JPH104013A - 磁気抵抗効果素子及びその製造方法 - Google Patents

磁気抵抗効果素子及びその製造方法

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JPH104013A
JPH104013A JP8155821A JP15582196A JPH104013A JP H104013 A JPH104013 A JP H104013A JP 8155821 A JP8155821 A JP 8155821A JP 15582196 A JP15582196 A JP 15582196A JP H104013 A JPH104013 A JP H104013A
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magnetic layer
magnetic
film
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JP8155821A
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Tomohisa Komoda
智久 薦田
Keiya Nakabayashi
敬哉 中林
Noboru Fujita
昇 藤田
Haruhiko Deguchi
治彦 出口
Kazuhiro Uneyama
和弘 釆山
Toru Kira
徹 吉良
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Sharp Corp
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    • B82NANOTECHNOLOGY
    • B82YSPECIFIC USES OR APPLICATIONS OF NANOSTRUCTURES; MEASUREMENT OR ANALYSIS OF NANOSTRUCTURES; MANUFACTURE OR TREATMENT OF NANOSTRUCTURES
    • B82Y25/00Nanomagnetism, e.g. magnetoimpedance, anisotropic magnetoresistance, giant magnetoresistance or tunneling magnetoresistance
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01FMAGNETS; INDUCTANCES; TRANSFORMERS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR MAGNETIC PROPERTIES
    • H01F10/00Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure
    • H01F10/32Spin-exchange-coupled multilayers, e.g. nanostructured superlattices
    • H01F10/324Exchange coupling of magnetic film pairs via a very thin non-magnetic spacer, e.g. by exchange with conduction electrons of the spacer
    • H01F10/3268Exchange coupling of magnetic film pairs via a very thin non-magnetic spacer, e.g. by exchange with conduction electrons of the spacer the exchange coupling being asymmetric, e.g. by use of additional pinning, by using antiferromagnetic or ferromagnetic coupling interface, i.e. so-called spin-valve [SV] structure, e.g. NiFe/Cu/NiFe/FeMn

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 室温において高い抵抗変化率および大きな反
転磁界を得ることを可能とする。 【解決手段】 磁気抵抗効果素子は、ガラスあるいはS
iからなる基板1上に、Coからなる自由磁化層2と、
Cuからなる非磁性層3と、Coからなる固定磁化層4
と、室温で保磁力の高い強磁性であるCo酸化膜5とが
この順に積層されて形成される。強磁性のCo酸化膜5
が固定磁化層4に接していることにより、室温において
固定磁化層4と自由磁化層2と間の保磁力の差が大きく
なる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気抵抗効果を利
用した磁気記録用再生へッド、あるいは磁気センサに使
用され、非磁性層を強磁性層で挟み込んだ構造の多層膜
において非常に大きな磁気抵抗効果(いわゆる巨大磁気
抵抗効果)を示すもののうち、特に3層のサンドイッチ
膜からなる磁気抵抗効果素子及びその製造方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】磁気ディスクや磁気テープ装置などの磁
気記録装置においては、記録密度の増加に伴い、記録ヘ
ッドや再生ヘッドなどの磁気へッドの高性能化が求めら
れている。即ち、記録ヘッドでは磁気記録媒体の高保磁
力化に伴い、飽和磁束密度の大きな材料が要求されてい
る。また、再生ヘッドでは、磁気記録媒体の小型化に伴
う相対速度の低下に対して、従来の誘導型ヘッドから、
磁気抵抗効果を利用したいわゆるMR(magnetoresisti
ve effect)ヘッドを用いることで再生出力の増加が図ら
れている。
【0003】このような磁気抵抗効果を示す材料として
は、従来より、NiFeやNiCoからなる磁性薄膜が
知られている。これらの薄膜の抵抗変化率は、NiFe
では2〜3%程度、NiCoでは最大6%程度である。
上記磁性薄膜の磁気抵抗効果は、スピン軌道相互作用に
よるものであり、測定電流の方向と磁性薄膜の磁化方向
とのなす角度に依存しており、通常、異方性磁気抵抗効
果(AMR)と呼ばれている。
【0004】これに対して近年、上記AMRとは異なる
原理で磁気抵抗効果を示す巨大磁気抵抗効果(GMR)
と呼ばれる現象が見い出され、注目されている。このよ
うなGMRを示す構造として、例えば、磁性層と非磁性
層とを交互に数十層積層した人工格子多層膜がある。
【0005】この人工格子多層膜は、非磁性層を介して
上下に配置された磁性層の磁化が反平行と平行の場合で
伝導電子の散乱が大きく異なるために抵抗変化が現れる
ものである。つまり、磁性層間の磁化が反平行の場合に
は、伝導電子の散乱が大きく抵抗値が高くなる一方、磁
性層間の磁化が平行の場合には、散乱が減少し抵抗値が
小さくなる。このときの抵抗変化率は、AMRに比較し
て一桁以上大きいものとなっている。現在最大の抵抗変
化を示す材料系であるCo/Cu多層膜では、常温にお
いても60%以上の抵抗変化率が得られている。
【0006】しかしながら、このような人工格子多層膜
では抵抗変化率は非常に大きいものの、数百Oeから数
KOeの外部磁界が必要となる。これは、無磁場で磁化
の反平行状態を実現するために磁性層間の交換相互作用
を用いているので磁性層間の結合が非常に強く、この交
換相互作用を断ち切って磁化の平行状態を実現しなけれ
ばならないからである。上記のような大きな外部磁界は
デバイスとして用いることができず、微弱な外部磁界で
は磁界感度が小さいので、人工格子多層膜を磁気記録用
のヘッドとして用いることは非実用的である。
【0007】そこで、人工格子多層膜の他に、磁界感度
を向上させるために反強磁性層/磁性層/非磁性層/磁
性層の構造を有するスピンバルブ構造が提案されてい
る。スピンバルブ構造は、反強磁性層との交換結合を利
用して一方の磁性層の磁化を一方向に固定し、他方の磁
性層の磁化が外部磁界に対して自由に回転するように他
方の磁性層としてNiFeなどのソフト性の高い薄膜を
用いることで感度の向上を図っており、最も実用的な構
造と言える。なお、以下、磁化方向を固定する磁性層を
固定磁化層、磁化方向が自由に回転する磁性層を自由磁
化層と呼ぶことにする。
【0008】また、磁性層にCoやNiFe薄膜を用
い、磁性層間の反強磁性結合を利用せずに、二つの磁性
層の保磁力の違いを利用した非結合型と呼ばれる構造、
さらには、反強磁性層の代わりに高保磁力膜を用いたス
ピンバルブ構造などにおいてもGMRを示すことが報告
されている。
【0009】以下に、GMRを示す先行技術について説
明する。 文献(1)「MAGNETIZATION AND
MAGNETORESISTANCE OF Co/
Cu LAYERD FILMS」 IEEETRAN
SACTIONS ON MAGNETICS,VO
L.28,NO.5,1992には、Co/Cu/Co
の非常に簡単な層構造を有するいわゆるサンドイッチ膜
の構成が開示されている。ここでは、一方のCo表面は
自然酸化によるCo酸化膜が形成されている。
【0010】 文献(2)「Effectivene
ss of Antiferromagnetic O
xide Exchange for Sandwic
hLayers」 IEEE TRANSACTION
S ON MAGNETICS,VOL.29,NO.
