JPH1055802A - アルカリ二次電池の電極およびその製造方法 - Google Patents

アルカリ二次電池の電極およびその製造方法

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JPH1055802A
JPH1055802A JP8335923A JP33592396A JPH1055802A JP H1055802 A JPH1055802 A JP H1055802A JP 8335923 A JP8335923 A JP 8335923A JP 33592396 A JP33592396 A JP 33592396A JP H1055802 A JPH1055802 A JP H1055802A
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ptfe
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positive electrode
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JP8335923A
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Hitoshi Kato
人士 加藤
Akitomo Shirakawa
亮偕 白川
Tsutomu Sato
力 佐藤
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Original Assignee
Furukawa Battery Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 活物質合剤の脱落や剥がれに起因する短絡事
故等の不具合の発生が少なく、かつ、サイクル寿命が長
いアルカリ二次電池を得ることができるアルカリ二次電
池の電極およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 導電性基板31に活物質合剤層32が担
持され、活物質合剤層32には、その表面側32aほど
高濃度となるようにフッ素樹脂系の結着剤が濃度勾配を
もって含有されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルカリ二次電池
の電極およびその製造方法に関し、更に詳しくは、短絡
の発生が少なく、寿命特性に優れたアルカリ二次電池の
電極およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アルカリ二次電池のうち、ニッケル−水
素二次電池は高容量電池として最近注目を集め、その研
究開発が進められている。このニッケル−水素二次電池
は、水素を負極活物質として動作させるものであり、そ
の発電要素は、可逆的に水素を吸蔵・放出することがで
きる水素吸蔵合金を導電性基板に担持させてなる負極
と、通常は正極活物質として動作する水酸化ニッケルを
主成分とする活物質合剤を導電性基板に担持させてなる
正極とをアルカリ電解液の中に配置して構成されてい
る。
【0003】ここで、例えば、円筒形のニッケル−水素
二次電池の一例につき、その構造を図1に基づいて説明
する。この電池では、負極端子を兼ねる円筒状の有底缶
である外装缶1の底に絶縁板2が配置され、その上に、
シート状の正極3と、同じくシート状の負極4とを、電
気絶縁性のシート状合成樹脂からなるセパレータ5を介
して重ね合わせて渦巻き状に捲回して形成した極板群が
配置される。ついで、外装缶1内に所定のアルカリ電解
液,例えば、KOHを主成分とするアルカリ水溶液を注
入したのち、その極板群の上に絶縁板2をのせ、外装缶
1の開口部を正極端子7を備えた蓋板6が絶縁性のガス
ケット8を介して封口することにより密閉構造の電池が
形成される。
【0004】前記正極(ニッケル正極)3としては、ス
ポンジ状ニッケルシートのような多孔質の導電性基板に
正極活物質として動作する水酸化ニッケルを主体とする
活物質合剤層が担持されている、薄いシート状の正極が
通常用いられている。当該ニッケル正極は、概ね次のよ
うにして製造されている。すなわち、まず、正極活物質
として動作する水酸化ニッケルの粉末に、必要に応じて
酸化コバルトのようなコバルト化合物の粉末などを混合
し、その混合粉末にカルボキシメチルセルロースやメチ
ルセルロースなどを溶解して成る増粘剤水溶液を添加し
て全体を混練し、粘稠なペースト状活物質合剤を調製す
る。
【0005】ついで、このペースト状活物質合剤をスポ
ンジ状のニッケルシートやニッケルフェルトのような3
次元網状構造の導電性基板に充填塗布したのち、乾燥、
圧延処理を順次行うことにより、活物質合剤層を担持し
た所定厚みのシート状ニッケル正極とする。また、前記
負極(水素吸蔵合金負極)4としては、例えば、多孔質
のシート状導電性基板に、活物質である水素を吸蔵・放
出することができる水素吸蔵合金粉末と導電材粉末等が
混合された混合粉末の合剤(本発明においては、この混
合粉末も活物質合剤という)が担持されている、薄いシ
ート状の負極が通常用いられている。
【0006】当該負極は、概ね次のようにして製造され
ている。すなわち、まず、水素吸蔵合金粉末とニッケル
粉末のような導電材粉末とを所定の割合で混合した混合
粉末を製造し、ここに、増粘剤水溶液を加え、ペースト
状の活物質合剤を調製する。そして、当該活物質合剤を
パンチングニッケルシートやニッケルネットのような多
孔質の導電性基板に充填塗布したのち、乾燥、圧延処理
を順次行うことにより、活物質合剤層を担持した所定厚
みのシート状の負極とする。
【0007】ところで、前記した電極(正極および負
極)の場合、導電性基板に充填塗布した活物質合剤を乾
燥し圧延した後に、例えば、外装缶への収容時や搬送時
に外力を受けて活物質合剤層が脱落することがある。こ
のように、活物質合剤層が脱落した電極は、設計通りの
容量を確保できないので、電池に組み込むことはできな
い。
【0008】また、円筒形の電池の場合、乾燥,圧延後
のシート状の正極および負極は、セパレータとともに捲
回され、渦巻状の極板群に成形される。このとき、例え
ば、正極においては、正極表面に高い応力が加わるの
で、正極の活物質合剤層の表面の一部が剥がれ、その剥
がれた部分の先端がセパレータを突き破り、その先に位
置する負極と接触して短絡事故を引き起こすことがあ
る。尚、負極についても、同様な不都合が生じることが
ある。
【0009】更に、上述のように、電極を捲回した際、
活物質合剤層の表面部に亀裂が生じる場合がある。ニッ
ケル−水素二次電池においては、充放電の繰り返しによ
り、電極が膨張収縮し、この膨張収縮は、電極表面ほど
著しく、中心部にいくにしたがい、膨張収縮の度合は小
さくなる。このため、前記したような亀裂が表面部に生
じている電極を備えた極板群を電池に組み込むと、充放
電のたびに繰り返される極板群の膨張収縮により、電極
表面部の亀裂が進展し、導電性基板から活物質合剤層が
脱落することがある。このように、活物質合剤層が脱落
すると、脱落した活物質合剤は、電池の底部にたまり、
外装缶(負極端子)と正極、あるいは、負極部材と正極
部材との間を掛け渡してしまい、短絡事故を引き起こす
ことがある。
【0010】以上のような、活物質合剤層の脱落による
不良品の発生や、活物質合剤層の剥がれや、電池の使用
中に起こる活物質合剤層の脱落に起因する短絡事故の発
生を抑えるために、通常、電極を製造する際に、正極お
よび負極においては、活物質合剤層を構成する各粉末間
で相互結着を高めることが行われる。活物質合剤層を構
成する各粉末の相互結着を高める手段としては、結着剤
をペースト状活物質合剤中に配合することが行われる。
この結着剤には、例えば、フッ素樹脂系結着剤が採用さ
れ、通常、フッ素樹脂系結着剤の分散液をペースト状活
物質合剤中に添加し、混練して、フッ素樹脂系結着剤を
含有したペースト状活物質合剤を調製する。このよう
に、結着剤が添加されたペースト状活物質合剤は、従来
通りに導電性基板に充填塗布され、乾燥、圧延工程を経
て活物質合剤層となる。当該活物質合剤層においては、
フッ素樹脂系結着剤の働きにより、活物質合剤を構成す
る各粉末は相互に結着し、導電性基板から活物質合剤層
が脱落したり、剥がれたりすることが抑えられる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】ところで、渦巻状の極
