【発明の詳細な説明】
微生物におけるL−アスコルビン酸の生成
発明の分野
本発明は微小藻類を用いたL−アスコルビン酸(ビタミンC)の生産、より詳
細には、低いpH(2.5〜6.0)において微小藻類を用いてL−アスコルビ
ン酸を生産する方法に関する。
発明の背景
L−アスコルビン酸(ビタミンC)は動植物界に広く分布する水溶性ビタミン
である。L−アスコルビン酸(L−AA)はパプリカ、グラジオラスの葉、バラ
の実、柿及び柑橘類等の植物から抽出するか、またはL−キシロース、L−ガラ
クトース及びD−グルコースのいづれか1つから合成し得る。ニューヨーク州に
所在するアカデミック・プレス(Academicpress)から1980年に出版された
植物生化学第3版(The Biochemistry of Plants,Vol.3)の77〜99頁に記
載されているエフ.エイ.ルースによる記述“L−アスコルビン酸:その代謝、
生合成及び作用”にはL−アスコルビン酸の生合成及び供給源が開示されている
。
殆どの種の動物がL−アスコルビン酸を生成するにもかかわらず、人及び他の
霊長類、テンジクネズミ、オオコウモリ、数種類の鳥、並びにギンザケ、ニジマ
ス及び鯉等の魚はL−アスコルビン酸を生成できない。これらの動物は壊血病を
予防するためにL−アスコルビン酸の摂取源を必要とする。魚類におけるL−ア
スコルビン酸の不足は脊柱側弯症、脊柱前湾症、体重増加の鈍化、細菌に対する
感染の増加、皮膚の黒色化、ヒレの腐食及び軟骨生成量低下等の各種障害を引き
起こす。
L−アスコルビン酸は経済的及び効果的な生産方法を要する大量消費化学物質
である。各種の藻類がL−アスコルビン酸を生成する(1977年に発行された
古生微生物学(Arch.Microbiol.)第112刊の57〜59頁に記載されている
アーロンソンの記述と、1982/1983年に発行された植物科学通信(plan
t sci.Letters)第28刊の299〜305頁に記載されているレンストローム
の記述とを参照)。微小藻類は炭素源利用効率が低く、かつ低い濃度のL−アス
コルビン酸を生成する。このため、微小藻類を用いたL−アスコルビン酸の生産
は大量生産には不適切とされていた。
スカットラッドによる米国特許第5,001,059号はL−アスコルビン酸
を大量生産すべく微小藻類のうちのクロレラ・ピレノイドサ種(speciesChlorel
la pyrenoidosa)を利用した方法を開示している。この方法はL−アスコルビン
酸の濃度及び炭素源の利用効率を大きく改善した点において、微小藻類を用いた
L−アスコルビン酸の生産における大きな進歩といえる。しかし、L−アスコル
ビン酸の連続生産に必要とされる比較的高いpH(6.5〜7)では、細胞外L
−アスコルビン酸は細胞の新陳代謝及びL−アスコルビン酸生成に必要な空気に
より容易に酸化される。従って、微小藻類を用いて低いpH(6.5未満)でL
−アスコルビン酸を生産する効果的な方法が必要である。
発明の概要
本発明はL−アスコルビン酸の生産方法に関する。本発明の生産方法はプロト
セカ属の生物及びクロレラ・プロトセコイデス種(species Chlorellaprotothec
oides)の生物からなるグループから選択された生物を約6.0未満のpHを有
する発酵培養基中で培養することを含む。更に、本発明の生産方法はL−アスコ
ルビン酸を発酵培養基から回収することを含む。別の実施の形態は利用可能な酸
素源及び細胞外L−アスコルビン酸を有する発酵培養基中において前記の生物を
培養することによりL−アスコルビン酸を生成し、次いで同L−アスコルビン酸
を発酵培養基から回収する方法を含む。好ましい生物はプロトセカ属の生物であ
り、特に好ましい生物としてはプロトセカ・モリフォーミス種(species Protot
heca moriformis)及びプロトセカ・ゾフィ種(species
prototheca zopfii)の生物が挙げられる。本発明の方法は高濃度の細胞外L−
