JPH1053781A - 潤滑剤の製造方法 - Google Patents

潤滑剤の製造方法

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JPH1053781A
JPH1053781A JP21289696A JP21289696A JPH1053781A JP H1053781 A JPH1053781 A JP H1053781A JP 21289696 A JP21289696 A JP 21289696A JP 21289696 A JP21289696 A JP 21289696A JP H1053781 A JPH1053781 A JP H1053781A
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JP
Japan
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perfluoropolyether
carboxyl group
lubricant
ester compound
toluene
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JP21289696A
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Hirofumi Kondo
洋文 近藤
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Original Assignee
Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 末端にカルボキシル基を有するパーフルオロ
ポリエーテル類を高純度に精製する。そして、このよう
なパーフルオロポリエーテル類を用いることで、磁気記
録媒体の走行耐久性を改善する。 【解決手段】 合成物中に目的合成物として含有される
末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテ
ルをエステル化し、そのエステル化合物を溶媒で抽出
し、エステル結合を加水分解する。そして、この精製過
程で精製するエステル化合物のアルコール部の炭素数N
cとパーフルオロポリエーテル部の炭素数Nfの比を規
制する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、潤滑剤の製造方法
に関し、特に末端にカルボキシル基を有するパーフルオ
ロポリエーテル類の精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】強磁性金属材料を蒸着等の手法により非
磁性支持体上に被着し、これを磁性層とした、いわゆる
金属薄膜型の磁気記録媒体は、磁性層が強磁性粉末と結
合剤により構成される塗布型の磁気記録媒体に比べて、
磁性層における磁性材料の充填密度が高い等の点から、
磁気特性に優れており、近年各種磁気記録媒体システム
において使用されるようになっている。
【0003】ここで、この金属薄膜型の磁気記録媒体
は、磁性層表面の平滑性が極めて良好であるため、磁気
ヘッドやガイドローラー等の摺動部材に対する実質的な
接触面積が大きく、従って摩擦係数が大きくなり凝着現
象(いわゆる張り付き)が起き易く、走行性や耐久性に
欠ける等問題点が多い。
【0004】例えば、8ミリビデオデッキやハードディ
スク装置に適用した場合では、以下のような問題が生じ
る。
【0005】先ず、8ミリビデオデッキに挿入されたテ
ープは、10個以上のガイドピンを通ってドラムに巻き
付けられる。その際、ピンチローラーとキャプスタンに
よってテープテンションとテープ走行速度は一定に保た
れていて、通常テンションは約20g、走行速度は0.
5cm/秒である。
【0006】このような走行系において、テープの磁性
層側はステンレス製の固定されたガイドピンと接触する
構造になっている。このため、テープ表面の摩擦が大き
くなると、テープがスティックスリップを起こしていわ
ゆるテープ鳴きという現象が起き、再生画面のひきつれ
を起こす。
【0007】また、テープとヘッドとの相対速度は非常
に大きく、特にポーズ状態では同じ場所での高速接触と
なるので、磁性層の摩耗の問題が生じ、再生出力の低下
につながる。
【0008】かかる磁性層の摩耗の問題は、上記金属磁
性薄膜型の磁気記録媒体では磁性層が非常に薄いので非
常に深刻である。
【0009】一方、ハードディスク装置では、CSS
(コンタクト・スタート・ストップ)方式が採用されて
いる。このCSS方式は、回転前(ディスクの停止時)
には磁気ヘッドはディスクに接触しており、起動時にデ
ィスクが高速回転を始めると、これに伴って発生する空
気流によって磁気ヘッドがディスク表面から浮上し、こ
の状態で記録再生が行われる。そして、運転停止時にデ
ィスクの回転が減速され、これにより再び磁気ヘッドが
ディスクと接触することとなる。
【0010】それゆえ、このCSS方式においては、デ
ィスクの運転停止時(磁気ヘッドがディスクと接触して
からディスクの回転が停止するまでの間)あるいは起動
開始時(ディスクの回転が開始されてから磁気ヘッドが
浮上するまでの間)に磁気ヘッドが媒体表面を擦って走
行することになるので、そのときの摩擦増加が大きな問
題となっている。
【0011】商品レベルの信頼性を保つにはCSS操作
を2万回行った後の摩擦係数が0.5以下であることが
望まれるが、表面平滑性の高い上記金属磁性薄膜型の磁
気記録媒体(磁気ディスク)では、この条件を満たすの
が難しい。また、高速で回転しているので、ヘッドと媒
体の衝突によるヘッドクラッシュ等の問題も薄膜媒体で
は解決すべき課題の一つである。
【0012】そこで、これら問題点を改善するために、
各種の潤滑剤を使用することが検討されており、従来よ
り高級脂肪酸やそのエステル等の潤滑剤を上記磁気記録
媒体の磁性層にトップコートすることにより摩擦係数を
抑えようとする試みがされている。
【0013】ところで、磁気記録媒体に使用される潤滑
剤には、その性質上、次のような非常に厳しい特性が要
求され、従来用いられている潤滑剤では対応することが
難しいのが現状である。
【0014】即ち、磁気記録媒体に使用される潤滑剤に
は、(1)寒冷地での使用に際して所定の潤滑効果が確
保されるように低温特性に優れること、(2)磁気ヘッ
ドとのスペーシングが問題となるので極めて薄く塗布で
