【発明の詳細な説明】
特定の細胞型への化学試薬の細胞内送達技術分野
本発明は細胞への化学試薬の送達に関する。特に、本発明は特定の細胞型、即
ちCR2受容体を発現している細胞への化学試薬の細胞内送達のための組成物お
よび方法に関する。背景技術
腫瘍細胞上の細胞表面受容体または抗原を標的とする毒素は、癌の処置におい
てかなりの興味が持たれている。例えば、I.Pastan & D.Fitz
Gerald,癌処置のための組換え体毒素,254 Science1173
(1991);Andersonらによる米国特許第5,165,933号およ
び第5,135,736号;Thorpeらによる米国特許第5,165,92
3号;Jansenらによる米国特許第4,906,469号;Frankel
による米国特許第4,962,188号;Uhrらによる米国特許第4,792
,447号;Masuhoらによる米国特許第4,450,154号および第4
,350,626号。これらの試薬は植物または細菌毒素に連結された、増殖因
子または抗原結合タンパク質のような細胞標的化残基を含んでいる。これらは通
常の化学療法とは異なった機構で細胞を殺すので、通常の化学療法剤への交差耐
性を潜在的に減少または除去する。
膜糖タンパク質CR2(CD21としても知られている)は成熟Bリンパ球(
B細胞)およびヒト咽頭上皮細胞、ヒト胞状樹枝状細胞および頚部上皮細胞のよ
うなある種の上皮細胞に生じ、エプスタインーバールウイルス(EBV)および
補体断片C3d/C3dg両方の受容体である。N.Miller & L.M
.Hutt−Fletcher,66 J.Virol.3409(1990)
。この受容体は145kDの膜糖タンパク質であり、その結合機能に加えてB細
胞活性化経路にも含まれている。例えば、G.R.Nemerowら、ヒトBリ
ンパ球上のエプスタインーバールウイルス受容体の同定と特性評価およびC3d
補体受容体との関係、55 J.Virol 347(1985)。EBVによ
るB細胞の感染はCR2受容体へのウイルスgp350/220エンベロープ糖
タ
ンパク質の選択的結合、続いてのCR2のインターナリゼーションおよび受容体
結合ビリオンのエンドサイトーシスにより開始される。例えば、Tedderら
、(1986)、エプスタインーバールウイルス結合はC3d受容体のインター
ナリゼーションを誘導する:新規免疫毒素送達系、137 J.Immunol
.1387(1986)。CR2受容体を含む上皮細胞もEBVを結合するが、
明らかにそのような細胞は受容体媒介エンドサイトーシスとは別の機構で感染さ
れる。
Nemerowらは、B細胞EBV/C3dへのエプスタインーバールウイル
ス(EBV)のウイルス糖タンパク質媒介結合におけるgp350の同定:gp
350およびC3補体断片C3dの配列相同性、61 J.Virol.141
6(1987)、においてC3dg中の配列(Glu−Asp−Pro−Gly
−Lys−Gln−Leu−Tyr−Asn−Val−Glu;配列ID番号:
2)に対応するgp350/220のN−末端近くのドメイン(Glu−Asp
−Pro−Gly−Phe−Phe−Asn−Val−Glu;配列ID番号:
1)を含むC3dgおよびgp350/220間の類似したアミノ酸配列のドメ
インを同定した。Nemerowらは、Bリンパ球EBV受容体(CR2)への
ウイルス結合を媒介するエプスタインーバールウイルスの主エンベロープタンパ
ク質中のエピトープの同定、56 Cell 369(1989)においてもま
た配列ID番号:1と同定されたアミノ酸配列を含む合成テトラデカペプチドの
精製CR2受容体およびCR2発現B細胞両方への結合を記載している。この合
成ペプチドはまた、B細胞上のCR2受容体への組換え体gp320/220ま
たはC3dgの結合を阻止し、同様な合成ペプチドはインビトロでEBV感染を
阻害した。端を切り取ったおよび置換したペプチド類似体の分析により、CR2
結合に関与するEBVエピトープはGlu−Asp−Pro−Gly−Phe−
Phe−Asn−Val−Glu配列(配列ID番号:1)内に含まれているこ
とが示された。より短いペプチドで結合レベルの減少が観察されたが、Glu−
Asp−Pro−Gly(配列ID番号:3)ペプチドはかなりのCR2結合活
性を保持していた。この領域のプロリンをグリシンに変えた単一アミノ酸置換を
含むペプチドもまた著しいCR2結合活性の減少を示した。
以上のことを考えると、CR2受容体を持つB細胞への化学試薬の細胞内送達
のための組成物およびそれらを使用法は本分野での著しい進歩であることが認識
されるであろう。本発明の目的および要約
結合が受容体媒介エンドサイトーシスの引き金となる特定の細胞型、即ちCR
2受容体を発現している細胞への選択された化学試薬の細胞内送達のための組成
物を提供するのが本発明の目的である。
CR2受容体を発現している細胞への選択された化学試薬の細胞内送達のため
の組成物を作製する方法およびそれを使用する方法を提供するのも本発明の目的
である。
CR2受容体を発現している細胞への細胞毒素、形質転換核酸、遺伝子調節物
質、標識、抗原、薬剤などのような選択された化学試薬の細胞内送達のための組
成物および方法を提供するのも本発明の別の目的である。
CR2受容体への化学試薬の結合および化学試薬のエンドサイトーシスのため
、選択された化学試薬に結合できるペプチドリガンドを提供するのも本発明のさ
らに別の目的である。
これらおよびその他の目的は、CR2受容体へ結合でき受容体媒介エンドサイ
トーシスを誘導できるリガンド(CBEL)およびリガンドヘ結合された化学試
薬(ここで化学試薬はCR2受容体を持った細胞内へ細胞内送達された場合選択
された効果を惹起することができる)からなり、CR2受容体を持たない細胞を
含む細胞集団中のCR2受容体を持った細胞内への化学試薬の特異的細胞内送達
のための組成物を提供することにより達成できる。成熟Bリンパ球はこれらの組
成物により標的とされるCR2受容体を持った細胞である。そのような細胞へ送
達できる化学試薬には細胞毒素、形質転換核酸、遺伝子調節物質、標識、抗原お
よび薬剤が含まれている。CBELおよび化学試薬は、お互いにおよび/または
他の機能性残基とスペーサー(ある種のペプチドのように生分解可能であっても
よいし、または生分解できなくてもよい)を通して結合できる。組成物はさらに
水溶解性ポリマー、リポソームおよび粒子状物からなる群より選択される担体型
系を含んでいてもよい。
組成物はインビトロではCR2受容体結合性およびエンドサイトーシス誘導性
リガンド(CBEL)がCR2受容体に結合し、受容体結合組成物のエンドサイ
トーシスを惹起する条件下で細胞集団と有効量の組成物を接触させることにより