アスコルビン酸を生産可能である。この結果、殆どのL−アスコルビン酸を細胞
内において分離する方法と比較して更に簡単にL−アスコルビン酸の回収が可能
である。この意味において本発明の方法は特に効果的である。本発明の方法のp
Hでは、生成された細胞外L−アスコルビン酸は顕著な分解を示さない。このた
め、本発明の方法は利用可能な酸素源が存在する場合にも実施可能である。
細胞外L−アスコルビン酸の回収は、イオン交換、クロマトログラフィー、抽
出、膜による分離、逆浸透、蒸留、化学誘導プロセス及び結晶化を含む各種の方
法を用いて実施し得る。更に、本発明の方法は細胞内L−アスコルビン酸の回収
を含み得る。1つの実施の形態では、細胞を発酵培養基から取出し、次いで細胞
外L−アスコルビン酸を細胞を含まない発酵培養基から回収することにより、L
−アスコルビン酸を分離された細胞から独立して回収する。
本発明の別の実施の形態はL−アスコルビン酸を生成する微小藻類(以下、L
−アスコルビン酸生成微小藻類と称する)と、発酵培養基とを有する発酵カルチ
ャーを含む。本実施の形態において、発酵培養基は細胞外L−アスコルビン酸及
び利用可能な酸素源を有する。発酵カルチャーの好ましい実施の形態において、
微小藻類はプロトセカ属の生物及びクロレラ・プロトセコイデス種の生物からな
るグループから選択し得る。更に、発酵カルチャーの好ましい実施の形態は約6
未満、好ましくは約5.5未満、更に好ましくは約5.0未満のpHを有する発
酵カルチャーを含む。
発明の詳細な説明
微生物 低いpHにおけるL−アスコルビン酸の生産に好ましい微生物はプロ
トセカ属の微小藻類、特にプロトセカ・ゾフィ種及びプロトセカ・モリフォーミ
ス種の微小藻類と、クロレラ・プロトセコイデス種の微小藻類とが挙げられる。
本発明の方法はプロトセカ・ゾフィの菌株であるBTR 1254と、プロトセ
カ・モリフォーミスの菌株であるBTR 1385(ATCC75669)と、
クロレラ・プロトセコイデスの菌株であるBTR902(ATCC 75667)
とを使用して立証された。プロトセカ・ゾフィの菌株であるUTEX 1438は
高いpHにおいてL−アスコルビン酸を生成可能であり、さらには低いpHにお
いてもL−アスコルビン酸を生成する。
プロトセカ・ゾフィの菌株であるUTEX 1438はアメリカ合衆国、787
13−7640 テキサス州、オースチンに所在するテキサス大学オースチン校
植物学部の藻類カルチャー・コレクションから入手した。現在、カルチャーは1
つ当たり25.00米ドルで一般に分け与えられている。プロトセカ・ゾフィの
菌株であるBTR 1254と、プロトセカ・モリフォーミスの菌株であるBTR
1385と、クロレラ・プロトセコイデスの菌株であるBTR 902とは自然か
ら採取した。プロトセカ・モリフォーミスBTR 1385(ATCC 7566
9)と、クロレラ・プロトセコイデスBTR 902(ATCC 75667)と
はアメリカ合衆国、20852 メリーランド州、ロックビル、パークローン・
ドライブ 12301に所在するアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクショ
ンへ(American Type Culture Collection; 略してATCC)1994年2月9
日に預けられた。
培養基 培養基は炭素源、各種の塩類、及び一般的に微量金属を含む。炭素源
は本発明の微生物の発酵に適する任意の炭素源であり得る。特に、炭素源はエタ
ノール、グリセロール及びグルコースから選択可能である。このうちグルコース
が炭素源として好ましい。グルコース源はグルコースと、糖密及びコーン・シロ
ップ等、グルコースへ変換し得る任意の炭化水素とのうちのいづれか一方であり
得る。
細胞成長を阻害または制限することなく同細胞成長を最適に促進すべく、細胞
成長を抑制及び制限しない量のグルコース源を発酵槽内に使用する必要がある。