きることと、その場合にも十分な潤滑特性が発揮される
こと、(3)長時間、あるいは長時間の使用に耐え、潤
滑効果が持続すること、等が要求される。
【0015】これらの要件を満たすためには、潤滑剤と
しては、ヘッドとの良好な潤滑性能、テープあるいはデ
ィスク表面への均一で強固な密着性、これらの性能の長
期(例えば10年)保持、このような要求を数nm程度
のほぼ単分子レベルの膜厚で実現するには、潤滑剤の検
討が必要である。
【0016】潤滑特性は明らかに潤滑剤の分子構造に依
存することがわかっているが、特に磁気記録媒体につい
て開発されたものは、大別するとシリコン系、炭化水素
系、フッ素化炭素系の3種類に分類される。
【0017】このうち、シリコン系潤滑剤は、熱安定性
がよいことと蒸気圧が低いために塗布型媒体では良く使
用されている潤滑剤のひとつである。しかし、現在の様
な非常に表面性の良い薄膜型の磁気記録媒体の上では余
りよい潤滑性能がなく、ピンオンディスクの摩耗加速試
験、あるいはCSS試験での潤滑特性は耐久性の仕様を
満足しない。つまり、現在主流になっている薄膜型磁気
記録媒体表面で配向された潤滑膜を形成し、要求される
潤滑特性を満足させることは、シリコン系の潤滑剤では
非常に限られてくる。
【0018】また、炭化水素系潤滑剤は、塗布型の磁気
記録媒体では現在でも主流の潤滑剤である。しかし、熱
的あるいは化学的な安定性については、一般的には炭化
水素系潤滑剤はシリコン系あるいはフッ素系潤滑剤と比
較して悪く、また分子が摩擦によって反応してできるフ
リクショナルポリマーが、炭化水素系の潤滑剤を用いた
システムで生成しやすい。このポリマーは潤滑特性を低
下させ、ときには致命的な故障となる。また、この炭化
水素系潤滑剤では、蒸気圧が高いことも欠点の一つであ
る。即ち、この炭化水素系潤滑剤は、優れた潤滑性能を
示すものの、蒸気圧が高いために次第に揮発してゆく。
このため、潤滑剤を表面にトップコートするだけで保持
させる金属磁性薄膜型の磁気記録媒体では、表面から潤
滑剤が揮発してしまうとそれが補充ができないために、
潤滑性能を維持することが困難であり、実際の薄膜磁気
媒体に使用されにくい。
【0019】フッ素系潤滑剤は、金属磁性薄膜型の磁気
記録媒体において、現在最も良く使用されている潤滑剤
である。フッ素系潤滑剤の中でも、とりわけ前述のパー
フルオロポリエーテルは他のフッ素系潤滑剤と比較して
潤滑性能や表面保護作用が良いために広く用いられてい
る。この理由については、CF2 −O−CF2 エーテル
結合がフレキシブルであるため、分子量が同じパーフル
オロアルカンと比べて粘度が低いこと、幅広い温度領域
で粘度が変化しないこと等が挙げられる。これに加え
て、化学的に不活性であること、蒸気圧が低いこと、熱
的あるいは化学的安定性が高いこと、表面エネルギーが
低いこと、境界潤滑特性がよいこと、更に撥水性が良い
ことが特長として挙げられる。
【0020】例えば、潤滑剤に要求される熱的及び化学
的安定性について言えば、磁気記録システムでは、媒体
と磁気ヘッドの相対速度が数mを越えるものもあり、そ
の接触部分で発生する摩擦熱によって媒体表面の温度が
瞬時ではあるが急激に増加することがある。その接触部
分での温度は、正確な測定方法はまだ確立されていない
が、計算による評価では数百℃を越えると見積もられて
いる。特にこのような境界潤滑条件下では、摺動部に反
応性の表面が露出するので、これが上述の接触点での温
度上昇とあいまって潤滑剤分子の分解反応が促進され
る。このため、磁気記録媒体で用いる潤滑剤としては、
熱的な及び化学的な安定性は非常に重要となり、そのよ
うな点で優れるパーフルオロポリエーテルがよく使用さ
れることになる。
【0021】ここで、上記パーフルオロポリエーテルの
特性は、その分子構造に非常に強く依存する。現在数種
類のパーフルオロポリエーテルが市販されているが、そ
れらは分子量、主鎖の繰り返し単位、末端基がそれぞれ
異なる。
【0022】例えば、アウジモント社製の商品名Fom
blin−YタイプはCF(CF3)CF2 OとCF2
Oのランダム重合体で主鎖の繰り返し単位が分岐構造を
持っているのに対して、Fomblim−ZタイプはC
2 CF2 OとCF2 Oの重合体で直鎖構造を持つ。こ
の直鎖構造のために低粘度となり、他のタイプと比べて
優れた潤滑特性を示す。また、ダイキン工業社製の商品
名Demnumタイプ及びデュポン社製の商品名Kry
toxタイプは、それぞれヘキサフルオロプロピレンオ
キシド及びヘキサフルオロイソプロピレンオキシドのホ
モポリマーである。このタイプはFomblim−Zタ
イプと比べると粘度的には高くなるが、化学安定性は良
い。
【0023】また、パーフルオロポリエーテルは、化学
的に比較的不活性なために、磁気媒体表面での吸着能力
に欠ける。そこで吸着力を改善するために、両末端に極
性基を持つパーフルオロポリエーテルとして、アウジモ
ント社製の商品名Fomblin Z−DOL(極性基
として水酸基を導入)や同社製の商品名Fomblin
AM2001(極性基としてピペロニル基を導入)が
開発されている。このうち、Fomblin AM20
01は特に金属表面やカーボン表面で非常に強い固定化
作用があり、末端の極性基の導入により摩擦係数が減少
し、磁気ディスクの耐用年数が向上する。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このパ
ーフルオロポリエーテル類に極性基を導入する際の反応
収率は必ずしも良くなく、生成物中に未反応不純物、即
ち極性基が所定量で導入されなかったパーフルオロポリ
エーテル類が混入することが多い。
【0025】このような未反応不純物は、潤滑剤の耐久
性を損なう原因になるため、合成物から除去しておくの
が望ましい。しかし、極性基を含有するパーフルオロポ
リエーテル類をこのような未反応不純物と分離し、精製
するのは難しいのが実状である。
【0026】即ち、有機化合物を精製する方法として
は、蒸留等の物理的な方法、溶媒によって目的とする有
機化合物を抽出する方法、シリカゲル或いはアルミナを
カラム充填材とするカラムクロマトグラフィー等が考え
られる。
【0027】しかしながら、このうち蒸留等の物理的な
方法は、パーフルオロポリエーテル類のような比較的分
子量が大きい化合物を精製するには適当な方法であると
は言えない。
【0028】また、溶媒による抽出やカラムクロマトグ
ラフィーでは、パーフルオロポリエーテル類を溶解させ
る溶媒が必要となる。しかし、パーフルオロポリエーテ
