【発明の詳細な説明】
ダイヤモンド表面音波デバイスとその製造方法
発明の分野
本発明は半導体デバイスに関し、さらに具体的には表面音波(SAW)デバイ
スに関する。
発明の背景
表面音波デバイスは、エネルギーが固体の表面を収束的に送られる表面音波を
利用する半導体デバイスである。一般的に、表面音波デバイスは、圧電物質の層
と、圧電層上に形成された一つまたは複数の交互配置形変換(interdigitated t
ransducer: IDT)電極を含む。電気信号を交互配置形変換電極へ印加するこ
とによって音波を発生させることができる。電気信号は、表面音波が電極を通過
すのに対応して、対向する交互配置形変換電極の間に生成される。典型的な圧電
物質としては、石英のバルク単結晶、基板上に成長させたLiNbO3、LiTaO3、AIN
、またはZnOの層がある。
一般的に、表面音波デバイスの作動周波数(f)は、式 f=v/λによって決定され
る。ここで、λは波長であり、vは圧電物質中の表面音波の伝搬速度である。波
長λは交互配置形電極のスペース周波数と、音波が通過する物質表面の結晶配向
に依存する。代表的な物質の典型的伝搬速度vは次のとおりである。すなわち、
単結晶 LiNbO3層では3500m/秒から4000m/秒、単結晶LiTaO3層では3300m/秒から3
400m/秒。ガラス基板上のZnOフィルムは伝搬速度vが比較的に高く、3000m/秒で
ある。
作動周波数fは、伝搬速度vを増大させるか、波長λを減少させることによって
増加させることができる。不幸にして、伝搬速度は圧電層の物質特性によって制
約される。波長λは交互配置形変換電極の幅、間隔、および配列によって決定さ
れるが、既存の処理技術の下限によって制約される。たとえば、幅wが等しく間
隔sも等しい電極指が等しい間隔で交互に配列された典型的交互配置形電極では
、波長は式λ=2s+2wによって決定される。電極配列が異なれば、波長、電極幅、
および電極間隔の間に他の関係が存在する。
サブミクロンのジオメトリは通常の物質を使用して製造するには困難であり、
金属マイグレーション効果により、長期間の信頼性は制限される。たとえば、既
存の多くの光学リソグラフィ技術は、0.8μmよりも幅が小さいラインまたは溝
を作るために使用できない。さらに、ラインの幅が狭くなれば、それだけ製造歩
留まりが低下する。このような理由のために、実際に使用される多くの既存の表
面音波デバイスの最大周波数は約900MHzである。
たとえば、交互配置形電極がLiNbO3基板上に存在する場合、表面音波デバイス
の表面音波速度は4003.6m/秒であり、結合係数は5.57%であり、周波数温度係数
は -72ppm/Kである。電極幅が1μmで、電極間の間隔が1μmである交互配置形
電極が、等しい間隔で交互に配列されたデバイスでは、周波数は約1 GHzである
。2.5 GHzのデバイスを作るためには、電極の幅と間隔は約0.4μmを必要とする
。
基板上に圧電フィルムが存在する表面音波デバイスの場合、もし基板の音速が
圧電フィルムの表面音波速度と異なると、複数の表面音波が励起される。これら
の表面音波は、増大する速度の次数にしたがってゼロ・モード波、第1モード波
、第2モード波、・・・と呼ばれる。すべてのモードの速度は、基板に依存する
と共に圧電フィルムに依存する。使用する基板の音速が速いと、デバイス中の表
面音波のすべてのモードで、速度がそれだけ速くなる。すなわち、表面音波の速
度は基板の音速に比例して増大する。
多層表面音波デバイスは、たとえば、Shiosakiらによる参考文献「ガラス基板
上でZnOおよびAINフィルムを使用した高結合および高速SAW(High-Coupling and
High-Velocity SAW Using ZnO and AIN Films on a Glass Substrate)」(IEEE
Transactions on Ultrasonics,Ferroelectrics,and Frequency Control,Vol.
UFFC-33,No. 3,May 1986)に開示されている。ここで開示された表面音波デバ
イスは、硼珪酸ガラス・シート基板と、基板上のC軸配向AINフィルムと、AINフ
ィルム上で基板に対向して設けられたC軸配向多結晶ZnOフィルムとを含む。AIN
フィルムと ZnOフィルムの間には、アルミニウムの交互配置形変換電極が存在す
る。この構造で最大結合係数4.37%が得られたことが報告され、位相速度は 5840
m/秒であった。このデバイスの周波数温度係数は、25℃で21.0ppm/℃であった。
しかし、このデバイスの位相速度は依然として比較的に低い。したがって、高周
波数性能は制限される。
比較的に高い伝搬速度をもつ表面音波デバイスが、Nakataらによる米国特許第
5,221,870号に開示されている。この特許は、シリコン半導体基板と、基
板上のダイヤモンド・フィルムと、ダイヤモンド層上のZnO圧電層と、圧電層上
の交互配置形変換電極とを有する表面音波デバイスを開示している。ダイヤモン
ド・フィルムとしては、単結晶および多結晶のフィルムが適している。しかし、
単結晶フィルムが望ましい。なぜなら、単結晶ダイヤモンドは多結晶ダイヤモン
ドと比較して音響散乱が小さいからである。
ダイヤモンドは、その硬度、比較的に大きいバンドギャップ、高い温度性能、
高い熱伝導率、および耐放射線性のために多くの半導体デバイスに適した物質で
ある。さらに、ダイヤモンドの音波速度は比較的に大きいので表面音波デバイス
に適している。たとえば、Yamanouchiらによる「圧電薄膜/ダイヤモンド構造体
の表面音波伝搬特性と製造技術(SAW Propagation Characteristics and Fabrica
tion Technology of Piezoelectric Thin Film/Diamond Structure)」(1989 Ult
rasonics Symposium,pp.351-354,1989)を参照されたい。さらに、ダイヤモ
ンドを比較的に低速度の圧電物質と組み合わせると表面音波の速度が大きくなる
。したがって、たとえば Shikataらによる「多結晶ダイヤモンドを使用した高周
波
帯域フイルタ(High Frequency Bandpass Filter Using Polycrystalline Diamo
nd)」(Diamond and Diamond Related Materials,2(1993),pp. 1197-1202)に
開示されるように、所与の動作周波数に対するライン間隔の要件が減少する。
「表面音波デバイス(Surface Acoustic Wave Device)」と題する Yamamoto へ