使用される。インビボ使用のためには、CBELが成熟Bリンパ球上のCR2受
容体に接触および結合し、続いて組成物のエンドサイトーシスを誘導するように
有効量の組成物が全身に投与される。一度細胞内に入ったら、化学試薬がその選
択された効果を惹起する。図の簡単な説明
図1Aおよび1Bは本発明に従った組成物を形成するCBELと遊離スルフヒ
ドリル基を持つ化学試薬の化学的立体配置を説明的に描いたものである。
図2A−2Dは本発明に従ったCBELおよび化学試薬ペプチドを含む融合タ
ンパク質を発現するためのプラスミドの構築工程を示している。
図3は本発明に従ったCBEL−リシンA融合タンパク質の種々の濃度にイン
ビトロで細胞を暴露した場合のCR2+B細胞(より濃い棒線)およびCR2-細
胞(より薄い棒線)に対する効果の比較を示している。発明の詳細な説明
本組成物および特定の細胞型への化学試薬の細胞内送達法を開示および説明す
る前に、本明細書に記載された実施態様、方法工程および材料は幾分変化させて
もよく、そのような特定の実施態様、方法工程および材料に本発明が制限される
わけではないことを理解されたい。また、本発明は付随する請求の範囲およびそ
れらの均等物によってのみ制限されるので、本明細書で使用された用語は特定の
実施態様を説明することのみを目的として使用されており、制限することを意図
しているわけではないことを理解されたい。
本明細書および付随する請求の範囲で使用されている単数形は、内容が明らか
に指示していない限り複数の指示対象を含んでいることを指摘しなければならな
い。従って、例えば”リガンド”を含む組成物については二つまたはそれ以上の
リガンドを含んでおり、”化学試薬”については一つまたはそれ以上のそのよう
な化学試薬(それらは同一の化学試薬でも異なったものでもよい)を含んでおり
、”スペーサー”については二つまたはそれ以上のスペーサーを含んでいる。
本発明の説明および請求において、以下の用語が以下に示す定義に従って使用
されるであろう。
本明細書で使用される場合、”ペプチド”とは任意の長さのペプチドを意味し
、タンパク質を含んでいる。用語”ポリペプチド”および”オリゴペプチド”は
特定のサイズが述べられていない限り、本明細書では特定の意図されたサイズの
制限なしに使用される。
本明細書で使用される場合、”CR2受容体結合性およびエンドサイトーシス
誘導性リガンド”または”CBEL”とはCR2(CD21)受容体に結合でき
および受容体および受容体結合CBELのエンドサイトーシスによるインターナ
リゼーションを誘導できる組成物を意味している。本発明に従うと、CBELの
エンドサイトーシスによりそれに結合された種々の機能性分子もまたCR2を持
つ細胞によりインターナリゼーションを受けるようにCBELは種々の機能性分
子と結合されている。
現在までの理解によれば、CBELはEBV gp350/220糖タンパク
質、配列ID番号:1および隣接する配列を含む;C3dgペプチド、配列ID
番号:2および隣接する配列を含む;またはそれらに実質的に相同的なペプチド
から誘導できる。本明細書で使用する場合”実質的に相同的”とは、隣接する配
列を含んでいてもよいし、または端が切断されていてもよいが、CR2受容体結
合および受容体媒介エンドサイトーシスの誘導においての機能性を保持している
ペプチドを意味している(配列ID番号:1または配列ID番号:2の欠失変異
体または置換変異体)。結合および受容体媒介エンドサイトーシス誘導のための
最少必要性は配列ID番号:3と同定された配列であるようである。置換変異体
とは一つまたはそれ以上のアミノ酸残基の保存的置換を含むものである。保存的
置換とは、ペプチドの機能性(ここでの場合、CR2受容体結合および受容体結
合組成物のエンドサイトーシスの惹起における機能性)が保持されるような一つ
のアミノ酸残基の別のアミノ酸による置換である。ある種の保存的置換群に属し
ているアミノ酸残基はしばしば同一の群の別のアミノ酸残基で置換することがで
きる。そのような群分けの一つは以下のようである:Pro;Ala、Gly;
Ser、Thr;Asn、Gln;Asp、Glu:His;Lys、Arg;
Cys;Ile、Leu、Met、Val;およびPhe、Trp、Tyr。M
.Jimenez−Montano & L.Zamora−Cortinaア
ミノ酸配列の発生の進化的モデルおよび哺乳類アルファーヘモグロビン鎖の研究
についてのその応用、Proc.VIIth Int’l Biophysics
Congress,Mexico City(1981)。実質的に相同であ
ると考えられる別の変異には、天然に存在するL−アミノ酸に対してのD−アミ
ノ酸の置換、追加の側鎖を含むようなアミノ酸誘導体による置換、および非標準
的アミノ酸、即ちタンパク質にはまれであるかまたは存在しないα−アミノ酸に
よる置換が含まれる。CBELの一次構造は機能性によってのみ制限される。
本明細書で使用される場合、”化学試薬”とはエンドサイトーシスによりBリ
ンパ球内にインターナリゼーションされた場合に選択された効果を示す物質を意
味し、含んでいる。ある種の化学試薬はB細胞内へインターナリゼーションされ
た場合、B細胞に対して細胞毒性効果または遺伝子調節に対する効果のような生
理学的効果を示す。細胞内へインターナリゼーションされた場合、”形質転換核
酸”(RNAまたはDNA)は細胞内で複製および/または発現されるであろう
。他の核酸は細胞内で調節配列または調節因子と相互作用し、選択された様式で
細胞内で遺伝子発現に影響を与えるであろう。細胞内に送達された検出可能な標
識は、標識を検出することにより本発明の組成物がインターナリゼーションされ
た細胞の同定を可能にする。細胞の内部に送達された抗原は、抗原に特異的な免
疫応答を惹起することができる。薬剤または医薬として活性な化合物は病原性効
果または他の型の障害を改善するのに使用できる。特に有用な化学試薬としては
ポリペプチドが挙げられ、そのような化学試薬のいくつかは生物学的に活性なタ
ンパク質の断片、または抗原性タンパク質の特異的抗原断片(例えばエピトープ
)である。従って、化学試薬には細胞毒素、遺伝子調節物質、形質転換核酸、標
識、抗原および薬剤などが含まれる。
本明細書で使用される場合、”担体”とは水溶性ポリマー、粒子状物またはリ
ポソームを意味している。そのような担体は一つまたはそれ以上のCBELおよ
び/または化学試薬が結合できる多数の部位を含んでいる。そのような担体は組
成物の分子量を増加させ、追加の選択性および/または安定性を提供する。その
ような選択性は担体を含む組成物が受動拡散により細胞内へ入るには大きすぎ、
従って受容体媒介エンドサイトーシスにより細胞内へ入ることだけに制限される
からである。水溶性ポリマーを含む担体はペプチドリガンド、化学試薬および他