板群を形成する際の捲回作業などで、活物質合剤が導電
性基板から脱落したり、剥がれたりしないように、充分
な結着力を発現させるためには、ペースト状活物質合剤
中にフッ素樹脂系結着剤を比較的多く添加することが好
ましい。通常、フッ素樹脂系の結着剤の含有量を20重
量%程度にすると、活物質合剤層の内部から表面部にい
たる範囲で、高い結着力が維持される。
【0012】しかしながら、フッ素樹脂系結着剤は、撥
水性が強いため、あまり多く添加すると、担持されてい
る活物質合剤層の内部にまで電解液が充分に浸透せず、
そのため、活物質とアルカリ電解液の接触が絶たれ、活
物質が動作しない部分が生じ、電池反応は阻害され、電
池のサイクル寿命は短くなるという問題が生じる。そこ
で、サイクル寿命を延ばすために、ペースト状活物質合
剤に添加するフッ素樹脂系結着剤の量を少なくすると、
逆に、前記したような、活物質合剤層の脱落や剥がれに
起因する不具合が生じるという問題が起きてしまう。
【0013】本発明は、アルカリ二次電池の電極におけ
る上記した問題を解決し、活物質合剤の脱落や剥がれに
起因する短絡事故等の不具合の発生が少なく、かつ、サ
イクル寿命が長いアルカリ二次電池を得ることができる
アルカリ二次電池の電極およびその製造方法の提供を目
的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明では、導電性基板に活物質合剤層が担持さ
れ、前記活物質合剤層には、その表面側ほど高濃度とな
るようにフッ素樹脂系の結着剤が濃度勾配をもって含有
されていることを特徴とするアルカリ二次電池の電極が
提供される。
【0015】また、本発明では、導電性基板に活物質合
剤層が担持されている電極前駆体をフッ素樹脂系結着剤
の分散液中に浸漬して、前記フッ素樹脂系結着剤が前記
活物質合剤層の表面側ほど高濃度となるように保持する
ことを特徴とするアルカリ二次電池の電極の製造方法が
提供される。本発明のアルカリ二次電池の電極の製造方
法においては、前記電極前駆体を前記分散液中に保持す
るときに、前記電極前駆体に対し、振動付与手段により
振動を与えることが好ましい。
【0016】また、前記振動付与手段として超音波振動
子を用いることが好ましい。本発明によるアルカリ二次
電池の電極は、フッ素樹脂系結着剤が表面側ほど高濃度
となるような濃度勾配を形成して活物質合剤層中に含有
されている。このため、例えば、極板の巻回などのハン
ドリング時に応力が加わりやすい活物質合剤層の表面部
では、充分な結着力が確保されていて活物質合剤層の脱
落は防止される。そして、活物質合剤層の中心部では、
フッ素樹脂系結着剤の濃度は低いので活物質と電解液と
が充分接触でき、電池反応が阻害されることは抑制され
る。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の電極は、導電性基板に活
物質合剤層が担持されており、当該活物質合剤層には、
フッ素樹脂系結着剤が表面側ほど高濃度となるような濃
度勾配をもって含有されていることを特徴としている。
本発明において、フッ素樹脂系結着剤としては、ポリテ
トラフルオロエチレン(PTFE)またはポリクロロト
リフルオロエチレン(PCTFE),テトラフルオロエ
チレン(TFE)−ヘキサフルオロプロピレン(HF
P)の共重合体などの外力を受けると繊維化するフッ素
樹脂を用いることが好ましく、特に、PTFEであるこ
とが好ましい。例えば、フッ素樹脂系結着剤としてPT
FEを用いた場合、このPTFEは、後述するような圧
延等により応力が加えられると、PTFEの微粒子同士
の表面が接触して、互いに粘着すると同時に繊維化して
絡みあうことによりPTFEのネットワークを形成す
る。そのため、活物質合剤層の各粉末の相互結着が進
み、活物質合剤層が脱落したり、剥がれたりすることが
防止されるようになる。
【0018】ここで、本発明における濃度勾配とは、正
極を例にして説明すると、図2に示すような3次元網状
構造の導電性基板31に正極活物質合剤層32が担持さ
れて形成された正極3において、正極活物質合剤層32
の表面32aより、導電性基板31の中心部31aに向
かって、フッ素樹脂系結着剤(PTFE)の含有量が漸
減している分布状態のことをさす。すなわち、表面32
aにおけるPTFEの含有量を1とした場合、電極中心
に向かってPTFE含有量が漸減し、中心部31aでP
TFEの含有量がほぼ0となる分布状態を本発明におけ
る濃度勾配とし、PTFE含有量が中心部31aでも1
になる均一分布、PTFE含有量が表面32aのみ1と
なる表面だけの分布、PTFE含有量が中心部31aに
到達する前に0になる表面から浅い部分のみの分布は、
本発明では不適とする。尚、本発明における活物質合剤
層32とは、3次元網状構造の導電性基板31の内部お
よび表面部に保持されている正極活物質合剤の全体をさ
す。
【0019】また、負極に関しても、濃度勾配とは、負
極活物質合剤層の表面から中心部に向かってフッ素樹脂
系結着剤の含有量が漸減している分布状態のことをさ
す。逆にいえば、PTFEは、導電性基板に充填塗布さ
れている活物質合剤層の表面部、すなわち電極の表面側
ほど高濃度となるように含有されていて、電極の中心部
(活物質合剤層の厚み方向中心部)ほど低濃度でかつ不
均一に含有されている。
【0020】このような濃度勾配をもった電極の場合、
表面側の活物質合剤層に対しては、相対的に高濃度で存
在するPTFEが強力なネットワークを形成するので、
表面部では、活物質合剤層の脱落や剥がれが抑制され
る。そして、活物質合剤層の中心部では、PTFEが低
濃度でかつ不均一に存在しているので、電解液の浸透性
が阻害されることは極めて少ない。すなわち、表面部の
活物質合剤層の脱落や剥がれが抑制され、中心部側で
は、電解液と活物質とが良好な状態で接触し、電池反応
が阻害されることは抑えられる。その結果、短絡の発生
を減少させることができるとともに、電池のサイクル寿
命の長期化がはかれる。
【0021】この電極においては、PTFEが厚さ方向
で濃度勾配をもって分布していれば、PTFEの含有量
は、格別限定されるものではないが、概ね、電極の表面
側,中心部側を合わせた平均値で、導電性基板に担持さ
れている活物質合剤の0.01〜2重量%であることが
好ましい。これは、PTFEが、0.01重量%未満の
場合は、PTFEのネットワークが充分形成されず、ま
た、2重量%を超えると、電解液の浸透性の低下により
電池反応が抑制され、初期容量が定格容量を満たさなく
なるからである。
【0022】本発明の電極は、導電性基板に活物質合剤
層が担持されている電極前駆体をフッ素樹脂系結着剤の
分散液中に浸漬して、前記フッ素樹脂系結着剤が前記活
物質合剤層の表面側ほど高濃度となるように保持するこ
とにより製造される。前記電極前駆体は、所定の活物質
や導電材の粉末を含む混合粉末に増粘剤水溶液を添加し
て調製した粘稠なペースト状活物質合剤を導電性基板に
充填塗布したのち、乾燥処理することにより内部の水分
を蒸発させ、当該ペースト状活物質合剤を乾燥固化させ
ることにより製造される。電極前駆体は以上のようにし
て製造されるので、当該電極前駆体が担持する活物質合
剤層には、乾燥処理時に水分が蒸発することにより生じ
た気孔が多数存在する。すなわち、電極前駆体に担持さ
れる活物質合剤層は、所定多孔度のポーラス構造を成し
ている。このため、当該電極前駆体をフッ素樹脂系結着
剤の分散液に浸漬すると、前記気孔より分散液が浸透し
ていき、活物質合剤層中に結着剤が保持される。
【0023】本発明の電極において、フッ素樹脂系結着
剤に濃度勾配をもたせる方法としては、例えば、前記し
たような所定多孔度のポーラス構造をなす活物質合剤層
を担持した電極前駆体を、所定の粘度および所定の濃度
のPTFE分散液に所定時間浸漬することにより、電極
前駆体の表面側と中心部側においてPTFEの濃度を変
化させる手段がとられる。当該PTFE分散液は、時間
の経過とともに徐々に活物質合剤層中に浸透していくの
で、所定距離浸透していくのに必要な時間を予め求め、
その時間をもとに、活物質合剤層中におけるPTFEの
分布状態を制御する。すなわち、活物質合剤層が担持さ
れている電極前駆体を所定時間PTFE分散液に浸漬さ
せることにより、当該活物質合剤層にPTFEの濃度勾
配をもたせることができる。
【0024】ここで、例えば、多孔度28%の正極活物
