【発明の詳細な説明】
欠失レトロウイルスベクタのトランス補完用の
パッケ−ジング細胞及び発現ベクタ
本発明の目的は新規の細胞株であって、ある場合に治療的に興味のある遺伝子
(導入遺伝子)に由来するヌクレオチド配列を有する組み換えのレトロウイルス
RNAのパッケ−ジングを可能にする、いわゆるトランス補完細胞株であり、上
記の導入遺伝子を真核性の標的細胞へトランスファ−して発現することを目標に
している。
治療目的のための遺伝子のトランスファ−、または体細胞「遺伝子治療」は、
内在性の遺伝子の機能障害を補うため、または治療目的用の新規の機能を加える
ために、制定した生物体の体細胞中に「修復」遺伝子(導入遺伝子)を挿入する
ことからなる、得られる遺伝的変化は操作した細胞の娘細胞へと伝えられるはず
であるが、遺伝はしない。よって、変化したDNA配列の正常な対応物は、医薬
中へとトランスフォ−ムされる。
標的細胞中へ治療目的で遺伝子、より一般的にはヌクレオチド配列を導入する
ために、種々の方法が現在、探索されている。これらの標的細胞は、治療的介入
から利益を受ける直接的な細胞であるかもしれないし、または治療される細胞と
、導入遺伝子を有するベクタとの間の細胞中間体であるかもしれない。
遺伝子のトランスファ−に現在使用されているベクタは、レトロウイルスやア
デノウイルスのような不活化ウイルス、または高分子接合体の何れかに由来する
。レトロウイルスは通常、生体外で操作可能な体細胞プ−ルを含む、標的組織に
差し向けられるが、一方、標的組織が、分化しきった細胞からなるか、または、
例えば肺のように、構築上の制限が主要な機能性の結果を有する器官内に該標的
組織が埋められている場合には、遺伝子トランスファ−は生体内で、例えば組み
換えアデノウイルスにより行なわれなくてはならない。
遺伝子治療には、ダンチェンズ(Dunchenne's)筋疾患、リソソ−ム病、嚢胞
性線維症、またはAIDS、癌、・・・・病のような後天性疾患、または退行性神経
疾患及び遺伝的血液病のような単一の遺伝子に起因する遺伝的疾患にわたって適
用できる。
通常のツ−ルよりもより有効なレトロウイルスベクタを開発することが、主要
な目的を構成している。事実、レトロウイルスベクタは、安定に、そして永久に
遺伝子を導入するのに有効であることが証明されているが、その際には古典的に
トランスファ−の標的である細胞が有糸分裂して、理想的には幹細胞の代表が含
まれている。
現在の制限はウイルスの不十分な感染性、及び/または穏和すぎる転写のレベ
ルによるものである。更に可能性のある制限は、現在でもいまだ不十分であるト
ランスファ−の安全性に関するものである。これは複製適格な(replication co
mpetent)ウイルスの産性と、パッケ−ジング細胞株により作られ、欠失組み換
えウイルスゲノムとともにパッケ−ジングされる内在性配列の、付随した伝達と
の両方に関連する。
現在入手可能なものよりも効果的で安全なベクタ系を開発することは、非常に
重要な問題である。
発現させる導入遺伝子がレトロウイルスベクタで運ばれる時は常に、導入遺伝
子を有するレトロウイルスベクタ粒子のストックを、標的細胞への感染に先だっ
て製造することが、必須の工程である。
これを成し逐げるのに、導入遺伝子を有する欠失レトロウイルスベクタのトラ
ンス補完を行うべきであり、その対応するコ−ド配列をまず取り除いて導入遺伝
子で置換する。このトランス補完工程は、パッケ−ジング細胞での継代で行える
。
これらの細胞は、遺伝的に改変された細胞であって、ウイルスの複製を許容する
ウイルス成分、特にはENVエンベロ−プタンパク質、GAG核タンパク質、及びPOL
逆転写酵素の合成に必要な遺伝物質を具備している。このgag、pol、及びenv遺
伝子は、ウイルスのパッケ−ジングを行うのに必須のプサイ配列を欠失している
トランス補完ベクタにより、上記遺伝子を有する核酸配列でパッケ−ジング細胞
を形質転換して、形質転換される。。
パッケ−ジング細胞内でのgag,pol,env遺伝子の発現により、プサイパッケ
−ジング配列を有するレトロウイルスベクタが保持している導入遺伝子と組み換
えを起こしている、レトロウイルス性の組み換えRNA配列の更なるパッケ−ジ
ングが可能になる。パッケ−ジングは、gag,pol,及びenv配列によりコ−ドされ
るウイルスタンパク質によるトランス補完後に起こることが可能である。
現在入手可能なパッケ−ジング細胞株は、マウス起源の細胞に由来し、以下の
欠点を有している:
1.内在性のレトロウイルス配列(MCP,VL30,及びある場合にはレトロトラン
スポゾンでさえも)が、欠失構築物とともに共パッケ−ジングする。共パッケ−
ジングされる配列はまた、遺伝子トランスファ−の標的細胞の感染後に宿主ゲノ
ムに組み込まれる;
2.これらのパッケ−ジング細胞株内では、補完性のタンパク質の発現はレト
ロウイルスLTRから行なわれる、第三世代の細胞株は、複数の変異または欠失
部位を有する補完性のレトロウイルス構築物を利用するが、LTR配列を維持す
ることは、潜在的に不利益であるかもしれない。これらの配列は、補完される欠
失構築物との遺伝的組み換えを誘導することが可能である。
このことは、ウイルス産生適格性の組み合わせの可能性を低減するために、GA
G及びPOLタンパク質をコ−ドする配列がエンベロ−プをコ−ドする配列とは別に
形質転換されるいわゆる第三世代の細胞株からすでに観察されている。
欠失レトロウイルスを補完して哺乳類細胞、特には霊長類及びヒト起源のもの
への遺伝子トランスファ−に、現在使用されている、エンベロ−プをコ−ドして
いる配列は、両種向性のエンベロ−プである。これらの遺伝子治療目的で感染さ
せる細胞タイプが、両種向性ウイルスの受容体に対する十分な受容体を有するか
どうかはいまだ不確かである。
これら全ての要素は、レトロウイルス仲介性の遺伝子トランスファ−の安全性
における改善への努力を正当化する。
本発明の目的は、少なくとも上記した問題の一部を解決する、新規のパッケ−
ジング細胞株を作る方法を提供することである。
本発明の細胞株は、現在までに同定されている内在性レトロウイルスの配列を
有していない動物種に起源を有する細胞株より開発され、また好ましい態様にお
いては、必要とあらば感染性ウイルス上清が調製されるときには必ず、非ウイル
ス性のプロモ−タ、特には誘導性プロモ−タであって欠失ベクタ補完性タンパク
質、特にはエンベロ−プの条件的合成用のものを利用してウイルス補完性タンパ
ク質の少なくとも一部の発現を行っているので、遺伝子トランスファ−の安全性
の改良を可能にする。
更に、GAG、及びPOL タンパク質補完は、ベクタを構築するのに使用したフレ
ンドレトロウイルスの核酸配列により仲介される。
発明の実施のため、gag、及びpol配列はパッケ−ジング用の細胞株へ、エンベ
ロ−プコ−ド配列とは別個でトランスファ−される。
これら細胞株、特にはヒト起源のものはまた、遺伝子治療用のヒト細胞標的の
表面にある、両種向性ウイルスに対する受容体の、潜在的に不十分な発現を回避
するために、エンベロ−プ配列の使用により、トランスファ−効率の改良を促す
:
特に、造血幹細胞が標的を代表する可能性のある場合にはそうである。
第一態様によると、本発明の目的は、レトロウイルスベクタのトランス補完用
発現ベクタであり、これは選択したヌクレオチド配列(「トランスジェニック配
列」とよばれる)の、標的細胞ゲノム内へのトランスファ−及び/または組み込
みを許容し、以下を具備することを特徴としている:
a)スプ−マウイルスファミリのレトロウイルスの、env と呼ばれるヌクレオチ
ド配列でエンベロ−プ(ENV ポリペプチド)由来のポリペプチドをコ−ドし、該
ENVポリペプチドはレトロウイルスRNAのパッケ−ジングを許容する;そして
、
b)env 配列の発現を調節する転写制御配列であって、該発現ベクタがパッケ−
ジングシグナル配列を有していない。
スプ−マウイルス(フォ−ミ−ウイルス)ファミリのレトロウイルスは、動物
、またはヒトの細胞培養より単離できるレトロウイルスである。
HSRV と名付けられている、スプ−マウイルスファミリに属するレトロウイル
スは、鼻咽頭癌の患者から、1971年に単離された(Hachong et al.,J.Nat
l.Cancer Inst,46,299-307)。このレトロウイルスHSRVはクロ−ニングされて
配列が決定されていて、その配列がフリュ−ゲル(Flugel)らにより報告されて
いろ(EMBO J.vol6 No7 PP2077-2084,1987)。この発行物は、特にHSRV レトロ
ウイルスエンベロ−プ配列を記載している。
有益には、本願で使用するHSRV レトロウイルスのエンベロ−プ配列は、ヒト
細胞上の多くの表面受容体により認識されうる糖タンパク質をコ−ドし、特には
ヒト起源の細胞のポピュレ−ションのなかでは両種向性エンベロ−プ糖タンパク
質と比較してより多くの受容体を利用することが可能な糖タンパク質をコ−ドし
ている、本発明の別の利点によれば、使用するエンベロ−プ配列は、ヒトまたは
霊長類での遺伝子治療における、ヒトまたは霊長類に対しての向性を有している
。
特には、HSRV−env 配列は興味深いことに、ヒトの造血前駆細胞に対しての向
性を有している。
造血幹細胞に加えて、線維芽細胞、またはリンパ球のようなヒト初代細胞も、
うまく標的にすることができる(溶菌性感染)。欠失ウイルスによる慢性感染がヒ
トにおいて、腺性の上皮または筋性の組織内で証明されている。上皮またはリン
パ球起源の細胞のような、ヒト起源の細胞株は、HeLa細胞と同様にまた、適当な
標的である。ウサギでは、試験する初代細胞の起源が如何なるものでも、それは