の米国特許第5,235,233号は、ダイヤモンド、ダイヤモンド層上の AIN
層、および AIN 層上の交互配置形変換電極を有する表面音波デバイスを開示し
ている。他の実施例では、ダイヤモンド層とAIN層との間にSiO2中間層が設けら
れている。このデバイスによって、高い電気機械結合係数と大きい位相速度が得
られたことが報告されている。
さらに、ダイヤモンド表面音波デバイスの温度を監視制御することに関しては
、「表面音波デバイス(Surface Acoustic Wave Device)」と題する Nakahataら
への米国特許5,235,236号に、半導体ダイヤモンド層によって形成された
サーミスタが開示されている。その半導体ダイヤモンド層は表面音波デバイスの
絶縁ダイヤモンド層上に支持されている。このサーミスタは加熱器と協動して表
面音波デバイスの動作温度を制御する。
さらに、「表面音波デパイス(Surface Acoustic Wave Device)」と題する Ima
iらへの米国特許第4,952,832号には、多結晶または単結晶ダイヤモンド
を含む表面音波デバイスが開示されており、このデバイスはフィルタ、共振器、
遅延線路、または信号処理デバイス、およびコンボルバとして使用できる。共に
Nakahataらへの米国特許第5,221,870号および第5,160,869号、N
akahataらによる「ZnO/Diamond/Si構造体を使用した高周波表面音波フィルタ(Hi
gh-Frequency Surface Acoustic Wave Filter Using Zno/Diamond/Si Structure
)」(International Conference on the Applications of Diamond Films and Re
lated Materials,pp.361-364(1993))、およびNakahataらによる「ZnO/Diamond
/Si構造体を使用した高周波表面音波フィルタ(High-Frequency Surface Acous
tic Wave Filter Using ZnO/Diamond/Si Structure)」(1992 Ultrasonics Sympo
sium,pp.377-380,(1992))を参照されたい。
たとえば、Nakahataらへの米国特許第5,221,870号に開示されたデバイ
スは、10,000m/秒を超える比較的に大きな表面音波速度を有する。したがって、
その大きな表面音波速度vは微細な交互配置形変換電極の必要性を減少させる。
特に、Nakahataらは、ライン幅1μmおよび間隔1μmの交互配置形変換電極が2
GHzの周波数に達する表面音波を生成することを開示している。しかし、多結晶
ダイヤモンド・フィルムは音響散乱を生じ研磨を必要とする。単結晶ダイヤモン
ド・フィルムはそれよりも良い性能を示すが、単結晶は高価であり製造が難しい
。
発明の概要
したがって、前記の技術的背景に基づき、本発明の目的は、比較的に高い周波
数および高温で動作することのできる表面音波デバイスを提供することである。
本発明の他の目的は、交互配置形変換電極のライン幅と間隔を比較的に大きく
することができ、したがって信頼性、歩留まり、および製造の容易性が向上した
高周波表面音波デバイスを提供することである。
本発明の他の目的は、ダイヤモンドを含み単結晶ダイヤモンドの特性に匹敵す
る高性能特性を備えながらも、単結晶ダイヤモンドに伴う比較的に高いコストを
避けることができる表面音波デバイスを提供することである。
本発明の上記および他の目的、特徴、および利点は、一つの実施態様において
、高度に配向されたダイヤモンド層と、該高度配向ダイヤモンド上の圧電層と、
該圧電層上の少なくとも一つの交互配置形変換電極とを有する表面音波デバイス
によって提供される。ダイヤモンドの音波伝搬速度は比較的に大きいので、たと
えば 1μmのラインと間隔のジオメトリを使用すれば、2.5GHzを超える周波数で
動作する表面音波デバイスを製造することができる。サブミクロン・ジオメトリ
を使用すれば、さらに高い周波数を達成することができる。
この高度配向ダイヤモンド層の中では複数のコラム状ダイヤモンド粒が相互に
配向されて並んでおり、傾きおよび方位の配向ずれは約8°よりも小さいことが
望ましい。このような高度配向ダイヤモンドは、格子がダイヤモンドと比較的に
密接に一致する非ダイヤモンド(たとえば、炭化珪素、銅、ニッケル、およびこ
れらの合金)の単結晶基板上に形成するのが望ましい。
高度配向ダイヤモンド層は、従来までの多結晶または単結晶ダイヤモンド・フ
ィルムよりも利点がある。高度配向ダイヤモンド・フィルムは多結晶フィルムよ
りも滑らかであり、ダイヤモンド・フィルムを研磨する必要性が少なくなる。研
磨はダイヤモンド層を機械的または化学機械的に損傷する可能性がある。好まし
い実施例では、高度配向ダイヤモンド・フィルムの表面粗度は、200Å RMSより
も小さい。
さらに、高度配向ダイヤモンド層は、従来までの多結晶フィルムと比較して音
響散乱を減少させる。この散乱減少は、表面の滑らかさと結晶粒界の整合性によ
るものと考えられる。さらに、高度配向ダイヤモンド・フィルムは、単結晶ダイ
ヤモンド・フィルムよりも安価である。したがって、本発明の一つの側面に従っ
て、高度配向ダイヤモンド・フィルムを有する表面音波デバイスでは、低コスト
で広領域の表面が得られ、また、その表面は良好に制御されて鏡面のような滑ら
かさをもっている。
交互配置形電極は、高度配向ダイヤモンド層と圧電層との間に置くか、圧電層
の上、ダイヤモンド層の反対側に置くことができる。接地面電極は圧電層の上、
交互配置形電極の反対側に置くか、ダイヤモンド層の上、圧電層の反対側に置く
ことができる。
さらに、表面音波をダイヤモンド・フィルムに限定することによりいろいろな
利点が達成される。この限定または音波の分離は、ダイヤモンド層上で横方向に
間隔をとって配列された二つの圧電層部分を形成し、二つの圧電層間でダイヤモ
ンド層を通るように表面音波を送ることによって達成される。そのようなデバイ
スでは、音波の速度はダイヤモンド層と圧電物質層の双方を通る場合よりも大き
くなる。
本発明の他の側面によって、従来までの金属交互配置形変換電極を、圧電層に
隣接し、高度にドープされたダイアモンド層導電性表面部分の所定のパターンを
作用することにより、置換または変更する。高度にドープされたダイヤモンド表
面部分は、硼素で高度にドープされた表面部分であることが望ましく、その硼素
濃度は約1019原子cm-3よりも大きい。さらに、高度にドープされたダイヤモンド
表面部分は、その上に形成された金属ラインの対応するパターンの付着力と性能
を増すことが考えられる。