質合剤層を担持した正極前駆体を、粒子径が0.2〜
0.4μmのPTFE微粒子を0.5重量%含んだPT
FE分散液に浸漬する場合、浸漬時間を10秒とする
と、図2に示すように、PTFEが表面側ほど高濃度と
なるような濃度勾配をもった正極活物質合剤層を得るこ
とができる。このとき、例えば、浸漬時間が2秒以下の
場合は、PTFEは活物質合剤層の表面に付着するのみ
で、逆に、120秒より長い場合は、PTFEは中心部
まで充分に行き渡り、表面と中心でPTFE濃度が同一
になり濃度勾配は形成されなくなる。
【0025】ところで、電極前駆体をPTFE分散液に
浸漬させる時間をより短くし、電極の生産効率を上げる
場合、PTFE分散液の浸透速度を加速させることが行
われる。また、より高濃度で粘度が高いPTFE分散液
を用いる場合、例えば、PTFEの濃度が60重量%、
粘度25c.pの場合、電極前駆体の活物質合剤層中に
PTFE分散液がスムーズに浸透していかないことがあ
る。以上のような場合、PTFE分散液の浸透を加速す
るために、本発明のアルカリ二次電池の電極の製造方法
においては、PTFE分散液中に浸漬した電極前駆体に
対し、振動付与手段により振動を与えることが行われ
る。このように、電極前駆体に対し、振動付与手段を用
いて振動を与えると、活物質合剤層中の微細な気孔より
空気が排出され、それと同時に前記気孔へフッ素樹脂系
結着剤の分散液が入り込むので、分散液の浸透がスムー
ズに行われる。
【0026】前記振動付与手段としては、振動を発生で
きるものであればどのよなものを用いても構わないが、
例えば、超音波振動子が好適なものとしてあげられる。
前記超音波振動子は、分散液が収容されている容器の外
側に取り付けて用いてもよく、また、直接分散液中に浸
漬させて用いてもよい。超音波振動子を前記容器の外側
に取り付けて振動させた場合、容器が振動し、それにと
もなって容器内の分散液に超音波振動が伝播する。この
とき、電極前駆体を分散液中に浸漬し、前記容器の内壁
に接触させると当該内壁(固体)から電極前駆体に対し
直接振動が与えられる。また、電極前駆体を分散液中に
て容器の内壁に接触しないように保持しても、分散液を
介して電極前駆体に超音波振動が伝わる。一方、超音波
振動子を直接分散液中に浸漬して振動させた場合、超音
波振動子と電極前駆体とを直接接触させることにより当
該電極前駆体に振動を与えることができる。また、超音
波振動子と電極前駆体とを直接接触させなくても、これ
らを対向して配置することにより、分散液を介して電極
前駆体により均一な超音波振動を伝えることができる。
【0027】このとき、当該電極前駆体が受ける超音波
振動のエネルギーが10W未満の場合、濃度や粘度によ
っても異なるが、PTFE分散液の活物質合剤層中への
浸透効果は顕著に表れず、また、1200Wを超える
と、超音波振動により活物質合剤自体が脱落してしま
う。したがって、電極前駆体が受ける超音波振動のエネ
ルギーは、10〜1200Wに設定することが好まし
い。このように、分散液中にて、当該電極前駆体が受け
る超音波振動のエネルギーを10〜1200Wの範囲内
として、所定時間振動を与えると、分散液が電極前駆体
の表面部から中心部に向かって次第に浸透していき、電
極前駆体内におけるフッ素樹脂系結着剤の濃度勾配が形
成される。
【0028】ところで、電極前駆体が受ける超音波振動
のエネルギーは、用いる超音波振動子の発振パワー
(W)や、超音波振動子と電極前駆体との距離、更に
は、両者の間に介在する媒質の性状、例えば、PTFE
分散液の濃度または粘度などの因子によって規定され
る。例えば、他の因子が同じである場合には、超音波振
動子の発振パワーの大小は、そのまま、電極前駆体が受
ける超音波振動のエネルギーの大小を規定する。しか
し、超音波振動子の発振パワーが仮に大であっても、例
えば、超音波振動子と電極前駆体との距離が長かった
り、また、PTFE分散液の濃度が低かったりすると超
音波の伝播の減衰の度合は大きくなるので、電極前駆体
が受ける超音波振動のエネルギーは小さくなる。
【0029】尚、超音波振動子の形状は、円板型、球面
型、円筒型、角柱型等、電極の形状に合わせて適宜選択
して構わない。ここで、例えば、図3に示すように、振
動付与手段として超音波振動子41,41を側面11
a,11aの外側に備えているステンレス鋼製容器11
に、フッ素樹脂系結着剤の分散液fを投入し、この分散
液f中において、シート状電極前駆体21を、容器11
の側面11a,11aの内側からそれぞれ等距離L1 の
位置において、側面11a,11a(超音波振動子の作
用面41aが当接している個所)と、電極前駆体21の
表面21aおよび裏面21bとをそれぞれ対向させて配
置したとき、以下の条件で振動付与を行うと、電極前駆
体21が受ける超音波振動のエネルギーを上記した範囲
内とすることができる。
【0030】すなわち、ステンレス鋼製容器11の側面
部の厚さを0.5〜1.5mm、電極前駆体21から容
器の側面までの距離L1 を10〜20mmに設定し、フ
ッ素樹脂系結着剤の分散液fとして、粒径が0.2〜
0.4μmのPTFE微粒子を0.1〜60重量%含有
しているものを用い、超音波振動子を、その発振パワー
(2個の超音波振動子の合計の出力)が10〜1200
W(駆動周波数1〜30kHz)となるように駆動すれ
ばよい。より好ましくは、超音波振動子の発振パワーを
200〜600Wとする。
【0031】また、例えば、図4に示すように、超音波
振動子41を振動付与手段として底面12bの外側に備
えているステンレス鋼製容器12にフッ素樹脂系結着剤
の分散液fを投入し、この分散液f中において、シート
状電極前駆体21を、容器12の底面12bの内側に面
接触させて配置したとき、以下の条件で振動付与を行う
と、電極前駆体21が受ける超音波振動のエネルギーを
上記した範囲内とすることができる。
【0032】すなわち、底面の厚さが0.5〜1.5m
mであるステンレス鋼製容器に、フッ素樹脂系結着剤の
分散液fとして、粒径が0.2〜0.4μmのPTFE
微粒子を0.3〜1重量%含有しているものを投入し、
当該容器の底面外側に取り付けられた超音波振動子を、
その発振パワーが15〜1500W(駆動周波数1〜3
0kHz)となるように駆動すればよい。より好ましく
は、超音波振動子の発振パワーを300〜800Wとす
る。
【0033】ついで、本発明の電極の製造方法を、ニッ
ケル正極の場合について、具体的に説明する。まず、水
酸化ニッケル粉末、CoO粉末、必要に応じては更に導
電材粉末の所定量を均一に混合し、ここに、例えば、カ
ルボキシメチルセルロース,メチルセルロース,ポリビ
ニルアルコール,ポリアクリル酸ソーダ,ポリエチレン
オキサイドのような増粘剤をイオン交換水に溶解してな
る増粘剤水溶液の所定量を注液して混練することによ
り、所定のペースト状活物質合剤を調製する。
【0034】ついで、このペースト状活物質合剤を導電
性基板に充填塗布したのち、所定の温度で乾燥し、活物
質合剤層を担持したニッケル正極の前駆体を形成する。
ここで、前記導電性基板としては、3次元網状構造の多
孔体であればよく、従来から用いられているものであれ
ば格別限定されるものではないが、ペースト状活物質合
剤の充填量を多くすることができるという点で、例え
ば、多孔度94〜97%で連通孔を有するスポンジ状ニ
ッケルシートを好適なものとしてあげることができる。
また、前記水酸化ニッケルとしては、球状水酸化ニッケ
ルを用いることが好ましく、また、充放電時における膨
張、収縮を抑制するために亜鉛を固溶しているものが好
ましい。尚、水酸化ニッケルの形状は、球状の他、鶏卵
状、楕円体状であっても構わない。このように、水酸化
ニッケルの形状が上記したような形状であると、活物質
合剤の導電性基板への充填塗布を円滑に行うことができ
るとともに担持された活物質合剤層中においてデッドス
ペースの形成が抑制され、活物質合剤層に結着剤分散液
を浸透させる際に、当該分散液が活物質合剤層の深さ方
向および横方向へ浸透し易くなる。
【0035】得られた前駆体を、PTFE分散液に浸漬
する。このとき、まず、所定の容器中へ所定粘度または
所定濃度に調製されたフッ素樹脂系結着剤の分散液を入
れ、当該分散液中にニッケル正極前駆体を浸漬する。
尚、前記容器としては、例えばステンレンス鋼製の容器
が用いられる。ここで、ニッケル正極前駆体は、前記P
TFE分散液の濃度が60重量%未満、粘度が25c.
