JPH1033568A - 歯科用樹脂成形体製造用分離剤および該分離剤を用いた歯科用樹脂成形体の製法 - Google Patents

歯科用樹脂成形体製造用分離剤および該分離剤を用いた歯科用樹脂成形体の製法

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JPH1033568A
JPH1033568A JP8199432A JP19943296A JPH1033568A JP H1033568 A JPH1033568 A JP H1033568A JP 8199432 A JP8199432 A JP 8199432A JP 19943296 A JP19943296 A JP 19943296A JP H1033568 A JPH1033568 A JP H1033568A
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separating agent
molding
gypsum mold
dental resin
resin molded
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JP8199432A
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Sadayuki Yuta
貞之 夕田
Taizo Hamada
泰三 浜田
Shinichi Nakanoda
紳一 中野田
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Sankin Industry Co Ltd
Original Assignee
Sankin Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 石膏を用いた歯科用樹脂成形体の成形工程で
用いられる分離剤を利用し、歯科用樹脂成形体の機械的
特性に悪影響を及ぼすことなく、しかも少ない抗菌剤の
使用量で効率よく抗菌性を与えることのできる技術を確
立すること。 【解決手段】 石膏型を用いて歯科用樹脂成形体を製造
するに当たり、石膏型の成形面に塗布される分離剤であ
って、抗菌性金属が担持された無機質粉末を含有せしめ
た歯科用樹脂成形体製造用分離剤、および石膏型を用い
て歯科用樹脂成形体を製造する際に、石膏型の成形面に
上記分離剤を塗布して分離膜を形成した後、石膏型内に
成形用樹脂材料を填入して硬化させると共に、硬化した
樹脂成形体の表面に前記分離剤中の無機質粉末を埋没せ
しめ、次いで石膏型から脱型することにより、抗菌性金
属を担持した無機質粉末を成形体表面に移行させて、抗
菌性に優れた歯科用樹脂成形体を得る方法を開示する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、石膏型を用いて歯
科用樹脂成形体を製造する際に用いられる成形用分離
剤、および該分離剤を用いて抗菌性に優れた歯科用樹脂
成形体を製造する方法に関し、特に抗菌性金属が担持さ
れた無機質粉末を該分離剤中に含有せしめ、石膏型から
の樹脂成形体の脱型を容易にすると共に、該石膏型の表
面性状を均一化することにより該樹脂成形体の表面性状
を改善し、併せて樹脂成形体の表面に抗菌性を与えるこ
とのできる分離剤、および該分離剤を用いて抗菌性に優
れた歯科用樹脂成形体を製造する方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】樹脂を用いて義歯床、歯冠、人工歯など
の歯科用樹脂成形体を作成する際の手順としては、例え
ば、「スキンナー歯科材科学」(医歯薬出版株式会社、
昭和49年10月31日発行)第175〜176頁や、
「歯科理工学実習指針」(医歯薬出版株式会社、昭和5
1年2月25日発行)第33〜40頁などにも示されて
いる様に、通常次の様な方法が採用される。
【0003】即ち、まず患者の口腔内の精密印象を採取
し、石膏を流し込んで副模型を作製した後、この石膏模
型を用いて補綴用ワックス等により補綴物を作製する。
そして咬合器等で再現性を確認した後、重合フラスコに
埋め込み、埋没材が固化した後、先に成形した補綴用ワ
ックスを電気炉等で融解流出させて空洞とし、その空洞
にメタクリル酸エステルなどの成形用樹脂材料をペース
ト状もしくはスラリー状として填入し、これらを加熱重
合等させることによって歯科用樹脂成形体を作製する。
