JPH1043059A - 調理器用耐熱セラミックプレートおよびその製造方法 - Google Patents

調理器用耐熱セラミックプレートおよびその製造方法

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JPH1043059A
JPH1043059A JP20336196A JP20336196A JPH1043059A JP H1043059 A JPH1043059 A JP H1043059A JP 20336196 A JP20336196 A JP 20336196A JP 20336196 A JP20336196 A JP 20336196A JP H1043059 A JPH1043059 A JP H1043059A
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JP
Japan
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glaze
ceramic plate
heat
resistant ceramic
baking step
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Application number
JP20336196A
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English (en)
Inventor
Tsuguhiko Yamada
次彦 山田
Norihito Sakamoto
憲仁 坂本
Makoto Minoura
誠 箕浦
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Noritake Co Ltd
Noritake Higama KK
Original Assignee
Noritake Co Ltd
Noritake Higama KK
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 釉薬の表面が平滑であり且つピンホール気孔
のない調理器用耐熱セラミックプレートを提供する。 【解決手段】 低熱膨張率の素地12の表面積のうちの
一部の面積(下面)を除く第1の釉薬14は、微結晶を
有するガラス質であって再溶融された平滑表面を備えて
いるので、調理器用耐熱セラミックプレート10の上面
となる第1の釉薬の表面が平滑となり、その上に付着し
た食品の焦げ付きを容易に除去することができる。ま
た、第2の釉薬16は、上記第1の釉薬14と略同様の
材料組成であるにもかかわらず、その第1の釉薬14に
対して微結晶が少なく或いは小さいことから、第1の釉
薬14の焼成時には素地12の下面が開放された状態で
第1の釉薬14が溶融され、第2の釉薬16の焼成時に
は、第1の釉薬の焼成条件よりは最高温度が低く短時間
で焼成されるので、第1の釉薬14および第2の釉薬1
6にピンホールのない調理器用耐熱セラミックプレート
10が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電磁調理器、ガス調理
器などの調理器において特に急熱、急冷環境下で好適に
用いられる耐熱セラミックプレートおよびその製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】たとえば、電子レンジ、オーブンレンジ
などの調理器内、或いはガス加熱調理器の天板、誘導加
熱調理器の天板などに用いられる調理器用耐熱セラミッ
クプレートは、冷凍保存或いは冷蔵保存された水分を多
量に含む食品を、その保存温度から短時間に300°C
付近まで加熱させることがある。このため、上記耐熱セ
ラミックプレートには、急激な温度変化に耐え得る耐熱
衝撃性だけでなく、吹きこぼれなどにより付着した食品
の焦げ付きを一般的な洗浄作業によって除去することが
可能な程度の表面平滑性が望まれる。
【0003】上記耐熱セラミックプレートの一種に、ス
ポジューメン、ペタライト、ユークリプタイトなどのリ
チウムを含有するリチア系セラミック質から成る素地の
上に、非晶質(ガラス質)の釉薬を施した調理器用耐熱
セラミックプレートが提案されている。このようにすれ
ば、リチア系セラミック質の素地はその熱膨張率を3×
10-6以下とすることができるため、耐熱セラミックプ
レートとしての耐熱衝撃性は十分に達成することができ
るからである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような低熱膨張率の素地の上に施される釉薬として、一
般的な非結晶性(ガラス質)の釉薬を用いる場合には、
耐熱セラミックプレートとしての表面平滑性を十分に満
足することができるけれども、そのような非結晶性の釉
薬では、上記素地と同等或いはそれ以下の熱膨張率を得
ることが極めて困難であり、熱膨張差に起因して貫入と
称される微細なクラックが発生することが避けられなか
った。これに対し、釉薬(ガラス質)の内部でβユーク
リプタイト固溶体、βスポジューメン固溶体などの低熱
膨張率の微結晶(Li2O Al2O3 6SiO2)を多数析出させる
ことにより、結果的に全体を低熱膨張率とした結晶性の
釉薬すなわち結晶釉を、前記素地の上に施すことが考え
られる。これによれば、上記微細なクラックの発生は防
止されるが、上記微結晶が表面にも析出してマット状の
凹凸表面となることから十分な平滑性が得られず、付着
した食品の焦げ付きを容易に除去することができないと
いう欠点があった。
【0005】また、上記耐熱セラミックプレートにおい
て、低熱膨張率の素地の上に釉薬を溶かし着けてガラス
質化するに際しては、締焼きされた上記素地の表面にス
プレイなどによって釉薬材料を付着させ(施釉)た後
に、その締焼きの焼成温度よりも低く且つ釉薬を溶融さ
せ得る温度で釉焼が行われる。上記素地はたとえば2乃
至3%程度の吸水率があることから、釉薬が溶融した後
においても素地内に存在する水やガスが脱出することに
関連して、耐熱セラミックプレートの表層を構成する釉
薬にピンホール状の気孔が発生し易く、製品の歩留りを
低下させていた。