の機能性分子の連結に使用できる。標的化された薬剤送達のためにそのような担
体が使用できることは確立されている。例えば、J.Kopecek,5 Bi
omaterials 19(1984);E.Schachtら、薬剤担体と
してのポリサッカライド、Controlled−Release Techn
ology 188 (P.I.Lee & W.R.Good編、1987)
; F.Hudecz、担体設計:ポリ(L−リジン)主鎖を持つ合成分岐鎖ポ
リペプチドの細胞毒性および免疫原性、19 J.Controlled Re
lease 231(1992);Z.Brich、ドクソルブシンおよびモノ
クローナル抗体(ABL364)の水溶性デキストラン免疫複合体の製造と特性
評価、19 J.Controlled Release 245(1992)
。従って、水溶性ポリマーの例としてはデキストラン、イヌリン、ポリ(L−リ
ジン)、メタアクリルアミド含有合成ポリマーなどが挙げられる。
本明細書で使用される場合、”有効量”とは選択された効果を生み出す量を意
味している。例えば、化学試薬として細胞毒素を含んでいる組成物の選択された
効果とは選択された時間内に成熟B細胞を選択された比率で殺すことであろう。
組成物の有効量とはこの選択された結果を達成する量であろうし、そのような量
は当業者により日常の業務として決定される。
本発明の組成物は、CR2を持たない細胞を含む細胞集団中のCR2を持つ細
胞内への化学試薬の特異的細胞内送達を提供し、本組成物はCR2受容体へ結合
でき、受容体媒介エンドサイトーシスを誘導できるCBEL、およびCR2受容
体を持つ細胞内へ細胞内送達された場合に選択された効果を惹起でき、CBEL
に結合された化学試薬を含んでいる。化学試薬は細胞毒素、遺伝子調節物質、形
質転換核酸、標識、抗原および薬剤などから成る群より選択される。化学試薬へ
のCBELの結合は、共有結合、静電的相互作用、疎水性相互作用および物理的
カプセル化などであろうが、それらに制限されるわけではない。化学試薬へのC
BELの結合は直接であってもまたは別の機能性残基を通していてもよい。従っ
て、本組成物はさらに、CBELおよび化学試薬間に結合および挿入されたスペ
ーサーを含んでいる。そのようなスペーサーは生分解可能でも生分解性可能でな
くてもよいが、ペプチドスペーサーが望ましい。本発明の組成物はさらに水溶性
ポリマー、リポソームおよび粒子状物から成る群より選択される担体を含むこと
もできる。担体が水溶性ポリマーである場合、組成物は式:
[L−Sa]b−C−[Se−A]f
(式中、LはCR2受容体に結合およびそのエンドサイトーシスを誘導できるリ
ガンド(CBEL)であり;Aは化学試薬であり;Sはスペーサーであり;Cは
リガンド、化学試薬およびスペーサーとの共有結合の形成が矛盾なくできる官能
基を持つ水溶性ポリマーであり;aおよびeは0または1であり;およびbおよ
びfは整数で少なくとも1である)を持っている。そのような水溶性ポリマーは
デキストラン、イヌリン、ポリ(L−リジン)、メタアクリルアミド含有ポリマ
ーなどから成る群より選択される。
従って、本発明に従うと、CBELは成熟B細胞上のCR2受容体に結合する
組成物のための手段が提供され、エンドサイトーシスによる組成物のインターナ
リゼーションの引き金を引く。化学試薬はB細胞内で選択された効果を達成する
ための手段を提供する。従って、例えば化学試薬はCR2受容体を示している細
胞を選択的に殺すまたは無能力化するための細胞毒素(放射性核種を含む);選
択的免疫応答を惹起するための抗原;B細胞の遺伝子発現を遺伝的に形質転換す
るまたは調節する核酸;選択された治療効果を達成するための薬剤または他の医
薬として活性な試薬;組成物を取り込んでいる細胞の検出を可能にするための標
識(蛍光性、放射活性および磁気標識を含む)などを含んでいる。
随意に、本発明の組成物はさらに多数の選択された機能性を持つCBELおよ
び/または化学試薬を複合体分子中に一緒に結合できるように水溶性ポリマー担
体を含んでいる。少なくとも一つの化学試薬および少なくとも一つのCBELが
そのような担体に結合されており、化学試薬に結合されたCBELの好適な数は
1から約1000の範囲である。そのような担体は組成物の分子量を増加させ、
担体なしで達成されるであろうものを超える付加的選択性および/または安定性
を機能性残基に提供する。都合よくは、CBELおよび/または化学試薬の結合
は生分解可能または生分解可能ではないスペーサーにより達成される。そのよう
なスペーサーはB細胞内部での加水分解および/または酵素的切断に対する相対
的感受性または抵抗性で選択できる。この選択性は、細胞内で担体へ結合された
まま残っている化学試薬がよいかまたは細胞内酵素活性により担体から放出され
るのが都合がよいかに基づいてスペーサーを選ぶ手腕を本技術の従事者に与える
。担体としてのリポソームおよび粒子状物の使用は水溶性ポリマー担体の使用と
は無関係である。
いくつかの態様において、本組成物は化学試薬へCBELを化学的に結合させ
ることにより構築される。”化学的結合”とは本明細書で使用される場合直接的
にまたは結合残基を通して化学試薬にCBELを共有結合で結合させることを意
味している。特定の態様では(化学試薬がペプチドである場合)、CBEL上の
官能基および化学試薬間の結合の形成に結合残基が使用できる。例えば、CBE
Lおよび化学試薬ペプチド含有組成物は、ヘテロ二官能性架橋剤を通して化学試
薬上のスルフヒドリル基およびCBEL上のアミノ基を結合させることにより形
成できる。例えば、マレイミド架橋剤を通したCBELおよびリシンAの化学的
結合形成のための反応スキームが図1Aおよび1Bに示されている。スルフヒド
リル基、ハロアセチル、アルキルハライド、アルキルスルフォネート、α,β−
不飽和カルボニル、またはα,β−不飽和スルホン残基を含む化学試薬へのCB
ELの化学的結合形成のためにマレイミド架橋剤以外のものも架橋剤として使用
できる。CBELおよびアミノ基を含む化学試薬の化学的結合のために、活性エ
ステルが架橋剤として使用できる。どの官能基がCBEL上および化学試薬上で
利用可能かに依存して別の結合残基が用いられるであろう。
本発明の組成物はまた、大腸菌のような遺伝子工学処理された微生物中で”融
合タンパク質”として産生できる。即ち、CBLEをコードしているヌクレオチ
ド配列および化学試薬ペプチドをコードしているヌクレオチド配列を含むハイブ
リッド遺伝子は組換えDNA技術により構築できる。このハイブリッド遺伝子は
、
ハイブリッド遺伝子によりコードされている”融合タンパク質”が発現されるよ
うに微生物内へ挿入できる。融合タンパク質は続いてアフィニティークロマトグ
ラフィーを含む常法により精製できる。