何れも感染に感受性を示した。よって、感染のスペクトルは非常に広い。
トランス補完用発現ベクタに含まれているenv配列の発現は、レトロウイルス
転写制御シグナルから起ころ 特に、これらの制御シグナルは、フレンドレトロ
ウイルスのような、レトロウイルスのLTR配列に由来させることができる。
本発明によれば、使用するフレンドウイルス株は特に病原性が高いと同定され
たものである。同種指向性フレンドマウス白血病ウイルスの単離体I-5は、赤血
球増加症を誘導するフレンドウイルス複合体(FV-P,Mathieu-Mahul et al.,19
82)で感染した骨髄の長期培養より得られた。単離体I-5に由来する、F-MuLVのF
B29株(Sitbon et al.,Cell,47:851-859,1986)は、赤血球細胞に対して、細
胞溶解性、及び白血病誘発性効果の原因であり、誕生時に接種させた感受性マウ
スでは、後に赤血白血病になる、重度の早期溶血性貧血へと導く。赤血白血病に
原因の領域は、ウイルス性LTRのU3領域に位置している(Sitbon et al.,1986;Si
tbon et al.,PNAS USA,88:5932-5936,1991)。溶血性貧血の腫瘍決定基は、FB
29株の特異的エンベロ−プ配列に依存するようであり、その重症度は3つの別個
の領域により影響されていて、これにはエンベロ−プの構造的分節、U3領域に位
置する転写のエンハンサ配列、そして最後にU5-gag-pol領域の配列が含まれてい
る(Sitbon et al.,J.virol.,64:2135-2140,1990)。更に、ウイルス粒子の電
子顕微鏡的な分析により、顕著に高いパッケ−ジング効率(1.5から2log)が
確認された。
よって、スプ−マウイルスタイプのレトロウイルスのenv配列は、LTR配列の制
御下、またはフレンドウイルスFB29株由来のLTR配列の一部でenvヌクレオチド配
列の転写を行うのに十分なものの下に置くことが可能である。
本発明の別の態様において、トランス補完用の発現ベクタは、env 配列の転写
制御シグナルが、非ウイルス性プロモ−タを具備していることを特徴としている
。場合によっては、このプロモ−タの後には、SV40ウイルスのポリアデニレ−シ
ョンシグナル、または別のポリアデニレ−ションシグナルが続く。
非ウイルス性のプロモ−タを使用することは、そのように改変されたトランス
補完用ベクタの安全性の特徴を改善する。
更に、env 配列の発現は、使用するプロモ−タは誘導型である場合には、必要
であれば誘導することができる;すなわちこのプロモ−タは、特には薬学的化合
物のような、選択した分子により活性化させることが可能である。
別個にトランスファ−されるgagとpol配列はまた、誘導性のプロモ−タ制御下
に置くことも可能である。
あるいは、envの発現、及びgagとpol配列の発現を調節する転写シグナルは、
発現が一定の細胞タイプのみに限定されている条件的プロモ−タに関与してもよ
い。
本発明の実施に適する一つの誘導性型のプロモ−タは例えば、レチノイン酸β
受容体のプロモ−タ(RAR βプロモ−タ)である。
このプロモ−タはデテ(De The)らにより記載されいる(Nature,49,6254,pp
177-180)。
好ましいトランス補完用発現ベクタは、デテらの記載した上記のものであって
、スプ−マウイルスファミリのレトロウイルスのenv配列が、レチノイン酸β受
容体のHind III−BamHI断片の制御下に置かれているものである。
本発明の別の態様によれば、エンベロ−プに関して、トランス補完用の発現ベ
クタは以下を具備することを特徴としている:
a)エンベロ−プ、例えば両種向性エンベロ−プ、例えばモロニ−白血病ウイル
ス(Mo-MuLV)のエンベロ−プ4070Aに由来するポリペプチドをコ−ドしている、en
v と呼ばれるヌクレオチド配列、及び、
b)env 配列の発現を調節している非ウイルス性の転写制御シグナルで、例えば
誘導性または条件的プロモ−タ、例えばRAR βプロモ−タを含んでいるもの。
本発明の特別な態様によれば、トランス補完用の発現ベクタは、エンベロ−プ
ポリペプチドをコ−ドしているトランス補完用発現ベクタのヌクレオチド配列が
、例えば特定の細胞のタイプにより特異的に認識されるポリペプチド若しくは糖
タンパク質をコ−ドしているヌクレオチドを配列することによるヌクレオチドの
置換、またはそのような配列を付加することにより、特徴付けられる。
別の態様によれば、本発明は更に、レトロウイルスベクタである、トランス補
完用の発現ベクタを提供し、選択したヌクレオチド配列(「導入遺伝子」と呼ぶ
)の、標的細胞のゲノム内へのトランスファ−、及び/または組み込みを許容し
、これには、
a)フレンドレトロウイルスタイプのレトロウイルスの、核タンパク質(GAG ポ
リペプチド)に由来するポリペプチドをコ−ドしている、gag と呼ばれるヌクレ
オチド配列、
b)フレンドレトロウイルスタイプのレトロウイルスの、逆転写酵素とインテグ
ラ−ゼ(POLポリペプチド)を含む誘導ポリペプチドをコ−ドしている、polと呼
ばれるヌクレオチド配列、
c)gag とpol配列の発現を調節している非ウイルス性転写制御シグナルであっ
て、例えば誘導性または条件的プロモ−タ、例えばRAR βプロモ−タと、上記し
た、カプシド形成シグナルを欠失している発現ベクタとを含んでいるもの、が含
まれる。
本発明によれば、トランス補完用の発現ベクタは、自発的であろうとも選択に
よるものであろうとも、組み込み型のもの、あるいは対照的にエピソ−ム性ベク
タであることも可能である。。
本願の目的はまた、選択したヌクレオチド配列(トランスジェニック配列)の
、標的細胞ゲノム内へのトランスファ−及び組み込みを許容する、レトロウイル
スベクタ上に存在する組み換えレトロウイルスRNAの、トランス補完によるカ
プシド形成用の真核細胞であって、以下の性質を示すことを特徴とするもの具備
する:
・内在性レトロウイルスを欠いている動物種の細胞より選択される;
・長期間安定な均一な形態を有する;
・腫瘍起源ではない;
・形質転換を前もって行わずに、CO2を欠く最小培地内で選択される能力を有
する;そして、
・複製の速度が速い。
本発明によれば、「前もった形質転換」という表現は、細胞が、選択に先だっ
て、腫瘍性配列の付加による利益を受けないことである。
細胞の形態は、6ケ月またはそれ以上の期間に渡り、顕著に変化しない限り、
長期間均一で安定である。、
本発明の魅力的な態様によれば、選択したヌクレオチド配列(トランスジェニ
ック配列)の、標的細胞ゲノム内へのトランスファ−及び組み込みを許容する、
レトロウイルスベクタ上に存在する組み換えレトロウイルスRNAの、トランス
補完によるカプシド形成用の真核細胞であって、内在性レトロウイルスを欠く動
物種の細胞より選択されたもの、好ましくは胎児または肺細胞、特にはイヌ、ま
たはウサギのものは、以下の方法にそって得ることが可能である:
a)選択した真核細胞を、10%ウシ胎児血清と10%ウマ血清とを更に含む、
イスコ−ブ・リッチ培地(GIBCO)で培養する;
b)20%ウシ胎児血清を含むDMEM培地内で、培養細胞を継代して、CO2なしの
培地で1ケ月細胞を培養する;
c)複製速度の速い(加速したキネティクス)細胞を選択する;
d)選択した細胞を、10%ウシ胎児血清を含むDMEM培地で継代する;
e)ステップd)で回収した細胞を、10%のウシ新生児血清(Hyclone)を含有する
DMEM培地で継代する;
f)ステップe)の最後で選択した細胞を回収する。
よって、真核細胞は、1994年11月30日にCNCMに、番号I-1496のもとに
寄託された、DOGOM1 と命名されているイヌ胎児細胞であってもよい。
このようにして得られたイヌ胎児細胞は、実験のセクションに記載してある、
以下の選択基準を満たしている:
内在性レトロウイルスを欠く;
細胞の付着性が充分である;
速い増殖速度を有する;
その形態が均一で安定である;
このイヌ胎児細胞はまた、容易に形質転換でき、広い範囲での継代に感受性で
ある(集中的な人工継代での試験);
LTC-IC(長期間培養開始細胞)試験を支持できる。
上記の選択した細胞から、遺伝的に改変された細胞でレトロウイルスRNAの
カプシド形成を許容するものは、例えば上記の細胞における形質転換、またはト
ランス補完用のポリペプチドまたは糖タンパク質をコ−ドするヌクレオチド配列
での感染により調製できるが、該配列は少なくとも二つのベクタ、または少なく
とも3つのベクタでさえによっても供給される。例えば、一方でスプ−マウイル
スファミリのレトロウイルスのエンベロ−プ由来のポリペプチドをコ−ドしてい
るenv配列を発現することが可能な、プラスミドベクタまたはレトロウイルスベ
クタの何れかを備えているトランス補完ベクタを使用することが可能であり、ま
たもう一方では、ベクタ、例えばフレンドウイルスタイプのレトロウイルスの、
gag 及びpol ヌクレオチド配列のトランス補完用のプラスミドベクタ、または発
現ベクタを使用することが可能である。
本発明の別の態様によると、トランス補完用の細胞は、異種間、同種異系間、
または自己の細胞であって、感染性欠失ベクタの生体内での患者内への導入を許
容すると思われるものである。後者の場合、トランス補完用の細胞は、レトロウ
イルスベクタでの感染用の細胞標的を代表している。例えば内皮、筋、またはス
トロ−マ細胞を使用することができる。
本願は、トランス補完により、組み換えレトロウイルスRNAのカプシド形成
を許容する組み換え細胞(トランス補完性組み換え細胞)に関し、上記の定義に
応じる細胞であって、例えば以下のものによる形質転換または感染により、遺伝
的に改変されていることを特徴とする:
一方で以下のトランス補完配列を具備する、選択したヌクレオチド配列(「ト
ランスジェニック配列」と呼ばれる)の、標的細胞ゲノム内へのトランスファ−
及び/または組み込みを許容する、レトロウイルスベクタのトランス補完用の第
一発現ベクタ:
a)フレンドレトロウイルスタイプのレトロウイルスの核タンパク質(GAG ポリ
ペプチド)に由来するポリペプチドをコ−ドしている、gag 配列と呼ばれるヌク
レオチド配列;
b)フレンドレトロウイルスタイプのレトロウイルスの逆転写酵素とインテグラ
−ゼ(POLポリペプチド)を含んでいるポリペプチドをコ−ドする、pol配列と呼
ばれるヌクレオチド配列;
c)gag とpol 配列の発現を調節する転写制御シグナル;ここで上記のトランス
補完ベクタは、パッケ−ジングシグナルと以下のものとを欠いている:
もう一方で、env タンパク質に関して補完するための第二の発現ベクタであっ
て、エンベロ−プポリペプチドと、この配列の発現の制御用の配列とをコ−ドし
ているヌクレオチド配列を具備しているもの。
本発明によれば、フレンドウイルスタイプのウイルスとは、そのgag、pol、及
びenv コ−ド配列が、本願で記載されたレトロウイルスRNAのパッケ−ジング
を行うための整列を行った後に、フレンドウイルスのものとの相同性を有するも
のである。
本発明の第一の態様によれば、一つ以上のエンベロ−プポリペプチドをコ−ド
するヌクレオチド配列は、スプ−マウイルスファミリのレトロウイルスに由来す
る。例えばHSRV由来の配列が関わるかもしれない。
本発明の別の態様によれば、エンベロ−プ糖タンパク質をコ−ドしているヌク
レオチド配列は、Mo-MuLVの4070A配列に由来する。
種々の細胞株は、第三世代のパッケ−ジング細胞株の原理にそって、連続する
形質転換により遺伝的に改変される。すなわち、GAG、POL、及びENV 補完性タン
パク質をコ−ドする配列、及びその関連した制御配列の別個の断片を二つ、また
は三つがそれ以上で使用することにより改変される。この方法は、複製適格性の
ウイルス粒子を産生する遺伝的組み換えの可能性を低減する。
本発明の一つの態様によれば、本発明のパッケ−ジング細胞株は言い換えると
、以下を具備することを特徴としている:
a)フレンドレトロウイルスタイプのレトロウイルスの核タンパク質(GAG ポリ
ペプチド)に由来するポリペプチドをコ−ドする、gag 配列と呼ばれるヌクレオ
チド配列;
b)フレンドレトロウイルスタイプのレトロウイルスの逆転写酵素とインテグラ
−ゼ(POLポリペプチド)に由来するポリペプチドをコ−ドする、pol配列と呼ば
れるヌクレオチド配列;
c)gag、pol配列の発現を調節する転写制御シグナル;
d)スプ−マウイルスファミリのレトロウイルスのエンベロ−プ(ENV ポリペプ
チド)に由来するポリペプチドをコ−ドする、env 配列と呼ばれるヌクレオチド
配列であって、該ENV ポリペプチドがレトロウイルスRNAのカプシド形成を許
容するもの;
e)上記のenv配列の発現を調節する転写制御シグナル。
上記のパッケ−ジング細胞は更に、選択した所望の導入遺伝子配列であって、
ハッケ−ジング細胞の上清で感染すると標的細胞内で発現するはずのものを有す
るレトロウイルスベクタにより形質転換されるようになっている。
別の態様によれば、本発明の目的は、以下を具備することを特徴とするパッケ
−ジング細胞である:
a)フレンドレトロウイルスタイプのレトロウイルスの核タンパク質(GAG ポリ
ペプチド)に由来するポリペプチドをコ−ドする、gag 配列と呼ばれるヌクレオ
チド配列;
b)フレンドレトロウイルスタイプのレトロウイルスの逆転写酵素とインテグラ
−ゼ(POLポリペプチド)に由来するポリペプチドをコードする、pol配列と呼ば
れるヌクレオチド配列;
c)gag、pol配列の発現を調節する転写制御シグナル;
d)両種向性エンベロ−プ、例えばモロニ−白血病ウイルス(Mo-MuLV)のエン
ベロ−プ4070A に由来するポリペプチドをコ−ドする、env 配列と呼ばれるヌク
レオチド配列;
e)enb配列の発現を調節する転写制御シグナル。
有益には、本発明のパッケ−ジング細胞は、ヘルパ−ウイルスと、内在性のウ
イルスを欠き、よって安全性の改善された条件を提供する。
本願で言及するGAG、POL、ENV ポリペプチドは、ウイルスのヌクレオチド配列
gag、pol、env により発現されるポリペプチド及び/または糖タンパク質全てに
対応するが、またはこれらポリペプチド及び/または糖タンパク質の一部に対応
するか、またはトランケ−ションにより細胞標的の感染にむけたトランス補完の
達成を可能にする場合には特に、このトランケ−ションにより修飾したものに対
応する。
本発明の特に魅力的な細胞は、一方でフレンドレトロウイルス株 FB29 の LTR
配列内に含まれている転写制御シグナルの制御下にある、フレンドレトロウイル
ス株PB29のgag、及びpol ヌクレオチド配列と組み換えを起こしていて、もう一
方で誘導性プロモ−タ、例えばRAR βプロモ−タの制御下にある、スプ−マレト
ロウイルスタイプのレトロウイルスのenv ヌクレオチド配列と組み換えを起こし
ている、CNCMに番号I-1496の下に寄託されたDOGOM1細胞であることを特徴として
いる。
スプ−マウイルスエンベロ−プをコ−ドしている配列の制御を誘導性プロモ−
タで行うことで、形質転換細胞でのスプ−マウイルス配列の発現による溶解の可
能性を防げるはずである。
本発明の別の魅力的な組み換えトランス補完性細胞は、gag、及びpol配列の発
現を調節するフレンドFB-29 レトロウイルスのLTR 配列内に含まれている転写制
御シグナルが、非ウイルス性プロモ−タとその後に続くSV40ウイルスポリアデニ
レ−ションシグナルまたはオルタナティブなポリアデニレ−ションシグナルによ
り置換されていることを特徴としている。
よって gag、及びpol 配列は、例えばRAR βのような誘導性プロモ−タ制御下
におくことができる。
別の態様によれば、本発明の主題は、レトロウイルスRNAのパッケ−ジング
用のトランス補完性組み換え細胞であって、上記の gag、及びpol 配列を誘導性
ないしは条件性プロモ−タの制御下に具備し、さらに例えば両種向性のenv配列
、例えばモロニ−ウイルスのエンベロ−プ配列4070Aに由来するものが、誘導性
または条件性プロモ−タの制御下にあるものを具備していることを特徴とする。
本発明の特別な態様によれば、トランス補完性細胞は、エンベロ−プポリペプ
チドをコ−ドしている、トランス補完用の発現ベクタのヌクレオチド配列は、例
えば特定の細胞種により特異的に認識されるポリペプチドまたは糖タンパク質を
コ−ドしているヌクレオチドを配列することによる置換により修飾されているが
、またはそのような配列を加えることにより修飾されていることを特徴とする。
よって得られた組み換え細胞は更に、選択したヌクレオチド配列(トランスジ
ェニック配列)の、標的細胞ゲノム内での発現、及びまたはトランスファー及び
/または組み込み用の、レトロウイルスベクタで形質転換され、該レトロウイル
スベクタは有益にはフレンドレトロウイルスPB29株から構築される。
よって、レトロウイルスベクタは、発現させるトランスジェニック配列を LTR
配列の制御のもとに置き、一方で、gag、pol、及びenvをコードする配列は少な
くとも一部で欠失させ、またパッケ−ジング配列をベクタ構築物内に含める。
上記したトランス補完性細胞の形質転換用に使用される有益なベクタは、図1
に示してあり、CNCM に番号 I-1326 の下に 1993 年6月 30 日に寄託したベク
タpFOCH29 である。標的細胞内へ発現させるトランスジェニック配列は、複製に
必須でない部位で挿入される。
他のレトロウイルスベクタも有益である。少なくともLTR配列の真ん中の一部
、例えばLTR配列のU3領域が欠失している場合には、特にpFOCH29誘導体が最初に
考慮される。
別のベクタは、図2に示してあるベクタpFOCH29PL である。
本発明によると、上記した補完細胞株で継代した、効果的に偽性タイピング(
pseudotyping)される欠失レトロウイルスベクタは如何なるものでも、導入遺伝
子の遺伝子治療目的のために使用することが可能である。
導入遺伝子のヌクレオチド配列は、天然にはベクタゲノムではないヌクレオチ
ド配列であり、また特には発現、クロ−ニングまたは遺伝子トランスファ−を調
節する配列である。それは天然または合成の配列、特にはハイブリッド配列であ
ってもよい。
トランスジェニックヌクレオチド配列のトランスファ−とは、ベクタで形質転
換した標的細胞のゲノム内、または該ベクタの衛星内への、該ベクタが有する配
列の組み込みを意味する、このようなトランスファ−は、組み換え、特には相同
性組み換えにより得られる。
よって、レトロウイルスベクタは、標的細胞のゲノムの修飾を通じて、外来性
ヌクレオチド配列の恒久的な発現を仲介するが、該外来性配列は、該標的細胞の
ゲノム内への組み込みを行う能力に応じて選択される。
トランスジェニック遺伝子を有する上記の欠損ベクタ、または一方でgagおよ
びpol配列を有し、もう一方でパッケ−ジングに向けられた補完用にenv配列を有
するプラスミド発現ベクタは、好ましくは例えば形質転換、または電気穿孔によ
り、パッケ−ジング細胞株内へ導入される。この形質転換により、標的細胞の形
質導入後の組み換えを達成するのに適切なウイルス粒子の形成がおきる。これは
、ベクタ内に含まれるトランスジェニック配列のクロ−ニング、トランスファ−
、または発現に向けて行なわれる。
治療的に興味のある配列で、本発明のベクタとパッケ−ジング細胞株により標