p未満の場合、当該分散液に所定時間浸漬させるだけで
もよいが、活物質合剤層へのPTFE分散液の浸透速度
を増加させる場合、あるいは、PTFE分散液の濃度お
よび粘度が高くなり(例えば、濃度が60重量%以上、
粘度が25c.p以上)、活物質合剤層中に浸透しにく
くなった場合、前記ステンレス鋼製容器に取り付けた超
音波振動子あるいは分散液中に浸漬させた超音波振動子
により、振動を与えながら当該分散液に所定時間浸漬さ
せる。
【0036】以上のようにニッケル正極前駆体をPTF
E分散液に浸漬させることにより、PTFE分散液は、
活物質合剤層の表面から中心部に向かってPTFEの含
有量が漸減する濃度勾配をもって分布する。ついで、前
記ニッケル正極前駆体を分散液から取り出し、乾燥し、
ついで、ロール圧延を施すことにより、PTFEのネッ
トワークを形成するとともに、厚さの調整を行い、本発
明におけるニッケル正極とする。
【0037】次に、本発明の電極の製造方法を、水素吸
蔵合金負極の場合について、具体的に説明する。まず、
水素吸蔵合金粉末と、ニッケル粉末のような導電材粉末
とを所定の割合で均一に混合して混合粉末を製造し、こ
こに、ニッケル正極の場合と同様な増粘剤水溶液の所定
量を添加して混練することにより、所定のペースト状活
物質合剤を調製する。
【0038】ついで、このペースト状活物質合剤を導電
性基板に充填塗布したのち、所定の温度で乾燥し、活物
質合剤層を担持した水素吸蔵合金負極の前駆体を製造す
る。ここで、前記導電性基板としては、例えば、千鳥格
子模様に開口部が形成されているパンチングメタルシー
トが採用される。このパンチングメタルシートは、通
常、表面に対し3μm程度のニッケルメッキ層を形成す
ることにより防錆処理が施されている軟鋼製のシートが
用いられている。
【0039】尚、本発明において、水素吸蔵合金粉末の
形状としては、水酸化ニッケル粉末の場合と同様な理由
により、例えば、アトマイズ法で製造した球状、鶏卵
状、楕円体状のものが好ましい。また、本発明における
負極活物質合剤層とは、パンチングメタルシートの開口
部および表面部に保持されている負極活物質合剤の全体
をさす。
【0040】以上のようにして得られた前駆体は、PT
FE分散液に浸漬する。このとき、前記したニッケル正
極の場合と同様に、振動を与えずに、あるいは、振動を
与えながら当該前駆体をPTFE分散液に所定時間浸漬
させる。以上のように水素吸蔵合金負極前駆体をPTF
E分散液に浸漬させることにより、PTFEは、活物質
合剤層の表面から中心部に向かって含有量が漸減する濃
度勾配をもって分布する。
【0041】ついで、前記水素吸蔵合金負極前駆体を分
散液から取り出し、乾燥し、ついで、ロール圧延を施す
ことにより、PTFEのネットワークを形成するととも
に、厚さの調整を行い、本発明における水素吸蔵合金負
極とする。以上のようにして得られたニッケル正極およ
び水素吸蔵合金負極を用いて、ニッケル−水素二次電池
を製造することができる。
【0042】このとき、本発明におけるニッケル正極お
よび水素吸蔵合金負極は、表面側のPTFEの含有量が
多いので、特に表面部の活物質合剤層の脱落や剥がれに
対して抵抗性がある。そのため、これらニッケル正極お
よび水素吸蔵合金負極は、極板群の製造の際に電極の表
面に応力が加わる捲回作業が行われる円筒形電池の電極
に好適である。
【0043】尚、以上の説明において、ニッケル・水素
二次電池についてのみ説明してきたが、本発明の電極お
よびその製造方法は、ニッケル正極、水素吸蔵合金負極
に限定されるものではなく、ペースト式の電極であれ
ば、ニッケル・カドミウム電池、ニッケル・鉄電池等、
他のアルカリ二次電池の電極に採用しても構わない。ま
た、本発明の電極、すなわち、電極中においてフッ素樹
脂系結着剤を濃度勾配をもって含有している電極は、ア
ルカリ二次電池において、正極、負極の両方に採用する
ことが好ましいが、正極、負極のどちらか一方だけに採
用しても短絡事故の抑制、電池の長寿命化に寄与するの
で、正極、負極どちらか一方だけの採用でも構わない。
【0044】
【実施例】
実施例1〜6、比較例1、2 3%Zn,0.75%Coが固溶されている球状水酸化
ニッケル粉末100重量部、CoO粉末8重量部、カル
ボキシメチルセルロースの1%水溶液37重量部を混合
してペースト状正極活物質合剤を調製した。
【0045】このペースト状正極活物質合剤を厚さ1.