表面音波の望ましくない反射は、ダイヤモンド層と圧電層の対向する両端を表
面音波伝搬軸との直交方向からある角度だけ傾けることによって減少させること
ができる。さらに、このような反射は、デバイスの端部に隣接して吸音エレメン
トを取り付けることによっても減少させることができる。さらに、吸音エレメン
トは、圧電層の端部に隣接して設けることができる。吸音エレメントは圧電層上
の抵抗器で構成するか、圧電層に隣接して形成されたドープ・ダイヤモンド抵抗
器で構成することができる。
この表面音波デバイスには、たとえば表面音波デバイス・フィルタとなるよう
に、第1と第2の交互配置形電極を、圧電層上で横方向に間隔をおいて配置して
よい。第1と第2の交互配置形電極と、圧電層上でこの第1と第2の交互配置形
電極間に置かれた絶縁層と、この絶縁層上の半導体層と、半導体層上に置かれた
一対の増電極とを備えることによって、表面音波デバイスは増幅器を形成するこ
とができる。他方、圧電層上の第1と第2の交互配置形電極と、圧電層上でこの
第1と第2の交互配置形電極間に置かれた第3の電極と、第3の電極の反対側で
ダイヤモンド層上に置かれた第4の電極とは、コンボルバまたは移相器として機
能する。
圧電層は、ZnO、AIN、PbZrO3、PbTiO3、LaZrO3、LaTio3、LiTaO3、LiNbO3、Si
O2、Ta2O5、Nb2O5、BeO、Li2B4O7、KnbO3、ZnS、ZnSe、またはGaAsの層であって
よい。高度配向ダイヤモンド層の上には、圧電層の反対側に基板を設けることも
できる。
本発明による方法は、上記の表面音波デバイスを製造する方法である。この方
法は、高度配向ダイヤモンド層を形成するステップと、この高度配向ダイヤモン
ド層上に圧電層を形成するステップと、この圧電層上で少なくとも一つの交互配
置形電極を形成するステップを含むことが望ましい。高度配向ダイヤモンド層を
形成するには、単結晶非ダイヤモンド基板上に複数のコラム状ダイヤモンド粒が
相互に配向されて並んでいるダイヤモンド層を形成し、傾きおよび方位の配向ず
れが約8°よりも小さくなるように形成するのが望ましい。
一つの実施態様において、圧電層を形成するステップは、第1および第2の圧
電層部分を、ダイヤモンド層上で横方向に間隔を取って形成することを含む。し
たがって、交互配置形電極を形成するステップは、第1と第2の圧電層部分の上
にそれぞれ第1と第2の交互配置形電極を形成することを含む。本発明の他の実
施例で交互配置形電極を形成するステップは、望ましくは、所定のパターンで、
圧電層に隣接して高度にドープされたダイヤモンド層導電性表面部分を形成する
ことを含む。さらに、圧電層を形成するステップは、圧電層の対向する端部が表
面音波伝搬軸との直交方向からある角度だけ傾斜するように圧電層を形成し、音
波の望ましくない反射を減少させるようにすることが望ましい。
図面の簡単な説明
図1は、本発明による表面音波デバイスの断面図である。
図2は、図1に示される表面音波デバイスの平面図である。
図3は、本発明による表面音波デバイスの他の実施例の断面図である。
図4は、本発明による表面音波デバイスのさらに他の実施例の断面図である。
図5aおよび図5bは、本発明による表面音波デバイスに使用できる高度配向
ダイヤモンド層の顕微鏡写真である。
図6は、本発明によるダイヤモンド表面音波移相器またはコンボルバの断面図
である。
図7は、本発明によるダイヤモンド表面音波増幅器の断面図である。
図8は、本発明に従って間隔を取って配置された圧電層部分をもつダイヤモン
ド表面音波デバイスの断面図である。
図9は、本発明による対向端部が傾斜しているダイヤモンド表面音波デバイス
の平面図である。
図10から図13までは、吸音エレメントの各種の構成を含むダイヤモンド表
面音波デバイスの断面図である。
図14は、本発明によるサーミスタと加熱エレメントを備えたダイヤモンド表
面音波デバイスの断面図である。
実施例の詳細な説明
本発明の実施例が示されている図面を参照して、本発明を詳細に説明する。し
かし、本発明は多くの異なった態様で実施することが可能であり、ここに示され
た実施例に限定して解釈されてはならない。これらの実施例は、発明を十分かつ
完全に開示し、当業者に本発明の範囲を完全に知らせるために示したものである
。図面では、説明を明瞭にするために層の厚さと領域を誇張して示してある。各
種の図面を通して、同じエレメントは同じ番号で示され、同じエレメントでも実
施例が異なれば、番号にダッシュを付けて示してある。
本発明による表面音波デバイスの一つの実施例は、図1および図2に示される
表面音波フィルタ20である。表面音波フィルタ20は基板21と、基板上の高
度配向ダイヤモンド層22と、ダイヤモンド層上の圧電層23と、圧電層上の一
対の交互配置形変換電極24とを有する。代替の構成として、基板をダイヤモン
ド層22から除去してもよい。示された実施例では、交互配置形変換電極24は
、当業者であれば容易に分かるように、パターンをもつ導電性金属層から形成さ
れている。各交互配置形変換電極24には、間隔を置いた複数の金属指25が含
まれている。各金属指25の幅は w であり、隣接した金属指の間隔は s である
。接触パッド26(図2を参照)は、交互配置形変換電極24の外部接続を容易
にする。
図示された構成において、表面音波フィルタ20の周波数は式 f=v/λ によっ
て決定される。たとえば、基板21がシリコンで、その上に置かれたダイヤモン
ド層22の上にZnOの圧電層23がある場合、v=10,200m/秒およびλ=2s+2wであ
る。したがって、もしs = 1μmおよび w = 1μmであれば、周波数は約2.5 GHz
となる。この高い周波数をもつ表面音波フィルタ20は、交互配置形変換電極2
4を形成するための通常の高性能フォトリソグラフィ機器を用いて容易に製造す
ることができる。もっと高い周波数で動作する表面音波デバイスは、サブミクロ
ン・ジオメトリを使用することによって製造することができる。
代替の構成では、交互配置形変換電極は、単方向または双方向に表面音波を送
ることができる。図2に示されるように、交互に配置された電極指は、電極の対
向する側面部分へ接続することができる。代替方法として、二つ以上の隣接した
電極指を電極の同じ側面部分へ接続することもできる。さらに、電極指の幅と間
隔を変えることもできる。したがって、交互配置形電極の各種の構成が可能であ
ることは当業者に明らかである。また、当業者であれば容易に分かるように、表
面音波デバイスの中で浮動指を使用したり、浅い溝、ペデスタル、または薄膜金
属ストリップから構成される反射格子を使用することもできる。
圧電層23は、ZnO、AIN、PbZrO3、PbTiO3、PbZrO3、PbTiO3、LaZrO3、LaTiO3