グルコース源の最適濃度は微生物間で異なり得る一方、同最適濃度は試験によっ
て容易に決定し得る。グルコース源の濃度を5〜30g/リットルの範囲内に維
持する適切なグルコース添加はグルコースによる細胞成長の阻害を回避する一方
で同細胞成長を促進するのに常には十分である。
他の添加物がグルコース源とともに最初に存在し、かつ同添加物をその濃度を
維持すべく培養基中へ連続的に添加し得ることが望ましい。これらの添加物は燐
酸ナトリウム及び燐酸カリウム等のアルカリ金属燐酸塩、特に第2燐酸ナトリウ
ム及び第1燐酸カリウムを含む。第2燐酸ナトリウムの総量は一般的に約1〜2
g/リットル、好ましくは約1〜1.5g/リットル、より好ましくは約1.3
g/リットルである。発酵槽内に最初に存在する第2燐酸ナトリウムの量は添加
する第2燐酸ナトリウムの総量の一般的には約35〜50%、より一般的には約
40〜45%である。第1燐酸カリウムの総量は一般的には約1.5〜3g/リ
ットル、より一般的には約2〜2.5g/リットルである。発酵槽内に最初に存
在する第1燐酸カリウムの量は総量の一般的に約40〜50%、より一般的には
約45〜50%である。
クエン酸三ナトリウム等の生物学的に許容可能なキレート剤の添加総量は約0
.8〜1.2g/リットル、一般的には約1.0g/リットルが効果的である。
生物学的に許容可能な鉱酸は微量金属を溶液中に維持し、かつ窒素源として一般
的に使用されるアンモニアを中和するために添加される。従来、濃硫酸は約1〜
2ml/リットル、一般的には約1.2〜1.5ml/リットルにて使用される
。
マグネシウムは硫酸塩等の生理学的に許容可能な塩として約0.1〜0.2g
/リットル、好ましくは約0.1〜0.15g/リットル添加される。鉄及び銅
は細胞外L−アスコルビン酸の分解を促進し、これにより培養基中への細胞外L
−アスコルビン酸の蓄積を防止する。このため、これらの金属の使用量は制限さ
れている。鉄(+2)は最初に約2〜5mg/リットル、好ましくは約3〜4m
g/リットル存在し、同鉄(+2)はその後の添加物には含まれない。銅は一般
的に比較的微量、即ちグルコース1g当たり1〜50g存在する。微量金属溶液
(表3参照)の添加総量は約10〜15ml/リットル、一般的には約12〜1
4ml/リットルである。微量金属溶液はグルコース1gに対して0.1〜0.
2ml添加される。表1に示す溶液は発酵中に添加することが効果的である(溶
液の準備は表5に示す)。多数の塩類は一塩基または二塩基として示しているが
、これは便宜上のものであり、塩類の種類はこれらに限定されない。これらの化
合物は緩衝剤であるため、プロトネーション範囲、即ち陽子の付加の範囲は培養
基のpHにともなって変化する。外来微生物の侵入を防止すべく無菌添加(Asep
tic addition)を実施する。
発酵 接種前、培養基は所望の温度、一般的には30〜40℃、好ましくは約
35℃まで加熱される。適切な成長期の後で高い細胞密度を形成するために十分
な量の所望の微生物の活発に成長するカルチャーを培養基へ接種する。一般的な
初期細胞密度は細胞の乾燥重量として0.1〜0.5g/リットル、より一般的
には0.15〜0.4g/リットルである。細胞を少なくとも約5g/リットル
、好ましくは約10〜80g/リットル、更に好ましくは40〜60g/リット
ルの細胞密度まで成長させる。これは一般的に10〜40時間、より一般的には
15〜25時間を要する。
グルコース総量の約15〜30%、一般的には20〜25%が最初に添加され
る。グルコース濃度が低下した場合、グルコースの総濃度を30g/リットル未
満に維持しながらグルコース及び塩類の濃縮液(表1参照)の約20%アリコー
トを添加することによりグルコースを必要に応じて補充する。上澄み液、即ち培
養基のうちの細胞をふくまない成分中に含まれるグルコースの濃度を監視すべく
グルコース酸化酵素試験及び高圧液体クロマトグラフィー等の従来の技術を使用
し得る。少量の泡形成防止剤を発酵中に添加し得る。