1mmのスポンジ状ニッケルシートに充填塗布し、80
℃で1時間乾燥し、正極の前駆体を得た。ついで、濃度
が0.5%のPTFE分散液(ポリフロンTFEディス
パージョンD−1、ダイキン工業株式会社製)中に前記
正極の前駆体を表1に示す浸漬時間だけ浸漬した。その
後、当該前駆体を乾燥し、厚さ0.6mmまで圧延して
シート状ニッケル正極を形成した。
【0046】以上のようにして製造された正極に対し
て、以下に示す手順でPTFEの濃度分布の状態を把握
した。すなわち、得られた正極を切断し、切断面に対
し、表面を0として中心部へ向かって0.05mm、
0.1mm、0.20mm、0.30mm(中心部)の
各部位においてオージェ電子分光分析を行い、F元素を
検出し、F元素の濃度から各部位におけるPTFE濃度
を推算した。このようにして、正極の厚さ方向における
PTFEの濃度分布を求めた。そして、当該PTFEの
濃度分布の結果から、ニッケル正極中においてPTFE
が濃度勾配を形成しているか否かを表1に併記した。こ
こで、濃度勾配が形成されている状態とは、図2に示す
ように、正極の表面(活物質合剤層の表面)より中心部
に向かって、PTFEの濃度が漸減している分布状態の
ことをさし、このように濃度勾配を有している正極は、
表1中において○印を付して表した。一方、濃度勾配が
形成されていない状態とは、PTFEが正極の表面のみ
に分布して内部にまでいきわたっていない状態、あるい
は、PTFEが正極の中心部まで十分にいきわたり、表
面と中心部で濃度に差が無い状態のことをさし、これら
濃度勾配が無い正極は、表1中において×印を付して表
した。
【0047】ついで、上記したようにして製造した正極
について、正極中に含まれるPTFEの含有量(表面
部,中心部をあわせての平均値)を測定し、得られた結
果を表1に併記した。尚、PTFEの含有量は、次のよ
うにして求めた。すなわち、まず、得られた正極の重量
を測定し、当該重量から予め求めておいたPTFE分散
液に浸漬する前の正極前駆体の重量を差し引き、正極中
に含まれているPTFEの重量を求め、ついで、予め求
めておいたPTFE分散液に浸漬する前の正極前駆体の
重量から、予め求めておいたスポンジ状ニッケルシート
の重量を差し引き、スポンジ状ニッケルシートに担持さ
れている活物質合剤の重量を求めた。そして、前記活物
質合剤の重量に対する前記PTFEの重量の比率を求
め、当該比率を活物質合剤中のPTFEの含有量とし
た。
【0048】次に、まずアーク溶解法で、組成:MmN
3.3 Co1.0 Mn0.4 Al0.3 (Mmはミッシュメタ
ル)で示される水素吸蔵合金を製造したのち、これを粉
砕して150メッシュ(タイラー篩)下の合金粉末とし
た。その後、イオン交換水100重量部に対し、上記合
金粉末400重量部、カルボキシメチルセルロース1重
量部からなる合金ペーストを調製し、この合金ペースト
に厚さ0.077mm、開孔率38%のパンチングニッ
ケルシートを浸漬したのち引き上げ、大気中で乾燥し、
圧延し、全体の厚さが0.38mmであるシート状負極
を製造した。
【0049】そして、当該シート状負極と、上記したよ
うにして製造したシート状正極との間に、厚さ0.18
mm、目付量73.0g/cm2 のナイロンセパレータ
を配置し、全体を渦巻状に捲回して直径13.0mmの
極板群にした。ついで、鋼にニッケルメッキが施されて
いる内径13.2mmの有底円筒缶に上記極板群を収容
し、ここに、KOH:30重量%が溶解されている電解
液を注入したのち蓋板で密閉し、密閉形の円筒電池(定
格容量:1100mAh)とした。
【0050】これらの電池を0.2Cで充放電を3回繰
り返して活性化を行った。各電池につき、0.2C、1
50%充電後、温度40℃の雰囲気中に7日間放置し
た。そして7日間経過後の電池500個に対して短絡発
生の有無を確認した。そして、500個の電池に対す
る、短絡が発生した電池の割合を求め、この割合を短絡
の発生率とした。得られた結果を表1に示した。
【0051】また、活性化が終了した各電池につき、ま
ず、1Cで充電を行ったのち、最初の放電容量を測定し
た。その後、前記各電池につき、1Cで充放電を行い、
500サイクル目における放電容量を測定した。そし
て、最初の放電容量に対する500サイクル目の放電容
量の維持率を算出した。得られた結果を表1に示した。
【0052】
【表1】
【0053】表1の結果から明らかなように、実施例1
〜6の電池は、短絡の発生率は低く、500サイクル目
の容量維持率が高いことがわかる。このことは、短絡事
故の発生が少なく、かつ、長寿命である良品電池が得ら
れたことを示している。これは、実施例1〜6の電池に
組み込まれているニッケル正極が、表面側ほど高濃度と
なるようにPTFEが濃度勾配をもって含有されている
ことによる。すなわち、当該ニッケル正極は、その表面
部においてPTFEが高濃度で存在するので充分な結着
力を有するPTFEネットワークを形成することがで
き、中心部ではPTFEが低濃度で存在するので活物質
と電解液とを充分に接触させることができるからであ
る。つまり、本発明のニッケル正極は、正極表面からの
活物質合剤層の脱落防止と、撥水性のPTFEによる電
池反応の阻害の抑制とを両立することができる。
【0054】それに対し、比較例1の電池は、実施例1
〜6の電池に比べ、短絡の発生率が高くなっている。こ
れは、比較例1の電池に組み込まれているニッケル正極
においては、PTFEが表面にしか分布していないの
で、活物質合剤層の内部では充分な結着力が得られず、
活物質合剤の一部が脱落し、それが原因で短絡が発生し
たためである。
【0055】また、比較例2の電池は、実施例1〜6の
電池に比べて短絡発生率は低くなっているが、初期放電
容量が定格容量を満たさなかったので500サイクル目
の容量維持率を求めることができなくなっている。これ
は、比較例2の電池に組み込まれているニッケル正極に
おいては、PTFEの含有量が5.0重量%と比較的多
く、しかもPTFEが正極の全体に均一に含有されてい
る(正極の表面と中心部とでPTFEの濃度が等しく、
濃度勾配を形成していない)ためである。すなわち、P
TFEにより充分な結着力を発揮し、活物質合剤の脱落
を有効に防止しているが、当該PTFEは撥水性であ
り、そのPTFEが比較的多く存在するため活物質とア
ルカリ電解液の接触が絶たれ、活物質が動作しない部分
が生じ、電池反応が阻害され、放電容量が低下したため
である。
【0056】ここで、特に、PTFEが正極中におい
て、濃度勾配をもって分布し、かつ、そのときの含有量
が0.01〜2.0重量%である正極を組み込んだ実施
例2〜5の電池は、短絡発生率が1.0%以下、500
サイクル目の容量維持率が80%以上と優れた特性を示
している。すなわち、電池反応を阻害せずに活物質の脱
落を防止することができたことを示している。これは、
少ないPTFE(含有量0.01〜2.0重量%)で、
充分な結着力を有するPTFEネットワークを正極の表
面部近傍に形成することができたからである。このよう
に、正極中のPTFEを濃度勾配を持たせて分布させ、
かつ、その時の含有量(正極の表面部と中心部の平均
値)を0.01〜2.0重量%とすると、結着力の向上
と撥水性の抑制といった相反する特性を高い水準で両立
させることができる。 実施例7〜12、比較例3〜10 粒径が5〜50μmで、Znが7重量%固溶している球
状水酸化ニッケル粉末100重量部、ニッケル粉末10
重量部、CoO粉末8重量部、カルボキシメチルセルロ
ースの1.2重量%水溶液50重量部を混合してペース
ト状正極活物質合剤を調製した。