、LiTaO3、LiNbO3、SiO2、Ta2O5、Nb2O5、BeO、Li2B4O7、KNbO3、ZnS、ZnSe、ま
た
はGaAsから構成されることが望ましい。
図3に示されるように、表面音波フィルタ20'の他の実施例では、交互配置
形電極24'は圧電層23'の上に置かれ、ダイヤモンド層22'の反対側にある
。さらに、接地面電極27'がダイヤモンド層22'と基板21'の間に置かれて
いる。交互配置形電極は、ダイヤモンド層のドープされた部分、基板の導電部分
、または別個の導電層から構成されてよい。
図4には、表面音波フィルタ20''の他の実施例が示される。この実施例では
、交互配置形電極24''と接地電極27''の位置が図3とは取り替えられている
。交互配置形電極24''はダイヤモンド層22''と圧電層23''の間にあり、接
地面電極は圧電層の上に置かれてダイヤモンド層の反対側にある。
さらに、図4は本発明の他の側面を示している。すなわち、表面音波フィルタ
20''は、ダイヤモンド層22''で高度にドープされた高度ドープ表面部分22
a''を含んでいる。高度ドープ表面部分22a''は硼素のようなドーパントで約
1019cm-3以上の濃度へドープされる。これらの高度にドープされたダイヤモン
ド部分は、Dasらによる「特定の硼素分布プロファイルをもつダイヤモンド電界
効果トランジスタ(Diamond Field Effect Transistor with a Particular Boron
Distribution Profile)」と題する米国特許第5,254,862号で開示される
ように、硼素を注入し黒鉛化されたダイヤモンドをエッチングすることにより実
現される。引用することにより、この米国特許の開示の全体を本明細書の一部と
する。高度ドープ表面部分22a''はダイヤモンド層22'と金属指25''との
間で良好なオーム接触を提供する。用語の意味が少し異なるかも知れないが、高
度ドープ表面部分22a''は交互配置形電極24''の一部を形成する。さらに、
高度ドープ表面部分22a''は単独で交互配置形電極として使用でき、その場合
は例示された金属指25''が不要となる。
表面音波フィルタの各実施例で使用されるダイヤモンド層としては、高度に配
向されたダイヤモンド層を使用するのが望ましく、このような高度配向ダイヤモ
ンド層の中では、複数のコラム状ダイヤモンド粒が相互に配向関係をもって並ん
でおり、傾きおよび方位の配向ずれは約8°よりも小さい。この高度配向ダイヤ
モンド層の表面は滑らかなので、念入りの研磨は必要でなく、製造工程が単純化
される。さらに、ダイヤモンドの利点として、熱伝導率が大きく、誘電率が低く
、ヤング率が高く、表面音波速度が大きいことが挙げられる。
ダイヤモンドの高い熱伝導率によって熱管理が改善され、ダイヤモンド・デバ
イスは通常の半導体デバイスと比較して大きな仕事量を処理することができる。
低い誘電率は、表面音波デバイスの電子回路に対するインピーダンス・マッチン
グを助ける。さらに、ダイヤモンドは大部分の化学薬品と化学反応に不活性であ
るから、危険な環境で使用するのに適した理想的物質である。
図5aは、高度に配向されたダイヤモンド層22を示す顕微鏡写真である。こ
の写真では、露光面が平行であるだけでなく交代的に整列しているので、図5b
に示されるように、ダイヤモンドが成長するにつれて結晶粒界が実質的に消滅す
ることを可能にする。さらに、高度配向ダイヤモンド層22は、本発明の譲受人
へ譲渡された関連米国出願である「非ダイヤモンド基板上のマイクロエレクトロ
ニクス構造体とその製造方法(Microelecronic Structures on a Nondiamond Sub
strate and Associated Fabrication Methods)」と題するシリアル番号08/0
35,643(1993年3月23日出願)、および「ダイヤモンド電極を有す
る電気化学的セルとその製造方法(Electrochemical Cell Having Diamond Elect
rode And Methods For Making Same)」と題するシリアル番号08/166,40
8(1993年1月13日出願)に説明されている。参考のために、これら出願
の開示の全体をここに示す。
高度に配向されたダイヤモンド層22の中では、複数のコラム状単結晶ダイヤ
モンド粒が非ダイヤモンドの基板21から外側へ向けて並んでいる。実質的に、
コラム状単結晶ダイヤモンド粒のすべては、単結晶非ダイヤモンド・ウェーハに
関して傾きおよび方位の配向ずれが約8°よりも小さいことが望ましく、さらに
厳密には、この配向ずれが約5°よりも小さいことが望ましい。ダイヤモンドの
核生成サイト密度または濃度も比較的に高く、約104/cm2よりも大きいが、さら
に厳密には約105/cm2よりも大きいことが望ましい。高度に配向されたダイヤモ
ンド層を製造する方法は、ウェーハ表面に炭素を結合させるステップと、炭素結
合させたウェーハを核生成するステップと、核生成されたウェーハ上でダイヤモ
ンドを成長させるステップとを含み、(100)配向面の成長を容易にしている。さ
らに、高度配向ダイヤモンド層22と非ダイヤモンド層の基板21との間に炭化
物中間層(図示されず)を形成するのが望ましい。
炭素結合されたウェーハ面を核生成するためには、プラズマを含む炭素へウェ
ーハ面をさらし、その間にウェーハ面に隣接した他のダイヤモンド層を電気的に
バイアスし、そのダイヤモンド層もプラズマへさらすことが望ましい。電気的バ
イアスは、大地に関して約マイナス250ボルトより小さくない絶対波高値で行う
のが望ましい。電気的バイアスの電源は純 DC、パルス DC、交流(AC 50 または
60 Hz)、または無線周波(RF)であってよい。
出願人は、次の二つのメカニズムのいずれかによって隣接したダイヤモンド層
がダイヤモンドの核生成を高めるものと推測するが、この推測に拘束されるつも
りはない。第一のメカニズムは、ダイヤモンドが、隣接したダイヤモンド・フィ
ルムからウェーハへ化学的にトランスポートされると考えられる。言い換えれば
、ダイヤモンドはウェーハ面に隣接したダイヤモンド・フィルムからエッチング
と成長のプロセスにより移動する。第二のメカニズムは、ダイヤモンド・フィル
ムからの電子放出が原因となって気相の解離が増大し、この電子解離のプロセス
によって、解離された炭化水素の濃度が高まるものと考えられる。
非ダイヤモンド・ウェーハと隣接ダイヤモンド層の双方を炭素含有プラズマへ
さらす場合、これらの双方を、炭素の原子パーセントが約 0.3 原子パーセント
よりも多くない炭素含有プラズマへさらすことが望ましい。このようなプラズマ