このとき、重合硬化する前の段階でモノマー成分が石膏
型の面に浸透して樹脂成形体と石膏型が接着するのを防
止すると共に成形体の表面を平滑に仕上げ、あるいは石
膏型内の水分が樹脂成形体の内部へ混入して成形体が変
色するのを防止するため、成形用樹脂材料の填入に先立
って石膏型の内面に分離剤が塗布される。
【0004】ここで用いられる分離剤として最も一般的
なのは、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、
アルギン酸アンモニウム等の水溶性アルギン酸塩、ある
いはステアリン酸ナトリウムなどの脂肪酸塩、シリコー
ン系樹脂、フッ素系樹脂等であり、これらは石膏型表面
の細孔を塞いで前記モノマーの侵入を阻止すると共に、
石膏型表面に分離膜を形成して樹脂成形体の脱型を容易
にし、併せて成形体の表面性状を平滑且つ美麗に仕上げ
る作用を発揮する。
【0005】他方口腔内には、う蝕性連鎖球菌、乳酸桿
菌、カンジダ菌などの口腔内細菌が多数存在しており、
上記の様な歯科用樹脂成形体を口腔内で使用すると、こ
れらの細菌が成形体に付着して繁殖し、口腔内疾患を助
長する原因になることがある。そこでこうした問題を回
避するため、特開平8−119821号には、成形用樹
脂材料中にチアベンダゾール等の有機系抗菌剤、あるい
はゼオライトやシリカ・アルミナ等の担体に銀や亜鉛等
の抗菌性金属を担持させた無機系抗菌剤を混入させ、樹
脂成形体に抗菌性を与える方法が提案された。
【0006】ところが成形用樹脂中に抗菌剤を含有させ
る方法では、抗菌性が必要とされる成形体の表面のみな
らず成形体の全体に抗菌剤が均一に分散されるため、十
分な抗菌性を与えるには成形用樹脂中に多量の抗菌剤を
含有させなければならず、内部に混入された抗菌剤は殆
んど無駄になるばかりでなく、樹脂成形体の表面に十分
な抗菌性を与えるに足る量の抗菌剤を含有させると、成
形体の機械的特性や色調に悪影響を及ぼすという問題が
生じてくる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な事
情に着目してなされたものであって、その目的は、石膏
を用いた歯科用樹脂成形体の成形工程で用いられる分離
剤を利用し、歯科用樹脂成形体の機械的特性に悪影響を
及ぼすことなく、しかも少ない抗菌剤の使用量で効率よ
く抗菌性を与えることのできる技術を提供しようとする
ものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成すること
のできた本発明に係る歯科用樹脂成形体製造用分離剤と
は、石膏型を用いて歯科用樹脂成形体を製造するに当た
り、石膏型の成形面に塗布される分離剤であって、抗菌
性金属が担持された無機質粉末を含有するところにその
特徴を有している。
【0009】本発明で使用する上記無機質粉末は、追っ
て詳述する如く歯科用樹脂成形体の製造工程で該成形体
の表面に埋没して成形体の表面へ移行し、該成形体に抗
菌性を与える機能を果たすものであり、該無機質粉末に
担持させる抗菌性金属として特に好ましいのは銀および
/または銅である。また、成形体表面への上記無機質粉
末の移行をより効果的に行なう為、該無機質粉末をチタ
ネート系、アルミニウム系またはシラン系のカップリン
グ剤で予め処理しておき、成形用樹脂との親和性を高め
ておくことは、本発明を実施する際の好ましい実施態様
として推奨される。
【0010】また本発明に係る分離剤は、本来の分離効
果を有効に発揮させつつ樹脂成形体への抗菌性付与機能
を効果的に発揮させる意味から、アルギン酸塩、脂肪酸
塩、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂などを主成分とす
るものを使用することが望ましい。
【0011】また本発明の他の構成は、上記分離剤を用
いて抗菌性に優れた歯科用樹脂成形体を製造する方法を
提供するものであり、石膏型を用いて歯科用樹脂成形体
を製造する際に、石膏型の成形面に前述の分離剤を塗布
することによって分離膜を形成した後、石膏型内に成形
用樹脂材料を填入して硬化させると共に、硬化した樹脂
成形体の表面に前記分離剤中の無機質粉末を埋没せし
め、次いで石膏型から脱型することにより、樹脂成形体
の表面に抗菌性を与えるところにその特徴を有してい
る。
【0012】
【発明の実施の形態】上記の様に本発明の歯科用樹脂成
形体製造用分離剤は、石膏型を用いて歯科用樹脂成形体