6 1993には、Co/Cu/Coのサンドイッチ膜
上に、10%酸素ガスを用いた反応性スパッタ法でCo
酸化膜が形成された構成が開示されている。このCo酸
化膜はネール点が室温付近(290K)の反強磁性体で
あるCoOと考えられている。
【0011】上記の文献(1)や文献(2)のサンドイ
ッチ膜では、極低温で磁気抵抗効果が得られることが報
告されている。このようなサンドイッチ膜においてGM
Rが得られる理由としては、上部のCo層の表面酸化、
あるいは反応性スパッタ法によるCoOの形成により、
CoOとCo間の交換相互作用による反強磁性的配列が
生じ、非磁性層を挟んだ両磁性層間に保磁力の差がで
き、GMRが得られるのである。
【0012】 文献(3)「Co/Cu/Coサンド
イッチ膜の磁気抵抗効果」日本応用磁気学会誌 vo
1.18,No.2 1994には、FeあるいはNi
Feからなる下地の上にCo/Cu/Coサンドイッチ
膜を形成し、さらに自然酸化によってCo層表面にCo
酸化膜が形成される構成が開示されている。上記構成に
よれば、Co酸化膜が形成されることで反転磁界の差が
生じ、磁化の反平行状態が実現されることで抵抗変化を
得ている。この文献ではFeあるいはNiFeの下地層
を用いることにより室温においても6〜15%と高いG
MRが得られることが報告されている。
【0013】 文献(4)「Co/Cu/Coサンド
イッチ膜の磁気抵抗効果におけるバッファ層の効果」日
本応用磁気学会誌 vo1.19,No.2 1995
には、文献(3)と同様に、FeあるいはNiFeから
なる下地の上にCo/Cu/Coサンドイッチ膜を形成
する構成が開示されている。
【0014】 特開平7−66033号公報には、基
板/バッファ層/Co/Cu/Co、あるいは基板/バ
ッファ層/Co/Cu/Co/キャップ層の構成が開示
されている。ここで、上記バッファ層あるいはキャップ
層には反強磁性体のCoOを用いており、それによって
隣接するCo層の磁化を固定している。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】上記、の先行技術
では、反応性スパッタ法にて固定磁化層であるCo層に
CoOを積層することによってCo層の磁化を固定して
いる。しかしながら、このような反強磁性体であるCo
Oの場合、ネール点が低いために、室温においてCo層
の磁化を固定するための交換結合磁界が弱く、磁化の反
平行状態が実現できない。つまり、低温においてしか磁
気抵抗効果が得られないという問題を有している。
【0016】また、上記、、の先行技術では、固
定磁化層であるCo層の表面を自然酸化する構成であ
る。しかしながら、自然酸化膜を用いているために、固
定磁化層の磁気特性の制御が容易ではなく、固定磁化層
の反転磁界の大きさが小さくなり、外部磁界に対して安
定でないという問題を有している。特に、磁界感度を向
上させるためにNiFeを自由磁化層に用いた構造のも
のでは、固定磁化層の反転磁界が最大でも200Oeと
非常に小さく、実用的ではない。
【0017】また、ないしの先行技術では、Co/
Cu/Coサンドイッチ膜の下地層に関する報告がなさ
れている。しかしながら、の文献(4)には、下地層
のないCo/Cu/Coサンドイッチ構造ではGMRは
得られないことが記載されている。つまり、抵抗変化率
は下地材料およびその膜厚に対する依存性が大きく、F
eでは70Å程度、NiFeではさらに厚い100Å程
度の下地層を形成しなければ高い抵抗変化率が得られな
いという問題を有している。
【0018】さらに、高い再生出力を得るためには、膜
の抵抗値を低下させることなく高い抵抗変化率を得るこ
とが必要である。しかしながら、FeやNiFeは比抵
抗が20〜30μΩcmと小さく、膜の抵抗値を低下さ
せるという問題もある。また、下地層が不可欠であるた
めに膜構成が制約されることから、磁気抵抗効果素子の
構造設計の自由度が少ないという問題もある。
【0019】本発明は、上記従来の問題点を解決するた
めになされたもので、その目的は、室温で保磁力の高い
強磁性を示す酸化コバルト層を設けることによって、室
温においても高い抵抗変化率と大きい抵抗変化量とが得
られる磁気抵抗効果素子およびその製造方法を提供する
ことにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明の請求項1に記載の磁気抵抗効果素子は、
外部磁界に応じて磁化方向が回転する第1の磁性層と、
非磁性層と、磁化方向が一方向に固定される第2の磁性
層とがこの順に配置され、第1の磁性層と第2の磁性層
との磁化の向きのなす角によって磁気抵抗効果をもつ磁
気抵抗効果薄膜を備えた磁気抵抗効果素子において、上
記磁気抵抗効果薄膜の第2の磁性層に接して強磁性の酸
化コバルト層が設けられることを特徴としている。
【0021】請求項2に記載の磁気抵抗効果素子は、請
求項1に記載の構成に加えて、上記第1の磁性層、非磁
性層、第2の磁性層、および酸化コバルト層が基板上に
この順に積層されることを特徴としている。
【0022】請求項3に記載の磁気抵抗効果素子は、請
求項1に記載の構成に加えて、上記酸化コバルト層、第
2の磁性層、非磁性層、および第1の磁性層が基板上に
この順で積層されることを特徴としている。
【0023】上記請求項1、2、又は3に記載の構成に
よれば、第2の磁性層の磁化方向は一方向に固定された
状態となっており、非磁性層によって磁気的に分離され
た第1の磁性層の磁化方向は自由に回転するようになっ
ている。ここに磁界が与えられると、第1の磁性層の磁
化方向が決定される。2つの磁性層の磁化方向が180
°逆の反平行状態のときには膜の抵抗値は最大となる一