は、たとえば、メタンの割合が約5重量パーセントよりも多くないメタンガス・
プラズマ混合物によって得られる。ウェーハの表面を光学的に監視して、ウェー
ハ上でダイヤモンド層が成長し始めたことを示す変化が現れたら、電気的バイア
スを停止するのが望ましい。基板の表面を監視するためには、たとえばレーザ反
射インターフェロメトリまたは光学パイロメトリを使用することができる。
ダイヤモンドをウェーハ上で成長させる場合、処理条件を制御しながら、ダイ
ヤモンドが(100)配向の外部表面をもつようにダイヤモンドの成長を促進する
のが望ましい。外部表面の他の配向も達成可能であり、場合によってはそれが望
まれる。たとえば、(110)および(111)の配向も、これらの配向を促進するように
ダイヤモンドの成長条件を制御することによって、容易に得ることができる。こ
の点に関しては、当業者が容易に理解できることと思われる。
高度に配向されたダイヤモンド層22は、シリコンのような比較的安価なウェ
ーハまたは基板の使用を可能にし、それらの上に高品質のダイヤモンド層を形成
できる。当業者に容易に分かるように、高度に配向されたダイヤモンド層の上に
さらにダイヤモンドを成長させて、図5bで示されるようにダイヤモンド層の外
側部分が単結晶表面の形態に近づくまで成長を継続させることができる。図5b
では、高度に配向されたダイヤモンド層28が、層の断面29および上部表面3
0の双方を示す方向から取られた顕微鏡写真に示されている。層の上部表面30
は単結晶の形態に近づいている。
さらに、高度に配向されたダイヤモンド層は、結晶粒界が整合し表面が滑らか
であるために音響散乱を減少させるという利点がある。ダイヤモンド結晶の整合
は、ダイヤモンド・フィルムの表面研磨を不必要にする。さらに、結晶の整合は
ダイヤモンド層中のボイドを減少させる。
ここで図6を参照すると、そこには移相器またはコンボルバとして使用できる
表面音波デバイス40が示される。この表面音波デバイスは半導体の基板41、
ダイヤモンド層42、圧電層43、交互配置形変換電極44、および第1の導電
層48a、および第2の導電層48bを含む。当業者であれば容易に分かるよう
に、交互配置形変換電極44は圧電層の上に置きダイヤモンド層の側にあってよ
い。さらに、代替の構成として、交互配置形変換電極44はダイヤモンド層42
の高度にドープされた表面部分によって提供されてよい。このデバイスは、図示
されないが接地面電極を備えることができる。図示された実施例では、基板41
も導電性であって導電層48bと共同して第2の電極として働く。
図6の表面音波デバイス40は、移相器として構成されたとき次のように動作
する。二つの電極すなわち導電層48aと導電層48bとの間に、電圧が印加さ
れる。基板41とダイヤモンド層42の中に誘起された電界はキャリアの状態を
変える。したがって、電極間の容量は電界によって変えられる。容量の変化は圧
電層43の変形−電圧特性を変える。もし第1の導電層48a(ゲート電極)が
導電層48b(下位電極)に対して正にバイアスされると、半導体基板中のキャ
リアは増加し、半導体はその抵抗を失う。したがって、絶縁ダイヤモンドのみが
ゲート電極と下位電極の間の容量に寄与し、その容量は増大する。もしゲート電
極が下位電極に対して負にバイアスされると、半導体中のキャリアの数は減少し
、その容量は減少する。したがって、圧電層43中で伝搬する弾性表面波の位相
速度は、容量の変化に応答して変化する。
表面音波デバイス40がコンボルバとして構成された場合、双方の交互配置形
変換電極44が表面音波を発生する。各表面音波は、それぞれの交互配置形電極
から圧電層43の中央部分へ伝搬する。二つの表面音波は中央部分で相互に衝突
する。二つの表面音波の衝突は導電層48aと導電層48bによって構成される
二つの電極の間に電圧を誘起する。この電圧は二つの表面音波の波動関数の積に
比例する。これら電極間の出力電圧は、二つの表面音波の畳み込みに比例する。
出力波の周波数は二つの入力波の周波数の和である。
図7は、基板51、ダイヤモンド層52、圧電層53、および交互配置形電極
54を有する表面音波増幅器50を示す。さらに、表面音波増幅器50は圧電層
53上で交互配置形電極54の間に絶縁層60を備えている。半導体層61が絶
縁層60上に置かれ、一対の増幅電極62が半導体層61の上に置かれている。
当業者であれば分かるように、この増幅器は図示されていない接地面電極を備え
ることができる。
増幅を制御する電気信号は増幅電極62の間に印加され、半導体層61の中に
電界を誘起する。電気信号は、半導体層61内にパルス電界を誘起するパルス信
号であることが望ましい。圧電層53内に表面音波を発生するために、交流(AC)
電気信号が二つの交互配置形電極54の一つへ印加される。表面音波の振動数は
、交互配置形電極へ印加される AC信号の周波数と関連している。
表面音波は圧電層53内で一つの交互配置形電極から他の交互配置形電極へ伝
搬して、周期的に変化する電界を発生する。半導体層61内のキャリアは、この
電界によって次のように影響を受ける。もし半導体層61内のキャリア速度が表
面音波の速度よりも大きいと、キャリアは電界によって後方へ引っ張られて減速
され、表面音波は増幅する。もしキャリアの速度が表面音波の速度よりも小さい
と、キャリアは表面音波によって誘起された電界によって前方へ引っ張られて加
速され、表面音波は減衰する。増幅率または減衰率はキャリア速度により制御さ
れ、このキャリア速度は増幅電極へ印加されたパルス電気信号によって決定され
る。
図8を参照して、本発明による表面音波フィルタの他の実施例を説明する。こ
の実施例は基板71、ダイヤモンド層72、一対の交互配置形変換電極74、お
よび間隔を取って配置された一対の圧電層部分73aと圧電層部分73bを含む
。
言い換えれば、横方向に間隔を取って配置された圧電層部分73aと圧電層部分
73bの間に、ギャップ79が存在する。さらに、このフィルタは、図示されて
いない接地面電極を備えることができる。
この表面音波フィルタ70では、交互配置形変換電極74の一方または両方に
印加された電気信号によって、表面音波が発生する。表面音波が圧電層とダイヤ
モンド層の両方を通る前記の実施例とは違って、図8の表面音波フィルタ70で
は、音波はダイヤモンド層だけを伝搬する。したがって、表面音波の伝搬特性は
、ダイヤモンド層と圧電層の組み合わせによって決定されるのではなく、ダイヤ
モンド層によって決定される。したがって、交互配置形変換電極74の間を伝搬
する表面音波の速度は大きくなる。
図9には、本発明の他の側面が示される。図示された表面音波フィルタ80は
、図1および図2を参照して説明したダイヤモンド層と基板を覆う圧電層83を