的細胞内へ導入されるものは、例えば特定の疾患の背景事情における非機能性の
遺伝子の、正常な相当物に一致する配列であるが、またはそのアンチセンス配列
と一致するものか、または特定の遺伝子のドミナントネガティブ変異体と一致す
るものか、または遺伝子の機能性阻害剤をコ−ドする配列に一致するものか、ま
たはリポ−タ−の標識遺伝子に一致するものか、または特定の遺伝子の制御遺伝
子若しくは制御配列に一致するものか、または標的細胞に新規の機能を与える遺
伝子に一致するものである。
本発明は、遺伝子補正、または腫瘍細胞破壊のための方法の戦略の改善による
、癌の遺伝子治療のための適切な方法を提供する。第一の技術によれば、先天的
に癌になりやすい素質の背景事情において遺伝している変異を直すこと、または
ras 癌遺伝子経路、及び相同性経路のようなシグナル伝達の機能不全を直すこと
を目的にすることが可能であるが、この機能不全により、癌遺伝子活性化、また
は腫瘍サプレッサ−遺伝子の阻害と同様に、遺伝的不安定性若しくはDNA修復
が関わるものを好む異常の補正が生じる。
第二の戦略によれば、本発明は有益には、ガンシクロビルまたはアシクロビル
を細胞毒性薬剤に変換する、ヘルペスウイルスのチミジンキナ−ゼ遺伝子、また
は 5-フルオロウラシル前駆体を活性薬剤に変換するシトシンデアミナ−ゼ遺伝
子を利用するようなプロドラッグを活性化するために、または例えばサイトカイ
ン遺伝子による腫瘍細胞の遺伝的改変によるか、または抗原提示細胞若しくはそ
の前駆体(造血幹細胞)の改変、または免疫エフェクタ−細胞である T 細胞、B
細胞、LAK 細胞、若しくはTIL 細胞の改変により、免疫系を誘導するか若しくは
刺激するために行なわれる。
貧血の遺伝的疾患を直すことに関しては、本発明は、先天性の代謝異常、サラ
セミア若しくは鎌形赤血球症のような異常血色素症、うっ血、及び血液凝固疾患
、
または先天的髄鞘形成若しくは筋障害を直すのに適用することが可能である。
本発明はまた有益には、治療またはAIDSのような感染症の予防の何れか、心血
管疾患、肺、肝臓、及び消化器、神経筋、中枢神経系、胸膜、及び腹膜などの疾
患に対して適用することが可能である。
本発明の別の態様によれば、トランスジェニック配列は抗原、または抗原決定
基、または抗イディオタイプをコ−ドしている。
本発明の別の態様によれば、トランスジェニック配列は、抗体、特には抗原認
識に必要な可変配列を含む単一鎖抗体をコ−ドしている。
治療のプロトコ−ルの背景事情において、例えば免疫反応を惹起するための場
合には、上記のような抗原決定基を含むベクタを、潜在的に使用することが可能
である。
本発明のツ−ルはまた、病原体に対しての患者のワクチン接種、または有益な
薬剤の接種を、恒久的若しくは一過的に行うのに適している。
トランスファ−は、細胞、組織、器官、または生物体の形質導入により行える
。
本発明を実施するための適切な細胞標的には、例えば線維芽細胞、内皮細胞、
中皮及び間葉細胞、皮膚細胞(その中ではケラチノサイト)、肝臓の細胞(その
中では肝細胞)、筋細胞、中枢神経系の修飾細胞、グリアル細胞、乏突起膠細胞
、星状細胞など、上皮(その中では尿路上皮)、腺性上皮(その中では乳腺由来
のもの)、肺上皮、消化器上皮と同様に、その起源をとわない細胞株がある。
図1:FOCH29ベクタの制限地図。番号は、FB29株の配列による。
Cla→U3 140(7702-7845)
U3→R410(7845-8255)
R→CBS145(0-145)
PvuII→BamHI208
PvuII→PvuII1098
PvuIIMT→PvuII1669
BsmAI→55/150/765/1766/2531/2684
B:POCH29ベクタの制限地図であって、図中では部位を、図1 A のPB29 株配
列による以下の番号で示してあるとともに、構築に属する番号は(括弧内の番号
)で示してある。
図2:FOCH29-PL ベクタの制限地図
図3:A,B:LTR-FB29del Psi-gag/polPB2 9を含むプラスミドベクタの制限地
図
図4:RAR β-SD-Del Psi gag/pol FB29 を含むプラスミドベクタの制限地図
図5:4070A 両種向性エンベロ−プを含む、プラスミドベクタ、「純粋」LTR
の構築
図6:スプ−マウイルス由来のエンベロ−プを含むプラスミドベクタ「純粋」
LTR の構築
図7:4070A 両種向性エンベロ−プを含むプラスミドベクタ RAR βの構築
図8:スプ−マウイルス由来のエンベロ−プを含むプラスミドベクタRAR βの
構築
例
A)レトロウイルスベクタ pPOCH29 の調製
材料と方法
1-ウイルスゲノム物質の出所
プロウイルスのゲノムDNAを pBR322 にクロ−ニングした(Sitbon et al.,
1986)。ウイルス配列の7702にあるClaI 部位をEcoRI 部位で置換した後、ウイ
ルスのLTR 全てを含む、2110塩基対(bp)のEcoRI-PvuII 断片を、pUC19のポリ
リンカのEcoRI、及びSmaI部位へサブクロ−ニングした。
2-レトロウイルスベクタ POH29 の構築
EcoRI-PvuII断片を含むpUC19のポリリンカのHind III 部位を、Hind III で開
いて大腸菌(E.coli)のDNAポリメラ−ゼのラ−ジ断片(クレノウ断片)での
埋め込み後に、BglII部位で置換し、Hind III 部位を再び作りださないBglII ア
ダプターで連結した;このBglII部位を導入して、フレンドウイルスの天然のLTR
の第二コピ−を含む865bp の BamHI-BamHI 断片を受け入れて、下流の LTR(ま
たは3’LTR)を構成するようにした。DNAポリメラ−ゼのクレノウ断片により
埋め込んだ後に EcoRI 部位を再び作りださないリンカを使用して、pUC19 の Ec
oRI部位をBamHI部位で置換して、このBamHI-BamHI断片を単離したが、下流のBam
HI 部位はウイルス配列に内在性のものである。
よってこの断片をバックボ−ンのpUC 19と連結させて導入したが、pUC19の
、BglIIによる開裂開裂で、粘着末端と、BamHIにより作られた末端との組み合わ
せが可能になった。得られるプラスミドはpFOCH29 と呼ぶ。
3-標識遺伝子の導入
レトロトランスポゾン Tn5 に由来するネオマイシン耐性遺伝子(NeoR)の、
BglII-BamHI の cDNA断片(1500bp)は、3つの断片(pUC19-5'LTR BglII、NeoR
BglII-BamHI、及び3'LTRBamHI-BamHI)の連結により、二つのウイルス性LTR の
間に導入した。得られるプラスミドは、pFOCH29-Neo と呼ぶ。
4-パッケ−ジング細胞株psi-CRIP と、線維芽細胞の感染
DNAキャリア−なしの標準的な方法にのっとったリン酸カルシウム沈殿法で
、10μgのプラスミドを、1日前に5X104の細胞をまいといた、直径35mmの培
養皿に析出させて、プラスミドpFOCH29-Neo を、ダノス(Danos、1988)らの記
載の両種向性パッケ−ジング細胞株psi-CRIP内に導入した。
psi-CRIP 細胞を、10%ウシ新生児血清(Hyclone)を補充したダルベッコ改
変イ−グル培地(DMEM,GTBCO-BRL)で増殖させた。形質転換後2日に、細胞を
トリブシン処理して、1/20に希釈して、培地1ml当たり 1mgの最終濃度のジェネ
ティシン存在下での選択にかけた。12日後に現れたコロニ−を選択して、1ウェ
ル当たり1クロ−ンの濃度で24穴の培養皿に再移植した。
集密に達したウェル内の細胞培養上清をとって、0.45μmフィルタ−に通して
浮遊細胞を除去して、8ug/mlの濃度のポリブレンの存在下で、24穴培養皿に等し
くまいた、マウスの線維芽細胞NIH3T3 を感染させた。このNIH3T3 を、10%ウ
シ胎児血清(PCS)で補充したDMEM中で増殖させた。ウイルスの組み込みは、集
密に達したNIH3T3の溶解物でのPCRにより分析した。
5-ポリメラ−ゼ鎖反応(PCR)
24穴培養皿で集密のNIH3T3の溶解上清を100μl回収し、そのうち10μlを使
用してPCR反応を、以下の緩衝液を使用して行った:25mMのMgCl2を含有する、10
X標準PCR緩衝液(Perkin-Elmer/Roche MS)、それぞれのプライマを100ナノグ
ラム(ng)、10mMのdNTPsを2μl(開始濃度が10mM で、それぞれのdNTPの等量
混合物、すなわちそれぞれが 2.5mM)、クロ−ン化 Taq ポリメラ−ゼ(Perkin-
Elmer/Roche MS)を40サイクル用に2単位、25サイクル用には1単
位、最終容量は50μl。
二組のプライマを使用した。
使用したオリゴヌクレオチド配列は、
1)第一組が、
2)第二組が、
であった。
増幅配列のサイズは、第一組の場合、末端gag/NeoR遺伝子の近いほうの3分の
2の、900bp であり、第二組の場合、離れたNeoR遺伝子/341LTRの近いほうの半
分の、610bp である。
94℃、5分の変性、GeneAmpPCR9600で40サイクル(94℃変性30”、55℃ア
ニ−リング15”、72℃伸長30”)と、最後の伸長工程を10分間。
試料(50μl中15μl)を1.2%アガロ−スゲル(Seakem,FMC)にのせて、80
V、45分間の水平電気泳動にかけて、臭化エチジウム(BET)蛍光の強度の分析
に基づき、シグナルを検出した。
6-感染力価の決定
NIH3T3を感染する能力を試験したそれぞれのクロ−ンを増幅して、PCRによる
感染効率の分析の前に適宜、凍結させた。
PCR後、標準的な方法でNIH3T3を感染するために二つの本質的なクロ−ンを選