方、磁化方向が平行状態のときには抵抗値は最小となっ
て、磁気抵抗効果が得られる。
【0024】このとき、磁化方向を固定する第2の磁性
層に接して設けられた酸化コバルト層は室温で高保磁力
の強磁性体であり、第2の磁性層と交換結合すること
で、2つの磁性層間に大きな保磁力の差を形成すること
が可能となる。この結果、従来の反強磁性体であるCo
Oを用いた場合では低温でしか磁気抵抗効果が得られな
かったが、本願発明では室温においても高い抵抗変化率
を得ることができる。また、下地層を設けなくとも室温
においてGMRが現れるので、膜構成を簡単にすること
ができる。さらに、酸化コバルト層は比抵抗が高いこと
から膜全体の抵抗値を下げることなく大きな抵抗変化量
が得られるため、再生出力の高い磁気ヘッドや磁気セン
サを作成することが可能となる。
【0025】また、基板側に第1の磁性層がある請求項
2の構成の場合には抵抗変化が得やすく、基板側に酸化
コバルト層がある請求項3の構成の場合には第1の磁性
層にどのような軟磁性材料を用いても反転磁界を高くす
ることができる。
【0026】請求項4に記載の磁気抵抗効果素子の製造
方法は、外部磁界に応じて磁化方向が回転する第1の磁
性層と、非磁性層と、磁化方向が一方向に固定される第
2の磁性層とがこの順に配置され、第1の磁性層と第2
の磁性層との磁化の向きのなす角によって磁気抵抗効果
をもつ磁気抵抗効果薄膜を備え、磁気抵抗効果薄膜の第
2の磁性層に接して強磁性の酸化コバルト層が設けられ
る磁気抵抗効果素子の製造方法において、強磁性の酸化
コバルト層を、スパッタターゲットとしてコバルトを用
い、スパッタガスとして酸素と不活性ガスの混合ガスを
用い、上記混合ガスの酸素分圧をコバルトの酸化物が保
磁力の高い強磁性となる酸素分圧にして反応性スパッタ
にて形成することを特徴としている。
【0027】上記の方法によれば、コバルトが混合ガス
中の酸素によって酸化され、酸化コバルト層が形成され
る。このとき、スパッタガスにおける酸素分圧がコバル
トの酸化物が保磁力の高い強磁性となる酸素分圧として
いるので、ネール点の低い反強磁性体のCoOではなく
保磁力の高い酸化コバルト層が形成される。
【0028】このように、スパッタ条件をコントロール
して酸化コバルト層を形成するので、その磁気特性を容
易に制御することができる。したがって、第2の磁性層
の反転磁界が高くなるように磁気抵抗効果素子を作成す
ることができる。これにより、外部磁界に対して安定な
磁気抵抗効果素子を作成することが可能となる。
【0029】また、従来のコバルトの自然酸化膜では膜
の最上層にしか形成できないので第2の磁性層は必然的
に膜の上部にしか配置できなかったが、本願発明では反
応性スパッタ法にて形成するので第2の磁性層を最下層
に配置することもできる。したがって、磁気抵抗効果素
子の設計の自由度を広くすることが可能となり、磁気ヘ
ッドや磁気センサに応用する際に構造上の制約が緩和さ
れる。
【0030】請求項5に記載の磁気抵抗効果素子の製造
方法は、請求項4に記載の方法に加えて、上記強磁性の
酸化コバルト層を、該酸化コバルト層の保磁力が300
Oe以上となるスパッタ条件を用いて形成することを特
徴としている。
【0031】上記の方法によれば、保磁力が300Oe
以上の酸化コバルト層が形成されるので、第2の磁性層
を酸化コバルト層に積層、あるいは酸化コバルト層を第
2の磁性層に積層した場合でも高保磁力の積層膜が形成
される。これにより、室温においても高いGMRが得ら
れる磁気抵抗効果素子を製造することができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
〔実施の形態1〕本発明の実施の形態1について図1お
よび図14に基づいて説明すれば、以下の通りである。
図1に示すように、本実施の形態にかかる磁気抵抗効果
素子は、基板1上に、自由磁化層2と、非磁性層3と、
固定磁化層4と、Co酸化膜5とが順次積層された構成
である。
【0033】Co酸化膜(酸化コバルト層)5は、室温
において保磁力の高い強磁性を示すCo酸化物からな
り、交換結合によって隣接する固定磁化層4の磁化を固
定するためのものである。ここで、Co酸化膜5の比抵
抗は数Ωcmである。
【0034】固定磁化層(第2の磁性層)4は強磁性体
の薄膜からなり、Co酸化膜5のような高保磁力膜と交
換結合して磁化が一方向に固定される層である。固定磁
化層4としては、Co層やNiFe層などを用いること
ができる。ただし、NiFe層を用いた場合にはNiF
eが軟磁性材料であるので反転磁界がCoに比べて小さ
くなり、また抵抗変化率も一般的にはCoを用いた場合
に比べてNiFeでは小さくなる傾向がある。
【0035】非磁性層3は非磁性の金属からなり、上記
固定磁化層4と自由磁化層2とを磁気的に分離するため
のものである。非磁性層3としては、Cu層などを用い
ることができる。
【0036】自由磁化層(第1の磁性層)2は強磁性体
の薄膜からなり、その磁化方向は外部磁界がゼロのとき
には固定磁化層4の磁化方向に対して90°の方向を向
くように作成されている。そして、外部磁界の変化に応
じて自由磁化層2の磁化方向は自由に回転するようにな
っている。自由磁化層2としては、Co層、NiFe
層、CoとNiFeとの複合層、あるいはCoとFeと
の複合層などを用いることができる。
【0037】上記の構成によれば、外部磁界が与えられ
ると、自由磁化層2の磁化方向が決まる。そして、自由
磁化層2と固定磁化層4との磁化方向が180°逆の反
平行状態のときには膜の抵抗値が最大になり、2層の磁
化方向が同一の平行状態のときには膜の抵抗値が最小に
なる。