【0006】本発明は以上の事情を背景として為された
ものであり、その第1の目的とするところは、釉薬の表
面が平滑であり且つピンホール気孔のない調理器用耐熱
セラミックプレートを提供することにある。また、第2
の目的とするところは、釉薬の表面が平滑であり且つピ
ンホール気孔のない調理器用耐熱セラミックプレートの
製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための第1の手段】かかる第1の目的
を達成するための本発明の調理器用耐熱セラミックプレ
ートの要旨とするところは、熱膨張率が3×10-6以下
である低熱膨張率の素地の上に釉薬が施された調理器用
耐熱セラミックプレートであって、前記素地の表面積の
うちの一部の面積を除く第1の釉薬は、微結晶を有する
ガラス質であって再溶融された平滑表面を備え、その一
部の面積における第2の釉薬は、上記第1の釉薬と略同
様の材料組成であるがその第1の釉薬に対して微結晶が
少なく或いは小さいことにある。
【0008】
【第1発明の効果】このようにすれば、低熱膨張率の素
地の表面積のうちの一部の面積を除く第1の釉薬は、微
結晶を有するガラス質であるが再溶融された平滑表面を
備えているので、調理器用耐熱セラミックプレートの表
面すなわち第1の釉薬の表面が平滑となり、その上に付
着した食品の焦げ付きを容易に除去することができる。
また、第2の釉薬は、上記第1の釉薬と略同様の材料組
成であるにもかかわらず、その第1の釉薬に対して微結
晶が少なく或いは小さいことから、第1の釉薬の焼成と
は別にその後においてその焼成条件よりは低火度で第1
の釉薬の再溶融のための焼成などにおいて焼成されたも
のである。したがって、第1の釉薬の焼成時には素地の
表面積のうちの一部の面積が開放された状態で第1の釉
薬が溶融されるので、素地内の水分やガスの逃げなどに
起因する第1の釉薬のピンホールの発生が好適に解消さ
れるとともに、第2の釉薬の焼成時には、第1の釉薬の
焼成条件よりは最高温度が低く短時間で焼成されるの
で、この第2の釉薬の焼成時にも第1の釉薬および第2
の釉薬にピンホールが発生することが好適に解消され、
ピンホールのない調理器用耐熱セラミックプレートが得
られる。さらに、調理器用耐熱セラミックプレートの全
面が釉薬によって覆われることにより、洗浄後の食品の
残留やそれに起因する細菌の繁殖が好適に防止されると
ともに、水分が素地内部に浸透しないので、急速加熱に
起因する水蒸気破裂が好適に防止される。
【0009】
【第1発明の他の態様】ここで、好適には、前記第1の
釉薬は、その表面の再溶融により、25以上の光沢度、
或いは、十点平均粗さRz が20μ以下の表面粗度を備
えたものである。このようにすれば、第1の釉薬の表面
が一層平滑となり、その上に付着した食品の焦げ付きを
容易に除去することができる。
【0010】また、好適には、前記低熱膨張率の素地
は、スポジューメン系セラミックス、ペタライト系セラ
ミックス、ユークリプタイト系セラミックスから選択さ
れたリチア系セラミックス材料から構成されたものであ
る。このようにすれば、熱膨張率が3.0×10-6以下
とされるので、耐熱性、耐熱衝撃性に優れた調理器用耐
熱セラミックプレートが得られる。
【0011】また、好適には、上記第1の釉薬は、βユ
ークリプタイト固溶体、βスポジューメン固溶体、又は
それらの混合体(β石英を含む場合がある)の微結晶
(Li2OAl2O3 6SiO2)をガラス質内に多数含むものであ
る。その微結晶は析出させられるものでもよいが、結果
的にガラス質内に含まれればよく、当初の釉薬材料内に
混合させられてもよい。前記第2の釉薬は、第1の釉薬
と同様の材料組成であるが、上記微結晶の数が少ない
か、大きさが小さいか、或いは微結晶を殆ど有しないも
のである。このようにすれば、第2の釉薬が第1の釉薬
の焼成の後でそれよりも低火度で焼成可能となるので、
ピンホールの発生が好適に防止される。
【0012】
【課題を解決するための第2の手段】また、前記第2の
目的を達成するための調理器用耐熱セラミックプレート
の製造方法の要旨とするところは、熱膨張率が3×10
-6以下の低熱膨張率の素地の上に釉薬が施された調理器
用耐熱セラミックプレートの製造方法であって、(a)締
焼きされた前記素地の表面に、その表面積のうちの一部
の面積を残して、結晶性釉薬材料を施釉する施釉工程
と、(b) 前記素地の焼成温度よりも低く且つその素地の
上の釉薬材料を溶融させる最高温度と、前記釉薬内に微
結晶を析出させる冷却速度とを有する焼成条件下で、前
記施釉工程により一部の面積を残して施釉された素地を
焼成する第1釉焼工程と、(c) 前記釉薬の表面を溶融さ
せ得る最高温度とその第1釉焼工程よりも高い冷却速度
とを有する焼成条件で、第1釉焼工程により再焼成され
た素地をさらに焼成することにより、その素地上の釉薬
の表面を再溶融により平滑化する第2釉焼工程とを、含
むことにある。
【0013】
【第2発明の効果】このようにすれば、第1釉焼工程で
は、前記低熱膨張率の素地の焼成温度よりも低く且つそ
の素地の上の釉薬材料を溶融させる最高温度と、前記釉
薬内に微結晶を析出させる冷却速度とを有する焼成条件
下で、前記施釉工程により一部の面積を残して施釉され
た素地が焼成された後、第2釉焼工程では、前記釉薬の
表面を溶融させ得る最高温度と第1釉焼工程よりも高い
冷却速度とを有する焼成条件で、その第1釉焼工程にて
再焼成された素地をさらに焼成することにより、その素
地上の釉薬の表面が再溶融により平滑化される。したが
って、本発明方法により製造された調理器用耐熱セラミ
ックプレートでは、素地の表面積のうちの一部の面積を
除く釉薬は、微結晶を有するガラス質であるが再溶融さ
れた平滑表面を備えているので、調理器用耐熱セラミッ
クプレートの表面すなわちその釉薬の表面が平滑とな
り、その上に付着した食品の焦げ付きを容易に除去する
ことができる。
【0014】また、第1釉焼工程において一部の面積を
残して施釉された素地が焼成されるとき、釉薬が溶融し
た状態でもその一部の面積を通して素地内の脱水や脱ガ
スが容易に可能であり、また、第2釉焼工程において
は、上記一部の面積はそのままであるか或いは必要に応
じて新たな釉薬が塗布された状態で、第1釉焼工程で溶