窒素源として利用するとともに、pHを制御するためにアンモニアを添加する
。この結果、培養基中の窒素量は培養基の酸性度及び緩衝能力に基づいて決定さ
れる。アンモニアは発酵槽内へ案内する空気または他の酸素源の流れに気体アン
モニアの流れを混合することにより効果的に培養基へ添加される。
培養基のpHはアンモニアまたは無機塩基を必要に応じて添加することにより
所望の限界内で制御し得る。pHは酸化による細胞外L−アスコルビン酸の顕著
な分解を引き起こすpHより更に低く維持することが望ましい。本明細書中にお
いて、顕著な分解とは生成された細胞外L−アスコルビン酸の約20%を越す分
解、より詳細には約10%を越す分解、さらに詳細には約5%を越す分解を指す
。好ましい実施の形態では、培養基のpHは約pH6.0未満、より好ましくは
約pH5.5未満、最も好ましくは約pH5.0未満に維持される。発酵培養基
のpHを前記のパラメータ内に維持することにより、L−アスコルビン酸の生産
に関する大きな効果を実現し得る。低いpHでは、生成された細胞外L−アスコ
ルビン酸の分解量は低減する。従って、L−アスコルビン酸の高い生産性を実現
し得る。当業者は細胞外L−アスコルビン酸が細胞内L−アスコルビン酸より容
易に回収し得ることを認識可能である。更に、L−アスコルビン酸の商業的な生
産方法は、代謝によるL−アスコルビン酸の生成に対してフィードバック阻害を
引き起こし得る非常に高い細胞内L−アスコルビン酸濃度を要することなく開発
し得る。このため、L−アスコルビン酸の細胞外生成は更に高い生産性を提供す
る方法の開発を可能にする。
本発明の1つの実施の形態では、初期の細胞成長期において、pHは約3.0
〜6.0、好ましくは約3.5〜5.0、更に好ましくは約3.5〜4.5に制
御される。細胞密度が約10g/リットルを越えた際(一般的には約10〜25
時間後)、pHは2.5〜5.0、好ましくは2.5〜4.0まで下げられる。
これはアンモニアの添加を一時的に停止することにより効果的に行われる。培養
基のpHは細胞が生成した酸によって低下する。培養基のpHが所望のpHに到
達した際、アンモニアの添加を再開する。
pHを前記のパラメータ内へ維持する本発明の発酵プロセスにより、細胞外ア
スコルビン酸は酸化によって分解されることなく発酵培養基中に存在可能である
。更に、酸化によるL−アスコルビン酸の顕著な分解をともなうことなく高い濃
度の細胞外L−アスコルビン酸を形成すべく同L−アスコルビン酸を発酵培養基
中に蓄積可能である。この結果、発酵プロセスは以下に更に詳述するように酸素
の存在を必要とする一方、同発酵プロセスは効果的な実施が可能であり、利用可
能な酸素源が存在する場合にも大量の細胞外アスコルビン酸を生産し得る。利用
可能な酸素源は空気または酸素ガスに限定されるものではなく、発酵環境下にお
いて酸素へ変換し得る他の化学物質を含む。
初期の細胞成長期における細胞成長と、新陳代謝及びL−アスコルビン酸生成
とを維持すべく十分な酸素を発酵中に培養基へ添加する必要がある。酸素は培養
基を攪拌し、かつ曝気することにより同培養基に対して効果的に供給される。培
養基の攪拌及び曝気を実施すべく掻混ぜまたは振揺等の従来の方法を使用し得る
。培養基中の酸素濃度は飽和値(即ち、大気圧下において約30〜40℃に維持
された培養基中における酸素の溶解度)の20〜100%であることが好ましい
。しかし、培養基中の酸素濃度は発酵に対する悪影響を生じない場合、更に低い
濃度へ変更してもよい。培養基の酸素濃度は酸素探針電極(oxyqen probeelectr
ode)等を使用した従来の方法で監視し得る。純粋酸素ガスと、窒素ガス以外の
不活性ガスによって希釈された酸素ガスとに代表される他の酸素源を使用し得る
。
発酵はL−アスコルビン酸の生成が実質的に停止するまで継続され、同L−ア
スコルビン酸の生成は細胞外L−アスコルビン酸の蓄積によって検証される。発
酵総時間は一般的に24〜120時間である。