【0038】このとき、固定磁化層4に接して設けられ
たCo酸化膜5は室温で保磁力の高い強磁性を示すの
で、固定磁化層4の磁化を強固に固定することになる。
したがって、固定磁化層4と自由磁化層2との間に大き
な保磁力の差を形成することが可能となり、この結果、
室温においても高い抵抗変化率を得ることができる。
【0039】以下に、上記磁気抵抗効果素子のサンプル
を示す。サンプル#1は、コーニング社製#0211ガ
ラス基板、またはSi(100)基板からなる基板1上
に、膜厚50ÅのCoからなる自由磁化層2と、膜厚2
6ÅのCuからなる非磁性層3と、膜厚50ÅのCoか
らなる固定磁化層4と、膜厚200ÅのCo酸化膜5と
を積層して作成した。
【0040】各層のスパッタ条件は次の通りである。C
o層はRF(高周波)マグネトロンスパッタ法で、Ar
圧が5mTorr、成膜速度が40Å/minの条件を
用い、Cu層はDC(直流)マグネトロンスパッタ法
で、Ar圧が5mTorr、成膜速度が32Å/min
の条件を用い、Co酸化物はRFマグネトロンスパッタ
法で、Ar+0.95%O2 ガスを用いて3mTor
r、成膜速度が50Å/minの条件を用いた。
【0041】このときのCo酸化膜5のスパッタ条件と
磁気特性の詳細は後述するが、図14に示すように、C
o酸化膜5は保磁力が415Oe、角形比0.7Ms4
90emu/ccの強磁性を示した。
【0042】サンプル#1の抵抗変化率および反転磁界
の測定結果を表1に示す。各測定結果は、基板1がガラ
ス基板とSi基板との場合についてそれぞれ示してい
る。なお、表1の各層は、左側から順に基板1に積層さ
れているものとする。
【0043】
【表1】
【0044】表1から、抵抗変化率は、ガラス基板では
0.3%であり抵抗変化が非常に小さかったが、Si基
板では3.2%と高い結果が得られた。これは、自由磁
化層2であるCo層が比較的薄いため、基板1が結晶性
であるか非晶質であるかによって膜の結晶性が大きく影
響を受けているからと考えられる。
【0045】サンプル#2は、サンプル#1における自
由磁化層2の膜厚を80Åに変えて作成した。自由磁化
層2の膜厚を厚くすると、抵抗変化率はガラス基板およ
びSi基板で各々0.9%、3.65%と若干良好な結
果が得られたが、反転磁界はSi基板で低下した。ここ
で、ガラス基板を用いた場合に、サンプル#1よりもサ
ンプル#2の方が若干抵抗変化率が高くなっているの
は、自由磁化層2であるCo層の膜厚が厚くなることに
より、結晶性が良くなっているからと考えられる。
【0046】なお、上記サンプル#1・#2のCu層は
その膜厚を26Åとしたが、20〜40Åとしても上記
同様の結果が得られた。
【0047】サンプル#1との比較のために、Co酸化
膜5を設けずに、固定磁化層4のCo表面を自然に酸化
させた場合の結果を比較サンプル#1として表1に示
す。このようにNiFeなどの下地層がなく自然酸化膜
を用いた構造では、各基板で抵抗変化率が0.15%、
0.45%とほとんど抵抗変化が得られなかった。特
に、サンプル#1では良好な結果が得られたSi基板に
おいても抵抗変化率が低いことが確認された。
【0048】以上のように、本実施の形態の磁気抵抗効
果素子には、固定磁化層4に接して保磁力の大きな強磁
性のCo酸化膜5が設けられているので、固定磁化層4
と自由磁化層2との間に大きな保磁力の差を形成するこ
とが可能となる。この結果、室温においても高い抵抗変
化率を得ることができる。
【0049】また、非磁性層3の両側の強磁性体間に大
きな保磁力の差を形成することができるので、Feある
いはNiFeなどの下地層を用いなくとも室温において
もGMRを得ることができ、膜構成を簡単にすることが
できる。さらに、Co酸化膜5はΩcmのオーダーと比
抵抗が高いことから膜全体の抵抗値を下げることなく大
きな抵抗変化量が得られるため、磁気ヘッドや磁気セン
サに適用した場合にその再生出力が高いものを作成する
ことが可能となる。
【0050】〔実施の形態2〕本発明の実施の形態2に
ついて図2、図4、および図5に基づいて説明すれば、
以下の通りである。なお、説明の便宜上、前記の実施の
形態の図面に示した部材と同一の部材には同一の符号を
付記し、その説明を省略する。
【0051】本実施の形態にかかる磁気抵抗効果素子
は、Co酸化膜5を基板1側に配置し、最上層に酸化防
止膜6を設けた構成である。即ち、図2に示すように、
基板1上に、Co酸化膜5と、固定磁化層4と、非磁性
層3と、自由磁化層2と、酸化防止膜6とが順次積層さ
れた構成である。
【0052】酸化防止膜6は非磁性の金属からなり、自
由磁化層2の表面酸化を防止するためのものである。た
だし、自由磁化層2の表面酸化が悪影響を及ぼさない場
合には酸化防止膜6を設けなくてもよい。
【0053】上記の構成によれば、Co酸化膜5によっ
て固定磁化層4の磁化が固定され、固定磁化層4が高保
磁力となる一方、酸化防止膜6によって酸化が防止され
た自由磁化層2は低保磁力となるので、固定磁化層4と
自由磁化層2との保磁力の差を大きくすることができ
る。
【0054】以下に、上記磁気抵抗効果素子のサンプル
を示す。サンプル#3は、基板1上に、膜厚200Åの
Co酸化膜5と、膜厚20ÅのCoからなる固定磁化層
4と、膜厚26ÅのCuからなる非磁性層3と、膜厚5
0ÅのCoからなる自由磁化層2と、膜厚20Åの酸化
防止膜6とを積層して作成した。各層の薄膜の形成条件
はサンプル#1の場合と同じである。
【0055】サンプル#3の抵抗変化率および反転磁界
の測定結果を前記表1に示す。表1から、抵抗変化率は
ガラス基板で10.1%、Si基板で8.2%とともに