を製造する際に用いられる分離剤中に、抗菌性金属を担
持させた無機質粉末を含有せしめたものであり、樹脂成
形体の脱型時に分離剤として作用させると共に、抗菌性
金属を担持した該無機質粉末を樹脂成形体の表面に埋没
・移行させることによって、樹脂成形体表面に優れた抗
菌性を与え得る様にしたものである。以下、本発明に係
る分離剤につき、構成成分などについて詳述する。
【0013】本発明の分離剤は、樹脂成形に先立って石
膏型の成形面に塗布されるものであり、塗布のために必
要となる分散媒としては水が最も一般的であるが、必要
により適量のアルコール類などを併用する場合もある。
【0014】分離剤の主成分となる造膜成分の種類も特
に制限されないが、最も一般的なのはアルギン酸ナトリ
ウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム等
のアルギン酸塩、脂肪酸塩、シリコーン系樹脂、フッ素
系樹脂等であり、特にアルギン酸塩を用いた場合は、ア
ルギン酸塩を水溶液の状態で造膜成分として含む分離剤
を石膏型の成形面に塗布すると、該アルギン酸塩が石膏
型表面の細孔中に侵入すると共に、上記のアルギン酸塩
が石膏と反応して不溶性のアルギン酸カルシウム皮膜を
形成し、モノマーの侵入を阻止すると共に、硬化した樹
脂成形体の石膏型からの分離性を高め、該成形体の表面
を平滑に仕上げる。またそれ以外の造膜成分を使用した
場合は、石膏との化学的反応は起こさないが、石膏型の
表面で離型性の皮膜を形成すると共に石膏型表面の細孔
内へ侵入して該細孔を塞ぎ、モノマーの侵入を阻止する
と共に樹脂成形体の表面を平滑に仕上げる作用を発揮す
る。
【0015】尚本発明の分離剤は、造膜成分として上記
の様な前述の成分を含有する他、必要に応じてPVA、
CMC、ポリビニルピロリドン等の増粘剤;一価アルコ
ール類あるいはエチレングリコールやグリセリン等の多
価アルコール類等の浸透促進剤;ピロリン酸ナトリウム
やリン酸酸ナトリウム等のゲル化遅延剤;分散安定性を
高めるためのナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド
系、アルキルアミン塩系、ポリカルボン酸系、フッ素系
などの界面活性剤;着色剤等を適量含有させることが可
能である。
【0016】本発明では、上記の様な成分からなる分離
剤中に、抗菌性付与成分として抗菌性金属の担持された
無機質粉末を含有させたところにその特徴があり、ここ
で用いられる抗菌性金属として最も代表的なのは、銀、
銅、亜鉛、コバルト、ニッケル、マグネシウム等であ
り、これらは単独で使用できる他、2種以上を任意の組
合せで併用することができる。これらの中でも最も好ま
しいのは銀と銅、とりわけ銀である。これら抗菌性金属
の無機質粉末への好ましい担持量は0.5〜20重量
%、より好ましくは1〜10重量%の範囲であり、担持
量が不足する場合は満足のいく抗菌性が得られにくく、
また多過ぎると、それらの金属が酸化を受けて着色する
原因になるばかりでなく、それに見合った抗菌性も得ら
れないので経済的にも無駄である。
【0017】また本発明で使用する無機質粉末は、上記
抗菌性金属を担持してこれを樹脂成形体の表面に埋没・
移行させ抗菌性を与える為のキャリヤ成分となる成分で
あり、実質的に水に不溶性の無機質粉末であればその種
類は特に制限されないが、好ましい例を示すとゼオライ
ト、ヒドロキシアパタイト、シリカ・アルミナ等、ある
いはリン酸ジルコニウム系、リン酸カルシウム系等のセ
ラミックス等が挙げられる。これら無機質粉末のうちゼ
オライト、ヒドロキシアパタイト、シリカ・アルミナ等
は、通常多孔質の粉末であり、これらに前述の抗菌性金
属を含む熱分解性塩を含浸させて加熱処理すると、該抗
菌性金属を容易に担持させることができる。またリン酸
ジルコニウム系やリン酸カルシウム系等のセラミックス
を使用する際も、これらに上記と同様にして抗菌性金属
塩を含浸させて担持させることも可能であり、或はこれ
らに抗菌性金属を混合して焼成すると、抗菌性金属を担
持したガラス質のセラミックス粉末を得ることができ、
本発明ではそれらのいずれであっても有効に使用するこ
とができる。
【0018】しかし、多孔質の無機質粉末に抗菌性金属
を担持させたものでは、樹脂成形体の表面に埋没・移行
させた後の使用時に、それらの金属が酸化されて着色し
樹脂成形体の外観を劣化させることがあるが、無機質粉
末としてガラス質のセラミックス粉末を使用すると、使