ル類は、フロンあるいはパーフルオロ炭素等のフッ素系
溶媒、即ち地球環境保護の点で制限のある溶媒にしか十
分な溶解性を示さず、これらを使用せざるを得ないこと
から、工業レベルで行うには問題がある。
【0029】それゆえ、パーフルオロポリエーテル系潤
滑剤の純度を上げる精製方法を検討し、磁気記録媒体の
潤滑特性を改良することは非常に重要である。何となれ
ば、パーフルオロポリエーテル以外に熱的或いは化学的
な安定性、また媒体表面との吸着性に優れた潤滑剤は見
い出だされていないからである。
【0030】そこで、本発明は、このような従来の実情
に鑑みて提案されたものであり、カルボキシル基を有す
るパーフルオロポリエーテルが高純度に得られる潤滑剤
の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0031】
【問題点を解決するための手段】上述の目的を達成する
ために、本発明の潤滑剤の製造方法は、合成物中に含有
される片末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポ
リエーテルを長鎖アルコールによってエステル化し、そ
のエステル化合物を溶媒で抽出した後、該エステル化合
物を加水分解することによって、前記末端にカルボキシ
ル基を有するパーフルオロポリエーテルを精製するに際
して、エステル化合物のアルコール部の炭素数Ncと、
パーフルオロポリエーテル部の炭素数Nfの比(Nc/
Nf)×100が28%以上であることを特徴とするも
のである。
【0032】また、合成物中に含有される両末端にカル
ボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルを長鎖ア
ルコールによってエステル化し、そのエステル化合物を
溶媒で抽出した後、該エステル化合物を加水分解するこ
とによって、前記両末端にカルボキシル基を有するパー
フルオロポリエーテルを精製するに際して、上記エステ
ル化合物のアルコール部の炭素数Ncと、パーフルオロ
ポリエーテル部の炭素数Nfの比(Nc/Nf)×10
0が31%以上62%未満であることを特徴とするもの
である。
【0033】カルボキシル基が所定量で導入されたパー
フルオロポリエーテル類のエステル化合物と、不純物で
あるところの、カルボキシル基の導入が不十分なパーフ
ルオロポリエーテル類のエステル化合物やカルボキシル
基が導入されなかったパーフルオロポリエーテル類は溶
解性が異なる。ここで、カルボキシル基が所定量で導入
されたパーフルオロポリエーテル類のエステル化合物に
ついて、アルコール部の炭素数Ncとパーフルオロポリ
エーテル部の炭素数Nfの比(Nc/Nf)×100が
所定の範囲となされていると、溶解性の差によって、カ
ルボキシル基が所定量で導入されたパーフルオロポリエ
ーテル類のエステル化合物のみを溶媒によって選択的に
抽出することができる。
【0034】この選択的に抽出されたエステル化合物を
加水分解すると、カルボキシル基が所定量で導入された
パーフルオロポリエーテル類が再生成される。この再生
成されたパーフルオロポリエーテル類は、カルボキシル
基の導入が不十分なパーフルオロポリエーテル類やカル
ボキシルが導入されなかったパーフルオロポリエーテル
類が除かれているので、高純度であり、良好な潤滑性能
を示す。
【0035】したがって、例えば磁気記録媒体の磁性層
表面に塗布した場合には、当該媒体の摩擦係数を低減す
るばかりかスチル耐久性、シャトル耐久性を改善し、そ
の効果が長期間持続する。
【0036】
【発明の実施の形態】以下、本発明の具体的な実施の形
態について説明するが、本発明はこれに限定されるもの
ではないことはいうまでもない。
【0037】パーフルオロポリエーテル類にカルボキシ
ル基を導入する反応では、得られた合成物中に、カルボ
キシル基が所定量で導入されたパーフルオロポリエーテ
ル類以外に、カルボキシル基の導入が不十分なパーフル
オロポリエーテル類等が混入する場合がある。
【0038】本発明では、このような未反応不純物が混
入する合成物から、カルボキシル基が所定量で導入され
たパーフルオロポリエーテル類のみを分離するために、
このパーフルオロポリエーテル類をエステル化し、その
エステル化合物を、不純物との溶解性の差を利用して抽
出用溶媒にて選択的に抽出し、更にエステル結合を加水
分解することでカルボキシル基が導入されたパーフルオ
ロポリエーテル類を再生成することとする。この過程を
片末端にカルボキシル基が導入されたパーフルオロポリ
エーテルを例にして説明する。
【0039】片末端にカルボキシル基が導入されたパー
フルオロポリエーテル類の合成物には、カルボキシル基
が導入されていないパーフルオロポリエーテル類が未反
応不純物として混入する。
【0040】このような合成物から片末端にカルボキシ
ル基が導入されたパーフルオロポリエーテル類を精製す
るには、合成物を無水トルエン中で長鎖アルコールによ
るエステル化反応を生じさせる。ここでカルボキシル基
を有するパーフルオロポリエーテル類はエステル化され
るが、カルボキシル基を有していない未反応不純物はエ
ステル化されない。このカルボキシル基を有するパーフ
ルオロポリエーテルのエステル化反応式を化1に示す。
なお、エステル化反応に際しては、硫酸あるいはp-トル
エンスルホン酸等を触媒に用いるか、あるいは加熱還流
下で反応を行うことによって、反応に伴って生成する水
を除去するようにする。
【0041】
【化1】
【0042】反応終了後、カルボキシル基がエステル化
されたパーフルオロポリエーテル類とカルボキシル基を
有さず、エステル化されなかった未反応不純物は溶解性
が異なるので、この反応溶液は、トルエン溶解部とトル
エン不溶解部に分離する。このうちトルエン溶解部には
カルボキシル基がエステル化されたパーフルオロポリエ
ーテル類が溶解している。また、トルエン不溶解部は不
純物として混入するカルボキシル基を有さないパーフル
オロポリエーテル類等である。このうち、トルエン不溶
解部は取り除き、トルエン溶解部についてトルエンを除
去し、その残留物を、さらにn−ヘキサン等によってエ
ステル化合物を再抽出することで微量に混入している未
反応不純物と分離する。
【0043】そして、このカルボキシル基がエステル化
されたパーフルオロポリエーテル類を含有する溶解成分
に水酸化カリウム溶液等のアルカリ溶液を加えると、エ
ステル結合が加水分解し、化2に示すように、片末端に
カルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル類が
再生成されることになる。
【0044】
【化2】
【0045】このようにして得られる末端にカルボキシ
ル基を有するパーフルオロポリエーテル類は、高純度で
あり、良好な潤滑性能を発揮する。
【0046】なお、ここでは、単官能パーフルオロポリ
エーテルにカルボキシル基が導入されたもの精製する場
合を例にして説明したが、多官能パーフルオロポリエー
テル類の両末端にカルボキシル基が導入されているもの
であっても良い。両末端にカルボキシル基が導入された
パーフルオロポリエーテル類においては、片末端にしか
カルボキシル基が導入されていないものと、いずれの末
端にもカルボキシル基が導入されていないものが不純物
として混入する。これらの不純物も、適当なエステル化
剤と抽出用溶媒を選択することで、同じ原理により取り
除くことができる。
【0047】この他、カルボキシル基が導入される単官
能のパーフルオロポリエーテルとしては、パーフルオロ
プロピルオキシ基F(CF2 CF2 CF2 O)n や、化
3で示されるパーフルオロプロピルオキシ基及びパーフ
ルオロオキシメチレン基の共重合体、さらには化4で示
されるパーフルオロイソプロピルオキシ基等が挙げられ
る。
【0048】
【化3】
【0049】
【化4】
【0050】また、多官能のパーフルオロポリエーテル
としては パーフルオロオキシエチレン基とパーフルオ
ロオキシメチレン基との共重合体である(OC2 4
p(OCF2 q等がある。
【0051】なお、これらパーフルオロポリエーテル類
において、l,m,n,k,p,qは1以上の整数を示
す。
【0052】パーフルオロポリエーテル基において、分
子量は特に限定されないが600から5000程度が好
ましい。分子量が大きくなりすぎると、極性基の効果が
小さくなり、例えば磁性層表面に対する吸着力が不足す
る。また、蒸気圧が高くなり、熱的な安定性に欠けるよ
うになる。なお、パーフルオロポリエーテルの繰り返し
単位はこれに制限されるものではない。
【0053】また、カルボキシル基は、これらパーフル
オロポリエーテルに直接導入されていてもよく、炭化水
素基を介して導入されていても構わない。パーフルオロ
ポリエーテルに炭化水素基を介してカルボキシル基が導
入されたものとしては、HOOCH2 CCF2 (OC2
4 )p(OCF2 )qOCF2 CH2 COOH(アウ
ジモント社製 商品名Fomblin Z−DIAC)
や、化5(ダイキン工業社製 商品名Demnum S
A、)、化6(デュポン社製 商品名Krytox)等
がある。
【0054】
【化5】
【0055】
【化6】
【0056】一方、これらパーフルオロポリエーテル類
のエステル化には長鎖アルコールが用いられる。この長
鎖アルコールの炭化水素鎖の長さはエステル化合物の溶
解性に差を生じせしめ、炭化水素系溶媒では、アルコー
ルの炭化水素鎖が長ければエステル化合物の溶解性は大
きくなる。逆に、アルコールの炭化水素鎖が短いとエス
テル化合物の溶解性は小さくなる。このため、この長鎖
アルコールの炭素数は、目的合成物と不純物の分離の度
合いに影響し、目的のパーフルオロポリエーテルのエス
テル化合物のみが溶媒に抽出されるように設定する必要
がある。
【0057】例えば片末端にのみカルボキシル基が導入
されたパーフルオロポリエーテル類を精製する場合に
は、このエステル化合物とカルボキシル基が導入されて
いないパーフルオロポリエーテル類とを分離する必要が
ある。それには、カルボキシル基がエステル化されたパ
ーフルオロポリエーテル類のアルコール部の炭素数Nc
とパーフルオロポリエーテル部の炭素数Nfの比(Nc
/Nf)×100が28%以上となるような炭素数の長
鎖アルコールを使用する。長鎖アルコールの炭素数がこ
れよりも短鎖になると、目的とするエステル化合物が抽
出溶媒に溶解しなくなり、回収率が低くなる。なお、こ
こで言うアルコール部とは、エステル化剤である長鎖ア
ルコールに由来するものであり、パーフルオロポリエー
テル部は片末端にカルボキシル基を有するパーフルオロ
ポリエーテルに由来するものである。
【0058】一方、両末端にカルボキシル基を有するパ
ーフルオロポリエーテル類の場合では、末端にカルボキ
シル基を有さないパーフルオロポリエーテル類とともに
片末端にのみカルボキシル基が導入されたパーフルオロ
ポリエーテル類が不純物として混入する。したがって、
両末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエー
テル類のエステル化合物と、末端にカルボキシル基を有
さないパーフルオロポリエーテル類及び片末端にのみカ
ルボキシル基が導入されたパーフルオロポリエーテル類
のエステル化合物を分離する必要がある。この場合、両
末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテ
ル類のエステル化合物を溶解させるために、長鎖アルコ
ールの炭化水素鎖はある程度長いことが必要であるが、
あまり長くなると不純物であるところの片末端にのみカ
ルボキシル基が導入されたパーフルオロポリエーテル類
のエステル化合物も溶媒に溶解するようになる。したが
って、長鎖アルコールの炭素数には上限があり、カルボ
キシル基がエステル化されたパーフルオロポリエーテル
類のアルコール部の炭素数Ncとパーフルオロポリエー
テル部の炭素数Nfの比Nc/Nf×100が31%以
上62%未満となるような炭素数の長鎖アルコールを使
用する必要がある。長鎖アルコールの炭素数がこれより
も短鎖になると、目的とするエステル化合物が抽出溶媒
に充分に溶解しなくなり、回収率が低くなる。また、長
鎖アルコールの炭素数がこれよりも長鎖になると、カル
ボキシル基が片末端にしか導入されていないパーフルオ
ロポリエーテルのエステル化合物も抽出溶媒に溶解する
ようになり、精製度が低くなる。なお、この場合も、ア
ルコール部はエステル化剤である長鎖アルコールに由来
するものであり、パーフルオロポリエーテル部は両末端
にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルに
由来するものである。ただし、両末端にカルボキシル基
を有するパーフルオロポリエーテルでは両末端がエステ
ル化されるのでアルコール部の炭素数は、エステル化剤
として用いる長鎖アルコールのほぼ2倍に相当する。
【0059】なお、いずれの場合にも、パーフルオロポ
リエーテル類を長鎖アルコールと反応させるのに先行し