本発明に従ったCBELおよび化学試薬を含む融合タンパク質は化学合成によ
ってもまた構築できる。
本発明の組成物が融合タンパク質として産生される場合、CBELおよび化学
試薬ペプチドは直後にお互いを隣接させることができ、即ち、CBElのカルボ
キシル末端は化学試薬のアミノ末端と直接的に結合できる(またはその逆)。も
しくは、融合タンパク質はCBELおよび化学試薬間に追加のアミノ酸残基を含
むこともでき、これらの追加のアミノ酸残基はCBELおよび化学試薬ペプチド
間のスペーサーとして働くことができる。短いペプチドはより容易に取り扱うこ
とができ、および追加のアミノ酸残基の存在(特にたくさんの数の追加のアミノ
酸残基)はエンドサイトーシスによる化学試薬のインターナリゼーションを誘導
するペプチドリガンドの機能を妨害するかもしれないため、短いペプチドリガン
ドが一般的に好適である。
本発明に従った組成物はさらにまた、一度組成物が細胞内に移ったら、消化部
位のタンパク質分解によりCBELから化学試薬を分離できるように位置してい
るプロテアーゼ消化部位を含むこともできる。そのような消化部位は天然には配
列ID番号:1セグメントに隣接するgp350/220糖タンパク質中に存在
し、従って本組成物のCBEL部分は都合よくそのような部位を含むように伸長
できる。そのようなプロテアーゼ感受性スペーサーは、組成物が化学的に合成さ
れたかまたは遺伝子工学処理された微生物中の発現ペプチドに関係なく付加する
ことができる。後者の場合、プロテアーゼ感受性スペーサーをコードしているヌ
クレオチドは本分野ではよく知られた技術によりCBELコードセグメントおよ
び化学試薬ペプチドコードセグメントの間にハイブリッド遺伝子内へ挿入できる
。
本発明の別の態様はCR2を発現しない細胞集団に含まれるCR2発現細胞に
おいて所望の活性を特異的に達成する方法を特色とし、そのような活性を細胞内
で示す化学試薬に結合されたCBELを含む組成物と細胞集団を接触させる工程
が含まれている。本発明の組成物は混合集団中のCR2発現細胞に選択的に結合
し、それにより細胞内への組成物のエンドサイトーシスが誘導され、CR2発現
細胞内で化学試薬がその活性を達成する。
本明細書ではペプチドの取扱いおよびペプチド発現のための核酸の取扱いのた
めには標準的な技術が用いられた(特に指示しない限り)。オリゴペプチドおよ
びオリゴヌクレオチドの結合のための技術は本分野ではよく知られており、例え
ば、T.Zhuら、3 Antisense Res.Dev.265(199
3);T.Zhuら、89 Proc.Nat’l Acad.Sci.USA
7934(1992);P.Rigaudyら、49 Cancer Res.
1836(1989)に記載されている。
前に指摘したように、本発明は組成物中でCBELとして用いられるペプチド
を特色としており、また化学試薬も含まれており、その化学試薬もまたペプチド
であるかまたはペプチドを含んでいる。本発明に従ったペプチドは有機合成およ
び組換えDNA法を含む種々の技術により作製される。ペプチドの化学合成のた
めの技術は例えば、B.Merrifieldら、21 Biochemist
ry 5020−31(1982);Houghten,82 Proc.Na
t’l Acad.Sci.USA 5131−35(1985)(本明細書に
おいて援用される)に記載されている。ペプチドと別の分子の化学結合のための
技術は本分野では既知である。
本発明に従った融合タンパク質は上記のようにCBELをコードしているオリ
ゴヌクレオチドおよび化学試薬ペプチドをコードしているオリゴヌクレオチドを
含む核酸の適した宿主細胞での発現により作製できる。組換え融合タンパク質を
産生するためのそのような技術は本分野ではよく知られており、例えば、J.S
ambrookら、Molecular Cloning:A Laborat
ory Manual(第2版、1989)(その関連する部分は本明細書にお
いて援用される)に一般的に記載されている。制限酵素などのようなそのような
技術の応用に有用な試薬は本分野では広く知られており、いくつかの販売元から
市販品として入手可能である。
本発明に従ったCBELおよび化学試薬ペプチドを含む組成物の構築はがここ
で記載されるが、特にCBELが細胞毒性化学試薬ペプチド、リシンAと結合さ
れる例に関するものである。リシンはひま植物(リシヌス コミュニス(ric inus
communis))により産生される毒性糖タンパク質である。そ
れはA鎖およびB鎖の二つのサブユニットからなり、両方とも約30kDの分子
量であり、ジスルフィド結合によりお互いに連結されている。リシンは大量に前
駆体として合成され、それを加工すると成熟A鎖およびB鎖サブユニットが得ら
れる。A鎖は28SリボソームRNAのグルコシド結合を切断する酵素であり、
それによりタンパク質を合成するリボソームの能力を破壊する。A鎖は1分で約
1500のリボソームを不活性化でき、そのことはリシンAの1個のインターナ
リゼーションが細胞には致死的であることを意味している。S.Olsnesら
、毒性レクチン アブリンおよびリシンによるリボソームの不活性化、60 E
ur.J.Biochem.281(1975)。B鎖は細胞表面上のガラクト
ース残基に結合する(リシンのインターナリゼーションに必須)。B鎖を除去す
るとA鎖の細胞への侵入が阻害され、A鎖を不活性なものにする。リシンA鎖の
CBELへの結合は受容体媒介エンドサイトーシスによるA鎖の侵入を可能にし
、活性な細胞毒素とする。
第一の実施例において、組成物は化学的結合により形成され;および第二の実
施例において、組成物は組換え体融合タンパク質として形成される。実施例1 CBELおよびリシンAの化学的結合形成
実例として、アミノ酸配列Glu−Asp−Pro−Gly−Phe−Phe
−Asn−Val−Glu(配列ID番号:1)を持つCBELと細胞毒性化学
試薬ペプチド、リシンAとの化学的結合形成が図1Aおよび1Bに示した2工程
法で実施された。
第一の工程において、CBEL(Peptide Internationa
l,Kentucky,USA)がm−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシ
スルホスクシンイミド エステル(”sulfo−MBS”;Pierce,R
ockford,Illinois,USA)との反応により(本質的に発売元
の使用説明書に記載されているように)活性化された。簡単に記すと、CBEL
はPBS緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、0.15M NaCl、pH 7
.0)中、1:10のモル比にて室温で2時間混合した。得られた活性化ペプチ