択して増幅させた。
16時間の培養上清を、直径が35mmの皿上の、それぞれの産生クロ−ンより、
集密時に1mlとり、0.45μmのフィルタ−に通して浮遊細胞を除去した。この上
清を、同じ直径(35mm)の培養皿にある、50%の集密度にあるNIH3T3細胞と、培
地1mlあたり8ugのポリブレンの存在下で接触させるようにした。培地を30分ごと
にゆずりながら、細胞を約2時間30分、37℃でインキュベーションした。新鮮な
培地を3容量、2時間30分後に加えた。
感染性ウイルス力価
初代の上清の連続的な希釈物を使用して、NIH3T3細胞を感染させた(未希釈の
上清、並びに1/10、1/1000、及び1/100000の希釈)。感染2日後、細胞をトリプ
シン処理して、約1/20で、直径100mmの培養皿3つでサブ培養し、ジェネティシ
ン(1mg/ml)を上清に加えて選択した。
この実験方法は、以下の意味でより厳密な条件にされた:一方で、感染後すぐ
に薬剤を加えて、もう一方では、細胞のトリプシン処理なしで、直接的に選択に
かけて、人工的に得られるクロ−ン数を操作することを避け、感染細胞に由来す
る娘細胞は、グル−プでとどまり、その場で唯一のコロニ−を形成する。逆に言
えば、細胞がトリプシン処理されると、娘細胞が培養受け皿に広がり、人工的に
独立したコロニ−が形成し、これが計測されると力価を人工的に操作することに
なる。
サザンブロット
未希釈の上清による感染2に日後、NIH3T3をトリプシン処理して、約1/20で、
直径100mmの培養皿上でサブ培養して、そのうち一つをジェニティシンによる選
択にかけた。
集密時に、二つのクロ−ンのそれぞれの感染細胞のゲノムDNAを、(選択後
、または選択なしで)抽出して定量した。
サザンブロットを行うために、DNAを二つの制限酵素、PstI 及びKpnI で消
化した。消化の質と、それぞれのウェルに等量のDNAを入れることを調節した
後に、ナイロンハイボンドN膜(Amersham)上でトランスファ−を行った。ハイ
ブリダイゼーションは、100塩基上流と 100塩基下流で挟まれているウイルスのL
TR の全てを含んでいるプロ−ブを使用して行った。このプロ−ブはプライマ伸
長法(Feinberg and Vogelstein,1983,1984)により、比活性が5X108cpm/ug
のアルファ32P標識済みのdCTPで標識した。
ハイブリダイゼーションは、50%脱イオン化ホルムアミド、5XSSEP、IXデ
ンハルト、5%硫酸デキストラン、及び0.2mg/mlの超音波処理サケDNAからな
る溶液中で、20時間42℃で行った。低厳密度の2X SSEP/0.1%SDSの溶液で5分
間室温、10分間65℃で簡単に洗浄し、ついで3日間コダック XAR-5 フィルムに-
80℃で、Li-Plus増強スクリ−ン(Dupont-NEN)ともに露出した。
7-ヘルパウイルスの産生のためのサ−チ
このサ−チは、3T3BAG株上での動員試験により行った(Danos et al.,1988;
Danos et al.,1991)。
3T3BA G細胞を最初に、感染したパッケ−ジング細胞の未希釈の上清で感染さ
せた。前もって感染させた3T 3BAGの上清で、未露出の3T 3BAGを複数回連続
して感染させて、この試験を感作した。
結果
1-レトロウイルスベクタPOCH29の構築
フレンドマウスウイルスのウイルス株PB29 を単離し(Mathieu-Mahul et al.,
1982)、組み込まれたプロウイルスのゲノムDNAをpBR322にクロ−ニングした
(Sitbon et al.,1986)。このゲノムDNAを完全に配列決定した(Perryman e
t al.,1991)。2120bpのClaI-PvuII ゲノム断片をpBR322内にクロ−ニングした
。この断片には、ウイルスエンベロ−プのpISEをコ−ドする配列の最後の配列、
LTR全て、及びgag配列の3/5が含まれている。ベクタの構築のマトリックスを構
成
している。
ClaI 部位のEcoRI 部位による置換後に、EcoRI-PvuII 断片を、pUC19のポリリ
ンカのEcoRI-SmaIにサブクロ−ニグした。このクロ−ンは、一方で、無傷のまま
でベクタの基本構造を形成していて、これには上流のLTR若しくは5’LTR、ウイ
ルス転写のイニシエ−タの結合部位(プライマ結合部位、若しくは PBS)、パッ
ケ−ジング配列、gag配列、及びpUC19のポリリンカの断片でEcoRI/SmaI 消化を
受けていて、興味ある遺伝子の挿入に使用するもの、が含まれている。
もう一方では、BamHI-BamHI 断片が、上流でEcoRI 部位をBamHI 部位で置換す
ることによって派生していて、ドナ−スプライシング部位のすぐ下流に位置する
、下流のウイルスの内在性BamHI 部位をうまく利用している。この断片を、ポリ
リンカのHindIII 部位が前もってBglII 部位で置換されていて、BamHI 酵素で作
られる粘着末端を生じさせている基本的フレ−ムワ−ク内へ導入した。
レトロトランスポゾンTn5 に由来し、ネオマイシンへの耐性を与える(NeoR)
標識遺伝子を、二つのLTR の間に導入した。ドミナントネガティブなリコンビナ
−ゼ表現型の、ス−パ−コンピテント細菌の形質転換後に、存在している配列の
再組み換えの可能性を防ぐために、予想される配置の形質転換体を、構築物全て
に関して探索した拡張制限地図に基づき選択した。そのうちの一つで、pFOCH29
と命名されたものを、ウイルス粒子産生ヘルパ−株の形質転換用に適切で十分な
物質原を得るために、増幅して精製した。
2-欠失ウイルス産生クロ−ンの単離
psi-CRTP パッケ−ジング株の形質転換:プラスミド pPOCH29-Neo を、ダノス
(Danos、1988)らが記載の両種向性パッケ−ジング株のpsi-CRIP内へ、リン酸
カルシウム沈殿法を、キャリア−DNAなしの標準的な方法により導入した。
ジェニティシンによる選択にかけた後に、形成したコロニ−の40を取り、培養
上清を使用してマウスの線維芽細胞(NIH3T3)を感染させた。パッケ−ジングさ
れた欠失ウイルス粒子の最も産生的なクロ−ンのシリ−ズの初期的選択方法は、
ポリメラ−ゼ鎖反応による遺伝子増幅法を使用することに基づいていた。ウイル
スの組み込みは、集密に達したNTH3T3の溶解物でのPCRによって分析される。
二つの別個のPCRプライマの組を使用した。1:一組目は、構築物中に含まれ
るgag配列の末端の断片と、ネオマイシン耐性遺伝子の近傍側の三分の二とを増
幅する;2:二組目は、ネオマイシン抵抗性遺伝子の離れた側の三分の一と、下
流のLTR(3’)の半分とを増幅する。
他の36クロ−ンよりも強いPCR シグナルに基づいて、4つのクロ−ンを選択
した;この方法の繰り返しにより、二つのクロ−ンに対しては、このシグナルが
がなり強く出ていることを示す初期的デ−タが確認された。これら二つのクロ−
ンを増幅して、産生細胞の培養上清を次いで使用して、構築物の効率を定量的に
評価する目的で、NIH3T3をラ−ジスケ−ルで感染した。
3-産生クロ−ンの評価
定量的PCR
PCR による半定量的分析は、NeoR遺伝子の離れた側の3分の1に対応する領域
から下流のLTR(3')の中央の部分までを増幅する、プライマの組を使用して行っ
た。それぞれのクロ−ンに対して、ネオマイシンでの選択後、または選択なしで
、未希釈の上清で感染したNIH3T3細胞より抽出した、1μg及び3μgのゲノム
DNAを使用した。それぞれのアッセイは二つ一組で行った。プラスミドpPOCH2
9-Neoの複数の希釈を、ゲノムDNAの1ug等量に対して、0.1、0.5、及び1コ
ピ−となるように計算して、すなわち7164bpのプラスミドに対してそれぞれ0.11
5pg、0.575pg、1.15pgとなるように、パラレルで試験した。
PCRは、24サイクルで行ったが、これはまだ反応の対数期にある。読み取りは
、
臭化エチジウム蛍光の、コンピュ−タ化したデンシトメ−タ−的分析(Cyhertec
h)により行った。
第一クロ−ンの場合、選択した感染細胞と選択しなかった感染細胞のそれぞれ
で得られたシグナルの強度の間で、顕著な差異が見られ、検出系がシグナル強度
により飽和してしまう3μgのものよりも、1μgの試料において、よりはっき
りとしていた(選択したものに関してはシグナルの70%)。
第二クロ−ンの場合、選択した細胞と選択しなかった細胞との間のシグナル強
度の差異はなく、1μgの試料も3μgの試料も差異がなかった。これは、10
0%に近いNIH3T3細胞の割合が、この産生クロ−ンの未希釈の上清により感染し
たことを示唆している。このクロ−ンの高い感染性の程度はさらに、培養上清で
感染した NIH3T3 細胞がネオマイシン選択にがけられるときの細胞死亡率の欠如
から疑われた。
サザンブロット
感染したNIH3T3細胞のDNAを二つの制限酵素、KpnI とPstI で加水分解にか
けた ウイルス組み換え後のバンドの予想されるサイズは、使用するプロ−ブに
より変化する。LTR内と、pL1C19のポリリンカの中で切断する酵素KpnI の場合、
LTRプロ−ブ3610bpの、一つの一定の断片サイズと、組み込み部位に対しての内
在性ゲノムのKpnI部位の近さに応じた、サイズの異なる二つの断片とが、明らか
になり、離れた側の三分の一のNeoR/近い側のLTR分節のプライマを使用したPCR
に由来するプロ−ブでは、同じサイズ(3610bp)の断片が予想されて、二つの他
の断片のうちのたった一つのみが、組み込みごとに変わっていた。
gagの中間部で二回、及びpUC19のポリリンカ内で一回切断する酵素PstI の場