て、カルボン酸部分を、一旦カルボン酸クロリドにして
おき、この後、長鎖アルコールと反応させるようにして
も良い。
【0060】エステル化合物の抽出溶媒としては、炭化
水素系溶媒が使用され、例えばトルエン,n−ヘキサ
ン,ケトン系溶媒等が適当である。但し、基本的には目
的とするエステル化合物を選択的に溶解し、未反応不純
物を溶解しないといった点から選択する。
【0061】また、抽出されたエステル化合物は、例え
ばアルカリ溶液によって加水分解されるが、このアルカ
リ溶液としては水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が
溶解された強アルカリ性溶液が用いられる。
【0062】なお、精製されたパーフルオロポリエーテ
ル類は、さらなる特性の改善を目的として変成を行って
も良い。例えば、特開平5−194970号公報に記載
されているように長鎖アルコールとのエステル化合物に
すると、炭化水素成分が増加することから、フロン以外
の溶剤に溶解することが可能となり、環境保護の点で好
ましい。また、炭化水素成分が導入されることによって
分子間相互作用が増大し、これにより潤滑膜の油膜強度
が増大し、耐久性が向上する。
【0063】以上のようにして精製されたカルボキシル
基を有するパーフルオロポリエーテル類は、例えば磁気
記録媒体の磁性層に潤滑剤として保持される。このパー
フルオロポリエーテル類を磁性層に保持させると、常温
常湿環境下では勿論のこと、高温多湿や低温等の厳しい
環境下においても、磁性層において良好な潤滑性能が長
期間維持され、摩擦係数が低減し、走行耐久性が改善さ
れることになる。
【0064】このような潤滑剤を適用する磁気記録媒体
は、強磁性金属材料を蒸着等の真空薄膜形成技術によっ
て非磁性支持体上に被着形成することで磁性層が形成さ
れる、金属磁性薄膜型の磁気記録媒体であっても、強磁
性粉末、結合剤を有機溶剤とともに混合することで調製
された磁性塗料を非磁性支持体上に塗布することで磁性
層が形成される、塗布型の磁気記録媒体であっても良
い。
【0065】このうち金属磁性薄膜型の磁気記録媒体の
構成材料としては以下のものが用いられる。
【0066】まず、非磁性支持体としては、ポリエチレ
ンテレフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン,
ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリ
アセテート,セルロースジアセテート,セルロースアセ
テートブチレート等のセルロース誘導体、ポリ塩化ビニ
ル,ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリカーボ
ネート,ポリイミド,ポリアミド,ポリアミドイミド等
のプラスティック、紙、アルミニウム、銅等の金属、ア
ルミニウム合金、チタン合金等の軽金属、セラミック、
単結晶シリコン、ガラス等が用いられる。このうち、ア
ルミニウム合金板やガラス板等の剛性を有する基板を用
いる場合には、基板表面にアルマイト処理等の酸化皮膜
やNi−P皮膜等を形成してその表面を硬くするように
してもよい。
【0067】金属磁性薄膜としては、Fe、Co、Ni
等の金属やCo−Ni系合金、Co−Pt系合金、Co
−Pt−Ni系合金、Fe−Co系合金、Fe−Ni系
合金、Fe−Co−Ni系合金、Fe−Ni−B系合
金、Fe−Co−B系合金、Fe−Co−Ni−B系合
金等からなる面内磁化記録金属磁性膜やCo−Cr系合
金等よりなる垂直磁化記録金属磁性薄膜が例示される。
【0068】これら強磁性金属材料は、メッキやスパッ
タリング、真空蒸着等のPVDの手法によって連続膜と
して形成される。
【0069】なお、このようにして形成される金属磁性
薄膜のうち、面内磁化記録タイプの金属磁性薄膜の場合
には、予め非磁性支持体上にBi、Sb、Pb、Sn、
Ga、In、Ge、Si、Ti等の低融点非磁性材料の
下地層を形成しておいても良い。このような下地層の上
から、強磁性金属材料を垂直方向から蒸着あるいはスパ
ッタすると、金属磁性薄膜中にこれら低融点非磁性材料
が拡散し、配向性が解消され、面内等方性が確保される
とともに抗磁性が向上する。
【0070】このような金属磁性薄膜に上記潤滑剤を保
持させるには、金属磁性薄膜表面に潤滑剤を塗布するデ
ィップコーティング法によれば良い。この場合、潤滑剤
膜の膜厚は0.1〜20nm、塗布量は0.5〜100
mg/m2、より望ましくは1〜20mg/m2とするの
が良い。潤滑剤膜の膜厚が0.1nmより薄い場合には
潤滑剤による効果が十分に得られない。逆に、潤滑剤の
膜厚が、20nmより厚いと電磁変換特性が悪化する。
【0071】なお、以上が磁気記録媒体の基本的な構成
であるが、磁気記録媒体にはさらに金属磁性薄膜上にカ
ーボン等よりなる保護膜を設けるようにしても良い。こ
の場合には、上記潤滑剤は保護膜に保持される。保護膜
に潤滑剤を保持させる方法や条件は、金属磁性薄膜に潤
滑剤を保持させる場合に準じて良い。
【0072】また、上記潤滑剤は、磁気記録媒体で一般
に用いられる潤滑剤と組み合わせて用いても良い。その
ような潤滑剤としては、長鎖カルボン酸あるいはそのエ
ステル類、長鎖アルコール類、長鎖アミン類等が挙げら
れる。
【0073】この他、極圧剤や防錆剤と併用することも
可能である。
【0074】極圧剤は、境界潤滑領域において部分的に
金属接触を生じたときにこれに伴う摩擦熱によって金属
面と反応し、反応生成物被膜を形成することにより摩
擦、摩耗防止作用を行うものである。このような極圧剤
としては、リン系極圧剤、硫黄系極圧剤、ハロゲン系極
圧剤、有機金属系極圧剤、複合系極圧剤等が挙げられ
る。これら極圧剤は、潤滑剤に対して30:70〜7
0:30の重量比で用いるのが適当である。
【0075】防錆剤としては、通常この種の磁気記録媒
体の防錆剤として使用されるもの、例えばフェノール
類、ナフトール類、キノン類、窒素原子を含む複素環化
合物、酸素原子を含む複素環化合物、硫黄原子を含む複
素環化合物等がある。
【0076】また、磁気記録媒体には、この他の付加的
構成として、非磁性支持体と磁性層との間に下塗層が形
成されていたり、非磁性支持体の金属磁性薄膜が形成さ
れた側とは反対側の面にバックコート層が形成されてい
ても良い。この場合、バックコート層に精製された潤滑
剤を塗布したり、内添させたりしても良い。
【0077】一方、塗布型の磁気記録媒体は、強磁性粉