用時においても抗菌性金属が酸化を受け難く、使用時に
上記の様な好ましくない着色を起こすことがないので好
ましい。但し、多孔質の無機質粉末を使用した場合で
も、適当な還元剤を少量併用して抗菌性金属の酸化を防
止してやれば、上記の様な好ましくない着色を防止する
ことができる。
【0019】尚、分離剤中に配合された上記無機質粉末
の樹脂成形体表面への移行は、次の様にして行なわれる
ものと考えられる、即ち、例えば図1(A),(B)の
拡大概念図に示す如く、石膏型4内に填入された成形樹
脂材料3aが硬化する際に、石膏型4の表面に塗布され
て造膜した分離剤1の表面に突出した無機質粉末2が、
樹脂成形体3bの表面に包み込まれる様に埋没し、脱型
時にそのまま樹脂成形体3bの表面に埋没した状態で移
行するものと思われる。
【0020】尚、分離剤の膜厚は通常20μm程度以下
の非常に薄いものであり、無機質粉末の粒径は0.1μ
m程度以上であるが、粒径が大きくなり過ぎると分離剤
としての分散安定性が悪くなるばかりでなく、樹脂成形
体の表面性状を悪くする原因になることがあるので、好
ましくは10μm程度以下に抑えることが望ましい。樹
脂成形体表面への確実な埋没・移行性、分離剤としての
分散安定性、樹脂成形体の表面性状への影響などを総合
的に考慮してより好ましい無機質粉末の粒径は1.0〜
2.5μm程度である。ここで、粒径とは平均粒径をい
うが、用いられる無機質粉末をより万遍なく樹脂成形体
の表面に移行させ、かつ成形体の表面性状を平滑に仕上
げるには、粒度分布の極力狭い無機質粒子を使用するこ
とが望ましい。
【0021】抗菌性金属が担持された該無機質粉末の分
離剤中に占める好ましい含有量は、求められる抗菌性の
程度あるいは抗菌性金属の担持量等によっても変わって
くるので一律に規定することはできないが、分離剤とし
ての安定性や樹脂成形体表面への移行性等を総合的に考
慮して好ましいのは、3〜30重量%、より好ましくは
5〜25重量%の範囲である。
【0022】本発明に係る分離剤の製法は特に制限され
ないが、最も一般的なのは、代表的な分散媒である水、
或は必要により併用することのあるアルコール等の水性
有機溶剤を含む混合液に、前記アルギン酸ソーダ等の造
膜成分、必要により併用される水溶性増粘剤、浸透性促
進剤、ゲル化遅延剤、界面活性剤、着色剤等を適量添加
し、これに抗菌性金属が担持された無機質粉末を加え、
任意の撹拌装置を用いて均一に混合する方法である。こ
のとき、撹拌装置としてボールミルを使用すれば、無機
質粉末を微細化しつつより均一に分散させることができ
るので好ましい。また、無機質粉末を、配合前に予めカ
ップリング剤で処理することによって成形用樹脂との親
和性を高めておくことが好ましいことは先に説明した
が、このカップリング処理は、抗菌性金属の担持処理前
あるいは担持後に行なうことができる。
【0023】かくして得られる分離剤を用いて歯科用樹
脂成形体を製造する際には、前述の如く石膏型の成形面
に刷毛塗り、スプレー塗布など任意の方法で塗布して分
離膜を形成し、常法に従って成形用樹脂材料の填入およ
び加熱重合等を行なって歯科用樹脂成形体を製造する
が、該成形体を石膏型から脱型する際に、上記分離剤に
より形成される分離膜の存在によって石膏型成形面への
成形体の接着が阻止されているので、該成形体の脱型が
簡単に行なえると共に、成形体表面は平滑に仕上げられ
る。しかも、分離膜の表面に突出した、抗菌性金属を担
持した無機質粉末は、前述の如く成形用樹脂が硬化する
際にその表面に包み込まれる様に埋没した状態となって
いるので、脱型時には該無機質粉末が樹脂成形体の表面
に埋没した状態で移行する。その結果、脱型後の樹脂成
形体表面には、抗菌性金属を担持した無機質粉末が均一
に埋め込まれた状態で存在することになり、樹脂成形体
には優れた抗菌性が与えられることになる。
【0024】尚、本発明の分離剤は石膏型の全面に塗布
して成形体の全面に抗菌性を与えることも可能である
が、該抗菌活性の与えられた成形体の表面には前述の如
く抗菌性無機質粉末が埋め込まれて若干着色し外観が損
なわれる嫌いがあり、また、床義歯などにおいて特に抗
菌活性が求められるのは装着状態で外部へ露出しない粘
膜との接触面側であるから、成形体における該粘膜との
接触面側成形面のみに本発明の分離剤を塗布することに
よって粘膜面側に抗菌性を与え、他の面には通常の分離
剤を塗布して成形を行なうことが望ましい。
【0025】本発明で用いられる成形用樹脂としてはポ
リメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネー
ト、ポリスルフォン等、あるいはそれらの各種変性樹
脂、ブレンド樹脂等が例示されるが、本発明はもとより
これら成形用樹脂の種類には一切制限を受けない。
【0026】かくして本発明によれば、樹脂成形体の表
面のみに抗菌性金属を集中的に埋没付着させることがで
きるので、抗菌剤を成形用樹脂に混入して成形体に抗菌
性を与える従来法に比較すると、格段に少ない抗菌剤の
使用量でその表面に高レベルの抗菌性を付与することが
でき、しかも樹脂成形体の強度特性に悪影響を及ぼす恐
れも全くないので、例えば義歯床、歯冠、人工歯などを
始めとする各種の歯科用樹脂成形体の成形に幅広く有効
に活用することができる。
【0027】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限
を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範
囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、そ
れらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。尚、
下記実施例で採用した抗菌性および曲げ強度の試験法は
下記の通りである。
【0028】[抗菌性試験]JIS T 6501−1
993(義歯床用アクリル系レジン)の「曲げたわみ試
験」の試験片の作製法に準じて10mm×20mm×1
mmの試験片を作製し、洗浄後カンジダアルビカンス(C
andida albinans:臨床分離株)の菌液を生理食塩水で1
4 CFU/mlに調整した菌液5mlの入った試験管
(直径16mm)に浸漬した後、37℃で24時間イン
キュベートし、その時のサブロー寒天培地に塗抹して生
菌数を測定する。
【0029】[曲げ強度試験]JIS T 6501−
1993(義歯床用アクリル系レジン)の「曲げたわみ
試験」の試験片の作製法に準じて試験片を作製し、万能
試験機を用いて曲げ強度を測定する。
【0030】実施例1 水100gにアルギン酸ナトリウム5g、グリセリン5
g、ピロリン酸ナトリウム0.5gおよび少量の着色剤
を加えて混合溶解させ、この溶液に銀を3.0重量%担
持させたゼオライト粉末10gを配合し、ボールミルを
用いて均一に分散させて歯科用分離剤を作製した。これ
を石膏型への内面分離剤として使用し、分離膜の乾燥厚
みが約10μmとなる様に塗布した以外は、JIS T
6501−1993(義歯床用アクリル系樹脂)の
「曲げたわみ試験」の試験片の作製法に準拠して、義歯
床用樹脂(三金工業株式会社製「デンチャーレジン」)
の型内重合を行ない、得られた成形体について、抗菌性
および曲げ強度試験を行ない、表1に示す結果を得た。
【0031】実施例2 上記実施例1において、銀を担持させたゼオライトに代
えて、銀(3.0重量%)を担持させたリン酸カルシウ
ム系セラミックス粉末15gを用いた以外は実施例1と
全く同様にして、分離剤の調製、該分離剤を用いた成形
体の製造および性能試験を行なった。このとき、石膏型
への分離剤の塗膜厚さは約10μmとした。結果を表1
に示す。
【0032】実施例3 上記実施例1において、銀を担持させたゼオライトに代
えて、銀(3.0重量%)を担持させたリン酸ジルコニ
ウム系セラミックス粉末20gを用いた以外は実施例1
と全く同様にして、分離剤の調製、該分離剤を用いた成
形体の製造および性能試験を行なった。このとき、石膏
型への分離剤の塗膜厚さは約10μmとした。結果を表
1に示す。
【0033】実施例4 銀(3.0重量%)を担持させたリン酸カルシウム系セ
ラミックス粉末100gに対し、シランカップリング剤
としてγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
8重量%を含むエチルアルコール溶液50gを加えて1
時間攪拌し、乾燥後110℃で30分間熱処理して、シ
ラン処理無機質粉末を得た。この無機質粉末を、前記実
施例2のリン酸カルシウム系セラミックス粉末に代えて
15g使用した以外は該実施例2と全く同様にして、分
離剤の調製、該分離剤を用いた成形体の製造および性能
試験を行なった。結果を表1に示す。
【0034】比較例1 水100gにアルギン酸ナトリウム5g、グリセリン5
g、ピロリン酸ナトリウム0.5gおよび少量の着色剤