融された釉薬の表面を溶融させ得る最高温度とその第1
釉焼工程よりも高い冷却速度とを有する焼成条件で焼成
されることから、当初の面積に塗布された釉薬、或いは
必要に応じて上記一部の面積に塗布された釉薬にピンホ
ールが発生することが好適に防止される。
【0015】
【第2発明の他の態様】ここで、好適には、前記第2釉
焼工程に先立って、前記低熱膨張率の素地の一部の面積
に施釉を行う第2施釉工程をさらに含むものである。こ
のようにすれば、第2施釉工程により施釉された釉薬材
料は第2釉焼工程により溶融させられるので、調理器用
耐熱セラミックプレートの全面が釉薬によって覆われる
ことにより、洗浄後の食品の残留やそれに起因する細菌
の繁殖が好適に防止される。
【0016】また、好適には、上記第2釉焼工程で溶融
される釉薬材料は、前記第1釉焼工程で用いられる釉薬
と同様の、βユークリプタイト固溶体、βスポジューメ
ン固溶体、又はそれ等の混合体(β石英を含む場合があ
る)の微結晶(Li2O Al2O3 6SiO2)を、その焼成の冷却
期間においてガラス質内に多数析出させ得る材料から成
る結晶性釉薬材料であって、前記素地と同等以下の熱膨
張率を有する釉薬となる。このようにすれば、前記素地
の一部の面積に非結晶性の通常の釉薬を用いる場合に比
較して貫入が防止される利点がある。
【0017】また、好適には、前記低熱膨張率の素地
は、スポジューメン系セラミックス、ペタライト系セラ
ミックス、コークリプタイト系セラミックスから選択さ
れたリチア系セラミックス材料から構成されたものであ
る。このようにすれば、熱膨張率が3.0×10-6以下
とされるので、耐熱性、耐熱衝撃性に優れた調理器用耐
熱セラミックプレートが得られる利点がある。
【0018】また、好適には、前記第2釉焼工程は、前
記釉薬の溶融終了温度であるF点と、溶融開始温度であ
るP点とF点との中間の温度であるS点との間の最高温
度で前記第1釉焼工程により焼成された素地を焼成する
ものである。このようにすれば、第1釉焼工程よりも低
火度で加熱され或いは急速冷却されることにより、第1
釉焼工程において析出成長した釉薬(ガラス質)内の結
晶がそれほど成長しない範囲で特にその表面部が再溶融
によって好適に滑らかとされる。また、前記素地の一部
の面積に施釉を行う第2施釉工程が設けられた場合に
は、第2施釉工程により施釉された釉薬材料が第1釉焼
工程よりも低火度で溶融され、ピンホールの発生が好適
に防止される利点がある。
【0019】また、好適には、前記第2釉焼工程は、そ
の焼成温度曲線の最高温度から第1施釉工程で用いた釉
薬の転移点までの冷却期間において10°C/分以上の
高い冷却速度で冷却するものである。このようにすれ
ば、第2釉焼工程においては比較的速やかに調理器用耐
熱セラミックプレートが冷却される結果、第1施釉工程
により施釉され且つ第1釉焼工程で溶融された釉薬のガ
ラス質内の結晶が上記の理由でそれほど成長しない範囲
でその表面部が再溶融されてその表面が好適に滑らかと
される。また、前記素地の一部の面積に施釉を行う第2
施釉工程が設けられた場合には、第2施釉工程により施
釉された釉薬材料が第2釉焼工程で溶融されるとき、初
回の溶融であることおよび上記第2釉焼工程の焼成条件
であることにより、そのガラス質内に第1の釉薬の微結
晶よりは小さな微結晶を発生させるか或いは微結晶を実
質的に発生させず、ピンホールの発生も好適に防止され
る利点がある。
【0020】また、好適には、前記第2釉焼工程は、第
1釉焼工程において溶融された釉薬のガラス質内の微結
晶を実質的に成長させない冷却速度、その釉薬の再溶融
された表面に観察的には微結晶を新たに析出させない冷
却速度、或いは第2施釉工程において施釉され且つ第2
釉焼工程において溶融された釉薬内のガラス質に結晶が
観察的には析出されない冷却速度で素地を冷却するもの
である。このようにすれば、第1施釉工程により施釉さ
れた釉薬のガラス質内の結晶がそれほど成長しない範囲
でその表面部が再溶融されてその表面が好適に滑らかと
される。また、第2施釉工程により施釉された釉薬のピ
ンホールの発生も好適に防止される利点がある。
【0021】また、好適には、前記第2釉焼工程は、前
記第1釉焼工程よりも低い最高温度と短い焼成時間を用
いて第1釉焼工程により焼成された素地を焼成するもの
である。このようにすれば、第1釉焼工程よりも低い最
高温度と短い焼成時間で焼成される結果、第1釉焼工程
により溶融された釉薬のガラス質内の結晶がそれほど成
長しない範囲でその表面部が再溶融されてその表面が好
適に滑らかとされる。また、前記素地の一部の面積に施
釉を行う第2施釉工程が設けられた場合には、第2釉焼
工程により溶融された釉薬のガラス質内に第1の釉薬の
微結晶よりは小さな微結晶を発生させるか或いは微結晶
を実質的に発生させず、ピンホールの発生も好適に防止
される利点がある。
【0022】
【発明の好適な実施の態様】以下、本発明の一実施例
を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】図1において、調理器用耐熱セラミックプ
レート10は、30乃至32cmφ程度の円板状を成し、
図2の断面に示すように、熱膨張率が3×10-6以下で
ある低熱膨張率の素地12と、その素地12の表面のう
ちの一部の面積である下面を除いた上面上に施された第
1の釉薬14と、素地12の下面上に施された第2の釉
薬16とを備えている。
【0024】上記低熱膨張率の素地12は、スポジュー
メン系セラミックス、ペタライト系セラミックス、ユー
クリプタイト系セラミックスから選択されたリチア系セ
ラミックス材料が、所定の焼成条件下で締焼きされるこ
とにより構成されたものであり、たとえば、スポジュー
メン、石英、クリストバライド、ムライトなどが混在し
た組成から構成される。このように構成された素地12
は、その締焼き直後の単体では、1〜5%程度、一般に
は2〜3%程度の吸水率と、0〜800°Cの温度範囲
において3×10-6以下、一般には2.0〜2.7×1
-6程度の熱膨張率とを備えている。
【0025】上記第1の釉薬14と第2の釉薬16と
は、素地12と同等以下の熱膨張率たとえば2.0×1
-6程度の熱膨張率を得るために、焼成後においてその