ドは常法に従ってSuperose 12(Pharmacia)を用いるHP
LCにより精製された。
第二の工程において、マレイミド活性化ペプチドはデグリシル化リシンA(S
igma Chemical Co.,St.Louis,Missouri,
USA)とPBS緩衝液中、1:5のモル比にて室温で1時間混合して反応させ
た。未反応ペプチド分子はCBEL−リシンA結合体から4℃で6−8キロダル
トンカットオフ値を持つ膜を通して一夜透析する事により除去された。
得られた組成物は10% SDS−PAGEゲル上のゲル電気泳動により約3
2kDの分子量を持つと推定された(U.Laemmli,227 Natur
e 680(1970)。従って、本実施例により製造された組成物はリシンA
1モル当たり1つのCBELを含んでいる。三次元コンピューターモデル化は、
CBELはN末端のCys残基が折り畳まれたリシンA分子の内部に埋もれてい
る限りは、リシンA分子のC末端のCys残基に結合している可能性が高いこと
を示した。実施例2 CBELおよびリシンAを含む組換え体タンパク質
アミノ酸配列Glu−Asp−Pro−Gly−Phe−Phe−Asn−V
al−Glu(配列ID番号:1)を持つCBELと細胞毒性化学試薬ペプチド
、リシンAを含む融合タンパク質が組換えDNA技術により形成された。簡単に
記すと、本実施例の融合タンパク質は大腸菌発現ベクター中、CBELをコード
している合成オリゴヌクレオチドをリシンAをコードしているポリヌクレオチド
の下流に挿入し、大腸菌宿主内で高収率で融合タンパク質を発現させ、次にアフ
ィニティークロマトグラフィーにより細胞溶菌物から融合タンパク質を精製する
。
ここで図2A−2Dを参照すると、CBELおよびリシンAを含む融合タンパ
ク質は以下のような組換えDNA技術により産生された。翻訳開始部位(ATG
)の下流の多クローニング部位(MCS)を含む大腸菌発現ベクターpTrcH
i
s B(Invitrogen,San Diego,California)
(図2A)は制限エンドヌクレアーゼNcolおよびBamHIで消化され、得
られた付着末端はT4 DNAポリメラーゼで平滑末端に変換され、再結合させ
てpTrc B(図2B)を発生させた。リシンAをコードしている863bp
BamHI−KpnI断片をプラスミドpAKG(Robert Weaver
,University of Kansas,Lawrenceから得た;C
.Hallingら、13 Nucleic Acids Res.9019(
1985)に記載されている)から単離し、BamHIおよびKpnI消化pT
rc B内へクローン化した。得られた構築物はBamHIで消化し、T4 D
NAポリメラーゼで付着末端を平滑末端に変換し、再結合するとクローン化遺伝
子の翻訳のための正しい読み枠が得られた(図2C)。
得られた改変pTrc Bベクター(リシンAコード配列を含んでいる)は次
にKpnIおよびEcoRIで消化し、続いてCBELをコードしているヌクレ
オチド残基およびKpnIおよびEcoRIでのクローニングと両立できる付着
末端を含む下記の合成オリゴヌクレオドを結合した。
得られたベクター(図2D)はリシンA−プロテアーゼ部位−リガンド−Hi
s6融合タンパク質をコードするハイブリッド遺伝子であり、ここで”プロテア
ーゼ部位”とはプロテアーゼ消化部位または前記のようなプロテアーゼ感受性ス
ペーサーを意味しており、”リガンド”はCBELを意味しており、および”H
is6”は6つの連続的なHis残基(この機能は後で説明する)の領域を意味
している。得られたプラスミドは次に大腸菌細胞の形質転換に使用され、形質転
換体はLB培地で選択および増殖させた(J.Miller,Experime
nts in Molecular Genetics,Cold Sprin
gHarbor Laboratory,Cold Spring Harbo
r,N.Y.(1972))。細胞は次に溶解させ、組換え体融合タンパク質は
ニッケル荷電樹脂(”PROBOND”,Invitrogen,San Di
ego,California)を含むカラムでのアフィニティークロマトグラ
フィーにより精製された。融合タンパク質のC末端の6つのHis残基は”PR
OBOND”樹脂上のニッケル原子と静電的に結合する。結合された融合タンパ
ク質を含む樹脂は次に洗浄して夾雑物を除く。次に、静電的結合を破壊し、ニッ
ケル荷電樹脂からHis残基を置き換えるイミダゾール含有溶出緩衝液に融合タ
ンパク質を溶出する。この精製は製造元の手引き書に従って行われた。実施例3
アミノ酸配列Glu−Asp−Pro−Gly−Phe−Phe−Asn−V
al−Glu(配列ID番号:1)を持つCBELと細胞毒性化学試薬ペプチド
、リシンAを含む融合タンパク質が実施例2のように組換えDNA技術により行
われた、ただし6つの連続的なHis残基を含む領域は除かれた。従って、改変
pTrc BベクターのEcoRIおよびKpnIによる消化後、CBELをコ
ードしているヌクレオチド残基およびKpnIおよびEcoRIでのクローニン
グと両立できる付着末端を含む下記の合成オリゴヌクレオドが結合された。
得られたベクターはリシンA−プロテアーゼ部位−CBEL融合タンパク質を
コードするハイブリッド遺伝子であり、ここで”プロテアーゼ部位”はプロテア
ーゼ消化部位または前記のようなプロテアーゼ感受性スペーサーを意味している
。得られたプラスミドは次に大腸菌細胞の形質転換に使用され、形質転換体はL
B培地で選択および増殖させた。発現されたタンパク質は細胞を1mg/mlの
リリゾチームを含む20mMのリン酸ナトリウム(pH7.8)中で各々1分間
3回超音波処理して溶菌させて単離した。融合タンパク質はこれらの条件下で不
溶性であったが、ほとんどの大腸菌タンパク質は溶解性であった。溶菌物を90
00rpmで30分遠心分離し、得られた融合タンパク質含有ペレットは再懸濁
し、再び遠心分離する前に1分間超音波処理した。再懸濁、超音波処理および遠
心分離の工程を3回繰り返した。融合タンパク質の比較的純粋な調製物を含む最
終的なペレットは6M尿素および5Mジチオスレイトールを含む溶液に溶解した
。この溶解された融合タンパク質は4M尿素;2M尿素;および20mMリン酸
ナトリウム、500mM NaCl、pH7.8に対して連続的に透析すること
により復元した。実施例4
アミノ酸配列Glu−Asp−Pro−Gly−Phe−Phe−Asn−V
al−Glu(配列ID番号:1)を持つCBELと細胞毒性化学試薬ペプチド
、リシンAを含む融合タンパク質が実施例2のように組換えDNA技術により行
われた、ただし追加のシステイン残基が融合タンパク質内に導入された。リシン
A鎖のC末端の遊離システイン残基は大腸菌タンパク質の代わりにこの新規シス