を加えて混合溶解させ、比較用の歯科用分離剤を作製し
た。これを石膏型への内面分離剤として用いた以外は、
前記実施例1と全く同様にして歯科用成形体の製造およ
び性能試験を行なった。結果を表1に示す。
【0035】比較例2 義歯床用樹脂粉末(三金工業株式会社製「デンチャーレ
ジン」)100gに、銀(3.0重量%)を担持させた
ゼオライト粉末5gを配合した成形用樹脂を使用し、ま
た分離剤としては上記比較例1で用いた分離剤を使用し
た以外は、前記実施例1と全く同様にして、樹脂成形体
の製造および性能試験を行なった。結果を表1に示す。
【0036】比較例3 上記比較例2において、銀を担持させたゼオライトの配
合量を30gに変えた以外は比較例2と全く同様にして
試験を行なった。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】表1からも明らかである様に、実施例では
何れも生菌数が少なく且つ曲げ強度も良好であるのに対
し、分離剤に抗菌性金属を配合していない比較例では、
当然のことながら生菌数が多くて抗菌効果が得られず、
また抗菌性金属を担持した無機質粉末を使用したもので
も、それを成形用樹脂中に混入した場合、混入量が不足
すると(比較例2)曲げ強度の劣化はそれほど気になら
ないが、満足のいく抗菌性が得られず、逆に混入量が多
過ぎると(比較例3)抗菌性はある程度高められるもの
の、曲げ強度の劣化が著しくなるばかりでなく、成形後
数時間で表面が黒く変色するため実用にそぐわなくな
る。
【0039】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、石
膏を用いた歯科用樹脂成形体の成形工程で用いられる分
離剤を利用し、この中に抗菌性金属を担持した無機質粉
末を含有させ、これを脱型工程で歯科用樹脂成形体の表
面に埋没・移行する様にすることによって、少ない抗菌
性金属の使用量でその表面の抗菌性を著しく高めること
ができ、且つ該成形体の物性に悪影響を及ぼすことのな
い歯科用分離剤を提供できることになった。そしてこの
分離剤を使用すれば、分離剤を用いた通常の成型工程で
同時に成形体表面に抗菌性を付与することができ、物
性、表面性状、抗菌性の全てを満足する歯科用成形体を
容易に得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の分離剤を用いた場合の、樹脂成形体表
面への無機質粉末の移行状況を例示する断面拡大模式図
である。
【符号の説明】
1 分離剤 2 抗菌剤を担持した無機質粉末 3a 成形用樹脂材料 3b 樹脂成形体 4 石膏型

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 石膏型を用いて歯科用樹脂成形体を製造
    するに当たり、石膏型の成形面に塗布される分離剤であ
    って、抗菌性金属が担持された無機質粉末を含有するこ
    とを特徴とする歯科用樹脂成形体製造用分離剤。
  2. 【請求項2】 前記抗菌性金属が銀および/または銅で
    ある請求項1記載の分離剤。
  3. 【請求項3】 前記無機質粉末が、チタネート系、アル
    ミニウム系またはシラン系のカップリング剤で処理され
    たものである請求項1または2記載の分離剤。
  4. 【請求項4】 石膏型を用いて歯科用樹脂成形体を製造
    するに当たり、石膏型の成形面に請求項1〜3のいずれ
    かに記載の分離剤を塗布して分離膜を形成した後、石膏
    型内に成形用樹脂材料を填入して硬化させると共に、硬
    化した樹脂成形体の表面に前記分離剤中の無機質粉末を
    埋没せしめ、次いで石膏型から脱型することを特徴とす
    る抗菌性に優れた歯科用樹脂成形体の製法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010248235A (ja) * 1998-04-30 2010-11-04 Kyowa Ltd 義歯洗浄剤
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KR20230087113A (ko) * 2021-12-09 2023-06-16 조래순 절삭가공방법을 활용한 리어 시트 프레임모듈에 대한 시제품

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