ガラス質内にβユークリプタイト固溶体或いはβスポジ
ューメン固溶体、またはそれ等の混合体(β石英を含む
場合がある)などの低熱膨張率の微結晶(Li2O Al2O3 6
SiO2)を析出させ得る材料、すなわちLi2Oを含む略同様
の組成から構成されている。しかし、素地12の上面を
覆う第1の釉薬14は、上記βユークリプタイト固溶体
或いはスポジューメン固溶体又はそれ等の混合体などの
低熱膨張率の微結晶(Li2O Al2O3 6SiO2)をガラス質内
に多数析出させてはいるが、再溶融された平滑表面を備
えている。この微結晶は、線源としてCu管球を用いた
X線回折において図6に示すように2θ=25.6°
(d=3.47Å)、或いは2θ=22.9°(d=
3.88Å)というピークにより認識される。また、随
伴的に生じるシリコンZr02 ・SiO2 の微結晶は、
2θ=27.0°(d=3.30Å)というピークによ
り認識される。
【0026】上記第1の釉薬14の表面の平滑性は、た
とえば、日本電色工業株式会社製MMP−300A型光
沢度測定器を用いてJIS Z 8741「鏡面光沢度
測定方法」の方法4に従って測定したとき、「25」以
上の光沢度を有するものであり、JISの表面粗度で表
せば、十点平均粗さRz が20μ以下の表面粗度を有す
るものとなっている。これにより、焦げついた食品の洗
浄除去性能が高められているのである。
【0027】また、素地12の下面を覆う第2の釉薬1
6は、第1の釉薬14と略同様の材料組成であるにも拘
わらず、第1の釉薬14よりも低い火度すなわち低い最
高温度、短い焼成時間で焼成され、且つ高い冷却速度で
焼成されているため、上記微結晶をガラス質内に殆ど存
在させておらず、また存在していたとしても上記第1の
釉薬14に対して微結晶の数が少なく或いは微結晶の大
きさが小さくされている。
【0028】以上のように構成された調理器用耐熱セラ
ミックプレート10は、たとえば図3に示す工程を経る
ことによって製造される。先ず、原料調合粉砕工程P1
においては、前記素地12を構成するために、40〜8
0重量%のペタライトと、60〜20重量%の粘土およ
び陶石とが、よく知られた混合装置および粉砕装置によ
り混合および粉砕される。好適には、上記ペタライト、
粘土、および陶石が4:4:2の割合で混合され、その
化学組成は、SiO2 が72%、Al2 3 が25%、
LiO2 が1.7%、(Na+K)2 Oが0.9%とし
て表される構成となる。また、上記粉砕は、たとえば湿
式ボールミルを用いて、8μm以下の粒子が50%以
上、このましくは60%以上のスラリーとなるまで実行
される。
【0029】次いで、脱水工程P2では、上記スラリー
がフィルタープレス装置を用いて22%以下の水分とな
るまで脱水されることによりケーキ状とされ、真空土練
装置によって適宜練られることにより適当な形の杯土と
される。そして、成形乾燥工程P3では、その適当な分
量に切断された杯土からロクロ成形装置を用いて成形が
行われることにより、図1に示すような皿状の素地12
に成形されるとともに、たとえば焼成炉の排ガスを利用
した60°C程度以下の熱風乾燥機を用いて乾燥され
る。
【0030】続いて、締焼工程P4では、たとえばペタ
ライト系セラミックスの締焼きの焼成条件として知られ
ている焼成条件、たとえば最高温度が1200〜128
0°、その保持時間が60〜200分、焼成時間(焼成
炉の入口から出口までの時間)が約24時間の大気中焼
成により、好適には、最高温度が1240°C、120
分の保持時間の焼成条件により、上記成形乾燥工程P3
により成形乾燥された皿状の素地12が焼成される。こ
れにより、嵩比重が2.2程度、吸水率が2〜3%程
度、熱膨張率が2.0〜2.7×10-6程度の白色に締
焼きされた素地12が得られる。この締焼きされた白色
の素地12は、スポジューメン、石英、クリストバライ
ド、ムライトが混在した組成である。
【0031】続く第1施釉工程P5では、酸化リチウム
Li2 Oを含むことにより、緩やかな冷却過程において
ガラス質内にβユークリプタイト固溶体、βスポジュー
メン固溶体、またはそれ等の混合体などの低熱膨張率の
微結晶(Li2O Al2O3 6SiO2)を析出させ得る釉薬材料
が、スラリー化された後に、上記締焼きされた素地12
の表面のうちの下面を除いてその上面全体によく知られ
たスプレー施釉などの手法を用いて塗布される。上記釉
薬材料は、いわゆる生釉、フリット釉のいずれも使用で
き、たとえば、SiO2 が67.0%、Al2 3 が1
4.2%、CaOが3.6%、MgOが1.8%、Li
2 Oが3.7%、ZrO2 が2.3%、ZnOが3.2
%、K2 O+Na2 Oが0.9%、Eg.loss(イ
グナイトロス)3.9%という化学組成により構成され
る。また、この釉薬材料は、常法によるガラスの熱膨張
曲線(加熱速度10°C/min、荷重10g)から求
めた屈伏点At(別名、軟化点とも言う)が約1130
°Cという特性を備えている。また、この釉薬材料は、
上記屈伏点Atに向かう上昇折点(折点が2つあるとき
はその中間点)である転移点Tgが690〜700°C
という特性を備えている。また、この釉薬材料は、本出
願人が先に出願した特開平8−21810号公報に記載
されている溶融点測定方法によれば、所定の荷重が加え
られたペレット状試料の上面の変位−温度特性に基づく
P点(溶融開始点)が1010〜1030°C、S点
(P点とF点との間の変曲点)が1140〜1160°
C、F点(溶融終了点)が1210〜1230°Cとい
う特性を備えている。
【0032】第1釉焼工程P6では、締焼工程P4にお
ける最高温度よりも低く且つ上記釉薬材料のF点以下に
設定された最高温度たとえば最高温度が1200プラス
マイナス10°C、その保持時間が60〜120分、そ
の最高温度から釉薬材料の転移点Tgまでの間の冷却速
度が3°C/分以下、焼成時間(焼成炉の入口から出口
までの時間)が約24時間の大気中焼成により、上記第
1施釉工程P5により施釉された釉薬材料が溶融され、
ガラス質の第1の釉薬14が皿状の素地12の上面に形
成される。このとき、最高温度から釉薬材料の転移点T
gまでの間において釉薬材料が3°C/分以下の緩やか