テイン残基と分子内ジスルフィッド結合を形成できるので、この構築物は実施例
2より高収率で回収可能な融合タンパク質を与えた。大腸菌発現ベクターpTr
cHis A(Invitrogen,San Diego,Californ
ia)(異なった読み枠を持っていることを除いて図2AのpTrcHis B
と類似)は制限エンドヌクレアーゼNcoIおよびBamHIで消化された。6
つの連続的なヒスチジン残基およびNcoIおよびBamHI付着末端をコード
している合成DNAがベクターに連結された。プラスミドpAKGをBamHI
で消化し、放出された893bp断片はアガロースゲルでの電気泳動後電気溶出
により回収された。この断片をBamHIおよび腸アルカリ性ホスファターゼ−
消化改変pTrcHis Aベクター内に結合させた。結合混合物は大腸菌株X
L−1(Stratagene,La Jolla,California)の
形質転換に用いた。形質転換体を選択し、ベクター中のBamHI断片の向きを
BglIIで消化して決定した。翻訳のために正しい方向でリシンA遺伝子を持つ
形質転換体からのDNAをSacIおよびEcoRIで消化し、CBELをコー
ドしているヌクレオチド残基およびKpnIおよびEcoRI部位でのクローニ
ングと両立できる付着末端を含む下記の合成オリゴヌクレオドが結合された。
結合されたDNAは発現宿主大腸菌株BLR(Novagen,Madison
,Wisconsin)(recA株でionおよびompTプロテアーゼも欠
けている)内へ形質転換された。
組換え体タンパク質は37℃でアンピシリン存在下で増殖する形質転換された
細胞から単離された。培養液が0.6−0.8(600nm)の光学密度達した
とき、発現を誘導するために1mMの最終濃度までイソプロピルチオガラクトシ
ド(IPTG)が加えられた。3時間さらに増殖させた後、細胞を採取し、10
mM トリス・HCl、pH7.6、100mM KCl、20mM EDTA
、10mM 2−メルカプトエタノール、0.05% Nonidet P−4
0、および0.5mg/mlリゾチームを含む緩衝液に懸濁し、氷浴上で15分
インキュベートした。得られた溶菌物は0.5mMのフェニルメチルスルホニル
フルオリドの存在下で超音波処理し、4℃にて30分9000rpmで遠心分離
した。硫酸アンモニウムを40%飽和まで加えて可溶性タンパク質を沈澱させ、
沈澱したペレットは溶解し10mMトリス・HCl、pH7.4、100mM
KClに対して透析した。透析液は同一の緩衝液で平衡化されている強陰イオン
交換カラム(Q Sepharose Fast Flow,Pharmaci
a)にのせた。これらの条件下、ほとんどすべての細菌性タンパク質はカラムに
結合され、非結合分画は本質的に精製された組換え体タンパク質を含んでいた。
組換え体タンパク質はさらに4M尿素、20mMリン酸ナトリウム、500mM
塩化ナトリウム、pH7.8に対して透析することにより精製された。透析液は
ニッケル荷電”PROBOND”樹脂を含むカラムを通過させ、4M尿素、20
mMリ
ン酸ナトリウム、500mM塩化ナトリウム、5mMイミダゾール、pH6.0
で5回洗浄した。組換え体タンパク質中の6つのヒスチジン残基は親和性相互作
用による組換え体タンパク質の樹脂への結合を起こした。カラムはさらに2回イ
ミダゾール濃度を30mMに増加させた同一の緩衝液で洗浄した。組換え体タン
パク質は300mMのイミダゾール濃度を持つ同一の緩衝液で溶出させた。溶出
されたタンパク質は最初に4Mの尿素に対して、次に20mMリン酸ナトリウム
、500mM NaCl、pH7.8に対して透析することにより復元された。実施例5
CR2発現B細胞への化学試薬の標的化送達の実例として、本発明に従ったC
BELおよび化学試薬の組成物の使用が、特にCR2発現B細胞に対する特異的
細胞毒性効果のためにインビトロでRaji Bリンパ芽球様細胞ヘリシンAお
よびCBELの組成物が送達される例を参照して説明されるであろう。
予備的な証明において、1x106のCR2+Raji Bリンパ芽球様細胞が
追加の処理をしていない1mlのRPMI 1640培養培地(Hyclone
,Logan,Utah);20μgの上記実施例1のリシンA−CBEL組成
物を含む1mlの培養培地;またはリシンAのみを含む1mlの培養培地中で3
7℃にて24時間インキュベーションされた。インキュベーション後の細胞死は
トリパンブルー染色および倒立顕微鏡を用いるヘマサイトメーターによる細胞計
数により決定された。トリパンブルーは吸収され、死んだ細胞の細胞内を青色に
染める。細胞の一部を0.4%トリパンブルー染色液(Sigma Chemi
cal Co.,St.Louis,Missouri)で2倍に希釈し計数す
る前に5分間インキュベートした。生きている細胞のパーセントは単位容量当た
りの非染色細胞の数を染色および非染色細胞の全体の数で割り、100を掛けて
計算した。
リシンA単独で処理した細胞および対照細胞は健康であるようにみえた。リシ
ンA−CBEL組成物で処理した細胞の約99%は死滅した(1%生存率)。リ
シンAは細胞内へインターナリゼーションされた場合のみ細胞毒であるので、こ
れらの結果は本発明に従ったリシンA−CBEL組成物は細胞毒性化学試薬のイ
ンターナリゼーションが起こったことを示している。実施例6
以下のように実施例2に従った組換え体CBEL−リシンA融合タンパク質の
効果がCR2+ヒトリンパ芽球様(Raji)細胞およびCR2-T(HSB2)
細胞で試験された。1x106の細胞の懸濁液を種々の濃度の精製組換え体融合
タンパク質を含む1mlの培養培地と十分に混合し、37℃で24時間インキュ
ベートした。その後、細胞生存度を実施例5のようにトリパンブルーで細胞を染
色することにより評価した。図3が示しているように、CR2+細胞(より濃い
棒線)は結合体の処置に対して容量応答様式で応答したが、一方CR2-細胞(
より明るい棒線)は処置による影響を受けなかった。50μg/mlの融合タン
パク質濃度では、CR2+ B細胞の生存率は10%未満であり、CR2-細胞の
生存は100%であった。両方の型の細胞をCBEL単独でまたは組換え体リシ
ンA単独で処理しても効果はなく、CR2+細胞に対する組換え体CBEL−リ
シンA融合タンパク質の毒性効果はB細胞上のCR2受容体を経る組換え体タン
パク質のインターナリゼーションにより生じるという結論を支持している。実施例7
実施例7の方法に従った、ただし、生きている細胞のパーセントはテトラゾリ
ウム化合物(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カル
ボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウ
ム、内部塩;MTS)および電子カップリング試薬(フェナジン メトスルフェ
ート;PMS)を用いた比色法により決定された。MTSは細胞によりホルマザ
ンに生物還元され、それは組織培養培地に可溶である。490nmでのホルマザ
ンの吸光度は追加の処理をせずに96ウェルから直接測定することができる。4
90nmでの吸光度により測定されたホルマザン生成物の量は直接培養液中の生
きている細胞の数に比例している。MTSアッセイのための試薬はPromeg
a Corp.(Madison,Wisconsin)から入手できた。この
方法により得られた結果は実質的に実施例6と同一であった。実施例8
実施例3に従った組換え体CBEL−リシンA融合タンパク質の効果は、実施
例6の方法に従ってCR2+ヒトリンパ芽球様(Raji)細胞およびCR2-ヒ
トT(HSB2)細胞で試験された。結果は実施例6の結果と実質的に同じであ
った。実施例9
実施例4に従った組換え体CBEL−リシンA融合タンパク質の効果は、実施
例6の方法に従ってCR2+ヒトリンパ芽球様(Raji)細胞およびCR2-ヒ
トT(HSB2)細胞で試験された。結果は実施例6の結果と実質的に同じであ
った。
本発明に従ったCBEL−化学試薬組成物はCR2発現細胞への化学試薬の標
的特異的送達に用いられ、一般的にはCBELがCR2発現細胞内への組成物の
エンドサイトーシスを誘導する条件下でCR2発現細胞と組成物を接触させる。
化学試薬は組成物がインターナリゼーションを受ける標的細胞上または内で作用
し、活性試薬の所望の効果はCR2+表現型を持つ細胞に制限できる。
例えば、本発明に従ったCBEL−細胞毒素試薬組成物は、選択的にCR2+
B細胞を殺すことでインビボで有効な抗腫瘍剤として用いることができる。好適
には、組成物は全身的投与、典型的には皮下、筋肉内または静脈内注射または腹
腔内投与により患者に投与される。そのような使用のための注射剤は液状溶液ま
たは懸濁剤または注射に先立って液体で液剤または懸濁製剤とするのに適した固
形剤かまたは乳化剤として都合のよい剤形で処方できる。適した添加物には、例
えば水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどが含まれる;
および必要なら、湿潤または乳化剤、緩衝液などのような少量の補助物質を加え
てもよい。
組成物はインビトロまたはインビボで細胞と接触させる。CR2発現細胞は細
胞型の混合集団の亜集団を構成しているであろう(およびほとんどの例でそう予
想される);本発明に従ったペプチドリガンドはCR2発現細胞内への結合物の
CR2特異的エンドサイトーシスを提供できる。
化学試薬は標的細胞において任意の種々の所望の効果を持つことができる。上
記のように、いくつかの特定の有用な態様において、試薬が細胞内へインターナ
リゼーションされた場合(または特にその場合)のみ化学試薬は細胞に有効であ
る。実施例10 B細胞へのCBEL−抗原性試薬の標的化された送達
本発明に従ったCBELおよび抗原を含む組成物はCR2+細胞の免疫応答の
標的化された開始のために温血動物へ投与できる。特に、CBELは細胞内へ抗
原のCR2媒介インターナリゼーションを提供し、標的化細胞での補体活性化の
ための抗体非依存性経路の開始を起こさせることができる。即ち、本発明に従う
と、標的化細胞は、抗原(これに対して細胞は接触したことはない)に対して免
疫応答を惹起するのを誘導することができる。
配列ID番号:2と同定されたアミノ酸配列を持つCBELの化学的結合形成
が活性化され実施例1のようにニワトリ リゾチーム(Sigma Chemi
cal Co.,St.Louis,Missouri)へ結合された。CBE
L−リゾチーム結合体は次にマウスに全身投与された。C3dg CBEL(配
列ID番号:2)はマウスB細胞へ特異的に結合し、結合体のCR2受容体媒介
エンドサイトーシスを誘導する。結合体(結合体のリゾチーム部分に特異的であ
るエピトープを含んでいる)上に運ばれたエピトープに対して標的とされたB細
胞による免疫応答を結合体が惹起する。本実施例の結果はCBEL−リゾチーム
融合タンパク質の構築により実質的に再現することができる。実施例11
ヒトのB細胞白血病の処置法は(a)EBV CBEL(配列ID番号:1)
のようなCBELまたはそれと実質的に相同であるペプチド、およびリシンAの
ような細胞毒素を含む本発明に従った組成物を提供し、および(b)患者に有効
量の組成物を全身的に投与することから成っている。そのような組成物は例えば
、上記実施例3に示したように作製できる。EBV CBELは成熟B細胞を標
的
とし、リシンAはそれが内部に送達されたらどの細胞にとっても細胞毒性である
。組成物が血流に入ってB細胞と接触するように有効量の組成物が全身的に投与
される。CBELはB細胞上のCR2受容体への組成物の結合およびエンドサイ
トーシスによる組成物のインターナリゼーションを起こさせる。リシンA細胞毒
素は続いてリボソームを破壊することにより細胞を殺す。この方法は患者の体内
の悪性B細胞の数を減少させ、それにより疾患の処置において陽性の効果を持っ
ている。実施例12
例えば、紅斑性狼癒または変形関節炎にような自己免疫疾患の処置法は実施例
11の方法に従う。一度B細胞内へ送達されたら細胞毒素は細胞を殺し、従って
自己抗体を産生しているB細胞の数を減少させ、それにより本疾患の処置に陽性
の効果を持っている。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1996年9月11日
【補正内容】
請求の範囲
1. CR2受容体を持たない細胞を含む細胞集団中のCR2受容体を持つ細
胞内への化学試薬の特異的細胞内送達のための組成物であって、本質的に該CR
2受容体へ結合および受容体媒介エンドサイトーシスを誘導できるリガンドおよ
び該リガンドヘ結合された化学試薬のみから成り、ここで該化学試薬は該CR2
受容体を持つ細胞内へ送達された場合に選択された効果を惹起することができる
組成物。
2. 該CR2受容体を持つ細胞がBリンパ球である請求項第1項に記載の組
成物。
3. 該リガンドが配列ID番号:1、配列ID番号:2、配列ID番号:3
、配列ID番号:6、配列ID番号:9の配列のみから成る群より選択されるア
ミノ酸配列を持つペプチドを含む請求項第2項に記載の組成物。
4. 該化学試薬が細胞毒素、形質転換核酸、遺伝子調節物質、標識、抗原お
よび薬剤から成る群より選択される請求項第3項に記載の組成物。
5. さらに該リガンドおよび該化学試薬の間に共有結合で結合されおよび挿
入されたスペーサーを含む請求項第4項に記載の組成物。
6. 該スペーサーが生分解可能である請求項第5項に記載の組成物。