合、組み込み後に以前の二つのプロ−ブで同定された断片は、そのサイズが可変
であるはずであり、第二プライマの組みでの PCR で産生したプロ−ブは、790bp
の一定の断片を同定する。
KpnI とPstI により消化したプラスミドpFOCH29 の複数の希釈物をサザンブロ
ットで分析した。これらの希釈は、10μgのゲノムDNAに対して、それぞれ
0.1、0.5、1.0コピ−のプラスミドに対応している。
更に、ネオマイシンで選択しなかった感染細胞のDNAは、構築物の感染性を
定量するために、整然と脇をそろえて置いた。選択された細胞は、感染対照の1
00%を構成した。
滴定:ウイルス希釈による、感染性ウイルス力価
初代の上清の複数の希釈(未希釈の上清、1/10、1/1000、及び1/100000の希釈
された上清)を使用して、NIH3T3 を感染した。細胞は、直径35mm のウェル当た
り、0.5ml に比例させて、ウイルス上清で感染させた。選択薬剤を感染後、正確
に20時間で、細胞のトリプシン処理なしで培養皿へ加えた。選んだ感染性力価
は、コロニ−が生じた最終的な希釈度で観察されたコロニ−の数に、希釈の逆数
をかけた数字に対応している。
第一クロ−ンの場合、最初の産生細胞の力価は2X106pfu/ml である。第二ク
ロ−ンの場合には、力価は106pfu/ml である。
一方で最初の継代を保存するため、もう一方で数カ月間の連続的培養を維持す
るために、二つの産生クロ−ンを通常どおりに凍結させた。連続的滴定(ウイル
ス上清の希釈)により、力価の進行性減退を同定することが可能になった。第一
クロ−ンの場合、二カ月間の連続的培養の間に、2X106以上からわずがに101に
まで、力価が変化した、この劇的な力価の低下は、同心性の外見と剥離の状態を
有する、培養細胞の増殖の変化を伴った。第二クロ−ンの場合、二カ月間の連続
する培養中に、力価は106以上から105にまで変化した。この中程度の力価の低下
は、培養細胞の形態及び増殖に関しての如何なる変化も伴っていなかった。
4-3T 3BAG上での、ヘルパ−活性のアッセイ
この研究は3T 3BAG株での動員試験により行った(Danos et al.,1988;Danos
et al.,1991)。
3T 3BAG細胞を最初に、感染済みパッケ−ジング株の未希釈の上清で感染し
た。前もって感染した3T 3BAGの上清での、未露出の3T3BAGの感染を複数回の
連続サイクルで行い、アッセイを感作し、陰性であることを証明した。更に、ネ
オマイシンに抵抗性のある細胞コロニ−は、未露出のNIH3T3を、ネオマイシンで
選択した感染済みNIH3T3の上清と接触させるように置いた後では検出されなかっ
た。
5)組み込み部位
ヒト、およびヒト以外の霊長類細胞を使用して、感染後のウイルスの組み込み
部位の数を同定した。マウス細胞は、これらの細胞内に、複数のレトロウイルス
またはレトロウイルス様配列に関わる組み込み顕著なバックグラウンドが存在す
るかぎり、非常に緩やかな質の兆候を提供する。
この目的のため、サルVERO細胞をウイルス上清の複数の希釈物で感染した。10-2
の希釈物の場合、独立したクロ−ンが得られ、それぞれは、単一的性質のウイ
ルス組み込みから始まったものである。一方でウイルス構築物内で、もう一方で
、組み込み部位から種々の長さで離れた、細胞宿主のゲノムDNA内において、
切断する制限酵素を使用することにより、組み込みイベントと同様に、種々のサ
イズの多くの制限断片を得ることが可能になった。この場合、酵素XbaIまたはSa
lIを使用した。
6)ウイルス力価の安定性-マスタ−バンクシステム
均一な、ウイルス産生細胞ストックを構成して、生体内病原性の可能性を調べ
るために、以下の方法により、複製適格なウイルスがないように徹底的に制御し
た:
・3T 3BAG細胞での動員試験;
・NIH3T3での増幅;
・新生マウスの腹腔内接種。
この細胞バンク(マスタ−細胞バンク MCB)より始めて、ワ−キング細胞バン
クを構成した。得られたウイルス力価は、数カ月間安定であり、20X106から3
X 107cfu/ml のオ−ダ−であった。10-7の希釈を含んでいたアッセイでも、結
果が得られた。力価はこの強度レベルでは、数ケ月間、かなり安定であった。
B)付加的なレトロウイルス構築物
図2に示してある、POCH29-PL(FOCH29-純粋LTR)と命名した、特に3’LTRか
ら上流を縮小したLTRを有する構築物を作成した。
この構築物により、ウイルスLTRから上流のエンベロ−プの104の末端を含
む、140bp の切り出しの遺伝的安定性における有益性を調べることが可能になっ
た。
この構築物は、パ−トB1−1に記載したEcoRI-PvuII断片を含んでいるプラ
スミドpUC19 より作成された。制限酵素EspI(または IsoCelII)により、部位7
864(すなわちういるす LTRの-23)で酵素的に切断した。5’末端で、EcoRI 切
断により産生した末端を、LTR(140塩基、そのうち103がエンベロ−プの塩基で
ある)の23塩基に相補的な二本鎖合成オリゴヌクレオチドに、人工的に付加し
た。3’末端では、このオリゴヌクレオチドは粘着性SpeI 末端に対して相補的で
ある。オリゴヌクレオチド配列は以下のとおりである:
C)パッケ−ジング細胞株を通す補完用の構築物
1)GAG-POL 構築物(元のパッケ−ジング細胞株の仕上げ用)
フレンドウイルスFB29株由来配列を使用する種々の工程を以下に記載した
。
核タンパク質及び逆転写酵素の補完性gag/pol構築物は、フレンドウイルスの
PB 29株から由来する。
基本的構造は、段落中に記載の構築物から組み立てられたが、このなかで LTR
はそのままにするかまたはRAR βプロモータで置換した。
gag カプシドタンパク質(+619より開始)をコードする配列の上流に位置
するパッケージング配列の大きな欠失を、以下のようにして行った:SpeI(また
はIsocelII)(+280のユニークな部位)とPstI(+560−561)で切断
して280塩基対を除去する。合成リンカのSpeI-PstI(5'−CTAGTGCA-3')を
合成して、プラスミドにアニーリングし、再びHindIII で切断する。次いで連結
を、gag及びpol配列の大部分を含む第三断片である、PstI-HindIII で行う。
あるいは、合成のSpeI-PstI アダプタを単にPstI リンカで置換した。
次いで、第二工程(形質転換と陽性組み換え体の選択後に)では、GAG の ATG
を含むPstI-PstI(561−737)を、gag配列の全体性を再確立するために、
元の位置にクローニングした。この小さい対称的なPstI-PstI断片のクローニン
グの配向は、HaeII(720位、第二の部位は4291に位置しているが配向に
は影響しない)/AhaIII(1031位にある、FB29配列全体でユニークな部位
)、
またはEspI(LTRの7864位にある、FB 29配列全体でユニークな部位)での
酵素的消化により確立する。FB 29ゲノム全体に対応するDNA配列の、pUC19
のHindIII 部位における、このクローニング方法の結果として、pol 配列末端が
以下のようにして回収された:まずHindIII(5060)とSmaI(=isoBstI1071)
(6335位のユニークな部位)で切断する;精製後、この断片を再びSmaI(6
079)で切断して、最小のエンベロープ配列(244塩基)を具備した101
9塩基の断片を産生させる。この断片をpUC18のポリリンカ内のHindIII-HincII
へサブクローニングした。SV40のポリアデニレーションシグナルは、構築物から
下流に配置した(プラスミドpCRIPgag-2,Danos and Mulligan、1988)。
5‘末端のNheI、3’末端のEcoRI断片を、SV40-polyA含有プラスミドより削
除するが、これには SV40 初期プロモータのポリアデニレーションシグナルのHp
aI-EcoRI断片が含まれている。この断片をさらに「XbaI(NheI粘着性、または、
XbaIはフレンドpolのこの末端で制限するのでXbaIの部分消化)で、あるいは、p
UC18中へのpol末端のクローニング前の初期的工程として、または平滑末端で、
またはpUC18ポリリンカのKpnI部位へのSpeI リンカ(NheI制限に粘着性である)の
挿入後にクローニングして」、下流をEcoRI粘着性にする。
POL及びポリA配列を、5'-HindIII、3'EcoRI制限により一単位としてpUC18か
ら除去し、連結は、上記の段落に記載のプラスミドpUC19/純粋LTR/del-psi/GA
G/2/3POL で行った(図3)。
同様の構築物は、ウイルス性LTR を、RAR βのような非ウイルス性プロモータ
で置換することにより、確立することができる(図4A)。
その設定では、RAR-βプロモータのBglII-BamHI断片を、pUC19 のBamHI 部位
にクローニングする(BglII-BamHI 断片には二つのBamHI 粘着性末端がある)。
正しい配向は、BamHI部位(3')の上流85塩基の、RAR βプロモータからの非
対称性の二つの断片を生じるEcoRI部位をうまく利用した。このプラスミドを更
に、RAR βプロモータを具備したBclIまたはScaI/PstI(3')断片(それぞれ、
1803,または1841)を第二工程で精製するために、5'のBclIまたはScaI
、及び3'のAflIIIで開裂させた。該断片が最初からAflIII消化(それぞれ、22
00,及び2250塩基)で単離できない場合には、PstI切断で生じる断片の分
離はできない。精製した断片は更に、LTR-GAG/POLプラスミドから除去されたPst