な冷却速度で冷却される結果、上記第1の釉薬14のガ
ラス質内には、βユークリプタイト固溶体、βスポジュ
ーメン固溶体又はそれ等の混合体などの低熱膨張率の微
結晶(Li2O Al2O3 6SiO2)が多数析出させられ、その表
面は多数の微結晶によってマット状の凹凸が形成され
る。また、この第1釉焼工程P6では、上面のみに釉薬
材料が塗布された素地12が焼成されることから、釉薬
材料が溶融した状態であっても素地12内のガスや水分
の脱出が下面から容易であるので、上面の第1の釉薬1
4にはそのガスや水分の脱出に関連するピンホールの発
生が好適に防止される。
【0033】次いで、第2施釉工程P7では、素地12
の表面のうちの第1施釉工程P5において施釉されない
で残された面積すなわち素地12の下面に、よく知られ
たスプレー施釉などの手法を用いて、第1施釉工程P5
において用いられたものと略同様の釉薬材料が塗布され
る。この第2施釉工程P7において用いられる釉薬材料
は、必要に応じて、Fe2 3 などの無機顔料(たとえ
ばステイン)が2〜8重量%程度だけさらに含有させら
れる。この場合には、無機顔料が含有させられない釉薬
材料に比較して、前記F点、S点、P点などが、全体的
に少し低融点に移動する傾向となる。
【0034】そして、第2釉焼工程P8では、上記第2
施釉工程P7により釉薬材料が下面に塗布された素地1
2が第1釉焼工程P6よりも低い火度(最高温度および
時間による加熱効果)、および高い冷却速度により、た
とえばローラハースキルン(RHK)を用いて焼成され
ることにより、第1の釉薬14の表面が再溶融されて平
滑化されると同時に、上記素地12の下面に塗布された
釉薬材料が溶融されて、ガラス質の第2の釉薬16が形
成される。この第2釉焼工程P8における焼成条件は、
図4に示すように、前記第1釉焼工程P6での最高温度
よりも低く且つ前記釉薬材料のF点(溶融終了点)とS
点(P点とF点との間の変曲点すなわち最大傾斜点)と
の間となるように決定されたたとえば1190〜121
0°C程度の最高温度を5〜30分程度の保持時間だけ
保持し、その後、その最高温度から転移点Tgまでの間
は20°C/分以上好ましくは30°C/分以上の冷却
速度で冷却され、焼成時間(焼成炉の入口から出口まで
の時間)が約2時間程度の大気中焼成となるように設定
されている。
【0035】図2の2点鎖線は、上記第2釉焼工程P8
における支持方法を示している。すなわち、第2施釉工
程P7により釉薬材料が下面に塗布された素地12と焼
成炉の窯道具として用いられるセッター20との間に
は、複数個(通常は3個)のアルミナ製の三角錐22が
介挿されることにより、それら素地12とセッター20
とを相互に結合させないための隙間Dがそれらの間に形
成されている。第2釉焼工程P8が終了したときには、
耐熱セラミックプレート10の下面の第2の釉薬16に
より結合された上記三角錐22は、適当な衝撃が加えら
れることにより折り除かれる。三角錐22の頂部が耐熱
セラミックプレート10の下面に残存する場合には、そ
れが砥石などを用いて除去される。
【0036】上記のような第2釉焼工程P8を経ること
により、第1の釉薬14の表面が再溶融されることによ
り、その表面が第1釉焼工程P6の直後に比較すると大
幅に平滑とされる。このことは、第1の釉薬14の表面
に析出した微結晶が第2釉焼工程P8による表面の溶融
時に溶解させられるが、第1釉焼工程P6よりも焼成火
度が低く且つ冷却速度が高いので、析出するまえにガラ
ス化状態で固化されるものと考えられる。また、この第
2釉焼工程P8では、素地12の下面に塗布された釉薬
材料にとって最初の溶融であること、および第2釉焼工
程P8は第1釉焼工程P6に比較して最高温度が低く、
その保持時間が短く、冷却速度が高く、焼成時間が短い
ことから、第1の釉薬14にピンホールの発生すること
が好適に抑制され、同時に、素地12の下面の釉薬材料
が溶融した第2の釉薬16にもピンホールの発生するこ
とが好適に抑制される。
【0037】そして、検査工程P9では、第1の釉薬1
4および第2の釉薬16の表面状態、たとえばクラッ
ク、禿、ピンホールなどの外観検査と、第1の釉薬14
の表面の平滑性検査とが実行される。この平滑性の検査
は、前記と同様の光沢度測定器を用いたJIS Z 8
741の方法4にしたがう測定によれば、たとえば、
「25」以上の光沢度を有するもの、或いはJISの表
面粗度測定器によれば、十点平均粗さRz が20μ以下
の平滑性を有するものが合格とされる。
【0038】表1に示す実験例1は、前記第2釉焼工程
P8の効果を示すためのものであり、前述の実施例の各
工程により製造された試料イを、前記第2施釉工程P7
および第2釉焼工程P8を経ていない試料ロ、および、
前記第2施釉工程P7および第2釉焼工程P8を経ず且
つ第1施釉工程P5において素地12の上面および下面
にスプレーにより釉薬材料が塗布された状態で第1釉焼
工程P6を経た試料ハと対比して示している。
【0039】表1において、試料ロおよび試料ハの上面
の釉薬(第1の釉薬)の表面は、試料イに比較して、マ
ット状の細かな凹凸により、光沢度が25以下と低く、
表面粗さRz が20以上と大きい値となっている。さら
に、試料ハは、素地12の全面に釉薬材料が塗布された
状態で第1釉焼工程P6において焼成されていることか
ら、素地12内のガスや水分の脱出に起因して発生する
ピンホールが、素地12の上面および下面の釉薬に存在
する。
【0040】
【表1】
【0041】表2に示す実験例2は、第2釉焼工程P8
の焼成条件の効果を示すためのものであり、前述の実施
例の各工程P1〜P8により製造された試料イを、同様
に工程P1〜P8を経たものであるが、第2釉焼工程P
8の最高温度がS点以下の試料、第2釉焼工程P8の
最高温度がF点以上の試料、第2釉焼工程P8の冷却
速度が10°C/分未満の試料、および、第1施釉工
程P5において素地12の上面および下面にスプレーに
より釉薬材料が塗布された状態で第1釉焼工程P6およ
び第2釉焼工程P8を経た試料と対比して示してい
る。
【0042】
【表2】
【0043】表2において、試料は試料イに比較して
第1の釉薬14の再溶融が不足して若干マット状となる