【0057】このペースト状正極活物質合剤を空孔率9
5体積%、厚さ1.1mmのスポンジ状ニッケルシート
に充填塗布し、80℃で1時間乾燥し、縦90mm、横
230mm、厚さ0.7mmの正極前駆体を得た。つい
で、ステンレス鋼製容器に、表2に示す濃度のPTFE
分散液(ポリフロンTFEディスパージョンD−1、ダ
イキン工業株式会社製)を入れ、当該分散液中に、前記
正極前駆体を表2に示す時間だけ浸漬させた。その後、
正極前駆体を分散液から引き上げ、乾燥し、厚さ0.7
mmまで圧延してシート状ニッケル正極を形成した。
【0058】次に、得られた正極を切断し、切断面に対
し、表面を0として中心部へ向かって0.05mm、
0.10mm、0.20mm、0.35mm(中心部)
の各部位においてオージェ電子分光分析を行い、F元素
を検出し、F元素の濃度から各部位におけるPTFE濃
度を推算した。そして、表面のPTFE濃度を1とした
ときの各部位のPTFE濃度の相対値を求め、その結果
をPTFEの分布状態として表2に示した。
【0059】
【表2】
【0060】表2の結果から明らかなように、超音波振
動を与えない場合、濃度0.5重量%のPTFE分散液
への浸漬時間が10秒で、正極表面より中心部に向かっ
てPTFEの濃度が漸減する分布状態となっている。ま
た、PTFE分散液の濃度が60重量%と比較的高濃度
の場合、超音波振動を与えず、単にニッケル正極前駆体
をPTFE分散液に浸漬させておくだけでは、PTFE
分散液は、正極内部へ浸透していかない(比較例6〜1
0)。 実施例13〜17、比較例11〜14 図3に示すように、振動付与手段として超音波振動子4
1を側面11a,11aの外側に備えている、容器厚さ
1mmのステンレス鋼製容器11に、濃度が0.5重量
%のPTFE分散液(ポリフロンTFEディスパージョ
ンD−1、ダイキン工業株式会社製、PTFE微粒子の
径0.3μm、25℃における粘度が約0.9c.p)
fを投入した。そして、分散液f中に、実施例7と同様
にして製造した正極前駆体21を、容器11の中央に配
置した。ここで、容器の側面11a,11a(超音波振
動子の作用面41aが当接している個所)と、正極前駆
体21の表面21aおよび裏面21bとはそれぞれ対向
させ、一方の側面11aの内側から正極前駆体21の表
面21aまでの距離、および、他方の側面11aから裏
面21bまでの距離L1 はそれぞれ15mmとした。
【0061】このような構成にて、前記超音波振動子
を、1kHzで、表3に示す発振パワーで発振させ、正
極前駆体に対し、表3に示す時間(浸漬時間)だけ超音
波振動を与えた。尚、このとき、分散液中において、正
極前駆体が配置されている位置と同じ位置に振動エネル
ギー測定センサーを配置し、当該センサーにより超音波
振動のエネルギーを測定した。そして、当該エネルギー
の値を前記前駆体が受ける超音波振動のエネルギーとし
て、その値を表3に併記した。
【0062】その後、正極前駆体を分散液より取り出
し、乾燥し、厚さ0.7mmまで圧延してシート状ニッ
ケル正極を形成した。次に、得られた正極に対し、実施
例7と同様にしてPTFEの分布状態を求め、その結果
を表3に示した。
【0063】
【表3】
【0064】表3の結果から明らかなように、超音波振
動を与えるとPTFE分散液への浸漬時間が6秒で、正
極表面より中心部に向かってPTFEの濃度が漸減する
分布状態となっている。つまり超音波振動を与えると、
PTFE分散液の浸透が加速され、少ない時間で、PT
FE結着剤を電極内において本発明における濃度勾配を
もった分布状態とすることができる。 実施例18〜26、比較例15〜19 実施例7と同様にして正極前駆体21を製造した。そし
て、分散液として濃度が60重量%のPTFE分散液
(ポリフロンTFEディスパージョンD−1、ダイキン
工業株式会社製、PTFE微粒子の径0.3μm、25
℃における粘度が25c.p)を用いたことを除いては
実施例13と同様にして正極前駆体21をステンレス鋼
製容器中に配置した。
【0065】その後、前記超音波振動子を、10kHz
で、発振パワーが表4に示す値となるように発振させ、
正極前駆体に対し、表4に示す時間(浸漬時間)だけ超
音波振動を与えた。このとき、実施例13と同様にして
前記前駆体が受ける超音波振動のエネルギーを求め、そ
の値を表4に併記した。ついで、当該前駆体を分散液よ
り取り出し、乾燥し、厚さ0.7mmまで圧延してシー
ト状ニッケル正極を形成した。
【0066】次に、得られた正極に対し、実施例7と同
様にしてPTFEの分布状態を求め、その結果を表4に
示した。尚、超音波振動により前記分散液中に脱落した
正極活物質合剤を回収し、その重量を測定した。そし
て、各測定結果に対し、比較例15の脱落量を1とした
ときの相対値を求め、それを脱落比として表4に併記し
た。
【0067】また、球状水酸化ニッケル粉末の代わり
に、亜鉛を3重量%固溶しており、最長部分の幅が1〜
200μmである不定形の水酸化ニッケル粉末を用いた
ことを除いては、実施例7と同様にして正極前駆体を製
造した。そして、得られた正極前駆体を用い、実施例1
8と同様にして、浸漬時間を表4に示すように変化させ
てニッケル正極を製造した(比較例19、実施例2
6)。得られた正極に対し、実施例18と同様にしてP
TFE濃度および活物質合剤の脱落比を求めた。その結
果を表4に併記した。
【0068】
【表4】
【0069】表4の結果から以下のことが明らかとな
る。すなわち、PTFE分散液中に浸漬した正極前駆体
に超音波振動を与えると、PTFE分散液が高濃度であ
っても、PTFE分散液の正極への浸透は促進されるこ
とがわかる。しかしながら、エネルギーが5Wと小さい
場合、分散液の浸透は表面近傍のみであり、逆に、15
00W以上になると、表面から中心部までPTFEの濃
度が均一になり濃度勾配が形成されなくなるとともに、
振動が強くなりすぎ活物質合剤の脱落量が多くなってし
まう。
【0070】比較例19の結果から明らかなように、不
定形の粉末を採用すると、PTFE分散液の浸透性が悪
化し、中心部よりも表面に近い部位でPTFEの濃度が
0になってしまうことがわかる。これは、不定形の粉末
の場合、デッドスペースが生じ易く、当該個所へのPT
FE分散液の浸透がしにくいことを表している。それに
対し、実施例22のように球状の粉末を採用した電極
は、電極の深さ方向および横方向へのPTFE分散液の
浸透が阻害されにくいことがわかる。
【0071】また、不定形の粉末を採用した場合であっ
ても、実施例26のように、PTFE分散液への浸漬時
間を延長すれば、PTFE濃度を、表面側ほど高く、中
心部に向かってほぼ0となるようにすることができるこ
とがわかる。 比較例20〜24 組成:MmNi3.2 CoAl0.2Mn0.4(Mmはミッシ
ュメタル)で示される水素吸蔵合金をアトマイズ法によ
り微粉化し、粒径10〜30μmの球状の水素吸蔵合金
粉末を製造した。その後、上記合金粉末100重量部、
カルボキシメチルセルロース1%水溶液20重量部を均
一に混合することによりペースト状の負極活物質合剤を
調製し、このペースト状活物質合剤に、3μmのニッケ
ルメッキが施された軟鋼からなるパンチングメタルシー
ト(厚さ0.077mm、開孔率38%)を浸漬したの
ち引き上げ、80℃で乾燥し、水素吸蔵合金負極の前駆
体を製造した。
【0072】ついで、ステンレス鋼製容器に、濃度が6
0重量%のPTFE分散液(ポリフロンTFEディスパ
ージョンD−1、ダイキン工業株式会社製、PTFE微
粒子の径0.3μm、25℃におけるが粘度25c.