末、結合剤を有機溶剤とともに混合することで調製され
た磁性塗料を非磁性支持体上に塗布することで磁性層が
形成される。
【0078】この非磁性支持体としては、金属磁性薄膜
型の磁気記録媒体で例示したものがいずれも使用可能で
ある。
【0079】また、磁性層を構成する強磁性粉末、結合
剤としては以下のものが用いられる。
【0080】まず、強磁性粉末としては、γ−Fe
23、Fe34、Co変性酸化鉄、鉄を主成分とする合
成微粉末の他、変性バリウムフェライト、変性ストロン
チウムフェライト等が使用される。
【0081】また、結合剤としては、変性または非変性
の塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂あるいはポリエ
ステル樹脂を単独あるいは混合して使用することができ
る。さらに繊維素系樹脂、フェノキシ樹脂あるいは特定
の使用方法を有する熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応
型樹脂、電子線照射硬化型樹脂を併用しても良い。
【0082】樹脂の変性のために導入される基として
は、磁性粉末の分散性向上を目的として−SO3M、−
OSO3M、−COOM、−PO(OM´)2(但し、M
はNa等のアルカリ金属原子を示し、M´はNa等のア
ルカリ金属原子またはアルキル基を示す)等が好まし
い。
【0083】塗料化のための溶剤としては、エーテル
類、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素、脂肪族炭
化水素、塩素化炭化水素等から選ばれる有機溶剤であっ
て良い。
【0084】このような塗布型の磁性層に上記潤滑剤を
保持させるには、金属磁性薄膜型の磁気記録媒体と同様
にディップコーティング法によっても良く、磁性塗料に
潤滑剤を予め添加しておくことで内添するようにしても
良い。
【0085】なお、このような塗布型の磁性層には、さ
らに必要に応じてレシチン等の分散剤、長鎖カルボン酸
等の潤滑剤、カーボンブラック等の帯電防止剤、酸化ク
ロム等の研磨剤、防錆剤が加えられても良い。これらの
分散剤、潤滑剤、帯電防止剤、及び防錆剤としては、例
示したもの以外に従来公知の材料がいずれも使用可能で
ある。
【0086】また、この塗布型の磁気記録媒体において
も、非磁性支持体と磁性層との間に下塗層が形成されて
いたり、非磁性支持体の金属磁性薄膜が形成された側と
は反対側の面にバックコート層が形成されていても良
い。この場合にも、バックコート層に精製された潤滑剤
を塗布したり、内添させたりしても良い。
【0087】
【実施例】以下、本発明の実施例について実験結果に基
づいて説明する。
【0088】パーフルオロポリエーテル類のエステル化
合物のNc/Nfの検討 まず、次のようにしてカルボキシル基を有するパーフル
オロポリエーテルのエステル化条件を検討した。
【0089】A.片末端にカルボキシル基を有するパー
フルオロポリエーテルのエステル化の検討 片末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエー
テル(分子量約2800、パーフルオロポリエーテル部
の炭素数50)を、無水トルエン中で脱水反応を行いな
がら、各種長鎖アルコールと反応させることによってエ
ステル化し、9種類のエステル化合物(化合物1〜化合
物9)を生成した。このエステル化反応の反応式を化7
に示す。
【0090】
【化7】
【0091】そして、得られたエステル化合物を、10
重量%の量でn−ヘキサンに添加し、溶解性を評価し
た。その結果を、長鎖アルコールの炭化水素基R1、エ
ステル化合物のアルコール部の炭素数Ncとパーフルオ
ロポリエーテル部の炭素数Nfとの比(Nc/Nf)×
100の値とともに表1に示す。なお、溶解性は3段階
で評価した。表中、○はエステル化合物が完全に溶解し
た場合、△は溶液に白濁が見られ、エステル化合物の溶
解が不十分と判断される場合、×は、n−ヘキサンとエ
ステル化合物が分離した場合である。
【0092】
【表1】
【0093】表1に示すように、(Nc/Nf)×10
0が28%未満の場合には、エステル化合物をn−ヘキ
サンに完全に溶解させることができない。一方、(Nc
/Nf)×100が28%以上になると、エステル化合
物がn−ヘキサンに対して十分に溶解するようになる。
【0094】このことから、片末端にカルボキシル基を
有するパーフルオロポリエーテルのエステル化合物をn
−ヘキサンによって抽出するには(Nc/Nf)×10
0が28%以上でなければならないことがわかった。
【0095】B.両末端にカルボキシル基を有するパー
フルオロポリエーテルのエステル化の検討 両末端にカルボキシル基を持つパーフルオロポリエーテ
ル(分子量約3000、パーフルオロポリエーテル部の
炭素数52)を、無水トルエン中で脱水反応を行いなが
ら、各種長鎖アルコールと反応させることによってエス
テル化し、9種類のエステル化合物(化合物10〜化合
物18)を生成した。
【0096】そして、得られたエステル化合物を、10
重量%の量でn−ヘキサンに添加し、溶解性を評価し
た。その結果を、長鎖アルコールの炭化水素基R1、エ
ステル化合物のアルコール部の炭素数Ncとパーフルオ
ロポリエーテル部の炭素数Nfとの比(Nc/Nf)×
100の値とともに表2に示す。また、表2には、先に
示した片末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポ
リエーテルについての測定結果も併せて示す。
【0097】
【表2】
【0098】ここで両末端にカルボキシル基を有するパ
ーフルオロポリエーテルの合成物には、カルボキシル基
を有さないパーフルオロポリエーテルとともに片末端に
カルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルも未
反応不純物として混入する。両末端にカルボキシル基を
有するパーフルオロポリエーテルのエステル化合物のみ
を抽出するには、このエステル化合物のみが溶解し、片
末端にカルボキシルキを有するパーフルオロポリエーテ
ルのエステル化合物は溶解しないような条件を選択する
必要がある。
【0099】このような点から表を見ると、まず、両末
端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル
のエステル化合物をn−ヘキサンに溶解させるには、
(Nc/Nf)×100を31%以上とすることが必要