一般的に、本発明の方法において生成されたL−アスコルビン酸の殆どは細胞
外L−アスコルビン酸である。細胞は濾過または遠心分離等の従来の方法により
培養基から取出され、L−アスコルビン酸は細胞を含まない上澄み液からイオン
交換、クロマトログラフィー、抽出、結晶化、膜による分離、逆浸透、蒸留及び
化学誘導プロセス等の従来の方法を用いて回収される。化学誘導プロセスとは、
回収が容易であることと、L−アスコルビン酸より更に安定していることのうち
の少なくともいづれか一方の特性を有する別の化学物質に対して、生成されたL
−アスコルビン酸を反応させる工程を含む方法を指す。例えば、ケーリーによる
米国特許第4,595,659号は従来のイオン交換樹脂による吸着及び溶離を
行った後、脱色、蒸発及び結晶化を行うことによりL−アスコルビン酸を水性発
酵培養基から分離することを開示している。1967年に発行された農業生化学
第31刊(Aqr.Biol.Chem.31)の346〜353頁に記載されたケイ.シミ
ズの記述は陰イオン交換樹脂からなる連続するマルチベッドを用いた抽出システ
ムにより、構造的に類似するイソアスコルビン酸を発酵培養基から分離すること
を開示している。
本発明の方法に基づくL−アスコルビン酸の回収は、連続プロセス、半連続プ
ロセス及びバッチ・プロセスのうちのいづれか1つを含み得る。連続プロセス及
び半連続プロセスでは、細胞外L−アスコルビン酸は発酵中に発酵容器から取り
除かれるため、細胞外L−アスコルビン酸の濃度はバッチ回収プロセスにおける
細胞外L−アスコルビン酸の濃度ほど高くない。事実、連続プロセスまたは半連
続プロセスは、L−アスコルビン酸の細胞外濃度を非常に低い濃度、即ち検出不
能に近い濃度に維持した状態で行われ得る。
前記のように、本発明の方法は大量の細胞外L−アスコルビン酸の生産を可能
にする。特に、本発明の方法はL−アスコルビン酸の総量のうちの少なくとも約
2%、より好ましくは少なくとも約10%、最も好ましくは少なくとも約20%
を細胞外L−アスコルビン酸とすべく細胞外L−アスコルビン酸を生産する。本
発明により、1mg/リットル、より好ましくは約10mg/リットル、更に好
ましくは約20mg/リットルを越す量の細胞外L−アスコルビン酸濃度の形成
が可能である。
本発明の別の実施の形態はL−アスコルビン酸生成微小藻類及び発酵培養基を
有する発酵カルチャーを含む。この実施の形態において、発酵培養基は細胞外L
−アスコルビン酸及び利用可能な酸素源を含む。L−アスコルビン酸生成藻類は
前記の藻類と同一である。同様に、細胞外L−アスコルビン酸を含む発酵培養基
の成分は前記の成分と同じであり得る。
工業的用途
本発明の方法は低いpHを有する発酵培養基(2.5〜6.0)中での発酵に
よりL−アスコルビン酸を生産する。このpHにおいて、L−アスコルビン酸は
空気によって容易に酸化されない。この結果、生成されたL−アスコルビン酸が
細胞内L−アスコルビン酸である必要はない。培養基中に蓄積されるL−アスコ
ルビン酸は培養基中の酸素によって容易に酸化されることがない。L−アスコル
ビン酸(ビタミンC)は壊血病を予防すべく栄養補助品として使用し得る。L−
アスコルビン酸と、アスコルビル・パルミテート(Ascorbyl palmitate)等のL
−アスコルビン酸の幾つかの誘導体とは酸化防止剤として食品に使用し得る。例1
この例はプロトセカが高いpHにおいてL−アスコルビン酸(L−AA)を生
成し得ることを示す。生成されたL−アスコルビン酸の殆どは細胞内L−アスコ
ルビン酸である。
培養基準備 純水600ml中に0.27gの第1燐酸カリウム及び0.23
gの第2燐酸ナトリウムを溶解した溶液は1リットルのガラス製発酵槽内におい
て加熱滅菌され、同ガラス製発酵槽は培養基を攪拌し、かつ同培養基中へ栄養成
分を供給する手段と、酸素源と、以下に詳述する他の要素とを有する。培養基の
冷却後、1.9g/リットルの濃度の硫酸第一鉄七水和物溶液5mlを0.2マ