非常に高い結果が得られた。つまり、サンプル#1と比
較すると、Co酸化膜5を基板1側にした構造の方が、
抵抗変化率および反転磁界ともに良好であることがわか
る。
【0056】また、図4に、ガラス基板を用いた場合の
サンプル#3の抵抗変化曲線を示す。ここで、抵抗変化
曲線は、磁界がゼロでの立ち上がりが急峻で、最大の抵
抗値をできるだけ高い磁界まで維持するような特性が好
ましい。これは、磁界感度が良好で、反転磁界が高く外
部磁界に対して非常に安定な特性であることを意味して
いる。例えば、もし、最大の抵抗値を示した後にすぐに
最小の抵抗値となるような抵抗変化を示す場合、最大の
抵抗値を示す磁界以上の外部磁界が印加されたときに徐
々に抵抗変化が変わり、膜の特性が変化してしまうこと
になる。図4から、サンプル#3の構成は、磁界感度お
よび反転磁界ともに良好であることがわかる。
【0057】比較として、Co酸化膜5の代わりに高保
磁力の強磁性体としてCo−Ptからなる膜を用いた場
合の抵抗変化曲線を図5に示す(表1に記載なし)。こ
のときの磁気抵抗効果素子は、膜厚65ÅのCo−P
t、膜厚50ÅのCo、膜厚26ÅのCu、膜厚50Å
のCo、および膜厚20ÅのCuが順に積層された構成
である。これによれば、抵抗変化率は約6%でありサン
プル#3に比べてかなり低くなっている。このように抵
抗変化率が小さくなるのは、Co−Pt膜には非磁性体
のPtが20at%含有されているので、界面での散乱
が減少するからと考えられる。
【0058】また、Co−Pt膜は下地層がない場合で
も簡単に高保磁力が得られるが、金属材料であるのでそ
の比抵抗は20〜60μΩcmと小さい。したがって、
サンドイッチ膜を形成した場合には膜全体の抵抗値を下
げることになり、実質的に抵抗変化量が少なく、磁気ヘ
ッドに用いた場合に再生出力の低下を引き起こすことに
なる。
【0059】これに対して、Co酸化膜5はCo−Pt
膜と同じように高保磁力膜であるが、その比抵抗がCo
−Ptよりも6桁高いΩcmのオーダーであるために、
膜全体の抵抗値を下げることがない。したがって、上記
のように実際にはCo酸化膜5を用いた膜の方が抵抗変
化率は大きいが、例え両者が同じ抵抗変化率であっても
Co酸化膜5を用いた膜の方が抵抗変化量は大きくな
る。例えば、Co酸化物の抵抗変化量は6.5Ωであ
り、Co−Ptでは5.4Ωであり、両者に20%程度
の差がある。
【0060】また、図4と図5を比較すると、Co酸化
膜5を用いた構成ではCo−Pt膜を用いた構成と比べ
て抵抗変化率が大きいだけでなく、磁界に対する感度も
良好であることがわかる。これは、Co酸化膜5とCo
−Pt膜は同じ高保磁力の強磁性体であるものの、その
磁区構造が異なっているために自由磁化層2に対する磁
気的な影響が変化して感度の違いが生じているものと考
えられる。
【0061】サンプル#4は、サンプル#3における自
由磁化層2の膜厚を20Åに変えて作成した。表1か
ら、自由磁化層2の膜厚を薄くすることによって、抵抗
変化率および反転磁界ともに良好な結果が得られた。
【0062】サンプル#5は、酸化防止膜6を設けず
に、自由磁化層2としてCoの代わりにNiFeを用い
て作成した。この場合には、反転磁界はほとんど変わら
ないが、抵抗変化率が大幅に減少した。サンプル#5の
構成では、非磁性層3であるCuとの界面(上側)にC
o層がないために抵抗変化率が小さくなっている。な
お、サンプル#5の構成に酸化防止膜6としてCu層を
設けた場合には、Cu層に電流が分流してさらに抵抗変
化率が小さくなると考えられる。
【0063】以上のように、本実施の形態の磁気抵抗効
果素子は、実施の形態1と同様に、固定磁化層4に接し
て強磁性のCo酸化膜5が設けられているので、実施の
形態1と同様に、高い抵抗変化率を得ることが可能とな
る。さらに、基板1上にCo酸化膜5を設ける構成は、
通常の自然酸化を利用したものでは形成が不可能であ
る。
【0064】なお、自由磁化層2をCoで形成した場合
には、Coの表面が酸化されて固定磁化層4との保磁力
の差が小さくなって大きなGMRは得られないので、酸
化防止膜6を形成した方がよい。一方、自由磁化層2を
NiFeで形成した場合には、表面が多少酸化されても
ソフト性は維持されるため、酸化防止膜6を形成する必
要はない。
【0065】〔実施の形態3〕本発明の実施の形態3に
ついて図3に基づいて説明すれば、以下の通りである。
なお、説明の便宜上、前記の実施の形態の図面に示した
部材と同一の部材には同一の符号を付記し、その説明を
省略する。
【0066】本実施の形態にかかる磁気抵抗効果素子
は、図3に示すように、基板1上に、Co酸化膜5、固
定磁化層4、非磁性層3、自由磁化層2、非磁性層1
3、固定磁化層14、およびCo酸化膜15をこの順に
積層した構成である。
【0067】非磁性層13は非磁性層3と、固定磁化層
14は固定磁化層4と、Co酸化膜15はCo酸化膜5
とそれぞれ同じ材料からなるとともに同じ働きをする。
つまり、上記の構成は自由磁化層2に対して非磁性層3
・13、固定磁化層4・14、およびCo酸化膜5・1
5を両側に配置した対称構造となっている。
【0068】上記の構成によれば、自由磁化層2の磁化
は2つの固定磁化層4・14の磁化方向に対して角度変
化が生じ、伝導電子の散乱する界面が増加するために抵
抗変化がさらに大きくなる。これにより、より高い抵抗
変化率を得ることが可能となる。
【0069】以下に、上記磁気抵抗効果素子のサンプル
を示す。サンプル#6は、基板1上に、サンプル#3と
同じCo酸化膜5と固定磁化層4と非磁性層3と自由磁
化層2とを積層し、さらに膜厚26ÅのCuからなる非
磁性層13と、膜厚50ÅのCoからなる固定磁化層1