とともに、第2の釉薬16の焼きが甘くなって溶融状態
のレベリングの不足に起因するムラやうねり状の凹凸が
発生している。また、試料は試料イに比較して第2の
釉薬16の焼きが過剰となって第1の釉薬14の表面に
細かなピンホールが多数発生している。また、試料は
試料イに対して冷却速度が緩やかであるため、素地12
の上面の第1の釉薬14の表面に微結晶が存在してその
平滑性が不充分となり、しかも下面の第2の釉薬16に
も微結晶が多数存在する。さらに、試料は、素地12
の上面および下面の釉薬が同時に焼成され且つ再溶融さ
せられるため、素地12内のガスや水分の脱出に起因し
て発生するピンホールが、その数および大きさにおいて
一層顕著となる。
【0044】本実施例の調理器用耐熱セラミックプレー
ト10によれば、低熱膨張率の素地12の表面積のうち
の一部の面積(下面)を除く第1の釉薬14は、微結晶
を有するガラス質であって再溶融された平滑表面を備え
ているので、調理器用耐熱セラミックプレート10の上
面となる第1の釉薬14の表面が平滑となり、その上に
付着した食品の焦げ付きを容易に除去することができ
る。
【0045】また、本実施例の調理器用耐熱セラミック
プレート10によれば、第2の釉薬16は、上記第1の
釉薬14と略同様の材料組成であるにもかかわらず、そ
の第1の釉薬14に対して微結晶が少なく或いは小さい
ことから、第1の釉薬14の焼成とは別にその後におい
てその焼成条件よりは低火度で第1の釉薬14の再溶融
のための焼成などにおいて焼成されたものである。した
がって、第1の釉薬14の焼成時には素地12の表面積
のうちの一部の面積(下面)が開放された状態で第1の
釉薬14が溶融されるので、素地12内の水分やガスの
逃げなどに起因する第1の釉薬14のピンホールの発生
が好適に解消されるとともに、第2の釉薬16の焼成時
には、第1の釉薬14の焼成条件よりは最高温度が低く
短時間で焼成されるので、この第2の釉薬16の焼成時
にも第1の釉薬14および第2の釉薬16にピンホール
が発生することが好適に解消され、ピンホールのない調
理器用耐熱セラミックプレート10が得られる。
【0046】さらに、本実施例の調理器用耐熱セラミッ
クプレート10によれば、その上面および下面の全面が
釉薬によって覆われることにより、洗浄後の食品の残留
やそれに起因する細菌の繁殖が好適に防止されるととも
に、素地12内への水の浸透がないので、急速加熱によ
る水蒸気破裂が好適に防止される。
【0047】また、本実施例の調理器用耐熱セラミック
プレート10によれば、第1の釉薬14は、その表面の
再溶融により、25以上の光沢度、或いは、十点平均粗
さR z が20μ以下の表面粗度を備えたものであるの
で、第1の釉薬の表面が一層平滑となり、その上に付着
した食品の焦げ付きを容易に除去することができる。
【0048】また、好適には、前記低熱膨張率の素地1
2は、コーディライト系セラミックス、スポジューメン
系セラミックス、ペタライト系セラミックス、コークリ
プタイト系セラミックスから選択されたリチア系セラミ
ックス材料から構成されたものであることから、熱膨張
率が3.0×10-6以下とされ、第1の釉薬14および
第2の釉薬16はその素地12と同等以下の熱膨張率と
されているので、耐熱性、耐熱衝撃性に優れた調理器用
耐熱セラミックプレート10が得られる。
【0049】また、本実施例の調理器用耐熱セラミック
プレート10の第1の釉薬14は、βユークリプタイト
固溶体、或いはβスポジューメン固溶体又はそれ等の混
合体の微結晶(Li2O Al2O3 6SiO2)をガラス質内に多数
析出させたものであり、第2の釉薬16は、第1の釉薬
14と略同様の材料組成であるが、上記微結晶の数が少
ないか、大きさが小さいか、或いは微結晶を殆ど有しな
いものであるので、第2の釉薬16が第1の釉薬14の
焼成の後においてその焼成よりも低火度で焼成可能とな
るので、ピンホールの発生が好適に防止される。
【0050】また、本実施例の調理器用耐熱セラミック
プレート10の製造方法によれば、第1釉焼工程P6で
は、低熱膨張率の素地12の締焼きの焼成温度よりも低
く且つその素地12の上の第1の釉薬材料14を溶融さ
せる最高温度と、その釉薬内に微結晶を析出させる冷却
速度とを有する焼成条件下で、第1施釉工程P5により
一部の面積(下面)を残して前記釉薬材料が塗布された
素地12が焼成された後、第2釉焼工程P8では、第1
釉焼工程P6での溶融によってガラス質化された第1の
釉薬14の表面を溶融させ得る最高温度と、その第1釉
焼工程P6よりも高い冷却速度とを有する焼成条件で、
その第1釉焼工程P6を経た素地12をさらに焼成する
ことにより、その素地12上の第1の釉薬14の表面が
再溶融により平滑化される。したがって、本製造方法に
より製造された調理器用耐熱セラミックプレート10で
は、素地12の表面積のうちの一部の面積(下面)を除
く第1の釉薬14は、微結晶を有するガラス質ではある
けれども再溶融された平滑表面を備えているので、調理
器用耐熱セラミックプレート10の上面すなわちその第
1の釉薬14の表面が平滑となり、その上に付着した食
品の焦げ付きを容易に除去することができる。
【0051】また、本実施例の調理器用耐熱セラミック
プレート10の製造方法によれば、第1釉焼工程P6に
おいて一部の面積(下面)を残して施釉された素地12
が焼成されるとき、上面の釉薬が溶融した状態でもその
一部の面積を通して素地12内の脱水や脱ガスが容易に
可能であり、また、第2釉焼工程P8においては、上記
一部の面積はそのままの状態であっても、或いは、第2
施釉工程P7において必要に応じて新たな釉薬が塗布さ
れた状態であっても、その初回の溶融であること、およ
び、第1釉焼工程P6で溶融された釉薬の表面を再溶融
させ得る最高温度とその第1釉焼工程P6よりも高い冷
却速度とを有する焼成条件で焼成されることから、素地
12の上面の当初の釉薬、或いは必要に応じて下面に塗
布された釉薬にピンホールが発生することが好適に防止
される。
【0052】また、本実施例の調理器用耐熱セラミック
プレート10の製造方法によれば、第2釉焼工程P8に
先立って、低熱膨張率の素地12の残された一部の面積
(下面)に施釉を行う第2施釉工程P7が設けられてい