イクロメータの無菌フィルタを通じて培養基へ添加した。
グルコース及び塩類の濃縮物 表2に示す成分は滅菌し、次いで冷却後に混合
されて600mlの最終容量へ調製した。
微量金属溶液 表3に示す成分及び濃塩酸20mlは純水を用いて1リットル
に調製した。
培養基 グルコース及び塩類の濃縮液20mlを発酵槽内の燐酸塩培養基に対
して添加した。
細胞成長及びL−アスコルビン酸生成 培養基を加熱して35℃に維持した。
攪拌は300rpmで開始した。空気は0.1リットル/分の割合で培養基中へ
分散され、pHは空気の流れに混合したアンモニアを用いて6.9に調整した。
乾燥重量にて約0.3g/リットルの初期細胞密度を形成すべく培養基に対して
活発に成長するカルチャーを接種した。
細胞は約20〜50g/リットル(乾燥ベース)の細胞密度まで成長した。p
Hは気体アンモニアを添加することにより6.5〜7.0に制御した。発酵中に
おける余剰溶存酸素量を空気飽和値の20〜90%に維持すべく、攪拌は450
rpmにて開始し、次いで800rpmまで増加させた。曝気は0.2リットル
/分にて開始し、次いで0.6リットル/分まで増加させた。上澄み液中の利用
可能なグルコース量はグルコース酸化酵素試験または高圧液体クロマトグラフィ
ーによって監視した。グルコース濃度が低下した際、グルコースの総濃度を30
g/リットル未満に維持しながらグルコース及び塩類の濃縮溶液の約20%アリ
コートを添加することによりグルコースの補充を行った。全てのグルコース及び
塩類の濃縮物を添加し、かつ同濃縮物を消耗した際、培養基をL−アスコルビン
酸について分析した。
L−アスコルビン酸(L−AA)を確定すべく使用した方法は1983年に発
行された分析生化学(Analytical Biochemistry)第130刊の191〜198
頁においてグラン及びルースが開示している。同方法は7.8x300mm有機
酸分析カラムであるHPX−87(カリフォルニア州リッチモンドに所在するバ
イオ−ラド研究所(Bio-Rad Laboratories)から入手)を使用するイオン交換処
理である。条件としては、移動相としての0.013Mの硝酸、0.8ml/分
の流量、1500psig(1.04x108/ダイン/cm2)の圧力、及び2
45nmにおける吸光度の測定による検出を使用した。このシステムはアスコル
ビン酸のL−異性体及びD−異性体を識別する。
細胞密度の乾燥重量を決定すべく、カルチャーから培養基サンプル全体を取り
出し、このうち5mlを4000 x gにて5分間遠心分離した。次いで、遠心分離
によって得られたペレットを純水で一度洗浄し、風袋を計量したアルミニウム計
量皿内へ流し込んだ。細胞は60℃において8〜24時間乾燥させ、さらに10
5℃にて1時間乾燥させた。細胞重量は差から求めた。結果を表4に示す。
例2
この例は低いpH(3.5〜5.0)におけるプロトセカ・ゾフィによるL−
アスコルビン酸の生成を示す。測定可能な溶存酸素が培養基中に存在したにもか
かわらず大量のL−アスコルビン酸が細胞外培養基中において生成された。以下
に示す点を除いて例1に示す手順を実行した。発酵は1リットル発酵槽と同じ構
造をなす14リットルの発酵槽内において1リットル発酵槽の場合と同様の制御
のもとで実施した。使用した濃縮物を表5に示す。
培養基準備 純水7.2リットル中に第1燐酸カリウム3.9g及び第2燐酸
ナトリウム3.3gを溶解した溶液は14リットルのガラス製発酵槽内において
加熱滅菌された。培養基の冷却後、6.0g/リットルの濃度の硫酸第1鉄七水
和物27mlを0.2マイクロメータの無菌フィルタを通じて培養基へ添加した
。
細胞成長及びL−アスコルビン酸生成 培養基は表6に示す成分の他に2mg
/リットルのチアミン塩酸塩を含み、同チアミン塩酸塩は発酵槽を加熱滅菌して
冷却した後で培養基に無菌状態で添加した。温度は30℃であった。乾燥重量に
て約0.3g/リットルの初期細胞密度を形成すべく培養基に対してプロトセカ・