4と、膜厚200ÅのCo酸化膜15とを積層して作成
した。各層の薄膜の形成条件はサンプル#1の場合と同
じである。
【0070】サンプル#6の抵抗変化率および反転磁界
の測定結果を前記表1に示す。表1から、サンプル#3
と比較して、サンプル#6の抵抗変化率はガラス基板で
は10%前後とほとんど変わらないが、Si基板では最
大の9.5%が得られた。
【0071】〔実施の形態4〕本発明の実施の形態4に
ついて図6、図7、図9および図10に基づいて説明す
れば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、前記の
実施の形態の図面に示した部材と同一の部材には同一の
符号を付記し、その説明を省略する。
【0072】本実施の形態にかかる磁気抵抗効果素子
は、実施の形態2の構成において、自由磁化層2を2層
構造とした構成である。つまり、基板1上に、Co酸化
膜5、固定磁化層4、非磁性層3、2層構造の自由磁化
層2、および酸化防止膜6がこの順に積層されている。
これによれば、自由磁化層2が軟磁性化されて保磁力が
低下するので、磁界感度を高くすることができる。
【0073】以下に、上記磁気抵抗効果素子のサンプル
を示す。サンプル#7は、サンプル#3の膜厚50Åの
Co(自由磁化層2)を、膜厚15ÅのCoと膜厚70
ÅのFeとに変えて作成した。Fe以外の各層の薄膜の
形成条件はサンプル#1の場合と同じである。
【0074】サンプル#7の抵抗変化率および反転磁界
の測定結果を前記表1に示す。また、図6にガラス基板
を用いた場合のサンプル#7の抵抗変化曲線を示す。こ
れによれば、磁界感度および反転磁界ともに良好である
ことがわかる。
【0075】サンプル#7との比較のために、Fe下地
層を使用した場合の結果を比較サンプル#2として表1
に示す。Fe下地層を使用することで抵抗変化率は10
%以上の高い値が得られる。しかしながら、図7に示す
ように、抵抗変化曲線は、約50Oeで最大の抵抗値を
示した後、徐々に減少し、300Oe付近で再び最小の
抵抗値となる。このような抵抗変化を示す場合、最大の
抵抗値を示す磁界以上の外部磁界が印加された場合、徐
々に抵抗変化が変わってしまう。
【0076】サンプル#8は、サンプル#3の膜厚50
ÅのCo(自由磁化層2)を、膜厚15ÅのCoと膜厚
100ÅのNiFeとに変えて作成した。NiFe以外
の各層の薄膜の形成条件はサンプル#1の場合と同じで
ある。
【0077】サンプル#8の抵抗変化率および反転磁界
の測定結果を前記表1に示す。また、図9にガラス基板
を用いた場合のサンプル#8の抵抗変化曲線を示す。こ
れによれば、サンプル#7と比較して抵抗変化率および
反転磁界ともに若干低下しているが、良好な結果が得ら
れた。また、図9に示すように、最大の抵抗値を高い磁
界まで維持した状態の抵抗変化曲線であり、外部磁界に
対して非常に安定な特性であった。また、NiFeを用
いていることによる磁界感度の増加が確認された。
【0078】サンプル#9は、サンプル#8におけるN
iFeの膜厚を70Åに変えて作成した。NiFeの膜
厚を薄くすると、抵抗変化率および反転磁界ともにサン
プル#8よりも良好な結果が得られた。
【0079】サンプル#8との比較のために、NiFe
下地層を使用した場合の結果を比較サンプル#3として
表1に示すとともに、抵抗変化曲線を図10に示す。こ
の構成では磁界感度は高いものの、固定磁化層4の反転
磁界は150Oeであり、上記比較サンプル#2のFe
を用いた場合の反転磁界300Oeと比べてもさらに低
下した。これに対してサンプル#8はNiFeを用いた
場合にも反転磁界を高くすることができることがわか
る。
【0080】〔実施の形態5〕本発明の実施の形態5に
ついて図8に基づいて説明すれば、以下の通りである。
なお、説明の便宜上、前記の実施の形態の図面に示した
部材と同一の部材には同一の符号を付記し、その説明を
省略する。
【0081】本実施の形態にかかる磁気抵抗効果素子
は、実施の形態1の構成において、自由磁化層2を2層
構造とした構成である。つまり、基板1上に、2層構造
の自由磁化層2、非磁性層3、固定磁化層4、およびC
o酸化膜5がこの順に積層されている。これによれば、
自由磁化層2が軟磁性化されて保磁力が低下するので、
磁界感度を高くすることができる。
【0082】以下に、上記磁気抵抗効果素子のサンプル
を示す。サンプル#10は、基板1上に、膜厚100Å
のNiFeと膜厚15ÅのCoとからなる自由磁化層2
と、膜厚26ÅのCuからなる非磁性層3と、膜厚20
ÅのCoからなる固定磁化層4と、膜厚200ÅのCo
酸化膜5とを積層して作成した。NiFe以外の各層の
薄膜の形成条件はサンプル#1の場合と同じである。
【0083】サンプル#10の抵抗変化率および反転磁
界の測定結果を前記表1に示す。また、図8にガラス基
板を用いた場合のサンプル#10の抵抗変化曲線を示
す。これによれば、自由磁化層2が基板1側にある場合
においても反転磁界は350〜380Oeであり、前記
サンプル#3〜#9と比較すれば低いものの、良好な反
転磁界が得られた。また、図8に示すように、NiFe
を用いていることによる磁界感度の増加が確認された。
【0084】また、サンプル#10のCo酸化膜5を自
然酸化膜に変えた構成である前記比較サンプル#3と比
較すると、抵抗変化率および反転磁界ともに良好な結果
が得られていることがわかる。
【0085】以上の実施の形態4および実施の形態5に
示すように、上記磁気抵抗効果素子は、自由磁化層2
を、Coと、FeあるいはNiFeとからなる2層構造
として磁界感度の向上を図った場合にも、高い磁界反転