備えている。一対の交互配置形変換電極84は、それらの間で表面音波伝搬軸8
9を限定する。図9の実施例では、圧電層の対向端部83aと対向端部83bは
、表面音波伝搬軸89との直交方向からある角度だけ傾斜しており、望ましくな
い反射を減少させる。さらに、表面音波フィルタ80は、表面音波伝搬軸89と
平行した対向側面83cと対向側面83dを有することができる。
さらに他の実施例として、一つの端部だけを表面音波伝搬軸89との直交方向
から傾斜させることもできる。さらに、対向端部83aと対向端部83bは、図
9のような平行状態ではなく台形を限定するように配置してもよい。交互配置形
変換電極84は圧電層83の表面上にダイヤモンド層の反対側に配置されている
が、ダイヤモンド層と圧電層の間に設けてもよく、前述したように高度にドープ
されたダイヤモンド部分によって実現してもよい。
図10から図13までは、望ましくない反射を減少させる吸音エレメントを備
えた表面音波デバイスを示す。図10の表面音波デバイス90は基板91、ダイ
ヤモンド層92、圧電層93、交互配置形電極94、および圧電層の各端部に隣
接した吸音エレメント99を備えている。図11では、表面音波フィルタ90'
はダイヤモンド層92''上に配置され圧電層93'内に埋め込まれた吸音エレメ
ント99'を備えている。図12では、吸音エレメント99''はダイヤモンド層
92''上で圧電層93''の端部に置かれている。図13では、吸音エレメント9
9'''はダイヤモンド層92'''の中に置かれる。それは、当業者であれば分かる
ように、抵抗器を限定するダイヤモンド層のドープ部分によって形成することが
できる。他の実施例では、各々の吸音エレメントは、たとえば金属抵抗器のよう
な抵抗器から構成されてよい。図10から図13までに示したすべての実施例に
おいて、吸音エレメントは、圧電層の端部を抵抗器で電気的に終端することによ
って表面音波の反射を減少させる。
さらに、図14には、基板101、ダイヤモンド層102、交互配置形電極1
04、および圧電層103を含む本発明の他の側面が示されている。加熱エレメ
ント110は、たとえばイオン注入によって、ダイヤモンド層102の中に容易
に形成することができる。さらに、発生した熱はダイヤモンド層102によって
容易に伝導することができる。さらに、表面音波デバイス100の温度を感知す
るために、半導体ダイヤモンド・サーミスタ111を形成することができる。当
業者に明らかであるように、加熱エレメント110と半導体ダイヤモンド・サー
ミスタ111は、表面音波デバイス100を所定の温度に維持するように使用す
ることができる。
本発明による方法は、図1および図2を参照して説明したような表面音波デバ
イスを製造する方法である。この方法は、高度に配向されたダイヤモンド層22
(図5aおよび図5bを参照)を形成するステップと、この高度配向ダイヤモン
ド層の上に圧電層23を形成するステップと、この圧電層の上に少なくとも一つ
の交互配置形変換電極24を形成するステップとを含むことが望ましい。高度に
配向されたダイヤモンド層22を形成するステップは、単結晶非ダイヤモンドの
基板21上にダイヤモンド層を形成し、このダイヤモンド層で複数のコラム状ダ
イヤモンド粒が相互に配向関係をもって並び、傾きおよび方位の配向ずれは約8
°よりも小さくなるようにすることが望ましい。基板は、化学エッチングまたは
当業者に知られた方法で除去してよい。
図8に示されるような一つの実施例において、圧電層を形成するステップは、
ダイヤモンド層72上で第1の圧電層部分73aと第2の圧電層部分73bを、
横方向に間隔を取って形成するステップを含む。したがって、交互配置形電極を
形成するステップは、第1および第2の圧電層部分の上に第1および第2の交互
配置形変換電極74を形成するステップを含む。
図4に示されるように、本発明の他の実施例において交互配置形電極24''を
形成するステップは、圧電層23''に隣接して高度にドープされた導電性表面部
分22a''の所定のパターンをダイヤモンド層22''に形成するステップを含む
ことが望ましい。
再び図9を参照して、圧電層83を形成するステップは、その圧電層の対向端
部83aと対向端部83bを表面音波伝搬軸89との直交方向からある角度だけ
傾斜させて、望ましくない音波の反射を減少させるように圧電層を形成するステ
ップを含むことが望ましい。
広領域の非ダイヤモンド・ウェーハ上でダイヤモンドをアレイ中に選択的に成
長させることにより、複数の表面音波デバイスを製造することができる。その場
合、個々の表面音波デバイスは、Kobashiらへの米国特許第5,066,938号
(参考のために、その全体を本明細書中で示している)に開示されるようにライ
ンに沿って非ダイヤモンド・ウェーハをダイシングすることによって容易に製造
することができる。
当業者であれば容易に分かるように、ここで説明した各種の表面音波デバイス
の特徴は、他の実施例でも容易に使用することができる。たとえば、高度に配向
されたダイヤモンドは、表面音波フィルタ、化学センサ、移相器、コンポルバ、
および増幅器を含むデバイスの各々で使用することができる。他の信号処理デバ
イス(たとえば、遅延線、および共振器)も本発明を使用することができる。し
たがって、当業者は本発明の多くの変更および他の実施例を考えることができ、
これまでの説明と図面で開示された利点と教示を得ることができる。したがって
、本発明は開示された特定の実施例に限定されるものではなく、実施例の変更例
も、本明細書中に記載された請求の範囲に入るものと解釈しなければならない。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】1996年9月13日
【補正内容】
請求の範囲(補正)
1.ダイヤモンド層(72)を含む表面音波デバイスであって、
上記ダイヤモンド層(72)の上で、間隔を取って配置された第1および第2
の圧電層部分(73)と、
上記第1および第2の圧電層部分(73)のそれぞれの上に置かれた第1およ
び第2の交互配置形電極(74)と
を具備し、
複数のコラム状ダイヤモンド結晶粒が相互に配向関係をもって並び、傾きと方
位の配向ずれが8°より小さくなるように配向されている高度配向ダイヤモンド
層が上記ダイヤモンド層(72)の中に含まれていることを特徴とする表面音波
デバイス。
2.請求項1の表面音波デバイスにおいて、単結晶非ダイヤモンド基板(71
)が、上記高度配向ダイヤモンド層の上で上記圧電層(73)の反対側に設けら
れていることを特徴とする表面音波デバイス。
3.請求項1の表面音波デバイスにおいて、上記第1および第2の交互配置形
電極(74)が上記第1および第2の圧電層(73)部分の各々と上記ダイヤモ