I/ScaI またはBcgI断片と連結される。後者には、ウイルスLTR(7838,ま
たは7875塩基)のないgag/pol配列が含まれている。前の構築物をPstI で
開裂してスモール断片を配向的な様式(上記してある)でクローニングすること
により、176塩基のPstI-PstTgag断片を回復して構築物を完成させた(図4B)
。
2)両種向性ENV構築物(図5及び7)
モロニー白血病ウイルス(Mo-MuLV)の両種向性株(Chattopadhyay et al.,1981)
由来の両種向性エンベロープ配列の4070Aが、Psi-CRIP細胞株で使用された
ものと同様に、エンベロープ補完に使用されている。形質転換は、ヒスチジノー
ルまたはハイグロマイシンのような選択を可能にする第二遺伝子とともに共形質
転換する。
二つのオプションを考慮した:
a)下流にSV40由来のポリアデニレーション部位を有する、ウイルスの5'LTRか
らの転写:BglII-EcoRI断片を、pCRIP Amgag-構築物より切り出し、PB29配列のM
scIにおけるBglII リンカを挿入して5'末端での粘着性クローニングを行わせる
ようにした後に、更に純粋LTR構築物に連結する。そして3'末端のXbaI 平滑(ベ
クタ)−EcoRI(SV40-ポリAシグナル)も行う。
b)薬学的処置により誘発される誘導性プロモータ、特には上記したレチノイン
酸βプロモータからの転写:ここではエンベロープ配列が構築物内で、gag/pol
配列を置換していて、この構築物はセクションCで記載されている、SV40−ポリA
配列が保持されているものである。実際に、ウイルスLTRは、セクションAに記載
されているこの構築物より、レチノイン酸受容体の末端(3'末端のBamHI、
BglII 粘着性)に対して粘着性末端を放出するBglII 制限によって、切り出され
る。
RAR−β両種向性エンベロープは、以下のようにして仕上げることができる:'
LTR-env ampho-SV40 polyA'をうまく利用した実験的省略法により、構築した、
以下のようにクローニングした:機能的な利点を有する転写制御配列の全てを含
んでいる、レチノイン酸βプロモータの、902塩基のBglII(-747部位)−Ba
mHI(+155)断片を精製して、BglIIリンカがHindIII にクローニングされて
いるpUC19内へクローニングした。上記した構築物と、LTR-env-AMPHO 構築物(
これからは、断片含有エンベロープ配列が保持されている)の両方に由来するXm
nI(pUC19 内を切断する)−BglII 断片は、連結により結合している。配向には
RAR−β断片のEcoRI を使用した;これは両種向性エンベロープ配列が、別個のE
coRI部位を有しているために可能であった。
3)スプーマウイルスENV−構築物(図6及び8)
第二の例において、スプーマウイルスのエンベロープ配列を使用した。
スプーマウイルスエンベロープ配列で、上記した構築物内の4070A両種向
性エンベロープ配列を置換したが、ここではSV40−ポリA配列は保持されている
。
スプーマウイルスのEcoRI−EcoRIゲノム断片をpUC19のEcoRI部位にサブクロー
ニングする。エンベロープ発現構築物内で使用するこの断片は、BanI消化により
得られ、これはスプーマウイルスゲノムのエンベロープ−ATG の上流30塩基を
残し、一方、終結シグナル近くの下流のEcoRI部位は、まだ使用される(Flugel
et al.,1987)。
両種向性エンベロープと同様に、二つのオプションを選択した:
a)SV40由来の下流ポリアデニレーション部位を有する5'−ウイルス性LTRから
の転写:LTR−スプーマウイルスエンベロープ構築物を確立するために、スプーマ
ウイルスエンベロープのEcoRI−EcoRI断片を、クレノウ酵素で処置して、pUC18
末端のpol/polyA-SV40内のHindIII/クレノウSmaI部位へクローニングし、それ
によってpol末端を置換する。スプーマウイルスのエンベロープ配列のBanI−Eco
RI断片で、SV40-polyAが後に続くものを更に切り出して、5'LTR−FB29純粋−LTR
プラスミドのMscI/HindIII 部位へクローニングする(平滑末端はクレノウで処
理)(パッケージング配列と gag 配列とを切り出した)。配向性は、PvuIIでの
消化により確立する。
b)薬学的処置で誘発される誘導性プロモータ、特には上記したレチノイン酸β
プロモータからの転写:RAR−βプロモータ-スプーマウイルスエンベロープ構築
物を確立するために、SV40−polyA が後に続いているスプーマウイルスのエンベ
ロープを含んでいる、上記したBanI−EcoRI断片を、pUC18プラスミドのKpnI−Ec
oRI部位へクローニングした。ポリリンカないのBamHI部位を次いで開裂して、そ
の中にRAR−βプロモータをクローニングする(このBglII-BamHI 断片の両末端
はBamHI粘着性である)。配向性は再び、RAR−βプロモータ内に非対称的な二つ
の断片を生じるEcoRI部位をうまく利用して確立する。
それぞれの工程で、興味ある構築物に対して細胞クローンを、ウイルス補完性
タンパク質の産生強度レベルとその安定性とにより、選択する;マスター細胞バ
ンクをそれぞれの選択細胞株に対して調製する。
D)イヌ胎児細胞「DOG」より、パッケージング細胞株を確立する
D.1 イヌ胎児細胞の選択
胎児イヌ細胞の選択は、以下の方法のようにした:
a)10%ウシ胎児血清と10%ウマ血清とをさらに含む ISCOVE リッチ培地(
GIBCO)で、選択した真核細胞を培養する;
b)20%ウシ胎児血清を含むDMEM培地で、培養細胞を継代して、選択した細胞
を回収し、CO2なしで該細胞を1ヶ月培養する;
c)速い増殖速度を有する細胞を選択する;
d)選択した細胞を、10%ウシ胎児血清を含んでいるDMEM培地で継代する;
e)工程dで回収された細胞を、10%の新生児ウシ血清(Hyclone)を含むDMEM
培地で継代する;そして、
f)工程e)の最後に、選択した細胞を回収する。
D.2.パッケージング細胞株の調製
a)gag/pol配列によるDOG細胞株の形質転換(DOGP 29)
形質転換は、標準的な方法により、キャリアDNAなしでリン酸カルシウム沈
殿を使用した:10マイクログラムのプラスミドは、5X104の細胞が前日に
まいておいた直径35mmの培養皿に析出させた。
細胞は、10%の新生児ウシ血清(Hyclone)を含むダルベッコ改変イーグル
培地(DMEM-GIBCO-BRL)で増殖させた。形質転換の2日後、細胞をトリプシン処
理し、1/20に希釈して、選択培地へまいた。12日目に出現しているコロニ
ーをピックアップして、ウェルあたり1コロニーの割合で24穴培養皿にまいた
。
DOGP29 は、以下に記載の構築物LTR−SD−欠失psi−GAG/POL(フレオマイシ
ン抵抗性の選択遺伝子との共形質転換)で、以下の基準で最適化したイヌ胎児細
胞の形質転換により得られた:1−内在性レトロウイルスがないこと、2−付着
性細胞であること、3−増殖が速いこと、4−安定で均一な形態を有すること、
5−容易に形質転換できること、6−非常に大きい数の継代を許容すること(ア
ッセイのための、過度な人工的継代)、7−適宜LTC-IC(Hemato)を維持するこ
とが可能なこと。
マスタ細胞バンク系は、ウイルス補完性タンパク質の産生強度と、逆転写酵素
(POL)の発現安定性により選択したイヌ細胞のクローンより作り出した。
パッケージング細胞株は、以下の評価アルゴリズムにより評価した:
初期評価:効率の証明;
二次評価:興味ある遺伝子を有する欠失レトロウイルスベクタの補完用のウイ
ルスタンパク質の発現の、もっとも正確なレベルを有する細胞株の選択。
両方の例では、使用する方法は同じであり、二番目の場合に、定量的評価と同
様に安定性の問題も、考慮に入れる。
組み合わせでの評価戦略:
1/要求される配列の存在の分子的証明:
後者は、ウイルス補完性タンパク質をコードする配列に特異的なポリメラー
ゼ鎖反応(PCR)に依存する。使用したプライマは以下のの通りである:
gag配列(フレンドウイルスFB29株)
pol配列(フレンドウイルスFB29株)
env配列(モロニーウイルス由来の4070A両種向性エンベロープ)
env配列(スプーマウイルスHFVまたはHSRV)
2/GAG/POL タンパク質の発現に向けられた、パッケージングシグナルが欠失
した基本的構築物の機能的効率の評価
−gag/pol 構築物を DOGP29細胞内へ形質転換する;選択を許容する遺伝子を
有するプラスミドで共形質転換する;
−POLの発現:後者を逆転写酵素アッセイで試験する;
−GAGの発現:後者を、細胞抽出物で行うウェスターンブロットで試験する;
このアッセイで使用する抗体は、GAG−CA p 30に特異的なヤギポリクローナ
ル血清である(標準的な技術では)。
3/レチノイン酸β受容体プロモータからおこる、配列の発現の誘導性
−細胞を、10−6Mの濃度の、全てがトランスのレチノイン酸(ATRA)で処
理する;誘導はATRA付加後24から48時間で評価するのがもっともよい。
4/マウスのウイルス(特にはモロニーまたはフレンド白血病誘導ウイルス)
に由来する欠失レトロウイルスのウイルス粒子と、スプーマウイルスエンベロー
プとの偽性タイピング
パッケージング細胞株での、スプーマウイルスのエンベロープの発現
−HSRVエンベロープに特異的な抗体を使用したウェスターンブロット;
−エンベロープ発現細胞での免疫蛍光。
標的細胞の感染:
−マウスのウイルス(特にはモロニーまたはフレンド白血病誘導ウイルス)に
