を絞り取る
ことができるので、樹脂偏在によるぼこつきを防ぐこと
が出来る。また基材の表面をシートが覆っているので、
ボイド部でのスプリングバック現象による補強繊維の厚
み方向の盛り上がりを防止することが出来、ボイドの少
ないFRPで補強された表面平滑なFRP構造体とする
ことが出来る。また、補強繊維の屈曲も発生しないか
ら、補強繊維の持つ高強度の特性を十分に発揮でき、目
的とする補強効果が得られる。また、表面が平滑なため
に見栄えもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施態様を説明するためのFRP
補強コンクリート構造体の一部破断斜視図である。
【図2】実施例1で得られたFRP補強コンクリート構
造体の表面の繊維の形状を示す写真である。
【図3】実施例2で得られたFRP補強コンクリート構
造体の表面の繊維の形状を示す写真である。
【図4】比較例1で得られたFRP補強コンクリート構
造体の表面の繊維の形状を示す写真である。
【符号の説明】
1 コンクリート柱 2 コンクリート構造体面 3−1 一方向性炭素繊維基材 3−2 一方向性炭素繊維基材 3−3 一方向性炭素繊維基材 4−1 繊維シート 4−2 繊維シート

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】構造体の表面に、補強繊維を含む繊維基材
    を、樹脂を含浸しながら貼り付け、次いで該繊維基材の
    上に、繊維シートを貼り付けるとともに樹脂を含浸し、
    前記樹脂を硬化させた後、さらに補強繊維を含む繊維基
    材を、樹脂を含浸しながら貼り付けて、該樹脂を硬化せ
    しめることを特徴とする構造体の補修・補強方法。
  2. 【請求項2】前記樹脂が常温硬化型樹脂であることを特
    徴とする請求項1記載の構造体の補修・補強方法。
  3. 【請求項3】繊維シートを貼ることを、前記繊維基材に
    含浸された樹脂がゲル化する以前に行うことを特徴とす
    る請求項1または請求項2に記載の構造体の補修・補強
    方法。
  4. 【請求項4】繊維シートを貼ることを、最外層の繊維基
    材を貼り付けた後に行うことを特徴とする請求項1〜3
    のいずれかに記載の構造体の補修・補強方法。
  5. 【請求項5】前記繊維シートが不織布であることを特徴
    とする請求項1〜4のいずれかに記載の構造体の補修・
    補強方法。
  6. 【請求項6】前記繊維シートが、シートを構成する繊維
    糸条が二方向に複数本配列し、かつ、この繊維糸条によ
    って配置された網目状の空隙部を有する2軸メッシュで
    あることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の
    構造体の補修・補強方法。
  7. 【請求項7】前記繊維シートが、10〜95%のカバー
    ファクターを有することを特徴とする請求項1〜6のい
    ずれかに記載の構造体の補修・補強方法。
  8. 【請求項8】前記繊維シートが、20〜300mmの曲
    げ剛軟度を有することを特徴とする請求項1〜7のいず
    れかに記載の構造体の補修・補強方法。
  9. 【請求項9】前記繊維基材が一方向性繊維基材であるこ
    とを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の構造体
    の補修・補強方法。
  10. 【請求項10】前記構造体がコンクリートからなる請求
    項1〜9のいずれかに記載の構造体の補修・補強方法。
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