ンド層(72)との間に置かれていることを特徴とする表面音波デバイス。
4.請求項1の表面音波デバイスにおいて、上記第1および第2の交互配置形
電極(74)が上記第1および第2の圧電層部分(73)の各々の上に上記ダイ
ヤモンド層(72)の反対側に置かれていることを特徴とする表面音波デバイス
。
5.請求項1の表面音波デバイスにおいて、上記第1および第2の交互配置形
電極(74)がそれらの間で表面音波伝搬軸を規定し、上記圧電層部分(73)
の対向する端部が表面音波伝搬軸と直交する方向からある角度だけ傾斜して、望
ましくない音波の反射を減少させるように構成されていることを特徴とする表面
音波デバイス。
6.ダイヤモンド層(72)を含む表面音波デバイスであって、
上記ダイヤモンド層(72)の上で横方向に間隔を取って配置された第1およ
び第2の圧電層部分(73)と、
上記第1および第2の圧電層部分(73)の上にそれぞれ置かれた第1および
第2の交互配置形電極(74)と、
上記ダイヤモンド層(72)の上で上記第1および第2の交互配置形電極(7
4)の間に配置された絶縁層(60)と、
上記絶縁層(60)の上に上記ダイヤモンド層(72)の反対側に設けられた
半導体層(61)と、
上記半導体層(61)の上に置かれた一対の増幅電極(62)と
を具備し、
上記表面音波デバイスが表面音波増幅器を構成するようにした表面音波デバイ
ス。
7.ダイヤモンド層(72)を含む表面音波デバイスであって、
上記ダイヤモンド層(72)の上で横方向に間隔を取って配置された第1およ
び第2の圧電層部分(73)と、
上記第1および第2の圧電層部分(73)の上に置かれた第1および第2の交
互配置形電極(74)と、
上記ダイヤモンド層(72)の上に設けられ上記第1および第2の交互配置形
電極(74)の間に配置された第3の電極(48a)と、
上記ダイヤモンド層(72)の上に設けられ上記第1の電極(48a)の反対
側に配置された第4の電極(48b)と
を具備し
上記表面音波デバイスが表面音波コンボルバおよび表面音波移相器のいずれか
一つを構成するようにした表面音波デバイス。
8.請求項1の表面音波デバイスにおいて、上記第1および第2の交互配置形
電極の各々が複数の導電性ラインを含み、該導電性ラインの幅が約1μmよりも
小さくなく、隣接した上記導電性ラインの間の間隔が約1μmよりも小さくない
ように構成されていることを特徴とする表面音波デバイス。
9.ダイヤモンド層(72)を含む表面音波デバイスであって、
上記ダイヤモンド層(72)の上で横方向に間隔を取って配置された第1およ
び第2の圧電層部分(73)と、
上記第1および第2の圧電層部分(73)の上に置かれた第1および第2の交
互配置形電極(74)とを具備し、
上記一対の交互配置形電極(74)のそれぞれが、それぞれの圧電層部分の近
隣に所定のパターンで形成され、高度にドープされた上記ダイヤモンド層の導電
性表面部分を含むことを特徴とする表面音波デバイス。
10.請求項1の表面音波デバイスにおいて、上記ダイヤモンド層(72)お
よび上記第1および第2の圧電層部分(73)の少なくとも一つの上に接地面電
極(77)が置かれていることを特徴とする表面音波デバイス。
11.請求項1の表面音波デバイスにおいて、上記圧電層部分(73)の少な
くとも一つの端部に隣接して表面音波吸音エレメント(99)が設けられている
ことを特徴とする表面音波デバイス。
12.請求項1の表面音波デバイスにおいて、上記ダイヤモンド層(72)の
中にサーミスタ(111)が形成されていることを特徴とする表面音波デバイス
。
13.ダイヤモンド層(22)と該ダイヤモンド層(22)の上に置かれた圧
電層(23)とを含む表面音波デバイスであって、上記ダイヤモンド層(22)
は少なくとも一つの交互配置形電極(24)を規定する高度にドープされた導電
性表面部分(22a)を所定のパターンで含んでおり、上記ダイヤモンド層(2
2)の高度にドープされた導電性表面部分(22a)のドーパント濃度は約 101 9
原子 cm-3よりも大きく、上記圧電層(23)が上記少なくとも一つの交互配置
形電極(24)の上にあることを特徴とする表面音波デバイス。
14.請求項13の表面音波デバイスにおいて、上記ダイヤモンド層(22)
が、相互に配向関係をもって並び、かつ傾きおよび方位の配向ずれが約8°より
も小さくなるように配向された複数のコラム状ダイヤモンド結晶粒からなる高度
配向ダイヤモンド層を含むことを特徴とする表面音波デバイス。
15.請求項14の表面音波デバイスにおいて、単結晶非ダイヤモンド基板(
21)が上記高度配向ダイヤモンド層の上で上記圧電層(23)の反対側に設け
られていることを特徴とする表面音波デバイス。
16.請求項13の表面音波デバイスにおいて、上記圧電層(23)の上に設
けられ、圧電層の対向する端部に隣接している一対の交互配置形電極が上記少な
くとも一つの交互配置形電極(24)に含まれ、上記一対の交互配置形電極はそ
れらの間で表面音波伝搬軸を規定し、上記圧電層の対向する端部は表面音波伝搬
軸に直交する方向からある角度だけ傾斜しており、よって望ましくない音波の反
射を減少するように構成したことを特徴とする表面音波デバイス。
17.請求項13の表面音波デバイスにおいて、上記少なくとも一つの交互配
置形電極(24)が第1および第2の交互配置形電極を含み、該第1および第2
の交互配置形電極が上記圧電層(23)と上記ダイヤモンド層(22)の間で横
方向に間隔を取って配置されていることを特徴とする表面音波デバイス。
18.請求項13の表面音波デバイスにおいて、高度にドープされた導電性ダ
イヤモンド表面部分(22a)の上記所定のパターンの上に導電性ライン(25
)が配置されていることを特徴とする表面音波デバイス。
19.請求項13の表面音波デバイスにおいて、上記ダイヤモンド層(22)
および上記圧電層(23)の少なくとも一つの上に接地面電極(27)が置かれ
ていることを特徴とする表面音波デバイス。
20.請求項13の表面音波デバイスにおいて、上記圧電層(23)の端部に
隣接して少なくとも一つの吸音エレメント(99)が設けられていることを特徴
とする表面音波デバイス。
21.ダイヤモンド層(22)と、該ダイヤモンド層(22)の上に置かれた
圧電層(83)と、該圧電層(83)の上に置かれた少なくとも一つの交互配置
形電極(84)とを具備し、
上記少なくとも一つの交互配置形電極(84)は表面音波伝搬軸(89)を規
定し、上記圧電層(83)の対向する端部(83aおよび83b)は、望ましく
ない音波の反射を減少させるために表面音波伝搬軸(89)に直交する方向から
ある角度だけ傾斜しており、
相互に配向関係をもって並び、かつ傾きおよび方位の配向ずれが8°よりも小