p)を入れ、当該分散液中に、前記水素吸蔵合金負極前
駆体を表5に示す時間だけ浸漬させた。その後、負極前
駆体を分散液から引き上げ、乾燥し、厚さ0.4mmま
で圧延してシート状水素吸蔵合金負極を形成した。
【0073】次に、得られた負極を切断し、切断面に対
し、表面を0として中心部へ向かって0.05mm、
0.10mm、0.15mm、0.20mm(中心部)
の各部位においてオージェ電子分光分析を行い、F元素
を検出し、F元素の濃度から各部位のPTFE濃度を推
算した。そして、表面のPTFE濃度を1としたときの
各部位のPTFE濃度の相対値を求め、その結果をPT
FEの分布状態として表5に示した。
【0074】
【表5】
【0075】表5より明らかなように、水素吸蔵合金負
極前駆体を、超音波振動を与えずにPTFE分散液に浸
漬させておくだけでは、高濃度(60重量%)のPTF
E分散液は、負極内部へ浸透していかないことがわか
る。 実施例27〜34、比較例25〜29 比較例20と同様にして水素吸蔵合金負極前駆体を製造
した。
【0076】ついで、実施例13と同様なステンレス鋼
製容器11中に、濃度が60重量%のPTFE分散液
(ポリフロンTFEディスパージョンD−1、ダイキン
工業株式会社製、PTFE微粒子の径0.3μm、25
℃における粘度が25c.p)を注液した。そして、前
記水素吸蔵合金負極前駆体を容器11の中央に配置し
た。ここで、容器の側面11a,11a(超音波振動子
の作用面41aが当接している個所)と、負極前駆体の
表面および裏面とはそれぞれ対向させ、一方の側面11
aの内側から負極前駆体の表面までの距離、および、他
方の側面11aから裏面までの距離はそれぞれ15mm
とした。
【0077】その後、超音波振動子を、5kHzで、発
振パワーが表6に示す値となるように発振させ、負極前
駆体に対し、表6に示す時間(浸漬時間)だけ超音波振
動を与えた。このとき、実施例13と同様にして前記前
駆体が受ける超音波振動のエネルギーを求め、その値を
表6に併記した。その後、当該前駆体を分散液より取り
出し、80℃で乾燥し、厚さ0.4mmまで圧延してシ
ート状水素吸蔵合金負極を形成した。
【0078】次に、得られた負極を切断し、切断面に対
し、比較例20の場合と同様にしてF元素を検出し、F
元素の濃度から各部位におけるPTFE濃度を推算し
た。そして、表面のPTFE濃度を1としたときの各部
位のPTFE濃度の相対値を求め、その結果をPTFE
の分布状態として表6に示した。尚、超音波振動により
前記分散液中に脱落した水素吸蔵合金粉末合剤(負極活
物質合剤)を回収し、その重さを測定した。そして、各
測定結果に対し、比較例25の脱落量を1としたときの
相対値を求め、それを脱落比として表6に併記した。
【0079】また、球状の水素吸蔵合金粉末の代わり
に、ハンマーミルで粉砕した不定形(150メッシュ
(タイラー篩)下)の水素吸蔵合金粉末を用いたことを
除いては、比較例20と同様にして負極前駆体を製造し
た。そして、得られた負極前駆体を用い、実施例27と
同様にして水素吸蔵合金負極を製造した(比較例2
9)。得られた負極に対し、実施例27と同様にしてP
TFE濃度および活物質合剤の脱落量を求めた。その結
果を表6に併記した。
【0080】
【表6】
【0081】表6の結果から以下のことが明らかとな
る。すなわち、PTFE分散液の濃度が60重量%と比
較的高濃度の場合、水素吸蔵合金負極前駆体に対し、超
音波振動を与えると、PTFE分散液の負極活物質合剤
層への浸透は促進されることがわかる。しかしながら、
電極前駆体が受けるエネルギーが5Wと小さい場合、分
散液の浸透は表面近傍のみであり、逆に、1500W以
上になると、表面から中心部までPTFEの濃度が均一
になり濃度勾配が形成されなくなるとともに、振動が強
くなりすぎ合剤層の脱落量が多くなってしまう。
【0082】また、比較例29の結果から明らかなよう
に、不定形の粉末を採用すると、PTFE分散液の浸透
性が悪化し、中心部よりも表面に近い部位でPTFEの
濃度が0になってしまうことがわかる。 実施例35 実施例22と同様にして製造したシート状ニッケル正極
と、実施例31と同様にして製造したシート状水素吸蔵
合金負極とを用意した。
【0083】ついで、ポリオレフィン樹脂系不織布(日
本バイリーン(株)製FT−310)を水洗して表面に
付着している非イオン表面活性剤を除去した後乾燥し、
その不織布を、濃度95%の濃硫酸(温度100℃)に
30分間浸漬した。その後当該不織布を流水で十分に洗
浄し、温度80℃で1時間乾燥したのち、濃度1%の水
酸化ナトリウム水溶液に5分間浸漬した後水洗した。更
に、ポリアミド系樹脂不織布(日本バイリーン(株)製
FT−773)を水洗し、当該ポリアミド系不織布を前
記ポリオレフィン樹脂系不織布で挟み込み、3kg/m
2 の圧力をかけながら温度80℃で1時間保持し、一体
化して、厚さ0.18mm、目付量60g/cm2 のセ
パレータを形成した。このとき、ポリアミド系樹脂不織
布とポリオレフィン系樹脂不織布との厚さの比は、1:
1とした。
【0084】以上のようにして製造したセパレータを、
前記シート状ニッケル正極とシート状水素吸蔵合金負極
との間に配置し、全体を渦巻状に捲回して直径13.0
mmの極板群にした。ついで、鋼にニッケルメッキが施
されている内径13.2mmの有底円筒缶に上記極板群
を収容し、ここに、NaOH:0.6N、LiOH:1
N、KOH:7Nからなる電解液を注入したのち蓋板で
密閉し、密閉形の円筒電池(定格容量:1200mAh
のAA型ニッケル・水素二次電池)を組み立てた。尚、
当該電池は、10000個製造した。
【0085】これらの電池につき、温度0℃において1
200mAで1.5時間充電したのち、放電終止電圧が
1Vの放電状態となるように1200mAで1.25時
間放電を行い、その後0.25時間休止する作業を1サ
イクルとし、この作業を500回繰り返す500サイク
ル充放電試験を行った。そして、500サイクル目の放
電容量を測定し、500サイクル充放電試験前の放電容
量(1200mAh)に対する当該測定値の割合を求め
た。その結果を500サイクル目の放電容量と容量維持
率として表7に示した。更に、前記サイクル試験終了後
の電池を解体し、電池缶内に脱落している活物質合剤
(正極および負極に担持されている合剤)の重量(脱落
量)を測定した。そして、後述する比較例31の脱落し
た活物質合剤の重量を1としたときの本実施例における
活物質合剤の脱落量の相対値を求め、その結果を活物質
合剤の脱落比として表7に併記した。
【0086】また、上記電池と同様にして定格容量12
00mAhのAA型ニッケル・水素二次電池を更に10
000個組み立てた。得られた電池に対して、下記の仕
様で短絡の発生率を求めた。すなわち、得られた電池に
対して、上記と同様に500サイクル充放電試験を行っ
た後、個々の電池について開路電圧を求め、その電圧値
が規格電圧以下である電池を抜き出した。ついで、抜き
出した電池を解体し、脱落した活物質合剤が正極側部材
と負極側部材との間を掛け渡してしまっているものを短
絡が発生した電池として計数した。そして、製造した電
池の総数(10000個)に対する短絡が発生した電池
の個数の割合を求め、この割合を短絡の発生率(%)と
した。この結果を表7に併記した。 実施例36 実施例26と同様にして製造したシート状ニッケル正極
(不定形の水酸化ニッケル粉末を採用しているが、正極
中においてPTFEが濃度勾配を形成している正極)を
用意した。
【0087】負極として以下に示すようにして製造した
シート状水素吸蔵合金負極を用意した。すなわち、まず