7. 該スペーサーがペプチドを含む請求項第6項に記載の組成物。
8. 該リガンドが本明細書で配列ID番号:1として与えられた配列を持つ
ペプチドでありおよび該化学試薬がリシンAである請求項第7項に記載の組成物
。
9. 該スペーサーが生分解可能ではない請求項第5項に記載の組成物。
10.該組成物がさらに水溶性ポリマー、リポソームおよび粒子状物のみから
成る群より選択される担体を含む請求項第4項に記載の組成物。
11.該担体が水溶性ポリマーでありおよび該組成物が式:
[L−Sa]b−C−[Se−A]f
(式中、LはCR2受容体に結合およびそのエンドサイトーシスを誘導できる該
リガンドであり;Aは化学試薬であり;Sはスペーサーであり;Cは該リガンド
、化学試薬およびスペーサーとの共有結合の形成が矛盾なくできる官能基を持つ
該
水溶性ポリマーであり;aおよびeは0または1であり;およびbおよびfは整
数で少なくとも1である)を持っている請求項第10項に記載の組成物。
12.Cがデキストラン、イヌリン、ポリ(L−リジン)およびメタアクリル
アミド含有ポリマーのみから成る群より選択される請求項第11項に記載の組成
物。
13.CR2受容体を持たない細胞を含む細胞集団中のCR2受容体を持つ細
胞の細胞内へインビトロで化学試薬を特異的に送達する方法であって、以下の工
程を含んでいる:
(a)CR2受容体を持たない細胞を含む細胞集団中のCR2受容体を
持つ細胞内への化学試薬の特異的細胞内送達のための組成物(本質的に該CR2
受容体へ結合および受容体媒介エンドサイトーシスを誘導できるリガンドおよび
該リガンドヘ結合された化学試薬のみからなり、ここで該化学試薬は該CR2受
容体を持つ細胞内へ送達された場合に選択された効果を惹起することができる)
を提供し、および
(b)該リガンドがCR2受容体を持つ細胞上の該CR2受容体へ接触
および結合し、および該組成物のエンドサイトーシスを惹起する条件下で有効量
の該組成物を該細胞集団と接触させる。
14.該CR2受容体を持つ細胞がBリンパ球である請求項第13項に記載の
方法。
15.該リガンドが配列ID番号:1、配列ID番号:2、配列ID番号:3
、配列ID番号:6、および配列ID番号:9のみから成る群より選択されるア
ミノ酸配列を持つペプチドを含む請求項第14項に記載の方法。
16.該化学試薬が細胞毒素、形質転換核酸、遺伝子調節物質、標識、抗原お
よび薬剤のみから成る群より選択される請求項第15項に記載の方法。
17.さらに該リガンドおよび該化学試薬の間に共有結合で結合されおよび挿
入されたスペーサーを含む請求項第16項に記載の方法。
18.該スペーサーが生分解可能である請求項第17項に記載の方法。
19.該スペーサーがペプチドを含む請求項第18項に記載の組成物。
20.該リガンドが本明細書で配列ID番号:1として与えられた配列を持つ
ペプチドでありおよび該化学試薬がリシンAである請求項第19項に記載の方法
。
21.該スペーサーが生分解可能ではない請求項第17項に記載の方法。
22.該組成物がさらに水溶性ポリマー、リポソームおよび粒子状物のみから
成る群より選択される担体を含む請求項第16項に記載の方法。
23.該担体が水溶性ポリマーでありおよび該組成物が式:
[L−Sa]b−C−[Se−A]f
(式中、LはCR2受容体に結合およびそのエンドサイトーシスを誘導できる該
リガンドであり;Aは該化学試薬であり;Sはスペーサーであり;Cは該リガン
ド、化学試薬およびスペーサーとの共有結合の形成が矛盾なくできる官能基を持
つ該水溶性ポリマーであり;aおよびeは0または1であり;およびbおよびf
は整数で少なくとも1である)を持っている請求項第22項に記載の方法。
24.Cがデキストラン、イヌリン、ポリ(L−リジン)およびメタアクリル
アミド含有ポリマーのみから成る群より選択される請求項第23項に記載の方法
。
25.温血動物のCR2受容体を持つ細胞の細胞内へ化学試薬を特異的に送達
する方法であって、以下の工程を含んでいる:
(a)CR2受容体を持たない細胞を含む細胞集団中のCR2受容体を
持つ細胞内への化学試薬の特異的細胞内送達のための組成物(本質的に該CR2
受容体へ結合および受容体媒介エンドサイトーシスを誘導できるリガンドおよび
該リガンドヘ結合された化学試薬のみからなり、ここで該化学試薬は該CR2受
容体を持つ細胞内へ送達された場合に選択された効果を惹起することができる)
を提供し、および
(b)該リガンドがCR2受容体を持つ細胞上の該CR2受容体へ接触
および結合し、および該組成物のエンドサイトーシスを惹起する条件下で有効量
の該組成物を該温血動物に全身的に投与する。
26.該CR2受容体を持つ細胞がBリンパ球である請求項第25項に記載の
方法。
27.該リガンドが配列ID番号:1、配列ID番号:2、配列ID番号:3
、配列ID番号:6、および配列ID番号:9のみから成る群より選択されるア
ミノ酸配列を持つペプチドを含む請求項第26項に記載の方法。
28.該化学試薬が細胞毒素、形質転換核酸、遺伝子調節物質、標識、抗原お
よび薬剤のみから成る群より選択される請求項第27項に記載の方法。
29.さらに該リガンドおよび該化学試薬の間に共有結合で結合されおよび挿
入されたスペーサーを含む請求項第28項に記載の組成物。
30.該スペーサーが生分解可能である請求項第29項に記載の組成物。
31.該スペーサーがペプチドを含む請求項第30項に記載の組成物。
32.該リガンドが本明細書で配列ID番号:1として与えられた配列を持つ
ペプチドでありおよび該化学試薬がリシンAである請求項第31項に記載の組成
物。
33.該スペーサーが生分解可能ではない請求項第29項に記載の組成物。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
C07K 14/705 C07K 17/08
17/08 19/00
19/00 C12P 21/02 C
C12N 15/09 ZNA A61K 37/02 ADS
// C12P 21/02 C12N 15/00 ZNAA
(C12P 21/02
C12R 1:69)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ,UG),
AM,AT,AU,BB,BG,BR,BY,CA,C
H,CN,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB
,GE,HU,IS,JP,KE,KG,KP,KR,
KZ,LK,LR,LT,LU,LV,MD,MG,M
K,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO
,RU,SD,SE,SG,SI,SK,TJ,TM,
TT,UA,UG,UZ,VN