ゾフィの菌株であるBTR 1254の活発に成長するカルチャーを接種した。
細胞は乾燥重量にて56g/リットルの細胞密度まで成長した(この際の成長
速度は0.20h-1)。pHは気体アンモニアの添加により約3.5〜5.0に
維持した。攪拌は100rpmにおいて開始し、次いで800rpmまで増加さ
せた。曝気は空気を開始時に2.0リットル/分で加え、その後6.0リットル
/分まで増加させることにより実施した。条件及び分析結果を表6に示す。
例3
この例は低いpH(4.0〜5.0)におけるプロトセカ・モリフォーミスに
よるL−アスコルビン酸の生成を示す。培養基中に測定可能な酸素が存在したに
もかかわらず大量のL−アスコルビン酸が細胞外培養基中において生成された。
以下に示す点を除いて例2の手順を実行した。
細胞成長及びL−アスコルビン酸生成 培養基は表1に示す成分の他に2mg
/リットルのチアミン塩酸塩を含み、同チアミン塩酸塩は発酵槽を加熱滅菌して
冷却した後で培養基に無菌状態で添加した。温度は30℃であった。
乾燥重量にて約0.3g/リットルの初期細胞密度を形成すべく培養基に対し
てプロトセカ・モリフォーミスの菌株であるATCC 75669の活発に成長
するカルチャーを接種した。細胞は乾燥重量にて42g/リットルの細胞密度ま
で成長した(この際の成長速度は0.23h-1)。pHは気体無水アンモニアを
添加することにより最初の22時間の間は約5.0に維持した。次いで、アンモ
ニア添加を中止した。pHが4.0まで低下した際、アンモニア添加を再開した
。pHは残りの発酵時間中、4.0に維持した。結果を表7に示す。
例4
この例は低いpH(3.5〜5.0)におけるクロレラ・プロトセコイデスによ
るL−アスコルビン酸の生成を示す。培養基中に測定可能な酸素が存在したにも
かかわらず大量のL−アスコルビン酸が細胞外培養基中において生成された。以
下に示す点を除いて例3の手順を実行した。
細胞成長及びL−アスコルビン酸生成 乾燥重量にて約0.3g/リットルの
初期細胞密度を形成すべく培養基に対してクロレラ・プロトセコイデスの菌株で
あるATCC 75667の活発に成長するカルチャーを接種した。細胞は乾燥
重量にて37g/リットルの細胞密度まで成長した(この際の成長速度は0.1
6
h-1)。pHは気体無水アンモニアを添加することにより最初の18時間の間は
約5.0に維持された。次いで、アンモニア添加を中止した。pHが3.5まで
低下した際、アンモニア添加を再開した。pHは残りの発酵時間中、3.5に維
持された。結果を表8に示す。
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フロントページの続き
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C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
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TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ,UG),
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,GE,HU,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,
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US,UZ,VN
(72)発明者 ラニング、ジェフリー エー.
アメリカ合衆国 54220 ウィスコンシン
州 マニトウォク サウス セブンス ス
トリート 1035
(72)発明者 スカートラド、トーマス ジェイ.
アメリカ合衆国 54220 ウィスコンシン
州 マニトウォク サウス セブンス ス
トリート 1035