なことがわかる。しかし、(Nc/Nf)×100が6
2%(R1:C1633)を越えると、今度は片末端にカ
ルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルのエス
エル化合物が溶解してくるようになる。
【0100】つまり、片末端にカルボキシル基を有する
パーフルオロポリエーテルのエステル化合物を溶解させ
ず、両末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリ
エーテルのエステル化合物のみを抽出するには(Nc/
Nf)×100が31%以上62%未満でなければなら
ない。
【0101】潤滑剤の精製 次に以上の実験結果に基づいて条件で、片末端にカルボ
キシル基を有するパーフルオロポリエーテル(Kryt
ox:分子量約1800)を精製した。
【0102】Krytoxの150gと、ステアリルア
ルコールとをトルエン中に投入し、加熱環流によって生
成する水を除去しながら5時間反応を行い、エステル化
を完結させた。
【0103】このとき反応液はトルエン溶解部とトルエ
ン不溶解部に分離する。トルエン不溶解部はカルボキシ
ル基を有さず、エステル化されなかった未反応不純物で
あり、トルエン溶解部にはエステル化されたパーフルオ
ロポリエーテルが溶解している。 なお、確認のため、
トルエン溶解部と不溶解部の赤外吸収スペクトルを図
1,図2にそれぞれ示す。
【0104】図1を見ると、CF伸縮振動及びCH伸縮
振動(3000cm-1付近)の存在、CO伸縮振動の高
波数シフト(1600cm-1付近)に由来してそれぞれ
吸収ピークが認められる。このことから、トルエン溶解
部にはエステル化されたパーフルオロポリエーテルが溶
解していることが示唆される。
【0105】一方、図2を見ると、CH伸縮振動及びC
F伸縮振動に由来する吸収ピークは認められるものの、
CH伸縮振動に由来する吸収ピークは小さく、CO伸縮
振動に由来する吸収ピークも非常に小さい。このことか
ら、トルエン不溶解部には、カルボキシル基を含んでい
ない不純物が多く溶解していることが示唆される。
【0106】以上のことから、トルエン溶解部には、エ
ステル化されたパーフルオロポリエーテルのみが選択的
に抽出されたことが判断された。
【0107】このトルエン溶解部からトルエンを除去
し、残留物をn−ヘキサンを展開溶媒としてシリカゲル
クロマトグラフィーにかけた。その結果、トルエン溶解
部に微量に混入していた未反応不純物と分離され、エス
テル化されたパーフルオロポリエーテルのみがカラムか
ら溶出する。この溶出液中のエステル化合物は130g
であった。
【0108】そして、このn−ヘキサン溶出部に、エー
テル、エチルアルコール及び水の混合溶媒に水酸化カリ
ウムを加えたアルカリ溶液を添加し、5時間加熱環流さ
せることでエステル化合物を加水分解した。その結果、
片末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエー
テルが高純度に精製された。
【0109】次に、潤滑剤の精製品を実際に磁気記録媒
体に適用しその性能を検討した。なお、精製したカルボ
キシル基を有するパーフルオロポリエーテル及びエステ
ル化剤となる長鎖アルコールには、先のエステル化条件
の検討で用いたものを使用した。したがって、化合物3
〜化合物18とは表1または表1に示すものと同じであ
る。
【0110】実施例1 まず、片末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポ
リエーテル(分子量2800、パーフルオロポリエーテ
ル部の炭素数50)の合成品を、無水トルエン中で脱水
反応を行いながら、長鎖アルコールと反応させることに
よってエステル化合物(化合物7)を得た。このエステ
ル化合物をn−ヘキサンによって抽出し、加水分解する
ことによって、片末端にカルボキシル基を有するパーフ
ルオロポリエーテル(精製品)を再生成した。
【0111】次に、14μm厚のポリエチレンテレフタ
レートフィルム上に、斜方蒸着法によりCoを被着さ
せ、膜厚200nmの金属磁性薄膜を形成した。
【0112】そして、この金属磁性薄膜上に、パーフル
オロポリエーテルの精製品をパーフルオロオクタン溶液
に溶解した潤滑剤溶液を、5mg/m2 なる塗布量で塗
布し、8ミリ幅に裁断することでサンプルテープを作製
した。
【0113】実施例2,実施例3 潤滑剤の精製過程で、パーフルオロポリエーテルを表3
に示すエステル化合物としたこと以外は実施例1と同様
にして潤滑剤を精製した。そして、この潤滑剤の精製品
を金属磁性薄膜上に塗布すること以外は実施例1と同様
にしてサンプルテープを作製した。
【0114】比較例1 潤滑剤の精製品の代わりに、片末端にカルボキシル基を
有するパーフルオロポリエーテルの未精製品を金属磁性
薄膜上に塗布すること以外は実施例1と同様にしてサン
プルテープを作製した。
【0115】比較例2,比較例3 潤滑剤の精製過程で、パーフルオロポリエーテルを表3
に示すエステル化合物としたこと以外は実施例1と同様
にして潤滑剤を精製した。そして、この潤滑剤の精製品
を金属磁性薄膜上に塗布すること以外は実施例1と同様
にしてサンプルテープを作製した。
【0116】実施例4〜実施例6 両末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエー
テル(分子量約3000、パーフルオロポリエーテル部
の炭素数52)を表4に示すエステル化合物を経るよう
に実施例1に準じて精製した。そして、この潤滑剤の精
製品を金属磁性薄膜上に塗布すること以外は実施例1と
同様にしてサンプルテープを作製した。
【0117】比較例4 潤滑剤の精製品の代わりに、両末端にカルボキシル基を
有するパーフルオロポリエーエルの未精製品を金属磁性
薄膜上に塗布すること以外は実施例1と同様にしてサン
プルテープを作製した。
【0118】比較例5,比較例6 潤滑剤の精製過程で、パーフルオロポリエーテルを表4
に示すエステル化合物としたこと以外は実施例4と同様
にして潤滑剤を精製した。そして、この潤滑剤の精製品
を金属磁性薄膜上に塗布すること以外は実施例1と同様
にしてサンプルテープを作製した。
【0119】以上のようにして作製された各サンプルテ
ープについて、温度25℃相対湿度60%条件下、温度
−5℃条件下及び温度40℃相対湿度80%条件下でそ
れぞれエージングを行い、エージング前後での摩擦係
数、スチル耐久性及びシャトル耐久性を比較した。その