ることから、第2施釉工程P7により施釉された釉薬材
料は第2釉焼工程P8により溶融させられるので、調理
器用耐熱セラミックプレート10の全面が釉薬によって
覆われることにより、洗浄後の食品の残留やそれに起因
する細菌の繁殖が一層好適に防止されるとともに、素地
12内への水分の侵入がなく急速加熱による水蒸気破裂
が好適に防止される。
【0053】また、本実施例の調理器用耐熱セラミック
プレート10の製造方法によれば、上記第2釉焼工程P
8で溶融される釉薬材料は、前記第1釉焼工程で用いら
れる釉薬と同様の、βユークリプタイト固溶体、βスポ
ジューメン固溶体、又はそれ等の混合体の微結晶(Li2O
Al2O3 6SiO2)を、その焼成の冷却期間においてガラス
質内に多数析出させ得る材料から成る結晶性釉薬材料で
あって、ガラス化された後は素地12と同等以下の熱膨
張率を有する第2の釉薬16となる。このため、素地1
2の一部の面積(下面)に非結晶性の通常の釉薬を用い
る場合に比較して貫入が防止される利点がある。
【0054】また、本実施例の調理器用耐熱セラミック
プレート10の製造方法によれば、前記第2釉焼工程P
8は、特開平8−21810号公報に記載されている溶
融点測定方法による、第2の釉薬16の溶融終了温度で
あるF点と、溶融開始温度であるP点とF点との中間の
変曲点温度であるS点との間の最高温度で第1釉焼工程
P6により溶融された第1の釉薬14を再度焼成するも
のであることから、第1の釉薬14は、第1釉焼工程P
6よりも低火度で加熱されることにより、第1釉焼工程
により一旦溶融された釉薬のガラス質内の結晶がそれほ
ど成長しない範囲でその表面部が再溶融されることによ
って表面部の結晶が溶解して好適に滑らかとされる。ま
た、第2施釉工程P7により素地12の下面に施釉され
た釉薬材料が第1釉焼工程P6よりも低火度で溶融さ
れ、ピンホールの発生が好適に防止される利点がある。
【0055】また、本実施例の調理器用耐熱セラミック
プレート10の製造方法によれば、前記第2釉焼工程P
8は、その焼成温度曲線の最高温度から釉薬の転移点T
gまでの冷却期間において10°C/分以上の第1釉焼
工程P6よりも高い冷却速度で冷却するものであること
から、第2釉焼工程P8においては比較的速やかに調理
器用耐熱セラミックプレート10が冷却される結果、第
1釉焼工程P6により溶融された釉薬材料のガラス質の
表面が再溶融されてその表面の結晶が再溶解された後、
その部分に結晶が殆ど再成長しないので、その表面が好
適に滑らかとされる。また、第2施釉工程P7により素
地12の下面に施釉され且つ上記第2釉焼工程P8で溶
融された釉薬が、第1釉焼工程P6よりも高い冷却速度
で冷却されるので、第2の釉薬16のガラス質内に微結
晶を肉眼観察的にはほとんど発生させず、ピンホールの
発生も好適に防止される利点がある。
【0056】また、本実施例の調理器用耐熱セラミック
プレート10の製造方法によれば、前記第2釉焼工程P
8は、第1釉焼工程P6において溶融された第1の釉薬
14のガラス質内の微結晶を実質的に成長させない冷却
速度、その第1の釉薬14の再溶融された表面に微結晶
を光学観察的にはほとんど析出させない冷却速度、或い
は第2釉焼工程P8において溶融された第2の釉薬16
内のガラス質に結晶が光学観察的には析出されない冷却
速度で素地12を冷却するものであることから、第1釉
焼工程P6により溶融された第1の釉薬14のガラス質
内の結晶がそれほど成長しない範囲でその表面部が再溶
融されてその表面が好適に滑らかとされる。また、第2
釉焼工程P8により溶融された釉薬のピンホールの発生
も好適に防止される利点がある。ここで、第2釉焼工程
P8を経た耐熱セラミックプレート10の第2の釉薬1
6内のガラス質には、結晶が光学観察的には析出されな
い程であるが、その熱膨張係数が素地12と同等以下と
なっていることから推察すると、非常に細かな微結晶が
存在していると考えられる。
【0057】また、本実施例の調理器用耐熱セラミック
プレート10の製造方法によれば、前記第2釉焼工程P
8は、第1釉焼工程P6よりも低い最高温度と短い焼成
時間を用いてその第1釉焼工程P6により溶融された第
1の釉薬14を焼成するものであることから、第1釉焼
工程P6により溶融された第1の釉薬14のガラス質内
の結晶がそれほど成長しない範囲でその表面部が再溶融
されてその表面が好適に滑らかとされる。また、第2施
釉工程P7により素地12の下面に施釉され且つ上記第
2釉焼工程P8で溶融された釉薬が、そのガラス質内に
微結晶を実質的に発生させず、ピンホールの発生も好適
に防止される利点がある。
【0058】以上、本発明の実施例を図面に基づいて説
明したが、本発明はその他の態様においても適用され
る。
【0059】例えば、前述の実施例の調理器用耐熱セラ
ミックプレート10では、その上面全体が第1の釉薬1
4により覆われ、その下面全体が第2の釉薬16により
覆われており、前記第1施釉工程P6において施釉され
ない一部の面積が下面全体とされていたが、その一部の
面積は必ずしも素地12の下面全体でなくてもよく、矩
形など小円形などの上面或いは下面の一部であっても差
し支えない。
【0060】また、前述の実施例の調理器用耐熱セラミ
ックプレート10では、その上面および下面が第1の釉
薬14および第2の釉薬16で覆われた全面施釉であっ
たが、図3の製造工程のうちの第2施釉工程P7のない
製造工程により作成された下面に釉薬のない耐熱セラミ
ックプレート10であっても、本発明の効果が享受され
得るものである。この場合には、たとえば図5に示す焼
成温度プロファイルを有する焼成炉が用いられる。図5
のt0 時点乃至t3 時点が第1釉焼工程P6に対応し、
4 時点乃至t6 時点が第2釉焼工程P8に対応するも
のである。また、t1 時点乃至t2 時点が第1釉焼工程
P6の最高温度保持期間であり、t4 時点乃至t5 時点
が第2釉焼工程P8の最高温度保持期間である。第1釉
焼工程P6の最高温度は、締焼工程P4の最高温度より
も低く且つ前記釉薬材料のF点以下に設定される一方、
第2釉焼工程P8の最高温度は、第1釉焼工程P6の最
高温度よりも低く且つ前記釉薬材料のF点とS点との間
に設定され、第2釉焼工程P8の最高温度保持期間t4