を有する固定磁化層4が得られ、外部磁界に対して安定
な構成とすることが可能となる。
【0086】次に、上記実施の形態1ないし5における
Co酸化膜5のスパッタ条件について図11ないし図1
3に基づいて説明する。
【0087】混合ガスの総ガス圧が3mTorrと5m
Torrの場合の、酸素分圧に対するCo酸化膜の保磁
力の変化を測定した。なお、この測定では、Co酸化膜
の膜厚を約1500Åとし、成膜速度を約50Å/mi
nとした。
【0088】図11からわかるように、総ガス圧が3m
Torrの場合には、酸素分圧が2.5〜3×10-5
orrの範囲において400Oe以上の高い保磁力が得
られた。また、総ガス圧が5mTorrの場合には、酸
素分圧が2×10-5Torrのときに高い保磁力が得ら
れた。これにより、総ガス圧の低い方が、比較的広い範
囲の酸素分圧で高い保磁力が得られることがわかる。
【0089】次に、3mTorrの総ガス圧で、酸素分
圧が2.7×10-5Torrの場合の膜厚依存性を測定
した。図12からわかるように、Co酸化膜は膜厚依存
性が大きく、薄い膜ほど保磁力の低下が見られる。この
場合では、膜厚が100Åで保磁力がゼロとなった。
【0090】そこで、さらにCo酸化膜の膜厚が100
Åと200Åの場合の、各膜厚に対する酸素分圧の依存
性を調べた。図13に酸素分圧に対するCo酸化膜の保
磁力の変化として示す。図13から、膜厚によって最適
な酸素分圧が異なり、高い保磁力を得るためには膜厚が
薄くなるにしたがって酸素分圧を低くする必要があるこ
とがわかる。これにより、100Å程度の膜厚において
も、酸素分圧を最適化することで高保磁力が得られるこ
とがわかる。
【0091】次に、基板上にCo酸化膜が1層の場合を
サンプル#11、Co層/Co酸化膜の2層の場合をサ
ンプル#12、およびCo酸化膜/Co層の2層の場合
をサンプル#13として各々磁気特性を測定した。この
とき、Co酸化膜は上記スパッタ条件のうち高い保磁力
が得られる総ガス圧3mTorr、O2 分圧2.85×
10-5Torrの条件を用いて膜厚200Åとし、Co
層は50Åとした。これらの測定結果を表2に示す。
【0092】
【表2】
【0093】表2から、ばらつきはあるが、Co層がC
o酸化膜の上下どちらにあっても、2層膜において高い
保磁力を維持することができていることがわかる。
【0094】以上のように、実施の形態1ないし5にお
けるCo酸化膜5(15)は、総ガス圧、酸素分圧、あ
るいは投入電力を適切に選んで、反応性スパッタ法にて
形成されるので、ネール点の低い反強磁性体のCoOで
はなく保磁力の高い酸化コバルト層が形成される。
【0095】このように、スパッタ条件をコントロール
してCo酸化膜5を形成するので、その磁気特性を容易
に制御することができ、固定磁化層4の反転磁界が高く
なるように磁気抵抗効果素子を作成することができる。
【0096】また、従来のコバルトの自然酸化膜では膜
の最上層にしか形成できないので固定磁化層4は必然的
に膜の上部にしか配置できなかったが、反応性スパッタ
法にて形成するので上記実施の形態2ないし4に示した
ように固定磁化層4を最下層に配置することもできる。
この場合にも、高い抵抗変化を得ることができる。した
がって、磁気抵抗効果素子の設計の自由度を広くするこ
とが可能となり、磁気ヘッドや磁気センサに応用する際
に構造上の制約が緩和される。
【0097】また、保磁力が300Oe以上のCo酸化
膜5が形成されるので、固定磁化層4を積層、あるいは
固定磁化層4に積層した場合でも高保磁力の積層膜が形
成される。これにより、室温においても高いGMRが得
られる磁気抵抗効果素子を製造することが可能となる。
【0098】なお、最適なスパッタ条件は装置間の差が
あるため、必ずしも上記の条件が全てではないが、全体
的な傾向は同じであると考えられ、本発明で使用した条
件は一例として述べたものである。
【0099】なお、上記実施の形態1ないし5における
基板1はガラス基板およびSi基板としているが、これ
に限られることはなく、アルミナ基板やセラミック基板
などを用いることができることは言うまでもない。
【0100】
【発明の効果】以上のように、本発明の請求項1記載の
磁気抵抗効果素子は、磁気抵抗効果薄膜の第2の磁性層
に接して強磁性の酸化コバルト層が設けられる構成であ
る。
【0101】請求項2に記載の磁気抵抗効果素子は、請
求項1に記載の構成に加えて、上記第1の磁性層、非磁
性層、第2の磁性層、および酸化コバルト層が基板上に
この順に積層される構成である。
【0102】請求項3に記載の磁気抵抗効果素子は、請
求項1に記載の構成に加えて、上記酸化コバルト層、第
2の磁性層、非磁性層、および第1の磁性層が基板上に
この順で積層される構成である。
【0103】これにより、2つの磁性層間に大きな保磁
力の差を形成することができるので、室温においても高
い抵抗変化率を得ることが可能となる。また、下地層を
設けなくとも室温においてGMRが現れるので膜構成を
簡単にすることができる。さらに、酸化コバルト層は比
抵抗が高いことから膜全体の抵抗値を下げることなく抵
抗変化が得られるため、再生出力の高い磁気ヘッドや磁
気センサを作成することが可能となるという効果を奏す
る。
【0104】また、基板側に第1の磁性層がある請求項
2の構成の場合には抵抗変化が得やすく、基板側に酸化
コバルト層がある請求項3の構成の場合には第1の磁性
層にどのような軟磁性材料を用いても反転磁界を高くす
ることができるという効果を奏する。
【0105】請求項4に記載の磁気抵抗効果素子の製造
方法は、強磁性の酸化コバルト層を、スパッタターゲッ
トとしてコバルトを用い、スパッタガスとして酸素と不