結果を、精製過程で精製したエステル化合物と併せて表
3,表4に示す。なお、摩擦係数、スチル耐久性及びシ
ャトル耐久性の測定条件は以下の通りである。
【0120】摩擦係数:ステンレスガイドに対する動摩
擦係数である。このステンレスガイドは、表面粗さが
0.2s,直径が4mmである。また、テープは、走行
速度が5mm/秒、荷重が50g/8mmである。
【0121】シャトル耐久性:テープを、1サイクル2
分で反復走行させ、出力が3dB低下するまでの反復回
数を数えることで評価した。測定に用いたビデオデッキ
は、SONY社製の8mmVTR/EV−S55であ
る。測定信号はカラーバーの画像信号、出力信号はRF
出力である。
【0122】スチル耐久性:スチル再生を行い、出力が
3dB低下するまでの時間を測定することで評価した。
測定に用いたビデオデッキ、測定信号及び出力信号はシ
ャトル耐久性の評価で用いたものと同じである。
【0123】
【表3】
【0124】
【表4】
【0125】まず、表3は片末端にカルボキシル基を有
するパーフルオロポリエーテル類の精製品を用いた場合
の測定結果である。
【0126】このように、精製過程で生成されるエステ
ル化合物のNc/Nf比を28%以上とした実施例1〜
実施例3のサンプルテープは、いずれの環境下であって
も摩擦係数が低く抑えられており、またスチル耐久性及
びシャトル耐久性も良好である。
【0127】これに対してパーフルオロポリエーテルの
未精製品を用いた比較例1のサンプルテープや、エステ
ル化を経て精製されたパーフルオロポリエーテルを用い
ていても、エステル化合物のNc/Nf比が28%未満
であった比較例2,比較例3のサンプルテープは、実施
例系のサンプルテープに比べて摩擦係数が高く、スチル
耐久性やシャトル耐久性が劣っている。
【0128】このことから、片末端にカルボン酸を有す
るパーフルオロポリエーテルをエステル化、溶媒抽出、
加水分解を経て精製するには、エステル化に際してNc
/Nf比を28%以上にする必要があることがわかっ
た。
【0129】次に、表4は両末端にカルボキシル基を有
するパーフルオロポリエーテル類の精製品を用いた場合
の測定結果である。
【0130】このように、精製過程で生成されるエステ
ル化合物のNc/Nf比を31%以上62%未満とした
実施例4〜実施例6のサンプルテープは、いずれの環境
下であっても摩擦係数が低く抑えられており、またスチ
ル耐久性及びシャトル耐久性も良好である。
【0131】これに対してパーフルオロポリエーテルの
未精製品を用いた比較例4のサンプルテープや、エステ
ル化を経て精製されたパーフルオロポリエーテルを用い
ていてもエステル化合物のNc/Nf比が所定の範囲外
であった比較例5,比較例6のサンプルテープは、実施
例系のサンプルテープに比べて摩擦係数が高く、スチル
耐久性やシャトル耐久性が劣っている。
【0132】このことから、両末端にカルボン酸を有す
るパーフルオロポリエーテルをエステル化、溶媒抽出、
加水分解を経て精製するには、エステル化に際してNc
/Nf比を31%以上62%未満にする必要があること
がわかった。
【0133】なお、この実施例は、末端にカルボキシル
基を有する精製品をそのまま潤滑剤として用いた例であ
るが、精製品をステアリルエステルに変成したものやア
ミン塩等にした場合でも同様の効果が得られる。
【0134】
【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発
明では、末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポ
リエーテル類をエステル化、溶媒抽出、加水分解の工程
により精製するとともに、生成過程で生成されるエステ
ル化合物のNc/Nf比を規制しているので、カルボキ
シル基を有するパーフルオロポリエーテル類が高純度で
得ることができる。
【0135】このパーフルオロポリエーテルの精製品
を、例えば磁気記録媒体に適用すれば、当該媒体に良好
な潤滑性能が付与され、その潤滑性能が長期間に亘り維
持される。したがって、走行性、耐摩耗性、耐久性に優
れた磁気記録媒体を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エステル化工程後、トルエン抽出を行った際の
トルエン溶解成分の赤外吸収スペクトルを示す特性図で
ある。
【図2】エステル化工程後、トルエン抽出を行った際の
トルエン不溶成分の赤外吸収スペクトルを示す特性図で
ある。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 合成物中に含有される片末端にカルボキ
    シル基を有するパーフルオロポリエーテルを長鎖アルコ
    ールによってエステル化し、そのエステル化合物を溶媒
    で抽出した後、該エステル化合物を加水分解することに
    よって、前記片末端にカルボキシル基を有するパーフル
    オロポリエーテルを精製するに際して、 上記エステル化合物のアルコール部の炭素数Ncと、パ
    ーフルオロポリエーテル部の炭素数Nfの比(Nc/N
    f)×100が28%以上であることを特徴とする潤滑
    剤の製造方法。
  2. 【請求項2】 合成物中に含有される両末端にカルボキ
    シル基を有するパーフルオロポリエーテルを長鎖アルコ
    ールによってエステル化し、そのエステル化合物を溶媒
    で抽出した後、該エステル化合物を加水分解することに
    よって、前記両末端にカルボキシル基を有するパーフル
    オロポリエーテル類を精製するに際して、 上記エステル化合物のアルコール部の炭素数Ncと、パ
    ーフルオロポリエーテル部の炭素数Nfの比(Nc/N
    f)×100が31%以上62%未満であることを特徴
    とする潤滑剤の製造方法。
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JP2002045606A (ja) * 2000-08-01 2002-02-12 Fujitsu Ltd フッ素系溶媒の調製方法及び装置
US6869536B2 (en) 1999-04-30 2005-03-22 Hitachi, Ltd. Lubricant, magnetic disk and magnetic disk apparatus

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