由来する、欠失レトロウイルスベクタが有する遺伝的配列を、HSRV−エンベロー
プ仲介性ウイルス感染により、天然の細胞へ導入する。
もっともよい DOGgag/pol(DOGP29)クローンは、特定条件のみが記載されて
いて残りの条件は当業者に知られている、以下に記載のプロトコールにより、逆
転写酵素の測定により、選択した:
DOGP29細胞上清を含む試料を、50μlで、96穴皿に入れる(マルチチャン
ネンルピペットで);
以下の試料を放射能の対照として使用する:H2O、VIH+、対照細胞またはドナ
ーリンパ球培養上清;
10μlの緩衝液Aを加える(KCl=0.5M、DTT=50mM、TritonX100=0.5%);
次いで、40μlの緩衝液Bを加える(TRIS HCl(pH7.8)0.5M中の10μlのEG
TA、1μlの0.5M MgCl2、3μlの3 HdTTP(1mCi/ml)、10μlの 50D/mlの
polyA-オリゴdT、16μlの水);
試料は、37℃で1時間インキュベーションする。次いで、20μlの緩衝液
C「60%TCA 中の 120mM Na4P2O7」。+4℃で15分後、オーブンを60℃にす
る、真空ポンプ、注入器、およびスカトロン(SKATRON)フィルターのスイッチ
を入れる。用量をチェックする。アルコールをチャンネル2に設定して、水を1
に、脱汚染溶液を3に設定する。スカトロンを次いでマニュアルポジションにし
て、洗浄する:
1.チャンネル3:脱汚染溶液(TFD 4 2%)を5秒間で二回
2.空気
3.アルコール:20“
4.空気
5.蒸留水:20から30秒
水キャップをTCAに、アルコールキャップを水に。
フィルタをオーブンで60℃で乾燥させる。
フィルタを更に切断し、2ml のシンチレーション溶液の入った専用管内にいれ
て、攪拌する。すぐさまに管を分析できない場合、+4℃で保存した。データは
コンピュータで読みとり、cpm で表す。クルター(coulter)はまた、平均で4つ
のウェルを提供する。
緩衝液A
KCl(塩化カリウム)0.5M 7.45g
DTT(ジチオスレイトール)50mM 1.54g
TritonX100 0.5% 1ml
無菌化蒸留水 200mlまで
+4Cで保存 試験あたり10μl
緩衝液B
EGTA 5mM 0.5MのTRIS(pH7.8)中 10μl
MgCl20.5M 1μl
3HdTTP(1mCi/ml) 3μl
polyrA−オリゴdT 50D/ml 10μl
無菌化蒸留水 16μl
適切な量で、即時調製する。単一試験あたり40μl
緩衝液C
(60%のTCA中の120mM Na4P2O7)
10.7gのPpNa(=ピロリン酸ナトリウム=Na4P2O7・10H2O)をはかりとる
。
120gのTCA(トリクロロ酢酸)を加える。
無菌化した蒸留水を200mlまで加える。
+4℃で保存。
スカトロン洗浄緩衝液
(5%TCA中の,1.2mMのピロリン酸ナトリウム)
21.4gのNa4P2O7・10H2O(ピロリン酸ナトリウム)をはかりとる。
200mgの純粋なTCAを加える。
無菌化した蒸留水を4リットルまで加える(3800ml)。
最適化した逆転写酵素活性アッセイ
マウス白血病誘発ウイルスの逆転写酵素の検出用に最適化されたアッセイは、
塩化マグネシウムを含有した緩衝液中でのポリメラーゼ鎖反応ではなく、マンガ
ンの存在下で行った(Maniatis、Molecular Biology,A Laboratory Manual、
Cold Spring Harbour、1990)。
プロトコールは以下の通りである:逆転写酵素活性を試験する培養上清の50
μlを、以下を含んでいる50μlの2X溶液と混合する:TrispH8.3、0.1M;DTT
、25mM;MnCl2、1.2mM;NaCl、125mM;NP401/1000;dTTP、0.02mM;dTTP アルフ
ァ−32P(SA:3000Ci/mmol)、10μCi/ml;オリゴ dT−PolY rA、20μg
/ml;及び必要な容量のH2O。試料は、ドットブロット装置を利用して、37℃
で3時間インキュベーションした。それぞれの反応物を、ドットブロット装置を
使用してワットマンのDE81 紙で濾す。ワットマンの3MM紙を二枚、DE81 の下に
ひく。スロットブロットを使用して、2X緩衝液による3回の洗浄を複数回繰り
返す。次いで、フィルタを2XSSC中で10分間3回、洗浄する。このフィルタを
最後に95%EtOHで1分間2回洗浄して、すぐに乾燥させる。このフィルタを、増
幅スクリーンを使用してフィルムに露出する。
b)env配列を有するDOGP29細胞株の形質転換
形質転換は、上記のgag/pol構築物に対して記載したものと同じ条件で行う。
二つの異なる構築物を確立する:
−スプーマウイルスエンベロープが FB29-LTR により発現される第一のもの(
LTRに対してDOGP29L);
−誘導性プロモータ、特にはレチノイン酸β受容体プロモータにより発現され
るもう一つのもの(結果的には、エンベロープの発現が不十分であることが証明
される場合には、HSV−チミジンキナーゼ遺伝子エンハンサに結合している)。
例として、レチノイン酸β受容体プロモータを使用する(プロモータRAR−β)
。
レチノイン酸β受容体プロモータの5'-HindIIIと3'-BamHI断片(de The et al.
,1990)を、確立された構築物全体内に挿入する。上記の構築物から、BglII リ
ンカをFB29のMscI部位に挿入し、レチノイン酸β受容体プロモータの5'-HindIII
と3'-BamHI断片を、パッケージングシグナルのないgag/pol配列の上流へ置く。
c)スプーマウイルスエンベロープに対してのDOG29gag/pol/envの選択
この選択は、抗スプーマウイルスエンベロープ抗体を使用した免疫蛍光アッセ
イにより行った。
第一段階の工程の細胞においては、組織学的切片を調製して、更に蛍光活性化
細胞ソーター分析(FACS)にかけた。別の選択様式は、ウェスターンブロットを
行うことである。
d)gag/pol/及びenv細胞株の感染性を調べる機能アッセイ
感染の性質を確立するアッセイにでは、選択部位を有する欠失レトロウイルス
ベクタを有する初期の形質転換工程が関わる。このようなベクタは、セクション
Aに記載されている。
−N1H3T3繊維芽細胞の感染
感染は、セクションA-4に記載されている技術により、集密状態まで増殖した
培養細胞の培養上清で行った。
−ポリメラーゼ鎖反応(PCR)
セクションAに記載の技術により行った。
使用したプライマは次の通りである:
−選択遺伝子を含む欠失レトロウイルスベクタによる形質転換後の、ウイルス
力価の確立
選択した方法は、上記のセクションAのポイント6に記載されているが、以下
のようにして行った選択工程のみが例外である:感染後20時間で、G418を上清
に加えて(1mg/ml)、細胞選択を開始した。
−伝搬するコピー数
NIH3T3の標準的なアッセイに加えて、構築物内に選択遺伝子を有さない最適化
した欠失レトロウイルスベクタの場合に特に適する別の滴定方法が、提案されて
いる。ついでこの滴定は、分子的方法に基づいている:サザンブロットを利用し
て、伝搬するレトロウイルスのゲノムコピー数の平均値の定量的測定に特に基づ
いている。後者は、感染細胞由来し、興味ある細胞株により補完されているレト
ロウイルス構築物のLTR内を切断する能力に応じて選択した制限酵素により加水
分解されたDNAを有している(例えばKpnI);レトロウイルス構築物を含むプ
ラスミドを適切に希釈したもので考慮しているものを、同じ制限酵素を使用して
消化し、同じブロットに置く。
サザンブロット
未希釈の上清での感染後2日で、NIH3T3をトリプシン処理し、1/20で、直
径100mmの培養皿でサブ培養し、そのうちの一つをジェニティシンによる選択に
かける。集密時に、2クローンのそれぞれに対して、感染細胞ゲノムを、選択後
、または選択なしで、抽出して、定量する。サザンブロットを行うために、DN
Aを二つの制限酵素、PstIおよびKpnI で消化する。消化の質と、それぞれのウ
ェルへの等量のDNAの挿入の調整後に、トランスファーを、ハイボンドN膜(
アマシャム)上で行った。ハイブリダイゼーションは、100塩基上流及び100塩基
下流で挟まれたウイルスLTR全体を含むプローブで行った。プローブはプライマ
伸張法(Feinberg and Voglestein,1983,1984)により、アルファ-32P で標識
したdCTP(比活性は、5X108cpm/ug)により標識した。ハイブリダイゼーション
は、以下からなる培地で42℃、20時間で行った:50%脱イオン化ホルムア
ミド;5XSSEP;1XDenhardt's;5%硫酸デキストラン、及び0.2mg/mlの超音波処
理済みサケDNA。以下の低厳密度の溶液で、室温で5分間、及び65℃で10
分間の軽い洗浄を行った:2XSSEP/0.1%SDS。次いで、−80℃でコダック−XAR
−5フィルムに、LI−プラス増強スクリーン(Dupont−NEN)とともに露出した
。
ヘルパーウイルスの産生のサーチ
このサーチは、上記セクションAのポイント7の記載により行った。
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フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,SZ,U
G),AM,AU,BB,BG,BR,BY,CA,C
N,CZ,FI,GE,HU,JP,KE,KG,KP
,KR,KZ,LK,LT,LV,MD,MG,MN,
MW,NO,NZ,PL,RO,RU,SD,SI,S
K,TJ,TT,UA,US,UZ,VN