活性ガスの混合ガスを用い、上記混合ガスの酸素分圧を
コバルトの酸化物が保磁力の高い強磁性となる酸素分圧
にして反応性スパッタにて形成する方法である。
【0106】これにより、スパッタ条件をコントロール
して酸化コバルト層を形成するので、その磁気特性を容
易に制御することができ、第2の磁性層の反転磁界が高
くなるように磁気抵抗効果素子を作成することができ
る。また、反応性スパッタ法にて形成されるので第2の
磁性層を最下層に配置することもでき、磁気抵抗効果素
子の設計の自由度を広くすることが可能となり、磁気ヘ
ッドや磁気センサに応用する際に構造上の制約が緩和さ
れるという効果を奏する。
【0107】請求項5に記載の磁気抵抗効果素子の製造
方法は、請求項4に記載の方法に加えて、上記強磁性の
酸化コバルト層を、該酸化コバルト層の保磁力が300
Oe以上となるスパッタ条件を用いて形成する方法であ
る。
【0108】これにより、保磁力が300Oe以上の酸
化コバルト層が形成されるので、室温においても高いG
MRが得られる磁気抵抗効果素子を製造することが可能
となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる磁気抵抗効果素
子の膜構造を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態2にかかる磁気抵抗効果素
子の膜構造を示す構成図である。
【図3】本発明の実施の形態3にかかる磁気抵抗効果素
子の膜構造を示す構成図である。
【図4】サンプル#3の磁気抵抗効果素子の抵抗変化曲
線を示すグラフである。
【図5】Co−Pt膜を備えた磁気抵抗効果素子の抵抗
変化曲線を示すグラフである。
【図6】サンプル#7の磁気抵抗効果素子の抵抗変化曲
線を示すグラフである。
【図7】比較サンプル#2の磁気抵抗効果素子の抵抗変
化曲線を示すグラフである。
【図8】サンプル#10の磁気抵抗効果素子の抵抗変化
曲線を示すグラフである。
【図9】サンプル#8の磁気抵抗効果素子の抵抗変化曲
線を示すグラフである。
【図10】比較サンプル#3の磁気抵抗効果素子の抵抗
変化曲線を示すグラフである。
【図11】反応性スパッタ法によって作成されるCo酸
化膜の酸素濃度依存性を示すグラフである。
【図12】Co酸化膜の膜厚依存性を示すグラフであ
る。
【図13】薄膜のCo酸化膜の酸素濃度依存性を示すグ
ラフである。
【図14】Co酸化膜の磁気特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 基板 2 自由磁化層(第1の磁性層) 3・13 非磁性層 4・14 固定磁化層(第2の磁性層) 5・15 Co酸化膜(酸化コバルト層) 6 酸化防止膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 出口 治彦 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 釆山 和弘 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 吉良 徹 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】外部磁界に応じて磁化方向が回転する第1
    の磁性層と、非磁性層と、磁化方向が一方向に固定され
    る第2の磁性層とがこの順に配置され、第1の磁性層と
    第2の磁性層との磁化の向きのなす角によって磁気抵抗
    効果をもつ磁気抵抗効果薄膜を備えた磁気抵抗効果素子
    において、 上記磁気抵抗効果薄膜の第2の磁性層に接して強磁性の
    酸化コバルト層が設けられることを特徴とする磁気抵抗
    効果素子。
  2. 【請求項2】上記第1の磁性層、非磁性層、第2の磁性
    層、および酸化コバルト層は、基板上にこの順に積層さ
    れることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果素
    子。
  3. 【請求項3】上記酸化コバルト層、第2の磁性層、非磁
    性層、および第1の磁性層は、基板上にこの順で積層さ
    れることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果素
    子。
  4. 【請求項4】外部磁界に応じて磁化方向が回転する第1
    の磁性層と、非磁性層と、磁化方向が一方向に固定され
    る第2の磁性層とがこの順に配置され、第1の磁性層と
    第2の磁性層との磁化の向きのなす角によって磁気抵抗
    効果をもつ磁気抵抗効果薄膜を備え、磁気抵抗効果薄膜
    の第2の磁性層に接して強磁性の酸化コバルト層が設け
    られる磁気抵抗効果素子の製造方法において、 強磁性の酸化コバルト層を、スパッタターゲットとして
    コバルトを用い、スパッタガスとして酸素と不活性ガス
    の混合ガスを用い、上記混合ガスの酸素分圧をコバルト
    の酸化物が保磁力の高い強磁性となる酸素分圧にして反
    応性スパッタにて形成することを特徴とする磁気抵抗効
    果素子の製造方法。
  5. 【請求項5】上記強磁性の酸化コバルト層を、該酸化コ
    バルト層の保磁力が300Oe以上となるスパッタ条件
    を用いて形成することを特徴とする請求項4に記載の磁
    気抵抗効果素子の製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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