〜t5 は第1釉焼工程P6の最高温度保持期間t1〜t
2 よりも短く、第2釉焼工程P8の冷却期間t5 〜t6
の冷却速度は第1釉焼工程P6の冷却期間t2 〜t3
冷却速度よりも高く、10°C/分以上に設定されてい
る。
【0061】また、前記の実施例の調理器用耐熱セラミ
ックプレート10は、円形の皿状に形成されていたが、
楕円、矩形、多角形など他の形状であっても差し支えな
い。
【0062】その他、一々例示はしないが、本発明は当
業者の知識に基づいて、さまざまな変更、改良を加えた
態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の調理器用耐熱セラミックプ
レートを説明する、一部を切り欠いた斜視図である。
【図2】図1の調理用耐熱セラミックプレートの要部断
面を拡大して示す図である。
【図3】図1の調理用耐熱セラミックプレートの製造工
程を説明する図である。
【図4】図3の第2釉焼工程において用いられる加熱曲
線を示す図である。
【図5】本発明の他の実施例において、第1釉焼工程の
焼成と第2釉焼工程の焼成とを連続して実施する場合の
加熱曲線を示す図である。
【図6】図1および図2の調理用耐熱セラミックプレー
トにおける第1の釉薬と第2の釉薬のX線回折角度を示
す図である。
【図7】表1の試料イと試料ロの上面(第1の釉薬)の
表面粗さ曲線を示す図であって、(a)は試料イを、
(b)は試料ロを示している。
【符号の説明】
10:調理用耐熱セラミックプーレート 12:低熱膨張率素地 14:第1の釉薬 16:第2の釉薬
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 坂本 憲仁 愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番36 号 株式会社ノリタケカンパニーリミテド 内 (72)発明者 箕浦 誠 愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番36 号 株式会社ノリタケカンパニーリミテド 内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱膨張率が3×10-6以下である低熱膨
    張率の素地の上に釉薬が施された調理器用耐熱セラミッ
    クプレートであって、 前記素地の表面積のうちの一部の面積を除く第1の釉薬
    は、微結晶を有するガラス質であって再溶融された平滑
    表面を備え、該一部の面積における第2の釉薬は、該第
    1の釉薬と略同様の材料組成であるが該第1の釉薬に対
    して微結晶が少なく或いは小さいことを特徴とする調理
    器用耐熱セラミックプレート。
  2. 【請求項2】 前記第1の釉薬は、25以上の光沢度を
    備えたものである請求項1の調理器用耐熱セラミックプ
    レート。
  3. 【請求項3】 前記第1の釉薬は、十点平均粗さRz
    20μ以下の表面粗度を備えたものである請求項1の調
    理器用耐熱セラミックプレート。
  4. 【請求項4】 熱膨張率が3×10-6以下の低熱膨張率
    の素地の上に釉薬が施された調理器用耐熱セラミックプ
    レートの製造方法であって、 締焼きされた前記素地の表面に、その表面積のうちの一
    部の面積を残して、結晶性釉薬材料を施釉する施釉工程
    と、 前記素地の焼成温度よりも低く且つ該素地の上の釉薬材
    料を溶融させる最高温度と、前記釉薬内に微結晶を析出
    させる冷却速度とを有する焼成条件下で、前記施釉工程
    により一部の面積を残して施釉された素地を焼成する第
    1釉焼工程と、 前記釉薬の表面を溶融させ得る最高温度と該第1釉焼工
    程よりも高い冷却速度とを有する焼成条件で、該第1釉
    焼工程により再焼成された素地をさらに焼成することに
    より、該素地上の釉薬の表面を再溶融により平滑化する
    第2釉焼工程とを含むことを特徴とする調理器用耐熱セ
    ラミックプレートの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記第2釉焼工程は、前記釉薬の溶融特
    性点であるF点とS点との間の最高温度で前記第1釉焼
    工程により再焼成された素地をさらに焼成するものであ
    る請求項4の調理器用耐熱セラミックプレートの製造方
    法。
  6. 【請求項6】 前記第2釉焼工程は、最高温度から前記
    第1釉焼工程で用いた釉薬の転移点までの冷却期間にお
    いて10°C/分以上の冷却速度で冷却するものである
    請求項4または5の調理器用耐熱セラミックプレートの
    製造方法。
  7. 【請求項7】 前記第2釉焼工程は、前記第1釉焼工程
    による素地上において溶融させられた釉薬内の結晶が実
    質的に成長しない冷却速度で該素地を冷却するものであ
    る請求項4乃至6のいずれかの調理器用耐熱セラミック
    プレートの製造方法。
  8. 【請求項8】 前記第2釉焼工程は、前記第1釉焼工程
    よりも低い最高温度と短い焼成時間を用いて該第1釉焼
    工程により溶融された釉薬を再焼成するものである請求
    項4乃至7のいずれかの調理器用耐熱セラミックプレー
    トの製造方法。
  9. 【請求項9】 前記第2釉焼工程に先立って前記素地の
    前記一部の面積に施釉を行う第2施焼工程を、さらに含
    むものである請求項4乃至8のいずれかの調理器用耐熱
    セラミックプレートの製造方法。
  10. 【請求項10】 前記第2釉焼工程で用いられる釉薬材
    料は、前記第1釉焼工程で用いられる釉薬と略同様の結
    晶性釉薬材料であって、前記素地と同等以下の熱膨張率
    を有する釉薬である請求項9の調理器用耐熱セラミック
    プレートの製造方法。
JP20336196A 1996-08-01 1996-08-01 調理器用耐熱セラミックプレートおよびその製造方法 Pending JPH1043059A (ja)

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