アーク溶解法で、組成:MmNi3.2 CoAl0.2Mn
0.4(Mmはミッシュメタル)で示される水素吸蔵合金
を製造したのち、これを粉砕して150メッシュ(タイ
ラー篩)下の合金粉末とした。その後、上記合金粉末1
00重量部に、結着剤としてのPTFEを5.3重量
部、イオン交換水で希釈したカルボキシメチルセルロー
ス1重量部を添加し、均一に混合することによりペース
ト状負極活物質合剤を調製した。尚、当該合剤において
はPTFEは繊維化している。ついで、前記ペースト状
負極活物質合剤に、3μmのニッケルメッキが施された
軟鉄からなるパンチングメタルシート(厚さ0.077
mm、開孔率38%)を浸漬したのち引き上げ、80℃
で乾燥したのち、圧延し、全体の厚さが0.4mmであ
るシート状の水素吸蔵合金負極を製造した。つまり、当
該水素吸蔵合金負極は、ペースト状活物質合剤中にPT
FEが添加され混練されて繊維化している従来型の負極
である。
【0088】以上の正極と負極とを用いたことを除いて
は、実施例35と同様にして定格容量1200mAhの
AA型ニッケル・水素二次電池を製造した。そして、得
られた電池に対して、実施例35と同様にして500サ
イクル後の放電容量、容量維持率、500サイクル後の
活物質合剤の脱落量、500サイクル後の短絡発生率を
それぞれ求め、その結果を表7に併記した。 比較例30 比較例19と同様にして製造したシート状ニッケル正極
(不定形水酸化ニッケル粉末使用)と、比較例29と同
様にして製造したシート状水素吸蔵合金負極(不定形水
素吸蔵合金粉末使用)とを用いたことを除いては、実施
例35と同様にして定格容量1200mAhのAA型ニ
ッケル・水素二次電池を製造した。そして、得られた電
池に対して、実施例35と同様にして500サイクル後
の放電容量、容量維持率、500サイクル後の活物質合
剤の脱落量、500サイクル後の短絡発生率をそれぞれ
求め、その結果を表7に併記した。 比較例31 比較例9と同様にして超音波振動を与えずに製造したシ
ート状ニッケル正極と、比較例23と同様にして超音波
振動を与えずに製造したシート状水素吸蔵合金負極とを
用いたことを除いては、実施例35と同様にして定格容
量1200mAhのAA型ニッケル・水素二次電池を製
造した。そして、得られた電池に対して、実施例35と
同様にして500サイクル後の放電容量、容量維持率、
500サイクル後の活物質合剤の脱落量、500サイク
ル後の短絡発生率をそれぞれ求め、その結果を表7に併
記した。
【0089】
【表7】
【0090】表7の結果より以下のことが明らかとな
る。すなわち、比較例31のニッケル水素二次電池は、
500サイクル後の活物質合剤の脱落量が多く、短絡発
生率も高い。また、容量維持率も91.7%と低くなっ
ている。これは、PTFE結着剤が電極の表面にしか存
在しておらず、活物質合剤層を構成する各粉末同士の相
互結着力が低いため、充放電の繰り返しによる電極の膨
張収縮にともない活物質合剤が脱落したり剥がれたりし
たことに起因する。
【0091】比較例30のニッケル・水素二次電池は、
500サイクル後の活物質合剤の脱落量が比較例31の
2/3で、短絡発生率も高く、容量維持率は93.3%
である。当該電池に組み込まれた正極、負極は、超音波
振動によりPTFE分散液を浸透させて製造されている
が、PTFEの浸透深さは、ともに、表面から0.1m
mの部位までであるので、充分な結着力が得られず、そ
のため活物質合剤の脱落量が比較的多くなっている。
【0092】実施例35のニッケル・水素二次電池は、
容量維持率が100%と高く、500サイクル経過後も
初期特性を維持している。また、500サイクル後の活
物質合剤の脱落量も比較例31の1/5と少なく、短絡
発生率も低い。このことは、短絡事故の発生が少なく、
かつ、長寿命である良品電池が得られたことを示してい
る。これは、当該電池に組み込まれている正極、負極と
もに、表面部から中心部に向かって濃度勾配をもってP
TFEが浸透しているため、必要な部分に最低限の結着
剤が存在し、電池反応を阻害せずに充分な結着力を確保
しているからである。
【0093】実施例36のニッケル・水素二次電池は、
容量維持率が97.5%、500サイクル後の活物質合
剤の脱落量は比較例31の1/3であり、短絡発生率も
低く、比較例30、31のニッケル・水素二次電池より
も優れた特性を示している。これは、当該電池に組み込
まれている正極においては、不定形の水酸化ニッケル粉
末を使用しているが、PTFEが濃度勾配をもって含有
されているため、電池反応を阻害せずに結着力を確保す
ることができているからである。つまり、フッ素樹脂系
結着剤が濃度勾配をもって含有している電極を、正極又
は負極の少なくとも一方に採用すれば、短絡事故の発生
を抑え、長寿命化に有効であることを示している。
【0094】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明に
おけるアルカリ二次電池の電極は、表面側ほど高濃度と
なるようにフッ素樹脂系の結着剤が濃度勾配をもって活
物質合剤層中に含有されているので、表面部では充分な
結着力を有するPTFEネットワークを形成することが
でき、中心部では、活物質と電解液とが充分接触し、電
池反応は阻害されにくい。そのため、活物質合剤の脱落
や剥がれに起因する短絡の発生が少なくなるとともに電
解液の浸透性を阻害するフッ素樹脂系の結着剤の含有量
を少なくすることができ、寿命が長い優れた電池を得る
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】円筒形の密閉電池の内部構造を示す一部切欠斜
視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】結着剤分散液を介して電極前駆体に振動を与え
る際の概略構成図である。
【図4】振動付与手段を備える容器の内壁に電極前駆体
を接触させて振動を与える際の概略構成図である。
【符号の説明】
1 外装缶 2 絶縁板 3 シート状正極 4 シート状負極 5 セパレータ 6 蓋板 7 正極端子 8 絶縁ガスケット 11,12 ステンレス鋼製容器 11a 側面 12b 底面 21 電極前駆体 21a 表面 21b 裏面 31 導電性基板 31a 中心部 32 正極活物質合剤層 32a 正極活物質合剤層の表面 41 超音波振動子 41a 作用面

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性基板に活物質合剤層が担持され、
    前記活物質合剤層には、その表面側ほど高濃度となるよ
    うにフッ素樹脂系の結着剤が濃度勾配をもって含有され
    ていることを特徴とするアルカリ二次電池の電極。
  2. 【請求項2】 導電性基板に活物質合剤層が担持されて
    いる電極前駆体をフッ素樹脂系結着剤の分散液中に浸漬
    して、前記フッ素樹脂系結着剤が前記活物質合剤層の表
    面側ほど高濃度となるように保持することを特徴とする
    アルカリ二次電池の電極の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記電極前駆体を前記分散液中に保持す
    るときに、前記電極前駆体に対し、振動付与手段により
    振動を与える請求項2のアルカリ二次電池の電極の製造
    方法。
  4. 【請求項4】 前記振動付与手段が超音波振動子である
    請求項3のアルカリ二次電池の電極の製造方法。
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