さくなるように配向された複数のコラム状ダイヤモンド結晶粒からなる高度配向
ダイヤモンド層を、上記ダイヤモンド層(22)が含むことを特徴とする表面音
波デバイス。
22.請求項21の表面音波デバイスにおいて、上記少なくとも一つの交互配
置形電極が一対の交互配置形電極を含み、該一対の交互配置形電極は表面音波伝
搬軸に沿って整列し、かつ上記圧電層の傾斜しているそれぞれの端部に隣接して
いることを特徴とする表面音波デバイス。
23.請求項21の表面音波デバイスにおいて、上記ダイヤモンド層のそれぞ
れの対向する端部が表面音波伝搬軸と直交する方向からある角度だけ傾斜して上
記圧電層と対応しており、よって望ましくない音波の反射を減少させるように構
成したことを特徴とする表面音波デバイス。
24.請求項21の表面音波デバイスにおいて、上記ダイヤモンド層と上記圧
電層の双方が、それらの対向する側面を表面音波伝搬軸と平行に形成されている
ことを特徴とする表面音波デバイス。
25.請求項21の表面音波デバイスにおいて、上記少なくとも一つの交互配
置形電極(84)が上記高度配向ダイヤモンド層(22)と上記圧電層(83)
との間に置かれていることを特徴とする表面音波デバイス。
26.請求項21の表面音波デバイスにおいて、上記少なくとも一つの交互配
置形電極(84)が上記圧電層(83)の上で上記高度配向ダイヤモンド層(2
2)の反対側に配置されていることを特徴とする表面音波デバイス。
27.請求項21の表面音波デバイスにおいて、上記少なくとも一つの交互配
置形電極が複数の導電性ラインを含み、該導電性ラインの幅が約1μmよりも小
さくなく、かつ隣接した導電性ラインの間の間隔が約1μmよりも小さくないよ
うに構成したことを特徴とする表面音波デバイス。
28.ダイヤモンド層(22)と、該ダイヤモンド層の上に置かれた圧電層(
83)と、該圧電層の上に置かれた少なくとも一つの交互配置形電極(84)と
を具備し、
上記少なくとも一つの交互配置形電極(84)は表面音波伝搬軸(89)を規
定し、上記圧電層(83)の対向する端部(83aおよび83b)は、望ましく
ない音波の反射を減少させるために表面音波伝搬軸(89)に直交する方向から
ある角度だけ傾斜しており、
上記ダイヤモンド層の高度にドープされた導電性表面部分が所定のパターンで
上記圧電層(83)の近隣に形成されており、上記パターンの上記導電性表面部
分が上記少なくとも一つの交互配置形電極(84)の中に含まれていることを特
徴とする表面音波デバイス。
29.ダイヤモンド層(22)を形成するステップと、上記高度に配向された
ダイヤモンド層の上に圧電層(23)を形成するステップと、上記圧電層の上に
少なくとも一つの交互配置形電極(24)を形成するステップとを含む、表面音
波デバイスを製造する方法であって、
複数のコラム状ダイヤモンド結晶粒が相互に配向関係をもって並び、単結晶非
ダイヤモンド基板上で傾きおよび方位の配向ずれが約8°よりも小さくなるよう
に配向された高度配向ダイヤモンド層を形成することが、上記ダイヤモンド層(
22)を形成するステップの中に含まれていることを特徴とする表面音波デバイ
スの製造方法。
30.請求項29に記載された方法において、圧電層(23)を形成するステ
ップが、第1および第2の圧電層部分を、上記ダイヤモンド層(22)の上で横
方向に間隔を取って形成することを含み、少なくとも一つの交互配置形電極(2
4)を形成するステップが、第1および第2の交互配置形電極をそれぞれの圧電
層部分の上に形成することを含む表面音波デバイスの製造方法。
31.請求項29に記載された表面音波デバイスの製造方法において、少なく
とも一つの交互配置形電極(24)を形成するステップが、上記ダイヤモンド層
(22)の高度にドープされた導電性表面部分(22a)を所定のパターンで上
記圧電層(23)の近隣に形成することを含む表面音波デバイスの製造方法。
32.請求項31に記載された表面音波デバイスの製造方法において、一対の
交互配置形電極を上記圧電層(23)の対向する端部の近隣に形成して、該一対
の交互配置形電極がそれらの間で表面音波伝搬軸を規定するようにすることが、
少なくとも一つの交互配置形電極(24)を形成するステップの中に含まれ、
上記圧電層(23)の対向する端部が表面音波伝搬軸と直交する方向からある
角度だけ傾斜するように上記圧電層を形成して、望ましくない音波の反射を減少
させるようにすることが、圧電層を形成するステップの中に含まれることを特徴
とする表面音波デバイスの製造方法。
33.ダイヤモンド層(22)の上に表面音波デバイスを作る方法であって、
少なくとも一つの交互配置形電極(24)を上記ダイヤモンド層の上に形成する
ステップと、圧電層(23)を上記ダイヤモンド層の上に形成するステップと、
上記圧電層を上記少なくとも一つの交互配置形電極に重ねるステップとを含み、
上記少なくとも一つの交互配置形電極(24)を構成し、かつドーパント濃度
が1019原子cm-3よりも大きい高度にドープされた導電性表面部分を所定のパター
ン(22a)で形成することが、上記少なくとも一つの交互配置形電極(24)
を形成するステップの中に含まれていることを特徴とする表面音波デバイスの製
造方法。
34.ダイヤモンド層(92)の上に表面音波デバイスを作る方法であって、
上記ダイヤモンド層の上に圧電層(93)を形成するステップと、上記圧電層の
上に少なくとも一つの交互配置形電極(94)を形成するステップとを含み、音
波を吸収する電気抵抗器を構成するために上記ダイヤモンド層(92)の所定の
表面部分(99)をドープすることを特徴とする表面音波デバイスの製造方法。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
H03H 9/17 H03H 9/25 E
9/25 9/42
9/42 9/72
9/72 H01L 41/08 C
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ,UG),
AM,AT,AU,BB,BG,BR,BY,CA,C
H,CN,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB
,GE,HU,IS,JP,KE,KG,KP,KR,
KZ,LK,LR,LT,LU,LV,MD,MG,M
K,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO
,RU,SD,SE,SG,SI,SK,TJ,TM,
TT,UA,UG,US,UZ,VN
(72)発明者 ハートセル,ミシェル・エル
アメリカ合衆国、 27515 ノース・キャ
ロライナ、ケアリー、ラッシングウォータ
ー・ドライヴ 205